特許第6791073号(P6791073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791073
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】加飾部材
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/52 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   B60R19/52 K
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-173844(P2017-173844)
(22)【出願日】2017年9月11日
(65)【公開番号】特開2019-48559(P2019-48559A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2019年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】西川 友和
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−345319(JP,A)
【文献】 特開2003−141908(JP,A)
【文献】 特開2005−47135(JP,A)
【文献】 特開2005−74639(JP,A)
【文献】 特開2003−191808(JP,A)
【文献】 特開2017−19314(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0008388(US,A1)
【文献】 特開昭64−29892(JP,A)
【文献】 特開2007−185993(JP,A)
【文献】 特開昭61−132445(JP,A)
【文献】 特開2004−196122(JP,A)
【文献】 特開平11−115658(JP,A)
【文献】 特開2005−67538(JP,A)
【文献】 特開2016−145052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端面(22)が被加飾面となる突出した形状をもつ突出部(21)と、該被加飾面にホットスタンプで形成された加飾層(23)と、を有する加飾基材(2)と、
該突出部(21)の突出方向の先方に該加飾基材(2)と間隔を隔てて配置された、通孔(30)が形成された表面部材(3)と、
を有する加飾部材(1)であって、
該通孔(30)は、該突出方向に沿う方向で後方に投影したときに、該加飾層(23)のみに投影されることを特徴とする加飾部材(1)。
【請求項2】
前記表面部材(3)は、前記通孔(30)が開口する板状の部材である請求項1に記載の加飾部材。
【請求項3】
前記加飾基材(2)と前記表面部材(3)とは、前記突出方向に5〜20mmの間隔を隔てて配置される請求項1〜2のいずれか1項に記載の加飾部材。
【請求項4】
前記突出部(21)は、前記先端面(22)が前記突出方向に対して垂直方向に沿って広がるとともに、該先端面(22)が該突出部(21)の外周面(26)と交差する角部(25)が滑らかなR形状をなすように形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の加飾部材。
【請求項5】
前記加飾層(23)の端部は、前記角部(25)のR形状の湾曲の中心部より前記外周面側に位置する請求項4記載の加飾部材。
【請求項6】
車両用のグリルである請求項1〜5のいずれか1項に記載の加飾部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットスタンプにて形成された加飾層を有する加飾部材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のラジエータグリルは、車両の前端に配され、その奥に配されたラジエータに走行風を当てるための通風口の役割を有する。この役割のため、ラジエータグリルは、ルーバー状やメッシュ状に形成され、すき間が通風口となっている。そして、ラジエータグリルは、車両の前面に配される部品であり、高い意匠性を持つことが求められている。意匠性の要求に対して、ルーバー状やメッシュ状の前端部(先端面)に加飾を行うことが行われている。
【0003】
ラジエータグリルの加飾方法には、グリル(樹脂成形品)の前端部に位置する被加飾面にホットスタンプで加飾層を形成する方法がある。ホットスタンプは、被加飾面の表面に転写シートを沿わせ、加熱状態の押圧体を押しつけ(加熱と加圧を行う)、転写シートの箔を被加飾面に転写して加飾層を形成する方法である。
【0004】
ホットスタンプは、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1には、被加飾面をもつ被加飾部材(加飾層が形成されていないグリル)に、転写シートを介して、加熱状態のスタンプ版(押圧体)を押しつけ、被加飾面に転写シートの箔を熱転写することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−145052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ホットスタンプは、転写シートの箔を熱転写するという製造方法であるため、熱転写された加飾層の端部が不均一(見切りが悪いとも称する)になりやすかった。加飾層の端部が不均一とは、加飾層の端部が所望の状態からバラツキが生じる状態である。例えば、端部が直線をなすようにホットスタンプで加飾層を製造したときに、加飾層の端部が直線を形成できずに微細な波状(数十μm程度のぎざぎざ形状)をなすことがある。これは、被加飾部材の被加飾面とスタンプ版とが圧接する方向が、スタンプ版の弾性により、加飾層の端部でズレることに起因する。加飾層の端部が不均一になると、加飾層の形状が不均一となり、グリルを視認したときに加飾層の見切りが悪化し、意匠性の低下を招く。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、ホットスタンプで形成された加飾層を備えた加飾部材であっても、意匠性の低下が抑えられた加飾部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の加飾部材は、先端面が被加飾面となる突出した形状をもつ突出部と、被加飾面にホットスタンプで形成された加飾層と、を有する加飾基材と、突出部の突出方向の先方に加飾基材と間隔を隔てて配置された、通孔が形成された表面部材と、を有する加飾部材であって、通孔は、突出方向の後方に投影したときに、加飾層に投影されることを特徴とする。
【0008】
本発明の加飾部材は、表面部材の通孔を突出方向の後方(すなわち、加飾基材)に投影したときに、通孔が加飾層に投影される。この状態では、表面部材側から加飾部材を見たときに、加飾層(詳しくは、加飾層の通孔が投影した部分)が通孔を介して視認できる。つまり、加飾部材が加飾層の高い意匠性を得ることができる。
【0009】
そして、表面部材は、通孔以外の部分で、加飾基材が直接視認されることを抑える。このことにより、表面部材側から加飾部材を見たときに、通孔が加飾層に投影されていない部分が直接視認されなくなる。
この結果、本発明の加飾基材では、ホットスタンプで形成された加飾層を備えた加飾部材であっても、意匠性の低下が抑えられたものとなっている。
【0010】
本発明の加飾部材は、表面部材が、通孔が開口する板状の部材であることが好ましい。この構成によると、加飾部材(あるいは、加飾基材)が大型化しても、簡単に多数の通孔を形成できる。
【0011】
本発明の加飾部材は、通孔が、加飾層のみに投影されることが好ましい。この構成によると、表面部材側から加飾部材を見たときに、通孔から加飾層のみが視認されることとなり、より意匠性が向上する。
【0012】
本発明の加飾部材は、加飾基材と表面部材とが、突出方向に5〜20mmの間隔を隔てて配置されることが好ましい。この構成によると、表面部材と加飾基材とが、所定の間隔を隔てることで、奥行き感を確保でき、より意匠性が向上する。
また、表面部材と加飾基材とが、所定の間隔を隔てることで、加飾層の端部が視認されることを抑えながら、表面部材から加飾基材への通気性を確保することができる。
【0013】
本発明の加飾部材は、突出部が、先端面が突出方向に対して垂直方向に沿って広がるとともに、先端面が突出部の外周面と交差する角部が滑らかなR形状をなすように形成されていることが好ましい。
この構成によると、先端面が突出方向に対して垂直方向に沿って広がっており、ホットスタンプで加飾層を形成するときに、先端面の全面を均一に加圧できる。これにより、形成される加飾層の加圧ムラが抑えられ、意匠性の低下が抑えられる。
【0014】
本発明の加飾部材は、加飾層の端部が、角部のR形状の湾曲の中心部より外周面側に位置することが好ましい。この構成によると、表面部材側から加飾部材を見たときに、通孔を介して加飾層の端部がより視認されにくくなり、より意匠性の低下が抑えられる。
【0015】
本発明の加飾部材は、車両用のグリルであることが好ましい。この構成によると、安価なホットスタンプで加飾層を形成することができ、安価なグリルを得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1のラジエータグリルの正面図である。
図2図1中のII−II線での矢視断面図である。
図3図1中のIII−III線での矢視断面図である。
図4】実施形態1のラジエータグリルの部分拡大正面図である。
図5図4中のV−V線での矢視断面図である。
図6】実施形態2のラジエータグリルの部分拡大断面図である。
図7】実施形態3のラジエータグリルの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態を用いて本発明の加飾部材を、車両用ラジエータグリルに適用した形態を用いて具体的に説明する。なお、実施の形態は、本発明を具体的に説明するための1つの形態を示すものであり、本発明が実施の形態のみに限定されるものではない。
【0018】
[実施形態1]
本形態のラジエータグリル1(以下、グリル1と称する)は、図1に正面図を示したように、車両の幅方向(図1の左右方向)に広がる形状を有している。図1は、グリル1を車両の前方側から見た正面図である。
【0019】
グリル1は、図2図3に断面図で示したように、加飾基材2と表面部材3とを有し、表面部材3が加飾基材2の車両の前方側に配されている。なお、図2は、図1中のII−II線での断面を示す図である。図3は、図1中のIII−III線での断面を示す図である。
【0020】
加飾基材2は、基材基部20と、基材基部20から車両前方側に突出した突出部21と、突出部21の突出方向の先端面22にホットスタンプで形成された加飾層23と、を有する。加飾基材2は、複数の基材基部20を幅方向に所定の間隔を保持した状態で有する。複数の基材基部20の間は、通風孔24となる。
【0021】
基材基部20は、図2〜3に断面図で示したように、車両の上下方向に対して所定の角度(本形態では45°)で傾斜した状態で延びる略帯状を有する。基材基部20は、車両の前方側に表面が、車両後方側に裏面が、それぞれ面している。基材基部20の表面には、車両前方に向かって突出する複数の突出部21が形成されている。すなわち、基材基部20の表面から、垂直な方向に突出して突出部21が形成されている。
突出部21は、帯状の基材基部20の表面から、車両の前方側に突出した部分である。突出部21は、帯状の基材基部20の伸びる方向(帯状の長手方向)において、所定の間隔を隔てて複数がもうけられている。
【0022】
突出部21は、図2図3に示すように、基材基部20から、断面形状がほぼ一定の状態で、突出する。突出部21は、突出した先端面22が四角形状(方形状、ひし形形状)をなしている。突出部21の先端面22(すなわち、突出部21の突出方向に垂直な断面形状)は、帯状の基材基部20の幅方向における長さが一辺の長さとなっている正方形状をなしている。
突出部21の先端面22は、突出方向に垂直な平面をなしている。
すなわち、突出部21は、帯状の基材基部20の表面から、突出方向に突出した柱状(角柱状)をなしている。
突出部21は、基材基部20の表面から突出する突出高さが限定されない。グリル1において意匠性等を確保できる高さとすることができる。
【0023】
突出部21の先端面22には、ホットスタンプで形成された加飾層23が形成されている。加飾層23は、先端面22の全面に形成されている。すなわち、突出部21の先端面22は、角部まで加飾層23が形成されている。
【0024】
加飾層23は、ホットスタンプで形成された意匠面を形成する薄層(薄膜層や被膜層とも称する)である。加飾層23は、ホットスタンプで形成されていれば、その他の具体的な構成が限定されない。加飾層23は、加飾基材2の突出部21の先端面22に転写シートを沿わせ、加熱状態の押圧体を押しつけ(加熱と加圧を行う)、転写シートの箔を先端面22に転写するホットスタンプにより形成される。
加飾基材2は、その表面に、半透明乃至透明の保護層を有していてもよい。特に、保護層を加飾層23の表面に有することで、通孔30を通過した異物が衝突しても加飾層23が損傷することが抑えられ、加飾層23の意匠性の低下が抑えられる。
【0025】
表面部材3は、加飾基材2の突出部21の突出方向の先方(すなわち、車両の前方側)に、加飾基材2と間隔を隔てて配置された部材である。表面部材3は、図1に示すように、加飾基材2の正面側を被覆するように配される。表面部材3は、多数の通孔30が開口した板状の部材である。表面部材3は、図1に示したように、多数の通孔30が開口していない部分が略格子状をなしている。表面部材3は、通孔30が開口した板状の部材よりなるが、複数の部材を組み合わせて形成してもよい。例えば、棒状の部材を格子状に組み合わせて形成してもよい。
【0026】
表面部材3は、半透明乃至不透明に形成されていることが好ましく、本形態では不透明である。これにより、通孔30以外の部分で、後方側の部材(すなわち、加飾基材2)が視認されることが抑えられる。
表面部材3は、通孔30以外の部分に、更に加飾層や意匠表現等の意匠性を高める構成を備えていてもよい。
【0027】
通孔30は、図2図3に示したように、表面部材3を厚さ方向(すなわち、車両の前後方向)で貫通して形成されている。通孔30は、車両の前方側から後方側に進むにつれて、孔の内径が縮径した内周面31により区画される。すなわち、内周面31は、突出部21の突出方向に対して傾斜した、傾斜面をなすように形成されている。通孔30は、図1図4に示したように、表面部材3の表面32での開口形状が、裏面33での開口形状よりも大きく形成されている。
【0028】
通孔30は、図1図4に示したように、加飾基材2の突出部21(すなわち、先端面22及び加飾層23)に対応した位置に開口している。突出部21に対応した位置とは、通孔30を突出部21の突出方向の後方(すなわち、加飾基材2)に投影したときに、突出部21(の先端面22、加飾層23)に投影される位置である。図4は、グリル1の表面部材3の通孔30の一つの近傍を拡大した拡大図(車両前方から見た正面図)である。
通孔30は、その内周形状(表面32での開口形状及び裏面33での開口形状)が限定されない。本形態では、図1図4に示したように、四角形状(方形状、ひし形形状)をなしている。
通孔30は、図5に示したように、その中心が、加飾基材2の突出部21(すなわち、先端面22及び加飾層23)の中心と一致した状態で開口している。図5は、図4中のV−V線での断面を示す図である。
【0029】
通孔30の裏面33での開口部34の端部は、図4図5に示したように、加飾層23に投影されるように形成されている。具体的には、投影された通孔30の開口部34の全周が加飾層23のみに投影されるように形成されている。加飾層23の外周形状は、図4中に破線で示している。本形態では、通孔30を加飾基材2に投影したときに、孔30は加飾層23の端部に囲まれた内部に位置する。
【0030】
通孔30は、図5に示すように、裏面33での開口部34が、加飾層23の端部より所定の距離L1で、端部よりも内部(中心側)に位置している。所定の距離L1の具体的な数値は限定されない。本形態では、0mm以上であることが好ましい。L1がこの範囲内となることで、グリル1を車両の前方側から見たときに、加飾層23の端部が視認されにくくなる。すなわち、車両のラジエータグリルとしての意匠性を向上できる。L1は、0.3 mm以上であることがより好ましく、0.8〜1.2mmであることが更に好ましい。
L1が過剰に大きくなると、結果として通孔30の開口面積が減少し、ラジエータグリルとしての通気性が低下するおそれがある。
【0031】
表面部材3は、図5に示すように、加飾基材2に対して所定の距離L2を隔てて配置されている。具体的には、表面部材3の裏面33と、加飾基材2の突出部21の先端面22(すなわち、加飾層23)とが、突出部21の突出方向(すなわち、車両の前後方向)において、L2の間隔を隔てて配置されている。
【0032】
所定の距離L2の具体的な数値は限定されない。本形態では、5〜20mmであることが好ましい。L2がこの範囲内となることで、車両のラジエータグリルとしての機能と意匠性を両立できる。5mm未満では、表面部材3と加飾基材2の間隔が短くなりすぎ、ラジエータグリルとしての通気性が低下する。20mmを超えると、加飾層23の端部が視認されやすくなる。L2は3〜10mmがより好ましい。
【0033】
(本形態の効果)
本形態のグリル1は、先端面22が被加飾面となる突出した形状をもつ突出部21と、被加飾面にホットスタンプで形成された加飾層23と、を有する加飾基材2と、突出部21の突出方向の先方に加飾基材2と間隔を隔てて配置された、通孔30が形成された表面部材3と、を有する。そして、通孔30は、突出方向の後方に投影したときに、加飾層23に投影される。
【0034】
この構成によると、まず、本形態のグリル1は、表面部材3を加飾基材2に投影したときに、通孔30が加飾層23に投影される。この状態では、車両の前方から投影方向に沿ってグリル1を見た場合、加飾層23が通孔30を介して視認できる。つまり、グリル1の加飾層23を視認でき、加飾層23の高い意匠性をグリル1が得られる。
【0035】
そして、本形態のグリル1は、表面部材3を有することで、通孔30以外の部分では、加飾基材2が直接視認されることが抑えられている。このことにより、車両の前方からグリル1を見たときに、加飾層23の端部が直接視認されることが抑えられる。この結果、本形態のグリル1は、ホットスタンプで形成された加飾層23を備えたものであり、更に加飾層23の端部が波状になっている場合でも、当該端部が視認されることが抑えられ、グリル1の意匠性の低下が抑えられたものとなっている。
【0036】
本形態のグリル1は、表面部材3が、通孔30が開口する板状の部材である。この構成によると、グリル1(あるいは、加飾基材2)が大型化しても、簡単に多数の通孔30を有する表面部材3を得ることができる。
さらに、この表面部材3は、加飾基材2に対しての組み付けを簡単に行うことができ、グリル1の製造に要する工数(コスト)を低減できる。
すなわち、本形態のグリル1は、ホットスタンプで形成された加飾層23を備えたグリル1であっても、意匠性の低下が抑えられたものを容易に得ることができる。
【0037】
本形態のグリル1は、通孔30が、加飾層23のみに投影される。この構成によると、車両の前方側からグリル1を見たときに、通孔30から加飾層23の端部に囲まれた内部のみが視認されることとなり、確実に意匠性の低下が抑えられる。
【0038】
本形態のグリル1は、加飾基材2と表面部材3とが、突出方向に5〜20mmの間隔を隔てて配置される。この構成によると、加飾基材2と表面部材3とが、所定の間隔を隔てることで、奥行き感を確保でき、より意匠性が向上する。
また、表面部材3と加飾基材2とが、所定の間隔を備えることから、グリル1としての通気性が十分に確保できる。
本形態のグリル1は、加飾基材2の加飾層23を、メッキ等の工法と比較して安価な工法であるホットスタンプで形成することができる。このことから、意匠性に優れた安価なグリル1となる効果を発揮する。
【0039】
[実施形態2]
本形態は、加飾基材2の突出部21及び加飾層23の形態が異なること以外は、実施形態1と同様なグリル1である。
【0040】
本形態のグリル1は、図6に示したように、突出部21の角部25が、湾曲したR形状をなしている。すなわち、角部25の断面形状が、なめらかな弧状をなすように形成されている。より具体的には、突出部21は、先端面22と、角部25と、外周面26と、を有する。図6は、図5と同様に、本形態のグリル1の通孔30の近傍を拡大して示した断面図である。
【0041】
先端面22は、突出部21の突出方向の先端に位置し、突出部21の突出方向に垂直な方向に沿って広がる平面をなしている。
外周面26は、突出部21の周方向に沿った側面である。
角部25は、先端面22と外周面26とをつなぐ部分である。角部25は、図6に示したように、断面形状が円弧面をなす。角部25の円弧面は、曲率半径の中心周りで90°の角度による円弧面である。具体的には、角部25の先端面22側の端部27と、角部25の外周面26側の端部28とは、角部25の曲率半径の中心に対して、90°ズレた位置にある。角部25は、本形態のグリル1では、角部25の曲率半径は、0.3〜0.8mm(R0.3〜0.8)であることが好ましい。
【0042】
加飾層23は、その端部が角部25の湾曲面の途中に位置する。加飾層23の端部は、角部25のR形状の湾曲の中心部より外周面26側に位置している。より具体的には、端部27を0°とし、端部28を90°としたときの周方向における角度位置が45°以上となる。加飾層23は、角部25の角度位置が45°以上であることが好ましく90°であることがより好ましい。すなわち、加飾層23は、角部25の円弧面を被覆することが好ましい。
【0043】
本形態では、通孔30を突出部21に投影したときに、先端面22の端部27が、通孔30の開口部34と一致する位置となっている。すなわち、端部27から突出部21の突出方向の先方に、通孔30の開口部34が位置する。
本形態においても、図6に示したように、表面部材3の通孔30は、突出方向の後方に投影したときに、加飾層23のみに投影される。
【0044】
(本形態の効果)
本形態においても、実施形態1と同様な効果を発揮する。
さらに、本形態のグリル1は、突出部21が、先端面22が突出方向に対して垂直方向に沿って広がるとともに、先端面22が突出部21の外周面26と交差する角部25が滑らかなR形状をなすように形成されている。
本形態のグリル1は、加飾層23の端部が、角部25のR形状の湾曲の中心部より、突出部21の外周面26側(すなわち、突出部21の突出方向の基端側)に位置している。
【0045】
この構成によると、先端面22が突出方向に対して垂直方向に沿って広がっており、ホットスタンプで加飾層23を形成するときに、先端面22の全面を均一に加圧できる。これにより、形成される加飾層23の加圧ムラが抑えられ、意匠性の低下が抑えられる。
【0046】
さらに、突出部21が全体として先細の形状となるため、樹脂成形での成形性が向上する。すなわち、簡単に加飾基材2を製造できる。また、グリル1において、通孔30を通過した風が、湾曲した角部25に案内されるため、通風孔24に風がより流れやすくなる。すなわち、グリル1の通気性の低下が抑えられる。
【0047】
そして、加飾層23の端部が角部25に重なる位置であって、加飾層23の端部がR形状の湾曲の中心部より突出部21の外周面26側(すなわち、突出部21の突出方向の基端側)に位置している。この構成によると、車両前方側から突出部21を見た場合でも、湾曲の途中に位置するため加飾層23の端部がより視認されにくくなる。
さらに、湾曲の中心部より突出部21の外周面26側(図6中の45°以上)に加飾層23の端部が位置する。湾曲の中心部より突出部21の外周面26側の部分は、車両前方側からグリル1を視認したとき(正面視したとき)、加飾層23の端部を接線方向から視認することとなる。加飾層23の端部が波打っていても、波の振幅が小さく見える(意匠性の低下が抑えられる)。
この結果、車両前方からグリル1を視認する方向が、ずれを生じて加飾層23の端部の一部が見えた場合でも、意匠性の低下が抑えられる。
【0048】
[実施形態3]
本形態は、加飾基材2の突出部21の角部の形状が異なること以外は、実施形態2と同様なグリル1である。
【0049】
本形態の角部25は、図7に示したように、先端面22と外周面26とをつなぐ平面をなしている。いわゆるC面取りがなされた状態である。図7は、図5と同様に、本形態のグリル1の通孔30の近傍を拡大して示した図である。
本形態においても、角部25の表面が湾曲形状から平面形状と変わっても、実施形態2と同様な効果を発揮する。
本形態では、角部25の表面が平面形状となっており、凸となる湾曲形状の場合と比較して通気抵抗を低減でき、通孔30を通過する風を通風孔24により案内できる。すなわち、本形態のグリル1は、より通気性に優れたグリル1である。
【符号の説明】
【0050】
1:ラジエータグリル
2:加飾基材 20:基材基部 21:突出部
22:先端面 23:加飾層 24:通風孔
25:角部 26:外周面 27,28:端部
3:表面部材 30:通孔 31:内周面
32:表面 33:裏面 34:開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7