特許第6791029号(P6791029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791029
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】欠陥検出方法及び欠陥検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20201116BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20201116BHJP
   G01N 29/06 20060101ALI20201116BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   G01N29/24
   G01N21/88 Z
   G01N29/06
   G01B11/30 A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-115398(P2017-115398)
(22)【出願日】2017年6月12日
(65)【公開番号】特開2019-2714(P2019-2714A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2019年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠堀 貴秀
(72)【発明者】
【氏名】長田 侑也
(72)【発明者】
【氏名】田窪 健二
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−261159(JP,A)
【文献】 特開2004−101189(JP,A)
【文献】 特開平05−188046(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0165176(US,A1)
【文献】 米国特許第07088455(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
G01B 11/00−11/30
G01N 21/84−21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 被検査物体の検査領域の全体に第1弾性波を励起しつつ、該検査領域における該被検査物体の表面の全体にストロボ照明を行い、前記弾性波の位相と前記ストロボ照明のタイミングを制御することにより、該弾性波の互いに異なる少なくとも3つの位相において前記検査領域の各点の前後方向の変位を一括測定する変位一括測定工程と、
b) 前記少なくとも3つの位相における前記検査領域の各点の前後方向の変位に基いて、該検査領域の表面における欠陥の位置である表面位置を特定する欠陥位置特定工程と、
c) 前記欠陥位置特定工程により特定された表面位置を含む前記表面の限定領域内からプローブにより前記表面位置の内部に向けて第2弾性波を投入し、その応答波に基づいて該欠陥の深さ方向の位置及び/又は大きさを求める深さ方向情報取得工程と
を有することを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項2】
前記第2弾性波が前記第1弾性波よりも周波数が大きいことを特徴とする請求項1に記載の欠陥検出方法。
【請求項3】
前記第1弾性波の励起、前記第2弾性波の投入及び前記応答波の検出のうちの2つ又は3つを共通の振動子により行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の欠陥検出方法。
【請求項4】
前記第1弾性波の励起と前記第2弾性波の投入を共通の発振回路により行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の欠陥検出方法。
【請求項5】
前記少なくとも3つの位相における前記検査領域の各点の前後方向の変位をスペックル・シェアリング干渉法により一括測定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の欠陥検出方法。
【請求項6】
a) 被検査物体に第1弾性波を励起する第1弾性波励振部と、
b) 前記被検査物体の表面の検査領域にストロボ照明を行う照明部と、
c) 前記第1弾性波の位相と前記ストロボ照明のタイミングを制御することにより、該弾性波の互いに異なる少なくとも3つの位相において前記検査領域各点の前後方向の変位を一括測定する変位測定部と、
d) 前記被検査物体の表面から前記被検査物体の内部に向けて第2弾性波を投入する第2弾性波投入部と、
e) 前記第2弾性波の応答波を検出する応答波検出部と、
f) 前記応答波に基づいて該欠陥の深さ方向の位置及び/又は大きさを求める深さ方向情報取得部と
を備えることを特徴とする欠陥検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートや鉄鋼構造物等の物体の表面及び内部の欠陥を検出する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートや鉄鋼構造物等の物体の表面及び内部の欠陥を検出する技術の一つに、レーザ超音波法がある。これは、被検査物体中に弾性波を励起し、その状態で被検査物体にレーザ光を照射して反射光をレーザ干渉計で検出することによりその表面変位を測定するものである。弾性波による変位が欠陥の箇所で不連続に変化することから、変位の分布を測定することにより欠陥を検出することができるが、レーザ干渉計の検出用レーザ(プローブレーザ)が点状であるため、被検査物体の検査領域全体に亘ってスキャンする必要があり、時間がかかるという問題がある。
【0003】
これを改良した技術として、被検査物体中に弾性波を励起したうえで被検査物体の検査領域全体にレーザ光を照射して干渉パターンを生成し、この干渉パターンに基づいて検査領域全体の表面変位を一括して測定するという電子的スペックル干渉法を用いた方法が提案されている。特許文献1では、表面が粗面である物体を対象として、被検査物体の検査領域全体に、レーザビームをエキスパンダで拡大したレーザ光を照射する。これにより、レーザ光が粗面で散乱され、互いに干渉してスペックルと呼ばれる明暗のパターンが生成される。このスペックルパターンと、照射レーザビームから分岐させた参照レーザ光を干渉させ、CCDカメラ等で撮影する。この画像を、与えた弾性波により物体に変位が生じる前後で2枚撮影し、この2枚の画像から検査領域の変位の分布を算出する。これにより、検査領域全体の変位を一度で測定することができ、この変位に基づいて被検査物体の欠陥を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-101189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、スペックルパターンの測定が弾性波励起前後の2点でしかないため、弾性波の或る1つの位相状態しか見ていないことになる。弾性波の波長が検査領域の大きさに対して短い場合、検査領域内に波の振幅が大きい部分と小さい部分が存在することから、1つの位相状態のみの測定では測定領域内の場所によって欠陥検査能にムラが生じてしまう。そのため、特許文献1の欠陥検出装置は欠陥検出の精度が低い。
【0006】
また、被検査物体の欠陥は、その深さが深ければ直ちに補修が必要になるのに対して、比較的浅い場合には、直ちに補修するのではなく、定期的に検査を行って経過を見るという対応を取ることも許容される。そのためには、欠陥の深さを求める必要がある。特許文献1では、欠陥部の変位の大きさ、被検査物体の表面での欠陥の長さ及び欠陥の深さの間に、被検査物体の材質や形状により定まる関係があることから、予備実験や数値計算を用いてこの関係を求めておき、検査で得られた変位の大きさ及び欠陥の長さをこの関係に適用することにより、欠陥の深さを求める。しかしながら、この方法では、材質又は形状が異なる被検査物体毎に上記関係を求めておかなければならず、欠陥の深さを容易に求めることはできない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、広い検査領域から欠陥を迅速且つ精度良く検出することができると共に、欠陥の深さを容易に計測することができる欠陥検出方法及び欠陥検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る欠陥検出方法は、
a) 被検査物体の検査領域の全体に第1弾性波を励起しつつ、該検査領域における該被検査物体の表面の全体にストロボ照明を行い、前記弾性波の位相と前記ストロボ照明のタイミングを制御することにより、該弾性波の互いに異なる少なくとも3つの位相において前記検査領域の各点の前後方向の変位を一括測定する変位一括測定工程と、
b) 前記少なくとも3つの位相における前記検査領域の各点の前後方向の変位に基いて、該検査領域の表面における欠陥の位置である表面位置を特定する欠陥位置特定工程と、
c) 前記欠陥位置特定工程により特定された表面位置を含む前記表面の限定領域内からプローブにより前記表面位置の内部に向けて第2弾性波を投入し、その応答波に基づいて該欠陥の深さ方向の位置及び/又は大きさを求める深さ方向情報取得工程と
を有することを特徴とする。
【0009】
変位一括測定工程では、被検査物体に励起した弾性波の互いに異なる少なくとも3つの位相において、該被検査物体表面の検査領域内各点の前後方向(面外方向)の変位を一括測定する。この変位の一括測定に基づいて、欠陥位置特定工程において検査領域の全体に亘って欠陥の表面位置を特定することができる。その際、弾性波の(測定領域に対する)波長の大きさにかかわらず、測定領域のいずれの場所においても弾性波の全振動状態を再現することができ、測定領域内の場所による欠陥検査能にムラが生じない。そのため、欠陥位置特定工程において高い精度で欠陥位置を特定することができる。
【0010】
深さ方向情報取得工程では、欠陥位置特定工程により特定された表面位置を含む限定領域、すなわち前記検査領域内であって該検査領域よりも限定された領域内に当接したプローブから、前記表面位置の内部に向けて第2弾性波を投入し、その応答波を検出する。プローブを当接する範囲は前記表面位置を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前者の場合には第2弾性波は被検査物体の深さ方向に投入し、後者の場合には該表面位置(欠陥が存在すると考えられる位置)に向けて斜方に投入する。第2弾性波の応答波には、欠陥で反射された反射波、欠陥で回折された回折波、欠陥を透過した透過波等が含まれる。従って、検出した応答波に基づいて欠陥の深さ方向の位置及び/又は大きさを求めることができる。なお、プローブは限定領域内の1箇所のみに当接してもよいし、複数箇所に当接させてそれぞれの箇所から第2弾性波を被検査物体に投入してもよい。
【0011】
以上のように、本発明に係る欠陥検出方法によれば、変位一括測定工程及び欠陥位置特定工程における広い検査領域からの欠陥の位置の迅速な特定と、深さ方向情報取得工程における限定領域を対象とした測定による欠陥の深さ方向の情報の取得を共に実現することができる。
【0012】
被検査物体内に励起する弾性波のエネルギーは、周波数の2乗及び振幅の2乗に比例する。欠陥位置特定工程では、第1弾性波の振幅が大きい方が各点の前後方向の変位を測定し易いため、同じエネルギーであれば第1弾性波の周波数は小さい方が望ましい。一方、深さ方向情報取得工程では、第2弾性波の周波数が大きい方が、振動の加速度が大きくなることで応力も大きくなるため応答波を検出し易くなるうえに、被検査物体内での波長が短くなることで小さい欠陥からの応答波を検出し易くなるため望ましい。そのため、本発明に係る欠陥検出方法では、第2弾性波は第1弾性波よりも周波数が大きいことが望ましい。
【0013】
本発明に係る欠陥検出方法において、第1弾性波の励起、第2弾性波の投入及び応答波の検出のうちの2つ又は3つを共通の振動子により行うことができる。応答波の検出を第1弾性波の励起及び/又は第2弾性波の投入と共通の振動子で行う場合には、応答波の検出時の振動子は機械的振動を電気信号に変換することで振動を検出する検出子として機能する。あるいは、第1弾性波の励起と第2弾性波の投入を共通の発振回路により行うことができる。いずれの場合も、共通の装置で複数の機能を実現することができるため、欠陥検出のコストを抑えることができる。
【0014】
変位一括測定工程及び欠陥位置特定工程には、スペックル・シェアリング干渉法を適用することができる。スペックル・シェアリング干渉法は、検査領域全域にレーザ光を照射し、該検査領域の面内方向に位置をずらせた2点から反射してくる光を干渉させ、その干渉光の位相を求めることでその2点の相対的変位(前後方向のずれ)を検出する方法である。この干渉光の位相を求める方法として、2点からの光の位相を少なくとも3つの異なる状態に変化させる位相シフト法を用いることができる。具体的には、2点のうちの1点からの光を位相シフタに通し、該位相シフタによるシフト量を異なる少なくとも3種の値にする。あるいは、2点からの光を共に位相シフタに通して両者の位相を相対的に変化させてもよい。スペックル・シェアリング干渉法では、或る点の変位を測定するための2つの光はほぼ同じ光路を通過するため、測定光と参照光の通過環境が異なる場合に生じる環境外乱の影響を抑えることができる。
【0015】
本発明に係る欠陥検出装置は、
a) 被検査物体に第1弾性波を励起する第1弾性波励振部と、
b) 前記被検査物体の表面の検査領域にストロボ照明を行う照明部と、
c) 前記第1弾性波の位相と前記ストロボ照明のタイミングを制御することにより、該弾性波の互いに異なる少なくとも3つの位相において前記検査領域各点の前後方向の変位を一括測定する変位測定部と、
d) 前記被検査物体の表面から前記被検査物体の内部に向けて第2弾性波を投入する第2弾性波投入部と、
e) 前記第2弾性波の応答波を検出する応答波検出部と、
f) 前記応答波に基づいて該欠陥の深さ方向の位置及び/又は大きさを求める深さ方向情報取得部と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る欠陥検出方法及び欠陥検出装置により、広い検査領域から欠陥を迅速に検出することができ、且つ、欠陥の深さ方向の情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る欠陥検出装置の一実施形態を示す概略構成図。
図2】本実施形態の欠陥検出装置で用いる振動子兼検出子である斜角探触子を示す概略図。
図3】本発明に係る欠陥検出方法の一実施形態のうち変位一括測定工程及び欠陥位置特定工程を示すフローチャート。
図4】本実施形態の欠陥検査方法における変位の一括測定の原理を説明するためのグラフ。
図5】本実施形態の欠陥検出方法のうち深さ方向情報取得工程を示すフローチャート。
図6】本実施形態の欠陥検出装置における指向性を有する第2弾性波の進行方向と欠陥の位置の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図6を用いて、本発明に係る欠陥検出方法及び欠陥検出装置の実施形態を説明する。
【0019】
(1) 本実施形態の欠陥検出装置の構成
図1は、本実施形態の欠陥検出装置10の概略構成図である。この欠陥検出装置10は、信号送受信器11、振動子兼検出子12、パルスレーザ光源13、照明光レンズ14、スペックル・シェアリング干渉計15、制御部16、及び記憶部17を備える。
【0020】
信号送受信器11は、ケーブルで振動子兼検出子12に接続されており、交流電気信号を発生させて該振動子兼検出子12に送信すると共に、後述のように振動子兼検出子12で生成される交流電気信号を受信する。
【0021】
振動子兼検出子12は、被検査物体Sの表面に接触させて用いられ、該表面での接触の位置を移動させることが可能である。振動子兼検出子12は、圧電体から成る振動部を有しており、信号送受信器11から交流電気信号を受信して振動部が機械的振動に変換し(前記発振回路の機能に相当)、該機械的振動を被検査物体Sに付与する。これにより、該被検査物体Sに弾性波を励起する。本実施形態では、信号送受信器11及び振動子兼検出子12により、前記第1弾性波及び前記第2弾性波の双方を生成する。従って、信号送受信器11及び振動子兼検出子12は、前記第1弾性波励振部及び前記第2弾性波投入部として機能する。
【0022】
信号送受信器11が振動子兼検出子12に送信する交流電気信号の周波数は、可変であって、信号送受信器11が前記第1弾性波励振部の一部として機能するときには1MHz以下の値とし、信号送受信器11が前記第2弾性波投入部の一部として機能するときには1〜10MHzの範囲内の値とする。このように第2弾性波の方が第1弾性波よりも周波数が大きいことにより、被検査物体Sに励起される第1弾性波は、第2弾性波の周波数を用いる場合よりも振幅を大きくすることができ、検査領域各点の前後方向の変位を検出し易くなる。また、第2弾性波は、第1弾性波の周波数を用いる場合よりも振動の加速度が大きくなることで応力も大きくなるため応答波を検出し易くなるうえに、被検査物体内での波長が短くなることで小さい欠陥からの応答波を検出し易くなるため、より高精度に深さ方向の情報を取得することができる。
【0023】
一方、振動子兼検出子12は、被検査物体Sに機械的振動が生じると振動部が振動し、それによって交流電気信号を生成する。こうして生成される交流電気信号により、被検査物体Sの機械的振動を検出することができる。この機械的振動を検出する機能により、信号送受信器11及び振動子兼検出子12は、前記応答波検出部としても機能する。
【0024】
本実施形態では、振動子兼検出子12には図2に示す斜角探触子を用いる。この斜角探触子は、平板状の圧電体から成る振動部121と、被検査物体Sに接触させる接触面1221を有し且つ振動部121と接触する接触部122を備える。振動部121の板面と接触部122の接触面1221は非平行である。このような構成により、振動部121を振動させると、接触面1221から被検査物体Sに超音波が入射する。その際、周波数が高いほど超音波の指向性が高くなる。このように周波数が高く指向性の高い超音波は、振動部121の板面に垂直であって接触面1221の法線から傾斜した入射角で被検査物体Sに入射し、被検査物体Sの表面で屈折して被検査物体S内を伝播する。一方、超音波の周波数が低いほど、指向性が低く、振動子兼検出子12から等方に近い分布で被検査物体S内を伝播する。
【0025】
信号送受信器11はまた、図1に示すように、振動子兼検出子12と接続するケーブルとは別のケーブルでパルスレーザ光源13にも接続されており、前記交流電気信号が所定の位相となるタイミングで該パルスレーザ光源13にパルス状の電気信号(パルス信号)を送信する。前記所定の位相、及びそれにより定まる前記タイミングは、変位一括測定工程の間に後述のように変更される。
【0026】
パルスレーザ光源13は、信号送受信器11からパルス信号を受けたときに、パルスレーザ光を出力する光源である。照明光レンズ14はパルスレーザ光源13と被検査物体Sの間に配置されており、凹レンズから成る。照明光レンズ14は、パルスレーザ光源13からのパルスレーザ光を被検査物体Sの表面の検査領域の全体に拡げる役割を有する。これらパルスレーザ光源13及び照明光レンズ14は、前記タイミングにおいて被検査物体Sの表面の検査領域をストロボ照明するものであり、前記照明部に該当する。
【0027】
スペックル・シェアリング干渉計15は前記変位測定部に相当し、ビームスプリッタ151、第1反射鏡1521、第2反射鏡1522、位相シフタ153、集光レンズ154及びイメージセンサ155を有する。ビームスプリッタ151は、被検査物体Sの表面の検査領域で反射した照明光が入射する位置に配置されたハーフミラーである。第1反射鏡1521はビームスプリッタ151で反射される照明光の光路上に配置されており、第2反射鏡1522はビームスプリッタ151を透過する照明光の光路上に配置されている。位相シフタ153は、ビームスプリッタ151と第1反射鏡1521の間に配置されており、該位相シフタ153を通過する光の位相を変化(シフト)させるものである。イメージセンサ155は、ビームスプリッタ151で反射された後に第1反射鏡1521で反射されてビームスプリッタ151を透過する照明光、及びビームスプリッタ151を透過した後に第2反射鏡1522で反射されてビームスプリッタ151で反射される照明光の光路上に配置されている。集光レンズ154は、ビームスプリッタ151とイメージセンサ155の間に配置されている。
【0028】
第1反射鏡1521は、その反射面がビームスプリッタ151の反射面に対して45°の角度になるように配置されている。それに対して第2反射鏡1522は、その反射面がビームスプリッタ151の反射面に対して45°からわずかに傾斜した角度になるように配置されている。これら第1反射鏡1521及び第2反射鏡1522の配置により、イメージセンサ155では、被検査物体Sの表面上のある点A及び第1反射鏡1521で反射される照射光(図1中の一点鎖線)と、該表面上の点Aからわずかにずれた位置にある点B及び第2反射鏡1522で反射される照射光(同・破線)は、イメージセンサ155の同じ位置に入射して干渉する。イメージセンサ155は検出素子を多数有しており、被検査物体Sの表面上の多数の点(前記の点A)から第1反射鏡1521及び位相シフタ153を通してイメージセンサ155に入射する光を、それぞれ異なる検出素子で検出する。前記の点Bについても同様に、多数の点から第2反射鏡1522を通してイメージセンサ155に入射する光を、それぞれ異なる検出素子で検出する。
【0029】
制御部16は、信号送受信器11を制御すると共に、イメージセンサ155の各検出素子から得られる検出信号及び振動子兼検出子12から信号送受信器11を介して得られる交流電気信号に基づいてデータ処理を行う。記憶部17は、これら検出信号及び交流電気信号、並びに制御部16による処理前後のデータを記憶する。
【0030】
(2) 本実施形態の欠陥検出装置の動作及び本発明に係る欠陥検出方法の一実施形態
以下、図3図6を用いて、欠陥検出装置10の動作及び本発明に係る欠陥検出方法の一実施形態を説明する。図3及び図5は本実施形態の欠陥検出方法を示すフローチャートであり、そのうち図3は変位一括測定工程及び欠陥位置特定工程を示し、図5は深さ方向情報取得工程を示している。
【0031】
(2-1) 変位一括測定工程
本実施形態では、変位一括測定として、振動子兼検出子12の振動の位相が異なる3回以上の測定を行う。以下、振動の位相が異なる測定の回数を「mmax」と表記する。なお、信号送受信器11及び振動子兼検出子12は、変位一括測定工程ではそれぞれ信号送信器及び振動子としての機能のみを利用するため、以下の変位一括測定工程の説明中ではそれらをそれぞれ「信号送信器11」及び「振動子12」と表記する。「振動子12の振動の位相」は、信号送信器11から振動子12に送信される交流電気信号の位相であり、被検査物体Sに励振される弾性波の、振動子12が接触する点における位相に相当する。以下では、各回の表面変位の測定を、数値k(1〜mmaxの間のいずれかの自然数)を用いて「k回目の測定」と表す。また、以下の説明では、まずは最も単純な例としてmmax=3である場合について全てのステップを説明し、後述の変形例の説明においてmmaxがさらに大きな数である場合を説明する。
【0032】
まず、kの初期値を1に設定し(ステップS1)、振動子12を被検査物体Sに接触させた状態で、信号送信器11から振動子12に交流電気信号を送信することにより、振動子12から被検査物体Sへの振動の付与を開始する(ステップS2)。これにより、被検査物体Sに弾性波が励起される。その際、交流電気信号の周波数を1MHz以下という比較的低い値とすることにより、被検査物体S中の弾性波は、等方に近い分布で被検査物体S内を伝播する。
【0033】
次に、振動子12の振動の位相が、所定の初期値φ0(例えばφ0=0)を用いて[φ0+2π(k-1)/mmax]で表されるタイミング毎に、信号送信器11はパルスレーザ光源13にパルス信号を送信する。この段階ではk=1であるため、パルス信号が送信されるときの振動子12の振動の位相はφ0である。パルスレーザ光源13はパルス信号を受ける毎にパルスレーザ光である照明光を繰り返し出力する。この照明光は、照明光レンズ14により拡径され、被検査物体Sの表面の検査領域の全体に照射される(ステップS3)。
【0034】
照明光は被検査物体Sの表面で反射され、スペックル・シェアリング干渉計15のビームスプリッタ151に入射する。その照明光の一部はビームスプリッタ151で反射され、位相シフタ153を通過した後に第1反射鏡1521で反射され、再度位相シフタ153を通過した後に一部がビームスプリッタ151を通過し、イメージセンサ155に入射する。また、ビームスプリッタ151に入射した照明光の残りは、ビームスプリッタ151を透過して第2反射鏡1522で反射され、一部がビームスプリッタ151で反射されてイメージセンサ155に入射する。イメージセンサ155では、被検査物体Sの表面上の多数の点で反射される照射光をそれぞれ異なる検出素子で検出する。
【0035】
位相シフタ153は、パルスレーザ光である照明光が繰り返し出力されている間に、該位相シフタ153を通過する照射光(すなわち、点Aで反射された照射光)の位相を変化(シフト)させてゆく。これにより、点Aで反射された照射光と点Bで反射された照射光の位相差が変化してゆき、この変化の間に、イメージセンサ155の各検出素子はこれら2つの照射光が干渉した干渉光の強度を検出してゆく(ステップS4)。図4(a)に、振動子12の振動の位相がφ0であるときに得られる、位相シフタ153による位相のシフト量と、イメージセンサ155の検出素子で検出される干渉光の強度の一例をグラフで示す。なお、図4において、検出強度が位相シフト量に対して正弦波状に変化する関係が連続的な曲線で示されているが、実際に観測されるのは離散的なデータであり、観測されたデータから最小二乗法等により上記の連続的な正弦波形を再現する。そのためには、少なくとも3つの異なる位相シフト量での強度を検出する必要がある。
【0036】
続いて、ステップS5において、kの値がmmaxに達しているか否かを確認する。この段階では未だk=1であってmmax(この例では3)に達していないため、ステップS5での判定は「NO」となる。「NO」のときにはステップS6に進み、kの値を1だけ増加させて「2」とする(ステップS5での判定が「YES」の場合については後述)。
【0037】
次に、ステップS3に戻り、振動子12の振動の位相が[φ0+2π(k-1)/mmax]においてk=2、すなわち[φ0+2π/3]≡φ1であるタイミング毎に、信号送信器11はパルスレーザ光源13にパルス信号を送信し、パルスレーザ光源13は該パルス信号を受信したタイミングで被検査物体Sの表面にパルスレーザ光である照明光を繰り返し照射する。そして、位相シフタ153により点Aで反射された照射光の位相を少なくとも3つの値に変化(シフト)させつつ、イメージセンサ155の各検出素子は点Aで反射されて位相シフタ153等を通過した照射光と点Bで反射された照射光の干渉光の強度を検出してゆく(ステップS4)。
【0038】
図4(b)に、振動子12の振動の位相がφ1であるときに得られる、位相シフタ153による位相のシフト量と、イメージセンサ155の検出素子で検出される干渉光の強度をグラフで示す。この図4(b)と前出の図4(a)を対比すると、干渉光の強度のピーク位置が両者でδφ1-δφ0だけずれている。このずれは、点Aからの光路と点Bからの光路の位相差が、検出時の振動子12の振動の位相の相違により変化したことを示している。この光路の位相差の変化は、点Aと点Bの面外方向の相対的な変位が変化していることを示している。
【0039】
このようにk=2におけるステップS4の操作を実行した後、ステップS5では未だmmax(=3)に達していないため「NO」と判定し、ステップS6においてkの値を1だけ増加させて「3」とする。その後、ステップS3に戻り、交流電気信号の位相が[φ0+2π(k-1)/mmax]においてk=3、すなわち[φ0+4π/3]≡φ2であるタイミング毎に、パルスレーザ光源13が被検査物体Sの表面にパルスレーザ光である照明光を繰り返し照射し、イメージセンサ155の各検出素子は干渉光の強度を検出してゆく(ステップS4)。こうして、図4(c)に示すように、交流電気信号の位相がφ2であるときの位相シフタ153による位相のシフト量と干渉光の強度の関係が得られる。
【0040】
その後、ステップS5では、kの値が3であってmmaxに達しているため「YES」と判定し、ステップS7に移る。ステップS7では、信号送信器11から振動子12への交流電気信号の送信を停止し、それにより振動子12が振動を停止する。
【0041】
次に、イメージセンサの各検出素子につき、各振動の位相φ0、φ1、及びφ2においてそれぞれ、位相シフタ153による位相のシフト量を変化させた間に検出素子の出力が最大となる最大出力位相シフト量δφ0、δφ1、δφ2を求める(ステップS8。図4(a)〜(c)のグラフ参照。)。さらに、振動の位相が異なる最大出力位相シフト量の差(δφ1-δφ0)、(δφ2-δφ1)、及び(δφ0-δφ2)を求める(ステップS9)。これら3つの最大出力位相シフト量の差が、異なる3つの振動の位相、すなわち異なる3つの時間における点Aと点Bの面外方向の相対的な変位を表している。
【0042】
(2-2) 欠陥位置特定工程
上記3つの相対的な変位に基づいて、検査領域の各点における振動の振幅、振動の位相(各点における振動の位相であって、振動子12の振動の位相とは異なる)、及び振動の中心値(DC成分)、という3つのパラメータの値が得られる(ステップS10)。これら振動の振幅や位相は、検査領域内を移動していくに従って、欠陥が存在しないところでは緩やかに変化していくのに対して、欠陥が存在するところでは急激に変化する。このように検査領域内での振動の振幅や位相の値から、検査領域内の欠陥を検出することができる。このような欠陥の検出は、振動の振幅や位相の数値のみに基づいて行うことが可能であるが、本実施形態では、欠陥の位置を可視化できるように、以下に述べる方法を用いて行う。まず、ステップS10で得られた振動の振幅及び/又は振動の位相の値に基づき、画像を作成する(ステップS11)。例えば、測定点の振幅が大きいほど、その測定点に対応する画素の輝度を高くすることにより、振動の振幅の相違を画像の明暗の相違で表すことができる。このように作成した画像に対して、既知の画像処理技術を用いて処理を行うことにより、検査領域中の欠陥Dの表面位置を検出する(ステップS12)。例えば、画像上の位置の移動に伴って、画素の明暗が急変する箇所を欠陥として検出することができる。画素の明暗が急変する箇所は、操作者が画像を見て判定してもよいし、制御部16は画素の明暗の数値に基づいて判定するようにしてもよい。
【0043】
(2-3) 深さ方向情報取得工程
深さ方向情報取得工程ではまず、被検査物体Sの表面であって欠陥位置特定工程で特定された、欠陥の位置である表面位置(複数の場合にはそのうちの1つ)を含むように限定された限定領域21内に振動子兼検出子12を接触させる(ステップS13。同ステップ以後の各ステップは図5参照。)。本実施形態では、斜角探触子である振動子兼検出子12を用いて、限定領域21内の前記表面位置からずれた位置から該表面位置に向けて斜方に第2弾性波を投入する。限定領域21は、前記表面位置に存在する欠陥による応答波が生じる可能性がある位置から第2弾性波を投入可能な領域とする。本実施形態では、第2弾性波を斜方に投入することから、被検査物体Sの表面の法線と被検査物体S内での弾性波の進行方向との成す角度をθと、欠陥Dの深さの想定され得る最大値dmax(典型的には、被検査物体Sが板状であればその厚み)より、前記表面位置を中心とする半径dmax・tanθの円形の領域内から第2弾性波を投入すれば、第2弾性波が欠陥Dに反射されること等によって応答波が生じ得る(図6参照)。従って、この円形の領域を限定領域21と規定することができる。なお、振動子兼検出子12を接触させた表面位置は、後述のステップS17で説明する理由により、記録しておく必要はない。振動子兼検出子12を接触させる位置は、操作者が前記画像を見ながら、あるいは制御部16の制御によって、振動子兼検出子12を移動させることにより定めることができる。
【0044】
次に、ステップS14において、振動子兼検出子12から、パルス状の第2弾性波を被検査物体Sの内部に向けて投入する。第2弾性波の周波数は1〜10MHzの範囲内の値とし、第1弾性波の周波数よりも高くする。このように高周波数の第2弾性波を用いることにより、第2弾性波の指向性を第1弾性波よりも高くする。第2弾性波は、被検査物体Sの表面において、被検査物体Sの材料で定まる屈折角(前述の角度θと同じ)で屈折し、被検査物体S内を伝播する。被検査物体Sの材料は通常は既知であり、振動子兼検出子12から被検査物体Sへの第2弾性波の入射角も既知であるため、屈折角θも既知である。また、被検査物体S内での第2弾性波の伝播速度vも被検査物体Sの材料に依存し、該伝播速度vの値は既知である。こうして被検査物体S内を伝播する第2弾性波のうち一部は欠陥で反射され、応答波として振動子兼検出子12に入射し、検出される。制御部16は、パルス状の第2弾性波の投入から応答波の検出までの時間、及び応答波の検出強度を記憶部17に記憶させる。
【0045】
次に、ステップS14を所定回数行っているか否かを判定し(ステップS15)、所定回数に達している(YESの)場合にはステップS17に移る。一方、所定回数に達していない(ステップS15でNoの)場合には、欠陥の表面位置の近傍で振動子兼検出子12を接触させる位置を変更し(ステップS16)、ステップS14の操作を行い、その後ステップS15の判定を行う。
【0046】
ステップS17では、制御部16は、記憶部17に記憶されている、各表面位置における応答波の検出強度を取得する。応答波の検出強度は、第2弾性波が欠陥Dが存在していないところを通過している場合(図6(a))には小さく、欠陥Dが存在しているところを通過している場合(図6(b))には大きくなる。特に、第2弾性波が欠陥Dの先端部付近を通過している場合(図6(c))には、端部エコーと呼ばれる反射波により、欠陥Dの他の部分を通過している場合よりも応答波の検出強度が大きくなる。そこで、制御部16は、記憶部17から取得した各表面位置における応答波の検出強度のうち最大となっているものを選択し、その場合における第2弾性波の投入から応答波の検出までの時間tと、屈折角θ及び伝播速度vに基づいて、欠陥Dの深さdが式(1)
d=(t/2)・v cosθ …(1)
により求められる。この方法によれば、深さdを求めるためには、振動子兼検出子12の表面位置のデータは不要である。
【0047】
なお、ここでは振動子兼検出子12の表面位置のデータを用いることなく欠陥Dの深さdを求めているが、振動子兼検出子12の表面位置を求めておき、端部エコーによる反射波を検出したときの被検査物体Sの表面における振動子兼検出子12と欠陥Dの距離と屈折角θに基づいて欠陥Dの深さdを求めることも可能である。
【0048】
ステップS13〜S17の操作を1個の欠陥に対して行った後、別の欠陥に対しても同様の操作を行う。そして、全ての欠陥に対する操作が完了したとき(ステップS18でYES)、一連の欠陥検出の操作が終了する。
【0049】
(2-4) 変位一括測定工程の変形例
上記実施形態では、mmax=3としたが、mmaxを[2n+1](nは2以上の自然数)で表される数より大きく選ぶことにより、被検査物体Sに励起された弾性波のn次の成分(第n高調波成分)までを検出することができるようになる。すなわち、点Aと点Bの面外方向の相対的な変位が(2n+1)組以上得られることから、基本波の振幅、基本波の位相、第2高調波の振幅、第2高調波の位相、…第n高調波の振幅、第n高調波の位相、及び弾性波のDC成分、という(2n+1)個のパラメータの値が得られる。これにより、欠陥Dの表面位置をより精度良く特定することができる。
【0050】
上記実施形態では、第1弾性波の励起源として、深さ方向情報取得工程で行う第2弾性波の生成及び応答波の検出の機能を兼ね備えた信号送受信器11及び振動子兼検出子12を用いたが、それら信号送受信器11及び/又は振動子兼検出子12の代わりに、第1弾性波の励起のみを行う信号送信器及び/又は振動子と、第2弾性波の生成及び応答波の検出を行う信号送受信器及び/又は振動子兼検出子を用いてもよい。あるいは、第1弾性波の励起のみを行う信号送信器及び/又は振動子と、第2弾性波の生成のみを行う信号送信器及び/又は振動子と、応答波の検出のみを行う信号受信器及び/又は検出子を用いてもよい。これらの場合、第1弾性波用の信号送信器及び第2弾性波用の信号送受信器、又は第1弾性波用の信号送信器、第2弾性波用の信号送信器及び応答波用の信号受信器には、周波数が固定されているものを用いることができる。また、第1弾性波の励起及び第2弾性波の生成を行う信号送信器及び/又は振動子と、応答波の検出のみを行う信号受信器及び/又は検出子を用いることや、第1弾性波の励起及び応答波の検出を行う信号送受信器及び/又は振動子兼検出子と、第2弾性波の生成のみを行う信号送信器及び/又は振動子を用いることも可能である。
【0051】
上記実施形態では振動子(兼検出子)12を被検査物体Sに接触させた状態で使用したが、例えば強力なスピーカのように非接触であっても被検査物体Sに振動を伝導させることができる場合には、振動子を被検査物体Sに接触させなくてもよい。
【0052】
さらに、弾性波の互いに異なる少なくとも3つの位相において検査領域の各点の前後方向の変位を一括測定する方法として、本実施形態で述べたスペックル・シェアリング干渉法の他に、ホログラフィック干渉法、格子投影法、サンプリングモアレ法、DIC(Differential Interference Contrast:微分干渉コントラスト)法等を用いることもできる。
【0053】
(2-5) 深さ方向情報取得工程の変形例
上記実施形態では振動子兼検出子12に斜角探触子を用いたが、その代わりに垂直探触子を用いてもよい。その場合には、垂直探触子は欠陥が存在する表面位置に接触させ、第2弾性波を被検査物体Sの表面に垂直な方向に投入し、欠陥で反射した応答波を振動子兼検出子12で検出する。振動子兼検出子12を前記表面位置から移動させる必要はない。
【0054】
上記実施形態では応答波として欠陥で反射した反射波を検出したが、透過波や回折波等を検出してもよい。透過波や回折波等の応答波を検出する場合には、それらの応答波が第2弾性波の発信源のところで検出されないため、振動子兼検出子12の代わりに、振動子とは別の検出子を、振動子とは異なる位置に配置する。なお、応答波の振動として検出される電気信号は交流には限定されない。
【0055】
上記実施形態では欠陥の1つの端における端部エコーを検出したが、欠陥が被検査物体Sの表面に現れることなくその内部に形成されている場合には、欠陥の2つの端からそれぞれ端部エコーを検出する場合がある。その場合には、それら2つの端部エコーからそれぞれ欠陥の端の深さを求めることにより、被検査物体S内に埋もれた欠陥の深さ方向の位置を求めることができる。
【符号の説明】
【0056】
10…欠陥検出装置
11…信号送受信器(信号送信器)
12…振動子兼検出子(振動子、プローブ)
121…振動部
122…接触部
1221…接触面
13…パルスレーザ光源
14…照明光レンズ
15…スペックル・シェアリング干渉計
151…ビームスプリッタ
1521…第1反射鏡
1522…第2反射鏡
153…位相シフタ
154…集光レンズ
155…イメージセンサ
16…制御部
17…記憶部
21…限定領域
D…欠陥
S…被検査物体
図1
図2
図3
図4
図5
図6