(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜5のいずれかに記載の化粧シートと被着材とを積層することにより得られる化粧板であって、前記被着材がチップボード又はチップボードを表面に有する複合基材である化粧板。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の化粧シート及びそれを用いた化粧板について説明する。
【0014】
化粧シート
本発明の化粧シートは、透明性基材層上に、少なくとも透明性樹脂層及び電離放射線硬化型透明性表面保護層(以下、「透明性表面保護層」と略記する場合がある。)が当該順に積層されており、
(1)前記透明性基材層及び前記透明性樹脂層は、共にポリオレフィン樹脂を含有し、
(2)前記透明性基材層は、層厚が10〜250μmであり、且つ、マルテンス硬さが60N/mm
2以下であり、
(3)前記透明性樹脂層は、マルテンス硬さが100N/mm
2以下であり、且つ、前記透明性基材層のマルテンス硬さより大きく、
(4)前記透明性基材層と前記透明性樹脂層との層厚の合計が100〜420μmである、
ことを特徴とする。
【0015】
上記特徴を有する本発明の化粧シートは、上記(1)〜(4)の各要件を具備することにより、化粧シートをチップボードに貼り合わせて化粧板を作製する際に化粧シートとチップボードとの間の気泡の残存が抑制されており、且つ、化粧板が良好な耐衝撃性、耐磨耗性及び歩行感を発揮する。また、従来の化粧シートのように塩化ビニルを主成分とするものではないため、塩化ビニルを用いる場合の変色、劣化等の問題も回避されている。
【0016】
本発明の化粧シートは、上記(1)〜(4)の各要件を満たす限り、具体的な層構成は特に限定されない。層構成としては、例えば、
図1に示すような透明性基材層上に、絵柄模様層、透明性樹脂層及び電離放射線硬化型透明性表面保護層を順に積層した層構成;透明性基材層上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び電離放射線硬化型透明性表面保護層を順に積層した層構成等が挙げられる。また、透明性基材層裏面には、化粧板作製時にチップボードの接着性を高めるために裏面プライマー層を積層してもよい。なお、本明細書では、上記層構成の中で、透明性基材層から見て透明性表面保護層が積層されている方向を「上」又は「おもて面」と称し、透明性基材層から見て裏面プライマー層が積層されている方向(化粧板作製時にチップボードを積層する方向)を「下」又は「裏面」と称する。化粧シート又は化粧板の「おもて面(側)」又は「透明性表面保護層(側)の面」とは、化粧シート又は化粧板の施工後に視認される面を意味する。
【0017】
以下、上記で例示した各層(透明性基材層、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層、透明性表面保護層及び裏面プライマー層)について説明する。
【0018】
(透明性基材層)
本発明の化粧シートは、透明性基材層の樹脂成分としてポリオレフィン樹脂を含有する。また、透明性基材層は、層厚が10〜250μmであり、且つ、マルテンス硬さが60N/mm
2以下であるものを用いる。なお、透明性基材層は単層でもよく、製膜方法によって2層以上の積層体から構成されてもよい。透明性基材層を2層以上の積層体から構成し、それぞれに透明性着色剤、パール顔料等を各種組み合わせて含有することにより、化粧板を作製した際にチップボードの風合いに加えて更に意匠性を付与することができる。また、単層では得られない奥行き感や階調性を付与することもできる。透明性基材層を複層とする場合は、各層のマルテンス硬さを60N/mm
2以下とし、且つ、各層を合わせた層厚が10〜250μmとなるようにする。
【0019】
透明性基材層は、ポリオレフィン樹脂からなるシートを用いることが好ましい。
【0020】
ポリオレフィン樹脂としては特に限定されず、化粧シートの分野で通常用いられているものが使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの中でも、特にポリプロピレン、ポリオレフィン熱可塑性エラストマー等が好ましい。
【0021】
ポリプロピレンを主成分とする単独重合体又は共重合体も好ましく、例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、及び、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンを有する共重合体が挙げられる。その他、エチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1のコモノマーを15モル%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体等も好ましい。
【0022】
ポリオレフィン熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントにアイソタクチックポリプロピレン、ソフトセグメントにアタクチックポリプロピレンを重量比80:20で混合したものが好ましい。
【0023】
ポリオレフィン樹脂は、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等によりフィルム状にすればよい。
【0024】
透明性基材層の層厚は10〜250μmであればよいが、特に40〜120μmが好ましい。透明性基材層の層厚が10μm未満の場合には、化粧板を作製した際にチップボードとの間の気泡の残存が抑制できないおそれがある。また、250μmを超える場合には、耐衝撃性が低下するおそれがある。
【0025】
透明性基材層のマルテンス硬さは60N/mm
2以下であればよいが、特に20〜30N/mm
2が好ましい。透明性基材層のマルテンス硬さが60N/mm
2を超える場合には、化粧板を作製した際に化粧シートとチップボードとの間の気泡の残存が抑制できないおそれがある。また、透明性基材層のマルテンス硬さの下限値は10N/mm
2程度であることが好ましい。透明性基材層のマルテンス硬さを調整する方法としては、例えば、1)異なる硬さを有する2種以上のポリオレフィン樹脂を混合する、2)ポリオレフィン熱可塑性エラストマーを混合する、等によって適宜調整することができる。
【0026】
なお、本明細書におけるマルテンス硬さは、表面皮膜物性試験機(PICODENTOR HM-500、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を用いて測定される値であり、具体的な測定方法は次の通りである。この測定方法では、
図2(a)に示されるダイヤモンド圧子(ビッカーズ圧子)を用いて、
図2(b)に示すように測定試料にダイヤモンド圧子を押し込み、表面にできたピラミッド形のくぼみの対角線の長さからその表面積A(mm
2)を計算し、試験荷重F(N)を割ることにより硬さを求める。押し込み条件は、室温(実験室環境温度)において、
図2(c)に示される通り、先ず0〜5mNまでの負荷を10秒間で加え、次に5mNの負荷で5秒間保持し、最後に5〜0 mNまでの除荷を10秒間で行う。そして、表面積A、試験荷重Fに基づきF/Aにより求められる硬度が前記マルテンス硬さである。なお、本明細書では、マルテンス硬さを測定したい層以外の層の硬度の影響を回避するために、マルテンス硬さを測定したい層の断面のマルテンス硬さを測定した。これに際し、化粧シートを樹脂(冷間硬化タイプのエポキシ2液硬化樹脂)で埋包し、室温で24時間以上放置して硬化させた後、硬化した埋包サンプルを機械研磨してマルテンス硬さを測定したい層の断面を露出させ、当該断面に(無機充填材等の微粒子が測定対象層中に含まれる場合には当該微粒子を避けた位置に)ダイヤモンド圧子を押し込むことにより測定対象面の断面のマルテンス硬さを測定した。
【0027】
透明性基材層には、透明性を確保できる範囲で添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、着色剤(下記参照)などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
【0028】
着色剤としては特に限定されず、顔料、染料等の公知の着色剤を使用できる。例えば、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料;イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(染料も含む);アルミニウム、真鍮等の金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料などが挙げられる。
【0029】
透明性基材層の片面又は両面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理等の表面処理を施してもよい。例えば、コロナ放電処理を行う場合には、透明性基材層の表面の表面張力が30dyne以上、好ましくは40dyne以上となるようにすればよい。表面処理は、各処理の常法に従えばよい。
【0030】
透明性基材層の上面又は裏面には、必要に応じて、プライマー層(絵柄模様層又はチップボードの積層を容易とするためのプライマー層)を設けてもよい。
【0031】
プライマー層は、公知のプライマー剤を透明性基材層の片面又は両面に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン−セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤等が挙げられる。
【0032】
プライマー層の厚みは特に限定されないが、通常0.1〜10μm、好ましくは1〜5μm程度である。
【0033】
(絵柄模様層)
透明性基材層の上には、絵柄模様層を形成することができる。
【0034】
絵柄模様層は、化粧シートに所望の絵柄による意匠性を付与するものであり、絵柄の種類等は特に限定的ではない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
【0035】
絵柄模様層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)させて得られる着色インキ、コーティング剤等を用いた印刷法などにより形成すればよい。
【0036】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等がさらに配合してもよい。
【0037】
結着材樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0038】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0039】
絵柄模様層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、全面ベタ状の絵柄模様層を形成する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法が挙げられる。その他、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法等を用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
【0040】
絵柄模様層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚は1〜15μm程度、乾燥後の層厚は0.1〜10μm程度である。
【0041】
(透明性接着剤層)
絵柄模様層の上には、透明性接着剤層を形成することができる。
【0042】
透明性接着剤層は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明又は半透明のいずれも含む。透明性接着剤層は、絵柄模様層と透明性樹脂層とを接着するために形成することができる。
【0043】
接着剤としては特に限定されず、化粧シートの分野で公知の接着剤が使用できる。
【0044】
化粧シートの分野で公知の接着剤としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂等の硬化性樹脂等が挙げられる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も適用し得る。
【0045】
接着剤層は、例えば、接着剤を絵柄模様層の上に塗布し、透明性樹脂層を構成する塗工剤(接着剤)を塗工後、乾燥又は硬化させることにより形成できる。乾燥温度、乾燥時間等の条件は特に限定されず、接着剤の種類に応じて適宜設定すればよい。接着剤の塗布方法は特に限定されず、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムースコート、コンマコート等の方法が採用できる。
【0046】
接着剤層の厚みは特に限定されないが、乾燥後の厚みが0.1〜30μm、好ましくは1〜20μm程度である。
【0047】
(透明性樹脂層)
透明性接着剤層の上には、透明性樹脂層を形成する。
【0048】
本発明の化粧シートは、透明性樹脂層の樹脂成分としてポリオレフィン樹脂を含有する。また、透明性樹脂層のマルテンス硬さが100N/mm
2以下であり、当該マルテンス硬さは、透明性基材層のマルテンス硬さより大きい。言い換えれば、透明性基材層のマルテンス硬さをH
B(N/mm
2)、透明性樹脂層のマルテンス硬さをH
R(N/mm
2)とした場合、「H
R≦100、且つ、H
B<H
R」を満たす。更に、透明性基材層と透明性樹脂層との層厚の合計が100〜420μmとなるように設定する。なお、透明性樹脂層は単層でもよく、製膜方法によって2層以上の積層体から構成されてもよい。透明性基材層を2層以上とする場合と同様に、透明性樹脂層を2層以上の積層体から構成し、それぞれに透明性着色剤、パール顔料等を各種組み合わせて含有することにより、化粧板を作製した際にチップボードの風合いに加えて更に意匠性を付与することができる。また、単層では得られない奥行き感や階調性を付与することもできる。透明性樹脂層を複層とする場合は、各層のマルテンス硬さを100N/mm
2以下とし、且つ、透明性基材層のマルテンス硬さよりも大きくなるように設定する。
【0049】
ポリオレフィン樹脂の種類については、透明性基材層の欄で説明したものが使用できる。ポリオレフィン樹脂の中でも、ポリプロピレンが好ましく、透明性樹脂層は実質的にポリプロピレン樹脂によって形成されていることが好ましい。
【0050】
透明性樹脂層は、例えば、ポリプロピレン樹脂を、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等により形成する。また既製のフィルムを用いてもよい。
【0051】
透明性樹脂層のマルテンス硬さは100N/mm
2以下であればよいが、特に30〜40N/mm
2が好ましい。但し、当該マルテンス硬さは、透明性基材層のマルテンス硬さより大きくなるように調整する必要がある。これにより、耐衝撃性、耐摩耗性を維持しつつ、チップボードとの間の気泡の残存を抑制する効果が得られる。透明性樹脂層のマルテンス硬さが100N/mm
2を超える場合には、歩行感が悪くなり、耐衝撃性が低下し、シート表面割れやすくなるおそれがある。また、透明性樹脂層のマルテンス硬さの下限値は20N/mm
2程度であることが好ましい。透明性樹脂層のマルテンス硬さを調整する方法としては、透明性基材層の場合と同様に、例えば、1)異なる硬さを有する2種以上のポリオレフィン樹脂を混合する、2)ポリオレフィン熱可塑性エラストマーを混合する、等によって適宜調整することができる。
【0052】
透明性樹脂層の層厚は限定的ではないが、透明性基材層と透明性樹脂層との層厚の合計が100〜420μm(好ましくは120〜200μm)となるように調整する。両層の層厚の合計が100μm未満の場合には、耐摩耗性が低下するおそれがある。また、両層の層厚の合計が420μmを超える場合には、歩行感が悪くなるおそれがある。一般には、透明性樹脂層の層厚は90〜170μmの範囲内から上記条件を満たすように選択すればよい。
【0053】
透明性樹脂層は、必要に応じて、耐候剤を含有してもよい。耐候剤としては、例えば、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が好ましい。これらの耐候剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。特に透明性樹脂層がポリプロピレンを含有する場合には、耐候剤を含有することが好ましい。
【0054】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤が好適である。これらの耐候剤の含有量は限定されないが、紫外線吸収剤・光安定剤ともに、透明性樹脂層中1000〜10000質量ppm程度とすればよい。
【0055】
透明性樹脂層の表面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理等の表面処理を施してもよい。表面処理は、各処理の常法に従って行えばよい。
【0056】
透明性樹脂層の表面には、プライマー層(透明性表面保護層の形成を容易とするためのプライマー層)が形成されていてもよい。
【0057】
プライマー層は、公知のプライマー剤を透明性樹脂層に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。
【0058】
プライマー層の厚みは特に限定されないが、通常0.1〜10μm、好ましくは1〜5μm程度である。
【0059】
(艶調整層)
本発明の化粧シートには、艶調整層が形成されていてもよい。艶調整層が形成されている化粧シートの形態としては、例えば、
図3〜
図5の形態が挙げられる。
【0060】
本発明の化粧シートに艶調整層が形成されている場合、前記艶調整層は、前記透明性樹脂層上に、後述する透明性表面保護層と隣接するようにして形成される。より具体的には、艶調整層の裏面が前記透明性樹脂層(又は、本発明の化粧シートが前記プライマー層を有する場合は、当該プライマー層)のおもて面と隣接しており、且つ、艶調整層のおもて面及び/又は側面が透明性表面保護層と隣接している。
【0061】
艶調整層は、意匠性の観点から、(1)おもて面側(化粧シート又は化粧板の施工後に視認される面側)の面の一部分に形成されていてもよく、また、(2)おもて面側の全面(面全体)に形成されていてもよい。つまり、艶調整層は、(1)おもて面側の面を基準として、部分的に形成されていてもよく、また、(2)おもて面側の面を基準として、全体にわたって形成されていてもよい。
【0062】
前記(1)艶調整層がおもて面側の面の一部分に形成されている場合、(a)透明性表面保護層は、おもて面側の面の一部分に形成されていてもよく、また、(b)透明性表面保護層は、おもて面側の全面に形成されていてもよい。艶調整層および透明性表面保護層の両者ともおもて面側の面の一部分に形成されている場合(上記(1)の(a)の場合)、前記透明性表面保護層は、前記艶調整層が形成されていない領域(存在しない領域)を埋めるようにして形成されている。
【0063】
図3の形態では、艶調整層がおもて面側の面の一部分に形成されており、且つ、透明性表面保護層がおもて面側の全面に形成されている(上記(1)の(b)の形態)。
図4の形態では、艶調整層がおもて面側の面の一部分に形成されており、且つ、透明性表面保護層がおもて面側の面の一部分に形成されている(上記(1)の(a)の形態)。
【0064】
一方、前記(2)艶調整層がおもて面側の全面に形成されている場合、透明性表面保護層はおもて面側の面の一部分に形成されている。
図5の形態では、艶調整層がおもて面側の全面に形成されており、且つ、透明性表面保護層がおもて面側の面の一部分に形成されている(上記(2)の形態)。
【0065】
ここで、艶調整層の艶値をG
A、透明性表面保護層の艶値をG
Pとする。本発明の化粧シートが艶調整層を有する場合、艶調整層の艶値G
Aと後述する透明性表面保護層の艶値G
Pとの関係は、G
P≠G
Aである。ここで、本明細書における前記G
Aと前記G
Pは、日本工業規格JIS Z8741に準拠して測定された値である。具体的には、本発明では、グロス計として日本電色工業株式会社製PG−3Dを用いて、入射角=60°の条件で艶値を測定している。なお、本明細書において、艶値を、光沢値又はグロス値ともいう。
【0066】
前記(1)艶調整層がおもて面側の面の一部分に形成されている場合、又は、前記(2)艶調整層がおもて面側の全面に形成されている場合、のいずれであっても、化粧シート又は化粧板の施工後に視認される面には、艶調整層及び透明性表面保護層の両者が視認され、且つ、前記艶調整層及び前記透明性表面保護層のそれぞれの艶値の関係はG
P≠G
Aである。よって、本発明の化粧シートに艶調整層が形成されている場合、化粧シートを被着材に貼着させた際に化粧シート表面に生じる凹凸形状(被着材の表面凹凸形状起因の凹凸形状であって、いわゆるダクと呼ばれる)の影響があったとしてもその影響は抑制され、前記化粧シート又は化粧板の意匠性が向上する。そのため、艶調整層が形成されている本発明の化粧シートは、本発明として好ましい態様である。
【0067】
次に、前記(1)艶調整層がおもて面側の面の一部分に形成されている場合(単に、前記(1)の場合、とも称する)について説明する。前記(1)の場合、化粧シート又は化粧板のおもて面の面積1cm
2当たりに占める艶調整層が形成されている領域の面積の割合は、20〜80%であることが好ましい。この場合、艶調整層の前記おもて面(視認される面)側が絵柄状となるように艶調整層が形成されることが好ましい。艶調整層が絵柄状であり、且つ、前記面積の割合が20〜80%であることにより、艶調整層と透明性表面保護層の艶差がより明瞭となり、結果として意匠性をさらに向上させ、且つ、前記凹凸形状の影響をさらに抑制することが可能となる。なお、艶調整層が前記絵柄状となるように形成される場合、前記絵柄の種類は特に限定されない。前記絵柄の具体的な種類としては、例えば、前述の絵柄模様層で例示された各種絵柄と同様のものが挙げられる。
【0068】
本明細書において、化粧シート又は化粧板のおもて面の面積1cm
2当たりに占める艶調整層が形成されている領域(艶調整層が存在する領域)の面積の割合を、艶調整層の占有面積割合と称する場合がある。前記艶調整層の占有面積割合は、艶調整層を形成するための版を作製する段階での製版データから算出している。前記艶調整層の占有面積割合は、当該版の形状から算出することもできる。
【0069】
前記(1)の場合、前記凹凸形状の影響をさらに抑制する(前記凹凸形状をさらに見え難くする)ために、前記G
Aと前記G
Pの関係はG
A<G
Pが好ましい。より好ましくは、G
A<G
Pであり、且つ、G
A≦5である。
【0070】
次に、前記(2)艶調整層がおもて面側の全面に形成されている場合(単に、前記(2)の場合、とも称する)について説明する。前記(2)の場合、透明性表面保護層はおもて面側の面の一部分に形成される。この場合、透明性表面保護層の前記おもて面(視認される面)側が絵柄状となるように透明性表面保護層が形成されることが好ましい。これにより、艶調整層と透明性表面保護層の艶差がより明瞭となり、結果として意匠性をさらに向上させ、且つ、前記凹凸形状の影響をさらに抑制することが可能となる。なお、透明性表面保護層が前記絵柄状となるように形成される場合、前記絵柄の種類は特に限定されない。前記絵柄の具体的な種類としては、例えば、前述の絵柄模様層で例示された各種絵柄と同様のものが挙げられる。
【0071】
前記(2)の場合、前記凹凸形状の影響をさらに抑制する(前記凹凸形状をさらに見え難くする)ために、前記G
Aと前記G
Pの関係は|G
P−G
A|≧2が好ましく、|G
P−G
A|≧10がより好ましい(言い換えれば、艶調整層の艶値と透明性表面保護層の艶値の差が2以上であることが好ましく、前記差が10以上であることが好ましい)。ここで、前記G
Aと前記G
Pの関係は、G
A<G
Pであってもよく、また、G
P<G
Aであってもよい。つまり、艶調整層の方が透明性表面保護層よりも低艶であってもよく、また透明性表面保護層の方が艶調整層よりも低艶であってもよい(なお、G
A<G
Pである場合は艶調整層が低艶の層であり、G
P<G
Aである場合は透明性表面保護層が低艶の層である)。前記(2)の場合、化粧シート又は化粧板のおもて面の面積1cm
2当たりに占める低艶の層が存在する領域の面積の割合が50%を超えていることが好ましい。
【0072】
本明細書において、化粧シート又は化粧板のおもて面の面積1cm
2当たりに占める透明性表面保護層が形成されている領域(透明性表面保護層が存在する領域)の面積の割合を、透明性表面保護層の占有面積割合と称する場合がある。前記透明性表面保護層の占有面積割合は、透明性表面保護層を形成するための版を作製する段階での製版データから算出している。前記透明性表面保護層の占有面積割合は、当該版の形状から算出することもできる。一方、化粧シート又は化粧板のおもて面の面積1cm
2当たりに占める、低艶の層が露出している領域の面積の割合(低艶の層の露出面積割合)は、(i)低艶の層が透明性表面保護層である場合は、前記透明性表面保護層の占有面積割合がそのまま前記低艶の層の占有面積割合となり、(ii)低艶の層が艶調整層である場合は、前記透明性表面保護層の占有面積割合を算出した後、100(%)に対して前記透明性表面保護層の占有面積割合を引く(マイナスする)ことにより得られる。
【0073】
艶調整層の形成方法は、特に限定されず、例えば、前述の絵柄模様層と同様、公知の着色剤(染料、顔料等)、ビヒクル等とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)させて得られるインキにより形成することができる。着色剤及び溶剤については、それぞれ前述の絵柄模様層における着色剤及び溶剤で例示された着色剤及び溶剤と同様のものを使用することができる。
【0074】
艶調整層を形成するインキのビヒクルとしてはウレタン系樹脂及び/又はポリビニルアセタール系樹脂を50質量%以上含有しているものが好ましい。前記ウレタン系樹脂は、ポリオール成分として、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等のポリオールと、イソシアネート成分として、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート等の脂肪族ないし脂環式イソシアネート等のイソシアネートとを反応させてなるウレタン樹脂(線状に架橋したもの、あるいは、網目状に架橋したもののいずれであってもよい)を挙げることができる。また、ポリビニルアセタール系樹脂は、ポリビニルアルコールとアルデヒド類との縮合(アセタール化)により得られる。ポリビニルアセタール系樹脂としては、ポリビニルホルマール(ホルマール樹脂)、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール(ブチラール樹脂)、ポリビニルへキシラール等を挙げることができる。中でも、溶剤に可溶でありインキ化し易く、視覚的凹凸感の発現(視覚的に凹部として認識されること)が良好であるなどの理由から、特にポリビニルブチラールが好ましい。
【0075】
また、必要に応じて、艶値を調整するため、不飽和ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の艶調整樹脂を混合して用いてもよい。艶調整樹脂を使用する場合、その混合割合はビヒクルの全量に対して10〜50質量%の範囲が好ましい。また、艶調整層を形成するインキは、無着色であっても、顔料等の着色剤を加えて着色したものであってもよいものである。
【0076】
また、艶調整層を形成するためのインキに体質顔料を配合してもよい。体質顔料を配合する場合、光の散乱を助長し、前記凹凸形状(ダク)消し効果を一層高めることができる。体質顔料としては特に限定されるものではないが、たとえば、シリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等から適宜選択される。これらの中で、吸油度、粒径、細孔容積等の材料設計の自由度が高く、意匠性、白さ、インキとしての塗布安定性に優れた材料であるシリカが好ましく、特に微粉末のシリカが好ましい。なお、体質顔料を使用する場合、その含有量は、体質顔料以外のインキ(インキ組成物)100質量部に対して5〜15質量部が好ましい。
【0077】
艶調整層の艶値G
Aは、上述のビヒクル、艶調整樹脂、着色剤(体質顔料含む)等の各物質の種類を選定する方法;上記各物質の含有量を適宜設定する方法;などによって、調整することができる。
【0078】
艶調整層の形成に用いる印刷法としては、例えば、前述の絵柄模様層の形成に用いる印刷法と同様、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、全面ベタ状の艶調整層を形成する場合は、絵柄模様層の形成における各種コーティング法と同様の方法が挙げられる。
【0079】
艶調整層がおもて面側の面の一部分に形成されている場合(前記(1)の場合)、艶調整層は絵柄状となるように形成されることが好ましい。特に、艶調整層は、ドット状、格子状、木目導管柄(状)等のパターン状に形成されていることがより好ましい。艶調整層が上記パターン状に形成されていることにより、艶調整層のある領域の艶が、艶調整層以外の領域(艶調整層のない領域)の艶よりも一層艶差が生じるので、凹部があるかのような目の錯覚を生じ独特の立体感として視認される。そのため、前記凹凸形状(ダク)がより一層目立たなくなる。
【0080】
本発明の化粧シートに前述の絵柄模様層が形成されている場合、艶調整層を当該絵柄模様層の模様に連動(同調)するように形成することが好ましい。例えば、絵柄模様層が木目模様調で形成されている場合、木目導管柄調にパターン印刷して艶調整層を形成することで、より意匠性に優れた化粧シートが得られる。
【0081】
艶調整層の厚さ(膜厚)としては、印刷適性や透明性表面保護層形成用樹脂組成物との相互作用を考慮すると0.5μm〜5μmが好ましい。
【0082】
(透明性表面保護層)
透明性樹脂層の上には、透明性表面保護層を形成する。
【0083】
本発明の化粧シートが前記艶調整層を有する場合、透明性表面保護層は前述の艶調整層と隣接するように形成されている。具体的には、透明性表面保護層の裏面及び/又は側面が前記艶調整層と隣接している。
【0084】
本発明の化粧シートは、透明性表面保護層として電離放射線硬化型樹脂を含有する透明性表面保護層を形成する。実質的には電離放射線硬化型樹脂から形成するのが好ましい。
【0085】
電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
【0086】
具体的には、前記プレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
【0087】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250〜100000程度が好ましい。
【0088】
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0089】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。また、チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
【0090】
電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
【0091】
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常190〜380nmが好ましい。
【0092】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。その中でも、特に100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましい。
【0093】
透明性表面保護層は、必要に応じて、耐侯剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤等を含んでもよい。耐候剤を含有する場合の種類、含有量については、透明性樹脂層における説明と同様である。
【0094】
透明性表面保護層は、例えば、透明性樹脂層の上又は艶調整層の上に電離放射線硬化型樹脂をグラビアコート、ロールコート等の公知の塗工法により塗工後、樹脂を硬化させることにより形成できる。電離放射線硬化型樹脂の場合には、電子線照射により樹脂を硬化させる。ここで、透明性表面保護層を化粧シートのおもて面側の面の一部分に形成する場合、前記透明性表面保護層形成用樹脂組成物を部分的に(例えば、パターン状に)塗工し、次いで前記樹脂組成物中の電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより前記透明性表面保護層を形成することができる。また、透明性表面保護層を化粧シートのおもて面側の全面に形成する場合、前記透明性表面保護層形成用樹脂組成物を全面に(全体にわたって)塗工し、次いで前記樹脂組成物中の電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより前記透明性表面保護層を形成することができる。
【0095】
透明性表面保護層の艶値G
Pは、透明性表面保護層に含まれる樹脂成分、添加剤等の各物質の種類を選定する方法;上記各物質の含有量を適宜設定する方法;などによって、調整することができる。
【0096】
透明性表面保護層の厚さは特に限定されず、最終製品の特性に応じて適宜設定できるが、通常0.1〜50μm、好ましくは1〜20μm程度である。
【0097】
(エンボス加工)
化粧シートの最表層側には、必要に応じてエンボス加工を施してもよい。
【0098】
エンボス加工方法は特に限定されず、例えば、透明性表面保護層のおもて面を加熱軟化させてエンボス版により加圧及び賦形した後、冷却する方法が好ましい方法として挙げられる。最終製品である化粧シート又は透明性表面保護層の材質によっては、例えば、透明性樹脂層又は艶調整層のおもて面を加熱軟化させてエンボス版により加圧及び賦形した後、その上に透明性表面保護層を形成してもよい。
【0099】
エンボス加工には、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機が用いられる。凹凸形状としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0100】
化粧板
本発明の化粧シートは、被着材と積層することにより化粧板を作製する用途に好適に用いることができる。本発明の化粧板は、本発明の化粧シートの透明性表面保護層が最表面層となるように、前記本発明の化粧シートを被着材上に積層することにより得られる。
【0101】
被着材としては、木質ボード(チップボード、木質繊維板(MDF、HDF等)及びこれらと木質単板又は木質合板との組み合わせ)を挙げることができる。これらの被着材の中で、チップボード(十点平均粗さRz
jis:80〜250μm程度)又はチップボードを表面に有する複合基材を用いた場合であっても、化粧シートとチップボードとの間の気泡の残存を抑制し、且つ、化粧板が良好な耐衝撃性、耐磨耗性及び歩行感を発揮することができる。なお、上記十点平均粗さRz
jisは、JIS B0601-2001に準拠した測定方法により測定した値である。
【0102】
被着材の形状は、通常はフローリング等への設置を考慮して平板とすればよい。
【0103】
被着材と化粧シートとを貼り合わせるには、接着剤を用いることができる。接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー、ブタジエン・アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム、ウレタン系反応型ホットメルト接着剤(PUR)等を有効成分とする公知の接着剤が使用できる。貼り合わせる際は、コールドプレス、ホットプレス、ロールプレス、ラミネーター、ラッピング、縁貼り機、真空プレス等の貼着装置を用いることができる。
【0104】
被着材と化粧シートとの接合後は、例えば、最終製品の特性に応じて、裁断、テノーナを用いてサネ加工、V字形状の溝加工、四辺の面取り加工(例えばC面取り加工)等を施してもよい。
【0105】
本発明の化粧板は、化粧シート側から被着材に至る溝部及び/又は面取り部を設けて、当該溝部及び面取り部を着色塗料によって塗装してもよい。
【0106】
溝部及び面取り部を塗装するための着色塗料は、例えば、前記接着剤層にも使用できる着色剤をビヒクルに溶解又は分散させることによりインキ化したものが使用できる。着色剤の例示については前記と同じである。ビヒクルとしては、例えば、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。これらのビヒクルは、単独又は2種以上を混合して使用できる。なお、着色塗料には、前記の通り、改質樹脂層のシラノール基と化学的に結合するイソシアネートなどの硬化剤を含有するものを採用することが好ましい。その他、溶剤や補助剤等を必要に応じて添加することもできる。
【実施例】
【0107】
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより詳しく説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
なお、実施例1〜11は参考例である。
【0108】
実施例1〜2及び比較例1〜3
≪化粧シートの作製≫
透明性基材層(層厚40μm、ランダムPP、マルテンス硬さ20N/mm
2、詳細は表1)にコロナ放電処理を施した後、透明性基材層上に木目導管の絵柄模様層(層厚2μm)を形成し、透明性基材層の裏面に裏面プライマー層(層厚2μm)を形成した。
【0109】
絵柄模様層の上に透明性接着剤層(層厚3μm)を形成した。透明性接着剤層上に透明性熱可塑性ポリオレフィン(詳細は表1)をTダイ押出し機により加熱溶融押出しし、透明性樹脂層(厚さ60μm)を形成した。
【0110】
更に、透明性樹脂層上にプライマー層(層厚2μm)を形成し、プライマー層上に電離放射線硬化型樹脂を厚さ15μmでグラビアコート法にて塗工し、乾燥させ未硬化の電離放射線硬化型樹脂層を形成した。その後、酸素濃度100ppmの雰囲気下において未硬化の電離放射線硬化型樹脂層に加速電圧165KeV及び5Mrad(50kGy)の条件で電子線を照射して樹脂を硬化させて透明性表面保護層(層厚は表1)を形成した。さらに、透明性表面保護層側を赤外線非接触方式のヒーターで加熱することにより透明性基材層及び透明性樹脂層を柔らかくした後、直ちにエンボス加工を施すことで、エンボス模様(木目模様の凹凸模様)を形成した。以上により、各化粧シートを得た。なお、実施例1における透明性表面保護層の艶値(入射角60°)を、日本電色工業株式会社製PG−3Dを使用して測定したところ、前記艶値(G
P)は13であった。
【0111】
実施例3
まず、裏面プライマー層、透明性基材層、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及びプライマー層を形成した。前記各層は、それぞれ、実施例1と同様の方法により形成した。
【0112】
次いで、前記プライマー層のおもて面に対して、化粧シートの透明性表面保護層側の面1cm
2当たりに占める艶調整層の面積の割合が50%となるように(最終的に作製される化粧シートのおもて面から見たときの艶調整層の占有面積割合が50%となるように)パターン状の艶調整層を形成した。なお、前記艶調整層は、マットインキ(数平均分子量3000、ガラス転移温度(Tg)−62.8℃のポリエステルウレタン系印刷インキ100質量部に対して、シリカ粒子10質量部を配合した印刷インキ組成物)を用いて、グラビア印刷法にて乾燥後の艶調整層の厚さが2μmとなるように木目導管柄を塗布することによって形成した。
【0113】
次に、前記艶調整層の上に、透明性表面保護層を全面に形成した後、さらに前記透明性表面保護層側に対してエンボス模様を形成した。前記透明性表面保護層、及び前記エンボス模様は、それぞれ、実施例1と同様の方法により形成した。
【0114】
以上により、実施例3の化粧シートを得た。
【0115】
なお、前記透明性表面保護層形成用樹脂組成物を塗布する前に、艶調整層に対して入射角60°で光を入射した時の艶値を測定したところ、前記艶値(G
A)は2であった。また、前記化粧シートとは別に、艶調整層を形成しない以外は実施例3の化粧シートと同様の化粧シートを、透明性表面保護層の艶値測定用として作製した。当該測定用化粧シートの透明性表面保護層に対して入射角60°で光を入射した時の艶値を測定したところ、前記艶値(G
P)は13であった。実施例3の化粧シートにおける艶調整層及び透明性表面保護層の艶値(入射角60°)は、それぞれ上記艶値をもって決定した。艶値(入射角60°)は、日本電色工業株式会社製PG−3Dを使用して測定した。
【0116】
実施例4
まず、裏面プライマー層、透明性基材層、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及びプライマー層を形成した。前記各層は、それぞれ、実施例1と同様の方法により形成した。
【0117】
次いで、前記プライマー層のおもて面の全面に対して艶調整層(乾燥後の厚さ:2μm)を形成した。なお、前記艶調整層の形成に際には、実施例3で使用したマットインキと同様のインキを使用した。
【0118】
次に、前記艶調整層の上に、化粧シートの透明性表面保護層側の面1cm
2当たりに占める透明性表面保護層の面積の割合が30%となるように(艶調整層が露出している領域の面積の割合(低艶の層の露出面積割合)が70%となるように)パターン状の透明性表面保護層を形成した。なお、前記透明性表面保護層の形成の際には、実施例1で使用した透明性表面保護層形成樹脂組成物と同様の樹脂組成物を使用した。また、電子線硬化型樹脂の硬化についても実施例1と同様の方法により行った。
【0119】
次に、前記透明性表面保護層側に対してエンボス模様を形成した。前記エンボス模様は、実施例1と同様の方法により形成した。
【0120】
以上により、実施例4の化粧シートを得た。
【0121】
なお、前記透明性表面保護層形成用樹脂組成物を塗布する前に、艶調整層に対して入射角60°で光を入射した時の艶値を測定したところ、前記艶値(G
A)は2であった。また、前記化粧シートとは別に、艶調整層を形成しない以外は実施例4の化粧シートと同様の化粧シートを、透明性表面保護層の艶値測定用として作製した。当該測定用化粧シートの透明性表面保護層に対して入射角60°で光を入射した時の艶値を測定したところ、前記艶値(G
P)は13であった。実施例4の化粧シートにおける艶調整層及び透明性表面保護層の艶値(入射角60°)は、それぞれ上記艶値をもって決定した。艶値(入射角60°)は、日本電色工業株式会社製PG−3Dを使用して測定した。
【0122】
実施例5〜12
裏面プライマー層、透明性基材層、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層、プライマー層及び透明性表面保護層を、それぞれ、実施例1と同様の方法により形成した。透明性基材層及び透明性樹脂層の種類、厚み及びマルテンス硬さは、表3及び4のとおりである。さらに、透明性表面保護層側に対して、実施例1と同様の方法によりエンボス模様を形成して化粧シートを得た。
【0123】
≪化粧シート及び化粧板の特性≫
上記で作製した各化粧シート(実施例1〜12及び比較例1〜3)の耐衝撃性、耐磨耗性を調べた。また、上記で作製した各化粧シートをチップボード(コルクボード、十点平均粗さRz
jis:150μm)に積層した際のラミネート性(気泡の残存の有無)及び歩行感を調べた。また、上記で作製した各化粧シート(実施例1、3及び4)を表面粗さの粗い被着材に積層した際の化粧板の表面状態及び意匠性を調べた。各試験方法及び評価結果を以下に示す。
【0124】
耐衝撃性(デュポン衝撃試験)
JIS K5600のデュポン衝撃試験に従って、各化粧シート表面上に、半径6.3mmの半球形状の先端を有した撃ち型を静置させ、前記撃ち型上に500g荷重のおもりを高さ300mm又は500mmから落下させることにより評価した。
【0125】
評価基準は、以下の通りである。
A+:500mmの高さから落下させた結果、化粧シートの割れが認められなかった。
A :300mmの高さから落下させた結果、化粧シートの割れが認められなかった。
B :300mmの高さから落下させた結果、化粧シートに僅かな割れが認められた。
C :300mmの高さから落下させた結果、化粧シートに明確な割れが認められた。
【0126】
耐摩耗性(テーバー磨耗試験)
テーバー式摩耗試験機(理学工業(株)製)摩耗輪(S−42)を用いて荷重1kgで試験を行い、絵柄模様層が半分摩耗するまでの回転回数を評価した。
A+:4000回転以上
A :1000回転以上
C :1000回転未満
【0127】
ラミネート性
チップボード(コルクボード)にエマルジョン接着剤(主剤:BA-10、硬化剤:BA-11B(中央理科))を6〜7g/30cm
2塗布し、化粧シートをラミネートした。得られた化粧板を室温で20kg/30cm
2の荷重をかけて3日間養生後、表面状態を目視で観察した。
A:化粧シートとチップボードとの間に気泡の残存が認められなかった。
B:化粧シートとチップボードとの間にわずかな気泡の残存が認められた。
C:化粧シートとチップボードとの間に気泡の残存が認められた。
【0128】
歩行感
作製した化粧板の上を、無作為に選んだ10人に歩いてもらい、一般的な突板フロア(東洋テックス株式会社製「ダイヤモンドフロアーHA8」)と比較して歩き易さ(踏み込みに対する床材の人への反応)を評価した。
A:突板フロアよりも歩きやすい。
B:突板フロアと同等の歩きやすさである。
C:突板フロアよりも歩き難い。
【0129】
化粧板の表面状態(表面粗さの粗い被着材の表面凹凸表出抑制評価)
コルクボードよりも表面粗さの粗い被着材(表面粗さRzが通常の被着材の2倍以上である被着材)を用意した。次に、前記被着材の上に水性エマルジョン接着剤(中央理化工業株式会社製リカボンドBA−10L (主剤):BA−11B (硬化剤))を6〜7g/30cm
2塗布した後、実施例1、3及び4の各化粧シートをラミネートし、さらに室温で3日間養生することにより各化粧板を作製した。各化粧板の表面状態を目視により観察し、以下の評価基準に従って評価した。なお、下記評価基準において、B以上の評価であれば実際の使用状況において問題がない表面状態である。
A+:被着材の凹凸形状が表出していない。
A :被着材の凹凸形状が僅かに表出している。
B :被着材の凹凸形状が若干表出している。
C :被着材の凹凸形状が前記B評価の場合よりも表出している。
【0130】
化粧シートの意匠性評価
まず、上述の「化粧板の表面状態(の評価)」に記載の方法と同様の方法により、各化粧板を作製した。次いで、成人男女20人が前記各化粧板の外観を観察し、木の質感が表現できているか否かを、以下の評価基準で評価した。なお、下記評価基準において、B以上の評価であれば実際の使用状況において問題がない表面状態である。
A+:木の質感が表現できていると判断した成人男女が9割以上。
A :木の質感が表現できていると判断した成人男女が7割以上。
B :木の質感が表現できていると判断した成人男女が5割以上。
C :木の質感が表現できていると判断した成人男女が5割未満。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
【表3】
【0134】
【表4】
【0135】
〔表1〜4中のPP樹脂の種類は次の通りである。
PP樹脂A:ランダムポリプロピレン樹脂
PP樹脂B:ポリオレフィン熱可塑性エラストマー
PP樹脂C:ホモポリプロピレン樹脂〕