(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第1変換部が前記第1受光信号を第1時間だけデジタル信号に変換すると、前記第1時間の間に変換された前記第1受光信号に基づいて分光スペクトルを分析する、
請求項1に記載の分光分析装置。
前記制御部は、前記第2変換部が前記第2受光信号を第2時間だけデジタル信号に変換すると、前記第2時間の間に変換された前記第2受光信号に基づいて分光スペクトルを分析する、
請求項2に記載の分光分析装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
初めに、従来技術の背景及び問題点について説明する。
【0017】
例えば、プロセスガス等の被測定ガスが流れる流路にレーザガス分析計が直接取り付けられ、分析対象成分の濃度分析が行われる。被測定ガスは、例えばCO(一酸化炭素)、CO
2(二酸化炭素)、H
2O(水)、C
nH
m(炭化水素)、NH
3(アンモニア)、及びO
2(酸素)等のガス分子を含む。流路は、配管、煙道、及び燃焼炉等を含む。
【0018】
このようなレーザガス分析計は、例えばTDLAS(Tunable Diode Laser Absorption Spectroscopy:波長可変ダイオードレーザ吸収分光)式レーザガス分析計を含む。TDLAS式レーザガス分析計は、例えば被測定ガス中にレーザ光を照射することで分析対象成分の濃度を分析する。
【0019】
被測定ガスに含まれるガス分子は、赤外から近赤外域において、分子の振動及び回転エネルギー遷移に基づく光吸収スペクトルを示す。光吸収スペクトルは、成分分子に固有である。Lambert−Beerの法則により、レーザ光に関するガス分子の吸光度がその成分濃度及び光路長に比例する。したがって、光吸収スペクトルの強度を測定することで分析対象成分の濃度が分析可能である。
【0020】
TDLASでは、ガス分子が有するエネルギー遷移の吸収線幅よりも十分に狭い線幅の半導体レーザ光を被測定ガスに照射する。半導体レーザの注入電流を高速変調することで、その発振波長を掃引する。被測定ガスを透過した半導体レーザ光の光強度を測定して、1本の独立した光吸収スペクトルを測定する。
【0021】
半導体レーザ光の掃引範囲は用途によって異なる。分析対象成分がO
2の場合、半導体レーザ光の線幅は例えば0.0002nmであり、掃引幅は例えば0.1〜0.2nmである。0.1〜0.2nmの掃引幅を掃引することで、光吸収スペクトルの測定を行う。取得した1本の光吸収スペクトルから濃度換算を行うことにより、分析対象成分の濃度が求められる。濃度換算の方法は、ピーク高さ法、スペクトル面積法、及び2f法等の既知の方法を含む。
【0022】
一般的に、半導体レーザの発振波長は、半導体レーザの注入電流及び温度に依存する。例えば、発振波長は、注入電流が大きくなるほど長くなる。例えば、発振波長は、温度が上昇するほど長くなる。
【0023】
TDLASの測定の際に、測定したい光吸収スペクトルの波長帯域に半導体レーザの発振波長が大まかに一致するように半導体レーザの温度が調整される。半導体レーザの温度は、調整された値に維持される。その後、半導体レーザの注入電流を変化させて、発振波長の微調整が行われる。
【0024】
ここで、
図4A乃至
図4Cを参照しながら、半導体レーザの発振波長を繰り返し掃引して被測定ガスの光吸収スペクトルを測定する従来の方法について説明する。
【0025】
図4Aは、繰り返し掃引された半導体レーザの注入電流を示す模式図である。半導体レーザの発振波長が測定したい光吸収スペクトルの波長帯域に一致すると、当該波長帯域において半導体レーザの発振波長が繰り返し掃引される。このとき、半導体レーザの注入電流が繰り返し掃引される。例えば、半導体レーザの注入電流は、のこぎり波を示す。
【0026】
図4Bは、被測定ガスを透過した半導体レーザ光の光強度の変化を示す模式図である。発振波長が繰り返し掃引された半導体レーザ光は、被測定ガスを透過して受光部に集光される。受光部は、被測定ガスによる半導体レーザ光の波長ごとの光吸収量を反映した、
図4Bに示すような受光信号を出力する。このとき、半導体レーザの注入電流の掃引に伴って半導体レーザ光の照射強度も変化する。例えば、照射強度は、注入電流が大きくなるほど高くなる。したがって、注入電流の掃引に伴う照射強度の変化と被測定ガスによる波長ごとの光吸収量の変化とに基づいて、受光部から出力される受光信号は、のこぎり波にディップが重畳したような波形を示す。
【0027】
そして、
図4Bに示すような受光信号に基づいて、被測定ガスの光吸収スペクトルが算出される。
図4Cは、算出された被測定ガスの光吸収スペクトルを示す模式図である。例えば、半導体レーザ光が被測定ガスを透過した場合の受光信号から、被測定ガスを透過しない場合の受光信号を差し引いて、かつ縦軸を対数とすることで、光吸収スペクトルが算出される。このような光吸収スペクトルが示す吸光度は、被測定ガスの成分濃度に比例する。例えば、光吸収スペクトルの面積が被測定ガスの成分濃度に比例する。したがって、吸光度に基づいて被測定ガスの成分濃度が算出可能である。
【0028】
図5は、分析波長の異なる2種類の分析対象成分の分光分析に用いられる従来の分光分析装置を示すブロック図である。
【0029】
従来、分析波長の異なる2種類の分析対象成分に対して分光分析を行うために、2つの半導体レーザが用いられる。1つの半導体レーザから照射された照射光は、2つに分岐する。分岐した一方の照射光は、被測定ガスを透過して測定光として測定用フォトディテクタにより検出される。分岐した他方の照射光は、参照セルを透過して参照光として参照用フォトディテクタにより検出される。
【0030】
受光側を構成する回路系は、1つの半導体レーザに対して、測定用フォトディテクタ、測定用ADC(アナログデジタルコンバータ)、及び測定用メモリと、参照用フォトディテクタ、参照用ADC、及び参照用メモリとを有する。このように、各フォトディテクタから出力される受光信号に対してアナログ信号からデジタル信号に変換するADCが各フォトディテクタに接続されている。4つのフォトディテクタに対して4つのADCを要する従来の分光分析装置では、製品コストが増大し、受光信号を処理する回路系が複雑になる。
【0031】
本開示は、2つの発光部それぞれに対して複数の受光部が配置されている場合であっても製品コストが低減可能な分光分析装置1を提供することを目的とする。以下では、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について主に説明する。
【0032】
図1は、一実施形態に係る分光分析装置1の構成の一例を示すブロック図である。分光分析装置1は、波長帯の異なる2種類の照射光を被測定ガスGに並行して照射し、異なる受光回路で処理された受光信号に基づいて、被測定ガスG中の異なる分析対象成分を並行して分析できる。初めに、異なる分析対象成分を並行して分析する場合の分光分析装置1の構成及び機能について主に説明する。
【0033】
図1に示すとおり、分光分析装置1は、発光側を構成するレーザコントローラ10と、第1発光部11と、第2発光部12とを有する。
【0034】
レーザコントローラ10は、後述する分光分析装置1の制御部100の一部を構成する。レーザコントローラ10は、第1発光部11及び第2発光部12に接続され、これらの動作を制御する。例えば、レーザコントローラ10は、発振波長制御信号を生成し、第1発光部11及び第2発光部12それぞれから照射される照射光の発振波長を制御する。その他にも、例えば、レーザコントローラ10は、第1発光部11及び第2発光部12それぞれによる照射のオン又はオフ、及び照射強度等を制御する。
【0035】
第1発光部11及び第2発光部12それぞれは、例えば、被測定ガスGに対してTDLASによる測定が可能な任意の光源を有する。被測定ガスGは、例えばCO、CO
2、H
2O、C
nH
m、NH
3、及びO
2等のガス分子を含む。各発光部は、例えば、半導体レーザを有する。各発光部は、レーザコントローラ10から出力される注入電流に基づいて、発振波長が掃引された光を被測定ガスGに対して照射する。このとき、各発光部は、複数周期にわたり同一の波長範囲で発振波長が掃引された光を照射してもよい。第1発光部11の発振波長と第2発光部12の発振波長とは、被測定ガスGに含まれる異なる2種類の分析対象成分C1及びC2の分析波長にそれぞれ対応しており、互いに異なる。
【0036】
分光分析装置1は、第1参照セル21をさらに有する。第1発光部11から照射された照射光は2つに分岐する。分岐した一方の照射光は被測定ガスGを透過する。分岐した他方の照射光は、第1参照セル21中に封入された、被測定ガスG中の分析対象成分C1と同一で、かつ既知濃度のガスG1を透過する。
【0037】
分光分析装置1は、第2参照セル22をさらに有する。第2発光部12から照射された照射光は2つに分岐する。分岐した一方の照射光は被測定ガスGを透過する。分岐した他方の照射光は、第2参照セル22中に封入された、被測定ガスG中の分析対象成分C2と同一で、かつ既知濃度のガスG2を透過する。
【0038】
分光分析装置1は、受光側を構成する各構成部を有する。より具体的には、分光分析装置1は、第1受光部31、第2受光部32、第3受光部33、及び第4受光部34と、第1切替部41及び第2切替部42と、第1変換部51及び第2変換部52とを有する。分光分析装置1は、さらに、タイミング調整コントローラ60と、第1記憶部71、第2記憶部72、第3記憶部73、及び第4記憶部74と、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)80とを有する。タイミング調整コントローラ60とCPU80とは、上述したレーザコントローラ10と共に分光分析装置1の制御部100を構成する。
【0039】
第1受光部31及び第3受光部33それぞれは、例えば、被測定ガスGに対してTDLASによる測定が可能な任意の光検出器を有する。各受光部は、例えば、フォトダイオードを有する。各受光部は、被測定ガスGの分光スペクトルに関する情報を含む測定光を検出し、電気的な測定信号に変換する。分光スペクトルは、例えば光吸収スペクトルを含む。
【0040】
第2受光部32及び第4受光部34は、例えば、第1参照セル21及び第2参照セル22に封入されたガスG1及びガスG2に対してそれぞれTDLASによる測定が可能な任意の光検出器を有する。各受光部は、例えば、フォトダイオードを有する。各受光部は、各参照セルに封入された各ガスの分光スペクトルに関する情報を含む参照光を検出し、電気的な参照信号に変換する。分光スペクトルは、例えば光吸収スペクトルを含む。
【0041】
第1受光部31は、第1発光部11から照射され、被測定ガスGを透過した照射光の一部を、測定光として検出する。第1受光部31は、測定光を検出すると、分析対象成分C1の分光スペクトルに関する情報を含む第1受光信号S1を出力する。第2受光部32は、第1発光部11から照射され、第1参照セル21を透過した照射光の一部を、参照光として検出する。第2受光部32は、参照光を検出すると、ガスG1の分光スペクトルに関する情報を含む第2受光信号S2を出力する。
【0042】
同様に、第3受光部33は、第2発光部12から照射され、被測定ガスGを透過した照射光の一部を、測定光として検出する。第3受光部33は、測定光を検出すると、分析対象成分C2の分光スペクトルに関する情報を含む第3受光信号S3を出力する。第4受光部34は、第2発光部12から照射され、第2参照セル22を透過した照射光の一部を、参照光として検出する。第4受光部34は、参照光を検出すると、ガスG2の分光スペクトルに関する情報を含む第4受光信号S4を出力する。
【0043】
第1切替部41は、例えばスイッチ等の任意の信号切替回路を有する。第1切替部41は、第1受光部31及び第2受光部32に接続されている。第1切替部41は、第1受光部31及び第2受光部32からそれぞれ出力される第1受光信号S1及び第2受光信号S2を取得する。第1切替部41は、制御部100のタイミング調整コントローラ60による制御に基づき第1受光信号S1又は第2受光信号S2を切り替えて出力する。
【0044】
同様に、第2切替部42は、例えばスイッチ等の任意の信号切替回路を有する。第2切替部42は、第3受光部33及び第4受光部34に接続されている。第2切替部42は、第3受光部33及び第4受光部34からそれぞれ出力される第3受光信号S3及び第4受光信号S4を取得する。第2切替部42は、制御部100のタイミング調整コントローラ60による制御に基づき第3受光信号S3又は第4受光信号S4を切り替えて出力する。
【0045】
第1変換部51は、例えばADCを有する。第1変換部51は、第1切替部41に接続されている。第1変換部51は、第1切替部41から出力される第1受光信号S1又は第2受光信号S2をアナログ信号からデジタル信号に変換する。
【0046】
同様に、第2変換部52は、例えばADCを有する。第2変換部52は、第2切替部42に接続されている。第2変換部52は、第2切替部42から出力される第3受光信号S3又は第4受光信号S4をアナログ信号からデジタル信号に変換する。
【0047】
タイミング調整コントローラ60は、第1変換部51及び第2変換部52に接続されている。タイミング調整コントローラ60は、第1変換部51から出力される第1受光信号S1又は第2受光信号S2を取得する。同様に、タイミング調整コントローラ60は、第2変換部52から出力される第3受光信号S3又は第4受光信号S4を取得する。
【0048】
タイミング調整コントローラ60は、第1切替部41にも接続されている。タイミング調整コントローラ60は、第1切替部41から第1変換部51へ出力される第1受光信号S1又は第2受光信号S2の出力時間及びタイミング等を制御して、時分割した状態で第1受光信号S1又は第2受光信号S2を第1変換部51へ出力させる。
【0049】
同様に、タイミング調整コントローラ60は、第2切替部42にも接続されている。タイミング調整コントローラ60は、第2切替部42から第2変換部52へ出力される第3受光信号S3又は第4受光信号S4の出力時間及びタイミング等を制御して、時分割した状態で第3受光信号S3又は第4受光信号S4を第2変換部52へ出力させる。
【0050】
第1記憶部71、第2記憶部72、第3記憶部73、及び第4記憶部74は、タイミング調整コントローラ60に接続されている。各記憶部は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等の任意の記憶装置を有する。各記憶部は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。各記憶部は、分光分析装置1に内蔵されるものに限定されず、USB等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置であってもよい。
【0051】
第1記憶部71は、第1変換部51でデジタル化された第1受光信号S1に基づくデータを必要に応じて格納する。第2記憶部72は、第1変換部51でデジタル化された第2受光信号S2に基づくデータを必要に応じて格納する。第3記憶部73は、第2変換部52でデジタル化された第3受光信号S3に基づくデータを必要に応じて格納する。第4記憶部74は、第2変換部52でデジタル化された第4受光信号S4に基づくデータを必要に応じて格納する。
【0052】
CPU80は、タイミング調整コントローラ60を介して第1記憶部71、第2記憶部72、第3記憶部73、及び第4記憶部74に接続されている。CPU80は、例えばタイミング調整コントローラ60における各受光信号に基づくデータ取得時間が、規定の掃引回数を含む所定時間に到達したか否かを判定する。CPU80は、データ取得時間が所定時間に到達したと判定すると、対応する記憶部からデータを取得して、対応する受光信号に基づいて分光スペクトルを分析する。
【0053】
CPU80は、取得した受光信号に対して任意の信号処理を施す。例えば、CPU80は、取得した受光信号を複数周期にわたって平均化してもよい。平均化は、例えば、掃引波形の同一波長部分の信号強度を周期ごとに積算して、全掃引回数で除算することを意味する。これにより、CPU80は、取得した受光信号から光吸収スペクトルを算出してもよい。
【0054】
レーザコントローラ10、タイミング調整コントローラ60、及びCPU80を含む制御部100は、1つ以上のプロセッサを含む。より具体的には、制御部100は、上述したレーザコントローラ10、タイミング調整コントローラ60、及びCPU80による各種の制御、及び処理等を実現可能な専用のプロセッサ等の任意のプロセッサを含む。制御部100では、レーザコントローラ10及びタイミング調整コントローラ60が同一のデバイスとして構成され、CPU80が異なるデバイスとして構成される。これに限定されず、制御部100は、任意の数のデバイスによって任意に構成されてもよい。
【0055】
制御部100は、分光分析装置1の制御対象となる各構成部に接続され、これらの各構成部を制御及び管理する。例えば、レーザコントローラ10は、第1発光部11及び第2発光部12に接続され、これらを制御及び管理する。例えば、タイミング調整コントローラ60は、第1切替部41及び第2切替部42と、第1記憶部71、第2記憶部72、第3記憶部73、及び第4記憶部74とに接続され、これらを制御及び管理する。
【0056】
制御部100は、取得したデータに基づいて必要に応じて信号処理を実行し、分光スペクトルを分析する。例えば、CPU80は、タイミング調整コントローラ60を介して各記憶部に接続され、対応する記憶部からデータを取得し、対応する受光信号を処理して、算出された光吸収スペクトルを分析する。
【0057】
次に、
図2を参照しながら、異なる分析対象成分C1及びC2を並行して分析する場合に、制御部100、例えばタイミング調整コントローラ60及びCPU80によって実行される制御及び処理について主に説明する。
【0058】
図2は、制御部100によって実行される制御及び処理の第1例を示す模式図である。
図2において、横軸は時間を示す。
図2において、第2変換部52へ入力される第3受光信号S3及び第4受光信号S4の図示を省略し、第1変換部51へ入力される第1受光信号S1及び第2受光信号S2を主に図示しているが、
図2を用いた以下の説明と同様の説明が第3受光信号S3及び第4受光信号S4に対しても適用される。
【0059】
図2の上段のグラフは、第1発光部11からの光出力の時間変化を示す。当該グラフは、第1発光部11からの照射光の発振波長が複数周期にわたって一定の波長範囲で掃引され、このような波長掃引によって発光強度が周期ごとに単調に変化している様子を示す。
図2の中央のグラフは、第1受光信号S1の第1変換部51への入力の時間変化を示す。
図2の下段のグラフは、第2受光信号S2の第1変換部51への入力の時間変化を示す。
図2の中央及び下段のグラフでは、図示の簡便のために光吸収スペクトルに基づく受光強度の変化を省略して周期ごとに直線的に受光強度が増加している様子が示されているが、実際は、
図4Bに示すような光吸収スペクトルに基づくディップが重畳した波形を示す。
【0060】
ここで、発光強度は、上述したとおり、例えば半導体レーザの注入電流の掃引に伴って変化する。すなわち、
図2における発光強度の変化は、注入電流の変化に対応してもよい。これに限定されず、発光強度の変化は、電圧によって制御される任意の波長掃引機構に入力される掃引電圧の変化に対応してもよい。同様に、受光強度の変化は、各受光部における信号の出力形態に合わせて、電流の変化に対応してもよいし、電圧の変化に対応してもよい。
【0061】
制御部100、例えばタイミング調整コントローラ60は、第1受光信号S1が第1時間T1の間だけ第1変換部51へ繰り返し入力されるように第1切替部41を制御する。CPU80は、第1切替部41からの出力が第1受光信号S1に切り替わってから経過した時間が第1時間T1に到達すると、第1時間T1の間に第1変換部51によって変換された第1受光信号S1に基づいて分光スペクトルを分析する。より具体的には、第1変換部51によってデジタル信号に変換された第1受光信号S1を第1時間T1の間だけタイミング調整コントローラ60が取得すると、CPU80は、
図2に黒塗りの逆三角形で示すタイミングで、取得した第1受光信号S1に基づいて分析対象成分C1の光吸収スペクトルを分析する。
【0062】
タイミング調整コントローラ60は、第1受光信号S1から第2受光信号S2に出力を切り替えるように第1切替部41を制御する。
【0063】
タイミング調整コントローラ60は、第2受光信号S2が第2時間T2の間だけ第1変換部51へ繰り返し入力されるように第1切替部41を制御する。第1変換部51によってデジタル信号に変換された第2受光信号S2を第2時間T2の間だけタイミング調整コントローラ60が取得すると、CPU80は、
図2に白抜きの逆三角形で示すタイミングで、取得した第2受光信号S2に基づいてガスG1の光吸収スペクトルを分析する。
【0064】
図2に示す第1例では、タイミング調整コントローラ60は、第1時間T1と第2時間T2とが同一になるように第1切替部41を制御する。
【0065】
タイミング調整コントローラ60は、第2受光信号S2から第1受光信号S1に出力を再度切り替えるように第1切替部41を制御する。その後、タイミング調整コントローラ60とCPU80とは、上述した制御及び処理を繰り返す。
図2に示す第1例では、第1時間T1と第2時間T2とが同一であるので、分析対象成分C1の光吸収スペクトルを分析する分析周期及びガスG1の光吸収スペクトルを分析する分析周期はそれぞれ2T1となり互いに同一である。
【0066】
ここで、掃引の周期ごとの一般的な受光信号では信号強度が非常に低く、SN比が低いため、掃引を数千回繰り返す必要がある。上述した測定信号及び参照信号それぞれに対して同等のSN比が分光スペクトルにて得られるように、光学系の設計に応じて掃引回数、すなわち第1時間T1及び第2時間T2がそれぞれ調整される。測定信号及び参照信号の間で光学系に起因するSN比が異なる場合、第1時間T1及び第2時間T2が互いに同一であっても、測定信号及び参照信号それぞれに対する分光スペクトルのSN比は互いに異なる。一方で、測定信号及び参照信号の間で光学系に起因するSN比が同等である場合、測定信号及び参照信号それぞれに対して同等の掃引回数に調整されると、測定信号及び参照信号それぞれに対する分光スペクトルのSN比は互いに同等となる。このとき、第1時間T1及び第2時間T2を
図2に示す第1例のように互いに同一とすると、分光分析装置1の主要な分析対象である分析対象成分C1の光吸収スペクトルの分析周期が2T1となり、分析の高速化が妨げられる。
【0067】
異なる2種類の分析対象成分C1及びC2のうちの一方のみを分析すれば十分であるような場合においても上記のような時分割の制御を行うと、分光分析装置1の主要な分析対象である分析対象成分の光吸収スペクトルの分析周期は依然として2T1のままである。加えて、分析が行われない他方の分析対象成分に対して用いられていた発光側及び受光側の各構成部が使用されないまま分光分析装置1の内部に配置されており、これらの各構成部が有効に活用されない。
【0068】
そこで、単一の分析対象成分を分析する場合に、各構成部を有効に活用して分光分析装置1として重要な分析対象成分の分析周期を短縮化するために、制御部100は、
図1に示す第3切替部90a及び第4切替部90bを用いる。さらに、制御部100は、
図3に示すような制御及び処理を行う。以下では、単一の分析対象成分C1を分析する場合の分光分析装置1の構成及び機能について主に説明する。単一の分析対象成分C2を分析する場合にも同様の制御及び処理が実行される。
【0069】
図1を再度参照すると、分光分析装置1は、第3切替部90a及び第4切替部90bをさらに有する。第3切替部90a及び第4切替部90bそれぞれは、例えばスイッチ等の任意の信号切替回路を有する。第3切替部90aの入力側は、第2受光部32に接続されている。第3切替部90aの出力側は、第2切替部42に接続されている。第4切替部90bの入力側は、第4受光部34に接続されている。第4切替部90bの出力側は、第2切替部42に接続されている。第3切替部90a及び第4切替部90bは、制御部100のタイミング調整コントローラ60による制御に基づき、第2発光部12が動作しているか否かに応じて回路を切り替える。
【0070】
より具体的には、タイミング調整コントローラ60は、レーザコントローラ10が第2発光部12の動作を開始させると、第3切替部90aをオフにして第2受光部32と第2切替部42とを切り離す。加えて、タイミング調整コントローラ60は、第4切替部90bをオンにして第4受光部34と第2切替部42とを接続させる。このとき、タイミング調整コントローラ60は、例えば
図2を参照しながら説明した上述の制御内容に基づいて第1切替部41及び第2切替部42それぞれを制御する。すなわち、第1変換部51が第1受光信号S1及び第2受光信号S2を交互にデジタル信号に変換し、第2変換部52が第3受光信号S3及び第4受光信号S4を交互にデジタル信号に変換する。
【0071】
一方で、タイミング調整コントローラ60は、レーザコントローラ10が第2発光部12の動作を停止させると、第3切替部90aをオンにして第2受光部32と第2切替部42とを接続させる。加えて、タイミング調整コントローラ60は、第4切替部90bをオフにして第4受光部34と第2切替部42とを切り離す。このとき、タイミング調整コントローラ60は、第1切替部41の入力側を常時第1受光部31と接続させる。同様に、タイミング調整コントローラ60は、第2切替部42の入力側を常時第3切替部90aと接続させる。したがって、第1受光部31から出力された第1受光信号S1は、第1切替部41を通過して第1変換部51に入力される。第2受光部32から出力された第2受光信号S2は、第3切替部90a及び第2切替部42を通過して第2変換部52に入力される。すなわち、第1変換部51が第1受光信号S1をデジタル信号に変換し、第2変換部52が第2受光信号S2をデジタル信号に変換する。
【0072】
図3は、制御部100によって実行される制御及び処理の第2例を示す模式図である。
図3の3つのグラフは、下段のグラフが第2受光信号S2の第2変換部52への入力の時間変化を示す点を除いて、
図2の3つのグラフとそれぞれ対応する。
【0073】
図2における第1例と異なり、処理の対象である第1受光信号S1及び第2受光信号S2に対して第1変換部51及び第2変換部52がそれぞれ使用可能であるので、タイミング調整コントローラ60は、時分割を行う必要がない。すなわち、タイミング調整コントローラ60は、第2発光部12が動作を停止している間、第1切替部41及び第2切替部42それぞれの受光信号の切り替えを制御することなく、第1変換部51及び第2変換部52に第1受光信号S1及び第2受光信号S2をそれぞれ連続的に出力させる。
【0074】
CPU80は、第1変換部51が第1受光信号S1を第1時間T1だけデジタル信号に変換すると、第1時間T1の間に変換された第1受光信号S1に基づいて分光スペクトルを分析する。より具体的には、第1変換部51によってデジタル信号に変換された第1受光信号S1を第1時間T1の間だけタイミング調整コントローラ60が取得すると、CPU80は、
図3に黒塗りの逆三角形で示すタイミングで、取得した第1受光信号S1に基づいて分析対象成分C1の光吸収スペクトルを分析する。
【0075】
CPU80は、第2変換部52が第2受光信号S2を第2時間T2だけデジタル信号に変換すると、第2時間T2の間に変換された第2受光信号S2に基づいて分光スペクトルを分析する。より具体的には、第2変換部52によってデジタル信号に変換された第2受光信号S2を第2時間T2の間だけタイミング調整コントローラ60が取得すると、CPU80は、
図3に白抜きの逆三角形で示すタイミングで、取得した第2受光信号S2に基づいてガスG1の光吸収スペクトルを分析する。
【0076】
図3に示す第2例では、第1時間T1と第2時間T2とは互いに同一である。このように、分析対象成分C1の光吸収スペクトルを分析する分析周期及びガスG1の光吸収スペクトルを分析する分析周期はそれぞれT1となり互いに同一である。
【0077】
図2に示す第1例と比較すると、CPU80は、分析周期がT1短縮した状態で分析対象成分C1の光吸収スペクトルを分析可能である。したがって、分析対象成分C1に対して第1受光信号S1及び第2受光信号S2をそれぞれ処理する場合であっても、分光分析装置1として重要な分析対象成分C1の分析周期が短縮化される。これにより、分光分析装置1による分析対象成分C1の分析効率が向上する。
【0078】
同様に、CPU80は、分析周期がT1短縮した状態でガスG1の光吸収スペクトルも分析可能である。これにより、分光分析装置1によるガスG1の分析効率が向上する。
【0079】
以上のような一実施形態に係る分光分析装置1によれば、2つの発光部それぞれに対して複数の受光部が配置されている場合であっても製品コストが低減可能である。より具体的には、分光分析装置1では、第1発光部11及び第2発光部12に対して第1受光部31乃至第4受光部34が配置されている場合であっても、第1変換部51及び第2変換部52のみを用いて受光信号を処理可能であるので、4つのADCが必要とされる従来技術と比較して、ADC関連の回路部品の数が低減する。
【0080】
第1発光部11及び第2発光部12のうちの一方が動作を停止している場合に第1変換部51及び第2変換部52を用いて測定信号及び参照信号を独立して処理することで、分光分析装置1は、分析の高速化に寄与できる。分光分析装置1は、連続して取得される各受光信号に基づいて複数の分析を並行して行うことができる。分光分析装置1は、測定信号及び参照信号それぞれに対して、光学系の設計に応じて同等のSN比が得られる適正な分析周期により、互いに干渉することなくリアルタイムに分析を行うことができる。
【0081】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含される。
【0082】
例えば、上述した各構成部の配置及び個数等は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の配置及び個数等は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0083】
上記実施形態では、第1時間T1と第2時間T2とが互いに同一であるとして説明したが、これに限定的されない。第1時間T1と第2時間T2とは、測定信号及び参照信号に含まれる掃引の回数が分析対象成分及びガスの分析にそれぞれ必要とされる規定の回数に到達しているのであれば、互いに異なっていてもよい。
【0084】
上記実施形態では、TDLASに限定して説明したが、分光分析装置1は、繰り返しの掃引信号に基づいて任意の分析対象の分光分析を行う任意の分析計に対して応用可能である。
【0085】
上記実施形態では、分光スペクトルは光吸収スペクトルを含むとして説明したが、これに限定されない。分光分析装置1は、このような吸収分光法以外にも任意の分光法を用いて分析対象成分を分析してもよい。分光法は、例えば、蛍光分光法及びラマン分光法等を含んでもよい。例えば、蛍光分光法では、分光スペクトルは蛍光スペクトルを含む。例えば、ラマン分光法では、分光スペクトルはラマンスペクトルを含む。
【0086】
上記実施形態では、第1受光信号S1及び第3受光信号S3が分析対象成分C1及びC2に関する分光スペクトル情報をそれぞれ含み、第2受光信号S2及び第4受光信号S4が参照用のガスG1及びG2に関する分光スペクトル情報をそれぞれ含むとして説明したがこれに限定されない。各受光信号は、任意の対象に関する分光スペクトル情報を含んでもよい。例えば、参照用のガスG1及びG2に代えて新たな分析対象成分がそれぞれ封入され、第2受光信号S2及び第4受光信号S4も、第1受光信号S1及び第3受光信号S3同様に分析対象成分に関する分光スペクトル情報をそれぞれ含んでもよい。