(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フッ素オイルが有するフッ素原子及び水素原子の総量を100モル%として、前記フッ素オイルが有するフッ素原子の含有量が50モル%以上である、請求項1に記載の熱伝達組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ヨードカーボン化合物を使用した熱伝達組成物(特に冷媒を含有する組成物)は安定性に難があり、安定性向上のために、通常、安定化剤を添加することが試みられている。しかしながら、安定化剤を添加する方法によっても、熱伝達組成物は併用している冷凍機油が経時劣化し分解物として生成されるヨウ素やその反応で生じる共役結合により冷凍機油が変色してしまうことから、安定化剤の添加によっては、あまり効果は得られていない。冷凍機油の着色は構造変化による光の吸収もしくは微粒子生成による光の散乱によるものであり、配管内での詰まりの原因となり得る。
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、少なくとも1種のヨードカーボン化合物、及び冷凍機油を含有し、安定性試験後のJIS K0101に準拠して測定した濁度が100度以下である、熱伝達組成物が、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色が抑制されていることを見出した。また、本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、少なくとも1種のヨードカーボン化合物、
並びに主鎖骨格の炭素原子
若しくはシリコン原子に水素原子が結合していない冷凍機油を含有することによっても、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色が抑制されている熱伝達組成物が得られることを見出した。
【0010】
本開示は、このような知見に基づきさらに研究を重ねた結果完成されたものである。本開示は、以下の実施形態を含む。
【0011】
<用語の定義>
本開示において、「ヨードカーボン化合物」は、少なくとも1つの炭素−ヨウ素結合を含む任意の化合物を意味し、ヨードフルオロカーボン化合物(少なくとも1つの炭素−ヨウ素結合及び少なくとも1つの炭素−フッ素結合を有するが、炭素−炭素結合を除くその他の結合を持たない化合物)及びヒドロヨードフルオロカーボン化合物(少なくとも1つの炭素−ヨウ素結合、少なくとも1つの炭素−フッ素結合、少なくとも1つの炭素−水素結合を有するが、炭素−炭素結合を除くその他の結合を持たない化合物)を包含する。
【0012】
本開示において、用語「熱伝達組成物」は、一般に、熱伝達用途、つまり、加熱及び/又は冷却媒体としての使用に適合することができるが、代表例として冷媒を含有する組成物等が挙げられる。
【0013】
本開示において用語「冷媒」には、ISO817(国際標準化機構)で定められた、冷媒の種類を表すRで始まる冷媒番号(ASHRAE番号)が付された化合物が少なくとも含まれ、さらに冷媒番号が未だ付されていないとしても、それらと同等の冷媒としての特性を有するものが含まれる。冷媒は、化合物の構造の面で、「フルオロカーボン系化合物」と「非フルオロカーボン系化合物」とに大別される。「フルオロカーボン系化合物」には、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)及びハイドロフルオロオレフィン(HFO)が含まれる。「非フルオロカーボン系化合物」としては、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)、ブタン(R600)、イソブタン(R600a)、二酸化炭素(R744)、アンモニア(R717)等が挙げられる。
【0014】
本開示において、用語「冷媒を含有する組成物」には、(1)冷媒そのもの(冷媒の混合物(refrigerant mixtures)を含む)と、(2)その他の成分をさらに含み、冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることのできる組成物と、(3)冷凍機油を含有する冷凍機用作動流体(refrigeration working fluid)とが少なくとも含まれる。本明細書においては、これら三態様のうち、(2)の組成物のことを、冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と区別して「冷媒組成物(refrigerant composition)」と表記することがある。また、本開示の熱伝達組成物は(3)の冷凍機用作動流体に該当するが、「冷媒組成物」と区別して「冷凍機油含有作動流体(working fluid containing refrigeration oil)」と表記することがある。
【0015】
本開示において、用語「代替」は、第一の冷媒を第二の冷媒で「代替」するという文脈で用いられる場合、第一の類型として、第一の冷媒を使用して運転するために設計された機器において、必要に応じてわずかな部品(冷凍機油、ガスケット、パッキン、膨張弁、ドライヤその他の部品のうち少なくとも一種)の変更及び機器調整のみを経るだけで、第二の冷媒を使用して、最適条件下で運転することができることを意味する。すなわち、この類型は、同一の機器を、冷媒を「代替」して運転することを指す。この類型の「代替」の態様としては、第二の冷媒への置き換えの際に必要とされる変更乃至調整の度合いが小さい順に、「ドロップイン(drop in)代替」、「ニアリー・ドロップイン(nealy drop in)代替」及び「レトロフィット(retrofit)」があり得る。
【0016】
第二の類型として、第二の冷媒を用いて運転するために設計された機器を、第一の冷媒の既存用途と同一の用途のために、第二の冷媒を搭載して用いることも、用語「代替」に含まれる。この類型は、同一の用途を、冷媒を「代替」して提供することを指す。
【0017】
本開示において用語「冷凍機(refrigerator)」とは、物あるいは空間の熱を奪い去ることにより、周囲の外気よりも低い温度にし、かつこの低温を維持する装置全般のことをいう。言い換えれば、冷凍機は温度の低い方から高い方へ熱を移動させるために、外部からエネルギーを得て仕事を行いエネルギー変換する変換装置のことをいう。
【0018】
1.熱伝達組成物
本開示の熱伝達組成物は、実施形態ごとに大別すると、実施形態1及び2(それぞれ熱伝達組成物1及び2ともいう)に分けることができる。熱伝達組成物1及び2は、いずれも安定性が著しく優れており、経時劣化による変色が抑制されている。よって、本開示の熱伝達組成物1及び2、並びにそれを含む組成物は、例えば冷凍機用作動流体として有用である。以下、熱伝達組成物1及び2について説明する。
【0019】
(1−1)実施形態1: 熱伝達組成物1
本開示の熱伝達組成物1は、少なくとも1種のヨードカーボン化合物、及び冷凍機油を含有し、安定性試験後のJIS K0101に準拠して測定した濁度が100度以下である。つまり、本開示の熱伝達組成物1は、冷媒及び冷凍機油を含有し、冷媒としては少なくとも1種のヨードカーボン化合物を含むことができる。このような本開示の熱伝達組成物1は、商業用途、工業用途及び個人用途で、特に、冷凍システム及び(自動車用空調システムを含む)空調システム等で用いられる熱伝達流体として適当であり、例えば、冷凍機における作動流体として用いられ得る。具体的には、本開示の熱伝達組成物1は、冷凍機の圧縮機において使用される冷凍機油と、冷媒又は冷媒組成物とが互いに混じり合うことにより得られ得る。さらに、該組成物は、様々な用途で著しく安定であり経時劣化に伴う変色を抑制できるものであるが、それだけではなく、不燃性であり、地球温暖化係数も低い傾向にもあり、該組成物はCFC、HCFC及びHFCの冷媒の代替として特に有用な候補となり得る。
【0020】
冷媒
本開示の熱伝達組成物1中に含まれる冷媒には、上記のとおり、少なくとも1種のヨードカーボン化合物が含まれている。
【0021】
ヨードカーボン化合物としては、本開示では、安定性に乏しいヨードカーボン化合物を冷凍基油と組合せて使用しつつ、安定性試験後のJIS K0101に準拠して測定した濁度が100度以下とすることにより、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制することから、安定性に乏しく地球温暖化係数が低く不燃性に優れる冷媒成分として、ヨードフルオロカーボン化合物が好ましく、炭素数1〜3のヨードフルオロカーボン化合物がより好ましく、トリフルオロヨードメタン(CF
3I)が最も好ましい。
【0022】
本開示の熱伝達組成物1は、このように、冷媒成分として少なくとも1種のヨードカーボン化合物を含んでいるものであり、ヨードカーボン化合物に加えて、必要に応じて後述する任意性分を含んでいてもよい。ヨードカーボン化合物の含有量は冷媒全体を基準として25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
【0023】
(任意成分)
本開示の熱伝達組成物1は、本開示の効果を損なわない範囲でヨードカーボン化合物以外に、通常熱伝達組成物として用いられる化合物を任意に含有してもよい。このような化合物としてはHFC(特に炭素数1〜5のHFC)、HFO(特に炭素数2〜5のHFO)が挙げられる。
【0024】
HFCとしては、ジフルオロメタン(HFC-32)、ジフルオロエタン(1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、1,2-ジフルオロエタン(HFC-152)等)、トリフルオロエタン(1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)等)、テトラフルオロエタン(1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)等)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、ペンタフルオロプロパン(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)等)、ヘキサフルオロプロパン(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea)等)、ヘプタフルオロプロパン(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea))、ペンタフルオロブタン、ヘプタフルオロシクロペンタン等が挙げられる。なかでも、HFCとしては、オゾン層への影響が少なく、かつ冷凍サイクル特性が優れる点から、HFC-32、HFC-152a、HFC-143a、HFC-134、HFC-134a、HFC-125等が好ましく、HFC-32、HFC-152a、HFC-134a、HFC-125等がより好ましい。HFCは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
HFOとしては、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、2-フルオロプロペン(HFO-1261yf)、1,1,2-トリフルオロプロペン(HFO-1243yc)、トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))、シス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z))、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z))、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)等が挙げられる。
【0026】
本開示の熱伝達組成物1には、上記の任意成分以外にも、通常、冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いられる組成物中に含まれ得る成分として、水、トレーサー(FC-14(CF
4)、HCC-40(CH
3Cl)、HFC-23(CHF
3)、HFC-41(CH
3Cl)、HFC-161(CH
3CH
2F)、HCFC-22(CHClF
2)、HCFC-31(CH
2ClF)、CFC-1113(CF
2=CClF)、HFE-125(CF
3OCHF
2)、HFE-134a(CF
3OCH
2F)、HFE-143a(CF
3OCH
3)、HFE-227ea(CF
3OCHFCF
3)、HFE-236fa(CF
3OCH
2CF
3)等)、紫外線蛍光染料(ナフタルイミド、クマリン、アントラセン、フェナントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン及びフルオレセイン、並びにこれらの誘導体等)、安定剤(ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン、ニトロスチレン、1,4-ジオキサン、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等)、重合禁止剤(4-メトキシ-1-ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノンメチルエーテル、ジメチル-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ベンゾトリアゾール等)等よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むこともできる。このような各種成分の含有量は、上記した冷媒成分とこれらの他の成分の総量を基準として、0〜1質量%、好ましくは1質量ppm〜0.1質量%とすることができる。
【0027】
冷凍機油
本開示において使用される冷凍機油の基油としては、特に制限されるわけではないが、ヨードカーボン化合物と反応して主鎖骨格に二重結合が導入されると冷凍機油が変色し流動性が低下することから、主鎖骨格の炭素原子又はシリコン原子に水素原子が結合していないことが好ましい。
【0028】
このような基油としては、例えば、-CH
2-CH
2-で表される構造を有しないフッ素オイル、なかでも主鎖骨格のみならず主鎖末端の炭素原子にも水素原子が結合していないフッ素オイルを好ましく使用することができる。上記のようなフッ素オイルを使用した場合には、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制して流動性を維持できるのみならず、冷媒中に含まれるヨードカーボン化合物との反応も抑制し副生成物としてCHF
3(R23)等の共冷媒の生成を抑制することができることからヨードカーボン化合物の安定性も向上させ、結果的に熱伝達組成物全体の安定性を著しく向上させることが可能である。
【0029】
このフッ素オイルは、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制して流動性を維持しつつ、冷媒中に含まれるヨードカーボン化合物との反応も抑制し副生成物としてCHF
3(R23)等の共冷媒の生成を抑制する観点から、フッ素原子及び水素原子の総量を100モル%として、フッ素原子の含有量が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましい。なお、上記フッ素原子の含有量を100モル%とすることも可能である。
【0030】
このような条件を満たすフッ素オイルとしては、例えば、一般式(1):
R
2−(O−R
1)
n−R
3 (1)
[式中、R
1は含フッ素アルキレン基を示す。R
2及びR
3は(フルオロ)アルキル基を示す。nは1〜500の整数を示す。]
で表されるフッ素オイルが挙げられる。
【0031】
R
1で示される含フッ素アルキレン基としては、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制して流動性を維持しつつ、冷媒中に含まれるヨードカーボン化合物との反応も抑制し副生成物としてCHF
3(R23)等の共冷媒の生成を抑制する観点から、パーフルオロアルキレン基が好ましく、炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基がより好ましい。
【0032】
このような含フッ素アルキレン基としては、例えば、−(OCX
2)−、−(OC
2X
4)−、−(OC
3X
6)−、−(OC
4X
8)−等が挙げられる。式中、Xは同一又は異なって、水素原子又はフッ素原子を示す。また、フッ素オイル中に含まれるXの合計個数のうち、50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは100%がフッ素原子であることが好ましい。なお、−(OC
2X
4)−は、−(OCX
2CX
2)−、及び−(OCX(CX
3))−のいずれであってもよく、−(OC
3X
6)−は、−(OCX
2CX
2CX
2)−、−(OCX(CX
3)CX
2)−、及び−(OCX
2CX(CX
3))−のいずれであってもよく、−(OC
4X
8)−は、−(OCX
2CX
2CX
2CX
2)−、−(OCX(CX
3)CX
2CX
2)−、−(OCX
2CX(CX
3)CX
2)−、−(OCX
2CX
2CX(CX
3))−、−(OC(CX
3)
2CX
2)−、−(OCX
2C(CX
3)
2)−、−(OCX(CX
3)CX(CX
3))−、−(OCX(C
2X
5)CX
2)−、及び−(OCX
2CX(C
2X
5))−のいずれであってもよい。
【0033】
また、R
2及びR
3で示される(フルオロ)アルキル基は、アルキル基又はフルオロアルキル基を意味する。つまり、R
2及びR
3は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいアルキル基を意味し、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基(特に炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基)が好ましい。また、R
2及びR
3は、より好ましくは、それぞれ独立して、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基である。
【0034】
一般式(1)において、重合度を示すnは、特に制限されないが、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制して流動性を維持しつつ、冷媒中に含まれるヨードカーボン化合物との反応も抑制し副生成物としてCHF
3(R23)等の共冷媒の生成を抑制する観点から、1〜500の整数が好ましく、10〜200の整数がより好ましい。
【0035】
上記のような条件を満たすフッ素オイルとしては、例えば、「ダイフロイル#1」、「ダイフロイル#3」、「ダイフロイル#10」、「ダイフロイル#20」、「ダイフロイル#50」、「ダイフロイル#100」、「デムナムS−65」、「ダイフロイルグリースDG−203」、「デムナムL65」、「デムナムL100」、「デムナムL200」、(以上、ダイキン工業株式会社製)、「クライトックス(登録商標)グリース240AC」(デュポン株式会社製)、「スミテックF936」(住鉱潤滑剤株式会社製)、「モリコート(登録商標)HP−300」、「モリコート(登録商標)HP−500」、「モリコート(登録商標)HP−870」、「モリコート(登録商標)6169」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。これらのフッ素オイルは、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0036】
また、冷凍機油の基油としては、他にも、主鎖が-Si-O-骨格を有するシリコンオイルを好ましく使用することもできる。上記のようなシリコンオイルを使用した場合には、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制して流動性を維持できる。
【0037】
このような条件を満たすシリコンオイルとしては、例えば、一般式(2):
【0039】
[式中、R
4及びR
5は同一又は異なって、炭化水素基を示す。R
6及びR
7は同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を示す。mは1〜2000の整数を示す。]
で表されるシリコンオイルが挙げられる。
【0040】
R
4〜R
7で示される炭化水素基としては、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制して流動性を維持しつつ、冷媒中に含まれるヨードカーボン化合物との反応も抑制し副生成物としてCHF
3(R23)等の共冷媒の生成を抑制する観点から、炭素数1〜18の炭化水素基が好ましい。
【0041】
このような炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜18のアルキル基;シクロヘキシル基等の炭素数3〜18のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜18のアルケニル基;フェニル基、トリル基等の炭素数6〜18のアリール基;スチリル基、α−メチルスチリル基等の炭素数7〜18のアラルキル基;これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子)、シアノ基、アミノ基、水酸基等で置換したクロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、シアノエチル基、3-アミノプロピル基、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピル基等が挙げられる。中でも、R
4〜R
7の合計個数のうち80%以上、特に90%以上がメチル基であることが好ましい。該シリコンオイルの末端は、トリオルガノシリル基で封鎖されていても、ジオルガノヒドロキシシリル基で封鎖されていてもよい。
【0042】
一般式(2)において、重合度を示すmは、特に制限されないが、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制して流動性を維持しつつ、冷媒中に含まれるヨードカーボン化合物との反応も抑制し副生成物としてCHF
3(R23)等の共冷媒の生成を抑制する観点から、1〜2000の整数が好ましく、1〜1000の整数がより好ましい。
【0043】
上記のような条件を満たすシリコンオイルとしては、例えば、製品名「ASO−100」(アズワン株式会社製)、製品名「信越シリコーンKF−96」、「信越シリコーンKF−965」、「信越シリコーンKF−968」、「信越シリコーンKF−99」、「信越シリコーンKF−50」、「信越シリコーンKF−54」、「信越シリコーンHIVAC F−4」、「信越シリコーンHIVAC F−5」、「信越シリコーンKF−56A」、「信越シリコーンKF−995」、製品名「信越シリコーンG−30シリーズ」、「信越シリコーンG−40シリーズ」、「信越シリコーンFG−720シリーズ」、「信越シリコーンG−411」、「信越シリコーンG−501」、「信越シリコーンG−6500」、「信越シリコーンG−330」、「信越シリコーンG−340」、「信越シリコーンG−350」、「信越シリコーンG−630」(以上、信越化学工業株式会社製)、「SH200」、「モリコート(登録商標)SH33L」、「モリコート(登録商標)41」、「モリコート(登録商標)44」、「モリコート(登録商標)822M」、「モリコート(登録商標)111」、「モリコート(登録商標)高真空用グリース」、「モリコート(登録商標)熱拡散コンパウンド」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。これらのシリコンオイルは、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0044】
またフッ素オイルとしても、シリコンオイルとしても例示できるものとして、末端又は側鎖をフルオロアルキル基で置換した変性シリコンオイルであるフロロシリコンオイルが挙げられる。例えば、製品名「ユニダイン(登録商標)TG−5601」ダイキン工業株式会社製)、「モリコート(登録商標)3451」、「モリコート(登録商標)3452」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)、「信越シリコーンFL−5」、「信越シリコーンX−22−821」、「信越シリコーンX−22−822」、「信越シリコーンFL−100」(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。これらのオイルも単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0045】
上記した主鎖骨格の炭素原子又はシリコン原子に水素原子が結合していないオイル(特にフッ素オイル及びシリコンオイル)はいずれも、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制して流動性を維持できるものであり、ヨードカーボン化合物を含む熱伝達組成物の変色を抑制するための冷凍機油として使用できるものであるが、これらのなかでも、冷媒中に含まれるヨードカーボン化合物との反応も抑制し副生成物としてCHF
3(R23)等の共冷媒の生成を抑制することができることからヨードカーボン化合物の安定性も向上させ、結果的に熱伝達組成物全体の安定性を著しく向上させることが可能である観点からはフッ素オイルが特に好ましい。つまり、上記フッ素オイルは、ヨードカーボン化合物を含む熱伝達組成物の安定化剤としても機能することができる。
【0046】
以上のように、本開示で使用する冷凍機油の基油としては、上記したフッ素オイル及び/又はシリコンオイルの含有量は多いことが好ましく、具体的には、冷凍機油中の基油全体を基準として、50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましい。また、同様の理由により、冷凍機油の基油におけるフッ素オイル及び/又はシリコンオイルの含有量は冷凍機油中の基油全体を基準として、99.5質量%以上含むことがより好ましい。さらに、同様の理由により、冷凍機油中の基油をフッ素オイル及び/又はシリコンオイルのみからなることとすることも好ましい。
【0047】
本開示において、冷凍機油は、基油に加えて、さらに少なくとも1種の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、紫外線蛍光染料、安定化剤、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種であってもよい。このような各種添加剤の含有量は、冷凍機油の総量を基準として、0〜1質量%、好ましくは1質量ppm〜0.1質量%とすることができる。
【0048】
このような冷凍機油として、40℃における動粘度が5〜400cStであるものが、潤滑の点で好ましい。
【0049】
熱伝達組成物
本開示の熱伝達組成物1は、上記したように、少なくとも1種のヨードカーボン化合物、及び冷凍機油を含有するものであるが、安定性試験後のJIS K0101に準拠して測定した濁度が100度以下である。より具体的には、本開示の熱伝達組成物1を製造後に175℃、3MPaの条件下で2週間静置した場合に、JIS K0101に準拠して測定した濁度が100度以下であることが好ましい。これにより、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制して流動性を維持しつつ、冷媒中に含まれるヨードカーボン化合物との反応も抑制し副生成物としてCHF
3(R23)等の共冷媒の生成を抑制することができる。同様の理由により、上記のような条件下での濁度は50度以下が好ましい。なお、濁度は小さいほうが好ましく、好ましい下限値はないが、通常、濁度は1度以上である。
【0050】
本開示の熱伝達組成物1には、上記した冷凍機油は一般に、熱伝達組成物の総量を100質量%として10〜50質量%含まれ得る。ただし、本開示の熱伝達組成物1を用いた冷凍機油含有作動流体は、冷凍サイクルにおいてその組成が変化する。具体的には、本開示の熱伝達組成物1を用いた冷凍機油含有作動流体の冷凍機油含量は、圧縮機内では比較的多く、圧縮機からミスト状となって吐出されて冷凍サイクルを循環し、圧縮機に戻るまでの期間では比較的少ない。例えば、本開示の熱伝達組成物1を用いた冷凍機油含有作動流体の冷凍機油含量は、圧縮機内では、30〜70質量%であり、圧縮機から吐出されて再び圧縮機に戻ってくるまでの期間では、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは1質量ppm〜20質量%である。
【0051】
本開示の熱伝達組成物1を用いた冷凍機油含有作動流体は、さらに少なくとも1種の添加剤を含んでもよい。添加剤としては例えば相溶化剤(ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテルおよび1,1,1-トリフルオロアルカン等)等が挙げられる。このような各種添加剤の含有量は、冷凍機油含有作動流体の総量を基準として、0〜1質量%、好ましくは1質量ppm〜0.1質量%とすることができる。
【0052】
(1−2)実施形態2: 熱伝達組成物2
本開示の熱伝達組成物2は、少なくとも1種のヨードカーボン化合物、
並びに主鎖骨格の炭素原子
若しくはシリコン原子に水素原子が結合していない冷凍機油を含有する。つまり、本開示の熱伝達組成物2は、冷媒及び冷凍機油を含有し、冷媒としては少なくとも1種のヨードカーボン化合物を含み、冷凍機油としては主鎖骨格の炭素原子又はシリコン原子に水素原子が結合していない冷凍機油を含む。このような本開示の熱伝達組成物2は、商業用途、工業用途及び個人用途で、特に、冷凍システム及び(自動車用空調システムを含む)空調システム等で用いられる熱伝達流体として適当であり、例えば、冷凍機における作動流体として用いられ得る。具体的には、本開示の熱伝達組成物2は、冷凍機の圧縮機において使用される冷凍機油と、冷媒又は冷媒組成物とが互いに混じり合うことにより得られ得る。さらに、該組成物は、様々な用途で著しく安定であり経時劣化に伴う変色を抑制できるものであるが、それだけではなく、不燃性であり、地球温暖化係数も低い傾向にもあり、該組成物はCFC、HCFC及びHFCの冷媒の代替として特に有用な候補となり得る。
【0053】
冷媒
本開示の熱伝達組成物2中に含まれる冷媒には、上記のとおり、少なくとも1種のヨードカーボン化合物が含まれている。
【0054】
ヨードカーボン化合物としては、本開示では、安定性に乏しいヨードカーボン化合物を主鎖骨格の炭素原子又はシリコン原子に水素原子が結合していない冷凍基油と組合せて使用することにより、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制することから、安定性に乏しく地球温暖化係数が低く不燃性に優れる冷媒成分として、ヨードフルオロカーボン化合物が好ましく、炭素数1〜3のヨードフルオロカーボン化合物がより好ましく、トリフルオロヨードメタン(CF
3I)が最も好ましい。
【0055】
本開示の熱伝達組成物2は、このように、冷媒成分として少なくとも1種のヨードカーボン化合物を含んでいるものであり、必要に応じて後述する任意性分を含んでいてもよい。ヨードカーボン化合物の含有量は冷媒全体を基準として25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
【0056】
(任意成分)
本開示の熱伝達組成物2は、本開示の効果を損なわない範囲でヨードカーボン化合物以外に、通常熱伝達組成物として用いられる化合物を任意に含有してもよい。このような化合物としてはHFC(特に炭素数1〜5のHFC)、HFO(特に炭素数2〜5のHFO)が挙げられる。
【0057】
HFCとしては、ジフルオロメタン(HFC-32)、ジフルオロエタン(1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、1,2-ジフルオロエタン(HFC-152)等)、トリフルオロエタン(1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)等)、テトラフルオロエタン(1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)等)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、ペンタフルオロプロパン(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)等)、ヘキサフルオロプロパン(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea)等)、ヘプタフルオロプロパン(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea))、ペンタフルオロブタン、ヘプタフルオロシクロペンタン等が挙げられる。なかでも、HFCとしては、オゾン層への影響が少なく、かつ冷凍サイクル特性が優れる点から、HFC-32、HFC-152a、HFC-143a、HFC-134、HFC-134a、HFC-125等が好ましく、HFC-32、HFC-152a、HFC-134a、HFC-125等がより好ましい。HFCは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
HFOとしては、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、2-フルオロプロペン(HFO-1261yf)、1,1,2-トリフルオロプロペン(HFO-1243yc)、トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))、シス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z))、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z))、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)等が挙げられる。
【0059】
本開示の熱伝達組成物2には、上記の任意成分以外にも、通常、冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いられる組成物中に含まれ得る成分として、水、トレーサー(FC-14(CF
4)、HCC-40(CH
3Cl)、HFC-23(CHF
3)、HFC-41(CH
3Cl)、HFC-161(CH
3CH
2F)、HCFC-22(CHClF
2)、HCFC-31(CH
2ClF)、CFC-1113(CF
2=CClF)、HFE-125(CF
3OCHF
2)、HFE-134a(CF
3OCH
2F)、HFE-143a(CF
3OCH
3)、HFE-227ea(CF
3OCHFCF
3)、HFE-236fa(CF
3OCH
2CF
3)等)、紫外線蛍光染料(ナフタルイミド、クマリン、アントラセン、フェナントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン及びフルオレセイン、並びにこれらの誘導体等)、安定剤(ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン、ニトロスチレン、1,4-ジオキサン、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等)、重合禁止剤(4-メトキシ-1-ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノンメチルエーテル、ジメチル-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ベンゾトリアゾール等)等よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むこともできる。このような各種成分の含有量は、上記した冷媒成分とこれらの他の成分の総量を基準として、0〜1質量%、好ましくは1質量ppm〜0.1質量%とすることができる。
【0060】
冷凍機油
本開示において使用される冷凍機油としては、ヨードカーボン化合物と反応して主鎖骨格に二重結合が導入されると冷凍機油が変色し流動性が低下することから、主鎖骨格の炭素原子又はシリコン原子に水素原子が結合していない冷凍機油を基油として使用する。
【0061】
このような基油としては、例えば、-CH
2-CH
2-で表される構造を有しないフッ素オイル、なかでも主鎖骨格のみならず主鎖末端の炭素原子にも水素原子が結合していないフッ素オイルを好ましく使用することができる。上記のようなフッ素オイルを使用した場合には、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制して流動性を維持できるのみならず、冷媒中に含まれるヨードカーボン化合物との反応も抑制し副生成物としてCHF
3(R23)等の共冷媒の生成を抑制することができることからヨードカーボン化合物の安定性も向上させ、結果的に熱伝達組成物全体の安定性を著しく向上させることが可能である。
【0062】
このフッ素オイルは、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制して流動性を維持しつつ、冷媒中に含まれるヨードカーボン化合物との反応も抑制し副生成物としてCHF
3(R23)等の共冷媒の生成を抑制する観点から、フッ素原子及び水素原子の総量を100モル%として、フッ素原子の含有量が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましい。なお、上記フッ素原子の含有量を100モル%とすることも可能である。
【0063】
このような条件を満たすフッ素オイルとしては、例えば、一般式(1):
R
2−(O−R
1)
n−R
3 (1)
[式中、R
1は含フッ素アルキレン基を示す。R
2及びR
3は(フルオロ)アルキル基を示す。nは1〜500の整数を示す。]
で表されるフッ素オイルが挙げられる。
【0064】
R
1で示される含フッ素アルキレン基としては、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制して流動性を維持しつつ、冷媒中に含まれるヨードカーボン化合物との反応も抑制し副生成物としてCHF
3(R23)等の共冷媒の生成を抑制する観点から、パーフルオロアルキレン基が好ましく、炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基がより好ましい。
【0065】
このような含フッ素アルキレン基としては、例えば、−(OCX
2)−、−(OC
2X
4)−、−(OC
3X
6)−、−(OC
4X
8)−等が挙げられる。式中、Xは同一又は異なって、水素原子又はフッ素原子を示す。また、フッ素オイル中に含まれるXの合計個数のうち、50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは100%がフッ素原子であることが好ましい。なお、−(OC
2X
4)−は、−(OCX
2CX
2)−、及び−(OCX(CX
3))−のいずれであってもよく、−(OC
3X
6)−は、−(OCX
2CX
2CX
2)−、−(OCX(CX
3)CX
2)−、及び−(OCX
2CX(CX
3))−のいずれであってもよく、−(OC
4X
8)−は、−(OCX
2CX
2CX
2CX
2)−、−(OCX(CX
3)CX
2CX
2)−、−(OCX
2CX(CX
3)CX
2)−、−(OCX
2CX
2CX(CX
3))−、−(OC(CX
3)
2CX
2)−、−(OCX
2C(CX
3)
2)−、−(OCX(CX
3)CX(CX
3))−、−(OCX(C
2X
5)CX
2)−、及び−(OCX
2CX(C
2X
5))−のいずれであってもよい。
【0066】
また、R
2及びR
3で示される(フルオロ)アルキル基は、アルキル基又はフルオロアルキル基を意味する。つまり、R
2及びR
3は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいアルキル基を意味し、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基(特に炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基)が好ましい。また、R
2及びR
3は、より好ましくは、それぞれ独立して、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基である。
【0067】
一般式(1)において、重合度を示すnは、特に制限されないが、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制して流動性を維持しつつ、冷媒中に含まれるヨードカーボン化合物との反応も抑制し副生成物としてCHF
3(R23)等の共冷媒の生成を抑制する観点から、1〜500の整数が好ましく、10〜200の整数がより好ましい。
【0068】
上記のような条件を満たすフッ素オイルとしては、例えば、「ダイフロイル#1」、「ダイフロイル#3」、「ダイフロイル#10」、「ダイフロイル#20」、「ダイフロイル#50」、「ダイフロイル#100」、「デムナムS−65」、「ダイフロイルグリースDG−203」、「デムナムL65」、「デムナムL100」、「デムナムL200」、(以上、ダイキン工業株式会社製)、「クライトックス(登録商標)グリース240AC」(デュポン株式会社製)、「スミテックF936」(住鉱潤滑剤株式会社製)、「モリコート(登録商標)HP−300」、「モリコート(登録商標)HP−500」、「モリコート(登録商標)HP−870」、「モリコート(登録商標)6169」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。これらのフッ素オイルは、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0069】
また、冷凍機油の基油としては、他にも、主鎖が-Si-O-骨格を有するシリコンオイルを好ましく使用することもできる。上記のようなシリコンオイルを使用した場合には、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制して流動性を維持できる。
【0070】
このような条件を満たすシリコンオイルとしては、例えば、一般式(2):
【0072】
[式中、R
4及びR
5は同一又は異なって、炭化水素基を示す。R
6及びR
7は同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を示す。mは1〜2000の整数を示す。]
で表されるシリコンオイルが挙げられる。
【0073】
R
4〜R
7で示される炭化水素基としては、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制して流動性を維持しつつ、冷媒中に含まれるヨードカーボン化合物との反応も抑制し副生成物としてCHF
3(R23)等の共冷媒の生成を抑制する観点から、炭素数1〜18の炭化水素基が好ましい。
【0074】
このような炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜18のアルキル基;シクロヘキシル基等の炭素数3〜18のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜18のアルケニル基;フェニル基、トリル基等の炭素数6〜18のアリール基;スチリル基、α−メチルスチリル基等の炭素数7〜18のアラルキル基;これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子)、シアノ基、アミノ基、水酸基等で置換したクロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、シアノエチル基、3-アミノプロピル基、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピル基等が挙げられる。中でも、R
4〜R
7の合計個数のうち80%以上、特に90%以上がメチル基であることが好ましい。該シリコンオイルの末端は、トリオルガノシリル基で封鎖されていても、ジオルガノヒドロキシシリル基で封鎖されていてもよい。
【0075】
一般式(2)において、重合度を示すmは、特に制限されないが、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制して流動性を維持しつつ、冷媒中に含まれるヨードカーボン化合物との反応も抑制し副生成物としてCHF
3(R23)等の共冷媒の生成を抑制する観点から、1〜2000の整数が好ましく、1〜1000の整数がより好ましい。
【0076】
上記のような条件を満たすシリコンオイルとしては、例えば、製品名「ASO−100」(アズワン株式会社製)、製品名「信越シリコーンKF−96」、「信越シリコーンKF−965」、「信越シリコーンKF−968」、「信越シリコーンKF−99」、「信越シリコーンKF−50」、「信越シリコーンKF−54」、「信越シリコーンHIVAC F−4」、「信越シリコーンHIVAC F−5」、「信越シリコーンKF−56A」、「信越シリコーンKF−995」、製品名「信越シリコーンG−30シリーズ」、「信越シリコーンG−40シリーズ」、「信越シリコーンFG−720シリーズ」、「信越シリコーンG−411」、「信越シリコーンG−501」、「信越シリコーンG−6500」、「信越シリコーンG−330」、「信越シリコーンG−340」、「信越シリコーンG−350」、「信越シリコーンG−630」(以上、信越化学工業株式会社製)、「SH200」、「モリコート(登録商標)SH33L」、「モリコート(登録商標)41」、「モリコート(登録商標)44」、「モリコート(登録商標)822M」、「モリコート(登録商標)111」、「モリコート(登録商標)高真空用グリース」、「モリコート(登録商標)熱拡散コンパウンド」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。これらのシリコンオイルは、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0077】
またフッ素オイルとしても、シリコンオイルとしても例示できるものとして、末端又は側鎖をフルオロアルキル基で置換した変性シリコンオイルであるフロロシリコンオイルが挙げられる。例えば、製品名「ユニダイン(登録商標)TG−5601」ダイキン工業株式会社製)、「モリコート(登録商標)3451」、「モリコート(登録商標)3452」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)、「信越シリコーンFL−5」、「信越シリコーンX−22−821」、「信越シリコーンX−22−822」、「信越シリコーンFL−100」(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。これらのオイルも単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0078】
上記した主鎖骨格の炭素原子又はシリコン原子に水素原子が結合していないオイル(特にフッ素オイル及びシリコンオイル)はいずれも、安定性を著しく向上させ、経時劣化による変色を抑制して流動性を維持できるものであり、ヨードカーボン化合物を含む熱伝達組成物の変色を抑制するための冷凍機油として使用できるものであるが、これらのなかでも、冷媒中に含まれるヨードカーボン化合物との反応も抑制し副生成物としてCHF
3(R23)等の共冷媒の生成を抑制することができることからヨードカーボン化合物の安定性も向上させ、結果的に熱伝達組成物全体の安定性を著しく向上させることが可能である観点からはフッ素オイルが特に好ましい。つまり、上記フッ素オイルは、ヨードカーボン化合物を含む熱伝達組成物の安定化剤としても機能することができる。
【0079】
以上のように、本開示で使用する冷凍機油の基油としては、上記したフッ素オイル及び/又はシリコンオイルの含有量は多いことが好ましく、具体的には、冷凍機油中の基油全体を基準として、50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましい。また、同様の理由により、冷凍機油の基油におけるフッ素オイル及び/又はシリコンオイルの含有量は冷凍機油中の基油全体を基準として、99.5質量%以上含むことがより好ましい。さらに、同様の理由により、冷凍機油中の基油をフッ素オイル及び/又はシリコンオイルのみからなることとすることも好ましい。
【0080】
本開示において、冷凍機油は、基油に加えて、さらに少なくとも1種の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、紫外線蛍光染料、安定化剤、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種であってもよい。このような各種添加剤の含有量は、冷凍機油の総量を基準として、0〜1質量%、好ましくは1質量ppm〜0.1質量%とすることができる。
【0081】
このような冷凍機油として、40℃における動粘度が5〜400cStであるものが、潤滑の点で好ましい。
【0082】
本開示の熱伝達組成物2は、上記したように、少なくとも1種のヨードカーボン化合物、
並びに主鎖骨格の炭素原子
若しくはシリコン原子に水素原子が結合していない冷凍機油を含有する。
【0083】
本開示の熱伝達組成物2には上記した冷凍機油は一般に、熱伝達組成物の総量を100質量%として10〜50質量%含まれ得る。ただし、本開示の熱伝達組成物2を用いた冷凍機油含有作動流体は、冷凍サイクルにおいてその組成が変化する。具体的には、本開示の熱伝達組成物1を用いた冷凍機油含有作動流体の冷凍機油含量は、圧縮機内では比較的多く、圧縮機からミスト状となって吐出されて冷凍サイクルを循環し、圧縮機に戻るまでの期間では比較的少ない。例えば、本開示の熱伝達組成物2を用いた冷凍機油含有作動流体の冷凍機油含量は、圧縮機内では、30〜70質量%であり、圧縮機から吐出されて再び圧縮機に戻ってくるまでの期間では、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは1質量ppm〜20質量%である。
【0084】
本開示の熱伝達組成物2を用いた冷凍機油含有作動流体は、さらに少なくとも1種の添加剤を含んでもよい。添加剤としては例えば相溶化剤(ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテルおよび1,1,1-トリフルオロアルカン等)等が挙げられる。このような各種添加剤の含有量は、冷凍機油含有作動流体の総量を基準として、0〜1質量%、好ましくは1質量ppm〜0.1質量%とすることができる。
【0085】
2.冷凍機及びその運転方法
本開示の冷凍機は、上記した本開示の熱伝達組成物1又は2を作動流体として含むものであり、本開示の冷凍機の運転方法は、本開示の熱伝達組成物1又は2を用いて冷凍機を運転する方法である。
【0086】
具体的には、本開示の冷凍機の運転方法は、上記した熱伝達組成物1又は2を冷凍機において循環させる工程を含む。
【0087】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例】
【0088】
以下に、実施例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本開示は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0089】
濁度測定
笠原理化工業(株)製の濁度計TR−55を用い、JIS K0101に準拠して、安定性試験(175℃、3MPaの条件で2週間静置)後の冷凍機油の濁度測定を行った。
【0090】
実施例1:CF3I+フッ素オイル
トリフルオロヨードメタン(CF
3I)50質量部とフッ素オイル(ダイキン工業(株)製のデムナムS-20;フッ素化度100モル%)50質量部とを混合し、得られた混合物(熱伝達組成物)を、鉄、銅及びアルミニウムの金属片とともにガラスチューブ内に投入し、ガラスチューブを密封した。密封したガラスチューブを175℃、3MPaに維持しながら2週間静置した。2週間経過後、ガラスチューブ内の混合物を観察した。
【0091】
目視で観察した結果、熱伝達組成物は2週間後も無色透明であり、流動性も優れていたことから、安定性に優れることが理解できる。さらに濁度測定を行ったところ、得られた濁度は20度であった。また、ガス分析によりCHF
3(R23)の生成の有無を評価したところ、CHF
3(R23)は検出されなかったことから、冷媒成分であるCF
3Iと冷凍機油であるフッ素オイルとが一切反応していないことが理解できる。
【0092】
実施例2:CF3I+フッ素オイル
トリフルオロヨードメタン(CF
3I)50質量部と、デムナムS-20のフッ素化度を50モル%に調整したフッ素オイル50質量部とを混合し、得られた混合物(熱伝達組成物)を、鉄、銅及びアルミニウムの金属片とともにガラスチューブ内に投入し、ガラスチューブを密封した。フッ素化度はNMR測定によりフッ素化度=100×フッ素原子数/(フッ素原子数+水素原子数)として算出した。密封したガラスチューブを175℃、3MPaに維持しながら2週間静置した。2週間経過後、ガラスチューブ内の混合物を観察した。
【0093】
目視で観察した結果、熱伝達組成物は2週間後も無色透明であり、流動性も優れていたことから、安定性に優れることが理解できる。さらに濁度測定を行ったところ、得られた濁度は20度であった。また、ガス分析によりCHF
3(R23)の生成の有無を評価したところ、CHF
3(R23)は検出されなかったことから、冷媒成分であるCF
3Iと冷凍機油であるフッ素オイルとが一切反応していないことが理解できる。
【0094】
実施例3:CF3I+フッ素オイル
トリフルオロヨードメタン(CF
3I)50質量部と、デムナムS-20のフッ素化度を70モル%に処理したフッ素オイル50質量部とを混合し、得られた混合物(熱伝達組成物)を、鉄、銅及びアルミニウムの金属片とともにガラスチューブ内に投入し、ガラスチューブを密封した。フッ素化度はNMR測定によりフッ素化度=100×フッ素原子数/(フッ素原子数+水素原子数)として算出した。密封したガラスチューブを175℃、3MPaに維持しながら2週間静置した。2週間経過後、ガラスチューブ内の混合物を観察した。
【0095】
目視で観察した結果、熱伝達組成物は2週間後も無色透明であり、流動性も優れていたことから、安定性に優れることが理解できる。さらに濁度測定を行ったところ、得られた濁度は20度であった。また、ガス分析によりCHF
3(R23)の生成の有無を評価したところ、CHF
3(R23)は検出されなかったことから、冷媒成分であるCF
3Iと冷凍機油であるフッ素オイルとが一切反応していないことが理解できる。
【0096】
実施例4:CF3I+シリコンオイル
フッ素オイルの代わりにシリコンオイル(アズワン(株)製のASO-100)を使用したこと以外は実施例1と同様に実験を行った。
【0097】
目視で観察した結果、熱伝達組成物は2週間後も無色透明であり、流動性も優れていたことから、安定性に優れることが理解できる。さらに濁度測定を行ったところ、得られた濁度は10度であった。
【0098】
比較例1:CF3I+ポリビニルエーテル
フッ素オイルの代わりにポリビニルエーテル(出光興産(株)製のFVC32D)を使用したこと以外は実施例1と同様に実験を行った。
【0099】
目視で観察した結果、熱伝達組成物は2週間後には黒色となっており、流動性もなかったことから、安定性に劣ることが理解できる。さらに濁度測定を行ったところ、得られた濁度は100度より大きかった。
【0100】
比較例2:CF3I+ポリアルキレングリコール
フッ素オイルの代わりにポリアルキレングリコール(日本サン石油(株)製のSUNICE P56)を使用したこと以外は実施例1と同様に実験を行った。
【0101】
目視で観察した結果、熱伝達組成物は2週間後には黒色となっており、流動性もなかったことから、安定性に劣ることが理解できる。さらに濁度測定を行ったところ、得られた濁度は100度より大きかった。
【0102】
比較例3:CF3I+ポリアルキレングリコール+イソプレン
フッ素オイルの代わりにポリアルキレングリコール(日本サン石油(株)製のSUNICE P56)を使用し、添加剤としてイソプレン(和光純薬工業(株)製)を使用した。つまり、トリフルオロヨードメタン(CF
3I)49質量部とポリアルキレングリコール49質量部とイソプレン2質量部とを使用したこと以外は実施例1と同様に実験を行った。
【0103】
目視で観察した結果、熱伝達組成物は2週間後には黒色となっており、流動性もなかったことから、特許文献1に開示されているジエンベース化合物であるイソプレンを添加しても安定性改善の効果は見られず、安定性に劣ることが理解できる。さらに濁度測定を行ったところ、得られた濁度は100度より大きかった。