特許第6791091号(P6791091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6791091-車体外装構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791091
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】車体外装構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/52 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   B60R19/52 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-201491(P2017-201491)
(22)【出願日】2017年10月18日
(65)【公開番号】特開2019-73196(P2019-73196A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 裕章
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−523609(JP,A)
【文献】 特開2001−1943(JP,A)
【文献】 特開2003−118520(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0261167(US,A1)
【文献】 実開昭62−68830(JP,U)
【文献】 特開2002−326548(JP,A)
【文献】 特開昭58−63545(JP,A)
【文献】 中国実用新案第205601770(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の一部を覆い、ランプ装着用の通孔を備えるパネル部材と、
前記パネル部材に取り付けられる取付部材と、
前記通孔から投光可能な位置に固定されるランプと、
前記取付部材に設けられ、前記パネル部材に係止される係止爪と、
前記パネル部材に設けられ、前記係止爪を挿入可能とする係止孔と、を備え、
前記係止孔に挿入された前記係止爪の前記パネル部材への係止により、前記パネル部材に前記取付部材が取り付けられる車体外装構造において、
インテグラルヒンジを介して前記パネル部材と一体形成されたパネル一体型の遮光カバーが備えられ、
前記遮光カバーは、前記インテグラルヒンジを中心とする回動により、前記係止孔と前記ランプとの間に設置可能であることを特徴とする車体外装構造。
【請求項2】
前記パネル部材は、前記インテグラルヒンジを中心に回動された前記遮光カバーを係止する遮光カバー係止部を備えていることを特徴とする請求項1記載の車体外装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体外装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体外装構造の従来技術としては、例えば、特許文献1に開示された車両用バンパと車体パネルとの合わせ部管理構造が知られている。特許文献1では、フロントバンパのバンパ本体にヘッドランプ装着開口を有するグリル部を一体形成し、該グリル部とフェンダパネルとの合わせ部の第2棚部にスペーサを取付けている。スペーサの補強リブにより合わせ部の隙間を覆ったので、車輪により巻き上げられた泥水等が隙間からバンパ表面に漏れ出るのを防止でき、見栄えの悪化を防止できるとともに、補強リブがヘッドランプから漏れ出た光を遮蔽することとなり、ヘッドランプの光が隙間から漏れ出ることによる見栄えの悪化を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−193053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、フロントバンパと別部品であるスペーサを遮光部材として用いるため、部品点数が増大するほか、スペーサの組付作業が煩雑であって時間がかかるという問題がある。一方、互いに連結されるパネル部材の連結部における光漏れの対策としては、発泡ゴムを材料とする遮光部材を用いることも考えられるが、この種の遮光部材は、特許文献1と同様の問題がある。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、部品点数を増やすことなく簡単に光漏れを防止することが可能な車体外装構造の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、車体の一部を覆い、ランプ装着用の通孔を備えるパネル部材と、前記パネル部材に取り付けられる取付部材と、前記通孔から投光可能な位置に固定されるランプと、前記取付部材に設けられ、前記パネル部材に係止される係止爪と、前記パネル部材に設けられ、前記係止爪を挿入可能とする係止孔と、を備え、前記係止孔に挿入された前記係止爪の前記パネル部材への係止により、前記パネル部材に前記取付部材が取り付けられる車体外装構造において、インテグラルヒンジを介して前記パネル部材と一体形成されたパネル一体型の遮光カバーが備えられ、前記遮光カバーは、前記インテグラルヒンジを中心とする回動により、前記係止孔と前記ランプとの間に設置可能であることを特徴とする。
【0007】
本発明では、インテグラルヒンジを中心に遮光カバーを回動させることにより、遮光カバーを係止孔とランプとの間に設置することができる。パネル部材とインテグラルヒンジを介して一体形成された遮光カバーを係止孔とランプとの間に設置することにより、係止孔からの光漏れを防止することができる。インテグラルヒンジを介して遮光カバーがパネル部材と一体形成されているため、部品点数は増えることはなく、また、インテグラルヒンジを中心に遮光カバーを回動することにより簡単に設置することができる。
【0008】
また、上記の車体外装構造において、前記パネル部材は、前記インテグラルヒンジを中心に回動された前記遮光カバーを係止する遮光カバー係止部を備えている構成としてもよい。
この場合、係止部は、インテグラルヒンジを中心に回動された遮光カバーを係止孔とランプとの間に設置されるように、遮光カバーをパネル部材に係止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部品点数を増やすことなく簡単に光漏れを防止することが可能な車体外装構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る車体外装構造を示す縦断面図である。
図2】本発明に係る車体外装構造の要部を示す要部正面図である。
図3】本発明に係る車体外装構造のグリルパネルの要部を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る車体外装構造について図面を参照して説明する。本実施形態の車体外装構造は、自動車の前部に適用した例である。前後、左右、上下の各方向は、運転席に着座した運転手を基準とする。
【0012】
車体(図示せず)の前部には、図1図2に示すパネル部材としてのグリルパネル12が備えられている。グリルパネル12は、樹脂製であって車体の前部の左右にわたって延在し、車体フレーム(図示せず)にボルト(図示せず)により固定されている。
【0013】
図1に示すように、グリルパネル12は、グリルパネル12が車体フレームに取り付けられた状態で上端となる縁部12Aと下端となる縁部12Bを備えている。グリルパネル12には、フォグランプ装着用の通孔14が備えられている。通孔14はグリルパネル12において左右一対備えられるが、図2では、運転席側の通孔14のみを図示している。図1に示すように、通孔14は縁部12Aと縁部12Bとの間に位置する。ランプとしてのフォグランプ13は、グリルパネル12に一体形成されたフォグブラケット部(図示せず)に取り付けられている。つまり、フォグランプ13は通孔14から投光可能な位置に固定されている。
【0014】
グリルパネル12において通孔14の下方には、取付部材としてのバンパパネル15を係止するためのバンパパネル用係止孔16が設けられている。バンパパネル用係止孔16は左右方向に長辺スリット状の長方形の孔であり、係止孔に相当する。グリルパネル12においてバンパパネル用係止孔16よりも上に位置する部位の表面には意匠面が形成されている。グリルパネル12における各バンパパネル用係止孔16の下方には、一対の遮光カバー用係止孔17が備えられている。遮光カバー用係止孔17は後述する遮光カバー20を係止するための遮光カバー係止部に相当する。
【0015】
バンパパネル15には、バンパパネル用係止孔16に挿入可能であってグリルパネル12に係止可能なバンパパネル係止爪18が備えられている。バンパパネル係止爪18は、係止爪に相当する。バンパパネル係止爪18の位置はバンパパネル用係止孔16の位置に合わせられている。バンパパネル係止爪18には、係止面18Aが形成されている。バンパパネル係止爪18がバンパパネル用係止孔16に挿入され、係止面18Aがグリルパネル12の裏面に係止されることで、バンパパネル係止爪18のバンパパネル用係止孔16から抜け出しが防止される。
【0016】
バンパパネル15は、バンパパネル係止爪18によるグリルパネル12の係止だけでなく、図示されないクリップおよびボルトにより、グリルパネル12に取り付けられている。なお、図2では、バンパパネル15の図示を省略している。バンパパネル用係止孔16にバンパパネル係止爪18が挿入された状態では、バンパパネル用係止孔16においてバンパパネル係止爪18とグリルパネル12との間に隙間が生じる場合がある。この隙間が生じているとき、フォグランプ13の光がバンパパネル用係止孔16の隙間から漏れるおそれが大きい。
【0017】
本実施形態では、バンパパネル用係止孔16からのフォグランプ13の光漏れを防止する工夫がグリルパネル12に施されている。具体的には、遮光カバー20がフォグランプ13とバンパパネル用係止孔16との間に配置され、バンパパネル用係止孔16からのフォグランプ13の光漏れは遮光カバー20により防止される。
【0018】
遮光カバー20は、インテグラルヒンジ21を介してグリルパネル12と一体形成されている。グリルパネル12および遮光カバー20は射出成形により一体形成されている。したがって、遮光カバー20はパネル一体型の遮光カバーである。インテグラルヒンジ21は、グリルパネル12の下端となる縁部12Bに沿って形成されている。遮光カバー20はインテグラルヒンジ21を中心に回動可能である。図1図3に示すように、本実施形態では、遮光カバー20は、グリルパネル12の裏面と重なるように回動され、フォグランプ13とバンパパネル用係止孔16との間に設置可能である。
【0019】
遮光カバー20におけるインテグラルヒンジ21側の縁部から自由端である縁部までの長さ(遮光カバー20の上下方向の長さ)は、グリルパネル12の縁部12Aから通孔14までの長さより小さい。遮光カバー20の上下方向の長さは、バンパパネル用係止孔16の上下方向の長さより十分に大きく、遮光カバー20の左右方向の長さ(幅)はバンパパネル用係止孔16の幅よりも大きい。遮光カバー20の板厚はグリルパネル12の板厚とほぼ同じである。
【0020】
遮光カバー20には、遮光カバー20の裏面から突出する一対の遮光カバー係止爪22が設けられている。遮光カバー係止爪22は、遮光カバー20をグリルパネル12の裏面と重なるように回動させた状態のとき、遮光カバー用係止孔17に挿入可能である。遮光カバー係止爪22には、係止面22Aが形成されている。遮光カバー係止爪22が遮光カバー用係止孔17に挿入され、係止面22Aがグリルパネル12の表面に係止されることで、遮光カバー係止爪22の遮光カバー用係止孔17からの抜け出しが防止される。
【0021】
遮光カバー係止爪22がグリルパネル12に係止されることにより、遮光カバー20は折り返された状態にてグリルパネル12に保持される。折り返された状態にてグリルパネル12に保持された遮光カバー20は、フォグランプ13の一部とバンパパネル用係止孔16との間に位置する。グリルパネル12においてバンパパネル用係止孔16から下側の部位の前方には、バンパパネル15が位置する。
【0022】
次に、本実施形態に係る車体外装構造の組み付け手順について説明する。射出成形により形成されたグリルパネル12と遮光カバー20はインテグラルヒンジ21を介して接続されている(図2を参照)。まず、作業者は、遮光カバー20がグリルパネル12の裏面と重なるようにインテグラルヒンジ21を中心に遮光カバー20を上方へ回動させつつ、遮光カバー20の遮光カバー係止爪22を遮光カバー用係止孔17へ挿入する(図1図3を参照)。なお、遮光カバー係止爪22を遮光カバー用係止孔17へ挿入する際には、遮光カバー係止爪22を弾性変形させると、遮光カバー係止爪22が遮光カバー用係止孔17へ挿入され易くなる。
【0023】
遮光カバー係止爪22が遮光カバー用係止孔17に挿入されることにより、遮光カバー係止爪22がグリルパネル12に係止され、遮光カバー20が折り返された状態にてグリルパネル12に保持される。グリルパネル12に保持された遮光カバー20は、フォグランプ13とバンパパネル用係止孔16との間に位置する。遮光カバー20が折り返され、グリルパネル12に保持された状態では、遮光カバー係止爪22は遮光カバー用係止孔17から抜け出すことはない。
【0024】
次に、作業者は、フォグランプ13をグリルパネル12に形成されているフォグブラケット部(図示せず)に取り付け、その後、フォグランプ13が取り付けられたグリルパネル12を車体フレームに固定する。そして、車体フレームに固定されたグリルパネル12にバンパパネル15を取り付ける。バンパパネル15をグリルパネル12に取り付ける際には、バンパパネル15のバンパパネル係止爪18をグリルパネル12のバンパパネル用係止孔16に挿入し、バンパパネル係止爪18をグリルパネル12に係止する。バンパパネル15は、バンパパネル係止爪18による係止のほか、クリップおよびボルトによる固定によりグリルパネル12に取り付けられる。
【0025】
折り返された状態にてグリルパネル12に保持された遮光カバー20は、フォグランプ13とバンパパネル用係止孔16との間に位置するため、フォグランプ13のバンパパネル用係止孔16から漏れる光は、遮光カバー20により防止される。また、グリルパネル12においてバンパパネル用係止孔16から下側の部位の前方には、バンパパネル15が位置するため、遮光カバー用係止孔17から光漏れはバンパパネル15により遮られる。したがって、遮光カバー用係止孔17を通じたフォグランプ13からの光漏れは確実に防止される。
【0026】
なお、グリルパネル12を車体フレームに固定してから、バンパパネル15をグリルパネル12に取り付けたが、最初にバンパパネル15をグリルパネル12に取り付けてもよい。この場合、その後に、遮光カバー20を回動させて折り返された状態にてグリルパネル12に保持させ、さらに、フォグランプ13をグリルパネル12に取り付ける。そして、バンパパネル15およびフォグランプ13が取り付けられたグリルパネル12を車体フレームに固定する。
【0027】
本実施形態の車体外装構造は以下の作用効果を奏する。
(1)インテグラルヒンジ21を中心に遮光カバー20を回動させることにより、遮光カバー20をバンパパネル用係止孔16とフォグランプ13との間に設置することができる。グリルパネル12とインテグラルヒンジ21を介して一体形成された遮光カバー20をバンパパネル用係止孔16とフォグランプ13との間に設置することにより、バンパパネル用係止孔16からの光漏れを防止することができる。インテグラルヒンジ21を介して遮光カバー20がグリルパネル12と一体形成されているため、部品点数は増えることはなく、また、インテグラルヒンジ21を中心に遮光カバー20を回動することにより簡単に設置することができる。
【0028】
(2)グリルパネル12は、インテグラルヒンジ21を中心に回動された遮光カバー20を係止するカバー係止部としての遮光カバー用係止孔17を備えている。このため、遮光カバー用係止孔17は、インテグラルヒンジ21を中心に回動された遮光カバー20をバンパパネル用係止孔16とフォグランプ13との間に設置されるように、遮光カバー20をグリルパネル12に係止することができる。
【0029】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0030】
○ 上記の実施形態では、パネル部材としてのグリルパネルにバンパパネル用係止孔を形成し、バンパパネル用係止孔を遮光カバー係止部としたが、遮光カバー係止部は、バンパパネル用係止孔に限らない。遮光カバー係止部は、パネル部材以外の部材に設けるようにしてもよく、例えば、パネル部材と別に設けた部材(例えば、フォグランプブラケット)に遮光カバー係止部を設けてもよい。また、遮光カバー係止部は、係止孔に限定されず、遮光カバーを係止することが可能な構成であればよい。
○ 上記の実施形態では、グリルパネルをパネル部材とし、バンパパネルを取付部材としたが、この限りではない。例えば、上下に分割されたバンパの場合、ランプの通孔を備えるアッパバンパをパネル部材とし、アッパバンパに取り付けられ、係止爪を有するロアバンパを、取付部材としてもよい。なお、取付部材は、バンパパネルのようなパネルに限定されず、パネル部材に設けた係止孔に係止される係止爪を備え、パネル部材に取り付けられる部材であればよく、特に形状や構造は問われない。また、本発明は車体の前部だけでなく、車体の後部に適用することも可能である。
○ 上記の実施形態では、ランプとしてのフォグランプを例示したが、ランプはフォグランプに限定されない。ランプは、フォグランプのほか、例えば、前照灯、方向指示灯、ブレーキランプであってもよい。
○ 上記の実施形態では、パネル部材に単一の遮光カバーが備えられたが、この限りではない。遮光カバーは、パネル部材に設けられるカバー係止部の数に応じて備えるようにしてもよい。例えば、カバー係止部がパネル部材の2箇所に設けられている場合、2個の遮光カバーを備えるようにすればよい。
○ 上記の実施形態では、パネル部材にランプが固定されるとしたが、この限りではない。例えば、パネル部材と別にランプブラケットを設け、ランプブラケットにランプを固定してもよい。
【符号の説明】
【0031】
12 グリルパネル(パネル部材としての)
13 フォグランプ
14 通孔
15 バンパパネル(取付部材としての)
16 バンパパネル用係止孔
17 遮光カバー用係止孔(遮光カバー係止部としての)
18 バンパパネル係止爪
18A 係止面
20 遮光カバー
21 インテグラルヒンジ
22 遮光カバー係止爪
22A 係止面
図1
図2
図3