(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記低圧側冷媒熱媒体熱交換器および前記空気冷却用熱交換器のそれぞれに対して、前記冷媒が流通する状態と流通しない状態とを切り替える冷媒流れ切替部(13、16、18、19)を備える請求項1に記載の空調装置。
前記高温切替部が、前記高圧側冷媒熱媒体熱交換器と前記空気加熱用熱交換器との間で前記高温熱媒体を循環させるとともに、前記冷媒流れ切替部が、前記空気冷却用熱交換器に前記冷媒を流通させる除湿暖房モードと、前記冷房モードと前記暖房モードとを実行し、
前記除湿暖房モードを実行している場合において、前記空気加熱用熱交換器で前記空気を加熱する能力が不足している場合、前記冷媒流れ切替部は、前記低圧側冷媒熱媒体熱交換器に前記冷媒を流通させる請求項2に記載の空調装置。
前記低圧側冷媒熱媒体熱交換器と前記発熱機器との間で前記低温熱媒体が循環する状態と、前記低圧側冷媒熱媒体熱交換器と前記低温熱媒体外気熱交換器との間で前記低温熱媒体が循環する状態とを切り替える熱媒体流れ切替部(38、39)を備える請求項1ないし4のいずれか1つに記載の空調装置。
前記低圧側冷媒熱媒体熱交換器に前記冷媒が流通する場合、前記熱媒体流れ切替部は、前記低圧側冷媒熱媒体熱交換器と、前記発熱機器および前記低温熱媒体外気熱交換器のうち少なくとも1つとの間で前記低温熱媒体を循環させる請求項5に記載の空調装置。
前記低温熱媒体外気熱交換器と前記発熱機器との間で前記低温熱媒体が循環する状態に切り替える熱媒体流れ切替部(38、39)を備える請求項1ないし4のいずれか1つに記載の空調装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0014】
(第1実施形態)
以下、実施形態について図に基づいて説明する。
図1〜2に示す車両用空調装置1は、車室内空間(換言すれば、空調対象空間)を適切な温度に調整する空調装置である。車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10を有している。本実施形態では、冷凍サイクル装置10を、エンジン(換言すれば内燃機関)および走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド自動車に搭載されている。
【0015】
本実施形態のハイブリッド自動車は、車両停車時に外部電源(換言すれば商用電源)から供給された電力を、車両に搭載された電池(換言すれば車載バッテリ)に充電可能なプラグインハイブリッド自動車として構成されている。電池としては、例えばリチウムイオン電池を用いることができる。
【0016】
エンジンから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機を作動させるためにも用いられる。そして、発電機にて発電された電力および外部電源から供給された電力を電池に蓄わえることができ、電池に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、冷凍サイクル装置10を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給される。
【0017】
冷凍サイクル装置10は、圧縮機11、凝縮器12、第1膨張弁13、空気冷却用蒸発器14、定圧弁15、第2膨張弁16および冷却水冷却用蒸発器17を備える蒸気圧縮式冷凍機である。本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒としてフロン系冷媒を用いており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。
【0018】
冷凍サイクル装置10は、直列冷媒流路10a、第1並列冷媒流路10bおよび第2並列冷媒流路10cを備える。直列冷媒流路10a、第1並列冷媒流路10bおよび第2並列冷媒流路10cは、冷媒が流れる流路である。
【0019】
直列冷媒流路10a、第1並列冷媒流路10bおよび第2並列冷媒流路10cによって、冷媒が循環する冷媒循環回路が形成されている。第1並列冷媒流路10bおよび第2並列冷媒流路10cは、冷媒が互いに並列に流れるように直列冷媒流路10aに接続されている。
【0020】
直列冷媒流路10aには、圧縮機11および凝縮器12が、冷媒の流れにおいてこの順番で互いに直列に配置されている。
【0021】
第1並列冷媒流路10bには、第1膨張弁13、空気冷却用蒸発器14および定圧弁15が、冷媒の流れにおいてこの順番で互いに直列に配置されている。
【0022】
第2並列冷媒流路10cには、第2膨張弁16および冷却水冷却用蒸発器17が、冷媒の流れにおいてこの順番で互いに直列に配置されている。
【0023】
直列冷媒流路10aおよび第1並列冷媒流路10bによって、冷媒が圧縮機11、凝縮器12、第1膨張弁13、空気冷却用蒸発器14、定圧弁15、圧縮機11の順に循環する冷媒循環回路が形成される。
【0024】
直列冷媒流路10aおよび第2並列冷媒流路10cによって、冷媒が圧縮機11、凝縮器12、第2膨張弁16、冷却水冷却用蒸発器17の順に循環する冷媒循環回路が形成される。
【0025】
圧縮機11は、電池から供給される電力によって駆動される電動圧縮機であり、冷凍サイクル装置10の冷媒を吸入して圧縮して吐出する。圧縮機11は、ベルトによって駆動される可変容量圧縮機であってもよい。
【0026】
凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧側冷媒と高温冷却水回路20の冷却水とを熱交換させることによって高圧側冷媒を凝縮させる高圧側冷媒熱媒体熱交換器である。
【0027】
高温冷却水回路20の冷却水は、熱媒体としての流体である。高温冷却水回路20の冷却水は高温熱媒体である。本実施形態では、高温冷却水回路20の冷却水として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、または不凍液体が用いられている。高温冷却水回路20は、高温熱媒体が循環する高温熱媒体回路である。
【0028】
第1膨張弁13は、凝縮器12から流出した液相冷媒を減圧膨張させる第1減圧部である。第1膨張弁13は、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。弁体は、冷媒通路の通路開度(換言すれば絞り開度)を変更可能に構成されている。電動アクチュエータは、弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータを有している。
【0029】
第1膨張弁13は、冷媒通路を全閉する全閉機能付きの可変絞り機構で構成されている。つまり、第1膨張弁13は、冷媒通路を全閉にすることで冷媒の流れを遮断することができる。第1膨張弁13の作動は、
図3に示す制御装置60から出力される制御信号によって制御される。
【0030】
空気冷却用蒸発器14は、第1膨張弁13から流出した冷媒と車室内へ送風される空気とを熱交換させて車室内へ送風される空気を冷却する冷媒空気熱交換器である。空気冷却用蒸発器14では、冷媒が車室内へ送風される空気から吸熱する。
【0031】
定圧弁15は、空気冷却用蒸発器14の出口側における冷媒の圧力を所定値に維持する圧力調整部(換言すれば圧力調整用減圧部)である。
【0032】
定圧弁15は、機械式の可変絞り機構で構成されている。具体的には、定圧弁15は、空気冷却用蒸発器14の出口側における冷媒の圧力が所定値を下回ると冷媒通路の通路面積(すなわち絞り開度)を減少させ、空気冷却用蒸発器14の出口側における冷媒の圧力が所定値を超えると冷媒通路の通路面積(すなわち絞り開度)を増加させる。
【0033】
サイクルを循環する循環冷媒流量の変動が少ない場合等には、定圧弁15に代えて、オリフィス、キャピラリチューブ等からなる固定絞りを採用してもよい。
【0034】
第2膨張弁16は、凝縮器12から流出した液相冷媒を減圧膨張させる第2減圧部である。第2膨張弁16は、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。弁体は、冷媒通路の通路開度(換言すれば絞り開度)を変更可能に構成されている。電動アクチュエータは、弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータを有している。
【0035】
第2膨張弁16は、冷媒通路を全閉する全閉機能付きの可変絞り機構で構成されている。つまり、第2膨張弁16は、冷媒通路を全閉にすることで冷媒の流れを遮断することができる。第2膨張弁16は、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0036】
冷却水冷却用蒸発器17は、第2膨張弁16を流出した低圧冷媒と低温冷却水回路30の冷却水とを熱交換させることによって低圧冷媒を蒸発させる低圧側冷媒熱媒体熱交換器である。冷却水冷却用蒸発器17で蒸発した気相冷媒は圧縮機11に吸入されて圧縮される。
【0037】
低温冷却水回路30の冷却水は、熱媒体としての流体である。低温冷却水回路30の冷却水は低温熱媒体である。本実施形態では、低温冷却水回路30の冷却水として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、または不凍液体が用いられている。低温冷却水回路30は、低温熱媒体が循環する低温熱媒体回路である。
【0038】
高温冷却水回路20には、凝縮器12、高温側ポンプ21、ヒータコア22、高温側ラジエータ23、二方弁24および高温側リザーブタンク25が配置されている。
【0039】
高温側ポンプ21は、冷却水を吸入して吐出する熱媒体ポンプである。高温側ポンプ21は電動式のポンプである。
【0040】
高温側ポンプ21は、高温冷却水回路20を循環する冷却水の流量を調整する高温側流量調整部である。第1低温側ポンプ31および第2低温側ポンプ34は、低温冷却水回路30を循環する冷却水の流量を調整する低温側流量調整部である。
【0041】
ヒータコア22は、高温冷却水回路20の冷却水と車室内へ送風される空気とを熱交換させて車室内へ送風される空気を加熱する空気加熱用熱交換器である。ヒータコア22では、冷却水が車室内へ送風される空気に放熱する。高温側ラジエータ23は、高温冷却水回路20の冷却水と外気とを熱交換させる高温熱媒体外気熱交換器である。
【0042】
凝縮器12、高温側ポンプ21およびヒータコア22は、高温側循環流路20aに配置されている。高温側循環流路20aは、高温側冷却水が循環する流路である。
【0043】
高温側ラジエータ23および二方弁24は、ラジエータ流路20bに配置されている。ラジエータ流路20bは、高温側冷却水がヒータコア22に対して並列に流れる流路である。
【0044】
二方弁24は、ラジエータ流路20bを開閉する電磁弁である。二方弁24の作動は、制御装置60によって制御される。二方弁24は、高温冷却水回路20における冷却水の流れを切り替える高温切替部である。
【0045】
二方弁24は、サーモスタットであってもよい。サーモスタットは、温度によって体積変化するサーモワックスによって弁体を変位させて冷却水流路を開閉する機械的機構を備える冷却水温度応動弁である。
【0046】
高温側リザーブタンク25は、余剰冷却水を貯留する冷却水貯留部である。高温側リザーブタンク25に余剰冷却水を貯留しておくことによって、各流路を循環する冷却水の液量の低下を抑制することができる。
【0047】
高温側リザーブタンク25は、密閉式リザーブタンクや大気開放式リザーブタンクである。密閉式リザーブタンクは、蓄えている冷却水の液面における圧力が所定圧力になるようなリザーブタンクである。大気開放式リザーブタンクは、蓄えている冷却水の液面における圧力が大気圧になるようなリザーブタンクである。
【0048】
低温冷却水回路30には、冷却水冷却用蒸発器17、第1低温側ポンプ31、低温側ラジエータ32、電池33、第2低温側ポンプ34、インバータ35、チャージャ36、モータジェネレータ37、第1三方弁38、第2三方弁39および低温側リザーブタンク40が配置されている。
【0049】
第1低温側ポンプ31および第2低温側ポンプ34は、冷却水を吸入して吐出する熱媒体ポンプである。第1低温側ポンプ31および第2低温側ポンプ34は電動式のポンプである。
【0050】
低温側ラジエータ32は、低温冷却水回路30の冷却水と外気とを熱交換させる低温熱媒体外気熱交換器である。
【0051】
高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32は、外気の流れ方向A1において、この順番に直列に配置されている。
【0052】
高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32は、共通のフィンF1によって互いに接合されている。共通のフィンF1は、冷却水と空気との熱交換を促進する熱交換促進部材である。
【0053】
したがって、高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32は、共通のフィンF1によって互いに熱移動可能に接続されている。
【0054】
高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32には、室外送風機41によって外気が送風される。
【0055】
図2に示す室外送風機41は、高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32へ向けて外気を送風する外気送風部である。室外送風機41は、ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。高温側ラジエータ23、低温側ラジエータ32および室外送風機41は、車両の最前部に配置されている。従って、車両の走行時には高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32に走行風を当てることができるようになっている。
【0056】
電池33、インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37は、車両に搭載された車載機器であり、作動に伴って発熱する発熱機器である。電池33、インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37は、作動に伴って発生する廃熱を低温冷却水回路30の冷却水に放熱する。換言すれば、電池33、インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37は、低温冷却水回路30の冷却水に熱を供給する。
【0057】
インバータ35は、電池33から供給された直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ37に出力する電力変換部である。チャージャ36は、電池33を充電する充電器である。モータジェネレータ37は、インバータ35から出力された電力を利用して走行用駆動力を発生するとともに、減速中や降坂中に回生電力を発生させる。
【0058】
低温側リザーブタンク40は、余剰冷却水を貯留する冷却水貯留部である。低温側リザーブタンク40に余剰冷却水を貯留しておくことによって、各流路を循環する冷却水の液量の低下を抑制することができる。
【0059】
低温側リザーブタンク40は、密閉式リザーブタンクや大気開放式リザーブタンクである。密閉式リザーブタンクは、蓄えている冷却水の液面における圧力が所定圧力になるようなリザーブタンクである。大気開放式リザーブタンクは、蓄えている冷却水の液面における圧力が大気圧になるようなリザーブタンクである。
【0060】
第1三方弁38、第1低温側ポンプ31、冷却水冷却用蒸発器17および低温側リザーブタンク40は、低温側主流路30aに配置されている。低温側主流路30aは、低温側冷却水が流れる流路である。
【0061】
低温側ラジエータ32は、低温側ラジエータ流路30bに配置されている。低温側ラジエータ流路30bは、低温側冷却水が流れる流路である。
【0062】
低温側主流路30aおよび低温側ラジエータ流路30bによって、低温側冷却水が循環する冷却水回路が形成される。
【0063】
電池33は、電池流路30cに配置されている。電池流路30cは、低温側主流路30aに接続されている。低温側主流路30aおよび電池流路30cによって、低温側冷却水が循環する冷却水回路が形成される。
【0064】
低温側主流路30aと電池流路30cとの接続部には、第1三方弁38が配置されている。第1三方弁38は、低温側主流路30aの冷却水が電池流路30cに循環する状態と循環しない状態とを切り替える。第1三方弁38の作動は、制御装置60によって制御される。
【0065】
第2低温側ポンプ34、インバータ35、チャージャ36、モータジェネレータ37は、機器流路30dに配置されている。低温側主流路30aおよび機器流路30dによって、低温側冷却水が循環する冷却水回路が形成される。
【0066】
機器流路30dには、バイパス流路30eが接続されている。機器流路30dおよびバイパス流路30eによって、低温側冷却水が循環する冷却水回路が形成される。
【0067】
機器流路30dとバイパス流路30eとの接続部には、第2三方弁39が配置されている。第2三方弁39は、低温側主流路30aの冷却水が機器流路30dに循環する状態と循環しない状態とを切り替えるとともに、機器流路30dの冷却水がバイパス流路30eに循環する状態と循環しない状態とを切り替える。第2三方弁39の作動は、制御装置60によって制御される。
【0068】
第1三方弁38および第2三方弁39は、低温冷却水回路30における冷却水の流れを切り替える低温切替部である。
【0069】
空気冷却用蒸発器14およびヒータコア22は、
図1に示す室内空調ユニット50のケーシング51(以下、空調ケーシングと言う。)に収容されている。室内空調ユニット50は、車室内前部の図示しない計器盤の内側に配置されている。空調ケーシング51は、空気通路を形成する空気通路形成部材である。
【0070】
ヒータコア22は、空調ケーシング51内の空気通路において、空気冷却用蒸発器14の空気流れ下流側に配置されている。空調ケーシング51には、内外気切替箱52と室内送風機53とが配置されている。内外気切替箱52は、空調ケーシング51内の空気通路に内気と外気とを切替導入する内外気切替部である。室内送風機53は、内外気切替箱52を通して空調ケーシング51内の空気通路に導入された内気および外気を吸入して送風する。
【0071】
空調ケーシング51内の空気通路において空気冷却用蒸発器14とヒータコア22との間には、エアミックスドア54が配置されている。エアミックスドア54は、空気冷却用蒸発器14を通過した冷風のうちヒータコア22に流入する冷風と冷風バイパス通路55を流れる冷風との風量割合を調整する。
【0072】
冷風バイパス通路55は、空気冷却用蒸発器14を通過した冷風がヒータコア22をバイスして流れる空気通路である。
【0073】
エアミックスドア54は、空調ケーシング51に対して回転可能に支持された回転軸と、回転軸に結合されたドア基板部とを有する回転式ドアである。エアミックスドア54の開度位置を調整することによって、空調ケーシング51から車室内に吹き出される空調風の温度を所望温度に調整できる。
【0074】
エアミックスドア54の回転軸は、サーボモータによって駆動される。サーボモータの作動は、制御装置60によって制御される。
【0075】
エアミックスドア54は、空気流れと略直交する方向にスライド移動するスライドドアであってもよい。スライドドアは、剛体で形成された板状のドアであってもよいし。可撓性を有するフィルム材で形成されたフィルムドアであってもよい。
【0076】
エアミックスドア54によって温度調整された空調風は、空調ケーシング51に形成された吹出口56から車室内へ吹き出される。
【0077】
図3に示す制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御装置60は、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。制御装置60の出力側には各種制御対象機器が接続されている。制御装置60は、各種制御対象機器の作動を制御する制御部である。
【0078】
制御装置60によって制御される制御対象機器は、圧縮機11、第1膨張弁13、第2膨張弁16、室外送風機41、高温側ポンプ21、二方弁24、第1低温側ポンプ31、第2低温側ポンプ34、第1三方弁38および第2三方弁39等である。
【0079】
制御装置60のうち圧縮機11の電動モータを制御するソフトウェアおよびハードウェアは、冷媒吐出能力制御部である。制御装置60のうち第1膨張弁13を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、第1絞り制御部である。制御装置60のうち第2膨張弁16を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、第2絞り制御部である。
【0080】
制御装置60のうち室外送風機41を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、外気送風能力制御部である。制御装置60のうち高温側ポンプ21を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、高温熱媒体流量制御部である。
【0081】
制御装置60のうち二方弁24を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、二方弁制御部である。
【0082】
制御装置60のうち第1低温側ポンプ31および第2低温側ポンプ34を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、低温熱媒体流量制御部である。
【0083】
制御装置60のうち第1三方弁38を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、第1三方弁制御部である。
【0084】
制御装置60のうち第2三方弁39を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、第2三方弁制御部である。
【0085】
制御装置60の入力側には、内気温度センサ61、外気温度センサ62、日射量センサ63、蒸発器温度センサ64、ヒータコア温度センサ65、冷媒圧力センサ66、高温冷却水温度センサ67、低温冷却水温度センサ68、窓表面湿度センサ69等の種々の制御用センサ群が接続されている。
【0086】
内気温度センサ61は車室内温度Trを検出する。外気温度センサ62は外気温Tamを検出する。日射量センサ63は車室内の日射量Tsを検出する。
【0087】
蒸発器温度センサ64は、冷却水冷却用蒸発器17の温度を検出する温度検出部である。蒸発器温度センサ64は、例えば、冷却水冷却用蒸発器17の熱交換フィンの温度を検出するフィンサーミスタや、冷却水冷却用蒸発器17を流れる冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ等である。
【0088】
ヒータコア温度センサ65は、ヒータコア22の温度を検出する温度検出部である。ヒータコア温度センサ65は、例えば、ヒータコア22の熱交換フィンの温度を検出するフィンサーミスタや、ヒータコア22を流れる冷却水の温度を検出する冷媒温度センサ、ヒータコア22から流出した空気の温度を検出する空気温度センサ等である。
【0089】
冷媒圧力センサ66は、圧縮機11から吐出された冷媒の圧力を検出する冷媒圧力検出部である。冷媒圧力センサ66の代わりに冷媒温度センサが制御装置60の入力側に接続されていてもよい。冷媒温度センサは、圧縮機11から吐出された冷媒の温度を検出する冷媒圧力検出部である。制御装置60は、冷媒の温度に基づいて冷媒の圧力を推定してもよい。
【0090】
高温冷却水温度センサ67は、高温冷却水回路20の冷却水の温度を検出する温度検出部である。例えば、高温冷却水温度センサ67は、凝縮器12の冷却水の温度を検出する。
【0091】
低温冷却水温度センサ68は、低温冷却水回路30の冷却水の温度を検出する温度検出部である。例えば、低温冷却水温度センサ68は、冷却水冷却用蒸発器17の冷却水の温度を検出する。
【0092】
窓表面湿度センサ69は、窓近傍湿度センサ、窓近傍空気温度センサおよび窓表面温度センサで構成されている。
【0093】
窓近傍湿度センサは、車室内のフロントガラス1近傍の車室内空気の相対湿度(以下、窓近傍相対湿度と言う。)を検出する。窓近傍空気温度センサは、フロントガラス1近傍の車室内空気の温度を検出する。窓表面温度センサは、フロントガラス1の表面温度を検出する。
【0094】
制御装置60の入力側には、図示しない各種操作スイッチが接続されている。各種操作スイッチは操作パネル70に設けられており、乗員によって操作される。操作パネル70は車室内前部の計器盤付近に配置されている。制御装置60には、各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0095】
各種操作スイッチは、エアコンスイッチ、温度設定スイッチ等である。エアコンスイッチは、室内空調ユニット50にて空気の冷却を行うか否かを設定する。温度設定スイッチは、車室内の設定温度を設定する。
【0096】
次に、上記構成における作動を説明する。制御装置60は、目標吹出温度TAO等に基づいて運転モードを、
図4〜5に示す冷房モードおよび
図6〜7に示す暖房モードのいずれかに切り替える。
【0097】
目標吹出温度TAOは、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である。制御装置60は、目標吹出温度TAOを以下の数式に基づいて算出する。
【0098】
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C
この数式において、Tsetは操作パネル70の温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気温度センサ61によって検出された内気温、Tamは外気温度センサ62によって検出された外気温、Tsは日射量センサ63によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0099】
制御装置60は、暖房モードにおいて、車両の窓が曇る可能性があると判定した場合、除湿暖房モードに切り替える。例えば、制御装置60は、暖房モードにおいて、窓表面湿度センサ69の検出値に基づいて車室内側表面の相対湿度RHW(以下、窓表面相対湿度と言う。)を算出し、車室内側表面の相対湿度RHWに基づいて車両の窓が曇る可能性があるか否かを判定する。
【0100】
窓表面相対湿度RHWは、フロントガラス1が曇る可能性を表す指標である。具体的には、窓表面相対湿度RHWの値が大きいほど、フロントガラス1が曇る可能性が高いことを意味する。
【0101】
次に、冷房モード、暖房モードおよび除湿暖房モードにおける作動について説明する。
【0102】
(冷房モード)
冷房モードでは、制御装置60が、第1膨張弁13を絞り状態とし、第2膨張弁16を全閉状態とする。
【0103】
制御装置60は、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、制御装置60に接続された各種制御機器の作動状態(各種制御機器へ出力する制御信号)を決定する。
【0104】
第1膨張弁13へ出力される制御信号については、圧縮機11へ流入する冷媒の過熱度が、サイクルの成績係数(いわゆるCOP)を最大値に近づくように予め定められた目標過熱度に近づくように決定される。
【0105】
エアミックスドア54のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア54が
図1の実線位置に位置してヒータコア22の空気通路を閉塞し、空気冷却用蒸発器14を通過した送風空気の全流量がヒータコア22の空気通路を迂回して流れるように決定される。
【0106】
冷房モードでは、圧縮機11および高温側ポンプ21を作動させる。冷房モードでは、二方弁24は、ラジエータ流路20bを開ける。これにより、
図4の高温冷却水回路20中の太線に示すように、高温側ラジエータ23に高温冷却水回路20の冷却水が循環してラジエータ23で冷却水から外気に放熱される。
【0107】
このとき、ヒータコア22にも高温冷却水回路20の冷却水が循環するが、エアミックスドア54がヒータコア22の空気通路を閉塞しているので、ヒータコア22では冷却水から空気への放熱が殆ど行われない。
【0108】
冷房モード時の冷凍サイクル装置10では、
図1の破線矢印のように冷媒が流れ、サイクルを循環する冷媒の状態については、以下のように変化する。
【0109】
すなわち、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が凝縮器12に流入する。凝縮器12に流入した冷媒は、高温冷却水回路20の冷却水に放熱する。これにより、凝縮器12で冷媒が冷却されて凝縮する。
【0110】
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13へ流入して、第1膨張弁13にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1膨張弁13にて減圧された低圧冷媒は、空気冷却用蒸発器14に流入し、車室内へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が冷却される。
【0111】
そして、空気冷却用蒸発器14から流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0112】
以上の如く、冷房モードでは、空気冷却用蒸発器14にて低圧冷媒に空気から吸熱させて、冷却された空気を車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の冷房を実現することができる。
【0113】
冷房モードでは、電池33、インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37のうち少なくとも1つを冷却する必要がある場合、第2膨張弁16を絞り状態とするとともに第1低温側ポンプ31を作動させる。
【0114】
これにより、
図1の実線矢印に示すように、凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁16へ流入して、第2膨張弁16にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒は、冷却水冷却用蒸発器17に流入し、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。これにより、低温冷却水回路30の冷却水が冷却される。
【0115】
電池33を冷却する必要がある場合、第1三方弁38は、低温側主流路30aの冷却水が電池流路30cに循環する状態にする。これにより、
図4の低温冷却水回路30中の太線に示すように、電池33に低温冷却水回路30の冷却水が循環して電池33が冷却される。
【0116】
インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37を冷却する必要がある場合、第2三方弁39は、低温側主流路30aの冷却水が機器流路30dに循環する状態にする。これにより、
図5の低温冷却水回路30中の太線に示すように、インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37に低温冷却水回路30の冷却水が循環してインバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37が冷却される。
【0117】
(暖房モード)
暖房モードでは、制御装置60は、第1膨張弁13を全閉状態とし、第2膨張弁16を絞り状態とする。
【0118】
制御装置60は、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、制御装置60に接続された各種制御機器の作動状態(各種制御機器へ出力する制御信号)を決定する。
【0119】
第2膨張弁16へ出力される制御信号については、第2膨張弁16へ流入する冷媒の過熱度が、予め定められた目標過熱度に近づくように決定される。目標過熱度は、サイクルの成績係数(いわゆるCOP)を最大値に近づけるように定められている。
【0120】
エアミックスドア54のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア54が
図1の破線位置に位置してヒータコア22の空気通路を全開し、空気冷却用蒸発器14を通過した送風空気の全流量がヒータコア22の空気通路を通過するように決定される。
【0121】
暖房モードでは、圧縮機11、高温側ポンプ21、第1低温側ポンプ31を作動させる。暖房モードでは、二方弁24は、ラジエータ流路20bを閉じる。これにより、
図6の高温冷却水回路20中の太線に示すように、ヒータコア22に高温冷却水回路20の冷却水が循環してヒータコア22で冷却水から、車室内へ送風される空気に放熱される。
【0122】
暖房モードでは、第1三方弁38が電池流路30cを閉じるとともに、第2三方弁39が機器流路30dおよびバイパス流路30eを閉じる。これにより、
図6の低温冷却水回路30中の太線に示すように、低温側ラジエータ32に低温冷却水回路30の冷却水が循環する。
【0123】
暖房モードの冷凍サイクル装置10では、
図1の実線矢印のように冷媒が流れ、サイクルを循環する冷媒の状態については、次のように変化する。
【0124】
すなわち、圧縮機11から吐出された高圧冷媒は、凝縮器12へ流入して、高温冷却水回路20の冷却水と熱交換して放熱する。これにより、高温冷却水回路20の冷却水が加熱される。
【0125】
凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁16に流入し、低圧冷媒となるまで減圧される。そして、第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒は、冷却水冷却用蒸発器17に流入して、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。
【0126】
そして、冷却水冷却用蒸発器17から流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0127】
以上の如く、暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の有する熱を凝縮器12にて高温冷却水回路20の冷却水に放熱させ、高温冷却水回路20の冷却水が有する熱をヒータコア22にて空気に放熱させ、ヒータコア22で加熱された空気を車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の暖房を実現することができる。
【0128】
低温冷却水回路30の冷却水が低温側ラジエータ32を循環するので、外気から低温冷却水回路30の冷却水に吸熱させ、冷却水冷却用蒸発器17にて低温冷却水回路30の冷却水から低圧冷媒に吸熱させることができる。したがって、外気の熱を車室内の暖房に利用できる。
【0129】
暖房モードでは、
図7の低温冷却水回路30中の太線に示すように、低温冷却水回路30の冷却水を電池33、インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37にも循環させることによって、電池33、インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37の廃熱を低温冷却水回路30の冷却水に吸熱させ、冷却水冷却用蒸発器17にて低温冷却水回路30の冷却水から低圧冷媒に吸熱させることができる。
【0130】
したがって、電池33、インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37の廃熱を車室内の暖房に利用できる。また、電池33、インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37の廃熱を、低温側ラジエータ32の除霜に利用できる。
【0131】
なお、低温冷却水回路30の冷却水を電池33、インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37の少なくとも1つにも循環させることによって、電池33、インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37の少なくとも1つの廃熱を車室内の暖房や除霜に利用できる。
【0132】
(暖房モード後の除霜)
暖房モードでは、低温側ラジエータ32で低温冷却水回路30の冷却水が外気から吸熱するので、低温側ラジエータ32に着霜が生じる。そこで、暖房モードを実行した後の停車時に、高温冷却水回路20の冷却水に残った熱を利用して低温側ラジエータ32を除霜する。
【0133】
すなわち、高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32は、共通のフィンF1によって互いに熱移動可能に接続されているので、高温冷却水回路20の冷却水の熱が、高温側ラジエータ23から低温側ラジエータ32に移動する。
【0134】
これにより、低温側ラジエータ32の温度が上昇して、低温側ラジエータ32の表面に付着した霜を融かすことができる。
【0135】
(除湿暖房モード)
除湿暖房モードでは、制御装置60は、第1膨張弁13を絞り全閉状態とし、第2膨張弁16を全閉状態とする。
【0136】
制御装置60は、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、制御装置60に接続された各種制御機器の作動状態(各種制御機器へ出力する制御信号)を決定する。
【0137】
第2膨張弁16へ出力される制御信号については、第2膨張弁16へ流入する冷媒の過熱度が、予め定められた目標過熱度に近づくように決定される。目標過熱度は、サイクルの成績係数(いわゆるCOP)を最大値に近づけるように定められている。
【0138】
エアミックスドア54のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア54がヒータコア22の空気通路を全開し、空気冷却用蒸発器14を通過した送風空気の全流量がヒータコア22の空気通路を通過するように決定される。
【0139】
除湿暖房モードでは、圧縮機11、高温側ポンプ21、第1低温側ポンプ31を作動させる。
【0140】
除湿暖房モードでは、二方弁24は、ラジエータ流路20bを閉じる。これにより、
図6の高温冷却水回路20中の太線に示すように、ヒータコア22に高温冷却水回路20の冷却水が循環してヒータコア22で冷却水から、車室内へ送風される空気に放熱される。
【0141】
除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、
図1の破線矢印のように冷媒が流れ、サイクルを循環する冷媒の状態については、次のように変化する。
【0142】
すなわち、圧縮機11から吐出された高圧冷媒は、凝縮器12へ流入して、高温冷却水回路20の冷却水と熱交換して放熱する。これにより、高温冷却水回路20の冷却水が加熱される。
【0143】
凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁16に流入し、低圧冷媒となるまで減圧される。そして、第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒は、空気冷却用蒸発器14に流入し、車室内へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が冷却除湿される。そして、空気冷却用蒸発器14から流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0144】
以上の如く、除湿暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の有する熱を凝縮器12にて高温冷却水回路20の冷却水に放熱させ、高温冷却水回路20の冷却水が有する熱をヒータコア22にて空気に放熱させる。
【0145】
また、第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒に、空気冷却用蒸発器14にて車室内へ送風される空気から吸熱させ、空気冷却用蒸発器14で冷却除湿された空気を、ヒータコア22で加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
【0146】
除湿暖房モードにおいて、第2膨張弁16を絞り状態とすることによって、第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒が冷却水冷却用蒸発器17に流入して、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。
【0147】
そして、
図6の低温冷却水回路30中の太線に示すように、低温側ラジエータ32に低温冷却水回路30の冷却水を循環させることによって、外気から低温冷却水回路30の冷却水に吸熱させ、冷却水冷却用蒸発器17にて低温冷却水回路30の冷却水から低圧冷媒に吸熱させることができる。したがって、外気の熱を車室内の暖房に利用できる。
【0148】
また、
図7の低温冷却水回路30中の太線に示すように、冷却水冷却用蒸発器17で冷却された冷却水を電池33、インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37にも循環させることによって、電池33、インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37の廃熱を低温冷却水回路30の冷却水に吸熱させ、冷却水冷却用蒸発器17にて低温冷却水回路30の冷却水から低圧冷媒に吸熱させることができる。したがって、電池33、インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37の廃熱を車室内の暖房に利用できる。
【0149】
このように、本実施形態の車両用空調装置1では、空気冷却用蒸発器14および冷却水冷却用蒸発器17に対する冷媒流れと、高温冷却水回路20および低温冷却水回路30における冷却水流れとを切り替えることによって、車室内の適切な冷房、暖房および除湿暖房を実行することができ、ひいては車室内の快適な空調を実現することができる。
【0150】
電池33を外気温度未満に冷却する必要がない場合や、電池33を冷却する必要はあるが冷却水冷却用蒸発器17に冷媒が流通していない場合、
図8に示すように、制御装置60は、低温冷却水回路30の冷却水が低温側ラジエータ32と電池33との間で循環するように第1三方弁38を制御する。これにより、電池33の廃熱を外気に放熱して電池33を冷却できる。
【0151】
インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37を外気温度未満に冷却する必要がない場合や、電池33を冷却する必要はあるが冷却水冷却用蒸発器17に冷媒が流通していない場合、
図9に示すように、制御装置60は、低温冷却水回路30の冷却水が低温側ラジエータ32とインバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37との間で循環するように第2三方弁39を制御する。これにより、インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37の廃熱を外気に放熱してインバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37を冷却できる。
【0152】
本実施形態では、空気冷却用蒸発器14に冷媒が流通している状態において、二方弁24が、凝縮器12と高温側ラジエータ23との間で高温冷却水回路20の冷却水を循環させる冷房モードを実行する。
【0153】
そして、冷却水冷却用蒸発器17に冷媒が流通している状態において、二方弁24が、凝縮器12とヒータコア22との間で高温冷却水回路20の冷却水を循環させるとともに、第1三方弁38および第2三方弁39が、冷却水冷却用蒸発器17と低温側ラジエータ32との間で低温冷却水回路30の冷却水を循環させることによって暖房モードを実行する。
【0154】
これによると、高温冷却水回路20における冷却水の流れと、低温冷却水回路30における低温冷却水の流れとを切り替えることによって暖房モードと冷房モードとを切り替えることができる。
【0155】
そのため、従来技術のように熱交換器に対してサイクルの高低圧を切り替える必要がないので、回路構成および切替制御を簡素化できる。
【0156】
本実施形態では、低温側ラジエータ32および高温側ラジエータ23は、熱交換を促進させる共通のフィンF1を有しており、共通のフィンF1によって熱的に接続されている。
【0157】
これによると、暖房モード後の空調運転停止時に、高温冷却水回路20の冷却水が持つ熱を、高温側ラジエータ23から低温側ラジエータ32に移動させることができるので、低温側ラジエータ32を除霜できる。
【0158】
本実施形態では、冷却水冷却用蒸発器17および空気冷却用熱交換器14のそれぞれに対して、冷媒が流通する状態と流通しない状態とを切り替える第1膨張弁13および第2膨張弁16を備える。
【0159】
これにより、空気冷却用熱交換器14で空気を冷却するか否か、冷却水冷却用蒸発器17で低温冷却水回路30の冷却水を冷却するか否かを切り替えることができる。
【0160】
本実施形態では、二方弁24が、凝縮器12とヒータコア22との間で高温熱媒体を循環させるとともに、第1膨張弁13が空気冷却用蒸発器14に冷媒を流通させる除湿暖房モードを実行している場合において、ヒータコア22で空気を加熱する能力が不足している場合、第2膨張弁16は、冷却水冷却用蒸発器17に冷媒を流通させる。
【0161】
これによると、除湿暖房モード時にヒータコア22で空気を加熱する能力が不足している場合、冷却水冷却用蒸発器17で低温冷却水回路30の冷却水から吸熱することによって空気加熱能力を補うことができる。
【0162】
本実施形態では、第1三方弁38および第2三方弁39は、冷却水冷却用蒸発器17と電池33、インバータ35、チャージャ36、モータジェネレータ37との間で低温冷却水回路30の冷却水が循環する状態と、冷却水冷却用蒸発器17と低温側ラジエータ32との間で低温冷却水回路30の冷却水が循環する状態とを切り替える。
【0163】
これによると、低温冷却水回路30の冷却水に電池33、インバータ35、チャージャ36、モータジェネレータ37の廃熱を吸熱させる作動と、低温冷却水回路30の冷却水に電池33、インバータ35、チャージャ36、モータジェネレータ37の外気を吸熱させる作動とを切り替えることができる。
【0164】
本実施形態では、冷却水冷却用蒸発器17に冷媒が流通する場合、第1三方弁38および第2三方弁39は、冷却水冷却用蒸発器17と、電池33、インバータ35、チャージャ36、モータジェネレータ37および低温側ラジエータ32のうち少なくとも1つとの間で低温冷却水回路30の冷却水を循環させる。
【0165】
これにより、電池33、インバータ35、チャージャ36、モータジェネレータ37の廃熱および外気の熱のうち少なくとも1つを冷却水冷却用蒸発器17で吸熱して利用することができる。
【0166】
しかも、冷却水冷却用蒸発器17で冷却された冷却水が低温冷却水回路30を循環するので、低温冷却水回路30の配管部等においても、低温冷却水回路30の冷却水が外気の熱を吸熱できる。
【0167】
本実施形態では、第1三方弁38および第2三方弁39は、低温側ラジエータ32と電池33との間で低温冷却水回路30の冷却水が循環する状態に切り替える。
【0168】
これにより、電池33を外気温度未満に冷却する必要がない場合、電池33の廃熱を外気に放熱して電池33を冷却できる。
【0169】
また、第1三方弁38および第2三方弁39は、低温側ラジエータ32とインバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37との間で低温冷却水回路30の冷却水が循環する状態に切り替える。
【0170】
これにより、インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37を外気温度未満に冷却する必要がない場合、インバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37の廃熱を外気に放熱してインバータ35、チャージャ36およびモータジェネレータ37を冷却できる。
【0171】
本実施形態では、冷却水冷却用蒸発器17および空気冷却用熱交換器14は、冷媒の流れにおいて互いに並列になっている。第1膨張弁13は、冷却水冷却用蒸発器17に流入する冷媒を減圧させ、第2膨張弁16は、空気冷却用熱交換器14に流入する冷媒を減圧させる。
【0172】
そして、圧力調整部25は、空気冷却用熱交換器14の出口側冷媒圧力を、冷却水冷却用蒸発器17の出口側冷媒圧力以上にする。
【0173】
これにより、冷却水冷却用蒸発器17および空気冷却用熱交換器14の両方に冷媒が流れる場合、空気冷却用熱交換器14への冷媒の逆流が生じないようにすることができる。
【0174】
(第2実施形態)
上記実施形態では、第1膨張弁13および第2膨張弁15は、全閉機能付きの電気式の可変絞り機構であるが、本実施形態では、
図10に示すように、第1膨張弁13および第2膨張弁15は機械式の温度式膨張弁であり、第1並列冷媒流路10bに第1開閉弁18が配置され、第2並列冷媒流路10cに第2開閉弁19が配置されている。
【0175】
機械式膨張弁は、感温部を有し、ダイヤフラム等の機械的機構によって弁体を駆動する温度式膨張弁である。
【0176】
第1開閉弁18は、第1並列冷媒流路10bを開閉する電磁弁である。第2開閉弁19は、第2並列冷媒流路10cを開閉する電磁弁である。第1開閉弁18および第2開閉弁19の作動は、制御装置60から出力される制御信号によって制御される。
【0177】
また、上記実施形態では、定圧弁15は機械式の可変絞り機構であるが、本実施形態では、電気式の可変絞り機構であり、定圧弁15の作動は、制御装置60から出力される制御信号によって制御される。
【0178】
本実施形態においても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0179】
(第3実施形態)
上記実施形態では、高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32は、共通のフィンF1によって互いに熱移動可能に接続されているが、本実施形態では、
図11に示すように、高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32は、冷却水を介して互いに熱移動可能になっている。
【0180】
ラジエータ流路20bおよび低温側ラジエータ流路30bは、2つの冷却水流路45、46によって連通している。2つの冷却水流路45、46は、高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32を、冷却水の入口側同士および出口側同士で連通させる。
【0181】
一方の冷却水流路45には開閉弁47が配置されている。他方の冷却水流路46には開閉弁48が配置されている。一方の開閉弁47は、一方の冷却水流路45を開閉する電磁弁である。他方の開閉弁48は、他方の冷却水流路46を開閉する電磁弁である。開閉弁47、48の作動は、制御装置60によって制御される。
【0182】
制御装置60は、通常時は開閉弁47、48が冷却水流路45、46を閉じるように制御する。
【0183】
制御装置60は、暖房モードを実行した後の停車時に、開閉弁47、48が冷却水流路45、46を開けるように制御する。これにより、高温冷却水回路20の冷却水が低温側ラジエータ32に導入されるので、高温冷却水回路20の冷却水に残った熱を利用して低温側ラジエータ32の温度を上昇させて、低温側ラジエータ32の表面に付着した霜を融かすことができる。
【0184】
(他の実施形態)
上記実施形態を例えば以下のように種々変形可能である。
【0185】
(1)上記実施形態では、熱媒体として冷却水を用いているが、油などの各種媒体を熱媒体として用いてもよい。
【0186】
熱媒体として、ナノ流体を用いてもよい。ナノ流体とは、粒子径がナノメートルオーダーのナノ粒子が混入された流体のことである。ナノ粒子を熱媒体に混入させることで、エチレングリコールを用いた冷却水のように凝固点を低下させて不凍液にする作用効果に加えて、次のような作用効果を得ることができる。
【0187】
すなわち、特定の温度帯での熱伝導率を向上させる作用効果、熱媒体の熱容量を増加させる作用効果、金属配管の防食効果やゴム配管の劣化を防止する作用効果、および極低温での熱媒体の流動性を高める作用効果を得ることができる。
【0188】
このような作用効果は、ナノ粒子の粒子構成、粒子形状、配合比率、付加物質によって様々に変化する。
【0189】
これによると、熱伝導率を向上させることができるので、エチレングリコールを用いた冷却水と比較して少ない量の熱媒体であっても同等の冷却効率を得ることが可能になる。
【0190】
また、熱媒体の熱容量を増加させることができるので、熱媒体自体の顕熱による蓄冷熱量を増加させることができる。
【0191】
蓄冷熱量を増加させることにより、圧縮機11を作動させない状態であっても、ある程度の時間は蓄冷熱を利用した機器の冷却、加熱の温調が実施できるため、車両用熱管理装置の省動力化が可能になる。
【0192】
ナノ粒子のアスペクト比は50以上であるのが好ましい。十分な熱伝導率を得ることができるからである。なお、アスペクト比は、ナノ粒子の縦×横の比率を表す形状指標である。
【0193】
ナノ粒子としては、Au、Ag、CuおよびCのいずれかを含むものを用いることができる。具体的には、ナノ粒子の構成原子として、Auナノ粒子、Agナノワイヤー、CNT、グラフェン、グラファイトコアシェル型ナノ粒子、およびAuナノ粒子含有CNTなどを用いることができる。
【0194】
CNTはカーボンナノチューブである。グラファイトコアシェル型ナノ粒子は、上記原子を囲むようにカーボンナノチューブ等の構造体があるような粒子体である。
【0195】
(2)上記実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒としてフロン系冷媒を用いているが、冷媒の種類はこれに限定されるものではなく、二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を用いてもよい。
【0196】
また、上記実施形態の冷凍サイクル10は、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成しているが、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える超臨界冷凍サイクルを構成していてもよい。
【0197】
(3)上記実施形態では、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが別々のラジエータになっていて、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが共通のフィンF1によって互いに接合されているが、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが1つのラジエータで構成されていてもよい。
【0198】
例えば、高温側ラジエータ23のタンクと低温側ラジエータ32のタンクとが互いに一体化されていることによって、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが1つのラジエータで構成されていてもよい。