(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、エピタキシャル成長させた第1半導体層に凹部を形成し、この凹部の底部にp型不純物をイオン注入することで電界緩和層を形成し、電界緩和層および第1半導体層の表面に、第2半導体層をエピタキシャル成長によって再成長させる技術が記載されている。しかし、特許文献1の技術では、エピタキシャル成長により半導体層を形成する工程を一旦中断してからイオン注入を行い、その後、再成長を行うため、半導体装置の製造工程が複雑になり、製造過程で半導体層に異物が混入するおそれがあった。
【0005】
特許文献2には、第1半導体層中において、隣合うゲート電極間であって、コンタクト溝の下に対応する部分に、p型ピラー層が設けられた、トレンチゲート型の縦型MOSFETが記載されている。特許文献2において、このp型ピラー層は、コンタクト溝が選択的に形成されたソース層及びトレンチゲート構造をマスクとして、複数回に分けて行われるp型不純物のイオン注入により形成されることが記載されている。しかし、窒化ガリウム(GaN)系の半導体にp型不純物を注入する場合に、p型不純物を深い位置までイオン注入することは困難であり、上記のp型ピラー層を形成することが困難であるという問題があった。
【0006】
さらに、発明者らの検討の結果、窒化ガリウム(GaN)系の半導体にp型不純物をイオン注入する場合において、半導体層の表面に比較的高濃度のn型半導体領域が形成される場合があることが明らかとなった。窒化ガリウム(GaN)系の半導体では、p型不純物のイオン注入によって高濃度のp型半導体領域を形成することが困難であるため、高濃度n型半導体領域を、上記特許文献の技術によって補償することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本開示の一形態によれば、半導体装置の製造方法が提供される。この製造方法は、n型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系の第1半導体層と、前記第1半導体層に積層され、p型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系の第2半導体層とを含む積層体に対し、前記第2半導体層内に底部が位置する第1溝部を形成する、第1溝部形成工程と;前記第1溝部の側部及び前記底部にp型不純物を堆積させる堆積工程と;前記第1溝部を介して、p型不純物を前記第1半導体層までイオン注入する、イオン注入工程と、を備える。
【0009】
この形態によれば、第1溝部の側部及び底部に意図せず高濃度n型不純物領域が形成された場合であっても、第1溝部の側部及び底部にp型不純物を堆積させることによって、高濃度n型不純物領域を補償することができる。また、第1溝部を介したイオン注入によって、第1半導体層内にp型半導体領域を形成することができる。また、第1溝部の底部は第2半導体層内に位置しているため、第1溝部の底部におけるp型の第2半導体層と、イオン注入によって形成されたp型半導体領域とで、高濃度n型不純物領域を補償することができる。その結果、第1溝部近傍に電圧が印加された場合に空乏層が広がるので、半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【0010】
(2)上記形態において、前記堆積工程では、デルタドーピングにより、前記第1溝部の前記側部及び前記底部にp型不純物を堆積させてもよい。
【0011】
この形態によれば、第1溝部の側部及び底部にp型不純物をデルタドーピングすることによって、高濃度n型不純物領域を補償することができる。
【0012】
(3)上記形態において、前記堆積工程の後に、前記イオン注入工程を行ってもよい。
【0013】
この形態によれば、堆積工程の後に、イオン注入工程が行われるので、イオン注入によるノックオン効果によって第1溝部の底部のn型不純物が半導体層内部へ押し込まれる深さと、第1溝部の底部に堆積されたp型不純物が半導体層内部へ押し込まれる深さと、を略等しくできる。そのため、半導体層内部へ押し込まれたn型不純物を、p型不純物によって補償することができる。
【0014】
(4)上記形態において、前記堆積工程の後、前記第1溝部上にp型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系の半導体層を成長させる、成長工程をさらに備えていてもよい。
【0015】
この形態によれば、p型不純物が堆積された領域が、第1溝部の底部に位置する第2半導体層と、成長されたp型の半導体層と、によって挟まれるため、堆積されたp型不純物をより活性化させることができる。
【0016】
(5)上記形態において、前記第1溝部形成工程では、前記第1溝部を形成する領域が開口したマスクを用いて前記第1溝部を形成し;前記イオン注入工程では、前記マスクを用いて、前記イオン注入を行ってもよい。
【0017】
この形態によれば、第1溝部を形成するために用いたマスクを、その後のイオン注入で利用することができるため、イオン注入用マスクを別途形成する場合と比較して、半導体装置の製造工程を削減することできる。
【0018】
(6)上記形態において、前記堆積工程及び前記イオン注入工程が行われた後の前記第1溝部に第1電極を形成する、第1電極形成工程をさらに備えていてもよい。
【0019】
この形態によれば、p型半導体領域を形成するための第1溝部を、第2半導体層とコンタクトするための第1電極用の溝部として利用することができるため、第1電極形成用の溝部を別途形成する場合と比較して、半導体装置の製造工程を削減することができる。また、第1溝部表面にはp型不純物が堆積されているので、第1溝部表面にp型不純物を堆積させない場合と比較して、第1溝部の表面が荒れた状態となることを抑制することができるので、第1電極の第2半導体層に対するコンタクト抵抗を低減することができる。
【0020】
(7)上記形態において、前記積層体に対し、前記第2半導体層を貫通し前記第1半導体層内に底部が位置する、第2溝部を形成する、第2溝部形成工程と;前記第2溝部に第2電極を形成する工程であって、前記第2電極はゲート電極である、第2電極形成工程と、をさらに備えていてもよい。
【0021】
この形態によれば、第2電極に電圧が印加された場合に、第1半導体層に形成されたp型半導体領域によって第2溝部の底部の角に集中する電界を緩和することができるので、半導体装置の耐圧を高めることができる。
【0022】
(8)上記形態において、前記第2溝部形成工程では、前記第1溝部又は前記第1溝部に積層された構造をアライメントマークとして用いて、前記第2溝部を形成してもよい。
【0023】
この形態によれば、第2溝部形成用のアライメントマークを別途形成する場合と比較して、半導体装置の製造工程を削減できるとともに、第1溝部及び第1溝部を介したイオン注入によって形成されたp型半導体領域と、ゲート電極が形成される第2溝部との間を微細化することができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、半導体装置の製造方法は、n型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系の第1半導体層と、第1半導体層に積層され、p型不純物を含有する窒化ガリウム(GaN)系の第2半導体層とを含む積層体に対し、第2半導体層内に底部が位置する第1溝部を形成する、第1溝部形成工程と、第1溝部の側部及び底部にp型不純物を堆積させる堆積工程と、第1溝部を介して、p型不純物を第1半導体層までイオン注入する、イオン注入工程と、を備える。そのため、第1溝部の側部及び底部に意図せず高濃度n型不純物領域が形成された場合であっても、第1溝部の側部及び底部にp型不純物を堆積させることによって、高濃度n型不純物領域を補償することができる。また、第1溝部を介したイオン注入によって、第1半導体層内にp型半導体領域を形成することができる。また、第1溝部の底部は第2半導体層内に位置しているため、第1溝部の底部におけるp型の第2半導体層と、イオン注入によって形成されたp型半導体領域とで、高濃度n型不純物領域を補償することができる。その結果、第1溝部近傍に電圧が印加された場合に空乏層が広がるので、半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
・第1実施形態
図1は、半導体装置100の断面の一部を示す模式図である。なお、
図1及び以降の模式図は、半導体装置100の技術的特徴をわかりやすく示すための図であり、各部の寸法を正確に示すものではない。
図1には、説明を容易にするために、相互に略直交するXYZ軸が図示されている。
図1のXYZ軸は、他の図のXYZ軸に対応する。なお、以降の説明では、+Z軸方向側を「上」又は「上側」とも呼ぶ。
【0027】
半導体装置100は、窒化ガリウム(GaN)系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置100は、縦型トレンチMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。半導体装置100は、例えば、電力制御に用いられ、パワーデバイスとも呼ばれる。
【0028】
半導体装置100は、基板110と、第1半導体層111と、第2半導体層112と、第3半導体層113と、第1溝部121と、第2溝部122と、p型不純物堆積領域115と、p型半導体領域117と、を備える。半導体装置100は、更に、絶縁膜130と、第1電極141と、第2電極142と、第3電極143と、を備える。
【0029】
半導体装置100の基板110と、第1半導体層111と、第2半導体層112と、第3半導体層113と、はX軸及びY軸に沿って広がる板状の半導体である。本実施形態では、基板110と、第1半導体層111と、第2半導体層112と、第3半導体層113と、は窒化ガリウム(GaN)系の半導体である。窒化ガリウム系の半導体(GaN)としては、窒化ガリウム(GaN)のほか、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)などが例示できる。なお、電力制御用の半導体装置に用いる観点から、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)が好ましい。本実施形態では、窒化ガリウム(GaN)を用いる。なお、本実施形態の効果を奏する範囲において、窒化ガリウム(GaN)の一部をアルミニウム(Al)やインジウム(In)などの他のIII族元素に置換してもよく、他の不純物を含んでいてもよい。
【0030】
基板110は、n型の特性を有する半導体である。本実施形態では、基板110に含まれるシリコン(Si)濃度は、1E18cm
−3以上である。本実施形態において、基板110の厚さ(Z軸方向の長さ)は、30μm以上500μm以下である。なお、1E18との記載は、1×10
18を示す。
【0031】
第1半導体層111は、n型の特性を有する半導体である。本実施形態では、第1半導体層111は、基板110の+Z軸方向側に位置する。本実施形態では、第1半導体層111に含まれるシリコン(Si)濃度は、1E15cm
−3以上8E16cm
−3以下ある。本実施形態では、第1半導体層111の厚さは、5μm以上20μm以下である。第1半導体層111を、「n型ドリフト層」とも呼ぶ。
【0032】
第2半導体層112は、p型の特性を有する半導体である。第2半導体層112は、第1半導体層111の+Z軸方向側に位置する。本実施形態では、第2半導体層112は、マグネシウム(Mg)をアクセプタ元素として含有する。本実施形態では、第2半導体層112に含まれるマグネシウム(Mg)濃度は、4E18cm
−3以下である。本実施形態では、第2半導体層112の厚さは、1μm以下である。第2半導体層112を、「p型チャネル層」とも呼ぶ。
【0033】
第3半導体層113は、n型の特性を有する半導体である。本実施形態では、第3半導体層113は、第2半導体層112の+Z軸方向側に位置する。本実施形態では、第3半導体層113は、シリコン(Si)をドナー元素として含有する。本実施形態では、第3半導体層113に含まれるシリコン(Si)濃度は、第1半導体層111のシリコン(Si)濃度より高く、1E18cm
−3以上であり、第3半導体層113の厚さ(Z軸方向の長さ)は、0.4μm以下である。第3半導体層を、「n型コンタクト層」とも呼ぶ。
【0034】
第1溝部121は、第2半導体層112内に底部bが位置する溝部である。言い換えると、第1溝部121の底部bには、第2半導体層112が露出する。本実施形態では、第1溝部121の側部sには、第2半導体層112と第3半導体層113とが露出する。本実施形態では、第1溝部121は、第3半導体層113、第2半導体層112に対するドライエッチングによって形成された構造である。第1溝部121を、「リセス」とも呼ぶ。また、第1溝部121を、「ダミートレンチ」とも呼ぶ。
【0035】
第2溝部122は、第3半導体層113及び第2半導体層112を貫通し、第1半導体層111内に底部b1が位置する溝部である。第2溝部122は、ゲート電極である第2電極142が形成される溝部である。本実施形態では、第2溝部122は、第3半導体層113、第2半導体層112、第1半導体層111に対するドライエッチングによって形成された構造である。第2溝部122を、「ゲートトレンチ」とも呼ぶ。
【0036】
p型半導体領域117は、p型の特性を有する窒化ガリウム(GaN)系の半導体領域である。p型半導体領域117は、第1溝部121を介した第2半導体層112、第1半導体層111に対するp型不純物のイオン注入によって形成された領域である。p型半導体領域117は、第1溝部121の底部b、第2半導体層112、及び第1半導体層111に隣接する。本実施形態では、p型半導体領域117は、p型不純物としてマグネシウム(Mg)を含有する。本実施形態では、p型半導体領域117に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、第2半導体層112のマグネシウム(Mg)濃度よりも高く、2E19cm
−3以上5E19cm
−3である。p型半導体領域117は、p型不純物堆積領域115の底部bから、第2溝部122の底部b1の位置よりも下方にわたって位置している。本実施形態では、p型半導体領域117のZ軸方向の厚さは、0.3μm以上0.6μm以下である。p型半導体領域117を形成する方法については、詳細を後述する。
【0037】
p型不純物堆積領域115は、p型の特性を有する窒化ガリウム(GaN)系の半導体領域である。p型不純物堆積領域115は、第1溝部121の表層にp型不純物を堆積することによって形成された構造である。本実施形態では、p型不純物堆積領域115は、第1溝部121に対するp型不純物のデルタドーピングによって形成されている。p型不純物堆積領域115は、第1溝部121の側部s及び底部bに接する。本実施形態では、マグネシウム(Mg)のデルタドープのシート濃度は、5E11cm
−2以上5E13cm
−2以下である。p型不純物堆積領域115は、第3半導体層113と第1溝部121との間、及び第2半導体層112と第1溝部121との間に位置する。本実施形態では、p型不純物堆積領域115は、p型不純物としてマグネシウム(Mg)を含有する。本実施形態では、p型不純物堆積領域115に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、1E19cm
−3以上1E20cm
−3以下である。本実施形態では、p型不純物堆積領域115のZ方向に沿った厚さは、約1nm以上10nm以下である。p型不純物堆積領域115を形成する方法については、詳細を後述する。
【0038】
半導体装置100の絶縁膜130は、電気絶縁性を有する膜である。本実施形態では、絶縁膜130は、第2溝部122の表面及び第2溝部122の周囲の第3半導体層113の表面にわたって形成されている。第2溝部122の表面とは、第2溝部122の側部s1及び底部b1を指す。本実施形態では、絶縁膜130は、酸化シリコン(SiO
2)又は酸化アルミニウム(Al
2O
3)から形成されている。
【0039】
第2電極142は、絶縁膜130を介して第2溝部122に形成されたゲート電極である。本実施形態では、第2電極142は、アルミニウム(Al)から形成されている。第2電極142に電圧が印加された場合、第2半導体層112に反転層が形成され、この反転層がチャネルとして機能することによって、第1電極141と第3電極143との間に導通経路が形成される。
【0040】
第1電極141は、第1溝部121に形成された電極である。本実施形態では、第1電極141は、第1溝部121周囲の第3半導体層113上面にも接触するように形成されている。第1電極141は、p型不純物堆積領域115を介して第2半導体層112に接触するとともに、第3半導体層113に接触する。本実施形態では、第1電極141は、チタン(Ti)から形成された層にアルミニウム(Al)から形成された層を積層した後に熱処理を加えた電極である。第1電極141を、「ソース電極」とも呼ぶ。
【0041】
第3電極143は、基板110の−Z軸方向側の表面にオーミック接触する電極である。本実施形態では、第3電極143は、チタン(Ti)から形成された層にアルミニウム(Al)から形成された層を積層した後に熱処理を加えた電極である。第3電極143を、「ドレイン電極」とも呼ぶ。
【0042】
本実施形態の半導体装置100によれば、第2溝部122の底部b1が位置する第1半導体層111内に、p型半導体領域117が位置するため、p型半導体領域117によって、第2電極142に電圧が印加された場合に第2溝部122の底部b1の角に発生する電界集中を緩和することができる。その結果、半導体装置100の耐圧を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態の半導体装置100は、後述の方法によって製造されるため、第1溝部121の表面に高濃度のn型半導体領域が形成されることが抑制されるので、p型半導体領域117が電気的にフローティング状態になることが抑制される。そのため、p型半導体領域117の電位を、第2半導体層112の電位と同電位とすることができ、上記の電界集中を緩和する効果を高めることができる。
【0044】
図2は、半導体装置100の製造方法について示す工程図である。
図3から
図12は、半導体装置100の製造過程における中間製品100a〜100jについて示す図である。以下、
図2から
図12を用いて、半導体装置100の製造方法について説明する。
【0045】
まず、基板110の上に形成された第1半導体層111の上に、第1溝部121形成用の第1マスク310が形成される、第1マスク形成工程が行われる(
図2、ステップS10)。本工程では、基板110の上に、第1半導体層111、第2半導体層112、第3半導体層113が、この順に、連続して積層された積層体119が用意される。次に、積層体119上に絶縁膜310pが形成される。本実施形態では、絶縁膜310pは、酸化シリコン(SiO
2)又は酸化アルミニウム(Al
2O
3)からなる。さらに、絶縁膜310p上に、第1溝部形成領域121pが開口したフォトレジストからなるレジストパターン320が形成される。
図3には、レジストパターン320が形成された、半導体装置100の中間製品100aが示されている。レジストパターン320の形状は、p型半導体領域117を形成する位置を考慮して決定される。本実施形態では、第1電極141を第2半導体層112及び第3半導体層113とオーミック接触させる位置と、p型半導体領域117が形成される位置と、を考慮して、レジストパターン320の形状が決定される。積層体119は、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)により形成することができる。絶縁膜130は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法又はALD(Atomic Layer Deposition)法により形成することができる。次に、中間製品100aに対し、フッ酸(HF)水溶液を用いたウエットエッチング、又は、塩素(Cl)ガス等を用いたドライエッチングが行われた後、レジストパターン320が除去される。こうすることにより、第1溝部形成領域121pが開口した第1マスク310を形成することができる。
図4には、第1マスク310が形成された、中間製品100bが示されている。
【0046】
次に、第1溝部121が形成される、第1溝部形成工程が行われる(
図2、ステップS20)。
図5には、第1溝部121が形成された中間製品100cが示されている。本工程では、第1マスク310が形成された中間製品100bに対しドライエッチングを行うことにより、第1溝部121が形成される。第1溝部121は、第3半導体層113を貫通し第2半導体層112に底部bが位置するように形成される。
図5に示すように、第1溝部121の底部bには第2半導体層112が露出し、第1溝部121の側部sには第2半導体層112と第3半導体層113とが露出する。
【0047】
第1溝部121が形成された後、第1溝部121の側部s及び底部bにp型不純物が堆積される、堆積工程が行われる(
図2、ステップS30)。
図6には、p型不純物堆積領域115が形成された中間製品100dが示されている。本実施形態では、堆積工程では、第1溝部121に対するp型不純物のデルタドーピングが行われる。デルタドーピングとは、結晶中の単一原子層に、ドナー元素やアクセプタ元素をドープする手法である。本工程では、MOCVD炉に中間製品100cを設置し、MOCVD炉内にアンモニア(NH
3)ガスを導入した状態で、窒化ガリウム系の半導体を成長させる温度に加熱する。加熱温度は、例えば、1050℃〜1150℃である。次に、MOCVD炉内にp型不純物原料ガスを導入する。本実施形態では、p型不純物原料ガスとして、ビシクロペンタジェニルマグネシウム(CP
2Mg)ガスを用いる。ビシクロペンタジェニルマグネシウムガス(CP
2Mg)の流量は、例えば、第2半導体層112を形成する際の流量であり、ビシクロペンタジェニルマグネシウム(CP
2Mg)が流される時間は、第2半導体層112を5nm〜100nm成長させる際の時間である。こうすることで、マグネシウム(Mg)が第1溝部121の表面に吸着し、高濃度のp型不純物を含むp型不純物堆積領域115が形成される。なお、第1マスク310の表面にマグネシウム(Mg)が吸着した状態で後述のイオン注入工程が行われると、ノックオン効果によって、第3半導体層113の表面にマグネシウム(Mg)が意図せず注入されるおそれがある。本工程では、第1マスク310の表面もビシクロペンタジェニルマグネシウム(CP
2Mg)に曝されるが、第1マスク310は酸化シリコン(SiO
2)から形成されており、酸化シリコン(SiO
2)上でマグネシウム(Mg)は移動(マイグレーション)し難い。そのため、マグネシウム(Mg)は第1マスク310上に吸着し難く、第1溝部121の表面に選択的に吸着する。したがって、第3半導体層113の表面にマグネシウム(Mg)が注入されて第3半導体層113の特性が変化することを抑制することができる。
【0048】
次に、第1溝部121を介して、p型不純物が第1半導体層111までイオン注入される、イオン注入工程が行われる(
図2、ステップS40)。
図7には、イオン注入が行われた中間製品100eが示されている。本実施形態では、第1マスク310がイオン注入用マスクとして用いられる。他の実施形態では、堆積工程(
図2、ステップS30)の前に第1マスク310を除去した後、積層体119の上に、第1溝部121上が開口したイオン注入用マスクが形成されてもよい。イオン注入条件は、p型半導体領域117が、第1溝部121の底部bから、後の工程において形成される第2溝部122の底部b1の位置よりも下方の位置にわたって形成されるように調整される。
【0049】
本実施形態では、イオン注入されるp型不純物の濃度(イオン注入濃度)は、5E19cm
−3以下の濃度であり、好ましくは1E19cm
−3以下の濃度である。イオン注入濃度は、5E18cm
−3以上であることが好ましい。この範囲でイオン注入を行うことで、半導体層へのイオン注入によるダメージを抑制することができ、マグネシウム(Mg)の活性化率を高めることができる。p型半導体領域117のマグネシウム(Mg)濃度は、第2半導体層112のマグネシウム(Mg)濃度よりも高いことが好ましい。イオン注入で形成したp型半導体領域117の活性化率は、MOCVD法により形成した第2半導体層112の活性化率よりも低いためである。イオン注入されるp型不純物元素として、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ベリリウム(Be)から選択される少なくとも1つの元素を用いることができる。本実施形態では、マグネシウム(Mg)を用いる。イオン注入工程において、基板110の温度は、室温以上であって800℃以下であることが好ましい。800℃以下とすることにより、第1溝部121の表面から窒素(N)が抜けることを抑制することができる。基板110の温度は、400℃以上600℃以下の範囲とすることがより好ましい。イオン注入によって第1溝部121の表面に与えられるダメージを低減するためである。本実施形態では、基板110の温度は、500℃である。また、本実施形態において、他のイオン注入条件は、以下のとおりである。
・イオン電流:1μA〜10μA
・注入エネルギー:150keV〜250keV
・注入角度(オフ角):基板表面の(0001)面の法線方向に対し、7度
【0050】
次に、中間製品100eの表面に、熱処理(アニール)用の保護膜335が形成される、保護膜形成工程が行われる(
図2、ステップS50)。
図8には、保護膜335が形成された中間製品100fが示されている。保護膜335は、後述する熱処理工程において、第1溝部121の表面から窒素(N)が抜けて第1溝部121の表面が荒れることや、窒素(N)空孔によって第1溝部121の表面にドナー型の欠陥が発生すること等を抑制するために用いられる。保護膜335は、少なくとも第1溝部121の表面(側部sおよび底部b)を覆うように形成されることが好ましい。本実施形態では、保護膜335は、
図7に示した中間製品100eの上面全体を覆うように形成される。保護膜335は、後の熱処理工程での熱処理温度に対する耐熱性を有することが好ましい。保護膜335は、例えば、酸化シリコン(SiO
2)、窒化シリコン(SiN)、窒化アルミニウム(AlN)により形成される。本実施形態では、保護膜335として、窒化アルミニウム(AlN)を用いる。本実施形態では、保護膜335の厚さは、約600nmである。
【0051】
次に、保護膜335が形成された中間製品100fが熱処理される、熱処理工程が行われる(
図2、ステップS60)。熱処理工程が行われることにより、イオン注入によって第1溝部121に与えられたダメージを回復させるとともに、第1溝部121に堆積されたp型不純物を第2半導体層112内に移動させて、p型不純物を活性化させることができる。
【0052】
熱処理工程における熱処理温度は、1000℃以上、1400℃以下であることが好ましく、1150℃以上、1300℃以下であることがより好ましい。イオン注入されたp型不純物がマグネシウム(Mg)である場合には、マグネシウム(Mg)をより活性化させる観点から、熱処理温度は1200℃以上1300℃未満であることが好ましい。本実施形態では、熱処理温度は1250℃である。熱処理時間は、10秒以上であることが好ましい。また、熱処理時間は、5分以下であることが好ましく、2分以下であることがより好ましい。本実施形態では、熱処理時間は30秒である。熱処理雰囲気は、第1溝部121の表面から窒素(N)が抜けることを抑制する観点から、アンモニア(NH
3)を含む雰囲気、窒素(N
2)を含む雰囲気で行われることが好ましい。また、熱処理工程における圧力は、1気圧以上であってもよい。本実施形態では、熱処理は、1気圧の窒素(N
2)ガス雰囲気で行われる。
【0053】
熱処理は、レーザアニール、フラッシュランプアニール(FLA)、ハロゲンランプを用いたRTA(Rapid Thermal Anneal)、高周波誘導加熱方式を用いたRTA、シーズヒータ等を用いた高温保管炉等を用いて行われてもよい。熱処理は、半導体層の表面状態が劣化することを抑制し、半導体装置の製造におけるスループットを向上させる観点から、レーザを用いた熱処理を除く熱処理(熱アニール)により行われることが好ましい。本実施形態では、高周波誘導加熱方式を用いたRTAにより、熱処理を行う。
【0054】
熱処理が行われた後、保護膜形成工程で形成された保護膜335が、ウエットエッチング又はドライエッチングにより除去される。例えば、窒化アルミニウム(AlN)からなる保護膜335が、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液を用いて除去され、第1マスク310が、フッ酸(HF)水溶液を用いて除去される。
【0055】
次に、第2溝部形成用の第2マスク形成工程が行われる(
図2、ステップS70)。本工程では、まず、積層体119上に絶縁膜315pが形成される。本実施形態では、絶縁膜315pは、酸化シリコン(SiO
2)からなる。次に、絶縁膜315p上に、第2溝部形成領域122pが開口したフォトレジストからなるレジストパターン325が形成される。
図9には、レジストパターン325が形成された中間製品100gが示されている。次に、中間製品100gに対し、レジストパターン325上から塩素(Cl)ガス等を用いたドライエッチング、又は、フッ酸(HF)水溶液を用いたウエットエッチングが行われた後、レジストパターン325が除去される。こうすることにより、第2溝部形成領域122pが開口した第2マスク315が形成される。
図10には、第2マスク315が形成された、中間製品100hが示されている。なお、第2マスク形成工程(
図2、ステップS70)は、後述の第2溝部形成工程(
図2、ステップS80)に含まれてもよい。
【0056】
次に、第2溝部形成工程が行われる(
図2、ステップS80)。
図11には、第2溝部122が形成された中間製品100iが示されている。本工程では、第3半導体層113、第2半導体層112を貫通し、第1半導体層111に底部b1が位置するように中間製品100jに対しドライエッチングが行われることにより、第2溝部122が形成される。本工程では、第2溝部122底部b1のZ軸方向の位置が、p型半導体領域117の底部(−Z方向の位置)よりも上方に位置するようにドライエッチングが行われる。第2溝部122が形成されると、第2マスク315が除去される。
図12には、第2溝部122が形成された中間製品100jが示されている。
【0057】
なお、第2溝部122は、第1溝部121又は第1溝部121に積層された構造をアライメントマークとして用いて形成されてもよい。例えば、第2マスク形成工程(
図2、ステップS70)において
図9に示す第2溝部形成領域122pを開口させる際に、第1溝部121、又は、第1溝部121に積層された絶縁膜315pにおける第1溝部121上の凹凸が、アライメントマークとして用いられてもよい。
【0058】
次に、電極形成工程が行われる(
図2、ステップS90)。本工程では、第1溝部121に第1電極141が形成される。また、第2溝部122の表面と、第2溝部122の周囲の第3半導体層113の表面と、に絶縁膜130が形成され、絶縁膜130を介して第2溝部122に第2電極142が形成される。基板110の−Z軸方向側の表面には、第3電極143が形成される。本工程を、「第1電極形成工程」、「第2電極形成工程」とも呼ぶ。以上のようにして、
図1に示す半導体装置100が製造される。
【0059】
窒化ガリウム(GaN)系の半導体層の表面には、意図しない比較的高濃度のn型不純物領域が形成される場合がある。高濃度n型不純物領域は、窒化ガリウム(GaN)系の半導体装置の製造過程において、窒化ガリウム(GaN)系の半導体層の表面が大気に曝された場合等に、半導体層の表面にシリコン(Si)が吸着することや、半導体層に溝部を形成する際に、半導体層の表面から窒素(N)が抜けることによって形成されると考えられる。高濃度n型不純物領域のn型不純物の濃度は、例えば、8E17cm
−3以上1E20cm
−3以下である。このような高濃度n型不純物領域が形成され、その後にp型不純物がイオン注入されると、半導体層に、p型不純物とともに、吸着したシリコン(Si)などの不純物が打ち込まれてしまうおそれがある。その結果、窒化ガリウム系の半導体装置の導電性の制御が困難になるおそれがある。
【0060】
第1実施形態によれば、第1溝部121の側部s及び底部bに意図せず高濃度n型不純物領域が形成された場合であっても、第1溝部121の側部s及び底部bにp型不純物を堆積することによって、高濃度n型不純物領域を補償することができる。また、第1溝部121を介したイオン注入によって、第1半導体層111内にp型半導体領域117を形成することができる。また、第1溝部121の底部bは第2半導体層112内に位置しているため、第1溝部121の底部bにおける第2半導体層112とイオン注入によって形成されたp型半導体領域117とで、高濃度n型不純物領域を補償することができる。その結果、第1溝部121近傍に電圧が印加された場合に空乏層が広がるので、半導体装置100の耐圧を向上させることができる。
【0061】
また、第1溝部121の側部s及び底部bにp型不純物をデルタドーピングすることによって、高濃度n型不純物領域を補償することができる。
【0062】
また、堆積工程(
図2、ステップS20)の後に、イオン注入工程(
図2、ステップS30)が行われるので、イオン注入によるノックオン効果によって第1溝部121の底部bにおけるn型不純物が半導体層内部へ押し込まれる深さと、第1溝部121表面に堆積されたp型不純物が半導体層内部へ押し込まれる深さと、を略等しくできる。そのため、半導体層内部へ押し込まれたn型不純物を、p型不純物によって補償することができる。
【0063】
また、第1溝部121を形成するために用いた第1マスク310を、その後のイオン注入で利用することができるため、イオン注入用マスクを別途形成する場合と比較して、半導体装置100の製造工程を削減することできる。
【0064】
また、p型半導体領域117を形成するための第1溝部121を、第2半導体層112にコンタクトするための第1電極用の溝部として利用することができるため、第1電極形成用の溝部を別途形成する場合と比較して、半導体装置100の製造工程を削減することができる。また、第1溝部121表面にはp型不純物が堆積されているので、第1溝部121表面にp型不純物を堆積させない場合と比較して、第1溝部121表面が荒れた状態となることを抑制することができるので、第2半導体層112に接触する第1電極(第1電極141)のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0065】
また、第1溝部121又は第1溝部121に積層された構造をアライメントマークとして用いて、第2溝部122が形成されれば、第1溝部121形成用のアライメントマークを別途形成する場合と比較して、半導体装置100の製造工程を削減できるとともに、第1溝部121及び第1溝部121を介したイオン注入によって形成されたp型半導体領域117と、第2電極142が形成される第2溝部122との間を微細化することができる。
【0066】
また、第1実施形態では、第1溝部121の側部s及び底部bにp型不純物が堆積されることにより、第3半導体層113と第1溝部121との間、及び第2半導体層112と第1溝部121との間に、p型不純物を含有するp型不純物堆積領域115が形成され、さらに、第1溝部121内に第1電極141が形成される。そのため、第3半導体層113に接触する電極と、第2半導体層112へ接触する電極とを、1つの電極で兼用する場合には、第2半導体層112へのコンタクト抵抗が上昇する場合がある。第1実施形態によれば、第3半導体層113の表面のp型不純物を含有するp型不純物堆積領域115によって、第2半導体層112へに対する第3半導体層113のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0067】
また、深い位置にp型不純物をイオン注入することが困難な窒化ガリウム(GaN)系の半導体に対し、第1溝部121を形成し、第1溝部121を介してイオン注入を行うことにより、深い位置にp型半導体領域117を形成することができる。そのため、深い位置にp型半導体領域を形成するために、半導体層の積層の途中でn型半導体層内にp型半導体領域を形成し、その後、再度p型半導体層を成長させなくともよいので、半導体装置の製造工程が複雑になることや、製造過程で半導体層に異物が混入するおそれを低減することができる。
【0068】
また、第1実施形態では、第2溝部形成工程(
図2、ステップS80)は、堆積工程及びイオン注入工程(
図2、ステップS30、ステップS40)が行われた後に行われるので、イオン注入の前に第2溝部122を形成する場合と比較して、第2溝部122の側部s及び底部bにイオン注入によるダメージが与えられることを抑制することができる。
【0069】
・第2実施形態
図13は、第2実施形態の半導体装置200の断面の一部を示す模式図である。半導体装置200は、p型不純物堆積領域115上に積層された、p型半導体層116を備える。p型半導体層116は、p型不純物堆積領域115上への窒化ガリウム(GaN)系半導体の選択成長によって形成された構造である。本実施形態では、p型半導体層116は、マグネシウム(Mg)をアクセプタ元素として含有する。本実施形態では、p型半導体層116に含まれるマグネシウム(Mg)濃度は、4E18cm
−3以下である。本実施形態では、p型半導体層116の厚さは、1nm以上10nm以下である。半導体装置200のその他の構成は、第1実施形態の半導体装置100と同様であるため説明を省略する。
【0070】
図14は、半導体装置200の製造方法について示す工程図である。第1実施形態と異なる点について説明する。本実施形態では、第1溝部121へp型不純物を堆積させる堆積工程(
図2、
図14、ステップS30)の後に、第1溝部121上へ窒化ガリウム(GaN)系半導体を選択的に成長させる、選択成長工程が行なわれる(
図14、ステップS35)。選択成長工程は、積層体119に形成された第1溝部121上のp型不純物堆積領域115上へ、窒化ガリウム(GaN)系半導体を再成長させる、再成長工程ということもできる。
図15には、選択成長が行われた中間製品200aが示されている。半導体装置200のその他の製造方法は、上述の第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0071】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏するのに加え、p型不純物堆積領域115が、第1溝部121の底部bに位置する第2半導体層112と、p型半導体層116と、によって挟まれるため、p型半導体層116を成長させない場合と比較して、第1溝部121に堆積されたp型不純物を第2半導体層112、p型半導体層116内に移動させてより活性化させることができる。
【0072】
・他の実施形態1
上記実施形態では、第1溝部121の側部s及び底部bにデルタドーピングによりp型不純物が堆積されているが、第1溝部121の側部s及び底部bへのp型不純物の堆積は、スパッタ法や、蒸着法を用いて行われてもよく、p型不純物を含有する酸化膜を第1溝部121の側部s及び底部bに形成することにより行われてもよい。
【0073】
・他の実施形態2
イオン注入工程(
図2、
図14、ステップS40)において、2価のp型不純物を用いてイオン注入が行われてもよい。同じイオン注入濃度であっても、1価のp型不純物を用いる場合と比較して、注入エネルギーを低減することができ、イオン電流を低減することができる。そのため、イオン注入によって半導体に与えられるダメージをより低減することができ、ホール濃度をより高めることができる。
【0074】
・他の実施形態3
イオン注入工程(
図2、
図14、ステップS40)では、1回のイオン注入工程における合計のイオン注入濃度が1E19cm
−3以下となればよく、注入エネルギーを異ならせて複数回イオン注入を行う多重注入法によりイオン注入が行われてもよい。注入エネルギーは、20keV、80keV、200keV・・・のように次第に大きくしてもよいし、各エネルギーにおけるイオン注入濃度を異ならせてもよい。多重注入を行うことにより、p型半導体領域117のZ方向における、p型不純物の濃度分布を均一にすることができる。すなわち、イオン注入されたp型不純物の濃度分布を、ボックスプロファイルにすることができる。
【0075】
・他の実施形態4
イオン注入工程(
図2、
図14、ステップS40)では、イオンの入射方向を第1溝部121の底部bの結晶面に対し垂直にイオン注入する、チャネリング条件でイオン注入が行われてもよいし、非チャネリング条件でイオン注入が行われてもよい。チャネリング条件でイオン注入を行うことにより、イオン注入深さを増加させることができる。非チャネリング条件でイオン注入を行うことにより、イオン注入深さがばらつくことを抑制することができ、複数の半導体装置を製造する場合において、半導体装置間でのイオン注入深さがばらつくことを抑制することができる。
【0076】
・他の実施形態5
第1溝部121は、第2半導体層112内に底部bが位置していれば、第3半導体層113を貫通していなくともよい。第1溝部121は、第2半導体層112上に第3半導体層113が積層されていない部位に形成されてもよい。この場合には、第1溝部121内に、第2半導体層112にオーミック接触する第1電極としてのpボディ電極が形成されてもよい。半導体装置100は、第2半導体層112にオーミック接触する電極と、第3半導体層113にオーミック接触する電極と、を別の電極として備えていてもよい。
【0077】
・他の実施形態6
第1溝部121内に、第1電極141が形成されなくともよい。この場合には、第1溝部121内は、例えば絶縁膜130で覆われてもよい。また、第1溝部121と異なる他の部位に、第2半導体層112に接触する電極が形成されてもよい。
【0078】
・他の実施形態7
第1実施形態において、イオン注入工程(
図2、ステップS40)が行われた後に、p型不純物の堆積工程(
図2、ステップS30)が行われてもよい。また、第2実施形態において、イオン注入工程(
図14、ステップS40)が行われた後に、p型不純物の堆積工程(
図14、ステップS30)及び選択成長工程(
図14、ステップS35)が行われてもよい。このようにしても、第1溝部121の側部s及び底部bにp型不純物を堆積することによって、高濃度n型不純物領域を補償することができる。また、第1溝部121を介したイオン注入によって、第1半導体層111内にp型半導体領域117を形成することができる。また、第1溝部121の底部bは第2半導体層112内に位置しているため、第1溝部121の底部bにおける第2半導体層112とイオン注入によって形成されたp型半導体領域117とで、高濃度n型不純物領域を補償することができる。その結果、第1溝部121近傍に電圧が印加された場合に空乏層が広がるので、半導体装置100の耐圧を向上させることができる。
【0079】
・他の実施形態8
第2溝部形成工程(
図2,14、ステップS80)は、第1溝部形成工程(
図2、
図14、ステップS20)の前に行われてもよい。また、上記実施形態において、ウエットエッチングが用いられた工程では、ウエットエッチングに代えてドライエッチングが行われてもよい。また、保護膜形成工程(
図2、
図14、ステップS50)は省略されてもよい。熱処理工程(
図2、
図14、ステップS60)は、第2溝部形成工程(
図2、ステップS80)の後に行われてもよい。
【0080】
・他の実施形態9
イオン注入工程(
図2、
図14、ステップS40)では、第1溝部121上に、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムアルミニウム(InAlN)、窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)、ダイヤモンドライクカーボン等のスルー膜が形成されてもよい。このようにすれば、イオン注入により、第1溝部121の表面(側部s及び底部b)が汚染されることを抑制することができる。
【0081】
・他の実施形態10
本開示が適用される半導体装置は、上述の実施形態で説明したトレンチMOSFETに限られず、イオン注入によってp型半導体領域が形成された半導体装置であればよく、例えば、ショットキーバリアダイオード、接合型トランジスタ、バイポーラトランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、MESFET(metal-semiconductor field effect transistor)及びサイリスタなどであってもよい。
【0082】
本開示は、上述した実施形態、実施例に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現できる。例えば、実施形態における技術的特徴のうち、発明の概要の欄に記載した各形態における技術的特徴に対応するものは、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替え及び組み合わせを行うことが可能である。また、本明細書中に必須なものとして説明されていない技術的特徴については、適宜、削除することが可能である。