(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチのそれぞれは、前記第1端子及び前記第2端子の間を流れる電流と相関を有する微小電流を出力するセンス端子(StH,StL)を有し、
前記上アーム駆動部は、前記上アームスイッチの前記センス端子から出力される微小電流に基づいて、電流流通方向が、前記誘導性負荷から前記接続点へと向かう方向又は前記接続点から前記誘導性負荷へと向かう方向のいずれであるかを判定し、
前記下アーム駆動部は、前記下アームスイッチの前記センス端子から出力される微小電流に基づいて、電流流通方向が、前記誘導性負荷から前記接続点へと向かう方向又は前記接続点から前記誘導性負荷へと向かう方向のいずれであるかを判定する請求項1に記載のスイッチの駆動回路。
前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチの接続点と、前記誘導性負荷との間を流れる電流を検出する電流検出部(23)を備えるシステムに適用されるスイッチの駆動回路において、
前記上アーム駆動部は、前記電流検出部の検出値に基づいて、電流流通方向が、前記誘導性負荷から前記接続点へと向かう方向又は前記接続点から前記誘導性負荷へと向かう方向のいずれであるかを判定し、
前記下アーム駆動部は、前記電流検出部の検出値に基づいて、電流流通方向が、前記誘導性負荷から前記接続点へと向かう方向又は前記接続点から前記誘導性負荷へと向かう方向のいずれであるかを判定する請求項1に記載のスイッチの駆動回路。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明に係るスイッチの駆動回路を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1に示すように、制御システムは、回転電機10と、電力変換器としてのインバータ20と、回転電機10を制御対象とする制御装置30とを備えている。本実施形態において、回転電機10は、星形結線された3相の巻線11を備えている。回転電機10は、例えば、同期機である。
【0015】
回転電機10は、インバータ20を介して、直流電源21に接続されている。直流電源21は、例えば2次電池である。なお、直流電源21及びインバータ20の間には、平滑コンデンサ22が設けられている。
【0016】
インバータ20は、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとの直列接続体を3相分備えている。本実施形態では、各スイッチSWH,SWLとして、ユニポーラ素子であってかつSiC又はGaN等のワイドバンドギャップ半導体であるNチャネルMOSFETが用いられている。上アームスイッチSWHには、ボディダイオードとしての上アームダイオードDHが内蔵され、下アームスイッチSWLには、ボディダイオードとしての下アームダイオードDLが内蔵されている。本実施形態の各スイッチSWH,SWLにおいて、ドレインが第1端子に相当し、ソースが第2端子に相当し、ゲートが制御端子に相当する。
【0017】
各相において、上アームスイッチSWHのソースと下アームスイッチSWLのドレインとの接続点には、回転電機10の巻線11の第1端が接続されている。各相の巻線11の第2端は、中性点で接続されている。なお、本実施形態において、巻線11が誘導性負荷に相当する。
【0018】
制御システムは、相電流検出部23を備えている。相電流検出部23は、回転電機10に流れる各相電流のうち、少なくとも2相分の電流を検出する。
【0019】
制御装置30は、回転電機10の制御量をその指令値に制御すべく、インバータ20を制御する。制御量は、例えばトルクである。制御装置30は、デッドタイムを挟みつつ上,下アームスイッチSWH,SWLを交互にオンすべく、上,下アームスイッチSWH,SWLに対応する上,下アーム駆動信号SgH,SgLを、上,下アームスイッチSWH,SWLに対して個別に設けられた上,下アーム駆動回路DrCH,DrCLに出力する。駆動信号は、スイッチのオン状態への切り替えを指示するオン指令と、オフ状態への切り替えを指示するオフ指令とのいずれかをとる。
【0020】
続いて、
図2を用いて、各駆動回路DrCH,DrCLについて説明する。
【0021】
まず、上アーム駆動回路DrCHについて説明する。上アーム駆動回路DrCHは、上アーム充電スイッチ41、上アーム第1スイッチ42、上アーム第2スイッチ43、上アーム第1抵抗体44、上アーム第2抵抗体45、上アーム制御部46、上アーム定電圧電源47及び上アーム負電源48を備えている。上アーム定電圧電源47には、図示しない充電用抵抗体と、上アーム充電スイッチ41とを介して、上アーム駆動回路DrCHの第1上アーム端子TH1が接続されている。第1上アーム端子TH1には、上アームスイッチSWHのゲートが接続されている。
【0022】
第1上アーム端子TH1には、上アーム第1抵抗体44及び上アーム第1スイッチ42を介して、上アーム駆動回路DrCHの第2上アーム端子TH2が接続されている。第2上アーム端子TH2には、上アームスイッチSWHのソースが接続されている。第2上アーム端子TH2には、上アーム負電源48の正極端子が接続されている。第1上アーム端子TH1には、上アーム第2抵抗体45及び上アーム第2スイッチ43を介して、上アーム負電源48の負極端子が接続されている。
【0023】
上アームスイッチSWHは、自身に流れるドレイン電流と相関を有する微少電流を出力する上アームセンス端子StHを備えている。上アームセンス端子StHには、上アームセンス抵抗体49の第1端が接続され、上アームセンス抵抗体49の第2端には、第2上アーム端子TH2及び上アームスイッチSWHのソースが接続されている。上アームセンス端子StHから出力された微少電流によって上アームセンス抵抗体49に電圧降下が生じる。本実施形態では、上アームスイッチSWHのソース電位に対する上アームセンス抵抗体49の第1端側の電位を上アームセンス電圧VsHと称すこととする。上アームセンス抵抗体49の第1端には、上アーム駆動回路DrCHの第3上アーム端子TH3が接続されている。上アーム制御部46は、第3上アーム端子TH3を介して上アームセンス電圧VsHを取得する。なお、本実施形態では、上アームスイッチSWHのソース電位を0とし、上アームセンス抵抗体49の第1端側の電位がソース電位よりも高い場合の上アームセンス電圧VsHが正と定義されている。また、本実施形態において、上アーム充電スイッチ41、上アーム第1,第2スイッチ42,43、上アーム第1,第2抵抗体44,45、上アーム定電圧電源47及び上アーム負電源48が上アーム電圧調整部に相当する。
【0024】
上アーム制御部46は、上アーム駆動回路DrCHの第4上アーム端子TH4を介して、制御装置30から出力された上アーム駆動信号SgHを取得する。上アーム制御部46は、取得した上アーム駆動信号SgHがオン指令であると判定した場合、充電処理により、上アームスイッチSWHをオン状態に切り替える。充電処理は、上アーム充電スイッチ41をオン状態にして、かつ、上アーム第1スイッチ42及び上アーム第2スイッチ43をオフ状態にする処理である。充電処理によれば、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgsHが閾値電圧Vth以上となる。その結果、上アームスイッチSWHがオフ状態からオン状態に切り替えられる。閾値電圧Vthは、スイッチをオン状態及びオフ状態のうち一方の状態から他方の状態に切り替える電圧である。上アーム制御部46は、上アーム駆動信号SgHがオフ指令であると判定した場合、放電処理により、上アームスイッチSWHをオフ状態に切り替える。放電処理は、上アーム充電スイッチ41をオフ状態にするとともに、上アーム第1,第2スイッチ42,43のうち一方をオン状態にし、他方をオフ状態にする処理である。放電処理によれば、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgsHが閾値電圧Vth未満となる。その結果、上アームスイッチSWHがオン状態からオフ状態に切り替えられる。
【0025】
続いて、下アーム駆動回路DrCLについて説明する。下アーム駆動回路DrCLは、下アーム充電スイッチ51、下アーム第1スイッチ52、下アーム第2スイッチ53、下アーム第1抵抗体54、下アーム第2抵抗体55、下アーム制御部56、下アーム定電圧電源57及び下アーム負電源58を備えている。また、下アーム駆動回路DrCLは、第1〜第4下アーム端子TL1〜TL4を備えている。本実施形態において、下アーム駆動回路DrCLの構成は、上アーム駆動回路DrCHの構成と基本的には同様である。このため、下アーム駆動回路DrCLの詳細な説明を省略する。ちなみに、本実施形態において、下アーム充電スイッチ51、下アーム第1,第2スイッチ52,53、下アーム第1,第2抵抗体54,55、下アーム定電圧電源57及び下アーム負電源58が下アーム電圧調整部に相当する。
【0026】
下アームスイッチSWLは、自身に流れるドレイン電流と相関を有する微少電流を出力する下アームセンス端子StLを備えている。下アームセンス端子StLには、下アームセンス抵抗体59の第1端が接続され、下アームセンス抵抗体59の第2端には、第2下アーム端子TL2及び下アームスイッチSWLのソースが接続されている。本実施形態では、下アームスイッチSWLのソース電位に対する下アームセンス抵抗体59の第1端側の電位を下アームセンス電圧VsLと称すこととする。下アームセンス抵抗体59の第1端には、第3下アーム端子TL3が接続されている。下アーム制御部56は、第3下アーム端子TL3を介して下アームセンス電圧VsLを取得する。
【0027】
続いて、
図3を用いて、本実施形態の上,下アームスイッチSWH,SWLの特性について説明する。なお、以下の説明において、スイッチのゲート及びソース間電圧Vgsは、ソース電位よりもゲート電位の方が高い場合が正と定義されている。また、ドレイン電流Idsは、ドレイン側からソース側へと流れる場合が正と定義されている。
【0028】
ゲート及びソース間電圧Vgsが0よりも高い場合、ドレイン側からソース側、及びソース側からドレイン側の双方にドレイン電流Idsの流通が許可される。この場合、ソース側からドレイン側に向かってスイッチのボディダイオードにも電流の流通が可能とされる。一方、ゲート及びソース間電圧Vgsが0未満の場合、ドレイン電流Idsは負方向にのみ流れる。つまり、ゲート及びソース間電圧Vgsが0未満の場合、ソース側からドレイン側に向かってボディダイオードにのみ電流が流れる。ゲート及びソース間電圧Vgsが0未満の場合、ゲート及びソース間Vgsの絶対値が高いほど、あるドレイン電流Idsが流れる場合に生じるドレイン及びソース間電圧Vdsが高くなる。つまり、ゲート及びソース間電圧Vgsが0未満の場合、ゲート及びソース間Vgsの絶対値が高いほど、あるドレイン電流Idsが流れる場合にボディダイオードで発生する導通損失が大きくなる。
【0029】
続いて、スイッチが誤ってオン状態に切り替えられしまうセルフターンオンについて説明する。上,下アームスイッチSWH,SWLは、ドレイン及びゲートの間と、ソース及びゲートの間とのそれぞれに形成された帰還容量を有している。帰還容量が存在することにより、例えば、下アームスイッチSWLをオフ状態に維持したいにもかかわらず、下アームスイッチSWLのセルフターンオンが発生し得る。そこで、本実施形態では、ゲート電圧を0未満の負電圧に維持する処理が実行される。以下、
図4〜
図6を用いて、この処理について説明する。
【0030】
図4(a)は上アーム駆動信号SgHの推移を示し、
図4(b)は下アーム駆動信号SgLの推移を示す。
図4(c)は上アームスイッチSWHのゲート電圧VgsHの推移を示し、
図4(d)は下アームスイッチSWLのゲート電圧VgsLの推移を示す。
【0031】
図4において、Vpは、上アーム充電スイッチ41がオン状態とされ、上アーム第1,第2スイッチ42,43がオフ状態とされる場合のゲート電圧であるオン電圧を示す。本実施形態において、オン電圧Vpは、閾値電圧Vthよりも高い電圧(例えば20V)である。Vcは、上アーム充電スイッチ41及び上アーム第2スイッチ43がオフ状態とされ、上アーム第1スイッチ42がオン状態とされる場合のゲート電圧であるオフ電圧を示す。オフ電圧Vcは、閾値電圧Vth未満の電圧であり、本実施形態では0Vである。Vnは、上アーム充電スイッチ41及び上アーム第1スイッチ42がオフ状態とされ、上アーム第2スイッチ43がオン状態とされる場合のゲート電圧である負電圧を示す。負電圧Vnは、0未満の電圧(例えば−5V)である。
【0032】
図4及び
図5を用いて、相電流の流通方向が正方向の場合について説明する。本実施形態において、上,下アームスイッチSWH,SWLの接続点から巻線11へと向かう方向に流れる相電流が正方向と定義されている。本実施形態において、相電流の流通方向が正方向の場合、下アームダイオードDLが対象ダイオードに相当し、下アームスイッチSWLが対象スイッチに相当し、上アームスイッチSWHが対向アームスイッチに相当する。
【0033】
第1期間P1においては、
図5(a)に示すように、上アームスイッチSWHがオン状態とされ、下アームスイッチSWLがオフ状態とされる。その結果、上アームスイッチSWHのドレイン側からソースを介して巻線11へと電流が流れる。
【0034】
時刻t1〜t2で示す第2期間P2は、デッドタイムDTである。本実施形態において、デッドタイムDTは、上,下アームスイッチSWH,SWLの双方がオフ状態とされる期間である。このため、第2期間P2においては、
図5(b)に示すように、上,下アームスイッチSWH,SWLの双方がオフ状態とされる。この場合、下アームダイオードDLを介して巻線11へと還流電流が流れる。第2期間P2において、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgsLがオフ電圧Vc(0V)とされているため、ゲート電圧VgsLが負電圧Vnとされる場合と比較して、デッドタイムDTにおいて下アームダイオードDLに還流電流が流れることによる導通損失を低減できる。
【0035】
時刻t2〜t4で示す第3期間P3においては、
図5(c)に示すように、上アームスイッチSWHがオフ状態とされ、下アームスイッチSWLがオン状態とされる。その結果、下アームスイッチSWLのソース側からドレインを介して巻線11へと還流電流が流れる。
【0036】
時刻t4〜t5で示す第4期間P4は、デッドタイムDTである。第4期間P4においては、
図5(d)に示すように、上,下アームスイッチSWH,SWLの双方がオフ状態とされる。その結果、下アームダイオードDLを介して巻線11へと還流電流が流れる。第4期間P4の開始タイミングt4から、第4期間P4の終了タイミングt5よりも後のタイミングt6までの期間に渡って、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgsLが負電圧Vnに維持される。このため、時刻t5において上アームスイッチSWHがオン状態に切り替えられることに伴って下アームスイッチSWLにセルフターンオンが発生することを抑制できる。さらに、タイミングt6から次回のデッドタイムが終了するまでの期間に渡って、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgsLを、負電圧Vnではなくオフ電圧Vcに維持できる。その結果、負電圧Vnに維持される期間を短縮でき、下アームスイッチSWLの劣化の進行を抑制することができる。
【0037】
図4及び
図6を用いて、相電流の流通方向が負方向の場合について説明する。本実施形態において、相電流の流通方向が負方向の場合、上アームダイオードDHが対象ダイオードに相当し、上アームスイッチSWHが対象スイッチに相当し、下アームスイッチSWLが対向アームスイッチに相当する。
【0038】
第3期間P3においては、
図6(a)に示すように、上アームスイッチSWHがオン状態とされ、下アームスイッチSWLがオフ状態とされる。その結果、巻線11から、上アームスイッチSWHのドレインを介してソース側へと電流が流れる。
【0039】
続く第4期間P4は、デッドタイムDTであり、第4期間P4においては、
図6(b)に示すように、上,下アームスイッチSWH,SWLの双方がオフ状態とされる。その結果、巻線11から上アームダイオードDHを介して還流電流が流れる。第4期間P4において、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgsHがオフ電圧Vc(0V)とされているため、デッドタイムDTにおいて上アームダイオードDHに還流電流が流れることによる導通損失を低減できる。
【0040】
第1期間P1においては、
図6(c)に示すように、上アームスイッチSWHがオン状態とされ、下アームスイッチSWLがオフ状態とされる。その結果、巻線11から上アームスイッチSWHのソースを介してドレイン側へと還流電流が流れる。
【0041】
第2期間P2は、デッドタイムDTであり、第2期間P2においては、
図6(d)に示すように、上,下アームスイッチSWH,SWLの双方がオフ状態とされる。その結果、巻線11から上アームダイオードDHを介して還流電流が流れる。第2期間P2の開始タイミングt1から、第2期間P2の終了タイミングt2よりも後のタイミングt3までの期間に渡って、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgsHが負電圧Vnとされる。このため、時刻t2において下アームスイッチSWLがオン状態に切り替えられることに伴って上アームスイッチSWHのセルフターンオンが発生することを抑制できる。さらに、タイミングt3から次回のデッドタイムが終了するまでの期間に渡って、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgsHを、負電圧Vnではなくオフ電圧に維持できる。その結果、負電圧Vnに維持される期間を短縮でき、上アームスイッチSWHの劣化の進行を抑制することができる。
【0042】
図7に、上アーム制御部46により実行される上アームスイッチSWHの駆動処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の処理周期毎に繰り返し実行される。
【0043】
ステップS10では、上アーム保持フラグFaHが1であるか否かを判定する。上アーム保持フラグFaHは、1によってゲート電圧VgsHが負電圧Vnに保持されていることを示し、0によってゲート電圧VgsHが負電圧Vnに保持されていないことを示す。本実施形態において、上アーム保持フラグFaHの初期値は0にされている。
【0044】
ステップS11では、取得した上アーム駆動信号SgHに基づいて、現在の処理周期において上アーム駆動信号SgHがオン指令からオフ指令に切り替えられたか否かを判定する。
【0045】
ステップS11において肯定判定した場合には、ステップS12に進み、上アーム駆動信号SgHがオン指令であるか否かを判定する。ステップS12において肯定判定した場合には、ステップS13に進み、上アーム充電スイッチ41をオン状態とし、上アーム第1,第2スイッチ42,43をオフ状態とする。これにより、ゲート電圧VgsHがオン電圧Vpとされる。
【0046】
ステップS11において上アーム駆動信号SgHがオン指令からオフ指令に切り替えられたと判定した場合には、ステップS14に進む。ステップS14では、ゲート電圧VgsHをオフ電圧Vc(0V)に切り替えるタイミングであるか否かを判定する。オフ電圧Vcに切り替えるタイミングは、下アームスイッチSWLがオン状態に切り替えられた後のタイミングであって、上アームスイッチSWHのセルフターンオンが発生しないタイミングである。ステップS14では、例えば、ステップS11において肯定判定されてからの経過時間を上アーム駆動回路DrCHの備えるタイマ等の計時部によりカウントし、カウントした経過時間が第1所定時間に到達したと判定した場合、ステップS14において肯定判定すればよい。
【0047】
ステップS14において否定判定した場合には、ステップS15に進み、上アーム充電スイッチ41及び上アーム第1スイッチ42をオフ状態とし、上アーム第2スイッチ43をオン状態とする。これにより、ゲート電圧VgsHが負電圧Vnとされる。また、上アーム保持フラグFaHを1にする。
【0048】
ステップS14において肯定判定した場合には、ステップS16に進み、上アーム保持フラグFaHを0にする。そして、ステップS17に進み、上アーム第2スイッチ43をオフ状態に切り替え、上アーム第1スイッチ42をオン状態に切り替える。これにより、ゲート電圧VgsHがオフ電圧Vc(0V)とされる。なお、ステップS12において上アーム駆動信号SgHがオフ指令であると判定した場合にも、ステップS17に進む。
【0049】
図8に、下アーム制御部56により実行される下アームスイッチSWLの駆動処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の処理周期毎に繰り返し実行される。
【0050】
ステップS30では、下アーム保持フラグFaLが1であるか否かを判定する。下アーム保持フラグFaLは、1によってゲート電圧VgsLが負電圧Vnに保持されていることを示し、0によってゲート電圧VgsLが負電圧Vnに保持されていないことを示す。本実施形態において、下アーム保持フラグFaLの初期値は0にされている。
【0051】
ステップS31では、取得した下アーム駆動信号SgLに基づいて、現在の処理周期において下アーム駆動信号SgLがオン指令からオフ指令に切り替えられたか否かを判定する。
【0052】
ステップS31において肯定判定した場合には、ステップS32に進み、下アーム駆動信号SgLがオン指令であるか否かを判定する。ステップS32において肯定判定した場合には、ステップS33に進み、下アーム充電スイッチ51をオン状態とし、下アーム第1,第2スイッチ52,53をオフ状態とする。これにより、ゲート電圧VgsLがオン電圧Vpとされる。
【0053】
ステップS31において肯定判定した場合には、ステップS34に進み、ゲート電圧VgsLをオフ電圧Vc(0V)に切り替えるタイミングであるか否かを判定する。オフ電圧Vcに切り替えるタイミングは、上アームスイッチSWHがオン状態に切り替えられた後のタイミングであって、下アームスイッチSWLのセルフターンオンが発生しないタイミングである。ステップS34では、例えば、ステップS31において肯定判定されてからの経過時間を下アーム駆動回路DrCLの備えるタイマ等の計時部によりカウントし、カウントした経過時間が第2所定時間に到達したと判定した場合、ステップS34において肯定判定すればよい。なお、第2所定時間は、先のステップS14の第1所定時間と同じ時間であってもよいし、異なる時間であってもよい。
【0054】
ステップS34において否定判定した場合には、ステップS35に進み、下アーム充電スイッチ51及び下アーム第1スイッチ52をオフ状態とし、下アーム第2スイッチ53をオン状態とする。これにより、ゲート電圧VgsLが負電圧Vnとされる。また、下アーム保持フラグFaLを1にする。
【0055】
ステップS34において肯定判定した場合には、ステップS36に進み、下アーム保持フラグFaLを0にする。そして、ステップS37に進み、下アーム第2スイッチ53をオフ状態に切り替え、下アーム第1スイッチ52をオン状態に切り替える。これにより、ゲート電圧VgsLがオフ電圧Vc(0V)とされる。なお、ステップS32において否定判定した場合にも、ステップS37に進む。
【0056】
以上詳述した本実施形態によれば、インバータ20を構成する上,下アームスイッチSWH,SWLのセルフターンオンの発生を抑制しつつ、負電圧Vnの維持期間を短縮することができる。これにより、上,下アームスイッチSWH,SWLの劣化の進行を抑制することができる。
【0057】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、相電流の流通方向が正の場合、
図9に示すように、デッドタイムDTと、下アームスイッチSWLがオン状態とされる期間とのそれぞれにおいて、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgsHがオフ電圧Vcとされる。つまり、相電流の流通方向が正の場合、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgsHが負電圧Vnとされない。一方、相電流の流通方向が負の場合、
図10に示すように、デッドタイムDTと、上アームスイッチSWHがオン状態とされる期間とのそれぞれにおいて、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgsLがオフ電圧Vcとされる。つまり、相電流の流通方向が負の場合、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgsLが負電圧Vnとされない。以上説明した構成は、相電流の流通方向によってセルフターンオンが発生し得る状況が変化することに鑑みたものであり、上,下アームスイッチSWH,SWLの劣化の進行をいっそう抑制するためのものである。なお、
図9,
図10は、先の
図4に対応している。
【0058】
図11に、上アーム制御部46により実行される上アームスイッチSWHの駆動処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の処理周期毎に繰り返し実行される。なお、
図11において、先の
図7に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0059】
ステップS20では、後述するステップS23で取得した上アームセンス電圧VsHが負の値であるか否かを判定する。ステップS23で取得した上アームセンス電圧VsHは、上アーム駆動信号SgHがオン指令とされる期間において直近で取得した上アームセンス電圧VsHである。
【0060】
ステップS20において負の値であると判定した場合には、ステップS21に進み、上アーム判定フラグFbHを0にする。上アーム判定フラグFbHは、0によって相電流の流通方向が負方向であることを示し、1によって流通方向が正方向であることを示す。本実施形態において、上アーム判定フラグFbHの初期値は0にされている。
【0061】
ステップS20において上アームセンス電圧VsHが0以上であると判定した場合には、ステップS22に進み、上アーム判定フラグFbHを1にする。ステップS21又はS22の処理の完了後、ステップS10に進む。
【0062】
ステップS11において否定判定し、ステップS12において肯定判定した場合には、ステップS23に進む。ステップS23では、上アームセンス電圧VsHを取得する。
【0063】
ステップS11において肯定判定した場合には、ステップS24に進み、上アーム判定フラグFbHが0であるか否かを判定する。上アーム判定フラグFbHが0であると判定した場合には、ステップS14に進む。一方、上アーム判定フラグFbHが1であると判定した場合には、ステップS17に進む。このため、上アーム駆動信号SgHがオフ指令とされる場合においてゲート電圧VgsHが負電圧Vnとされない。
【0064】
図12に、下アーム制御部56により実行される下アームスイッチSWLの駆動処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の処理周期毎に繰り返し実行される。なお、
図12において、先の
図8に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0065】
ステップS40では、後述するステップS43で取得した下アームセンス電圧VsLが負の値であるか否かを判定する。
【0066】
ステップS40において負の値であると判定した場合には、ステップS41に進み、下アーム判定フラグFbLを0にする。下アーム判定フラグFbLは、0によって相電流の流通方向が負方向であることを示し、1によって流通方向が正方向であることを示す。本実施形態において、下アーム判定フラグFbLの初期値は0にされている。
【0067】
ステップS40において肯定判定した場合には、ステップS42に進み、下アーム判定フラグFbLを1にする。ステップS41又はS42の処理の完了後、ステップS30に進む。
【0068】
ステップS31において否定判定し、ステップS32において肯定判定した場合には、ステップS43に進む。ステップS43では、下アームセンス電圧VsLを取得する。
【0069】
ステップS31において肯定判定した場合には、ステップS44に進み、下アーム判定フラグFbLが0であるか否かを判定する。下アーム判定フラグFbLが1であると判定した場合には、ステップS34に進む。一方、下アーム判定フラグFbLが0であると判定した場合には、ステップS37に進む。このため、下アーム駆動信号SgLがオフ指令とされる場合においてゲート電圧VgsLが負電圧Vnとされない。
【0070】
以上説明した本実施形態によれば、負電圧Vnの維持期間をより短縮でき、上,下アームスイッチSWH,SWLの劣化の進行をいっそう抑制することができる。
【0071】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、センス電圧に代えて、相電流検出部23の検出値に基づいて、相電流の流通方向を判別する。相電流検出部23の検出値は、制御装置30を介して各駆動回路DrCH,DrCLに入力される。詳しくは、
図13に示すように、上アーム制御部46には、第4上アーム端子TH4を介して、自身に対応する相の相電流情報が入力される。
図13において、先の
図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。下アーム制御部56には、第4下アーム端子TL1を介して、自身に対応する相の相電流情報が入力される。なお、
図13には、第4上,下アーム端子TH4,TL4を介して相電流情報が入力される構成を示したがこれに限らず、第4上,下アーム端子TH4,TL4とは別の端子を介して相電流情報が入力される構成であってもよい。
【0072】
図14に、上アーム制御部46により実行される上アームスイッチSWHの駆動処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の処理周期毎に繰り返し実行される。なお、
図14において、先の
図11に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0073】
ステップS25では、後述するステップS26で取得した相電流に基づいて、相電流の流通方向が負方向であるか否かを判定する。ステップS26で取得した相電流は、上アーム駆動信号SgHがオン指令とされる期間において直近で取得した相電流である。
【0074】
ステップS25において負方向であると判定した場合には、ステップS21に進む。一方、ステップS25において正方向であると判定した場合には、ステップS22に進む。なお、ステップS12において肯定判定した場合には、ステップS26に進み、相電流を取得する。
【0075】
図15に、下アーム制御部56により実行される下アームスイッチSWLの駆動処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の処理周期毎に繰り返し実行される。なお、
図15において、先の
図12に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0076】
ステップS45では、後述するステップS46で取得した相電流に基づいて、相電流の流通方向が負方向であるか否かを判定する。
【0077】
ステップS45において負方向であると判定した場合には、ステップS41に進む。一方、ステップS45において正方向であると判定した場合には、ステップS42に進む。なお、ステップS32において肯定判定した場合には、ステップS46に進み、相電流を取得する。
【0078】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0079】
・第3実施形態において、センス電圧を検出する構成は、各駆動回路DrCH,DrCLに必須ではない。
【0080】
・第1実施形態の
図4において、相電流の流通方向が正方向の場合には、第4期間P4の開始タイミングt4ではなく、この開始タイミングt4よりも後のタイミングであって、かつ、第4期間P4の終了タイミングt5よりも前のタイミングから、下アームスイッチSWLのゲート電圧VgsLを負電圧Vnに維持し始めてもよい。また、相電流の流通方向が負方向の場合には、第2期間P2の開始タイミングt1ではなく、この開始タイミングt1よりも後のタイミングであって、かつ、第2期間P2の終了タイミングt2よりも前のタイミングから、上アームスイッチSWHのゲート電圧VgsHを負電圧Vnに維持し始めてもよい。
【0081】
・オフ電圧Vcは、0Vに限らず、0Vよりも高くてかつ閾値電圧Vth未満の電圧であってもよい。
【0082】
・同じ相の上アーム駆動回路DrCHと下アーム駆動回路DrCLとが相互に情報をやり取り可能に構成されていてもよい。この場合、例えば、上アーム制御部46は、
図7のステップS14において、下アーム駆動回路DrCLから取得した下アーム駆動信号SgLに基づいて、切り替えタイミングであるか否かを判定してもよい。また、例えば、下アーム制御部56は、
図8のステップS34において、上アーム駆動回路DrCHから取得した上アーム駆動信号SgHに基づいて、切り替えタイミングであるか否かを判定してもよい。
【0083】
・上記各実施形態では、上,下アームスイッチSWH,SWLそれぞれに対応して上,下アーム駆動回路DrCH,DrCLが個別に設けられていたがこれに限らない。上,下アームスイッチSWH,SWLに対して共通の駆動回路が設けられていてもよい。
【0084】
・インバータを構成するスイッチとしては、MOSFETに限らない。
【0085】
・インバータ20の各アームを構成するスイッチは、1つのスイッチに限らず、複数のスイッチの並列接続体であってもよい。