特許第6791246号(P6791246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791246
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】ケアサポートシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   A61B5/00 102C
   A61B5/00 C
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-523680(P2018-523680)
(86)(22)【出願日】2017年6月7日
(86)【国際出願番号】JP2017021042
(87)【国際公開番号】WO2017217285
(87)【国際公開日】20171221
【審査請求日】2020年5月12日
(31)【優先権主張番号】特願2016-117050(P2016-117050)
(32)【優先日】2016年6月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠田 将之
(72)【発明者】
【氏名】木戸 稔人
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012-75861(JP,A)
【文献】 特開2011-122732(JP,A)
【文献】 特開2007-313989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波の放射および受信によって居室内の動体を検出する電波検出部を有する動体検知ユニットと、
居室内に設置される少なくとも1つの外部機器の動作を制御する外部機器制御部とを備え、
前記外部機器制御部は、前記電波検出部からの検出信号に基づいて、居室内のノイズレベルを検出するとともに、前記ノイズレベルが閾値以上である場合に、前記少なくとも1つの外部機器の動作を変化させて前記ノイズレベルの変化の有無を判断することにより、前記外部機器の中で、前記ノイズレベルが上昇する要因となる外乱ノイズを生じさせる外乱発生機器を特定し、前記電波検出部によって居室内の被検者の生体情報を検出する検出期間において、前記ノイズレベルが該ノイズレベルの検出時よりも低下するように、特定した前記外乱発生機器の動作を制御することを特徴とするケアサポートシステム。
【請求項2】
少なくとも1つの前記動体検知ユニットと通信回線を介して接続されるサーバーを含み、
前記サーバーが、前記外部機器制御部を兼ねており、有線通信または無線通信により、特定した前記外乱発生機器の動作を制御することを特徴とする請求項1に記載のケアサポートシステム。
【請求項3】
前記動体検知ユニットは、赤外線を発光する照明部と、前記照明部を制御する照明制御部とを有しており、
前記照明制御部が、前記外部機器制御部を兼ねており、前記照明部における赤外線の発光を制御して赤外線通信を行うことにより、特定した前記外乱発生機器の動作を制御することを特徴とする請求項1に記載のケアサポートシステム。
【請求項4】
前記外部機器制御部は、前記検出期間において、特定した前記外乱発生機器の動作を停止させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のケアサポートシステム。
【請求項5】
前記外部機器制御部は、前記検出期間において、前記ノイズレベルが該ノイズレベルの検出時よりも低下するように、特定した前記外乱発生機器の風量を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のケアサポートシステム。
【請求項6】
前記外部機器制御部は、前記検出期間において、前記ノイズレベルが該ノイズレベルの検出時よりも低下するように、特定した前記外乱発生機器の風向を制御することを特徴とする請求項1から3、5のいずれかに記載のケアサポートシステム。
【請求項7】
前記外部機器制御部は、前記外部機器の動作を稼働と停止とで切り替えることにより、前記ノイズレベルの変化の有無を判断することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のケアサポートシステム。
【請求項8】
前記外部機器制御部は、前記外部機器の風量を変化させることにより、前記ノイズレベルの変化の有無を判断することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のケアサポートシステム。
【請求項9】
前記外部機器制御部は、前記外部機器の風向を変化させることにより、前記ノイズレベルの変化の有無を判断することを特徴とする請求項1から6、8のいずれかに記載のケアサポートシステム。
【請求項10】
前記外部機器制御部は、前記電波検出部にて検出された被検者の前記生体情報の信号をフーリエ変換したスペクトルの高周波領域のパワーレベルが、前記閾値以上であるか否かを判断することにより、前記ノイズレベルが閾値以上であるか否かを判断することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のケアサポートシステム。
【請求項11】
前記外部機器制御部は、前記検出期間の経過後、前記外乱発生機器の動作を元に戻すことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のケアサポートシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、居室内での被介護者の日常の生活を支援するケアサポートシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドップラーセンサなどの非接触型センサ(以下、単にセンサとも称する)を用いて、人の呼吸、心拍などの生体情報を検知するとともに、検知した生体情報に基づいて居室内の機器の運転を制御する技術が知られている。例えば特許文献1では、冷房運転および暖房運転(以下、空調運転と称する)を行う空気調和器にセンサを設け、居室内に人がいないときに空調運転をテストモードで実行し、テストモードで生じた空気調和器の振動を人の生体情報としてセンサが誤検知するときの運転条件を、特定運転条件としてメモリに記憶させている。そして、居室内に人が実際にいるとき、空気調和器は、上記特定運転条件を避けた条件で空調運転を行うようにしている。つまり、居室内に人がいるときには、センサが誤検知しないような条件で空調運転が行われる。これにより、空調運転中でも、常に正確な生体情報をセンサにて検知でき、検知した生体情報に基づいて正確な空調制御を行うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5089676号公報(請求項1、段落〔0001〕〜〔0008〕、〔0012〕、〔0020〕〜〔0032〕、図1図4等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、介護施設や病院などにおいて、被介護者や患者(以下では、これらをまとめて被検者とも称する)の室内での転倒や、ベッドからの転落を監視したり、被検者の生体情報(呼吸状態など)を管理することを目的として、室内をカメラで撮影し、画像認識によって被検者の状態および動作を認識したり、ドップラーセンサを用いて被検者の生体情報を検出するシステム(ケアサポートシステム)が利用されつつある。上記した特許文献1の技術は、センサによる生体情報の検知精度を上げることができる点で、上記システムにおいても非常に有効であるとも考えられる。
【0005】
ところが、特許文献1では、センサの誤検知の原因が、センサが内蔵された機器(空気調和器)自身にある場合しか考慮されておらず、上記原因となるノイズが、空気調和器以外の機器の運転によって生ずるものである場合は、空気調和器の運転をいくら制御しても、上記ノイズを抑えることができない。その結果、上記ノイズによってセンサが生体情報を正確に検出することができなくなる。
【0006】
なお、空気調和器以外の機器の運転によって生ずる上記ノイズとしては、例えば、居室内の扇風機の風による、カーテンの揺れや居室内に吊るされた衣類の揺れ等がある。ドップラーセンサなどの非接触型センサは、動体を検知するセンサであるが、カーテン等の揺れは動体であるため、センサがこのようなカーテン等の揺れを、生体情報として誤検知してしまう。
【0007】
したがって、センサが生体情報を精度よく検出するためには、センサの誤検知の原因となるノイズを生じさせる機器が何であっても、そのノイズを発生する機器の動作を制御して、ノイズの発生を抑えることが望まれる。しかし、このような機器の制御は、従来は未だ提案されていない。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、センサの誤検知の原因となるノイズを生じさせる機器が何であっても、その機器の動作を制御してノイズの発生を抑え、これによってセンサでの生体情報の検出精度を向上させることができるケアサポートシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係るケアサポートシステムは、電波の放射および受信によって居室内の動体を検出する電波検出部を有する動体検知ユニットと、居室内に設置される少なくとも1つの外部機器の動作を制御する外部機器制御部とを備え、前記外部機器制御部は、前記電波検出部からの検出信号に基づいて、居室内のノイズレベルを検出するとともに、前記ノイズレベルが閾値以上である場合に、前記少なくとも1つの外部機器の動作を変化させて前記ノイズレベルの変化の有無を判断することにより、前記外部機器の中で、前記ノイズレベルが上昇する要因となる外乱ノイズを生じさせる外乱発生機器を特定し、前記電波検出部によって居室内の被検者の生体情報を検出する検出期間において、前記ノイズレベルが該ノイズレベルの検出時よりも低下するように、特定した前記外乱発生機器の動作を制御する。
【発明の効果】
【0010】
上記の構成によれば、電波検出部の誤検知の原因となる外乱ノイズを生じさせる外部機器(外乱発生機器)が何であっても、その外乱発生機器を特定して、その動作制御によってノイズの発生を抑えることができる。これにより、電波検出部での生体情報の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の一形態に係るケアサポートシステムの概略の構成を示す説明図である。
図2】上記ケアサポートシステムの動体検知ユニットが設置された居室内の様子を模式的に示す説明図である。
図3】上記動体検知ユニットの概略の構成を示すブロック図である。
図4】上記動体検知ユニットが有する光学検出部の詳細な構成を示すブロック図である。
図5】上記光学検出部での撮影によって取得された画像の一例を模式的に示す説明図である。
図6】上記動体検知ユニットの電波検出部から出力される、無人のときの検出信号のフーリエ変換スペクトルの一例を示す説明図である。
図7】被介護者の呼吸状態を検出したときの検出信号のフーリエ変換スペクトルを示す説明図である。
図8】無人でカーテンが揺れているときの検出信号のフーリエ変換スペクトルを示す説明図である。
図9】カーテンの揺れによる検出信号のSN比の低下を説明するための説明図である。
図10】無人のとき、および呼吸状態の検出時のそれぞれにおいて検出される各検出信号のフーリエ変換スペクトルを、高周波領域を拡大して示す説明図である。
図11】カーテンの揺れがあるときの上記各検出信号のフーリエ変換スペクトルを示す説明図である。
図12】上記ケアサポートシステムの動作の流れを示すフローチャートである。
図13】上記ケアサポートシステムの動作の流れを示すフローチャートである。
図14】本発明の他の実施の形態に係るケアサポートシステムの概略の構成を示す説明図である。
図15】上記ケアサポートシステムの動体検知ユニットの構成を示すブロック図である。
図16】上記ケアサポートシステムの動作の流れを示すフローチャートである。
図17】上記ケアサポートシステムの動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本明細書において、数値範囲をA〜Bと表記した場合、その数値範囲に下限Aおよび上限Bの値は含まれるものとする。
【0013】
[実施の形態1]
〔ケアサポートシステム〕
図1は、本実施形態のケアサポートシステム1の概略の構成を示す説明図である。ケアサポートシステム1は、介護施設に入居している被介護者や、病院に入院している患者(被看護者)の日常の生活を支援するためのシステムであり、見守りシステムとも呼ばれている。被介護者および被看護者は、ケアサポートシステム1による支援の対象、つまり、後述する画像認識システム20や電波検出部30での認識や検出等によって管理される対象者(被検者)である。ここでは、例として、ケアサポートシステム1が介護施設内で構築されている場合について説明する。
【0014】
介護施設には、スタッフステーション100および居室101が設けられている。スタッフステーション100は、介護施設で過ごす被介護者の生活をサポートする介護者のいわゆる詰め所である。このスタッフステーション100には、サーバー100aおよび表示部100bが設けられている。サーバー100aは、通信回線200を介して、居室101に設置される後述の動体検知ユニット10と通信可能に接続される端末装置であり、中央演算処理装置(CPU;Central Processing Unit)を含んで構成される。なお、通信回線200は、例えば有線LAN(Local Area Network)で構成されるが、無線LANであっても勿論構わない。
【0015】
サーバー100aは、通信回線200を介して、動体検知ユニット10から送信される各種の情報(例えば居室101内の撮影画像や被介護者の生体情報(例えば呼吸状態))を受信して管理するとともに、受信した情報を表示部100bに表示する処理を行う。これにより、介護施設の介護者は、表示部100bに表示された情報を見て、被介護者の健康状態等を把握することができる。表示部100bは、例えばパーソナルコンピュータのディスプレイで構成することができる。また、後述する画像認識システム20での画像認識処理により、被介護者が床面で転倒するなど、被介護者の動作が異常であることが認識されたときには、サーバー100aは、動体検知ユニット10からその旨の情報を受信して、動体検知ユニット10の光学検出部23で取得される居室101内の撮影画像のデータを、介護者が所有する携帯端末に送信し、被介護者の異常を介護者に知らせることも可能である。なお、サーバー100aから上記携帯端末への画像データの送信時には、画像のサイズや解像度は適宜調整される。
【0016】
本実施形態では、サーバー100aは、居室101内に設置される少なくとも1つの外部機器の動作を制御する外部機器制御部を兼ねている。なお、サーバー100aによる外部機器の制御の詳細については後述する。
【0017】
居室101内に設置される少なくとも1つの外部機器としては、ここでは、外部機器A1(例えば空気調和器)、外部機器A2(例えば扇風機)、外部機器A3(例えば蒸気加湿器)、の3つを例として挙げる。なお、さらに他の外部機器が居室101内に設けられていてもよいし、これらのうちのいずれか1つのみ(例えば外部機器A1のみ)が居室101内に設けられていてもよい。
【0018】
居室101は、介護施設において少なくとも1つ設けられており、図1では例として居室101が2つ設けられている場合を示している。居室101内には、被介護者が使用するベッド102が1つ設置されている。なお、1つの居室101内に被介護者が二人以上入居する場合、被介護者の各々に対応する複数のベッド102が設置される。
【0019】
図2は、動体検知ユニット10が設置された居室101内の様子を模式的に示す説明図である。図1および図2に示すように、動体検知ユニット10は、各居室101の天井部101aに設置され、通信回線200と通信可能に接続されている。居室101が複数のベッド102が設置された多床室である場合、動体検知ユニット10は1つのベッド102に対して1つ設置される。
【0020】
上述したケアサポートシステム1は、少なくとも1つの居室101に設置される動体検知ユニット10(少なくとも1つの動体検知ユニット10)と、スタッフステーション100に設けられたサーバー100aとを、通信回線200を介して通信可能に接続して構成されている。
【0021】
〔動体検知ユニットおよび画像認識システム〕
次に、上記した動体検知ユニット10の詳細について説明する。図3は、動体検知ユニット10の概略の構成を示すブロック図である。動体検知ユニット10は、居室101内の被介護者の情報を検知するユニットであり、画像認識システム20、電波検出部30およびユニット制御部40を備えている。なお、画像認識システム20の詳細については後述する。動体検知ユニット10は、上記の電波検出部30をはじめ、後述する光学検出部23など、種々のセンサを備えていることから、センサボックスとも呼ばれる。
【0022】
電波検出部30は、電波の放射および受信によって居室101内の動体を検出するセンサである。本実施形態では、電波検出部30は、電波を放射および受信して被介護者の生体情報を個別に検出するためのマイクロ波ドップラーセンサによって構成される。電波検出部30は、不図示の放射部および受信部を備えており、例えば24GHz帯のマイクロ波を各居室のベッドに向けて放射し、被介護者にて反射してドップラーシフトした反射波を受信する。これにより、電波検出部30は、受信した反射波から被介護者の呼吸状態や睡眠状態、心拍数などを検出することができる。
【0023】
なお、被介護者が呼吸しているとき(睡眠中も含む)、被介護者の呼吸による体の微小な動き(微体動)が生じる。このため、被介護者の呼吸状態や睡眠状態を検出することは、被介護者の微体動を検出するのと同じである。このことから、電波検出部30は、被介護者(被検者)の微体動を検出する微体動検出部として機能しているとも言うことができる。
【0024】
ユニット制御部40は、画像認識システム20および電波検出部30の動作を制御するとともに、画像認識システム20および電波検出部30から得た情報に対して画像処理や信号処理を行い、得られた結果を被介護者の状態に関する情報としてサーバー100aに出力する制御基板である。このユニット制御部40は、主制御部41、情報処理部42、インターフェース部43、記憶部24および画像認識部25を備えている。記憶部24および画像認識部25は、ここではユニット制御部40に設けられているが、ユニット制御部40とは独立して設けられていてもよい。なお、記憶部24および画像認識部25の詳細については後述する。
【0025】
主制御部41は、動体検知ユニット10内の各部の動作を制御するCPUで構成されている。情報処理部42および画像認識部25は、上記のCPUで構成されてもよいし(主制御部41と一体化されていてもよいし)、他の演算部や、特定の処理を行う回路で構成されてもよい。
【0026】
情報処理部42は、画像認識システム20の後述する光学検出部23から出力される情報(例えば画像データ)や、電波検出部30から出力される情報(例えば呼吸状態に関するデータ)に対して、所定のアルゴリズムに基づいた信号処理を行う。信号処理によって得られた情報は、画像認識システム20(特に画像認識部25)での画像認識に利用される。
【0027】
インターフェース部43には、通信回線200のネットワークケーブル(不図示)が電気的に接続される。画像やマイクロ波に基づいて動体検知ユニット10が検出した被介護者の状態に関する情報は、インターフェース部43および通信回線200を介してサーバー100aに送信される。
【0028】
次に、画像認識システム20の詳細について説明する。画像認識システム20は、照明部21、照明制御部22および光学検出部23を備えている。
【0029】
照明部21は、暗闇での撮影を可能にすべく、赤外線(例えば近赤外光)を発光するLED(Light Emitting Diode)を含んで構成されており、居室101の天井部101aの中央部に位置して、居室101内を照明する。例えば、照明部21は、複数のLEDを有しており、居室101内の床面101b(図2参照)や、天井部101aと床面101bとをつなぐ壁を照明するとともに、居室101内に設置された外部機器A1〜A3(図1参照)を赤外線で照明することが可能となっている。なお、外部機器A1〜A3を赤外線で照明するのは、外部機器A1〜A3の動作を赤外線通信によって制御できるようにするためであるが、これについては、後述する実施の形態2で説明する。いずれにしても、照明部21による照明(赤外線の発光)の制御は、照明制御部22によって行われる。
【0030】
光学検出部23は、照明部21の照明のもとで居室101内を撮影して画像を取得する撮像部であり、例えばカメラで構成される。図4は、光学検出部23の詳細な構成を示すブロック図であり、図5は、光学検出部23での撮影によって取得された画像の一例を模式的に示している。光学検出部23は、居室101の天井部101aの中央部に、照明部21と隣接して配置されており、撮影によって視野方向が直下である直上視点の画像を取得する。この光学検出部23は、レンズ51、撮像素子52、AD変換部53、画像処理部54および制御演算部55を備えている。
【0031】
レンズ51は、例えば固定焦点レンズであり、一般的な超広角レンズや魚眼レンズで構成されている。超広角レンズとしては、対角画角が150°以上のレンズを用いることができる。これにより、図5で示したように、天井部101aから居室101の全体を撮影することが可能となり、室内の被介護者と部屋全体とを死角レスで撮影することが可能となる。
【0032】
撮像素子52は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)といったイメージセンサで構成されている。撮像素子52は、真っ暗な環境でも被介護者の状態が画像として検出できるように、IRカットフィルタを除去して構成されている。撮像素子52からの出力信号は、AD変換部53に入力される。
【0033】
AD変換部53は、撮像素子52によって撮像された画像のアナログの画像信号を受信し、そのアナログの画像信号をデジタルの画像信号に変換する。AD変換部53から出力されるデジタルの画像信号は、画像処理部54に入力される。
【0034】
画像処理部54は、AD変換部53から出力されるデジタルの画像信号を受信し、そのデジタルの画像信号に対して、例えば黒補正、ノイズ補正、色補間、ホワイトバランスなどの画像処理を実行する。画像処理部54から出力される画像処理後の信号は、画像認識部25に入力される。
【0035】
制御演算部55は、撮像素子52の制御に関する例えばAE(Automatic Exposure)などの演算を実行するとともに、撮像素子52に対して露光時間やゲインなどの制御を実行する。また、制御演算部55は、必要に応じて、照明部21に対して好適な光量設定や配光設定などの演算を実行するとともに、制御を実行する。なお、制御演算部55に、上述の照明制御部22の機能を持たせるようにしてもよい。
【0036】
上記した画像認識システム20は、さらに、上述した記憶部24および画像認識部25を備えている。
【0037】
記憶部24は、ユニット制御部40が実行する制御プログラムや各種の情報を記憶するメモリであり、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、不揮発性メモリなどで構成されている。
【0038】
画像認識部25は、光学検出部23にて取得された画像の画像データに対して画像認識処理を行う。より具体的には、画像認識部25は、光学検出部23の画像処理部54が画像処理を実行した後の信号を受信し、例えば対象物の輪郭を抽出してパターンマッチング等の手法で形状を認識する画像認識処理を実行する。これにより、画像認識部25は、居室101内にいる被介護者の状態を認識することができる。
【0039】
ここで、居室101内にいる被介護者の状態としては、起床、離床、入床、転倒などが想定される。起床は、被介護者が目を覚ましてから、ベッドの上で体を起こすまでの状態を指す。離床は、被介護者がベッドの上で体を起こしてから、床面に降りてベッドから離れるまでの状態を指す。入床は、被介護者が床面からベッドの上に上がり、横になるまでの動作を指す。転倒は、被介護者が床面上で転倒する動作を指す。上記の起床、離床、入床、転倒は、被介護者の体の大きさ動作(体動)を伴う点で、電波検出部30で検出される微体動(呼吸等による体の微小な動き)と区別される。
【0040】
〔生体情報の検出信号およびノイズレベルについて〕
本実施形態では、電波検出部30は、電波を放射および受信して、居室101内の被介護者の生体情報を周期的に検出するようにしている。
【0041】
ここで、生体情報を周期的に検出するとは、生体情報の検出期間と非検出期間とが周期的に繰り返されることを意味する。生体情報の検出期間および非検出期間は、それぞれ例えば1分であってもよいし、2分であってもよいし、他の時間であってもよい。また、生体情報の検出期間と非検出期間とは、同じ時間であってもよいし、異なる時間であってもよい。さらに、検出期間では、例えば1分ずつの生体情報の検出を5回行って、その平均値を求めるなどの処理を行ってもよい。
【0042】
電波検出部30で検出される信号(データ)は、時系列の(連続した)振幅データとして得られるが、これらのデータをフーリエ変換することにより、周波数領域での信号解析が可能となる。例えば、居室101内に被介護者がいないとき、電波検出部30にて検出された信号のフーリエ変換スペクトルは、図6のような波形として得られる。なお、図6の縦軸のパワーレベルは、便宜的に、電波検出部30にて検出される電波の強さ(dB)に対応する任意単位(arbitary unit)で示している(他の図面でも同様とする)。すなわち、図6で示したスペクトルが、無人のときに検出されるノイズレベル(背景ノイズ)である。
【0043】
一方、ベッド102で寝ている被介護者の呼吸状態を電波検出部30が検出しているとき、検出信号のフーリエ変換スペクトルは、例えば図7のような波形となり、無人のときのノイズレベルに、呼吸信号が上乗せされたようなスペクトルとなる。このとき、呼吸周波数(0.2Hz付近)での信号レベルと、無人のときのノイズレベルとの比がSN比となり、このSN比が大きいほど、呼吸状態の検出精度が高くなる。
【0044】
ベッド102で被介護者が寝ていない状態で、居室101内の外部機器(例えば扇風機)から吹き出す風によって居室101内のカーテンが揺れている場合、このカーテンの揺れを電波検出部30が検出すると、検出信号のフーリエ変換スペクトルは、図8に示すように、ホワイトノイズのような形になる(カーテンの動きが異なる様々な周波数成分を含んでいるため)。つまり、カーテンが揺れていると、検出信号(ノイズレベル)は上昇する。
【0045】
カーテンが揺れているときに、電波検出部30が、ベッド102で寝ている被介護者の呼吸状態を検出すると、図9に示すように、本来の(カーテンの揺れがないときの)呼吸の検出信号に比べてノイズレベル(ホワイトレベル)が上昇するため、検出信号のSN比は、図7に比べてSN比が悪くなる。つまり、呼吸状態の検出精度が悪化する。さらに、カーテンの動きが大きくなったり、呼吸状態の検出信号が小さくなったりすると、その検出信号がノイズレベルに完全に埋もれてしまい、呼吸状態を検出することができなくなる。
【0046】
そこで、外部機器制御部としてのサーバー100aは、電波検出部30が被介護者の呼吸状態等の生体情報を検出する期間において、ノイズレベルが上昇(悪化)したと判断したときに、ノイズレベルを上昇させる外部機器(外乱発生機器)を絞り込んで特定し、特定した外部機器の動作を停止させる等の制御を行う。ノイズレベルが上昇したかどうかの判断は、例えば以下のようにして簡易的に行うことができる。
【0047】
図10は、電波検出部30にて取得される検出信号のフーリエ変換スペクトルを、無人のとき、および被介護者の呼吸検出時のそれぞれにおいて、特に高周波領域(例えば16Hz〜32Hz)について拡大して同時に示したものである。なお、図10では、カーテンの揺れがない状態でのスペクトルとする。同図に示すように、高周波領域では、無人のときのスペクトル(ノイズレベル、背景レベル)と、呼吸検出時のスペクトル(パワーレベル)とが、ほぼ一致している。これは、人の呼吸周波数は、ほぼ0.2Hzのあたりに現れ、高周波数で呼吸する人はいないためである。したがって、電波検出部30からの出力信号に呼吸信号が入っていても、フーリエ変換後のスペクトルの高周波領域には影響がない。このことを利用すると、外部機器制御部としてのサーバー100aは、以下のようにしてノイズレベルの上昇を検出することができる。
【0048】
例えば、外乱ノイズ(カーテンの揺れ)がないときのスペクトル(背景レベル、呼吸検出時のいずれのスペクトルでもよい)において、高周波領域でのパワーレベルPL0を基準とし、基準PL0よりも所定量高いパワーレベルを、閾値NLとして予め設定しておく。外部機器制御部(サーバー100a)は、電波検出部30が呼吸状態を検出するごとに、呼吸状態の検出信号の高周波領域におけるパワーレベルが閾値NL以上であるか否かを判断する。図11に示すように、上記検出信号の高周波領域におけるパワーレベルが閾値NL以上であれば、ノイズレベルも同様に上記高周波領域で閾値NL以上に上昇していることになるため、外乱ノイズによるノイズレベルの上昇を検出することができる。
【0049】
つまり、外部機器制御部としてのサーバー100aは、電波検出部30にて検出された被介護者の生体情報の信号をフーリエ変換したスペクトルの高周波領域のパワーレベルが、閾値NL以上であるか否かを判断することにより、ノイズレベルが閾値NL以上であるか否かを判断してノイズレベルの上昇を検出(判断)することができる。また、居室内101内での被介護者の有無、および生体情報の検出期間/非検出期間に関係なく、電波検出部30にて電波の検出を常時行い、検出信号をサーバー100aにてフーリエ変換して上記と同様の判断を行うことにより、外乱ノイズによるノイズレベルの上昇を常時監視することができる。
【0050】
〔サーバーによる外部機器の制御について〕
次に、上記したサーバー100aによる外部機器の制御について説明する。なお、ここでは、前提として、図1で示したように、外部機器A1(例えば空気調和器)、外部機器A2(例えば扇風機)、外部機器A3(例えば蒸気加湿器)が居室101内に設置されて、ケアサポートシステム1のネットワーク内に組み込まれており、サーバー100aからの有線通信にて、これらの外部機器A1〜A3を制御可能であるとする。図12および図13は、サーバー100aの制御による動作の流れを示すフローチャートである。
【0051】
サーバー100aは、電波検出部30からの出力信号をフーリエ変換して、高周波領域(例えば16Hz〜32Hz)のパワーレベル(ノイズレベル)を常に監視する(S1)。ノイズレベルが閾値NL以上である場合(S2でYes)、サーバー100aは、外乱ノイズが大きくなったと判断し、外乱ノイズを発生させている外部機器(外乱発生機器)を探索するフェーズに入る(S3〜S14)。
【0052】
すなわち、例えば外部機器A1の動作を、サーバー100aからの有線通信によって停止させる(S3)。つまり、外部機器A1の動作を稼働から停止に切り替える。なお、S3では、サーバー100aからの有線通信により、外部機器A1の風量制御(例えば風量を低下させる)を行ったり、風向制御(例えば風向をカーテンに直接風が当たらない方向に変える)を行ってもよい。要は、外乱ノイズ(例えばカーテンの揺れ)を低減できるように、外部機器A1の動作を制御すればよい。
【0053】
サーバー100aは、S1と同様にして、再度、高周波領域のノイズレベルを監視し(S4)、ノイズレベルが閾値NLよりも下回った場合(S5にてYes)、外乱ノイズを発生させる外部機器(外乱発生機器)を外部機器A1と特定する(S6)。その後、後述するS15に移行する。
【0054】
一方、S5にて、ノイズレベルが依然として閾値NL以上である場合、次に、外部機器A2の動作を、サーバー100aからの有線通信によって停止させる(S7)。なお、S7でもS3と同様に、サーバー100aからの有線通信により、外部機器A2の風量制御や風向制御を行ってもよい。
【0055】
サーバー100aは、S1と同様にして、再度、高周波領域のノイズレベルを監視し(S8)、ノイズレベルが閾値NLよりも下回った場合(S9にてYes)、外乱発生機器を外部機器A2と特定する(S10)。その後、後述するS15に移行する。
【0056】
また、S9にて、ノイズレベルが依然として閾値NL以上である場合、次に、外部機器A3の動作を、サーバー100aからの有線通信によって停止させる(S11)。なお、S11でもS3と同様に、サーバー100aからの有線通信により、外部機器A3の風量制御や風向制御を行ってもよい。
【0057】
サーバー100aは、S1と同様にして、再度、高周波領域のノイズレベルを監視し(S12)、ノイズレベルが閾値NLよりも下回った場合(S13にてYes)、外乱発生機器を外部機器A3と特定する(S14)。その後、後述するS15に移行する。一方、S13にて、ノイズレベルが依然として閾値NL以上である場合、サーバー100aは、外乱ノイズの原因が外部機器A1〜A3にはなく、他の要因であると判断して、一連の処理を終了する。
【0058】
S15では、サーバー100aは、S3、S7またはS11で動作を停止等させた外部機器を一旦元の動作に戻し、通常運転を開始させる(動作を停止したのであれば動作を再開し、風量を制御したのであれば元の風量に戻し、風向を制御したのであれば元の風向に戻す)。
【0059】
その後、サーバー100aは、電波検出部30でのデータの取得タイミング(生体情報の検出期間の始期)がくるまで待機し(S16)、データ取得タイミングになると、電波検出部30でのデータの取得中(例えば30秒〜1分程度)のみ、特定した外乱発生機器の動作を、サーバー100aからの有線通信によって停止させる(S17)。なお、S17では、サーバー100aからの有線通信により、S3と同様の制御(外乱発生機器の風量制御や風向制御)を行ってもよい。要は、ノイズレベルが、該ノイズレベルの検出時(S1、S2にて閾値NLよりも高いことが検出されたとき)よりも少しでも低下するように(例えば閾値NL未満となるように)、外乱発生機器の動作を制御すればよい。
【0060】
外乱発生機器の動作が停止している間に、電波検出部30は、居室101内の被介護者のデータを取得し、生体情報を検出する(S18)。そして、生体情報の検出期間が経過すると、S19にて、サーバー100aは、有線通信によって外乱発生機器の動作を元に戻し(動作を停止したのであれば動作を再開し、風量を制御したのであれば元の風量に戻し、風向を制御したのであれば元の風向に戻し)、一連の処理を終了する。以降は、S1に戻って上記と同様の処理を繰り返し行えばよい。
【0061】
なお、以上では、サーバー100aからの有線通信によって外部機器の動作を制御する例について説明したが、無線通信によって外部機器の動作を制御してもよい。
【0062】
以上のように、本実施形態では、外部機器制御部としてのサーバー100aは、電波検出部30からの検出信号に基づいて、居室101内のノイズレベルを検出している。そして、サーバー100aは、ノイズレベルが閾値NL以上である場合に、少なくとも1つの外部機器(上記の例では、外部機器A1〜A3)の動作を変化させてノイズレベルの変化の有無を判断することにより、外部機器A1〜A3の中で、ノイズレベルが上昇する要因となる外乱ノイズを生じさせる外乱発生機器を特定している。さらに、サーバー100aは、電波検出部30によって居室101内の被介護者の生体情報(例えば呼吸状態)を検出する検出期間において、ノイズレベルが該ノイズレベルの検出時よりも低下するように、特定した外乱発生機器の動作を制御している。したがって、外部機器A1〜A3の中でいずれが外乱発生機器であっても、生体情報の検出期間では、その外乱発生機器による外乱ノイズ(例えばカーテンの揺れ)が抑えられる。これにより、生体情報の検出信号のSN比が向上するため、電波検出部30での生体情報の検出精度を向上させることができる。
【0063】
また、動体検知ユニット10と通信回線200を介して接続されるサーバー100aが、外部機器制御部を兼ねており、有線通信または無線通信により、特定した外乱発生機器の動作を制御している(S3、S17等参照)。このように、サーバー100aが、外部機器制御部として機能し、有線通信または無線通信により、特定した外乱発生機器の動作を制御する構成において、上述した本実施形態の効果を得ることができる。
【0064】
また、外部機器制御部としてのサーバー100aは、生体情報の検出期間において、特定した外乱発生機器の動作を停止させたり、ノイズレベルが検出時よりも低下するように、外乱発生機器の風量や風向を制御している(S17参照)。これにより、生体情報の検出期間において、外乱ノイズの発生が確実に抑えられるため、生体情報の検出信号のSN比を確実に向上させて、その検出精度を確実に向上させることができる。
【0065】
また、外部機器制御部としてのサーバー100aは、外部機器の動作を稼働と停止とで切り替えたり、外部機器の風量や風向を変化させることにより、ノイズレベルの変化の有無を判断している(S3〜S5、S7〜S9、S11〜S13参照)。これにより、ノイズレベルの変化に基づき、外部機器の中で、外乱ノイズを生じさせる外乱発生機器を確実に特定することができる。
【0066】
また、外部機器制御部としてのサーバー100aは、生体情報の検出期間の経過後、外乱発生機器の動作を元に戻している(S19参照)。生体情報を検出しない非検出期間では、外乱ノイズによる生体情報の検出精度の低下という問題は生じないため、外乱発生機器の動作を元に戻して、居室内を生活しやすい環境(例えば生活に適した温度や湿度)にすることができる。
【0067】
なお、以上で説明した外部機器の動作制御において、風量制御と風向制御とは、どちらか一方のみが行われてもよいし、両方が同時に行われてもよい。
【0068】
なお、本実施形態では、生体情報の検出信号として、被介護者の呼吸状態を示す信号を例として説明したが、その他、心拍等を示す信号であっても、その信号に基づいてノイズレベルの検出を行って本実施形態と同様の外部機器の制御を行うことにより、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
なお、前述の特許文献1では、センサが誤検知するときの特定運転条件を求めるにあたって、実運転とは異なる空調運転(テストモード)を、様々なパラメータ(例えば圧縮機の運転周波数、室内ファンの運転周波数)を変化させて実行する必要があるため、機器の制御が複雑になることが懸念される。しかも、そのテストモードを行う時期は、居室内に人がいないときに限られるため、例えば居室内に寝たきりの被介護者がいるような場合では、テストモードすら実行できない。この場合、一定の条件のもとで強制的にテストモードを実行するなど、何らかの対策が必要となり、そのような対策を講じる制御が必要となるため、やはり機器の制御が複雑になることが懸念される。
【0070】
この点、本実施形態の制御では、居室内に被介護者が存在する場合でも、生体情報の検知信号(例えばフーリエ変換後のスペクトルの高周波領域)をもとにノイズレベルを判断できるため、特許文献1のテストモードに相当する制御は不要である。また、ノイズレベルの検出は、上述のように閾値を設定して簡易的に行うことができる。したがって、外部機器の制御が特許文献1ほど複雑にはならない点で、本実施形態の制御は、特許文献1の制御よりも有利であると言える。
【0071】
[実施の形態2]
図14は、本発明の他の実施形態に係るケアサポートシステム1の概略の構成を示す説明図であり、図15は、本実施形態の動体検知ユニット10の構成を示すブロック図である。本実施形態では、実施の形態1で述べた、サーバー100aの外部機器制御部としての機能を、動体検知ユニット10の照明制御部22に持たせている。つまり、本実施形態では、居室101内に設置された動体検知ユニット10の照明制御部22が、外部機器制御部を兼ねており、照明部21における赤外線の発光を制御して外部機器A1〜A3と赤外線通信を行うことにより、外部機器A1〜A3の動作を制御するようにしている。それ以外の構成は、実施の形態1と同様である。
【0072】
以下、照明制御部22による外部機器A1〜A3の制御について説明する。図16および図17は、照明制御部22の制御による動作の流れを示すフローチャートである。
【0073】
照明制御部22は、電波検出部30からの出力信号をフーリエ変換して、高周波領域(例えば16Hz〜32Hz)のパワーレベル(ノイズレベル)を常に監視する(S21)。ノイズレベルが閾値NL以上である場合(S22でYes)、照明制御部22は、外乱ノイズが大きくなったと判断し、外乱ノイズを発生させている外部機器(外乱発生機器)を探索するフェーズに入る(S23〜S34)。
【0074】
すなわち、照明制御部22は照明部21における赤外線の発光を制御し、例えば外部機器A1の動作を、動体検知ユニット10(照明部21)からの赤外線通信によって停止させる(S23)。つまり、上記赤外線通信により、外部機器A1の動作を稼働から停止に切り替える。なお、S23では、上記赤外線通信により、外乱ノイズ(例えばカーテンの揺れ)を低減できるように、外部機器A1の風量制御や風向制御を行ってもよい。
【0075】
照明制御部22は、S21と同様にして、再度、高周波領域のノイズレベルを監視し(S24)、ノイズレベルが閾値NLよりも下回った場合(S25にてYes)、外乱ノイズを発生させる外部機器(外乱発生機器)を外部機器A1と特定する(S26)。その後、後述するS35に移行する。
【0076】
一方、S25にて、ノイズレベルが依然として閾値NL以上である場合、次に、照明制御部22は照明部21における赤外線の発光を制御し、例えば外部機器A2の動作を、動体検知ユニット10からの赤外線通信によって停止させる(S27)。なお、S27でもS23と同様に、動体検知ユニット10からの赤外線通信により、外部機器A2の風量制御や風向制御を行ってもよい。
【0077】
照明制御部22は、S21と同様にして、再度、高周波領域のノイズレベルを監視し(S28)、ノイズレベルが閾値NLよりも下回った場合(S29にてYes)、外乱発生機器を外部機器A2と特定する(S30)。その後、後述するS35に移行する。
【0078】
また、S29にて、ノイズレベルが依然として閾値NL以上である場合、次に、照明制御部22は照明部21における赤外線の発光を制御し、外部機器A3の動作を、動体検知ユニット10からの赤外線通信によって停止させる(S31)。なお、S31でもS23と同様に、動体検知ユニット10からの赤外線通信により、外部機器A3の風量制御や風向制御を行ってもよい。
【0079】
照明制御部b22は、S21と同様にして、再度、高周波領域のノイズレベルを監視し(S32)、ノイズレベルが閾値NLよりも下回った場合(S33にてYes)、外乱発生機器を外部機器A3と特定する(S34)。その後、後述するS35に移行する。一方、S33にて、ノイズレベルが依然として閾値NL以上である場合、照明制御部22は、外乱ノイズの原因が外部機器A1〜A3にはなく、他の要因であると判断して、一連の処理を終了する。
【0080】
S35では、照明制御部22は、S23、S27またはS31で動作を停止等させた外部機器を一旦元の動作に戻し、通常運転を開始させる(動作を停止したのであれば動作を再開し、風量を制御したのであれば元の風量に戻し、風向を制御したのであれば元の風向に戻す)。
【0081】
その後、照明制御部22は、電波検出部30でのデータの取得タイミング(生体情報の検出期間の始期)がくるまで待機し(S36)、データ取得タイミングになると、電波検出部30でのデータの取得中(例えば30秒〜1分程度)のみ、特定した外乱発生機器の動作を、動体検知ユニット10からの赤外線通信によって停止させる(S37)。なお、S37では、上記赤外線通信により、S23と同様の制御(外乱発生機器の風量制御や風向制御)を行ってもよい。要は、ノイズレベルが、該ノイズレベルの検出時(S21、S22にて閾値NLよりも高いことが検出されたとき)よりも少しでも低下するように(例えば閾値NL未満となるように)、外乱発生機器の動作を制御すればよい。
【0082】
外乱発生機器の動作が停止している間に、電波検出部30は、居室101内の被介護者のデータを取得し、生体情報を検出する(S38)。そして、生体情報の検出期間が経過すると、S39にて、照明制御部22は、動体検知ユニット10からの赤外線通信によって外乱発生機器の動作を元に戻し(動作を停止したのであれば動作を再開し、風量を制御したのであれば元の風量に戻し、風向を制御したのであれば元の風向に戻し)、一連の処理を終了する。以降は、S21に戻って上記と同様の処理を繰り返し行えばよい。
【0083】
以上のように、本実施形態では、外部機器制御部としての照明制御部22が、電波検出部30からの検出信号に基づいて、(検出信号のフーリエ変換を行うことにより)居室101内のノイズレベルを検出している。そして、照明制御部22は、ノイズレベルが閾値NL以上である場合に、外部機器A1〜A3の動作を変化させてノイズレベルの変化の有無を判断することにより、外部機器A1〜A3の中で、ノイズレベルが上昇する要因となる外乱ノイズを生じさせる外乱発生機器を特定している。さらに、照明制御部22は、電波検出部30によって居室101内の被介護者の生体情報を検出する検出期間において、ノイズレベルが該ノイズレベルの検出時よりも低下するように、特定した外乱発生機器の動作を制御している。したがって、外部機器A1〜A3の中でいずれが外乱発生機器であっても、生体情報の検出期間では、照明制御部22の制御によって、特定した外乱発生機器による外乱ノイズが抑えられる。その結果、実施の形態1と同様に、生体情報の検出信号のSN比が向上し、電波検出部30での生体情報の検出精度を向上させることができる。
【0084】
しかも、動体検知ユニット10に設けられた照明制御部22が、居室101内の照明部21による照明を制御する制御部と、外部機器A1〜A3の動作を制御する外部機器制御部とを兼ねており、照明部21における赤外線の発光を制御して外部機器A1〜A3と赤外線通信を行うことにより、特定した外乱発生機器の動作を制御している。このように居室101内の動体検出ユニット10自身による外部機器A1〜A3の制御であっても、生体情報の検出期間における外乱ノイズの発生を抑えて、生体情報の検出精度を向上させることができる。
【0085】
なお、主制御部41が照明制御部22を兼ねる場合は、その主制御部41に上述した外部機器制御部としての機能を持たせることにより、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0087】
以上で説明した本実施形態のケアサポートシステムは、以下のように表現することができ、これによって以下の作用効果を奏すると言うことができる。
【0088】
本実施形態のケアサポートシステムは、電波の放射および受信によって居室内の動体を検出する電波検出部を有する動体検知ユニットと、居室内に設置される少なくとも1つの外部機器の動作を制御する外部機器制御部とを備え、前記外部機器制御部は、前記電波検出部からの検出信号に基づいて、居室内のノイズレベルを検出するとともに、前記ノイズレベルが閾値以上である場合に、前記少なくとも1つの外部機器の動作を変化させて前記ノイズレベルの変化の有無を判断することにより、前記外部機器の中で、前記ノイズレベルが上昇する要因となる外乱ノイズを生じさせる外乱発生機器を特定し、前記電波検出部によって居室内の被検者の生体情報を検出する検出期間において、前記ノイズレベルが該ノイズレベルの検出時よりも低下するように、特定した前記外乱発生機器の動作を制御する。
【0089】
居室内のノイズレベルが閾値以上である場合、居室内の少なくとも1つの外部機器のいずれかの動作により、電波検出部での誤検知の原因となる外乱ノイズ(例えば居室内のカーテンの揺れ)が発生していることが想定される。この場合において、外部機器制御部によって、少なくとも1つの外部機器の動作を変化させて、ノイズレベルの変化の有無を判断することにより、外部機器の中で、外乱ノイズを生じさせる外乱発生機器が特定される。そして、生体情報の検出期間において、ノイズレベルが該ノイズレベルの検出時よりも低下するように(例えばノイズレベルが閾値を下回るように)、特定された外乱発生機器の動作が制御される。したがって、外乱発生機器が何であっても、その外乱発生機器に起因する外乱ノイズの発生が抑えられ、これによって、電波検出部にて検出される生体情報の信号のSN比(signal-to-noise ratio)、すなわち、ノイズレベルに対する生体情報の信号レベルの比が向上する。その結果、電波検出部での生体情報の検出精度を向上させることができる。
【0090】
前記ケアサポートシステムは、少なくとも1つの前記動体検知ユニットと通信回線を介して接続されるサーバーを含み、前記サーバーが、前記外部機器制御部を兼ねており、有線通信または無線通信により、特定した前記外乱発生機器の動作を制御してもよい。
【0091】
少なくとも1つの動体検知ユニットとサーバーとが通信回線を介して接続されたケアサポートシステムにおいて、外部機器制御部としてのサーバーが、外部機器制御部として機能し、有線通信または無線通信により、特定した外乱発生機器の動作を制御する構成において、上述の効果を得ることができる。
【0092】
前記動体検知ユニットは、赤外線を発光する照明部と、前記照明部を制御する照明制御部とを有しており、前記照明制御部が、前記外部機器制御部を兼ねており、前記照明部における赤外線の発光を制御して赤外線通信を行うことにより、特定した前記外乱発生機器の動作を制御してもよい。
【0093】
動体検知ユニットが、照明部と照明制御部とを有し、照明制御部が、外部機器制御部として機能し、赤外線通信により、特定した外乱発生機器の動作を制御する構成において、上述の効果を得ることができる。
【0094】
前記外部機器制御部は、前記検出期間において、特定した前記外乱発生機器の動作を停止させてもよい。また、前記外部機器制御部は、前記検出期間において、前記ノイズレベルが該ノイズレベルの検出時よりも低下するように、特定した前記外乱発生機器の風量を制御してもよい。さらに、前記外部機器制御部は、前記検出期間において、前記ノイズレベルが該ノイズレベルの検出時よりも低下するように、特定した前記外乱発生機器の風向を制御してもよい。
【0095】
外乱発生機器の動作を停止させたり、外乱発生機器の風量および/または風向を制御することにより、外乱ノイズの発生が抑えられ、ノイズレベルが低下する。これにより、電波検出部にて検出される生体情報の信号のSN比を確実に向上させて、生体情報の検出精度を確実に向上させることができる。
【0096】
前記外部機器制御部は、前記外部機器の動作を稼働と停止とで切り替えることにより、前記ノイズレベルの変化の有無を判断してもよい。また、前記外部機器制御部は、前記外部機器の風量を変化させることにより、前記ノイズレベルの変化の有無を判断してもよい。さらに、前記外部機器制御部は、前記外部機器の風向を変化させることにより、前記ノイズレベルの変化の有無を判断してもよい。
【0097】
外部機器制御部は、上記のようにしてノイズレベルの変化の有無を判断することにより、その判断に基づき、外部機器の中で、外乱ノイズを生じさせる外乱発生機器を確実に特定することができる。
【0098】
前記外部機器制御部は、前記電波検出部にて検出された被検者の前記生体情報の信号をフーリエ変換したスペクトルの高周波領域のパワーレベルが、前記閾値以上であるか否かを判断することにより、前記ノイズレベルが閾値以上であるか否かを判断してもよい。
【0099】
電波検出部にて検出された信号のフーリエ変換後のスペクトルにおいて、被検者の生体情報(例えば呼吸情報)の検出信号に対応するスペクトルと、ノイズレベルに対応するスペクトルとは、高周波領域でほぼ一致する。このため、生体情報の検出信号をフーリエ変換したスペクトルの高周波領域のパワーレベルが閾値以上であるか否かを判断することにより、ノイズレベルが閾値以上であるか否かを判断することができる。
【0100】
前記外部機器制御部は、前記検出期間の経過後、前記外乱発生機器の動作を元に戻してもよい。生体情報の非検出期間では、外乱ノイズによる生体情報の検出精度の低下という問題は生じない(非検出期間では生体情報を検出しないため)。したがって、生体情報の検出期間の経過後に、外乱発生機器の動作を元に戻して、居室内を生活しやすい環境(例えば生活に適した温度や湿度)にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、例えば居室内での被介護者等の被検者の日常の生活を支援するケアサポートシステムに利用可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 ケアサポートシステム
10 動体検知ユニット
21 照明部
22 照明制御部(外部機器制御部)
30 電波検出部
100a サーバー(外部機器制御部)
101 居室
200 通信回線
A1 外部機器
A2 外部機器
A3 外部機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17