(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
図1を参照しながら、本実施形態に係る車両用測定装置10について説明する。車両用測定装置10は、車両(全体は不図示)に設けられる装置であって、当該車両の車室内の空間を漂う微小粒子(PM2.5)の濃度を測定する装置として構成されている。車両用測定装置10は、車両に搭載された空調装置20を通過する空気における微小粒子濃度を測定する。車両用測定装置10の構成の説明に先立ち、先ず空調装置20の構成について説明する。
【0012】
空調装置20は、車室内の空調を行うための装置である。空調装置20は、空調ケース200と、ブロワ250と、粒子フィルタ240と、熱交換部260と、を備えている。
【0013】
空調ケース200は、空調対象である空気を車室内に案内するための管状の部材である。空調ケース200の内側では、
図1における左側から右側に向かう方向に空気が流れる。空調ケース200には、内気導入部210と、外気導入部220と、フェイスダクト270と、フットダクト280と、が形成されている。
【0014】
内気導入部210は、車室内の空気(内気)を空調ケース200の内側に取り入れるための導入口である。外気導入部220は、車室外の空気(外気)を空調ケース200の内側に取り入れるための導入口である。内気導入部210及び外気導入部220は、空調ケース200のうち上流側部分において並ぶように形成されている。
【0015】
内気導入部210と外気導入部220との間には内外気切り換えドア230が設けられている。内外気切り換えドア230は、内気導入部210のみが開かれている状態と、外気導入部220のみが開かれている状態と、を切り換えるためのドアである。内気導入部210のみが開かれている状態は、車室内から取り入れられた内気が空調されて車室内に吹き出される状態、すなわち内気循環状態である。外気導入部220のみが開かれている状態は、車室外から取り入れられた外気が空調されて車室内に吹き出される状態、すなわち外気循環状態である。内外気切り換えドア230の動作は、後述の制御部130によって制御される。
【0016】
フェイスダクト270及びフットダクト280は、いずれも、空調された空気を車室内に導くための排出口である。フェイスダクト270及びフットダクト280は、空調ケース200のうち下流側部分に形成されている。フェイスダクト270は、乗員の顔に向けて空調風を吹き出すためのフェイス吹き出し口(不図示)に繋がっている。フットダクト280は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すためのフット吹き出し口(不図示)に繋がっている。
【0017】
フェイスダクト270の入口部分にはフェイスドア271が設けられている。フェイスドア271が
図1のように開状態となっているときには、フェイスダクト270からフェイス吹き出し口に向けて空調風が供給される。同様に、フットダクト280の入口部分にはフットドア281が設けられている。フットドア281が開状態となっているときには、フットダクト280からフット吹き出し口に向けて空調風が供給される。フェイスドア271及びフットドア281のそれぞれの動作は制御部130によって制御される。
【0018】
尚、例えばフェイスダクト270の下流側が二つに分岐しており、その一方が窓の近傍に形成されたデフロスタ吹き出し口(不図示)に繋がっているような態様であってもよい。
【0019】
ブロワ250は、空調ケース200の内側において下流側に空気を送り出すための送風機である。ブロワ250の回転数、すなわち空調装置20から吹き出される空調風の風量は、制御部130によって制御される。
【0020】
粒子フィルタ240は、空調ケース200を通過する空気から、当該空気に含まれる微小粒子を除去するためのフィルタである。粒子フィルタ240は、内気導入部210や外気導入部220よりも下流側であり、且つブロワ250よりも上流側となる位置に設けられている。
【0021】
熱交換部260は、冷媒などとの熱交換によって空調を行う部分である。熱交換部260は、ブロワ250よりも下流側であり、且つフェイスダクト270やフットダクト280よりも上流側となる位置に設けられている。熱交換部260には、空気の除湿及び冷却を行うためのエバポレータや、空気の加熱を行うためのヒータコア、及び、これらを通過する空気の流量を調整するためのエアミックスドア等(いずれも不図示)が設けられている。尚、このような熱交換部260の構成としては公知のものを採用し得るので、その具体的な図示や説明は省略する。
【0022】
引き続き
図1を参照しながら、車両用測定装置10の構成について説明する。車両用測定装置10は、車両内粒子センサ110と、報知部120と、制御部130と、車両外粒子センサ140と、動作指示スイッチ150と、を備えている。
【0023】
車両内粒子センサ110は、空気中における粒子濃度を測定するためのセンサである。
図1に示されるように、空調ケース200のうち粒子フィルタ240よりも下流側であり、且つブロワ250よりも上流側となる位置には、導入管290の一端が接続されている。導入管290の他端は車室内に開放されている。車両内粒子センサ110は、この導入管290の途中となる位置に設けられている。空調ケース200の内側を空気が流れているときには、空調ケース200側で生じる負圧により、導入管290においても空気の流れが生じる。つまり、車室内から導入管290を通って空調ケース200内に至るような空気の流れが生じる。車両内粒子センサ110は、当該空気に含まれる微小粒子の濃度を測定し、当該濃度を電気信号により制御部130に送信する。
【0024】
図示は省略するが、車両内粒子センサ110は発光部と受光部とを有しており、両者の間を空気が流れるように構成されている。当該空気の粒子濃度が高くなると、それに伴って受光部が受光する光量が小さくなる。車両内粒子センサ110は、受光部が受光する光量に基づいて粒子濃度を測定する。
【0025】
車両内粒子センサ110による粒子濃度の測定が正確に行われるためには、導入管290における空気の流れが生じている必要がある。このため、本実施形態における車両内粒子センサ110による粒子濃度の測定は、空調装置20による空調が行われている状況においてのみ行われる。
【0026】
車両外粒子センサ140は、車両外に配置され、車両外の空気中における微小粒子濃度を測定するためのセンサである。車両外粒子センサ140の測定原理は車両内粒子センサ110と同様であるので説明省略する。車両外粒子センサ140は、車両外に配置されているため、ブロワ250の駆動有無に関わらず微粒子濃度を測定することが可能になっている。
【0027】
報知部120は、車両内粒子センサ110や車両外粒子センサ140による測定結果を乗員に報知する部分である。本実施形態では、報知部120は液晶表示パネルとして構成されている。つまり、本実施形態における乗員への報知は視覚的な表示によって行われる。このような態様に換えて、報知部120による乗員への報知が音声等によって行われるような態様であってもよい。報知部120の動作は制御部130によって制御される。
【0028】
動作指示スイッチ150は、微粒子濃度測定の指示を制御部130に入力するためのスイッチである。制御部130は、この指示入力におうじて微小粒子濃度の測定を開始する。
【0029】
制御部130は、車両用測定装置10の全体の動作を制御するための装置である。制御部130は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータシステムとして構成されている。既に述べたように、制御部130は、内外気切り換えドア230やブロワ250等の動作を制御する。つまり、本実施形態における制御部130は、空調装置20の動作をも制御する装置として構成されている。
【0030】
このような態様に換えて、空調装置20の動作を制御するためのECUが、制御部130とは別に設けられているような態様であってもよい。この場合、制御部130が当該ECUと通信を行うことにより、空調装置20の動作の一部を間接的に制御することとすればよい。
【0031】
制御部130は、粒子除去制御を行うことが可能となっている。粒子除去制御とは、粒子フィルタ240による微小粒子の除去を効率的に行うための制御である。粒子除去制御において、制御部130は、内外気切り換えドア230によって内気導入部210が開放された状態、すなわち内気循環状態とした上で、ブロワ250の回転数を所定値以上に増加させる。これにより、外部から車室内への微小粒子の侵入を防止しながら、粒子フィルタ240による微小粒子の除去を効率的に行うことができる。このような粒子除去制御は、車両内粒子センサ110による粒子濃度の測定に影響を及ぼす制御、ということができる。粒子除去制御は自動的に開始されてもよく、乗員がスイッチ等に対して行う操作に基づいて開始されてもよい。
【0032】
制御部130は、ネットワーク30を介して微小粒子情報サーバ35から情報提供を受けることができるように構成されている。微小粒子情報サーバ35は、車両の現在位置周辺の微小粒子濃度を車両外における微小粒子濃度を示す外部濃度情報として制御部130に送信する。
【0033】
制御部130は、携帯端末160を介して情報提供を受けることができるように構成されている。携帯端末160は、車両の現在位置周辺の微小粒子濃度を取得し、車両外における微小粒子濃度を示す外部濃度情報として制御部130に送信する。携帯端末160には、微小粒子濃度を検出可能なセンサが設けられていてもよい。携帯端末160は、このセンサにより検出した微小粒子濃度を制御部130に送信する。
【0034】
制御部130は、機能的な構成要素として、情報取得部131と、情報出力部132と、を備えている。情報取得部131は、車両外における微小粒子濃度を示す外部濃度情報を取得する部分である。制御部130は、本開示の車両用報知装置に相当する。
【0035】
情報出力部132は、乗員に車両内における微小粒子濃度を報知する報知部120に対して、微小粒子濃度を示す報知情報を出力する部分である。情報出力部132は、起動時において、車両内の微小粒子濃度の初期値として表示させるように、外部濃度情報に基づいて報知情報を生成して出力する。
【0036】
このように、情報出力部132は、外部濃度情報に基づいた報知情報を生成し、車内の微小粒子濃度の初期値として表示させるように出力する。従って、起動時のように車両内における微小粒子濃度の検出が安定しなかったり、できなかったりといった場合でも車両内の微小粒子濃度を表示させることができる。
【0037】
また本実施形態において、起動時とは、動作指示スイッチ150の操作により微小粒子濃度を取得するモードが起動され、車両内の空調を行うブロワ250が停止されている場合である。微小粒子濃度を取得するモードが起動されていても、車両内の空調を行うブロワ250が停止されていると、車両内に空気を取り込むことができないため、車両内に設けられた微小粒子濃度取得手段である車両内粒子センサ110を機能させることができない。そこで、微小粒子濃度を取得するモードが起動され、車両内の空調を行うブロワ250が停止されている場合に、車両内の微小粒子濃度の初期値として表示させるように、外部濃度情報に基づいて報知情報を生成して出力するものとしている。
【0038】
また本実施形態において、情報出力部132は、乗員が乗車する際のドア開閉時間及び/又は開閉枚数に応じて、外部濃度情報を補正して報知情報を生成する。乗員が乗車するにあたっては、ドアを開閉することになる。ドアの開閉に伴って、車両外の空気が車両内に取り込まれるので、ドアの開閉状況によって車両外の空気における微小粒子濃度と車両内の空気における微小粒子濃度との関連性が変化する。そこで、乗員が乗車する際のドア開閉時間及び/又は開閉枚数に応じて、外部濃度情報を補正して報知情報を生成することで、より的確に車両内の微小粒子濃度の初期値を表示させることができる。
【0039】
また本実施形態において、情報出力部132は、乗員が乗車する際のドアの開閉時間が所定時間よりも長い場合の方が、乗員が乗車する際のドアの開閉時間が所定時間よりも短い場合よりも外部濃度情報に近い値を初期値として報知情報を生成する。乗員が乗車する際のドアの開閉時間が長ければ、ドアの開閉に伴って車両外の空気が車両内に取り込まれる量が増える。そこで、ドアの開閉時間が所定時間よりも長い場合に外部濃度情報に近い値を初期値として報知情報を生成することで、より的確に車両内の微小粒子濃度の初期値を表示させることができる。
【0040】
また本実施形態において、情報出力部132は、乗員が乗車する際のドア開閉枚数が所定枚数よりも多い場合のほうが、乗員が乗車する際のドア開閉枚数が所定枚数よりも少ない場合よりも外部濃度情報に近い値を初期値として報知情報を生成する。乗員が乗車する際のドアの開閉枚数が多ければ、ドアの開閉に伴って車両外の空気が車両内に取り込まれる量が増える。そこで、ドアの開閉枚数が所定枚数よりも多い場合に外部濃度情報に近い値を初期値として報知情報を生成することで、より的確に車両内の微小粒子濃度の初期値を表示させることができる。
【0041】
また本実施形態において、情報出力部132が上記判断に用いる所定枚数は1枚である。 乗員が乗車する際のドアの開閉枚数が複数であると、車両外の空気が車両内に取り込まれやすくなる。そこで、ドアの開閉枚数が1枚よりも多い場合に外部濃度情報に近い値を初期値として報知情報を生成することで、より的確に車両内の微小粒子濃度の初期値を表示させることができる。
【0042】
また本実施形態において、情報取得部131は、ネットワーク30といった通信手段を介した外部濃度情報の取得、又は車両外に搭載されている車両外粒子センサ140から外部濃度情報の取得を行うことができる。通信手段を介した外部濃度情報の取得としては、携帯端末160を経由してもよい。
【0043】
続いて、制御部130の動作について、
図2を参照しながら説明する。ステップS101では、乗員が乗車した後であって微小粒子濃度を取得するモードが起動されているか否かを判断する。乗員が乗車した後であって微小粒子濃度を取得するモードが起動されていないと判断するとステップS111の処理に進み、乗員が乗車した後であって微小粒子濃度を取得するモードが起動されていると判断するとステップS102の処理に進む。
【0044】
ステップS102では、ブロワ250がOFFになっているか否かを判断する。ブロワ250がOFFになっていればステップS103の処理に進み、ブロワ250がOFFになっていなければステップS111の処理に進む。
【0045】
ステップS103では、ドア開閉時間が所定時間である閾値時間よりも短いか否かを判断する。ドア開閉時間が閾値時間よりも短ければステップS104の処理に進み、ドア開閉時間が閾値時間よりも短くなければステップS109の処理に進む。
【0046】
ステップS104では、ドアの開閉枚数が所定枚数である1枚であるか否かを判断する。ドアの開閉枚数が1枚であればステップS105の処理に進み、ドアの開閉枚数が1枚でない場合、すなわちドアの開閉枚数が複数枚であればステップS107の処理に進む。
【0047】
ステップS105では、車外ほこり情報である外部濃度情報を取得する。ステップS105に続くステップS106では、表示パターン1となるように報知情報を生成する。具体的には、外部濃度情報に最小係数(例えば、0.5)を乗算して報知情報を生成する。生成された報知情報は報知部120に出力される。
【0048】
ステップS107では、車外ほこり情報である外部濃度情報を取得する。ステップS107に続くステップS108では、表示パターン2となるように報知情報を生成する。具体的には、外部濃度情報に中程度係数(例えば、0.8)を乗算して報知情報を生成する。生成された報知情報は報知部120に出力される。
【0049】
ステップS109では、車外ほこり情報である外部濃度情報を取得する。ステップS109に続くステップS110では、表示パターン3となるように報知情報を生成する。具体的には、外部濃度情報に最大係数(例えば、1)を乗算して報知情報を生成する。生成された報知情報は報知部120に出力される。
【0050】
ステップS111では、通常表示となるように、車両内粒子センサ110から出力される検出データに基づいて報知情報が生成され報知部120に出力される。尚、乗員が乗車していない場合は表示されず、それ以外の場合は前回値を表示し続ける。また、プレ空調で予め車室内に不快な風を出さないようにし、乗車直後にブロワ250をONして車室内のほこり濃度を検出してもよい。また、車両内粒子センサ110にファンを搭載し、車両内粒子センサ110を通風させることで ほこり濃度を検出してもよい。
【0051】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。