(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
図1に示す光検出装置1は、受光部30を備える。また、光検出装置1は、発光部10と、走査部20と、情報取得部40と、制御部50と、を備えてもよい。受光部30は、ワンチップの半導体集積回路として構成されてもよる。この半導体集積回路には、発光部10が含まれてもよい。
【0014】
[1−1−1.発光部]
発光部10は、発光素子として、例えばレーザダイオードを備える。発光部10は、制御部50からの指示である発光トリガに従って、パルス状のレーザ光(以下、照射光)を繰り返し照射する。発光素子の発光強度は、制御部50からの指示に従って可変設定される。発光強度は、例えば、高出力と低出力の2種類の設定が用意される。
【0015】
[1−1−2.走査部]
走査部20は、ミラー部21と、駆動部22と、を備える。
ミラー部21は、板状に構成され、その両面が反射面として使用される。ミラー部21は、発光部10からの照射光を反射することで、ミラー部21の回転角度に応じた方向に光を照射する。また、ミラー部21は、ミラー部21の回転角度に応じた方向から到来する、照射光を反射した物標からの反射光を反射して、受光部30に出力する。
【0016】
駆動部22は、制御部50からの指示に従って、ミラー部21を回転駆動する。これにより、水平面内において予め設定された角度範囲を有する検知領域が、発光部10からミラー部21を介して照射される照射光によって走査される。
【0017】
[1−1−3.受光部]
受光部30は、受光素子アレイ31と、読出部32と、距離測定部33と、画像生成部34と、を備える。
【0018】
受光素子アレイ31は、
図2に示すように、一つ以上の単位素子ブロックBを備える。単位素子ブロックBは、素子構造の異なる第1素子E1および第2素子E2を備える。第1素子E1および第2素子E2は、予め設定された素子配列方向Xに沿って配置される。受光素子アレイ31は、当該装置1を搭載する車両である自車両の車幅方向、即ち水平方向に素子配列方向Xが一致し、第1素子E1及び第2素子E2の放射面において素子配列方向Xに直交する方向Yが自車両の車高方向、即ち上下方向に一致した状態となるように車両に搭載される。
【0019】
なお、単位素子ブロックBを複数備える場合は、方向Xまたは方向Yに沿って1次元的に配置されていてもよいし、方向X及び方向Yの両方に沿って2次元的に配置されていてもよい。単位素子ブロックBの数や配置は、発光部10及び走査部20の構造や位置関係に応じて適宜決定される。
【0020】
第1素子E1は、例えば、電子増倍機能を有するフォトダイオードであるアバランシェフォトダイオードが用いられる。第2素子E2は、例えば、電子増倍機能を有さないフォトダイオードである埋め込みフォトダイオード等の通常のフォトダイオード、またはPIN−フォトダイオードが用いられる。第1素子E1および第2素子E2は、受光面が矩形状かつ同一サイズを有する。第1素子E1は、第2素子E2と比較して高感度な特性を有する。
【0021】
図1に戻り、距離測定部33は、読出部32を介して入力される受光素子アレイ31から読み出される検出信号Sa,Spのサンプリングデータと、制御部50が発光部10に対して出力する発光トリガと、に基づき、発光部10からの照射光を反射した物標までの距離を算出する。距離の算出には、光飛行時間計測法(即ち、TOF:Time Of Flight)が用いられる。
【0022】
画像生成部34は、読出部32を介して入力される予め設定されたシャッタ時間の間に蓄積された電荷量を示す検出信号Scのサンプリングデータに基づき、検知領域を撮像した撮像画像を生成する。
【0023】
読出部32は、
図3に示すように、単位素子ブロックBのそれぞれが、単位回路321とAD変換部322とを備える。
AD変換部322は、3つの増幅器A1,A2,A3と、3つのAD変換器AD1,AD2,AD3と、を備える。AD変換部322は、単位回路321から出力される2つの検出信号Sa,Spを、それぞれ増幅器A1,A2で増幅し、AD変換器AD1,AD2でアナログ−デジタル変換して、距離測定部33に出力する。また、AD変換部322は、単位回路321から出力される検出信号Scを、増幅器A3で増幅し、AD変換器AD3でアナログ−デジタル変換して、画像生成部34に出力する。
【0024】
単位回路321は、6つのトランジスタM1〜M6と、定電流回路CUと、を備える。
トランジスタM6は、第1素子E1のカソードから増幅器A1に至る経路L1に設けられ、制御信号φToFに従って経路L1を導通または遮断する。
【0025】
トランジスタM1は、第2素子E2のカソードから分岐点Pに至る経路L2に設けられ、制御信号φtxに従って経路L2を導通または遮断する。
トランジスタM2,M5は、分岐点Pから増幅器A2に至る経路L21に直列に設けられている。トランジスタM2は、制御信号φgに従って経路L21を導通または遮断する。トランジスタM5は、制御信号φToFに従って経路L21を導通または遮断する。
【0026】
トランジスタM4は、トランジスタM2とトランジスタM5との間にて、経路L21と電源電圧vddの電源ラインとの間を、制御信号φISに従って導通または遮断する。
トランジスタM3は、分岐点Pから増幅器A3に至る経路L22に設けられ、経路L2を介して供給される信号Vgを増幅することで、増幅器A3に出力する信号Scを生成する。
【0027】
定電流回路CUは、トランジスタM3に一定のバイアス電流Idcを流す。つまり、検出信号Scの信号レベルは、バイアス電流Idcによって決まる電位を中心に変化する。
[1−1−4,情報取得部]
図1に戻り、情報取得部40は、車載LAN等を介して車両に搭載された様々なセンサ、または車両外部との通信を行う無線通信機等を介して、自車の挙動及び自車の周囲の状況に関する情報を取得する。情報取得部40が取得する情報には、具体的には、自車の速度を表す車速情報、自車が走行中の道路に関する渋滞情報が少なくとも含まれる。
【0028】
[1−1−5.制御部]
制御部50は、CPU50aと、例えば、RAM又はROM等の半導体メモリ(以下、メモリ50b)と、を有するマイクロコンピュータを備える。制御部50の各機能は、CPU50aが非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、メモリ50bが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。なお、制御部50は、1つのマイクロコンピュータを備えてもよいし、複数のマイクロコンピュータを備えてもよい。制御部50の各機能を実現する手法は、ソフトウェアに限るものではない。制御部50の各機能の一部又は全部は、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。例えば、上記機能がハードウェアである電子回路によって実現される場合、その電子回路は、デジタル回路、又はアナログ回路、あるいはこれらの組合せによって実現されてもよい。
【0029】
制御部50は、機能別に表現した場合、駆動制御部51と、モード設定部52と、物標検出部53と、強度制御部54とを備える。
モード設定部52は、当該光検出装置1の動作モードを、距離測定モードまたは撮像モードのいずれかに設定する。距離測定モードは、光検出装置1をLIDARとして動作させる動作モードである。LIDARは、Light detection and rangingの略である。撮像モードは、光検出装置1をカメラとして動作させる動作モードである。
【0030】
以下では、動作モードが距離測定モードに設定されている期間を測定期間、撮像モードに設定されている期間を撮像期間という。測定期間は、予め設定された最大検知距離を光が往復する時間以上の長さに設定される。撮像期間は、第2素子E2を撮像素子として動作させ、その後、撮像素子から信号を読み出すまでに要する時間以上に設定される。測定期間および撮像期間の長さは、同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0031】
モード設定部52は、距離測定モードおよび撮像モードを、それぞれの設定期間が経過したタイミングで交互に切り替える。
駆動制御部51は、各動作モードに応じた様々な制御信号を生成することによって、発光部10、走査部20、及び受光部30の動作を制御する。
【0032】
駆動制御部51は、ミラー部21が半回転する間に、距離測定モードと撮像モードとがM回ずつ繰り返されるように、走査部20を動作させる。これにより、ミラー部21が半回転する毎に、M分割された検知領域が一通り走査され、そのM分割された検知領域のそれぞれについて距離測定および撮像がいずれも実施される。以下では、M分割された検知領域のそれぞれを、方位1〜方位Mと表記する。
【0033】
駆動制御部51は、距離測定モードの場合、距離測定モードが開始されるタイミングで発光部10にレーザ光を照射させる。また、駆動制御部51は、照射光を反射した物標からの反射光を受光する第1素子E1および第2素子E2からの検出信号Sa,Spの波形が、所定間隔でサンプリングされて、距離測定部33に出力されるように受光部30を制御する。
【0034】
駆動制御部51は、撮像モードの場合、発光部10にレーザ光を照射させることなく、第2素子E2を撮像素子として動作させる。そして、撮像素子の蓄積電荷をリセットした時の信号レベルである基準レベルと、シャッタ時間の間に蓄積された電荷量を表す信号レベルとがサンプリングされて、画像生成部34に出力されるように受光部30を制御する。
【0035】
ここで、駆動制御部51が実行する制御の詳細を、
図3及び
図4を参照して説明する。
動作モードが距離測定モードである場合、発光トリガに従って測定期間の先頭でレーザ光が照射され、最大検知距離以下の距離に位置する物標からの反射光が、測定期間内に受光素子アレイ31にて受光される。このとき、反射光の受光強度に応じて第1素子E1及び第2素子E2のカソード電位が変化する。なお、トランジスタM1、M2、及びM4〜M6は、制御信号φtx、φg、φIS、及びφToFによってオンオフ制御されるが、以下では、制御信号についての説明は省略し、制御の結果であるトランジスタのオンオフによって説明する。
【0036】
距離測定モードでは、測定期間の全体に渡って、トランジスタM1、M2、M5、及びM6はオンに設定され、トランジスタM4はオフに設定される。これにより、第1素子E1から増幅器A1に至る経路L1が導通するため、第1素子E1のカソード電位Vaに応じた検出信号SaがAD変換部322に出力される。また、第2素子E2から増幅器A2に至る経路L2およびL21が導通するため、第2素子E2のカソード電位Vpに応じた検出信号Spが、AD変換部322に出力される。AD変換部322では、検出信号Sa,Spは、
図5に示すように、測定期間の全期間に渡って一定間隔でサンプリングされる。その結果、検出信号Sa,Spの波形を表すデジタルデータが、距離測定部33に出力される。
【0037】
動作モードが撮像モードである場合、
図4に示すように、撮像期間中に発光部10から光が照射されることはなく、撮像期間の全体に渡って、トランジスタM5,M6はオフに設定され、トランジスタM4はオンに設定される。撮像モードでは、分岐点Pの電位をトランジスタM3によって増幅した検出信号ScがAD変換部322に出力される。
【0038】
距離測定モードから撮像モードに切り替わった後、トランジスタM1は、時刻t1までオンに保持され、その後オフされる。同様に、トランジスタM2は、時刻t1より遅い時刻t2までオンに保持され、その後オフされる。
【0039】
トランジスタM1,M2およびM4がいずれもオンに設定される時刻t1までの期間は、第2素子E2のカソードの電位Vpおよび分岐点Pの電位Vgが、電源電圧vddによってリセットされる。時刻t1にてトランジスタM1がオフすると、第2素子E2のカソードに、受光強度に応じた電荷の蓄積が開始される。
【0040】
その後、トランジスタM2は、時刻t3までオフに保持された後、時刻t4の直前まで一時的にオンに設定される。この時、分岐点Pの電位は再度リセットされる。このリセットされた分岐点Pの電位Vgを表す検出信号Scの信号レベルが、基準レベルとしてAD変換器AD3によってサンプリングされる。
【0041】
トランジスタM1は、時刻t1から時刻t4までのオフに保持された後、一時的にオンに設定される。この時刻t1から時刻t4までの期間をシャッタ期間ともいう。トランジスタM1が、時刻t4でオンすることにより、第2素子E2のカソードに蓄積された電荷が、分岐点P、即ち、トランジスタM3のゲートに転送される。その結果、検出信号Scは、シャッタ期間中に第2素子E2によって蓄積された電荷量に応じた信号レベルとなる。このときの検出信号Scの信号レベルが検出レベルとしてAD変換器AD3によってサンプリングされる。
【0042】
その後、トランジスタM2は、時刻t5でオンに設定され、トランジスタM1は、撮像期間の終了タイミングでオンに設定される。
以下、ミラー部21の回転位置によって決まる走査方向、即ち、方位1〜方位Mが順次切り替わりながら、同様の処理が繰り返される。
【0043】
距離測定部33は、測定期間中に読出部32から出力される検出信号Sa,Spの波形を表すデジタルデータから、反射光の受光タイミングを抽出し、発光部10での照射タイミングから受光タイミングまでの時間に基づいて、照射光を反射した物標までの距離を算出する。更に、距離測定部33は、距離の算出結果を、方位1〜方位Mに対応づけて配列することによって距離画像を生成する。
【0044】
なお、距離測定部33では、受光タイミングを抽出する際に、高感度である第1素子E1からの検出信号Saが飽和しているか否かを判断し、飽和していなければ検出信号Saが用いられ、飽和していれば検出信号Spが用いられるようにしてもよい。
【0045】
画像生成部34は、撮像期間中に読出部32から出力される検出信号Scの検出レベルおよび基準レベルに基づき、検出レベルから基準レベルを減算することで画素値を算出する。更に、画像生成部34は、算出された画素値を、方位1〜方位Mと対応づけて配列することで撮像画像を生成する。
【0046】
図1に戻り、物標検出部53は、距離測定部33および画像生成部34により検知領域全体の距離画像および撮像画像が生成される毎に、これら距離画像および撮像画像を用いて、検知領域内に存在する物標を検出する。また、物標検出部53は、検出された物標のそれぞれについて、物標の種類および位置を含む物標情報を生成する。
【0047】
強度制御部54は、物標検出部53にて生成された物標情報を用いて、発光部10での発光強度を制御する。強度制御部54が実行する強度制御処理を、
図6を用いて説明する。
本処理は、物標検出部53により、物標情報が生成される毎に起動する。
【0048】
本処理が開始されると、S110にて、強度制御部54は、物標検出部53が生成した物標情報を取得する。
S120では、強度制御部54は、取得した物標情報に含まれる物標の種類に基づき、歩行者が検出されているか否かを判定する。S120にて否定判定された場合はS130に移行し、肯定判定された場合はS140に移行する。
【0049】
S130では、強度制御部54は、発光強度を高出力に設定して、本処理を終了する。
S140では、強度制御部54は、発光強度を低出力に設定して、本処理を終了する。
なお、S130又はS140にて発光強度の設定が変更されると、発光部10の発光強度は、方位1についての距離測定モードが開始されるタイミングで変更される。
【0050】
[1−2.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)光検出装置1は、受光素子アレイ31に含まれる単位素子ブロックBが、感度の異なる第1素子E1および第2素子E2を備え、これら第1素子E1と第2素子E2とをいずれも使用して、距離の測定を行っている。従って、光検出装置1によれば、距離の計測について、広いダイナミックレンジを実現することができる。
【0051】
しかも、光検出装置1では、第1素子E1および第2素子E2として素子構造の異なるAPDとPDとを採用している。従って、光検出装置1によれば、各素子E1及びE2の受光面積を広げることなく、より広いダイナミックレンジを実現できるだけでなく、APDによって感度を高める方向にダイナミックレンジを広げることができる。
【0052】
(1b)光検出装置1によれば、検知領域内に歩行者が存在するか否かによって発光部10での発光強度を切り替えているため、歩行者に高出力のレーザ光が照射されることを抑制することができる。
【0053】
(1c)光検出装置1によれば、距離測定機能(即ち、LIDAR)と画像生成機能(即ち、カメラ)とを単一の装置で実現しているため、両機能を実現する機器を別々に設ける場合と比較して、車両における機器の設置スペースを削減できる。
【0054】
(1d)光検出装置1によれば、走査部20が設けられているため、広角なLIDAR機能と 広角で高精細なカメラ機能を、受光素子数の少ない受光素子アレイ31によって実現することができる。
【0055】
[1−3.変形例]
上記実施形態では、単位素子ブロックBに含まれる第1素子E1及び第2素子E2を、車幅方向に一致させた方向Xに沿って配置しているが、これに限定されるものではない。例えば、
図7に示すように、第1素子E1及び第2素子E2を、車高方向に一致させた方向Yに沿って配置してもよい。
【0056】
上記実施形態では、走査部20は、照射光及び反射光の走査を機械的の手法で実現しているが、これに限定されるものではない。例えば、
図8に示すように、電圧又は電流によって偏光方向を制御可能な偏光素子20aを介してレーザ光の照射及び反射波の受光を行う等、光学的な手法で走査を実現してもよい。
【0057】
[2.第2実施形態]
[2−1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0058】
第2実施形態は、単位素子ブロックBaおよび単位回路321aの構成、並びに駆動制御部51での制御内容が第1実施形態とは相違する。
[2−2.単位素子ブロック]
単位素子ブロックBaは、
図9に示すように、第1実施形態における単位素子ブロックBにおいて、第2素子E2を4つの第2素子E2a〜E2dに置き換えた構造を有する。
【0059】
第2素子E2a〜E2dは、いずれも同一サイズ且つ第1素子E1と相似形状を有する。また、第2素子E2a〜E2dは、これら4つの素子を2行2列に配列した状態で、第1素子E1とほぼ同一サイズとなる大きさを有する。
【0060】
第1実施形態の場合と同様に、第1素子E1は、例えば、アバランシェフォトダイオードが用いられ、第2素子E2a〜E2dは、通常のフォトダイオード、またはPIN−フォトダイオードが用いられる。また、第2素子E2a~E2dにはカラーフィルタが載せられ、カラー画像を取得できるように構成されていてもよい。
【0061】
[2−3.単位回路]
単位回路321aについて、
図10を参照して説明する。なお、単位素子ブロックBaは、4つの第2素子E2a〜E2dを含んでいるが、
図10では、図面を見易くするために、2つの第2素子E2c及びE2dについては図示を省略し、単位素子ブロックBaは、2つの第2素子E2a及びE2bを有するとして説明する。
【0062】
図10に示すように、単位回路321aは、トランジスタM1の代わりに、二つのトランジスタM1aおよびM1bを備える。
トランジスタM1aは、第2素子E2aから分岐点Pに至る経路L2aに設けられ、制御信号φtxaに従って経路L2aを導通または遮断する。
【0063】
トランジスタM1bは、第2素子E2bから分岐点Pに至る経路L2bに設けられ、制御信号φtxbに従って経路L2bを導通または遮断する。
[2−4.駆動制御部]
駆動制御部51は、距離測定モードでは、トランジスタM1の代わりにトランジスタM1aを動作させる以外は第1実施形態と同様である。なお、トランジスタM1aだけでなく、トランジスタM1aおよびM2aを同時に動作させるように制御してもよい。
【0064】
撮像モードでは、
図11に示すように、撮像期間を前半と後半とに分け、前半では、第2素子E2aからの読み出しを実行し、後半では、第2素子E2bからの読み出しを実行する。
【0065】
トランジスタM2は、撮像期間の開始後、
図4に示した時刻t2のタイミングに相当する時刻t12でオフされた後、撮像期間の前半及び後半のそれぞれにおいて1回ずつ、具体的には、時刻t13及びt16のタイミングで一時的にオンされる。この一時的にオンされたタイミングで、トランジスタM2のゲートがリセットされ、そのリセットされた状態に応じた信号レベル(即ち、基準レベル)を有する検出信号ScがAD変換部322に出力される。
【0066】
トランジスタM1aは、時刻t11でオフされた後、トランジスタM2が時刻t13にて一時的にオンされた直後の時刻t14のタイミングで一時的にオンされる。これにより、時刻t11〜t14の期間をシャッタ期間として第2素子E2aのカソードに蓄積された電荷がトランジスタM3のゲートに転送され、その電荷に応じた信号レベル(即ち、検出レベル)を有する検出信号ScがAD変換部322に出力される。
【0067】
トランジスタM1bは、時刻t11でオフされた後、トランジスタM2が時刻t16にて一時的にオンされた直後の時刻t17のタイミングで一時的にオンされる。これにより、時刻t11〜t17の期間をシャッタ期間として第2素子E2bのカソードに蓄積された電荷がトランジスタM3のゲートに転送され、その電荷に応じた信号レベル(即ち、検出レベル)を有する検出信号ScがAD変換部322に出力される。
【0068】
AD変換部322のAD変換器AD3は、トランジスタM2が一時的にオンする1回目のタイミング、即ち、時刻t13のタイミングで、第2素子E2aのカソードがリセットされた状態の基準レベルをサンプリングし、その後、トランジスタM1aが一時的にオンした時刻t14のタイミングで、第2素子E2aに蓄積された電荷を表す検出レベルをサンプリングする。
【0069】
同様に、AD変換器AD3は、トランジスタM2が一時的にオンする2回目のタイミング、即ち、時刻t16のタイミングで、第2素子E2bのカソードがリセットされた状態の基準レベルをサンプリングし、その後、トランジスタM1bが一時的にオンした時刻t17のタイミングで、第2素子E2bに蓄積された電荷を表す検出レベルをサンプリングする。
【0070】
つまり、本実施形態では、二つの第2素子E2aおよびE2bは、露光開始タイミングが異なるローリングシャッタ方式によって制御される。
[2−5.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)〜(1d)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0071】
(2a)本実施形態では、単位素子ブロックBaが、第2素子E2の代わりに、略1/4の大きさを有する4つの第2素子E2a〜E2dを有し、撮像モードでは、複数の第2素子E2a〜E2dのそれぞれからが画素値を読み出している。従って、本実施形態によれば、より高精細な撮像画像を生成することができる。
【0072】
[2−6.変形例]
上記実施形態では、撮像期間の開始後、トランジスタM1bが時刻t11のタイミングでオフされているが、
図11に示す時刻t15のタイミングでオフされるようにしてもよい。この場合、時刻t11〜t17の期間をシャッタ期間として第2素子E2bのカソードに蓄積された電荷がトランジスタM3のゲートに転送され、その電荷に応じた信号レベル(即ち、検出レベル)を有する検出信号ScがAD変換部322に出力される。つまり、複数の第2素子E1及びE2のシャッタ期間を同じ長さとすることができる。
【0073】
[3.第3実施形態]
[3−1.第1実施形態との相違点]
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0074】
第3実施形態は、走査部20が省略されると共に、発光部10a、受光素子アレイ31および単位回路321bの構成が第1実施形態とは相違する。
[3−2.発光部/受光素子アレイ]
発光部10aは、
図12に示すように、複数の発光素子11を備え、各発光素子11には、それぞれレンズ12が設けられている。各レンズ12は、発光素子11からの照射光を、それぞれ異なる方向に出射するように設定されている。ここでは、M個の発光素子11およびレンズ12を備える。各レンズ12は、それぞれがM分割された検知領域のいずれかに対応づけられ、各発光素子11からの照射光が、対応する分割された検知領域に向けて照射されるように設定されている。
【0075】
受光素子アレイ31は、図示を省略するが、複数の単位素子ブロックBを備え、各単位素子ブロックには、発光部10aと同様に、それぞれレンズが設けられている。ここでは、M個の単位素子ブロックBおよびレンズを備える。各レンズは、それぞれ、M分割された検知領域のいずれかに対応づけられ、対応する分割された検知領域から到来する反射光のみが単位素子ブロックBに入射されるように設定されている。
【0076】
[3−3.単位回路]
図13に示すように、単位回路321bでは、
図3に示した単位回路321に対して、トランジスタM7が追加されている。
【0077】
トランジスタM7は、トランジスタM3と、検出信号Sciを増幅する増幅器A3との間に設けられ、制御信号φseliに応じて経路L21を導通または遮断する。なお、
図13に示された符号において、符号の最後に付与されているiは、単位素子ブロックBが複数存在することによって、複数存在する単位回路321bを識別する識別子であり1〜Mの値をとる。
【0078】
このような単位回路321aを用いた場合、制御信号φseliを用いることによって、検出信号Sciを個別に出力させることができる。このため、
図14に示すように、複数の単位回路321aを接続することにより、検出信号Sciに対する増幅器およびAD変換器、即ち、
図3における増幅器A3およびAD変換器AD3を、複数の単位回路321a間で共用してもよい。
【0079】
また、この場合、
図11を用いて説明した場合と同様に、撮像期間を前半と後半とに分けて、方位1についての検出信号Sc1を処理し、後半では方位2についての検出信号Sc2を処理するように構成してもよい。
【0080】
[3−4.効果]
以上詳述した第3実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)〜(1c)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0081】
(3a)第3実施形態によれば、複数の単位回路321bの間で、検出信号Sciを処理する増幅器およびAD変換器を共用させることができるため、AD変換部322の回路規模を抑制することができる。
【0082】
(3b)第3実施形態によれば、発光部10aおよび受光素子アレイ31にレンズを設けることによって、機械的な手法を用いる走査部20を用いることなく走査を実現しているため、装置規模を抑制することができる。
【0083】
[4.第4実施形態]
[4−1.第1実施形態との相違点]
第4実施形態は、基本的な構成は第3実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第3実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0084】
第4実施形態は、単位回路321cの構成、および駆動制御部51での制御内容が第1実施形態とは相違する。
[4−2.単位回路]
図15に示すように、単位回路321cでは、
図3に示した単位回路321に対して、トランジスタM8〜M11、コンデンサC1,C2、定電流回路CU1が追加されている。
【0085】
これらは、いずれもトランジスタM3以降の経路L21に設けられている。また、これら追加された構成のうち、トランジスタM8,M9、及びにコンデンサC1,C2が、保持回路に相当する。
【0086】
コンデンサC1及びC2は、トランジスタM3と検出信号Sciを増幅する増幅器A3との間にて、経路L21とグランドとの間にそれぞれ接続されている。以下では、コンデンサC1と経路L21との接続点をシフト点P1、コンデンサC2と経路L21との接続点をシフト点P2という。
【0087】
トランジスタM8は、トランジスタM3とシフト点P1との間に設けられ、制御信号φshaiに従って、経路L21を導通または遮断する。
トランジスタM9は、シフト点P1とシフト点P2との間に設けられ、制御信号φshbiに従って、経路L21を導通または遮断する。
【0088】
トランジスタM10は、シフト点P2の信号レベルresiを増幅し、検出信号Scとして出力する。
トランジスタM11は、トランジスタM10と増幅器A3との間に設けられ、信号φseliに従って、経路L21を導通または遮断する。
【0089】
定電流回路CU1は、トランジスタM10にバイアス電流を流す。
このように構成された単位回路321cでは、第2素子E2のカソードに蓄積された電荷を、バケツリレー方式で、コンデンサC1およびコンデンサC2に保持することができる。
【0090】
[4−3.駆動制御部]
駆動制御部51による制御内容について説明する。但し、単位回路321cは、
図14で示したように、検出信号Sciを処理する増幅器およびAD変換器を、二つの単位回路321cで共用するように接続されているものとする。
【0091】
撮像モードでは、トランジスタM1、M2、及びM4〜M6は、いずれの単位回路321cも、第1実施形態の場合と同様にオンオフ制御される。これにより、第2素子E2のカソード電位VpiおよびトランジスタM3のゲート電位Vgiの波形も同様のものとなる。
【0092】
時刻t3では、トランジスタM2と同時に、トランジスタM8及びM9もオンに設定され、シフト点P1及びP2の電位がリセットされる。その後、トランジスタM9は、トランジスタM2と同様に、時刻t4の直前でオフされ、トランジスタM8は、時刻t5までオンに保持される。
【0093】
時刻t4のタイミングでトランジスタM1が一時的にオンすると、第2素子E2のカソードに蓄積された電荷(即ち、電位Vpi)が、トランジスタM3のゲートに転送され、そのときのゲートの信号レベルVgiがトランジスタM3で増幅され、コンデンサC1に充電される。その後、時刻t5のタイミングで、トランジスタM8がオフすることで、第2素子E2により蓄積された電荷に応じた信号レベルがコンデンサC1に記憶される。
【0094】
ここまでは、二つの単位回路321cにて同一の制御が行われ、これ以降は、異なる制御が行われる。
時刻t5のタイミングで、方位1を処理する単位回路321c(以下、第1単位回路)のトランジスタM11がオンされる。すると第1単位回路では、コンデンサC2に記憶されている信号レベルres1がトランジスタM10で増幅され、検出信号Sc1として出力される。この検出信号Sc1の信号レベルが、方位1についての基準レベルとしてAD変換器によってサンプリングされる。トランジスタM11は時刻t7までオンに保持される。
【0095】
時刻t6のタイミング、ここでは撮像モードから距離測定モードに切り替わるタイミングで、第1単位回路のトランジスタM8およびM9が一時的にオンされる。すると第1単位回路では、コンデンサC1に記憶されている信号レベルsig1が、コンデンサC2に転送され、更に、トランジスタM10で増幅され、検出信号Sc1として出力される。この検出信号Sc1の信号レベルが、方位1についての検出レベルとしてAD変換器によってサンプリングされる。
【0096】
時刻t7のタイミングで、第1単位回路のトランジスタM11がオフされ、方位2を処理する単位回路321c(以下、第2単位回路)のトランジスタM11がオンされる。すると、第2単位回路では、コンデンサC2に記憶されている信号レベルres2がトランジスタM10で増幅され、検出信号Sc2として出力される。この検出信号Sc2の信号レベルが、方位2についての基準レベルとしてAD変換器によってサンプリングされる。トランジスタM11は時刻t9までオンに保持される。
【0097】
時刻t8のタイミングで、第2単位回路のトランジスタM8およびM9が一時的にオンされる。このとき第2単位回路では、コンデンサC1に記憶されている信号レベルsig2が、コンデンサC2に転送され、更に、トランジスタM10で増幅され、検出信号Sc2として出力される。この検出信号Sc2の信号レベルが、方位2についての検出レベルとしてAD変換器によってサンプリングされる。
【0098】
[4−4.効果]
以上詳述した第4実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)〜(1c)、(3a)及び(3b)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0099】
(4a)第4実施形態では、コンデンサC2に基準レベル、コンデンサC1に検出レベルを記憶させるため、撮像期間に縛られることなく、任意のタイミングで検出信号Scを読み出すことができるため、制御の自由度を高めることができる。
【0100】
[第5実施形態]
[5−1.第1実施形態との相違点]
第5実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0101】
第5実施形態は、モード設定部52による動作モードの切り替え方が第1実施形態とは相違する。
[5−2.モード設定部]
モード設定部52が実行する処理を、
図17に示すフローチャートを用いて説明する。
【0102】
本処理は、繰り返し実行される。
本処理が開始されると、S210にて、モード設定部52は、情報取得部40を介して、渋滞情報、および車速Vを含む情報を取得する。
【0103】
S220では、モード設定部52は、S210で取得した渋滞情報に基づき、自車が走行中の道路が渋滞中であるか否かを判定する。なお、渋滞中であるか否か野判定は、物標検出部53での検出結果を利用して行ってもよい。S220にて肯定判定された場合はS230に移行し、否定判定された場合はS240に移行する。
【0104】
S240では、モード設定部52は、動作モードを距離測定モードに設定して、検知領域の全体に渡る走査を実行する。これにより、距離測定部33からは、検知領域に存在する物標との距離を表す距離画像が得られる。
【0105】
S250では、モード設定部52は、S210で取得した情報に基づき、市街地を走行中であるか否かを判定する。S250で肯定判定された場合はS230に移行し、否定判定された場合は、本処理を終了する。
【0106】
市街地を走行しているか否かの判定は、例えば、速度Vが予め設定された閾値Vth以下であるか否かによって行ってもよい。また、瞬時的な速度だけでなく、速度の時間変化等を考慮し、閾値Vth以下の状態が所定時間以上継続しているか否かによって判定してもよい。また、物標検出部53での検出結果を利用して判定してもよい。
【0107】
S230では、モード設定部52は、動作モードを撮像モードに設定して、検知領域の全体に渡る走査を実行する。これにより、画像生成部34からは、検知領域を撮像した撮像画像が得られる。
【0108】
このようなモード設定処理を実行することにより、本実施形態では、
図18に示すように、動作モードの切替は、検知領域の全体に渡る走査が実行される毎に、即ち、方位1〜方位Mの全ての方位について、同じ動作モードでの処理が連続して実行される毎に行われる。
【0109】
そして、渋滞中であれば、撮像モードのみが繰り返され、比較的近距離の物標が重点的に検出される。渋滞中ではなく且つ市街地走行中であれば、距離測定モードと撮像モードとが交互に切り替えられ、近距離の物標及び遠距離の物標がバランスよく検出される。渋滞中でも市街地走行中でもなければ、高速道路を走行中であると推定し、距離測定モードのみが繰り返され、比較的遠距離の物標が重点的に検出される。
【0110】
なお、ここでは、状況によっては、一方の動作モードのみが繰り返される場合があるが、両動作モードが実行される割合を変化させてもよい。
[5−3.効果]
以上詳述した第5実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)〜(1d)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0111】
(5a)第5実施形態によれば、状況に適した動作モードが適宜選択されるため、その状況下において必要な情報を効率よく検出することができる。
[6.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0112】
(6a)上記実施形態では、検出信号Saと検出信号Spとを別々のAD変換器AD1及びAD2を用いてサンプリングを行っているが、
図19に示すように、両検出信号SaおよびSpに対して、一つのAD変換器AD2を用いるようにしてもよい。但し、この場合、単位回路321dは、トランジスタM5およびM6を、共通の制御信号φToFの代わりに、異なる制御信号φToFa及びφToFbによって個別に制御するように構成する必要がある。また、この場合、距離測定モードにおいて、同一の単位素子ブロックBに属する第1素子E1と第2素子E2とを同時に使用することができないため、いずれか一方を選択して処理を実行する必要がある。具体的には、第1素子E1を使用しているときに、検出信号Saの飽和が検出されると、第2素子E2に切り替え、また、第2素子E2を使用しているときに、検出信号Spのピーク値が閾値以下であることが検出されると、第1素子E1に切り替えるように制御すればよい。
【0113】
(6b)更に、
図20に示すように、検出信号Scも含めて一つのAD変換器AD2を用いるようにしてもよい。この場合、単位回路321eには、
図19に示した単位回路321dに、トランジスタM12を追加する必要がある。トランジスタM12は、トランジスタM13の後段に設けられ、制御信号φISに従って経路L22を導通または遮断する。そして、トランジスタM5、M6、及びM12のいずれか一つがオンされるように制御すればよい。
【0114】
(6c)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0115】
(6d)上述した受光素子アレイおよび光検出装置の他、当該受光素子アレイまたは光検出装置を構成要素とするシステムなど、種々の形態で本開示を実現することもできる。例えば、当該受光素子アレイまたは光検出装置を物体検出装置として、運転支援システムまたは自動運転システムに適用することもできる。運転支援システムは、例えば、衝突回避支援、車線維持支援、標識認識支援、車線変更支援、灯火制御等が含まれる。