特許第6791005号(P6791005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791005
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01G 2/06 20060101AFI20201116BHJP
   H01G 2/02 20060101ALI20201116BHJP
   H01G 9/26 20060101ALI20201116BHJP
   H05K 7/12 20060101ALI20201116BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20201116BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20201116BHJP
【FI】
   H01G2/06 A
   H01G2/02 101E
   H01G9/26
   H05K7/12 P
   H05K1/18 A
   H05K1/18 S
   H02M7/48 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-98281(P2017-98281)
(22)【出願日】2017年5月17日
(65)【公開番号】特開2018-195699(P2018-195699A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2019年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊東 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】紺谷 一善
【審査官】 鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−110316(JP,A)
【文献】 特開2006−310490(JP,A)
【文献】 特開2015−012231(JP,A)
【文献】 特開2000−012383(JP,A)
【文献】 特開平03−289346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/02−2/06
H01G 2/10
H01G 9/00
H01G 9/07−9/18
H01G 9/21−9/28
H01G 11/00−11/86
H02M 2/10
H02M 7/42−7/98
H05K 1/18
H05K 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に複数のコンデンサが実装されている電子機器であって、
前記コンデンサは、柱状の本体部と、当該本体部の軸方向一方側の端面から同一方向に向けて延出されているとともに前記回路基板に固定されている一対のリード線とを備えており、
前記回路基板には、前記コンデンサとして、一列に並んで配置された複数の第1コンデンサと、複数の前記第1コンデンサと並列となるように一列に並んで配置された複数の第2コンデンサとが実装されており、
前記第1コンデンサの前記リード線と前記回路基板との固定箇所を支点として前記一対のリード線の並設方向とは直交する方向に、前記第1コンデンサを傾動させたときの仮想傾動範囲内に、当該第1コンデンサに隣り合う前記第2コンデンサが配置されており、
前記第1コンデンサにおける前記リード線の並設方向と、当該第1コンデンサに隣り合う前記第2コンデンサにおける前記リード線の並設方向とが交差しており、
前記第1コンデンサと、当該第1コンデンサに隣り合う前記第2コンデンサとは、それぞれの前記リード線の並設方向が互いに直交している電子機器。
【請求項2】
隣り合う前記第1コンデンサは、それぞれの前記仮想傾動範囲内に互いが配置され、かつ、それぞれの前記リード線の並設方向が互いに交差している
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記コンデンサの前記本体部は円柱状であり、
前記第1コンデンサの前記本体部と前記第2コンデンサの前記本体部とは同じ外径であり、
それぞれの前記第1コンデンサは、互いに等間隔で同一直線上に配置され、
それぞれの前記第2コンデンサは、互いに等間隔で同一直線上に配置され、
前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサは、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの軸線方向から平面視した場合にハニカム状となるように、前記回路基板への取り付け位置が互い違いにずれて配置されている
請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
隣り合う前記コンデンサの前記本体部の外周面が互いに接触している
請求項1〜のいずれか一項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直流電圧を昇圧しつつ交流電力に変換するパワーコンディショナー装置が開示されている。このパワーコンディショナー装置は、入力される直流電流を昇圧するDC/DCコンバータ回路と、このDC/DCコンバータ回路が昇圧した直流電流を交流電流に変換するインバータ回路とを備えている。これらDC/DCコンバータ回路及びインバータ回路は、いずれも回路基板と当該回路基板上に実装された電子部品とを含んで構成されている。各回路基板上には、電子部品として略円柱状のコンデンサが実装されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−192809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回路基板上に実装されるコンデンサとして、例えば略円柱状の本体部の軸方向一方側の端面から一対のリード線が延出しているものが知られている。この種のコンデンサにおいては、一対のリード線が回路基板にはんだ付け等で固定されることが一般的である。このようなコンデンサの固定態様において回路基板が外部からの力により振動すると、その振動の方向によってはコンデンサがそのリード線における回路基板との固定箇所を支点として傾動することがある。このようなコンデンサの傾動が繰り返し生じると、リード線にかかる負担が過度に大きくなってリード線の破断を招くおそれがある。そこで、電子機器においては、コンデンサの傾動を抑制できる構造が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための電子機器は、回路基板上に複数のコンデンサが実装されている電子機器であって、前記コンデンサは、柱状の本体部と、当該本体部の軸方向一方側の端面から同一方向に向けて延出されているとともに前記回路基板に固定されている一対のリード線とを備えており、前記回路基板には、前記コンデンサとして、一列に並んで配置された複数の第1コンデンサと、複数の前記第1コンデンサと並列となるように一列に並んで配置された複数の第2コンデンサとが実装されており、前記第1コンデンサの前記リード線と前記回路基板との固定箇所を支点として前記一対のリード線の並設方向とは直交する方向に、前記第1コンデンサを傾動させたときの仮想傾動範囲内に、当該第1コンデンサに隣り合う前記第2コンデンサが配置されており、前記第1コンデンサにおける前記リード線の並設方向と、当該第1コンデンサに隣り合う前記第2コンデンサにおける前記リード線の並設方向とが交差している。
【0006】
上述の構成においては、第1コンデンサを傾動させたときの仮想傾動範囲内に、当該第1コンデンサに隣り合う第2コンデンサが配置されている。そのため、回路基板の振動に伴って第1コンデンサが傾動しようとしても、当該第1コンデンサは第2コンデンサによって受け止められる。ここで、第1コンデンサ及び第2コンデンサは、リード線の並設方向には傾動し難いが、リード線の並設方向と直交する方向には傾動し易い。そして、上述の構成においては、第1コンデンサのリード線の並設方向と第2コンデンサのリード線の並設方向とが交差している。換言すれば、第1コンデンサが傾動し易い方向と第2コンデンサが傾動し易い方向とが異なっている。したがって、傾動しようとする第1コンデンサを受け止めた第2コンデンサが第1コンデンサと共に傾動してしまうことは抑制される。このように、第1コンデンサ及び第2コンデンサは、互いの傾動を抑制し合うことができる。
【0007】
上記電子機器において、隣り合う前記第1コンデンサは、それぞれの前記仮想傾動範囲内に互いが配置され、かつ、それぞれの前記リード線の並設方向が互いに交差していてもよい。
【0008】
上述の構成によれば、第1コンデンサ及び第2コンデンサという異なる列の間で傾動を抑制し合うだけでなく、隣り合う第1コンデンサ同士という同一の列の中で互いの傾動を抑制し合うことができる。そのため、第1コンデンサの傾動をより確実に抑制できる。
【0009】
上記電子機器において、前記第1コンデンサと、当該第1コンデンサに隣り合う前記第2コンデンサとは、それぞれの前記リード線の並設方向が互いに直交していてもよい。
上述の構成によれば、第1コンデンサが最も傾動し易い方向は、第2コンデンサが最も傾動し難い方向である。そのため、第1コンデンサの傾動を、より効果的に第2コンデンサで抑制できる。
【0010】
上記電子機器において、前記コンデンサの前記本体部は円柱状であり、前記第1コンデンサの前記本体部と前記第2コンデンサの前記本体部とは同じ外径であり、それぞれの前記第1コンデンサは、互いに等間隔で同一直線上に配置され、それぞれの前記第2コンデンサは、互いに等間隔で同一直線上に配置され、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサは、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの軸線方向から平面視した場合にハニカム状となるように、前記回路基板への取り付け位置が互い違いにずれて配置されていてもよい。
【0011】
上述の構成においては、第1コンデンサと第2コンデンサとがハニカム状に密集して配置される。そのため、回路基板の振動に伴って例えば一つのコンデンサが傾動しようとしても、その傾動をコンデンサ群全体で受け止めることができる。したがって、コンデンサの傾動を抑制する効果を、より高めることができる。
【0012】
上記電子機器において、隣り合う前記コンデンサの前記本体部の外周面が互いに接触していてもよい。
上述の構成においては、隣り合うコンデンサ同士が接触していることで、各コンデンサの僅かな傾動すらも抑制できる。したがって、各コンデンサが傾動することに伴ってリード線が破断することは好適に抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回路基板に実装されているコンデンサの傾動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】半導体装置の分解斜視図。
図2】コンデンサモジュールの部分平面図。
図3】コンデンサモジュールの部分側面図。
図4図3とは90°異なる方向から視たコンデンサモジュールの部分側面図。
図5】各コンデンサがそれぞれ互いの仮想傾動範囲外に位置している場合のコンデンサモジュールの部分平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、電子機器の一実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態の電子機器は、産業車両に搭載される半導体装置として電子機器を具体化したものである。
図1に示すように、電子機器としての半導体装置10は、矩形板状のヒートシンク11を備えている。ヒートシンク11は、アルミニウム系金属や銅等によって形成されている。ヒートシンク11の上面には、半導体モジュール12が配置されている。
【0016】
半導体モジュール12は、矩形板状の主回路基板22を備えている。主回路基板22は、金属基板の上面に絶縁コーティングを施し、その絶縁コーティングの上に銅又はアルミ製の導体パターン(図示省略)が形成されたものである。以下、主回路基板22の長辺方向を長さ方向とし、長さ方向に直交する短辺方向を幅方向とする。
【0017】
主回路基板22には、複数の半導体素子23が実装されている。この実施形態では、半導体素子23は、MOSトランジスタである。複数の半導体素子23はそれぞれ、矩形状であり、主回路基板22の導体パターンに、はんだ付けにて接合されている。複数の半導体素子23は、6つの半導体素子群G1〜G6に分かれて配置されている。各半導体素子群G1〜G6において、各半導体素子23は、主回路基板22の幅方向に沿って一列に並んでいる。各半導体素子群G1〜G6は、主回路基板22の長さ方向に並んでいる。具体的には、半導体素子群は、主回路基板22の長さ方向の一方側から他方側に向けて、第1半導体素子群G1、第2半導体素子群G2、第3半導体素子群G3、第4半導体素子群G4、第5半導体素子群G5、第6半導体素子群G6の順番で並んでいる。そして、第1半導体素子群G1と第2半導体素子群G2とは一組となってU相を構成している。第3半導体素子群G3と第4半導体素子群G4とは一組となってV相を構成している。第5半導体素子群G5と第6半導体素子群G6とは一組となってW相を構成している。なお、各半導体素子群G1〜G6は、それぞれ個別の導体パターンに電気的に接続されている。各半導体素子群G1〜G6において、各半導体素子23は、導体パターンに並列に接続されている。
【0018】
主回路基板22の長さ方向の一方側(図1において右上側)には、アルミニウムによって形成された正極側入力電極27が配置されている。主回路基板22の長さ方向の他方側には、アルミニウムによって形成された負極側入力電極28が配置されている。正極側入力電極27及び負極側入力電極28はそれぞれ、主回路基板22の導体パターン上に配置されたパターン接続用電極部27a、28aを備えている。両パターン接続用電極部27a、28aは、板状に形成されている。両パターン接続用電極部27a、28aの上面からは、それぞれ円筒状の外部接続用電極部27c、28cが立設している。両パターン接続用電極部27a、28aの下面は、主回路基板22の導体パターンと面接触しており、主回路基板22を介してヒートシンク11と結合されている。これにより、両パターン接続用電極部27a、28aが、ヒートシンク11と熱的に結合されている。また、両パターン接続用電極部27a、28aには、それぞれ2つずつねじ穴Pが貫通されている。なお、図1では、両パターン接続用電極部27a、28aのそれぞれにおいて、幅方向一方のねじ穴Pのみに符号を付し、他方のねじ穴Pについては符号の図示を省略している。
【0019】
正極側入力電極27と負極側入力電極28との間には、産業車両の車載走行モータに接続されるU相出力端子U、V相出力端子V、及びW相出力端子Wが配置されている。U相出力端子Uは、U相の上アーム半導体素子群(第1半導体素子群G1)と下アーム半導体素子群(第2半導体素子群G2)との間に配置されている。V相出力端子Vは、V相の上アーム半導体素子群(第3半導体素子群G3)と下アーム半導体素子群(第4半導体素子群G4)との間に配置されている。W相出力端子Wは、W相の上アーム半導体素子群(第5半導体素子群G5)と下アーム半導体素子群(第6半導体素子群G6)との間に配置されている。
【0020】
U相出力端子U、V相出力端子V、及びW相出力端子Wはそれぞれ、主回路基板22の導体パターン上に配置される基部Ua、Va、Waを備えている。各基部Ua、Va、Waは細長い矩形板状に形成されている。各基部Ua、Va、Waの上面の中央域からは、それぞれ、円筒状の外部接続用端子Ub、Vb、Wbが立設している。なお、各外部接続用端子Ub、Vb、Wbは、車載走行モータに接続される。
【0021】
U相出力端子Uの基部Uaには、外部接続用端子Ubを挟んで両側に1つずつ、ねじ穴Pが貫通されている。V相出力端子Vの基部Va及びW相出力端子Wの基部Waにも、同様にねじ穴Pが貫通されている。なお、図1では、各基部Ua、Va、Waのそれぞれにおいて、幅方向一方のねじ穴Pのみに符号を付し、他方のねじ穴Pについては符号の図示を省略している。
【0022】
第2半導体素子群G2と第3半導体素子群G3との間には、板状の負極側中継端子25が配置されている。第4半導体素子群G4と第5半導体素子群G5との間には、板状の正極側中継端子26が配置されている。負極側中継端子25及び正極側中継端子26には、それぞれ2つずつねじ穴Pが貫通されている。なお、図1では、負極側中継端子25及び正極側中継端子26のそれぞれにおいて、幅方向一方のねじ穴Pのみに符号を付し、他方のねじ穴Pについては符号の図示を省略している。
【0023】
各半導体素子群G1〜G6の電気的な接続構造について説明する。第1半導体素子群G1のドレイン用の導体パターンは、正極側入力電極27のパターン接続用電極部27aに電気的に接続されている。第4半導体素子群G4及び第5半導体素子群G5のドレイン用の導体パターンは、正極側中継端子26を介して正極側入力電極27に電気的に接続されている。第2半導体素子群G2及び第3半導体素子群G3のソース用の導体パターンは、負極側中継端子25を介して負極側入力電極28と電気的に接続されている。第6半導体素子群G6のソース用の導体パターンは、負極側入力電極28のパターン接続用電極部28aと電気的に接続されている。
【0024】
第1半導体素子群G1のソース電極は、U相出力端子Uの基部Uaに電気的に接続されている。第2半導体素子群G2のドレイン電極はU相出力端子Uの基部Uaに電気的に接続されている。第4半導体素子群G4のソース電極は、V相出力端子Vの基部Vaに電気的に接続されている。第3半導体素子群G3のドレイン電極はV相出力端子Vの基部Vaに電気的に接続されている。第5半導体素子群G5のソース電極は、W相出力端子Wの基部Waに電気的に接続されている。第6半導体素子群G6のドレイン電極はW相出力端子Wの基部Waに電気的に接続されている。
【0025】
図1に示すように、主回路基板22の上方には、コンデンサモジュール30が配置されている。コンデンサモジュール30は、主回路基板22と略同じ矩形状に形成された板状のコンデンサ回路基板31を備えている。コンデンサ回路基板31の長辺方向である長さ方向は、主回路基板の長さ方向と一致している。この長さ方向に直交する方向である幅方向は、主回路基板22の幅方向に一致している。コンデンサ回路基板31における幅方向の中央域には、同コンデンサ回路基板31が厚み方向に貫通された貫通孔32が3つ設けられている。3つの貫通孔32は、コンデンサ回路基板31の長さ方向に並んでいる。また、コンデンサ回路基板31の長さ方向の両縁部には、コンデンサ回路基板31の長さ方向の中央側へ凹んだ凹部33が形成されている。各凹部33は、コンデンサ回路基板31における幅方向の中央域に位置している。
【0026】
コンデンサ回路基板31の両凹部33には、正極側入力電極27及び負極側入力電極28の外部接続用電極部27c、28cがそれぞれ配置されている。また、コンデンサ回路基板31の各貫通孔32には、U相出力端子U、V相出力端子V、及びW相出力端子Wの外部接続用端子Ub、Vb、Wbがそれぞれ挿通されている。また、コンデンサ回路基板31は、正極側入力電極27及び負極側入力電極28のパターン接続用電極部27a、28aの上面で支持されている。
【0027】
コンデンサモジュール30のコンデンサ回路基板31には、複数のねじ穴Pが貫通されている。コンデンサ回路基板31の各ねじ穴Pは、当該コンデンサ回路基板31を半導体モジュール12の主回路基板22に対向配置したときに、半導体モジュール12の各ねじ穴Pに対応する位置に設けられている。コンデンサ回路基板31の各ねじ穴P、及び半導体モジュール12の各ねじ穴Pには、それぞれ図示しないねじが挿通され、このねじによって、コンデンサモジュール30が半導体モジュール12に固定されている。なお、この実施形態では、コンデンサモジュール30及び半導体モジュール12を固定するねじは、ヒートシンク11にまで至っており、同ねじにより、コンデンサモジュール30及び半導体モジュール12がヒートシンク11にも固定されている。図1では、コンデンサ回路基板31における複数のねじ穴Pのうち、一部のねじ穴Pについては符号の図示を省略している。
【0028】
上記のように構成された半導体装置10においては、U相出力端子U、V相出力端子V、及びW相出力端子Wの外部接続用端子Ub、Vb、Wbが、制御回路に電気的に接続されている。この制御回路を通じた制御によって半導体装置10から車載走行モータに電力が供給される。
【0029】
図1に示すように、コンデンサ回路基板31上には、複数のコンデンサ40が実装されている。各コンデンサ40は、貫通孔32よりもコンデンサ回路基板31における幅方向の一方側(図1において左上側)に配置されている。
【0030】
図3及び図4に示すように、コンデンサ40は、円柱状の本体部42と、本体部42の軸方向一方側の端面から同一方向に向けて延出された一対のリード線44、46とを備えている。コンデンサ40のリード線44、46は、コンデンサ回路基板31に設けられた図示しない一対の取付孔に挿通され、その状態ではんだ付けにより固定されている。また、一対のリード線44、46がはんだ付けされた状態では、コンデンサ40における本体部42の軸線がコンデンサ回路基板31と直交している。コンデンサ40の一対のリード線44、46のうちの一方のリード線である正極リード線44は、コンデンサ回路基板31に設けられている正極側の導体パターンを介して正極側入力電極27のパターン接続用電極部27aに接続されている。他方のリード線である負極リード線46は、コンデンサ回路基板31に設けられている負極側の導体パターンを介して負極側入力電極28のパターン接続用電極部28aに接続されている。
【0031】
なお、この実施形態では、複数のコンデンサ40の全てが同一の構成になっている。すなわち、複数のコンデンサ40の本体部42は、いずれも同一の外径であり、且つ軸方向の寸法も同一である。また、リード線44、46の本体部42からの延出長さや、一対のリード線44、46の間隔も同一になっている。
【0032】
図2に示すように、複数のコンデンサ40は、コンデンサ回路基板31の長さ方向に沿って一列に並んで配置された複数の第1コンデンサ50と、複数の第1コンデンサ50と並列となるようにコンデンサ回路基板31の長さ方向に沿って一列に並んで配置された複数の第2コンデンサ60とに大別できる。この実施形態では、第1コンデンサ50が11個、第2コンデンサ60が12個、コンデンサ40としては合計23個設けられている。なお、上述したとおり、この実施形態では、全てのコンデンサ40が同一の構成であるので、第1コンデンサ50の本体部52と第2コンデンサ60の本体部62は同じ外径である。
【0033】
複数の第1コンデンサ50は、隣り合う第1コンデンサ50における本体部52の外周面が互いに接触するように配置されている。すなわち、隣り合う第1コンデンサ50の中心軸線の間隔(ピッチ)が、第1コンデンサ50の直径と略同じになっている。複数の第1コンデンサ50と同様に、複数の第2コンデンサ60は、隣り合う第2コンデンサ60における本体部62の外周面が互いに接触するように配置されている。すなわち、隣り合う第2コンデンサ60の中心軸線の間隔(ピッチ)が、第2コンデンサ60の直径と略同じになっている。
【0034】
第1コンデンサ50と第2コンデンサ60とは、これら第1コンデンサ50及び第2コンデンサ60の本体部52、62の軸線方向から平面視した場合にハニカム状となるように、コンデンサ回路基板31への取り付け位置が互い違いにずれて配置されている。換言すると、第1コンデンサ50と第2コンデンサとは、これら第1コンデンサ50及び第2コンデンサ60の軸線方向から平面視した場合にコンデンサ回路基板31の単位面積あたりに配置されているコンデンサ40の数が最大となるように最密に配置されている。こうした最密な配置により、1つの第1コンデンサ50は、2つの第2コンデンサ60と隣り合っている。同様に、1つの第2コンデンサ60(コンデンサ回路基板31の長さ方向における両端の2つの第2コンデンサ60を除く)は、2つの第1コンデンサ50と隣り合っている。
【0035】
各第1コンデンサ50における一対のリード線54、56の並設方向Lは、コンデンサ回路基板31の長さ方向に対して45°で傾いている。また、各第1コンデンサ50は、隣り合う第1コンデンサ50におけるリード線54、56の並設方向Lが互い違いになるように配置されている。すなわち、隣り合う第1コンデンサ50のリード線54、56の並設方向Lは直交している。同様に、各第2コンデンサ60における一対のリード線64、66の並設方向Rは、コンデンサ回路基板31の長さ方向に対して45°で傾いている。また、各第2コンデンサ60は、隣り合う第2コンデンサ60におけるリード線64、66の並設方向Rが互い違いになるように配置されている。すなわち、隣り合う第2コンデンサ60のリード線64、66の並設方向Rは直交している。
【0036】
上述のように各コンデンサ40におけるリード線44、46の並設方向が設定されていることで、第1コンデンサ50におけるリード線54、56の並設方向Lと、第2コンデンサ60におけるリード線64、66の並設方向Rとは次のような関係になっている。すなわち、各第1コンデンサ50におけるリード線54、56の並設方向L(例えば、図2における並設方向L1)は、各第1コンデンサ50のそれぞれに隣り合っている2つの第2コンデンサ60のうちの一方の第2コンデンサ60におけるリード線64、66の並設方向R(例えば、図2における並設方向R1)と直交している。また、各第2コンデンサ60におけるリード線64、66の並設方向R(例えば、図2における並設方向R1)は、各第2コンデンサ60のそれぞれに隣り合っている2つの第1コンデンサ50のうちの一方の第1コンデンサ50におけるリード線54、56の並設方向L(例えば、図2における並設方向L1)と直交している。
【0037】
次に、本実施形態の作用について説明する。
コンデンサ40は、リード線44、46の並設方向には傾動し難いが、リード線44、46の並設方向と直交する方向には傾動し易い。具体的には、コンデンサ40がリード線44、46の並設方向に傾動しようとした場合、一対のリード線44、46のうちの一方がコンデンサ回路基板31の取付孔から抜け出す必要がある。しかし、リード線44、46は、コンデンサ回路基板31に対してはんだ付けされているため、コンデンサ回路基板31の取付孔から抜け出すことはできない。したがって、コンデンサ40は、リード線44、46の並設方向には傾動し難い。その一方で、コンデンサ40がリード線44、46の並設方向とは直交する方向に傾動しようとした場合、リード線44、46が共に折れ曲がることでコンデンサ40が傾動し易い。
【0038】
ここで、仮に、コンデンサ40の周囲に他のコンデンサ40が配置されていない場合、コンデンサ40は、リード線44、46とコンデンサ回路基板31との固定箇所を支点として傾動する。そして、コンデンサ40は、最大で、コンデンサ40の軸方向の端面がコンデンサ回路基板31の表面に当接するまで傾動し得る。なお、図2及び図4に示すように、このようなリード線44、46の並設方向とは直交する方向にコンデンサ40が傾動可能な仮想範囲を仮想傾動範囲Hとする。
【0039】
ところで、半導体装置10に外部から力がかかって、コンデンサ回路基板31が振動することがある。例えば、仮に、図5に示すように各コンデンサ40が互いにそれぞれの仮想傾動範囲H外に配置されている場合、コンデンサ回路基板31の振動に伴って各コンデンサ40が傾動しても、各コンデンサ40は互いを受け止め合うことができない。したがって、隣り合うコンデンサ40同士で傾動を抑制し合うことはできない。
【0040】
さらに、図5に示すように、全てのコンデンサ40のリード線44、46の並設方向が同一である場合、全てのコンデンサ40について、傾動し易い方向が一致している。したがって、仮にコンデンサ40が傾動して他のコンデンサ40に接触したとしても、それら2つのコンデンサ40が共に傾動してしまう。したがって、コンデンサ40の傾動を他のコンデンサ40で抑制することは期待できない。
【0041】
一方、本実施形態の半導体装置10では、図2に示すように、各コンデンサ40がハニカム状に密集して配置されている。つまり、各コンデンサ40は、隣り合うコンデンサ40における本体部42の外周面が互いに接触するように配置されている。このため、各コンデンサ40のそれぞれの仮想傾動範囲H内に、各コンデンサ40のそれぞれに隣り合っているコンデンサ40が配置されている。
【0042】
具体的には、例えばコンデンサ回路基板31の長さ方向における一方側(図2において左側)の端部に位置している第1コンデンサ50Aの仮想傾動範囲H内には、当該第1コンデンサ50Aに隣り合っている第1コンデンサ50Bと、コンデンサ回路基板31の長さ方向における一方側(図2において左側)の端部に位置している第2コンデンサ60Aと、当該第2コンデンサ60Aに隣り合っている第2コンデンサ60Bとが配置されている。そのため、コンデンサ回路基板31の振動に伴って第1コンデンサ50Aが傾動しようとしても、当該第1コンデンサ50Aは、第1コンデンサ50B、第2コンデンサ60A、第2コンデンサ60Bで受け止められる。
【0043】
ここで、第1コンデンサ50Aにおけるリード線54、56の並設方向L1と、第2コンデンサ60Bにおけるリード線64、66の並設方向R1とは直交している。そのため、第1コンデンサ50Aが傾動し易い方向と第2コンデンサ60Bが傾動し易い方向とは異なっている。したがって、傾動しようとする第1コンデンサ50Aを受け止めた第2コンデンサ60Bが第1コンデンサ50Aと共に傾動してしまうことは抑制される。こうして、第1コンデンサ50Aの傾動が第2コンデンサ60Bによって抑制される。
【0044】
また、第1コンデンサ50Aにおけるリード線54、56の並設方向L1と、第1コンデンサ50Bにおけるリード線54、56の並設方向L2とは直交している。そのため、第1コンデンサ50Aが傾動し易い方向と第1コンデンサ50Bが傾動し易い方向とが異なっている。したがって、傾動しようとする第1コンデンサ50Aを受け止めた第1コンデンサ50Bが第1コンデンサ50Aと共に傾動してしまうことは抑制される。こうして、第1コンデンサ50Aの傾動が第1コンデンサ50Bで抑制される。
【0045】
なお、コンデンサ回路基板31の振動方向が、第1コンデンサ50Aにおけるリード線54、56の並設方向L1と直交している場合、第1コンデンサ50Aが最も傾動しやすくなる。しかし、第1コンデンサ50Aにおけるリード線54、56の並設方向L1と、第2コンデンサ60Bにおけるリード線64、66の並設方向R1とが直交している。そのため、上記の場合のコンデンサ回路基板31の振動方向は、第2コンデンサ60Bが最も傾動し難い方向となっている。したがって、第1コンデンサ50Aの傾動は第2コンデンサ60Bによって効果的に抑制される。同様に、第1コンデンサ50Aにおけるリード線54、56の並設方向L1と、第1コンデンサ50Bにおけるリード線54、56の並設方向L2とが直交している。そのため、上記の場合のコンデンサ回路基板31の振動方向は、第1コンデンサ50Bが最も傾動し難い方向となっている。したがって、第1コンデンサ50Aの傾動は第1コンデンサ50Bによって効果的に抑制される。
【0046】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1コンデンサ50の仮想傾動範囲H内に、当該第1コンデンサ50に隣り合う第2コンデンサ60が配置されていることで、第1コンデンサ50が傾動しようとした場合に、当該第1コンデンサを第2コンデンサで受け止めることができる。そして、第1コンデンサ50と第2コンデンサ60における互いのリード線の並設方向L、Rが交差していることで、第1コンデンサ50を受け止めた第2コンデンサ60が第1コンデンサ50と共に傾動することが抑制され、第1コンデンサ50の傾動が抑制される。こうした一方の列のコンデンサ40が他方の列のコンデンサ40の傾動を抑制する関係が第1コンデンサ50と第2コンデンサ60との間に相互に成り立っていることで、第1コンデンサ50と第2コンデンサ60とは、互いの傾動を抑制し合うことができる。
【0047】
(2)隣り合う第1コンデンサ50が互いにそれぞれの仮想傾動範囲H内に配置され、かつ、互いにそれぞれのリード線54、56の並設方向Lが交差している。これにより、第1コンデンサ50と第2コンデンサ60という異なる列の間で傾動を抑制し合うだけでなく、隣り合う第1コンデンサ50同士という同一の列の中で互いの傾動を抑制し合うことができる。この点、第2コンデンサ60についても同様である。したがって、第1コンデンサ50及び第2コンデンサ60の傾動をより確実に抑制できる。
【0048】
(3)隣り合う第1コンデンサ50と第2コンデンサ60とにおけるリード線の並設方向L、Rが互いに直交している。これにより、第1コンデンサ50の最も傾動し易い方向が、第2コンデンサ60の最も傾動し難い方向となり、第2コンデンサ60の最も傾動し易い方向が、第1コンデンサ50の最も傾動し難い方向となっている。こうして互いが最も傾動し易い方向の傾動を抑制し合うことで、様々な角度の振動に対し、第1コンデンサ50と第2コンデンサ60との傾動を抑制できる。
【0049】
(4)各コンデンサ40がハニカム状に密集して配置されていることで、一つのコンデンサ40の傾動をコンデンサ群全体で受け止めることができる。したがって、コンデンサ40の傾動を抑制する効果を、より高めることができる。
【0050】
(5)隣り合うコンデンサ40同士が接触していることで、各コンデンサ40の僅かな傾動すらも抑制できる。したがって、各コンデンサ40のリード線44、46が破断することを好適に抑制できる。
【0051】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
○ 上記実施形態では、半導体モジュール12及びコンデンサモジュール30を備えた半導体装置10に、上記コンデンサ40に関する構成を適用したが、このコンデンサ40に関する構成は、他の電子機器についても適用できる。すなわち、回路基板上に複数列のコンデンサ40を実装した電子機器であれば、どのような電子機器に対しても、上記コンデンサ40に関する構成を適用できる。
【0052】
○ 上記実施形態では、第1コンデンサ50(第1コンデンサ50A)に隣り合う2つの第2コンデンサ60(第2コンデンサ60A、60B)のうちの一方(第2コンデンサ60B)におけるリード線64、66の並設方向Rが、第1コンデンサ50におけるリード線54、56の並設方向Lと直交していた。これに対して、第1コンデンサ50に隣り合う2つの第2コンデンサ60の両方について、リード線64、66の並設方向Rが、第1コンデンサ50におけるリード線54、56の並設方向Lと直交していてもよい。例えば、全ての第2コンデンサ60におけるリード線64、66の並設方向Rを同じ方向にすれば、上記のような状態となる。
【0053】
○ 第1コンデンサ50におけるリード線54、56の並設方向Lと、その第1コンデンサ50に隣り合う第2コンデンサ60におけるリード線64、66の並設方向Rは、交差してさえいれば直交に限らない。例えば、並設方向Lと並設方向Rとが成す角度が30°や45°であってもよい。
【0054】
○ 複数の第1コンデンサ50において、リード線54、56の並設方向Lは、互い違いになっていなくてもよい。例えば、全ての第1コンデンサ50において、リード線54、56の並設方向Lが同一であってもよいし、複数の第1コンデンサ50毎(例えば2個毎)に、リード線54、56の並設方向Lが互い違いであってもよい。この点、第2コンデンサ60についても同様である。
【0055】
○ 第1コンデンサ50とそれに隣り合う第2コンデンサ60とは、必ずしも本体部52、62の外周面同士が接触していなくてもよい。例えば、コンデンサ40は、製造上の公差により、本体部42の外径にばらつきが生じることがある。この場合、コンデンサ40における本体部42の外周面同士が接触するように、コンデンサ40の実装位置が設定されていても、一部のコンデンサ40について本体部42の外周面が他のコンデンサ40における本体部42の外周面に接触しないこともある。また、コンデンサ40がコンデンサ回路基板31に対して傾いて実装された場合も、一部のコンデンサ40について本体部42の外周面が他のコンデンサ40における本体部42の外周面に接触しないことがある。このような場合であっても、第1コンデンサ50の仮想傾動範囲H内に、その第1コンデンサ50に隣り合う第2コンデンサ60が存在していれば、互いの傾動を抑制し合うことができる。
【0056】
○ 上記実施形態では、コンデンサ40をハニカム状に配置したが、コンデンサ40の配置態様はこれに限らない。例えば、各第1コンデンサ50と各第2コンデンサ60とが、コンデンサ回路基板31の長さ方向において同じ位置に設けられていてもよい。
【0057】
○ 複数の第1コンデンサ50は、一列に並んでいれば隣り合う第1コンデンサ50間の間隔を自由に変更してよいし、各第1コンデンサ50間の間隔も一定でなくてもよい。例えば隣り合う第1コンデンサ50が互いにそれぞれの仮想傾動範囲H外に位置していてもよい。この場合であっても、第1コンデンサ50の仮想傾動範囲H内に、第2コンデンサ60が存在していれば、隣り合う第2コンデンサ60によって第1コンデンサ50の傾動は抑制できる。この点、第2コンデンサ60についても同様である。
【0058】
○ 複数の第1コンデンサ50は、同一直線上で一列に並んでいなくてもよく、例えば湾曲しながら一列に並んでいてもよい。第2コンデンサ60についても同様である。
○ コンデンサ40の本体部42は円柱状に限らない。例えば、楕円柱状、多角形状など、他の柱状であってもよい。
【0059】
○ 複数のコンデンサ40の構成はすべて同一でなくてもよく、形状の異なる複数のコンデンサ40が混在していてもよい。つまり、複数のコンデンサ40間において本体部42の形状、外径、軸方向の寸法が異なっていてよい。
【符号の説明】
【0060】
10…半導体装置、31…コンデンサ回路基板、40…コンデンサ、42、52、62…本体部、44、46、54、56、64、66…リード線、50…第1コンデンサ、60…第2コンデンサ、H…仮想傾動範囲、L、R…並設方向。
図1
図2
図3
図4
図5