(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791081
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】屈折率測定装置及び屈折率測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/41 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
G01N21/41 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-185288(P2017-185288)
(22)【出願日】2017年9月26日
(65)【公開番号】特開2019-60713(P2019-60713A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(72)【発明者】
【氏名】永井 徹也
【審査官】
小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/207809(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0104601(US,A1)
【文献】
特開2006−170775(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102010004824(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 − G01N 21/01
G01N 21/17 − G01N 21/61
G01J 3/00 − G01J 4/04
G01J 7/00 − G01J 9/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Vブロックプリズムに形成されているV字状の溝に保持された試料に対して、前記Vブロックプリズムを介して測定光を照射することにより、試料を透過した測定光を検出して試料の屈折率を測定する屈折率測定装置であって、
試料を透過した測定光の強度を検出する検出器と、
試料を透過することにより複数色に分光される測定光のカラー画像を撮像する撮像部と、
試料を透過した測定光を受光する角度、又は、試料に入射する測定光の角度を変化させることにより走査を行う走査処理部と、
前記走査処理部による走査に伴い変化する前記検出器の検出強度と、前記撮像部により撮像されるカラー画像における前記検出器に入射する測定光の位置に対応する色情報とに基づいて、検出強度の各ピークに対応する波長を特定する波長特定処理部とを備えることを特徴とする屈折率測定装置。
【請求項2】
前記波長特定処理部により特定された検出強度の各ピークと波長との関係を、互いに対応付けて記憶する記憶部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の屈折率測定装置。
【請求項3】
前記波長特定処理部により特定された検出強度の各ピークと波長との関係に基づいて、検出強度の各ピークに対応する波長における試料の屈折率を算出する屈折率算出処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の屈折率測定装置。
【請求項4】
Vブロックプリズムに形成されているV字状の溝に保持された試料に対して、前記Vブロックプリズムを介して測定光を照射することにより、試料を透過した測定光を検出して試料の屈折率を測定する屈折率測定方法であって、
試料を透過した測定光を受光する角度、又は、試料に入射する測定光の角度を変化させることにより走査を行いつつ、試料を透過した測定光の強度を検出器で検出するとともに、試料を透過することにより複数色に分光される測定光のカラー画像を撮像部で撮像する走査ステップと、
前記走査ステップによる走査に伴い変化する前記検出器の検出強度と、前記撮像部により撮像されるカラー画像における前記検出器に入射する測定光の位置に対応する色情報とに基づいて、検出強度の各ピークに対応する波長を特定する波長特定ステップとを含むことを特徴とする屈折率測定方法。
【請求項5】
前記波長特定ステップにより特定された検出強度の各ピークと波長との関係を、互いに対応付けて記憶部に記憶する記憶ステップをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の屈折率測定方法。
【請求項6】
前記波長特定ステップにより特定された検出強度の各ピークと波長との関係に基づいて、検出強度の各ピークに対応する波長における試料の屈折率を算出する屈折率算出ステップをさらに含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の屈折率測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Vブロックプリズムに形成されているV字状の溝に保持された試料に対して、前記Vブロックプリズムを介して測定光を照射することにより、試料を透過した測定光を検出して試料の屈折率を測定する屈折率測定装置及び屈折率測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屈折率測定装置の一例であるVブロック方式の屈折率測定装置では、Vブロックプリズムに形成されているV字状の溝に試料が載置され、Vブロックプリズムを介して試料に測定光が照射される。そして、波長に応じた角度でVブロックプリズムから出射する測定光が、一定の範囲で走査されて検出器で検出されることにより、その検出結果に基づいて試料の屈折率が測定される(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
この種の屈折率測定装置には、測定光の光路中に挿入可能な複数種類のフィルタが備えられている。複数種類のフィルタは、それぞれ異なる特定の波長の光のみを透過させる。これらのフィルタの中から選択された1つのフィルタが測定光の光路中に挿入されることにより、そのフィルタに対応する波長の測定光(単色光)のみが試料に照射されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/207809号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来のVブロック方式の屈折率測定装置では、測定光の光路中に挿入するフィルタの種類を切り替えることにより、各波長における試料の屈折率を測定することができる。しかしながら、試料の屈折率を多波長で測定する場合には、測定光の光路中に挿入するフィルタの種類を切り替えて、波長ごとに測定を繰り返さなければならないため、屈折率の測定に時間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、試料の屈折率を多波長で測定する際の測定時間を短縮することができる屈折率測定装置及び屈折率測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る屈折率測定装置は、Vブロックプリズムに形成されているV字状の溝に保持された試料に対して、前記Vブロックプリズムを介して測定光を照射することにより、試料を透過した測定光を検出して試料の屈折率を測定する屈折率測定装置であって、検出器と、撮像部と、走査処理部と、波長特定処理部とを備える。前記検出器は、試料を透過した測定光の強度を検出する。前記撮像部は、試料を透過することにより複数色に分光される測定光のカラー画像を撮像する。前記走査処理部は、試料を透過した測定光を受光する角度、又は、試料に入射する測定光の角度を変化させることにより走査を行う。前記波長特定処理部は、前記走査処理部による走査に伴い変化する前記検出器の検出強度と、前記撮像部により撮像されるカラー画像における前記検出器に入射する測定光の位置に対応する色情報とに基づいて、検出強度の各ピークに対応する波長を特定する。
【0008】
このような構成によれば、撮像部により撮像されるカラー画像の色情報に基づいて、検出器に入射する測定光の波長を特定することができる。これにより、検出器に入射する測定光の波長と、その波長の測定光が検出器に入射したときの検出強度のピークとを対応付けることができる。したがって、試料の屈折率を多波長で測定する際には、1回の走査で得られる検出強度の複数のピークについて、各ピークに対応する波長を特定することができる。このようにして特定された検出強度の各ピークと波長との関係を用いれば、1回の走査で試料の屈折率を多波長で測定することができるため、測定時間を短縮することができる。
【0009】
(2)前記屈折率測定装置は、記憶部をさらに備えていてもよい。前記記憶部は、前記波長特定処理部により特定された検出強度の各ピークと波長との関係を、互いに対応付けて記憶する。
【0010】
このような構成によれば、1回の走査で得られる検出強度の複数のピークについて、各ピークに対応する波長を特定し、その波長と各ピークとの関係を互いに対応付けて記憶部に記憶することができる。したがって、記憶部に記憶されている対応関係を読み出して演算を行えば、1回の走査で得られるデータに基づいて試料の屈折率を多波長で測定することができる。
【0011】
(3)前記屈折率測定装置は、屈折率算出処理部をさらに備えていてもよい。前記屈折率算出処理部は、前記波長特定処理部により特定された検出強度の各ピークと波長との関係に基づいて、検出強度の各ピークに対応する波長における試料の屈折率を算出する。
【0012】
このような構成によれば、1回の走査で得られる検出強度の複数のピークについて、各ピークに対応する波長を特定し、その波長と各ピークとの関係に基づく演算を屈折率算出処理部で行うことにより、試料の屈折率を多波長で自動的に測定することができる。したがって、短時間で容易に試料の屈折率を多波長で測定することができる。
【0013】
(4)本発明に係る屈折率測定方法は、Vブロックプリズムに形成されているV字状の溝に保持された試料に対して、前記Vブロックプリズムを介して測定光を照射することにより、試料を透過した測定光を検出して試料の屈折率を測定する屈折率測定方法であって、走査ステップと、波長特定ステップとを含む。前記走査ステップでは、試料を透過した測定光を受光する角度、又は、試料に入射する測定光の角度を変化させることにより走査を行いつつ、試料を透過した測定光の強度を検出器で検出するとともに、試料を透過することにより複数色に分光される測定光のカラー画像を撮像部で撮像する。前記波長特定ステップでは、前記走査ステップによる走査に伴い変化する前記検出器の検出強度と、前記撮像部により撮像されるカラー画像における前記検出器に入射する測定光の位置に対応する色情報とに基づいて、検出強度の各ピークに対応する波長を特定する。
【0014】
(5)前記屈折率測定方法は、記憶ステップをさらに含んでいてもよい。前記記憶ステップでは、前記波長特定ステップにより特定された検出強度の各ピークと波長との関係を、互いに対応付けて記憶部に記憶する。
【0015】
(6)前記屈折率測定方法は、屈折率算出ステップをさらに含んでいてもよい。前記屈折率算出ステップでは、前記波長特定ステップにより特定された検出強度の各ピークと波長との関係に基づいて、検出強度の各ピークに対応する波長における試料の屈折率を算出する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1回の走査で試料の屈折率を多波長で測定することができるため、測定時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る屈折率測定装置の構成例を示す概略平面図である。
【
図2】Vブロックプリズムの構成例を示した概略側面図である。
【
図3】
図1の屈折率測定装置における制御部の構成例を示すブロック図である。
【
図4】カメラにより撮像されるカラー画像の具体例を概略的に示した図である。
【
図5】カメラにより撮像されるカラー画像の具体例を概略的に示した図である。
【
図6】走査処理部の走査に伴う検出器の検出強度の変化の一例を概略的に示した図であり、モータの回転角と検出器の検出強度との関係を表している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.屈折率測定装置の全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る屈折率測定装置の構成例を示す概略平面図である。この屈折率測定装置は、Vブロックプリズム1を介して試料に測定光を照射することにより試料の屈折率を測定するVブロック方式の屈折率測定装置である。
【0019】
試料としては、例えばガラス、プラスチック又は液体などを挙げることができる。試料は、Vブロックプリズム1に形成されているV字状の溝11(
図1では溝11を真上から見た図を示している。)に載置され、試料を透過した測定光を検出器2で検出し、屈折角とVブロックプリズム1の屈折率から試料の屈折率を測定することができるようになっている。
【0020】
この屈折率測定装置には、上述のVブロックプリズム1及び検出器2に加えて、測定光を照射する光源部3と、光源部3からの測定光をVブロックプリズム1に導く第1光学系4と、Vブロックプリズム1を透過した測定光を検出器2に導く第2光学系5とが備えられている。
【0021】
光源部3には、複数の光源31が備えられている。光源31としては、例えばヘリウムランプ、水素ランプ及び水銀ランプが用いられ、ヘリウムd線、水素C線、水素F線、水銀e線、水銀g線及び水銀h線などの異なる波長の測定光を光源部3から照射することができるようになっている。光源31からの測定光は、ミラー32で反射され、光源部3から水平方向に照射される。ミラー32は、垂直方向(
図1における紙面前後方向)に延びる回転軸321を中心に回転可能となっており、ミラー32の回転位置に応じた光源31からの測定光を第1光学系4に導くことができる。ただし、光源31は、上記のような種類に限られるものではない。
【0022】
第1光学系4には、レンズ41、ミラー42,43,44、スリット46及びコリメータレンズ47などが備えられている。光源部3からの測定光は、レンズ41を通過し、ミラー42,43,44で順次に反射した後、スリット46を通過する。スリット46を通過した測定光は、コリメータレンズ47で平行光とされた後、Vブロックプリズム1に入射する。Vブロックプリズム1に対して一方の端面12から入射した測定光は、V字状の溝11に載置されている試料を透過した後、再びVブロックプリズム1を通り、他方の端面13から出射する。
【0023】
第2光学系5には、ミラー51,52、テレメータレンズ53及びビームスプリッタ54などが備えられている。第2光学系5は、モータ6の回転軸61に取り付けられた円板7に固定されている。具体的には、ミラー51,52及びテレメータレンズ53が、回転軸61に対して偏心した位置で回転軸61に平行に並び、ミラー52及びビームスプリッタ54が、回転軸61に対して垂直方向に並ぶように、それぞれ円板7に固定されている。
【0024】
ミラー51は、測定光の入射方向に対して反射面が45°傾斜するように配置されることにより、当該ミラー51で反射した測定光は、進行方向が90°変換されてテレメータレンズ53に導かれる。テレメータレンズ53は、Vブロックプリズム1からの測定光を集光させてミラー52に導き、ミラー52で反射した測定光は、ビームスプリッタ54を透過して、円板7に固定された検出器2により受光される。検出器2は、受光する光の強度に応じた信号を出力することにより、試料を透過した測定光の強度を検出する。
【0025】
ミラー51及びテレメータレンズ53は、Vブロックプリズム1からの測定光の入射方向に対して垂直方向に1列に配置され、回転軸61に対して偏心した位置で、テレメータ部50として一体的に円板7に保持されている。したがって、モータ6を回転させることにより、回転軸61を中心に円板7を回転させれば、Vブロックプリズム1に対するテレメータ部50の位置を変化(走査)させ、Vブロックプリズム1からの測定光を異なる角度から受光して検出器2に導くことができる。モータ6は、例えばエンコーダ付きのサーボモータからなり、モータ6の回転角を正確に把握することができる。
【0026】
一方、ビームスプリッタ54で反射した測定光は、ミラー8で反射した後、レンズ9を通過してカメラ(撮像部)200へと導かれ、当該カメラ200により試料を透過した測定光を撮像することができる。ビームスプリッタ54及びミラー8は、回転軸61上に設けられており、Vブロックプリズム1の位置調整を行う際には、ビームスプリッタ54とミラー8との間の光路上にオートコリメーションプリズム10を挿入可能となっている。
【0027】
カメラ200は、例えばCCD(Charge Coupled Device)を有するカラーカメラにより構成することができる。カメラ200は、上記のような位置に設けられた構成に限らず、例えば円板7に取り付けられ、ビームスプリッタ54とは別に設けられたビームスプリッタを介して、当該カメラ200に測定光が導かれるような構成などであってもよい。
【0028】
本実施形態では、測定光の光路中にフィルタが設けられていないため、試料には単色光ではなく光源部3からの測定光がそのまま入射する。そして、測定光は、試料を透過することにより複数色に分光された後、カメラ200に入射する。カメラ200の撮像範囲は、分光された複数色の測定光を同時に撮像できる範囲に設定されている。したがって、カメラ200により撮像される測定光のカラー画像(静止画又は動画)には、複数色の画像が並んで表示されることとなる。
【0029】
2.Vブロックプリズムの構成
図2は、Vブロックプリズム1の構成例を示した概略側面図である。
図2に示すように、Vブロックプリズム1は、互いに直角に交わる1対の平面111,112により形成されたV字状の溝11を備えている。試料Sの表面は、溝11に対応するV字状に形成されており、溝11上に載置された状態で保持される。
【0030】
測定光は、Vブロックプリズム1の一方の端面12に対して垂直に入射する。端面12から入射した測定光は、Vブロックプリズム1内を通って溝11の平面111から試料Sに入射する。このとき、測定光は、
図2に矢印で示すように試料Sの屈折率に応じた角度で屈折し、試料Sを透過した後、溝11の平面112で再び屈折してVブロックプリズム1内に再度入射する。そして、測定光は、Vブロックプリズム1内を通って他方の端面13から出射する際に再び屈折する。
【0031】
このように、測定光はVブロックプリズム1を介して試料Sに照射され、試料Sを透過した測定光は、Vブロックプリズム1と試料Sの屈折率差に応じた角度で他方の端面13から出射する。したがって、Vブロックプリズム1から出射する測定光を検出することにより、その測定光の出射角度に基づいて、試料Sの屈折率を測定することができる。
【0032】
3.屈折率測定装置の電気的構成
図3は、
図1の屈折率測定装置における制御部100の構成例を示すブロック図である。この屈折率測定装置の動作は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む制御部100により制御される。制御部100は、CPUがプログラムを実行することにより、走査処理部101、波長特定処理部102、屈折率算出処理部103及び表示処理部104などとして機能する。
【0033】
走査処理部101は、モータ6を回転させることにより、Vブロックプリズム1に対してテレメータ部50を走査させる(走査ステップ)。試料の屈折率を測定する際には、走査処理部101が一定速度でモータ6を回転させることにより、試料を透過した測定光を受光する角度を変化させて走査を行う。これにより、Vブロックプリズム1から検出器2に導かれる測定光の光量が変化するため、モータ6の回転に伴い、検出器2における検出強度が変化することとなる。
【0034】
波長特定処理部102は、検出器2における検出強度と、カメラ200により撮像されるカラー画像とに基づいて、検出強度の各ピークに対応する波長を特定する処理を行う(波長特定ステップ)。本実施形態では、測定光の光路中にフィルタが設けられていないため、試料には単色光ではなく光源部3からの測定光がそのまま入射し、各波長の光が試料で屈折して検出器2により検出される。そのため、検出器2からの検出信号には複数のピークが現れることとなる。波長特定処理部102は、走査処理部101による走査に伴い変化する検出器2の検出強度と、カメラ200により撮像されるカラー画像における検出器2に入射する測定光の位置に対応する色情報(例えばRGBデータ)とに基づいて、検出強度の各ピークに対応する波長を特定する。
【0035】
屈折率測定装置には、例えばハードディスク又はRAM(Random Access Memory)により構成される記憶部400が備えられている。波長特定処理部102により特定された検出強度の各ピークと波長との関係は、互いに対応付けられて記憶部400に記憶される(記憶ステップ)。このとき、各ピークが検出されたときのモータ6の回転角も検出強度及び波長に対応付けて記憶部400に記憶される。
【0036】
屈折率算出処理部103は、記憶部400に記憶されている検出強度の各ピークと波長との関係に基づいて、検出強度の各ピークに対応する波長における試料の屈折率を算出する(屈折率算出ステップ)。すなわち、検出強度の各ピークに対応する波長が波長特定処理部102により特定され、各波長とモータ6の回転角とが対応付けて記憶部400に記憶されているため、各波長におけるモータ6の回転角とVブロックプリズム1の屈折率とに基づいて、各波長における試料の屈折率を算出することができる。
【0037】
表示処理部104は、表示部300の表示画面への表示に関する処理を行う。表示部300は、例えば液晶表示器からなり、屈折率測定装置に備えられていてもよいし、屈折率測定装置とは別に設けられていてもよい。表示処理部104は、屈折率算出処理部103により算出された検出強度の各ピークに対応する波長における試料の屈折率など、各種情報を表示部300の表示画面に表示させることができる。
【0038】
4.カラー画像に基づく波長の特定
図4及び
図5は、カメラ200により撮像されるカラー画像の具体例を概略的に示した図である。
図6は、走査処理部101の走査に伴う検出器2の検出強度の変化の一例を概略的に示した図であり、モータ6の回転角と検出器2の検出強度との関係を表している。
【0039】
測定光は、試料を透過することにより複数色に分光されるため、カメラ200により撮像される測定光のカラー画像には、
図4及び
図5に示すように複数色の画像C1,C2,C3,C4,C5が並んで表示される。この例では、測定光がスリット46を通過しているため、各色の画像C1,C2,C3,C4,C5が棒状の細長い形状となっている。各画像C1,C2,C3,C4,C5の色は、例えば紫、青、黄、赤、橙などである。
【0040】
走査処理部101により走査を行った場合、カラー画像中の各画像C1,C2,C3,C4,C5は走査方向に沿って移動する。この例では、
図4及び
図5に示すように、走査処理部101の走査に伴って各画像C1,C2,C3,C4,C5が上下方向に平行移動している。そのため、検出器2に入射する測定光の位置(測定位置P)に対応するカラー画像の領域には、走査に伴って異なる画像C1,C2,C3,C4,C5が位置することになる。この例では、測定位置Pに対応するカラー画像の領域に、
図4では画像C3が位置し、
図5では画像C2が位置している。
【0041】
したがって、測定位置Pに対応する画像の色情報に基づいて、そのときの検出器2の検出強度のピークを、当該色情報に対応する波長の測定光のピークと特定することができる。例えば、
図4に示すように、測定位置Pに対応するカラー画像の領域に黄色の画像C3が位置し、このとき
図6に示すピークPKが検出された場合には、このピークPKが黄色の波長に対応するピークであることを特定できる。
【0042】
このようにして、走査に伴い測定位置Pに順次位置する各画像C1,C2,C3,C4,C5の色情報と、そのときの検出強度のピークとの対応関係に基づいて、各ピークに対応する波長を特定することができる。特定される波長は、各画像C1,C2,C3,C4,C5の色情報に対応する波長の範囲であってもよいし、その範囲内の特定の波長(例えば中間の波長)であってもよい。
【0043】
5.作用効果
(1)本実施形態では、カメラ200により撮像されるカラー画像の色情報に基づいて、検出器2に入射する測定光の波長を特定することができる。これにより、検出器2に入射する測定光の波長と、その波長の測定光が検出器2に入射したときの検出強度のピークとを対応付けることができる。したがって、試料の屈折率を多波長で測定する際には、1回の走査で得られる検出強度の複数のピーク(
図6参照)について、各ピークに対応する波長を特定することができる。このようにして特定された検出強度の各ピークと波長との関係を用いれば、1回の走査で試料の屈折率を多波長で測定することができるため、測定時間を短縮することができる。なお、上記カラー画像は、撮像した平面上の色分布の情報を取得できるものであればよい。
【0044】
(2)また、本実施形態では、1回の走査で得られる検出強度の複数のピークについて、各ピークに対応する波長を特定し、その波長と各ピークとの関係を互いに対応付けて記憶部400に記憶することができる。したがって、記憶部400に記憶されている対応関係を読み出して演算を行えば、1回の走査で得られるデータに基づいて試料の屈折率を多波長で測定することができる。
【0045】
(3)さらに、本実施形態では、1回の走査で得られる検出強度の複数のピークについて、各ピークに対応する波長を特定し、その波長と各ピークとの関係に基づく演算を屈折率算出処理部103で行うことにより、試料の屈折率を多波長で自動的に測定することができる。したがって、短時間で容易に試料の屈折率を多波長で測定することができる。
【0046】
6.変形例
走査処理部101は、試料から出射する測定光を受光する角度を変化させることにより走査を行うような構成に限らず、試料に入射する測定光の角度を変化させることにより走査を行うような構成であってもよい。この場合、例えばコリメータレンズを保持するコリメータ部(図示せず)を円板に固定し、当該円板をモータで回転させることにより、Vブロックプリズム1に対するコリメータ部の角度を変化させて走査を行うことができるような構成であってもよい。
【0047】
波長特定処理部102により特定された検出強度の各ピークと波長との関係は、記憶部400に記憶されなくてもよい。すなわち、屈折率算出処理部103が、波長特定処理部102により特定された検出強度の各ピークと波長との関係に基づいて、検出強度の各ピークに対応する波長における試料の屈折率をリアルタイムで算出するような構成であってもよい。
【0048】
以上の実施形態では、走査ステップ、波長特定ステップ、記憶ステップ及び屈折率算出ステップが、いずれも屈折率測定装置により自動的に行われるような構成について説明した。しかし、このような構成に限らず、上記ステップの少なくとも1つのステップが作業者により手動で行われてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 Vブロックプリズム
2 検出器
3 光源部
4 第1光学系
5 第2光学系
6 モータ
7 円板
8 ミラー
9 レンズ
10 オートコリメーションプリズム
11 溝
31 光源
100 制御部
101 走査処理部
102 波長特定処理部
103 屈折率算出処理部
104 表示処理部
200 カメラ
300 表示部
400 記憶部