(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
初めに、従来技術の背景及び問題点について説明する。
【0016】
例えば、プロセスガス等の被測定ガスが流れる流路にレーザガス分析計が直接取り付けられ、測定対象の成分濃度分析が行われる。被測定ガスは、例えばCO(一酸化炭素)、CO
2(二酸化炭素)、H
2O(水)、C
nH
m(炭化水素)、NH
3(アンモニア)、及びO
2(酸素)等のガス分子を含む。流路は、配管、煙道、及び燃焼炉等を含む。
【0017】
このようなレーザガス分析計は、例えばTDLAS(Tunable Diode Laser Absorption Spectroscopy:波長可変ダイオードレーザ吸収分光)式レーザガス分析計を含む。TDLAS式レーザガス分析計は、例えば被測定ガス中にレーザ光を照射することで測定対象の成分濃度を分析する。
【0018】
被測定ガスに含まれるガス分子は、赤外から近赤外域において、分子の振動及び回転エネルギー遷移に基づく光吸収スペクトルを示す。光吸収スペクトルは、成分分子に固有である。Lambert−Beerの法則により、レーザ光に関するガス分子の吸光度がその成分濃度及び光路長に比例する。したがって、光吸収スペクトルの強度を測定することで測定対象の成分濃度が分析可能である。
【0019】
TDLASでは、ガス分子が有するエネルギー遷移の吸収線幅よりも十分に狭い線幅の半導体レーザ光を被測定ガスに照射する。半導体レーザの注入電流を高速変調することで、その発振波長を掃引する。被測定ガスを透過した半導体レーザ光の光強度を測定して、1本の独立した光吸収スペクトルを測定する。
【0020】
半導体レーザ光の掃引範囲は用途によって異なる。測定対象がO
2の場合、半導体レーザ光の線幅は例えば0.0002nmであり、掃引幅は例えば0.1〜0.2nmである。0.1〜0.2nmの掃引幅を掃引することで、光吸収スペクトルの測定を行う。取得した1本の光吸収スペクトルから濃度換算を行うことにより、測定対象の成分濃度が求められる。濃度換算の方法は、ピーク高さ法、スペクトル面積法、及び2f法等の既知の方法を含む。
【0021】
図4は、半導体レーザの注入電流と発振波長との関係の一例を示す模式図である。
図5Aは、掃引された半導体レーザの注入電流を示す模式図である。
図5Bは、被測定ガスを透過した半導体レーザ光の光強度の変化を示す模式図である。
図5Cは、被測定ガスの光吸収スペクトルを示す模式図である。
図4、
図5A乃至
図5Cを参照しながら、半導体レーザの発振波長を掃引して被測定ガスの光吸収スペクトルを測定する従来の方法について説明する。
【0022】
図4に示すとおり、一般的に、半導体レーザの発振波長は、半導体レーザの注入電流及び温度に依存する。例えば、発振波長は、注入電流が大きくなるほど長くなる。例えば、発振波長は、温度が上昇するほど長くなる。
【0023】
TDLASの測定の際に、測定したい光吸収スペクトルの波長帯域に半導体レーザの発振波長が大まかに一致するように半導体レーザの温度が調整される。半導体レーザの温度は、調整された値に維持される。その後、半導体レーザの注入電流を変化させて、発振波長の微調整が行われる。
【0024】
半導体レーザの発振波長が測定したい光吸収スペクトルの波長帯域に一致すると、当該波長帯域において半導体レーザの発振波長が掃引される。このとき、
図5Aに示すとおり、半導体レーザの注入電流が掃引される。例えば、半導体レーザの注入電流は、のこぎり波を示す。
【0025】
発振波長が掃引された半導体レーザ光は、被測定ガスを透過して受光部に集光される。受光部は、被測定ガスによる半導体レーザ光の波長ごとの光吸収量を反映した、
図5Bに示すような電気信号を出力する。このとき、半導体レーザの注入電流の掃引に伴って半導体レーザ光の出射強度も変化する。例えば、出射強度は、注入電流が大きくなるほど高くなる。したがって、注入電流の掃引に伴う出射強度の変化と被測定ガスによる波長ごとの光吸収量の変化とに基づいて、受光部から出力される電気信号は、のこぎり波にディップが重畳したような波形を示す。
【0026】
図5Bに示すような電気信号に基づいて被測定ガスの光吸収スペクトルが算出される。
図5Cは、算出の結果の光吸収スペクトルを示す模式図である。例えば、半導体レーザ光が被測定ガスを透過した場合の電気信号から、被測定ガスを透過しない場合の電気信号を差し引いて、かつ縦軸を対数とすることで、光吸収スペクトルが算出される。このような光吸収スペクトルが示す吸光度は、被測定ガスの成分濃度に比例する。例えば、光吸収スペクトルの面積が被測定ガスの成分濃度に比例する。したがって、吸光度に基づいて被測定ガスの成分濃度が算出可能である。
【0027】
レーザガス分析計では、半導体レーザの発振波長が複数周期にわたって掃引され、得られたデータに対して平均化が行われる。半導体レーザの発振波長を掃引する掃引信号はD/Aコンバータを用いて生成される。全周期にわたって同一の波長範囲で発振波長が繰り返し掃引されるように、D/Aコンバータには固定の掃引パターンが入力される。
【0028】
ここで、D/Aコンバータには固有の非線形ノイズが存在する。非線形ノイズは、例えばDNL(Differential Non−Linearity:微分非直線性誤差)、及びINL(Integral Non−Lineartiy:積分非直線性誤差)等に起因する。したがって、線形のコードパターンを有するデジタル信号をD/Aコンバータに入力しても、非線形の掃引信号がD/Aコンバータから出力される。
【0029】
例えば、全周期にわたって掃引信号に同一の非線形ノイズが重畳する。掃引パターンは固定であり、かつ同一の非線形ノイズが重畳するため、光吸収スペクトルに関するデータに対して複数周期にわたり平均化を行ってもこのような非線形ノイズに起因するノイズは低減しなかった。
【0030】
TDLASの測定において、発振波長が完全な線形で掃引されることを想定したアルゴリズムを形成しているため、D/Aコンバータからの非線形ノイズが、得られた光吸収スペクトルでもノイズとして判定され、又は光吸収ピークとして誤判定される恐れがあった。したがって、D/Aコンバータの非線形性を製造工程の際に個別に把握して校正する必要があった。
【0031】
本開示の実施形態に係る掃引信号発生装置10によれば、掃引信号に重畳する非線形ノイズを変化させることができる。これにより、上記のような問題点を解決して、光吸収スペクトルに重畳するノイズの低減に寄与できる掃引信号が発生可能である。以下では、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について主に説明する。
【0032】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る掃引信号発生装置10を含む光学測定系1の一例を示す模式図である。
図1に示すとおり、光学測定系1は、発光側を構成する発光装置2と、受光側を構成する受光装置3とを含む。発光装置2は、掃引信号発生装置10と、掃引信号発生装置10に接続されている発光部20とを有する。光学測定系1は、測定対象となる被測定ガスGを含む。発光装置2から照射された光は被測定ガスGを透過して受光装置3に集光される。
【0033】
発光部20は、例えば、被測定ガスGに対してTDLASによる測定が可能な任意の光源を有する。発光部20は、例えば、半導体レーザを有する。発光部20は、掃引信号発生装置10から出力される注入電流に基づいて、発振波長が掃引された光を被測定ガスGに対して照射する。このとき、発光部20は、複数周期にわたり同一の波長範囲で発振波長が掃引された光を照射してもよい。
【0034】
被測定ガスGは、例えばCO、CO
2、H
2O、C
nH
m、NH
3、及びO
2等のガス分子を含む。
【0035】
受光装置3は、例えば、被測定ガスGに対してTDLASによる測定が可能な任意の光検出器を有する。受光装置3は、例えば、フォトダイオードを有する。受光装置3は、被測定ガスGの光吸収スペクトルに関する情報を含む透過光を検出し、電気信号に変換する。受光装置3は、得られた電気信号に対して任意の処理を施してもよい。例えば、受光装置3は、得られた電気信号を複数周期にわたって平均化してもよい。例えば、受光装置3は、得られた電気信号から光吸収スペクトルを算出してもよい。
【0036】
掃引信号発生装置10は、制御部11と、第1出力部12と、第2出力部13と、加算部14と、変換部15とを有する。掃引信号発生装置10は、発光部20と接続され、発振波長を掃引する注入電流を発光部20に対して出力する。
【0037】
制御部11は、1つ以上のプロセッサを含む。より具体的には、制御部11は、掃引信号発生装置10の処理に特化した専用のプロセッサ等の任意のプロセッサを含む。制御部11は、第1出力部12及び第2出力部13それぞれと接続され、これらを制御及び管理する。例えば、制御部11は、後述する掃引信号を第1出力部12が出力するように、制御信号を第1出力部12に出力する。例えば、制御部11は、後述するオフセット信号を第2出力部13が出力するように、制御信号を第2出力部13に出力する。
【0038】
第1出力部12は、制御部11から出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータを含む。例えば、第1出力部12は、制御部11から出力される制御信号を取得して、掃引信号を出力する。ここで、掃引信号は、例えば掃引電圧を含む。第1出力部12は、例えば、このような掃引電圧の周波数帯域に対応した、十分に高いサンプリングレートを有するD/Aコンバータを含む。
【0039】
第2出力部13は、制御部11から出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータを含む。例えば、第2出力部13は、制御部11から出力される制御信号を取得して、オフセット信号を出力する。ここで、オフセット信号は、例えば定電圧を含む。第2出力部13は、例えば、このようなオフセット信号の出力に対応できる程度のサンプリングレートを有するD/Aコンバータを含む。
【0040】
例えば、複数周期にわたって半導体レーザの発振波長が同様に掃引されるように、第1出力部12を構成するD/Aコンバータと第2出力部13を構成するD/Aコンバータとの間で互いの仕様の一部が同等であってもよい。このような仕様の一部は、例えば、分解能及び出力電圧の可変範囲等を含む。逆に、第1出力部12を構成するD/Aコンバータと第2出力部13を構成するD/Aコンバータとの間で互いの仕様の一部が異なっていてもよい。このような仕様の一部は、例えば、サンプリングレート等を含む。より具体的には、第2出力部13を構成するD/Aコンバータのサンプリングレートは、第1出力部12を構成するD/Aコンバータのサンプリングレートよりも低くてもよい。これにより、第2出力部13として安価なD/Aコンバータを利用可能であり、コストが低減する。
【0041】
加算部14は、任意の加算回路を含む。加算部14は、第1出力部12から出力された掃引信号と、第2出力部13から出力されたオフセット信号とを加算した加算信号を出力する。例えば、加算部14は、第1出力部12から出力された掃引電圧と第2出力部13から出力された定電圧とを加算した加算電圧を出力する。
【0042】
変換部15は、任意の電圧電流変換回路を含む。変換部15は、加算部14から出力された加算信号の電圧電流状態を変換する。例えば、変換部15は、加算部14から出力された、第1出力部12からの掃引電圧と第2出力部13からの定電圧との加算電圧を、半導体レーザの発振波長を掃引する注入電流に変換する。
【0043】
図2Aは、
図1の第1出力部12及び第2出力部13からの出力信号を加算部14によって加算する様子を示す模式図である。
【0044】
例えば、制御部11は、互いに同一の周期で複数周期にわたり掃引信号及びオフセット信号をそれぞれ出力するように第1出力部12及び第2出力部13を制御する。このとき、第1出力部12から出力される掃引信号には、全周期にわたって非線形ノイズが重畳する。一方で、例えば、第2出力部13を構成するD/Aコンバータのサンプリングレートが第1出力部12を構成するD/Aコンバータのサンプリングレートよりも十分に低い場合、第2出力部13から出力されるオフセット信号に重畳する非線形ノイズは、掃引信号に重畳する上記の非線形ノイズに比べて十分に小さい。したがって、以下では、第2出力部13から出力されるオフセット信号に重畳する非線形ノイズは無視する。
【0045】
このとき、第1出力部12は、制御部11からの制御信号に基づいて、掃引の基準レベルSから第1オフセット値だけ加算された掃引信号を出力する。より具体的には、第1出力部12は、周期ごとに第1オフセット値が異なる掃引信号を複数周期にわたって出力する。このとき、一の周期における第1オフセット値と、当該一の周期に続く周期における第1オフセット値との差分は、複数周期にわたり一定であってもよい。
【0046】
より具体的には、1回目の掃引では、第1出力部12は、第1オフセット値が0Vとなるような通常の掃引信号を出力する。2回目の掃引では、第1出力部12は、第1オフセット値がnVとなるような掃引信号を出力する。ここで、nは任意の正数を含む。3回目の掃引では、第1出力部12は、第1オフセット値が2nVとなるような掃引信号を出力する。4回目の掃引では、第1出力部12は、第1オフセット値が3nVとなるような掃引信号を出力する。5回目の掃引では、第1出力部12は、第1オフセット値が4nVとなるような掃引信号を出力する。以下同様に、第1出力部12は、直前の周期の第1オフセット値にnVを足し合わせた状態で、掃引信号を続けて出力する。
【0047】
一方で、第2出力部13は、制御部11からの制御信号に基づいて、第1オフセット値に対応する第2オフセット値を有するオフセット信号を出力する。より具体的には、第2出力部13は、第1オフセット値と足し合わせると基準レベルSに一致するような第2オフセット値を周期ごとに有するオフセット信号を複数周期にわたって出力する。このとき、一の周期における第2オフセット値と、当該一の周期に続く周期における第2オフセット値との差分は、複数周期にわたり一定であってもよい。
【0048】
より具体的には、1回目の掃引では、第2出力部13は、第2オフセット値が0Vとなるようなオフセット信号を出力する。2回目の掃引では、第2出力部13は、第2オフセット値が−nVとなるようなオフセット信号を出力する。3回目の掃引では、第2出力部13は、第2オフセット値が−2nVとなるようなオフセット信号を出力する。4回目の掃引では、第2出力部13は、第2オフセット値が−3nVとなるようなオフセット信号を出力する。5回目の掃引では、第2出力部13は、第2オフセット値が−4nVとなるようなオフセット信号を出力する。以下同様に、第2出力部13は、直前の周期の第2オフセット値に−nVを足し合わせた状態で、オフセット信号を続けて出力する。
【0049】
一般的に、第1出力部12を構成するD/Aコンバータの出力電圧及び第2出力部13を構成するD/Aコンバータの出力電圧それぞれは有限であり上限値を有する。したがって、制御部11は、各D/Aコンバータの出力電圧が飽和しそうな場合、飽和する前に第1オフセット値及び第2オフセット値を0Vに戻して、掃引信号の始点を再度基準レベルSと一致させ、かつオフセット信号の始点を再度0Vと一致させてもよい。その後、制御部11は、第1オフセット値及び第2オフセット値に関する上述の制御を継続してもよい。
【0050】
加算部14は、一の周期において第1出力部12から出力された掃引信号と、同一の周期において第2出力部13から出力されたオフセット信号とを加算した加算信号を、複数周期にわたって出力する。
【0051】
図2Bは、
図2Aの出力信号に基づいて加算部14から出力される加算信号を示す模式図である。
【0052】
掃引の基準レベルSから第1オフセット値だけずれた掃引信号を出力するように制御部11が第1出力部12を制御することで、第1出力部12に入力されるコードパターンが周期ごとに異なる。D/Aコンバータの非線形性に基づく、出力信号の理想的な直線性と実際の直線性とのずれは、コードパターンによって異なる。したがって、第1出力部12から出力される掃引信号に重畳する非線形ノイズのパターンは、周期ごとに異なる。すなわち、各周期において加算信号に重畳する非線形ノイズの位相パターンは互いに異なる。
【0053】
第2オフセット値を有するオフセット信号を出力するように制御部11が第2出力部13を制御し、かつ加算部14において掃引信号とオフセット信号とが加算されることで、第1オフセット値だけずれた掃引信号の各周期における始点が、基準レベルSと一致する。したがって、加算部14は、各周期において同一の掃引範囲で掃引される加算信号を出力することができる。
【0054】
図2Cは、複数周期にわたって平均化された
図2Bの加算信号を示す模式図である。
【0055】
上述したとおり、加算部14は、各周期において同一の掃引範囲を有する一方で、非線形ノイズのパターンが周期ごとに異なる加算信号を出力する。したがって、非線形ノイズがランダムノイズのように振る舞うので、仮に複数周期にわたって加算信号を平均化すると各周期における非線形ノイズが互いに打ち消され、加算信号における非線形ノイズが低減する。
【0056】
掃引信号発生装置10は、
図2Bのような加算信号に基づいて発光部20に対して注入電流を出力し、その発振波長を掃引させる。発光部20から照射された光は、被測定ガスGを透過した透過光として受光装置3で検出され、電気信号に変換される。得られた電気信号は、光吸収スペクトルに関する情報に加えて、上述した非線形ノイズに基づくノイズを周期ごとに含む。しかしながら、非線形ノイズのパターンが周期ごとに異なることで、受光装置3で得られた電気信号に重畳するノイズのパターンも周期ごとに異なる。したがって、受光装置3において得られた電気信号に対して複数周期にわたり平均化を行うことで、光吸収スペクトルに重畳するノイズが低減する。
【0057】
このように、第1実施形態に係る掃引信号発生装置10によれば、掃引信号に重畳する非線形ノイズを変化させることができる。これにより、掃引信号発生装置10は、光吸収スペクトルに重畳するノイズの低減に寄与できる掃引信号を発生可能である。光吸収スペクトルに重畳するノイズが低減することで、分光測定の精度が向上する。加えて、受光装置3で得られた電気信号に重畳するこのようなノイズのレベルが所定の閾値以下であるか否かを検査して掃引信号発生装置10又は発光装置2を製品として出荷する場合、このような検査条件が容易に満たされる。したがって、製品の製造効率が向上する。
【0058】
第1実施形態では、第1出力部12は、制御部11からの制御信号に基づいて、掃引の基準レベルSから第1オフセット値だけ加算された掃引信号を出力するとして説明したがこれに限定されない。第1出力部12は、掃引の基準レベルSから第1オフセット値だけ減算された掃引信号を出力してもよい。
【0059】
第1実施形態では、第1出力部12から出力される掃引信号の第1オフセット値が複数周期にわたって単調に変化していくように制御される場合の例について説明したが、第1オフセット値の制御方法はこれに限定されない。例えば、制御部11は、第1オフセット値が複数周期にわたってランダムに異なるように第1出力部12を制御してもよい。
【0060】
第1実施形態では、第1出力部12から出力される掃引信号の第1オフセット値が複数周期にわたって単調に増加していくように制御される場合の例について説明したが、第1オフセット値の制御方法はこれに限定されない。例えば、制御部11は、第1オフセット値が単調に減少していくように第1出力部12を制御してもよい。このとき、制御部11は、第2オフセット値が単調に増大していくように第2出力部13を制御してもよい。
【0061】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る掃引信号発生装置10を含む光学測定系1の一例を示す模式図である。以下、
図3を参照しながら、第2実施形態に係る掃引信号発生装置10の構成及び機能について主に説明する。第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0062】
例えば、第2実施形態に係る掃引信号発生装置10の制御部11は、掃引信号に重畳する非線形ノイズに起因した掃引信号の非線形性を決定する。より具体的には、制御部11は、掃引信号の非線形性の程度を決定する。例えば、制御部11は、任意の第1オフセット値及び第2オフセット値に基づいて発光装置2から照射された光が被測定ガスGを透過しない状態で受光装置3によって検出されたときの検出情報を受光装置3から取得する。例えば、発光装置2から照射された光は、測定対象となる被測定ガスGを一切含まない校正用のガスセルを通過して、受光装置3により検出される。制御部11は、このような条件に基づいて光吸収スペクトルの算出と同様の処理が行われた電気信号を受光装置3から取得する。このときの電気信号は、例えば
図5Bに示すようなディップを含まずに、のこぎり波にノイズが重畳したような波形を示してもよいし、
図5Cに示すようなディップを含まずに、定電圧にノイズが重畳したような波形を示してもよい。制御部11は、取得した電気信号に重畳しているノイズに関する情報を算出する。ノイズに関する情報は、例えばノイズレベルの最大値、ノイズレベルの平均値、DNL、及びINL等の任意の情報を含む。制御部11は、このようなノイズに関する情報を算出することで、掃引信号の非線形性の程度を決定する。例えば、制御部11は、ノイズに関する情報が小さい程、掃引信号の非線形性が小さいと決定する。
【0063】
例えば、制御部11は、第1オフセット値及び第2オフセット値を変化させて、掃引信号の非線形性が最も小さいか否かを判定する。制御部11は、非線形性が最も小さくなるように第1オフセット値及び第2オフセット値を決定する。例えば、制御部11は、上述したノイズに関する情報が最も小さくなるように第1オフセット値及び第2オフセット値を決定する。このとき、制御部11は、決定された第1オフセット値を有する掃引信号を一以上の周期にわたって出力するように第1出力部12を制御する。制御部11は、決定された第2オフセット値を有するオフセット信号を一以上の周期にわたって出力するように第2出力部13を制御する。
【0064】
このように、第2実施形態に係る掃引信号発生装置10では、第1実施形態と異なり、第1出力部12は、一以上の周期にわたって同一の第1オフセット値を有する掃引信号を出力する。同様に、第2出力部13は、一以上の周期にわたって同一の第2オフセット値を有するオフセット信号を出力する。
【0065】
以上のような第2実施形態に係る掃引信号発生装置10によれば、第1実施形態同様、掃引信号に重畳する非線形ノイズを変化させることができ、光吸収スペクトルに重畳するノイズの低減に寄与できる掃引信号を発生可能である。加えて、第2実施形態に係る掃引信号発生装置10によれば、掃引の繰り返し性が容易に維持される。例えば、第1オフセット値及び第2オフセット値が周期ごとに異なり、かつ第1出力部12及び第2出力部13それぞれを構成するD/Aコンバータの特性等が異なる場合、周期によっては第1オフセット値の絶対値と第2オフセット値の絶対値とがずれて、加算信号が基準レベルSからずれる恐れがある。このとき、発振波長の掃引範囲が周期ごとにずれて、掃引の繰り返し性が維持されなくなる。第2実施形態に係る掃引信号発生装置10によれば、第1オフセット値及び第2オフセット値それぞれが周期ごとに同一であるので、掃引の繰り返し性が容易に維持される。
【0066】
第2実施形態では、制御部11は、第1オフセット値及び第2オフセット値を変化させて、掃引信号の非線形性が最も小さいか否かを判定する場合の例について説明したが、判定方法はこれに限定されない。例えば、制御部11は、第1オフセット値及び第2オフセット値を変化させて、掃引信号の非線形性が基準レベルSにあるときの非線形性よりも小さいか否かを判定してもよい。このとき、制御部11は、掃引信号の非線形性が基準レベルSにあるときの非線形性よりも小さくなるように任意の第1オフセット値及び第2オフセット値を決定してもよい。
【0067】
第2実施形態では、掃引信号に重畳する非線形ノイズに起因した掃引信号の非線形性を制御部11が決定し、かつ掃引信号の非線形性が最も小さいか否かを制御部11が判定するとして説明したが、決定及び判定を行う構成部はこれに限定されない。例えば、受光装置3が同様の決定及び判定を行ってもよい。このとき、制御部11は、受光装置3で行われた決定及び判定に関する情報を、受光装置3から取得する。
【0068】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含されるとする。
【0069】
例えば、上述した各構成部の配置及び個数等は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の配置及び個数等は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0070】
第1実施形態及び第2実施形態では、掃引信号発生装置10は、発光部20と共に1つの発光装置2を構成するとして説明したが、構成方法はこれに限定されない。掃引信号発生装置10と発光部20とは、互いに異なる装置として構成されてもよい。
【0071】
第1実施形態及び第2実施形態では、発光部20の発振波長を掃引するために注入電流を変化させるとして説明したが、発振波長の掃引方法はこれに限定されない。例えば、外部共振器型半導体レーザにおいて回折格子及び共振器等に取り付けられた圧電素子を制御して発振波長が掃引されてもよい。このとき、掃引信号発生装置10は、変換部15を省略して、電流ではなく電圧を直接出力してもよい。
【0072】
第1実施形態及び第2実施形態では、加算部14から出力された加算電圧は、レーザの発振波長の掃引に用いられるとして説明したが、これに限定されない。加算電圧は、任意の光源の波長の掃引に用いられてもよい。このような光源から照射される光は、例えば広帯域の光スペクトルを有するインコヒーレントな光を含んでもよい。このとき、加算電圧は、このような光が有する光スペクトルの一部の波長領域だけを抽出する波長可変フィルタの中心波長を掃引するために用いられてもよい。
【0073】
第1実施形態及び第2実施形態では、TDLASに限定して説明したが、掃引信号発生装置10は、繰り返しの掃引信号に基づいて任意の測定対象の分析を行う任意の分析計、及び繰り返しの掃引信号を用いる他の任意の装置に対して応用可能である。