特許第6791097号(P6791097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791097
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】金属帯のベルト研削装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 21/12 20060101AFI20201116BHJP
   B24B 7/12 20060101ALI20201116BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   B24B21/12
   B24B7/12
   B24B49/12
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-206716(P2017-206716)
(22)【出願日】2017年10月26日
(65)【公開番号】特開2019-77004(P2019-77004A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2019年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】馬場 幸裕
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−184228(JP,A)
【文献】 特開平02−131855(JP,A)
【文献】 特開2001−239446(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/189155(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B7/12−7/13
B24B21/12−21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通板中の金属帯を全面研削する、回転する研削ベルトと、該研削ベルトを前記金属帯の板幅方向に往復移動させるベルト往復移動用アクチュエーターと、前記研削ベルトの幅方向端部を検出する端部検出センサーとを有するベルト研削装置において、
前記端部検出センサーのセンサー出力信号を用い、前記ベルト往復移動用アクチュエーターへの制御信号を生成し、かつ、前記センサー出力信号であって、前記研削ベルトの端部無検出中の出力信号ONの持続時間であるON持続時間および前記研削ベルトの端部検出中の出力信号OFFの持続時間であるOFF持続時間から異常状態の発現を検出し、異常検出信号を生成する制御手段を備えたことを特徴とするベルト研削装置。
【請求項2】
前記生成した異常検出信号を、研削作業の停止を促す信号とすることを特徴とする請求項1に記載のベルト研削装置。
【請求項3】
金属帯を通板させつつ、回転する研削ベルトで全面研削する研削作業中に、前記研削ベルトを金属帯の板幅方向に往復移動させ、該往復移動の方向を、前記研削ベルトの幅方向端部を検出する端部検出センサーのセンサー出力信号を用いて切替える、金属帯のベルト研削方法において、
前記センサー出力信号であって、前記研削ベルトの端部無検出中の出力信号ONの持続時間であるON持続時間および前記研削ベルトの端部検出中の出力信号OFFの持続時間であるOFF持続時間を用いて異常状態の発現を検出することを特徴とする金属帯のベルト研削方法。
【請求項4】
前記異常状態の発現を検出した時点で、研削作業を停止することを特徴とする請求項3に記載の金属帯のベルト研削方法。
【請求項5】
前記金属帯がステンレス鋼帯であることを特徴とする請求項3または4に記載の金属帯のベルト研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属帯を通板しながら研削ベルトで前記金属帯の表面を研削する操業中、研削油の引火による発火事故を防止する、金属帯のベルト研削装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属帯、例えば、ステンレス鋼帯は、精錬、鋼塊(スラブ)鋳造、熱間圧延、焼鈍、酸洗、冷間圧延、仕上げ焼鈍、酸洗、調質圧延、精整などの一連のプロセスにより製造されている。ところで、これら多くのプロセスを経て圧延により長く延ばされ表面積も膨大になる金属帯、例えばステンレス鋼帯は、製造中に疵が入るのを抑制することを品質上の課題としている。
【0003】
この課題を解決するために、従来では、主要なプロセスの設備出側でステンレス鋼帯の表面を検査し、疵が生じた部分を切除したり、場合によっては、表面を局部的に研削除去したり、疵の程度により、表面を全面研削する場合もあった。さらに、ステンレス鋼の品種によっては、冷間圧延後の表面光沢を確保するために、熱延鋼帯酸洗時に形成される光沢の妨害となる粒界侵食孔を削り取る必要があった。また、高耐食性あるいは高耐酸化性のステンレス鋼帯では、熱延鋼帯のスケール(酸化層)が酸洗では十分に除去できないため、表面の全面研削を行う場合もあった。
また、ステンレス冷延鋼帯の表面に意匠性をもたせた用途向けの製品では、ステンレス冷延鋼帯に全面研削を行うものもあった。
【0004】
なお、ステンレス熱延鋼帯の板厚は例えば1.5〜13mm、板幅は例えば600〜2000mmであり、ステンレス冷延鋼帯の板厚は例えば0.4〜3mm、板幅は例えば600〜1600mmである。
このような全面研削用の連続研削ラインとして、例えば、従来のベルト研削装置を用いた連続研削ラインが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
また、従来のベルト研削装置を用いた連続研削ラインとしては、特許文献1に開示されたものを簡略化した、例えば図3に示すものも挙げられる。図3の連続研削ラインは、ペイオフリール100から払出し、入側デフレクタロール2で変向した(ここで、「変向」とは通板の向きを変えることの意。以下同じ)金属帯、例えばステンレス鋼帯1を、複数直列に配置したパスラインロール5に接触させつつ、直列に配置した複数スタンド、例えば4スタンド(一般的には3〜7スタンド)のベルト研削装置10に、例えば8〜12m/分程度の通板速度で、通板し、出側デフレクタロール3で変向し、テンションリール200で巻き取って回収する構成となっている。
【0006】
各ベルト研削装置10は、モーターで駆動されているコンタクトロール13とアイドラロール12との間にエンドレスに巻回された、例えば研削砥粒番手60〜180の研削ベルト11と、金属帯(例えばステンレス鋼帯)1を挟んでコンタクトロール13と対向する位置に設けられたビリーロール14とを有している。研削ベルト11のベルト幅は、例えば、金属帯1の板幅+(100〜1000)mm程度である。
【0007】
ビリーロール14はビリーロール昇降手段15により昇降される。金属帯1を研削するときは、金属帯1の通板中にビリーロール14を上昇させ、金属帯1を研削ベルト11に接触させ、該接触させた状態を保持する。また、研削中は、研削油噴射手段16にて研削ベルト11あるいはさらに金属帯1へ、例えば鉱油からなる研削油17を吹き付けながら研削が行われる。なお研削ベルト11を挟んで研削油噴射手段16と対向するもう1つの研削油噴射手段(図示せず)を設ける場合もある。研削を停止するときは、ビリーロール14を下降させ、金属帯1を研削ベルト11から離間させる。
【0008】
なお、ベルト研削装置10は、コンタクトロール13とアイドラロール12の間に巻回された研削ベルト11の張りを調整するために、アイドラロール12を昇降させるアイドラロール昇降手段(図示せず)を備えている。
【0009】
また、各スタンドのベルト研削装置10は、研削油17のヒュームや研削屑の飛散範囲を制限するためにスタンドごとに装置を覆うカバー(図示せず)を有する。
前記ベルト研削装置10では、通常、研削中に研削ベルト11の幅方向中心を金属帯1の幅方向中心位置付近に保持する制御である研削ベルト幅方向位置制御が行われている。
【0010】
前記研削ベルト幅方向位置制御の方法として、研削ベルト11を金属帯1の幅方向(以下、「板幅方向」という)に往復移動させ、該往復移動の区間を、端部検出センサーを2つまたは1つ用いて設定する方法が挙げられる。なお、ベルト幅方向のいずれか一方の端点が、ベルト幅中心点が板幅中心位置にある時点から前記一方の側に移動して最も離れた位置に到達するまでの距離(後掲の図5および図2のδ)は、20〜150mm程度である。
【0011】
前記端部検出センサーを2つ用いる場合は、図示を省略するが、前記2つの端部検出センサーを、前記設定する往復移動の区間(以下、「設定往復区間」という。)の両端に1つずつ配置し、研削ベルト11の幅方向の一端部と他端部を前記2つの端部検出センサーの一方と他方でそれぞれ検出し、該検出した時点で前記往復移動の方向を反転させるようにする。ただし、実際は、研削ベルトの慣性のため、研削ベルトの移動方向が実際に反転する時点は、端部検出センサーが研削ベルトの幅方向端部を検出した時点よりも遅れるから、研削ベルトの移動方向が反転する板幅方向位置は、設定往復区間の外側になる。この点は、前記端部検出センサーを1つ用いる場合でも同様である。
【0012】
前記端部検出センサーを1つ用いる場合は、ベルト研削装置10を例えば図4に示す構成とし、研削ベルト幅方向位置制御のタイミングチャートが例えば図5のようになる研削を行う。図4の例では、端部検出センサー20として投光部a1と受光部a2からなる光センサーを用いている。端部検出センサー20はベルト研削装置10の操作側(OP側)に配置している。なお、前記光センサーの代わりに、送風部と受風部とからなる風圧センサー(図示せず)を用いてもよい。
【0013】
また、研削ベルト11を板幅方向に往復移動させる手段として、例えば、アイドラロール12のロール軸を、通板方向との直交位から、駆動側(DR側)に設けた回転中心軸21の周りに回動させて、図示の+方向または−方向に傾斜させることにより、研削ベルト11に板幅方向の移動速度成分を生じさせる、ベルト往復移動用アクチュエーター25を有する(端部検出センサーを2つ用いる場合でも同様である)。
【0014】
図4では、アイドラロール12のロール軸の傾斜方向と対応する研削ベルト11の移動方向の双方を同符号(双方とも+、あるいは双方とも−)としており、傾斜方向が+方向のとき移動方向も+方向(DR側への方向)であり、傾斜方向が−方向のとき移動方向も−方向(OP側への方向)である。
【0015】
ベルト研削装置10は、前記研削ベルト幅方向位置制御を自動で行うために、端部検出センサー20のセンサー出力信号S1を受けて、ベルト往復移動用アクチュエーター25の動作制御用の制御信号C1を生成する制御手段30を有する。図5は、端部検出センサーが研削ベルトが最もOP側に移動し終える直前に研削ベルト端部を検出する位置に端部検出センサーを設置した場合のセンサー出力信号S1、制御信号C1および研削ベルト11の幅方向中心点の板幅方向位置の推移を示すタイミングチャートである。
【0016】
図5に示されるように、センサー出力信号S1は、投光部a1と受光部a2との間に研削ベルト11が存在しない状態のONと、投光部a1と受光部a2との間に研削ベルト11が存在する状態のOFFとの2値である(図5(a))。すなわち、センサー出力信号S1がONのときは、研削ベルト11は端部無検出中であり、センサー出力信号S1がOFFのときは、研削ベルト11は端部検出中である。
【0017】
制御信号C1は、OFF受信時点に生成するDR(+)、とON受信時点からTA秒後に生成するOP(−)との2値である(図5(b))。TA秒のTAの値は、例えばつぎのようにして決定される。すなわち、ベルト往復移動用アクチュエーター25を用いて研削ベルト11を往復移動させる事前の測定実験により、ON信号生成開始時点から、板幅中心線に関して端部検出センサー20の位置(「センサー位置」という)と対称の位置(「センサー共役位置」という)に研削ベルト11のDR側の端部が到達するまでの時間(秒数)を測定し、その測定値をTAの値とする。
【0018】
ベルト往復移動用アクチュエーター25は、研削ベルト11を、OP(−)受信時にはOP(−)側に、DR(+)受信時にはDR(+)側に移動させるよう動作する。したがって、研削ベルト11は、センサー位置とセンサー共役位置を両端とする区間内で往復移動する。すなわち、δ=(往復移動の区間幅−研削ベルト幅)/2として、研削ベルト11の幅方向中心点は、板幅方向中心点±δの範囲内に保持される(図5(c))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2001−239446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところで、従来のベルト研削装置では、研削作業中の局部的な異常発熱により、研削油のヒュームが引火し、発火事故に至る危険性があり、そのため、各スタンドごとに、装置を覆うカバー内に炭酸ガス等の消火剤を吹き込む消火設備を備えている。よって、発火事故が発生しても即座に消火できる体制にはあるが、一旦、発火事故が発生すると、研削ラインを停止し、カバー内を清掃のうえ、再度、金属帯の先頭から研削をやり直す必要があり、生産性が大幅に低下する。さらに、端部検出センサー等の部品が発火事故による熱の影響を受け故障する場合もあるため、再稼働の前には設備点検を行う必要があり、故障があれば部品交換も行わなければならない。
【0021】
そこで本発明は、上記の事情に鑑み、研削作業中の発火事故の防止に有用な、ベルト研削装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討し、以下の知見を得た。すなわち、研削作業中の発火事故につながる局部的な異常発熱の原因として、(ア)前記端部検出センサーあるいは前記ベルト往復移動用アクチュエーターの突発的な故障などにより研削ベルトが所定の往復移動区間から逸脱する研削ベルト幅方向移動制御の不具合の結果、研削ベルトの幅方向端部が周辺設備と接触する現象、(イ)研削ベルトの劣化により研削ベルトの幅方向端部(あるいは幅方向端部よりも内側に生じた裂け目)に折り重なりが生じ、そこが局部的に増厚する結果、その局部において接触圧が増大する現象、が挙げられる。これら(ア)、(イ)の現象が発現する異常な状態では、前記端部検出センサーのON持続時間およびOFF持続時間のいずれか一方または両方が、正常な状態のときと比べて顕著に長くなる。
【0023】
したがって、前記端部検出センサーのON持続時間およびOFF持続時間を用いることにより異常状態の発現を検出することが可能である。そして、この異常状態の発現の検出時点で研削作業を停止することで、発火事故を未然に防止することができる。
【0024】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1) 通板中の金属帯を全面研削する、回転する研削ベルトと、該研削ベルトを前記金属帯の板幅方向に往復移動させるベルト往復移動用アクチュエーターと、前記研削ベルトの幅方向端部を検出する端部検出センサーとを有するベルト研削装置において、
前記端部検出センサーのセンサー出力信号を用い、前記ベルト往復移動用アクチュエーターへの制御信号を生成し、かつ、前記センサー出力信号のON持続時間およびOFF持続時間から異常状態の発現を検出し、異常検出信号を生成する制御手段を備えたことを特徴とするベルト研削装置。
(2) 上記(1)において、前記生成した異常検出信号を、研削作業の停止を促す信号とすることを特徴とするベルト研削装置。
(3) 金属帯を通板させつつ、回転する研削ベルトで全面研削する研削作業中に、前記研削ベルトを金属帯の板幅方向に往復移動させ、該往復移動の方向を、前記研削ベルトの幅方向端部を検出する端部検出センサーのセンサー出力信号を用いて切替える、金属帯のベルト研削方法において、
前記センサー出力信号のON持続時間およびOFF持続時間を用いて異常状態の発現を検出することを特徴とする金属帯のベルト研削方法。
(4) 上記(3)において、前記異常状態の発現を検出した時点で、研削作業を停止することを特徴とする金属帯のベルト研削方法。
(5) 上記(3)または(4)において、前記金属帯がステンレス鋼帯であることを特徴とする金属帯のベルト研削方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、研削ベルトによる研削作業中の局部的な異常発熱による発火事故を未然に防止できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明のベルト研削装置の一例を示す模式図である。
図2】本発明のベルト研削方法の一例を示すタイミングチャートである。
図3】従来のベルト研削装置を用いた連続研削ラインの一例を示す模式図である。
図4】従来のベルト研削装置の一例を示す模式図である。
図5】従来のベルト研削方法の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態としては、例えば図1に示す形態のベルト研削装置10Aが挙げられる。ベルト研削装置10Aは、通板中の金属帯1を全面研削する、回転する研削ベルト11と、該研削ベルト11を前記金属帯1の板幅方向に往復移動させるベルト往復移動用アクチュエーター25と、前記研削ベルト11の幅方向端部を検出する端部検出センサー20とを有する点で、従来(図4)と共通する。なお、図1において、図4と同じ符号の部材は従来と同様に機能する。
【0028】
しかし、図1の装置は、従来(図4)と違って、前記端部検出センサー20のセンサー出力信号S1を用い、前記ベルト往復移動用アクチュエーター25への制御信号C1を生成し、かつ、前記センサー出力信号S1のON持続時間およびOFF持続時間から異常状態の発現を検出し、異常検出信号C2を生成する制御手段30Aを備えた。これに対し、従来(図4)の制御手段30は、前記端部検出センサー20のセンサー出力信号S1を用い、前記ベルト往復移動用アクチュエーター25への制御信号C1を生成するが、前記センサー出力信号S1のON持続時間およびOFF持続時間から異常状態の発現を検出し、異常検出信号C2を生成することはない。
【0029】
本発明では、異常検出信号C2を、研削停止を促す信号、例えば図1のようにビリーロール昇降手段15の下降を促す信号、とする。ビリーロール昇降手段15が下降を促す信号(異常検出信号C2)を受けると直ちにビリーロール14を下降させ、研削ベルト11が金属帯1から離間して研削作業が停止する。なお、異常検出信号C2は、前記アイドラロール昇降手段(図示せず)の下降を促す信号としてもよい。その場合も、アイドラロール昇降手段(図示せず)が異常検出信号C2を受けると直ちにアイドラロール12を下降させ、研削ベルト11の速度がモーターで駆動されているコンタクトロール13の速度に同調しなくなり、研削作業が停止する。
【0030】
制御手段30Aが、前記センサー出力信号S1のON持続時間およびOFF持続時間から異常状態の発現を検出し、異常検出信号C2を生成する方法について、図2のタイミングチャートを用いて説明する。制御手段30Aは、図2(a)のセンサー出力信号S1から、ON持続時間TONおよびOFF持続時間TOFFを逐次導出し、逐次導出したTONが予め設定された閾値TONCを超えた(TON>TONCとなった)時点、あるいは、逐次導出したTOFFが予め設定された閾値TOFFCを超えた(TOFF>TOFFCとなった)時点で、異常検出信号C2を生成する。閾値TONCおよび閾値TOFFCは、発火事故につながると予想されるTONおよびTOFFの値域から決定するとよい。
【0031】
金属帯1としては、例えばステンレス鋼帯、なかでも例えばフェライト系ステンレス鋼帯が挙げられる。これらは従来、研削作業中の発火事故の発生頻度が比較的高く、本発明の効果の顕現性の観点から、被研削材として好適である。
【0032】
本発明のベルト研削方法では、例えば図4のベルト研削装置10に代えて図1のベルト研削装置10Aとした連続研削ラインを用い、金属帯1を通板させつつ、回転する研削ベルト11で全面研削する研削作業中に、前記研削ベルト11を金属帯1の板幅方向に往復移動させ、該往復移動の方向を、前記研削ベルト11の幅方向端部を検出する端部検出センサー20のセンサー出力信号S1を用いて切替える、金属帯のベルト研削方法において、前記センサー出力信号S1のON持続時間TONおよびOFF持続時間TOFFを用いて図2と同様にして異常状態の発現を検出する。そして、好ましくは、前記異常状態の発現を検出した時点で、研削作業を停止する。これにより、発火事故の発生を未然に防止することができる。
【0033】
なお、本発明のベルト研削方法は、従来のベルト研削装置10を用いても実施可能である。ただし、その場合、前記センサー出力信号S1のON持続時間TONおよびOFF持続時間TOFFから異常状態の発現を検出し、異常検出信号C2を生成する手段である異常信号生成手段(図示せず)を、制御手段30とは別個に具備する必要がある。
【0034】
また、本発明において、異常状態検出による研削作業の停止は、前記連続研削ラインの各スタンドのベルト研削装置ごとに実施することができる。
【0035】
なお、上記の実施形態では、端部検出センサー20を1つ用いる場合を例にとって説明したが、本発明は、端部検出センサー20を2つ用い、OP側、DR側に1つずつ設置した場合でも、各端部検出センサーごとにTON>TONCあるいはTOFF>TOFFCとなったときに研削作業を停止することで、同様に実施でき、同様の効果を奏する。
【実施例】
【0036】
板厚1.5〜13mm、板幅700〜1600mmのフェライト系ステンレス熱延鋼帯を、年間2万〜3万トン程度、図3の連続研削ラインに通板し、図4図5に示した従来の実施形態で、図5のδは50mmとし、研削作業を行っていた従来において、研削ベルトの劣化や、研削ベルト幅方向移動制御の不具合に起因する、研削作業中の発火事故が、年間数回の頻度で発生していた。
【0037】
そこで、本発明に則り、図3においてベルト研削装置10(図4)に代えてベルト研削装置10A(図1)とした連続研削ラインとし、図1図2に示した本発明の実施形態で、図2のδは従来どおり50mmとし、閾値TOFFCは2秒に、閾値TONCは5秒にそれぞれ設定し、研削作業を行うようにした。その結果、TON>TONCあるいはTOFF>TOFFCとなったときには研削作業が停止したが、研削ベルトの劣化や、研削ベルト幅方向移動制御の不具合に起因する、研削作業中の発火事故が、皆無となった。
【符号の説明】
【0038】
1 金属帯(ステンレス鋼帯)
2 入側デフレクタロール
3 出側デフレクタロール
5 パスラインロール
10 ベルト研削装置(従来)
10A ベルト研削装置(本発明)
11 研削ベルト
12 アイドラロール
13 コンタクトロール
14 ビリーロール
15 ビリーロール昇降手段
16 研削油噴射手段
17 研削油
20 端部検出センサー
21 回転中心軸
25 ベルト往復移動用アクチュエーター
30 制御手段(従来)
30A 制御手段(本発明)
100 ペイオフリール
200 テンションリール
a1 投光部
a2 受光部
図1
図2
図3
図4
図5