特許第6791092号(P6791092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6791092金属帯の連続研削方法および連続研削ライン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791092
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】金属帯の連続研削方法および連続研削ライン
(51)【国際特許分類】
   B24B 21/12 20060101AFI20201116BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20201116BHJP
   B24B 7/12 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   B24B21/12
   B24B49/12
   B24B7/12
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-201656(P2017-201656)
(22)【出願日】2017年10月18日
(65)【公開番号】特開2019-72819(P2019-72819A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2019年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】馬場 幸裕
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−025201(JP,A)
【文献】 特開2013−188839(JP,A)
【文献】 特開平11−262851(JP,A)
【文献】 特開平05−031663(JP,A)
【文献】 特開平04−250961(JP,A)
【文献】 米国特許第06086461(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B7/12−7/13
B24B21/12−21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯である板をペイオフリールで払出し、入側デフレクタロールで変向し、研削スタンド列で全面研削し、出側デフレクタロールで変向し、テンションリールで巻き取って回収する金属帯の連続研削方法において、
前記板の有無を検出する板有無センサー、前記ペイオフリールの回転数を検出する回転計、前記ペイオフリールまたは前記テンションリールの駆動電流を検出する電流計、および前記板の張力を検出する張力計のうち少なくともいずれか1つを用務センサーとし、該用務センサーのセンサー出力信号から、通板異常の発生を検出し、前記通板異常の検出時点で研削作業を自動で停止し、研削作業中の発火事故を防止することを特徴とする金属帯の連続研削方法。
【請求項2】
前記金属帯がステンレス鋼帯であることを特徴とする請求項1に記載の金属帯の連続研削方法。
【請求項3】
金属帯である板を払出すペイオフリールと、次いで変向する入側デフレクタロールと、次いで全面研削する研削スタンド列と、次いで変向する出側デフレクタロールと、次いで巻き取って回収するテンションリールとを有する金属帯の連続研削ラインにおいて、
前記板の有無を検出する板有無センサー、前記ペイオフリールの回転数を検出する回転計、前記ペイオフリールまたは前記テンションリールの駆動電流を検出する電流計、および前記板の張力を検出する張力計のうち少なくともいずれか1つからなる用務センサーと、
前記用務センサーのセンサー出力信号から通板異常発生検出信号を生成する演算手段とを具備し
前記生成した通板異常発生検出信号が、研削作業の停止を促す信号であり、
前記通板異常発生検出信号により、研削作業を自動で停止し、研削作業中の発火事故を防止することを特徴とする金属帯の連続研削ライン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属帯を通板しながら研削ベルトあるいは弾性砥石で前記金属帯の表面を研削する操業中、研削油の引火による発火事故を防止する、金属帯の連続研削方法および連続研削ラインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属帯、例えば、ステンレス鋼帯は、精錬、鋼塊(スラブ)鋳造、熱間圧延、焼鈍、酸洗、冷間圧延、仕上げ焼鈍、酸洗、調質圧延、精整などの一連のプロセスにより製造されている。ところで、これら多くのプロセスを経て圧延により長く延ばされ表面積も膨大になる金属帯、例えばステンレス鋼帯は、製造中に疵が入るのを抑制することを品質上の課題としている。
【0003】
この課題を解決するために、従来では、主要なプロセスの設備出側でステンレス鋼帯の表面を検査し、疵の発生した部分を切除したり、場合によっては、表面を局部的に研削除去したり、疵の程度により、表面を全面研削する場合もあった。さらに、ステンレス鋼の品種によっては、冷間圧延後の表面光沢を確保するために、熱延鋼帯酸洗時に形成され光沢の妨害となる粒界侵食孔を削り取る必要があった。また、高耐食性あるいは高耐酸化性のステンレス鋼帯では、熱延鋼帯のスケール(酸化層)が酸洗では十分に除去できないため、全面研削を行う場合もあった。
【0004】
また、ステンレス冷延鋼帯の表面に意匠性をもたせた用途向けの製品では、ステンレス冷延鋼帯に全面研削を行うものもあった。
なお、ステンレス熱延鋼帯の板厚は例えば1.5〜13mm、板幅は例えば600〜2000mmであり、ステンレス冷延鋼帯の板厚は例えば0.4〜3mm、板幅は例えば600〜1600mmである。
このような全面研削用の連続研削ラインとして、例えば、ベルト研削装置を用いた連続研削ラインが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
前記ベルト研削装置を用いた連続研削ラインとしては、特許文献1に開示されたものを簡略化した、例えば図6に示すものも挙げられる。図6の連続研削ラインは、ペイオフリール100(以下、PORと略す場合もある)から払出し、入側デフレクタロール2で変向した(ここで、「変向」とは通板の向きを変えることの意。以下同じ)金属帯、例えばステンレス鋼帯1を、複数直列に配置したパスラインロール5に接触させつつ、直列に配置した複数スタンド、例えば4スタンド(一般的には3〜7スタンド)のベルト研削装置10からなる研削スタンド列300に、例えば8〜12m/分程度の通板速度で、通板し、出側デフレクタロール3で変向し、テンションリール200(以下、TRと略す場合もある)で巻き取って回収する構成となっている。
【0006】
各ベルト研削装置10は、モーターで駆動されているコンタクトロール13とアイドラロール12との間にエンドレスに巻回された、例えば研削砥粒番手60〜180の研削ベルト11と、金属帯(例えばステンレス鋼帯)1を挟んでコンタクトロール13と対向する位置に設けられたビリーロール14とを有している。研削ベルト11のベルト幅は、例えば、金属帯1の板幅+(100〜1000)mmである。
【0007】
ビリーロール14はビリーロール昇降手段15により昇降される。金属帯1を研削するときは、金属帯1の通板中にビリーロール14を上昇させ、金属帯1を研削ベルト11に接触させ、接触させた状態を保持する。また、研削中は、研削油噴射手段16にて研削ベルト11あるいは金属帯1へ、例えば鉱油からなる研削油17を吹き付けながら研削が行われる。なお研削ベルト11を挟んで研削油噴射手段16と対向するもう1つの研削油噴射手段(図示せず)を設ける場合もある。研削を停止するときは、ビリーロール14を下降させ、金属帯1を研削ベルト11から離間させる。
【0008】
なお、ベルト研削装置10は、コンタクトロール13とアイドラロール12の間に巻回された研削ベルト11の張りを調整するために、アイドラロール12を昇降させるアイドラロール昇降手段(図示せず)を備えている。
また、各スタンドのベルト研削装置10は、研削油17のヒュームや研削屑の飛散範囲を制限するためにスタンドごとに装置を覆うカバーを有する。
【0009】
なお、図6の連続研削ラインの研削スタンド列300において、ベルト研削装置10に代えて、ロール形の弾性砥石(図示せず)を用いた連続研削ライン(図示せず)もある。この場合も研削油の適用下で研削が行われる。
しかし、上述の連続研削ラインでは、金属帯(以下、「板」ともいう。)の通板中に、「板切れ」や、「尻抜け」といった通板異常が発生することがある。
【0010】
板切れとは、板が長手方向の1箇所で破断することを指す。また、尻抜けとは、板の尾端がペイオフリールから離脱する際、通常であれば離脱する少し前から通板速度が定常速度からこれより大幅に遅い離脱速度へ減速されるところ、通板制御系の不具合等で減速されずに、板の尾端が定常速度のまま離脱することを指す。
【0011】
板切れの場合、破断が起こりやすい箇所としては、「溶接点」および「尾端押し込み欠陥部」が挙げられる。溶接点とは、2つ以上の板同士を長手方向に溶接で繋いで1つの板にしたときの、溶接による繋ぎ目のことを指す。連続研削される板は大抵の場合、溶接点を有する。また、尾端押し込み欠陥部とは、板をコイル状に巻き取った際に生じることがある、最内周部の端(展開後は尾端になる)による、その外周側の巻き層への押し込み疵(この押し込み疵は板幅方向に延在することが多い。)のことを指す。
【0012】
板切れや尻抜けが発生すると、板の張力が急激に低下し、適正な研削ができなくなるため、研削作業を停止する必要がある。
従来は、研削作業の停止にあたっては、作業員が、板切れや尻抜けの際に発生する大きな異常音を聴取し、操作盤を操作して、研削ベルト11(図6)あるいは弾性砥石(図示せず)を板から離間させることにより、研削作業を停止するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−239446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前記板切れや尻抜けが発生した場合、作業員が異常音を聴取してから操作盤を操作して研削作業を手動で停止させるまでの間に、研削スタンド列において、発火事故が発生することがある。
【0015】
そもそも、従来の連続研削ラインでは、研削作業中の局部的な異常発熱により、研削油のヒュームが引火し、発火事故に至る危険性があり、そのため、各スタンドごとに、装置を覆うカバー内に炭酸ガス等の消火剤を吹き込む消火設備を備えている。よって、発火事故が発生しても即座に消火できる体制にはあるが、板切れや尻抜けが発生し、それが発火事故に至った場合は、発火事故に至らなかった場合と比べ、清掃、点検、さらには設備用部材の交換等の復旧作業の負荷が大幅に増大し、生産性がより大きく低下する。
【0016】
そこで本発明は、上記の事情に鑑み、研削作業中の発火事故の防止、とくに、板切れや尻抜けに伴った発火事故の防止に有用な、連続研削方法および連続研削ラインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討し、以下の知見を得た。
(ア) 研削作業中に板切れや尻抜けが発生すると、連続研削において板を弛ませずに通板させるに必要な張力が保持できなくなり、板が弛む。
(イ) 研削スタンド列内で板が弛み、その弛んだ箇所に研削が集中して局所的な発熱が生じ、この局所的な発熱が高じるのが、作業員による研削作業の手動停止よりも先であると、研削油が引火し、発火事故となる。
(ウ) そこで、板切れや尻抜けの発生を自動で検出し、検出時点で研削作業を自動で停止させるようにする。これにより、局所的な発熱が高じる前に研削作業を停止させ、発火事故の発生を防止できる。
(エ) 板切れや尻抜けの発生を自動で検出する方法としては、前記板の有無を検出する板有無センサー、前記ペイオフリールの回転数を検出する回転計、前記ペイオフリールまたは前記テンションリールの駆動電流を検出する電流計、および前記板の張力を検出する張力計のうち少なくともいずれか1つを用務センサーとし、該用務センサーの出力信号から、通板異常を検出する方法が優れていることが分かった。
【0018】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1) 金属帯である板をペイオフリールで払出し、入側デフレクタロールで変向し、研削スタンド列で全面研削し、出側デフレクタロールで変向し、テンションリールで巻き取って回収する金属帯の連続研削方法において、
前記板の有無を検出する板有無センサー、前記ペイオフリールの回転数を検出する回転計、前記ペイオフリールまたは前記テンションリールの駆動電流を検出する電流計、および前記板の張力を検出する張力計のうち少なくともいずれか1つを用務センサーとし、該用務センサーのセンサー出力信号から、通板異常の発生を検出することを特徴とする金属帯の連続研削方法。
(2) 前記(1)において、前記通板異常の検出時点で研削作業を停止することを特徴とする金属帯の連続研削方法。
(3) 前記(1)または(2)において、前記金属帯がステンレス鋼帯であることを特徴とする金属帯の連続研削方法。
(4) 金属帯である板を払出すペイオフリールと、次いで変向する入側デフレクタロールと、次いで全面研削する研削スタンド列と、次いで変向する出側デフレクタロールと、次いで巻き取って回収するテンションリールとを有する金属帯の連続研削ラインにおいて、
前記板の有無を検出する板有無センサー、前記ペイオフリールの回転数を検出する回転計、前記ペイオフリールまたは前記テンションリールの駆動電流を検出する電流計、および前記板の張力を検出する張力計のうち少なくともいずれか1つからなる用務センサーと、
前記用務センサーのセンサー出力信号から通板異常発生検出信号を生成する演算手段とを具備したことを特徴とする金属帯の連続研削ライン。
(5) 前記(4)において、前記生成した通板異常検出信号が、研削作業の停止を促す信号であることを特徴とする金属帯の連続研削ライン。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、連続研削作業において、前記板切れおよび前記尻抜けを総称していう通板異常の発生に伴う異常発熱による発火事故を未然に防止できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る連続研削ラインの一例を示す模式図である。
図2】本発明に係る連続研削ラインの前掲図とは別の一例を示す模式図である。
図3】本発明に係る連続研削ラインの前掲図とは別の一例を示す模式図である。
図4】本発明に係る連続研削ラインの前掲図とは別の一例を示す模式図である。
図5】本発明に係る連続研削ラインの前掲図とは別の一例を示す模式図である。
図6】従来の連続研削ラインの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1図5は、本発明の実施形態の互いに異なる一例を示す模式図である。
図1の例は、図6の従来例と同じ符号を付した同一または相当部材を有する連続研削ラインに、板1の有無を検出する板有無センサーの1種である光センサー20からなる用務センサー400と、用務センサー400のセンサー出力信号S1で表される「板有」と「板無」の2値信号から、通板異常発生検出信号C1を生成する演算手段30とを具備した。
【0022】
光センサー20は、投光部a1と受光部a2を有し、これら両者の間に板1が存在するとき「板有」、存在しないとき「板無」を、センサー出力信号S1の値として出力する。
「板有」と「板無」の2値信号から、通板異常発生検出信号C1を生成する方法としては、センサー出力信号S1が「板有」から「板無」に転じた時点で、通板異常発生検出信号C1を生成する方法が挙げられる。
【0023】
そして、生成した通板異常発生検出信号C1を用いて、例えば、各ベルト研削装置10のビリーロール昇降手段15にビリーロール14を下降させるよう促し、研削ベルト11と板1とを離間させ、研削作業を停止する。あるいは、アイドラロール12を下降させ、研削ベルト11の速度がモーターで駆動されているコンタクトロール13の速度に同調しなくなり、研削作業が停止する。
【0024】
図2の例は、図6の従来例と同じ符号を付した同一または相当部材を有する連続研削ラインに、板1の有無を検出する板有無センサーの1種である重力センサー40からなる用務センサー400と、用務センサー400のセンサー出力信号S1で表される「板有」と「板無」の2値信号から、通板異常発生検出信号C1を生成する演算手段30とを具備した。また、図2の例は、図1において、用務センサー400として、光センサー20に代えて、重力センサー40とした例でもある。
【0025】
重力センサー40は、例えば、レバーの中間を支点部b2で支持した前記レバーの一端のタッチローラー部b1と、前記レバーの他端部との接触を検出するタッチセンサー部b3を有し、板1の通板中は、タッチローラー部b1が板1で押されてタッチセンサー部b3がレバー他端部と接触して「板有」を出力し、一方、板1の通板が途切れると、タッチローラー部b1が下向きに傾転し、タッチセンサー部b3がレバー他端部から離間して「板無」を出力する。
【0026】
「板有」と「板無」の2値信号から、通板異常発生検出信号C1を生成する方法としては、センサー出力信号S1が「板有」から「板無」も転じた時点で、通板異常発生検出信号C1を生成する方法が挙げられる。
【0027】
そして、生成した通板異常発生検出信号C1を用いて、例えば、各ベルト研削装置10のビリーロール昇降手段15にビリーロール14を下降させるよう促し、研削ベルト11と板1とを離間させ、研削作業を停止する。あるいは、アイドラロール12を下降させ、研削ベルト11の速度がモーターで駆動されているコンタクトロール13の速度に同調しなくなり、研削作業が停止する。
【0028】
図3の例は、図6の従来例と同じ符号を付した同一または相当部材を有する連続研削ラインに、ペイオフリール100の回転数(以下、「POR回転数」という。)を検出する回転計50からなる用務センサー400と、用務センサー400のセンサー出力信号S1で表されるPOR回転数から、通板異常発生検出信号C1を生成する演算手段30とを具備した。
【0029】
POR回転数から通板異常発生検出信号C1を生成する方法としては、例えば、POR回転数が、予め設定したPOR回転数の閾値を下回った時点で通板異常発生検出信号C1を生成する方法が挙げられる。前記POR回転数の閾値は、過去における、通板異常発生時の、正常通板時に対するPOR回転数の低下量の実績に基づいて、例えば正常通板時のPOR回転数の50%などと、設定することができる。
【0030】
そして、生成した通板異常発生検出信号C1を用いて、例えば、各ベルト研削装置10のビリーロール昇降手段15にビリーロール14を下降させるよう促し、研削ベルト11と金属帯1(以下、板1ともいう。)とを離間させ、研削作業を停止する。あるいは、アイドラロール12を下降させ、研削ベルト11の速度がモーターで駆動されているコンタクトロール13の速度に同調しなくなり、研削作業が停止する。
【0031】
図4の例は、図6の従来例と同じ符号を付した同一または相当部材を有する連続研削ラインに、ペイオフリール100(略してPOR)の駆動電流(以下、「POR電流」という。)を検出する電流計60からなる用務センサー400、および、電流計60からなる用務センサー400のセンサー出力信号S1であるPOR電流から通板異常発生信号C1を生成する演算手段30を具備した。
【0032】
ここで、POR電流を検出する電流計60に代えて、あるいは加えて、テンションリール200(略してTR)の駆動電流(以下、「TR電流」という。)を検出する電流計(図示せず)を具備してもよい。
【0033】
POR電流から通板異常発生検出信号C1を生成する方法としては、例えば、POR電流が、予め設定したPOR電流の閾値を下回った時点で通板異常発生検出信号C1を生成する方法が挙げられる。前記POR電流の閾値は、過去における、通板異常発生時の、正常通板時に対するPOR電流の低下量の実績に基づいて、例えば正常通板時のPOR電流の30%などと、設定することができる。なお、POR電流に代えてTR電流とした場合も同様である。
【0034】
そして、生成した通板異常発生検出信号C1を用いて、例えば、各ベルト研削装置10のビリーロール昇降手段15にビリーロール14を下降させるよう促し、研削ベルト11と板1とを離間させ、研削作業を停止する。あるいは、アイドラロール12を下降させ、研削ベルト11の速度がモーターで駆動されているコンタクトロール13の速度に同調しなくなり、研削作業が停止する。
【0035】
図5の例は、図6の従来例と同じ符号を付した同一または相当部材を有する連続研削ラインに、板1の張力を(以下、「板張力」という。)検出する張力計70からなる用務センサー400、および、張力計70からなる用務センサー400のセンサー出力信号S2である板張力から通板異常発生信号C1を生成する演算手段32を具備した。
【0036】
図5の張力計70は、出側デフレクタロール3に作用する板張力を検出するが、この張力計70に代えて、あるいは加えて、入側デフレクタロール2に作用する板張力を検出する張力計(図示せず)を具備してもよい。
【0037】
板張力から通板異常発生検出信号C1を生成する方法としては、例えば、板張力が、予め設定した板張力の閾値を下回った時点で通板異常発生検出信号C1を生成する方法が挙げられる。前記板張力の閾値は、過去における、通板異常発生時の、正常通板時に対する板張力の低下量の実績に基づいて、例えば正常通板時の板張力の20%などと、設定することができる。
【0038】
そして、生成した通板異常発生検出信号C1を用いて、例えば、各ベルト研削装置10のビリーロール昇降手段15にビリーロール14を下降させるよう促し、研削ベルト11と板1とを離間させ、研削作業を停止する。あるいは、アイドラロール12を下降させ、研削ベルト11の速度がモーターで駆動されているコンタクトロール13の速度に同調しなくなり、研削作業が停止する。
【0039】
金属帯(板)1としては、例えばステンレス鋼帯、なかでも例えばフェライト系ステンレス鋼帯が挙げられる。これらは従来、研削作業中の発火事故の発生頻度が比較的高く、本発明の効果の顕現性の観点から、被研削材として好適である。
【0040】
以上の図1図5の例は、研削スタンド列300がベルト研削装置10で構成されている場合に本発明を実施した例であるが、本発明は、これに限らず、研削スタンド列300がロール形の弾性砥石(図示せず)で構成されている場合にも実施でき、同様の効果を奏する。
【実施例1】
【0041】
板厚1.5〜13mm、板幅700〜1600mmのフェライト系ステンレス熱延鋼帯を、年間1万〜2万トン程度、図6の連続研削ラインに通板し、研削作業を行っていた従来において、通板異常(板切れまたは尻抜け)の発生に付随した発火事故は、通板異常発生の回数10回につき、数回の頻度で発生していた。
【0042】
そこで、本発明に則り、図1に示した本発明の実施形態で、研削作業中に光センサーのセンサー出力信号S1が「板有」から「板無」に転じた時点で研削作業を自動で停止するようにした。その結果、作業員が通板異常の発生に気付いて研削作業を手動で停止するより先に、研削作業が自動で停止し、通板異常に付随する発火事故は、皆無となった。
【実施例2】
【0043】
板厚1.5〜13mm、板幅700〜1600mmのフェライト系ステンレス熱延鋼帯を、年間1万〜2万トン程度、図6と同様の、実施例1とは別の連続研削ラインに通板し、研削作業を行っていた従来において、通板異常(板切れまたは尻抜け)の発生に付随した発火事故は、通板異常発生の回数10回につき、数回の頻度で発生していた。
【0044】
そこで、本発明に則り、図3に示した本発明の実施形態で、POR回転数の閾値を正常通板時のPOR回転数の50%と設定し、研削作業中にPOR回転数がPOR回転数の閾値を下回った時点で研削作業を自動で停止するようにした。その結果、作業員が通板異常の発生に気付いて研削作業を手動で停止するより先に、研削作業が自動で停止し、通板異常に付随する発火事故は、皆無となった。
【符号の説明】
【0045】
1 金属帯(板)
2 入側デフレクタロール
3 出側デフレクタロール
5 パスラインロール
10 ベルト研削装置
11 研削ベルト
12 アイドラロール
13 コンタクトロール
14 ビリーロール
15 ビリーロール昇降手段
16 研削油噴射手段
17 研削油
20 板有無センサーの1種である光センサー
30、32 演算手段
40 板有無センサーの1種である重力センサー
50 回転計
60 POR電流計
70 張力計
100 ペイオフリール
200 テンションリール
300 研削スタンド列
400 用務センサー
a1 投光部
a2 受光部
b1 タッチローラー部
b2 支点部
b3 タッチセンサー部
図1
図2
図3
図4
図5
図6