【実施例】
【0067】
以下に本発明の実施例を示す。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0068】
[1]導体の引張強さに関する検証
まず、導体の引張強さの選択による通信用電線の細径化の可能性について検証した。
【0069】
[試料の作製]
(1)導体の作製
まず、試料A1〜A5について、絶縁電線を構成する導体を作製した。つまり、純度99.99%以上の電気銅と、FeおよびTiの各元素を含有する母合金を、高純度カーボン製坩堝に投入して、真空溶解させ、混合溶湯を作成した。ここで、混合溶湯において、Feが1.0質量%、Tiが0.4質量%含まれるようにした。得られた混合溶湯に対して、連続鋳造を行い、φ12.5mmの鋳造材を製造した。得られた鋳造材に対して、φ8mmまで、押出し加工、圧延を行い、その後、φ0.165mmまで伸線を行った。得られた素線を7本用い、撚りピッチ14mmにて、撚線加工を行うとともに、圧縮成形を行った。その後、熱処理を行った。熱処理条件は、熱処理温度500℃、保持時間8時間とした。得られた導体は、導体断面積が0.13mm
2、外径が0.45mmとなった。
【0070】
このようにして得られた銅合金導体に対して、JIS Z 2241に従って、引張強さおよび破断伸びを評価した。この際、評点間距離を250mmとし、引張速度を50mm/minとした。評価の結果、引張強さは490MPaであり、破断伸びは8%であった。
【0071】
試料A6〜A8については、導体として、従来一般の純銅製の撚線を用いた。上記と同様に評価した引張強さおよび破断伸び、そして導体断面積、外径は、表1に示している。なお、ここで採用している導体断面積および外径は、電線として用いることができる純銅線において、強度上の制約によって規定される実質的な下限とみなされるものである。
【0072】
(2)絶縁電線の作製
上記で作製した銅合金導体および純銅線の外周に、ポリエチレンの押出しにより、絶縁被覆を形成し、絶縁電線を作製した。各試料における絶縁被覆の厚さは、表1に示したとおりとした。絶縁電線の偏芯率は80%であった。
【0073】
(3)通信用電線の作製
上記で作製した絶縁電線2本を、撚りピッチ25mmにて撚り合わせて、対撚線とした。対撚線の撚り構造は、第一の撚り構造(捻りなし)とした。そして、その対撚線の外周を囲むように、ポリエチレンの押出しにより、シースを形成した。シースはルーズジャケット型とし、シースの厚さは、0.4mmとした。シースと絶縁電線の間の空隙の大きさは、外周面積率で23%とし、絶縁電線に対するシースの密着力は、15Nであった。このようにして、試料A1〜A8にかかる通信用電線を得た。
【0074】
[評価]
(仕上がり外径)
通信用電線の細径化が達成できているかどうかを評価するため、得られた通信用電線の外径を計測した。
【0075】
(特性インピーダンス)
得られた通信用電線に対して、特性インピーダンスを計測した。計測は、LCRメータを用い、オープン/ショート法によって行った。
【0076】
[結果]
試料A1〜A8について、通信用電線の構成および評価結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示した評価結果を見ると、銅合金導体を用い、導体断面積を0.22mm
2よりも小さくしている試料A1〜A3を、導体として純銅線を用い、導体断面積を0.22mm
2としている試料A6〜A8とそれぞれ比較すると、絶縁被膜の厚さが同じであるにもかかわらず、試料A1〜A3の場合の方が特性インピーダンスの値が大きくなっている。試料A1〜A3では、いずれも、イーサーネット通信で求められる100±10Ωの範囲に入っているのに対し、特に試料A7,A8では100±10Ωの範囲を外れて低くなっている。
【0079】
上記の特性インピーダンスの挙動は、導体として銅合金線を用いる場合に、純銅線を用いる場合よりも導体を細径化できており、導体間の距離が近づいていることの結果であると解釈される。その結果として、銅合金導体を用いる場合に、100±10Ωの特性インピーダンスを維持しながら、絶縁被覆の厚さを0.30mm未満とすることができ、最も薄い場合には、0.18mmにすることが可能となっている。このように、絶縁被覆を薄くすることで、導体を細径化すること自体の効果と合わせて、通信用電線の仕上がり外径を小さくすることができている。
【0080】
たとえば、導体として銅合金導体を用いている試料A3と、純銅線を用いている試料A6とで、ほぼ同じ値の特性インピーダンスが得られている。しかし、両者の仕上がり外径を比較すると、銅合金導体を用いている試料A3の方が、導体の細線化を達成できていることにより、通信用電線の仕上がり外径が約20%小さくなっている。
【0081】
ただし、導体として銅合金を用いる場合に、試料A5のように、絶縁被覆を薄くしすぎると、特性インピーダンスが100±10Ωの範囲を外れてしまう。つまり、銅合金を用いて導体を細径化したうえで、絶縁被覆の厚さを適切に選択することで、100±10Ωの範囲の特性インピーダンスを得ることができる。
【0082】
[2]シースの形態に関する検証
次に、シースの形態による通信用電線の細径化の可能性について検証した。
【0083】
[試料の作製]
上記の[1]の試験における試料A1〜A4と同様にして、通信用電線を作製した。絶縁電線の偏芯率は80%とし、対撚線の撚り構造は第一の撚り構造(捻りなし)とした。この際、シースが
図1のようなルーズジャケット型のものと、
図2のような充実ジャケット型のものの2通りを準備した。いずれの場合も、シースは、ポリプロピレンより形成した。シースの厚さは、使用するダイス・ポイント形状によって決定し、ルーズジャケット型の場合は0.4mm、充実型の場合は、最も薄いところで0.5mmとした。ルーズジャケット型のシースと絶縁電線の間の空隙の大きさは、外周面積率で23%とし、絶縁電線に対するシースの密着力は、15Nとした。また、それぞれの場合について、絶縁電線の絶縁被覆の厚さを変更した複数の試料を作製した。
【0084】
[評価]
上記で作製した各試料に対して、上記[1]の試験と同様に、特性インピーダンスを計測した。また、一部の試料に対して、通信用電線の外径(仕上がり外径)と単位長さ当たりの質量を計測した。
【0085】
加えて、一部の試料について、IL、RL、LCTL、LCLの各伝送特性の評価を、ネットワークアナライザを用いて行った。
【0086】
[結果]
図4に、シースがルーズジャケット型である場合と充実ジャケット型である場合のそれぞれについて、絶縁電線の絶縁被覆の厚さ(絶縁厚)と計測された特性インピーダンスの関係を、プロット点として示す。
図4には、併せて、シースが設けられない場合について、対撚線を有する通信用電線の特性インピーダンスの理論式として知られている上記式(1)によって得られる、絶縁厚と特性インピーダンスの関係のシミュレーション結果も示している(ε
eff=2.6)。各シースを有する場合の計測結果に対しても、式(1)に基づく近似曲線を示している。また、図中の破線は、特性インピーダンスが100±10Ωとなる範囲を示している。
【0087】
図4の結果によると、シースを設けることで、実効誘電率が大きくなることと対応して、絶縁厚を同じとした場合の特性インピーダンスが低下している。しかし、シースを充実ジャケット型とした場合と比較して、ルーズジャケット型とした場合の方が、その低下の程度が小さく、大きな特性インピーダンスが得られている。換言すると、ルーズジャケット型とした場合の方が、同じ特性インピーダンスを得るために必要な絶縁厚が小さくて済む。
【0088】
図4によると、特性インピーダンスが100Ωとなっているのは、ルーズジャケット型の場合で、絶縁厚0.20mmの時、充実ジャケット型の場合で、絶縁厚0.25mmの時である。これらの場合について、絶縁厚と通信用電線の外径および質量を下の表2にまとめる。
【0089】
【表2】
【0090】
表2のように、充実ジャケット型の場合と比較して、ルーズジャケット型の場合には、絶縁厚が25%、通信用電線の外径が7.4%、質量が27%、それぞれ減少している。つまり、ルーズジャケット型のシースを使用することで、対撚線を構成する絶縁電線の絶縁厚を小さくしても、十分な大きさの特性インピーダンスを得ることができ、その結果、通信用電線全体として、外径を小さくし、さらに質量も小さくできることが検証された。
【0091】
また、上記の絶縁厚0.20mmのルーズジャケット型の通信用電線について、各伝送特性を評価したところ、IL≦0.68dB/m(66MHz)、RL≧20.0dB(20MHz)、LCTL≧46.0dB(50MHz)、LCL≧46.0dB(50MHz)の水準をいずれも満たすことが確認された。
【0092】
[3]空隙の大きさに関する検証
次に、シースと絶縁電線の間の空隙の大きさと特性インピーダンスとの関係について検証した。
【0093】
[試料の作製]
上記の[1]の試験における試料A1〜A4と同様にして、試料C1〜C6の通信用電線を作製した。この際、シースはルーズジャケット型とし、ダイスとポイントの形状を調整することで、シースと絶縁電線の間の空隙の大きさを変化させた。絶縁電線の導体断面積は0.13mm
2、絶縁被覆の厚さは0.20mm、シースの厚さは0.40mm、偏芯率は80%とした。また、絶縁電線に対するシースの密着力は15N、撚線の撚り構造は第一の撚り構造(捻りなし)とした。
【0094】
[評価]
上記で作製した各試料に対して、空隙の大きさを計測した。この際、各試料の通信用電線をアクリル樹脂に包埋して固定したうえで、切断することで、断面を得た。そして、断面において、空隙の大きさを、断面積に対する割合として計測した。得られた空隙の大きさは、上記で定義した外周面積率および内周面積率として、表3中に示している。また、各試料に対し、上記[1]の試験と同様に、特性インピーダンスを計測した。表3中で、特性インピーダンスの値を範囲付きで示しているのは、計測中の値のばらつきによるものである。
【0095】
[結果]
空隙の大きさと特性インピーダンスの関係を表3にまとめる。
【0096】
【表3】
【0097】
表3に示すように、空隙の大きさを、外周面積率で、8%以上、30%以下としている試料C2〜C5において、100±10Ωの範囲の特性インピーダンスが、安定に得られている。これに対し、外周面積率が8%未満となっている試料C1においては、空隙の小ささのために実効誘電率が大きくなりすぎ、特性インピーダンスが100±10Ωの範囲に届いていない。一方、外周面積率が30%を超えている試料C6においては、特性インピーダンスが、100±10Ωの範囲を高い側に超えてしまっている。これは、空隙が大きすぎるために、特性インピーダンスの中央値が大きくなっていることに加え、シース内での対撚線の位置ずれや撚り構造の緩みが生じやすくなり、特性インピーダンスのばらつきが大きくなっているものと解釈される。
【0098】
[4]シースの密着力に関する検証
次に、絶縁電線に対するシースの密着力と特性インピーダンスの経時変化との関係について検証した。
【0099】
[試料の作製]
上記の[1]の試験における試料A1〜A4と同様にして、試料D1〜D4の通信用電線を作製した。シースはルーズジャケット型とし、絶縁電線に対するシースの密着力を、表4のように変化させた。この際、密着力は、樹脂材料の押出温度を調整することで変化させた。ここで、シースと絶縁電線の間の空隙の大きさは、外周面積率で23%とした。絶縁電線において、導体断面積は0.13mm
2、絶縁被覆の厚さは0.20mm、シースの厚さは0.40mmとした。また、絶縁電線の偏芯率は80%とした。対撚線の撚り構造は第一の撚り構造(捻りなし)とし、撚りピッチは、絶縁電線の外径の8倍とした。
【0100】
[評価]
上記で作製した各試料に対して、シースの密着力を計測した。シースの密着力は、全長150mmの試料において、シースを片端から30mm除去した状態で、絶縁電線を引っ張り、絶縁電線が抜け落ちるまでの強度として評価した。また、経時使用を模擬した条件で、特性インピーダンスの変化の測定を行った。具体的には、各試料の通信用電線を、外径φ25mmのマンドレルに沿って、角度90°で200回屈曲させた後、屈曲箇所の特性インピーダンスを測定し、屈曲前からの変化量を記録した。
【0101】
[結果]
シースの密着力と特性インピーダンス変化量の関係を表4にまとめる。
【0102】
【表4】
【0103】
表4に示した結果によると、シースの密着力が4N以上となっている試料D1〜D3においては、特性インピーダンスの変化量が、3Ω以内に抑えられており、マンドレルを用いた屈曲で模擬される経時使用による変化を受けにくいという結果になっている。一方、シースの密着力が4Nに満たない試料D4においては、特性インピーダンスの変化量が、7Ωにも達している。
【0104】
[5]シースの厚さに関する検証
次に、シースの厚さと、伝送特性に対する外部からの影響との関係についての検証を行った。
【0105】
[試料の作製]
上記の[1]の試験における試料A1〜A4と同様にして、試料E1〜E6の通信用電線を作製した。シースはルーズジャケット型とし、試料E2〜E6については、シースの厚さを、表5のように変化させた。試料E1については、シースを設けなかった。シースと絶縁電線の間の空隙の大きさは、外周面積率で23%とした。シースの密着力は、15Nとした。絶縁電線において、導体断面積は0.13mm
2、絶縁被覆の厚さは0.20mmとした。また、絶縁電線の偏芯率は80%とした。対撚線の撚り構造は第一の撚り構造(捻りなし)とし、撚りピッチは、絶縁電線の外径の24倍とした。
【0106】
[評価]
上記で作製した各試料の通信用電線について、他電線の影響による特性インピーダンスの変化を評価した。具体的には、まず、各試料の通信用電線について、独立した単線の状態での特性インピーダンスを測定した。また、他電線を抱き込んだ状態でも、特性インピーダンスを測定した。ここで、他電線を抱き込んだ状態としては、試料電線を中心として略中心対象に、6本の他電線(外径2.6mmのPVC電線)を試料電線の外周に接触させて配置し、PVCテープを巻いて固定したものを準備した。そして、単線の状態での特性インピーダンスの値を基準として、他電線を抱き込んだ状態における特性インピーダンスの変化量を記録した。
【0107】
[結果]
シースの厚さと特性インピーダンス変化量の関係を表5にまとめる。
【0108】
【表5】
【0109】
表5の結果によると、シースの厚さが0.20mm以上となっている試料E3〜E6において、他電線の影響による特性インピーダンスの変化量が、4Ω以下に抑えられている。これに対し、シースを有さない、あるいはシースの厚さが0.20mm未満である試料E1、E2においては、特性インピーダンスの変化量が8Ω以上に大きくなっている。この種の通信用電線を、ワイヤーハーネス等、他電線と近接した状態で、自動車において用いる場合に、他電線の影響による特性インピーダンスの変化量が、5Ω以下に抑えられていることが好ましい。
【0110】
[6]絶縁電線の偏芯率に関する検証
次に、絶縁電線の偏芯率と伝送特性との関係についての検証を行った。
【0111】
[試料の作製]
上記の[1]の試験における試料A1〜A4と同様にして、試料F1〜F6の通信用電線を作製した。この際、絶縁被覆形成時の条件を調整することで、絶縁電線の偏芯率を、表6のように変化させた。絶縁電線において、導体断面積は0.13mm
2、絶縁被覆の厚さ(平均値)は、0.20mmとした。シースはルーズジャケット型とし、シースの厚さは、0.40mm、シースと絶縁電線の間の空隙の大きさは、外周面積率で23%、シースの密着力は、15Nとした。対撚線の撚り構造は第一の撚り構造(捻りなし)とし、撚りピッチは、絶縁電線の外径の24倍とした。
【0112】
[評価]
上記で作製した各試料の通信用電線について、透過モード変換特性(LCTL)および反射モード変換特性(LCL)を、上記[2]の試験と同様に計測した。測定は、1〜50MHzの周波数で行った。
【0113】
[結果]
表6に、偏芯率と、各モード変換特性の測定結果を示す。各モード変換の値としては、絶対値で、1〜50MHzの範囲で最小となった値を示している。
【0114】
【表6】
【0115】
表6によると、偏芯率が65%以上の試料F2〜F6において、透過モード変換、反射モード変換とも、46dB以上の水準を満たしている。これに対し、偏芯率が60%の試料F1においては、透過モード変換、反射モード変換とも、それらの水準を満たしていない。
【0116】
[7]対撚線の撚りピッチに関する検証
次に、対撚線の撚りピッチと特性インピーダンスの経時変化の関係について検証した。
【0117】
[試料の作製]
上記の[4]の試験における試料D1〜D4と同様にして、試料G1〜G4の通信用電線を作製した。この際、対撚線の撚りピッチを、表7のように変化させた。シースの絶縁電線に対する密着力は、70Nとした。
【0118】
[評価]
上記で作製した各試料に対して、上記の[4]の試験と同様にして、マンドレルを用いた屈曲による特性インピーダンスの変化量を評価した。
【0119】
[結果]
対撚線の撚りピッチと特性インピーダンス変化量の関係を表7にまとめる。表7において、対撚線の撚りピッチは、絶縁電線の外径(0.85mm)を基準とした値、つまり、絶縁電線の外径の何倍となっているかで示している。
【0120】
【表7】
【0121】
表7の結果によると、撚りピッチを絶縁電線の外径の45倍以下としている試料G1〜G3においては、特性インピーダンスの変化量が、4Ω以下に抑えられている。これに対し、撚りピッチが45倍を超えている試料G4では、特性インピーダンスの変化量が8Ωに達している。
【0122】
[8]対撚線の撚り構造に関する検証
次に、対撚線の撚り構造の種類と特性インピーダンスのばらつきの関係について検証した。
【0123】
[試料の作製]
上記の[4]の試験における試料D1〜D4と同様にして、試料H1およびH2の通信用電線を作製した。この際、対撚線の撚り構造として、試料H1については、上記で説明した第一の撚り構造(捻りなし)を採用し、試料H2については、第二の撚り構造(捻りあり)を採用した。対撚線の撚りピッチは、いずれも、絶縁電線の外径の20倍とした。シースの絶縁電線に対する密着力は、30Nとした。
【0124】
[評価]
上記で作製した各試料に対して、特性インピーダンスの測定を行った。測定は3回行い、3回の測定における特性インピーダンスの変動幅を記録した。
【0125】
[結果]
表8に、撚り構造の種類と特性インピーダンスの変動幅の関係を示す。
【0126】
【表8】
【0127】
表8の結果より、各絶縁電線に捻りを加えていない試料H1において、特性インピーダンスの変動幅が小さく抑えられていることが分かる。これは、捻りによって生じうる線間距離の変動の影響が回避されているためであると解釈される。
【0128】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0129】
また、上記でも述べたとおり、対撚線の外周を被覆するシースは、通信用電線の細径化の要請の程度に応じて、ルーズジャケット型に限らず、充実型として設けてもよい。また、シースを設けない構成とすることもできる。つまり、引張強さが400MPa以上である導体と、該導体の外周を被覆する絶縁被覆と、からなる1対の絶縁電線が撚り合わせられた対撚線を有し、特性インピーダンスが、100±10Ωの範囲にある通信用電線とすることができる。この場合に、絶縁被覆の厚さ、導体の成分組成および破断伸び、絶縁電線の外径および偏芯率、対撚線の撚り構造および撚りピッチ、シースの厚さおよび密着力、絶縁電線の外径および破断強度等、通信用電線の各部に関して適用しうる好ましい構成は、上記と同様である。また、引張強さが400MPa以上である導体と、該導体の外周を被覆する絶縁被覆と、からなる1対の絶縁電線が撚り合わせられた対撚線を有し、特性インピーダンスが、100±10Ωの範囲に入る通信用電線とし、かつ、その構成に対して、上記のような通信用電線の各部に関して適用しうる好ましい構成を適宜組み合わせることで、必要な大きさの特性インピーダンス値の確保と細径化を両立しながら、各構成によって付与されうる特性を備えた通信用電線を得ることができる。