(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透明樹脂層を構成する透明樹脂が、環状ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルター。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る光学フィルターおよび該光学フィルターを用いた装置について詳細に説明する。
【0028】
本発明の光学フィルターは、後述する要件(a)、(b)および(c)を満たす基材を有し、かつ、後述する要件(d)および(e)を満たすことを特徴とする。また、本発明の光学フィルターは、前記基材の少なくとも一方の面に誘電体多層膜を有することが好ましい。
【0029】
[基材]
本発明で用いられる基材は、下記要件(a)、(b)および(c)を満たす;
(a)波長650nm以上760nm以下の領域に吸収極大を有する化合物(A)を含む層を有する;
(b)波長640nm以上の領域において透過率が10%となる一番短い波長(X
1)と二番目に短い波長(X
2)との差(X
2−X
1)が50nm以上である;
(c)波長900nmにおける透過率(c1)、波長1000nmにおける透過率(c2)、および波長1100nmにおける透過率(c3)がいずれも65%以下である。
【0030】
また、前記基材は、下記要件(f)〜(h)の少なくとも一つの要件をさらに満たすことが好ましい:
(f)波長690〜720nmの領域における透過率の最小値(T
1)が5%以下である;
(g)波長1050nm以上1200nm以下の領域に吸収極大を有する化合物(S)を含む;
(h)波長600nm以上の領域において透過率が50%超から50%以下となる際の透過率が50%となる最も短い波長(Xc)が波長628〜658nmの範囲にある。
【0032】
<要件(a)>
要件(a)において、化合物(A)を含む層を構成する成分は特に限定されないが、例えば、透明樹脂、ゾルゲル材料、低温硬化ガラス材料などが挙げられるが、取扱いが容易であることや化合物(A)との相溶性の観点から透明樹脂であることが好ましい。
【0033】
≪化合物(A)≫
化合物(A)は、波長650nm以上760nm以下の領域に吸収極大を有する化合物であれば特に制限されないが、溶剤可溶型の色素化合物であることが好ましく、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物およびシアニン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、スクアリリウム系化合物を含むことがさらに好ましく、スクアリリウム系化合物を含む2種以上であることが特に好ましい。化合物(A)がスクアリリウム系化合物を含む2種以上である場合、構造の異なるスクアリリウム系化合物が2種以上でもよく、スクアリリウム系化合物とその他の化合物(A)との組み合わせでもよい。その他の化合物(A)としては、フタロシアニン系化合物およびシアニン系化合物が特に好ましい。
【0034】
スクアリリウム系化合物は、優れた可視光透過性、急峻な吸収特性および高いモル吸光係数を有するが、光線吸収時に散乱光の原因となる蛍光を発生させる場合がある。そのような場合、スクアリリウム系化合物とその他の化合物(A)とを組み合わせて使用することにより、散乱光が少なくカメラ画質がより良好な光学フィルターを得ることができる。
【0035】
化合物(A)の吸収極大波長は、好ましくは660nm以上755nm以下、より好ましくは670nm以上750nm以下、さらに好ましくは680nm以上745nm以下である。
【0036】
化合物(A)が2種以上の化合物の組み合わせである場合、適用する化合物(A)のうち最も吸収極大波長が短いものと最も吸収極大波長の長いものの吸収極大波長の差は、好ましくは10〜60nm、より好ましくは15〜55nm、さらに好ましくは20〜50nmである。吸収極大波長の差が上記範囲にあると、蛍光による散乱光を十分低減できるとともに、700nm付近の幅広い吸収帯と優れた可視光透過率を両立できるため好ましい。
【0037】
化合物(A)全体の含有量は、前記基材として、例えば、化合物(A)を含有する透明樹脂製基板からなる基材や、化合物(A)を含有する透明樹脂製基板上に硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された基材を用いる場合には、透明樹脂100重量部に対して、好ましくは0.04〜2.0重量部、より好ましくは0.06〜1.5重量部、さらに好ましくは0.08〜1.0重量部であり、前記基材として、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体などの支持体上に化合物(A)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの透明樹脂層が積層された基材を用いる場合には、化合物(A)を含む透明樹脂層を形成する樹脂100重量部に対して、好ましくは0.4〜5.0重量部、より好ましくは0.6〜4.0重量部、さらに好ましくは0.8〜3.5重量部である。
【0038】
<要件(b)>
前記波長X
1とX
2との差(X
2−X
1)は、好ましくは53nm以上、より好ましくは55nm以上、さらに好ましくは58nm以上である。上限は特に限定されないが、化合物(A)やその他の近赤外線吸収剤の特性によっては値が大きすぎると可視透過率が低下する場合があるため、例えば100nm以下であることが好ましい。前記差(X
2−X
1)が上記のような範囲にあると、可視領域に近い近赤外波長領域において十分な強度(幅)の吸収帯を有することとなり、例えば入射角度45度などのような入射角度が大きい条件においても色シェーディングを抑制できるため好ましい。
【0039】
X
1とX
2の中間にあたる波長の値(X
1+X
2)/2は、可視領域に近い近赤外波長領域における吸収帯の中心波長ということができ、好ましくは670nm以上740nm以下、より好ましくは680nm以上730nm以下、さらに好ましくは690nm以上720nm以下である。(X
1+X
2)/2で表される波長の値が上記範囲にあると、可視領域の長波長端付近の波長領域の光をより効率的にカットできるため好ましい。
【0040】
前記X
1は、好ましくは波長650nm以上720nm以下、より好ましくは波長655nm以上710nm以下、さらに好ましくは波長660nm以上700nm以下である。X
1がこのような範囲にあると、ノイズが少なく色再現性に優れたカメラ画像を得られる傾向にあるため好ましい。
【0041】
<要件(c)>
前記透過率(c1)、(c2)および(c3)はいずれも、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下、さらに好ましくは50%以下である。下限は特に限定されないが、近赤外線吸収剤の特性によっては近赤外波長領域の透過率の値が低すぎると可視透過率が低下したり、基材の厚みが極端に厚くなってしまう場合があるため、例えば5%以上であることが好ましい。前記透過率(c1)、(c2)および(c3)が上記範囲にあれば、実用上十分なレベルのゴースト抑制効果を得ることができるため好ましい。
【0042】
前記基材は、化合物(A)を含む層を有していれば、単層であっても多層であってもよい。また、要件(C)を満たすために、前記基材は近赤外線吸収剤を含有することが好ましく、該近赤外線吸収剤は化合物(A)と同一の層に含まれていても異なる層に含まれていてもよい。
【0043】
化合物(A)を含む層と近赤外線吸収剤を含む層とが同一である場合、例えば、化合物(A)および近赤外線吸収剤を含む透明樹脂製基板からなる基材、化合物(A)および近赤外線吸収剤を含む透明樹脂製基板上に硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された基材、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体などの支持体上に化合物(A)および近赤外線吸収剤を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの透明樹脂層が積層された基材を挙げることができる。
【0044】
化合物(A)を含む層と近赤外線吸収剤を含む層とが異なる場合、例えば、近赤外線吸収剤を含む透明樹脂製基板上に化合物(A)を含む硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された基材、化合物(A)を含む透明樹脂製基板上に近赤外線吸収剤を含む硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された基材、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体などの支持体上に化合物(A)を含む硬化性樹脂等からなるオーバーコート層と近赤外線吸収剤を含む硬化性樹脂等からなるオーバーコート層とが積層された基材、近赤外線吸収剤を含むガラス基板上に化合物(A)を含む硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された基材などを挙げることができる。
【0045】
近赤外線吸収剤としては、900〜1200nmの波長領域に幅広い吸収を有していれば特に限定されないが、例えば、近赤外線吸収色素、近赤外線吸収微粒子、導電性金属酸化物、およびリン酸系ガラス中の遷移金属成分などを挙げることができる。
【0046】
<要件(f)>
前記T
1は、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。T
1が上記の範囲にあれば、吸収帯の透過率カットが十分であるということができ、カメラ画像において光源周辺のフレアを抑制することができるため好ましい。
【0047】
<要件(g)>
本発明の基材は近赤外線吸収剤を含むことが好ましいが、該近赤外線吸収剤が前記化合物(S)であると、近赤外線波長領域の吸収強度と可視透過率とを高いレベルで両立できる傾向にあるため好ましい。
【0048】
≪化合物(S)≫
化合物(S)は、波長1050nm以上1200nm以下の領域に吸収極大を有していれば特に制限されないが、好ましくは溶剤可溶型の色素化合物であり、より好ましくはジイモニウム系化合物、金属ジチオラート錯体系化合物、ピロロピロール系化合物、シアニン系化合物、クロコニウム系化合物およびナフタロシアニン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、さらに好ましくはジイモニウム系化合物および金属ジチオラート錯体系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、特に好ましくは下記式(I)で表されるジイモニウム系化合物および下記式(II)で表される金属ジチオラート錯体系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。このような化合物(S)を用いることにより、良好な近赤外線吸収特性と優れた可視光透過率を達成することができる。
【0050】
【化4】
式(I)および式(II)中、
R
1〜R
3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、−NR
gR
h基、−SR
i基、−SO
2R
i基、−OSO
2R
i基または下記L
a〜L
hのいずれかを表し、R
gおよびR
hは、それぞれ独立に水素原子、−C(O)R
i基または下記L
a〜L
eのいずれかを表し、R
iは下記L
a〜L
eのいずれかを表し、
(L
a)炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基
(L
b)炭素数1〜12のハロゲン置換アルキル基
(L
c)炭素数3〜14の脂環式炭化水素基
(L
d)炭素数6〜14の芳香族炭化水素基
(L
e)炭素数2〜14の複素環基
(L
f)炭素数1〜12のアルコキシ基
(L
g)置換基Lを有してもよい炭素数1〜12のアシル基、
(L
h)置換基Lを有してもよい炭素数1〜12のアルコキシカルボニル基
置換基Lは、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜14の脂環式炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基および炭素数3〜14の複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
隣り合うR
3同士は置換基Lを有してもよい環を形成してもよく、
nは0〜4の整数を表し、
Xは電荷を中和させるのに必要なアニオンを表し、
Mは金属原子を表し、
ZはD(R
i)
4を表し、 Dは窒素原子、リン原子またはビスマス原子を表し、
yは0もしくは1を表す。
【0051】
前記R
1としては、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、3−ピリジニル基、エポキシ基、フェニル基、ベンジル基、フルオレニル基であり、より好ましくはイソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ベンジル基である。
【0052】
前記R
2としては、好ましくは塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、N−メチルアセチルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、tert−ブタノイルアミノ基、シクロヘキシノイルアミノ基、n−ブチルスルホニル基、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基であり、より好ましくは塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、水酸基、ジメチルアミノ基、メトキシ基、エトキシ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、tert−ブタノイルアミノ基、シクロヘキシノイルアミノ基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基である。同じ芳香環に結合しているR
2の数(nの値)は、0〜4であれば特に制限されないが、0もしくは1であることが好ましい。
【0053】
前記Xは電荷を中和するのに必要なアニオンであり、アニオンが2価である場合には1分子、アニオンが1価の場合には2分子が必要となる。後者の場合は2つのアニオンが同一であっても異なっていてもよいが、合成上の観点から同一である方が好ましい。Xはこのようなアニオンであれば特に制限されないが、一例として、下記表1に記載のものを挙げることができる。
【0054】
【表1】
Xとしては、ジイモニウム系化合物の耐熱性、耐光性および分光特性の観点から、上記表1中の(X−10)、(X−16)、(X−17)、(X−21)、(X−22)、(X−24)、(X−28)が特に好ましい。
【0055】
上記式(I)で表されるジイモニウム系化合物としては、例えば、下記表2−1〜2−4に記載のものを挙げることができる。
【0059】
【表2-4】
前記R
3としては、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、フェニル基、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、フェニルチオ基、ベンジルチオ基であり、隣り合うR
3同士が環を形成する場合、環の中に少なくとも一つ以上の硫黄原子もしくは窒素原子が含まれる複素環であることが好ましい。
【0060】
前記Mとしては、好ましくは遷移金属であり、より好ましくはNi,Pd,Ptである。
【0061】
前記Dは、好ましくは窒素原子、リン原子であり、前記R
iは、好ましくはエチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、フェニル基である。
【0062】
化合物(S)の吸収極大波長は、好ましくは1060nm以上1190nm以下、より好ましくは1070nm以上1180nm以下、さらに好ましくは1080nm以上1170nm以下である。化合物(S)の吸収極大波長がこのような範囲にあると、不要な近赤外線を効率よくカットすることができ、優れたゴースト抑制効果を得ることができる。
【0063】
化合物(S)は、一般的に知られている方法で合成すればよく、例えば、特許第4168031号公報、特許第4252961号公報、特表2010−516823号公報、特開昭63−165392号公報等に記載されている方法などを参照して合成することができる。
【0064】
化合物(S)の含有量は、前記基材として、例えば、化合物(A)および化合物(S)を含有する透明樹脂製基板からなる基材や、化合物(S)を含有する透明樹脂製基板上に化合物(A)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された基材を用いる場合には、透明樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜2.0重量部、より好ましくは0.02〜1.5重量部、特に好ましくは0.03〜1.0重量部であり、前記基材として、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体などの支持体上に化合物(A)および化合物(S)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの透明樹脂層が積層された基材や、化合物(A)を含有する透明樹脂製基板上に化合物(S)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された基材を用いる場合には、化合物(A)を含む透明樹脂層を形成する樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜5.0重量部、より好ましくは0.2〜4.0重量部、特に好ましくは0.3〜3.0重量部である。化合物(S)の含有量が前記範囲内にあると、良好な近赤外線吸収特性と高い可視光透過率とを両立した光学フィルターを得ることができる。
【0065】
<要件(h)>
前記Xcは、好ましくは630〜655nm、より好ましくは632〜652nm、さらに好ましくは634〜650nmである。Xcが628nm未満であると、赤色に相当する波長領域の透過率が低くなり、色再現性が低下する傾向にあり、658nm超であると、十分な強度の吸収強度を確保できず、カメラ画像に色シェーディングが発生してしまう傾向にある。
【0066】
前記基材が前記要件(h)を満たす場合、基材上に誘電体多層膜を製膜した際でも、可視波長〜近赤外波長域付近における光学特性の入射角依存性を低減することができ、赤色の再現性と色シェーディング抑制効果を高いレベルで両立できるため好ましい。なお、Xcは短波長側から長波長側に向かって分光透過率を評価した際に、所定の条件を満たす波長を示すものである。
【0067】
<その他の特性および物性>
波長430〜580nmの領域における基材の平均透過率は、好ましくは75%以上、さらに好ましくは78%以上、特に好ましくは80%以上である。このような透過特性を有する基材を用いると、可視域において高い光線透過特性を達成でき、高感度なカメラ機能を達成することができる。
【0068】
基材の厚みは、所望の用途に応じて適宜選択することができ、特に制限されないが、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜180μm、さらに好ましくは25〜150μmである。基材の厚みが前記範囲にあると、該基材を用いた光学フィルターを薄型化および軽量化することができ、固体撮像装置等の様々な用途に好適に用いることができる。特に、前記透明樹脂製基板からなる基材をカメラモジュール等のレンズユニットに用いた場合には、レンズユニットの低背化、軽量化を実現することができるため好ましい。
【0069】
<透明樹脂>
前記基材を構成する透明樹脂層、透明樹脂製基板および樹脂製支持体に用いられる透明樹脂としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に制限されないが、例えば、熱安定性およびフィルムへの成形性を確保し、かつ、100℃以上の蒸着温度で行う高温蒸着により誘電体多層膜を形成しうるフィルムとするため、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110〜380℃、より好ましくは110〜370℃、さらに好ましくは120〜360℃である樹脂が挙げられる。また、前記樹脂のガラス転移温度が140℃以上であると、誘電体多層膜をより高温で蒸着形成しえるフィルムが得られるため、特に好ましい。
【0070】
透明樹脂としては、当該樹脂からなる厚さ0.1mmの樹脂板を形成した場合に、この樹脂板の全光線透過率(JIS K7105)が、好ましくは75〜95%、より好ましくは78〜95%、さらに好ましくは80〜95%となる樹脂を用いることができる。全光線透過率がこのような範囲となる樹脂を用いれば、得られる基板は光学フィルムとして良好な透明性を示す。
【0071】
透明樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常15,000〜350,000、好ましくは30,000〜250,000であり、数平均分子量(Mn)は、通常10,000〜150,000、好ましくは20,000〜100,000である。
【0072】
透明樹脂としては、例えば、環状ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(アラミド)系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂を挙げることができる。
【0073】
透明樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
≪環状ポリオレフィン系樹脂≫
環状ポリオレフィン系樹脂としては、下記式(X
0)で表される単量体および下記式(Y
0)で表される単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体から得られる樹脂、および当該樹脂を水素添加することで得られる樹脂が好ましい。
【0075】
【化5】
式(X
0)中、R
x1〜R
x4はそれぞれ独立に、下記(i')〜(ix')より選ばれる原子または基を表し、k
x、m
xおよびp
xはそれぞれ独立に、0または正の整数を表す。
(i')水素原子
(ii')ハロゲン原子
(iii')トリアルキルシリル基
(iv')酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有する、置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(v')置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(vi')極性基(但し、(iv')を除く。)
(vii')R
x1とR
x2またはR
x3とR
x4とが、相互に結合して形成されたアルキリデン基(但し、前記結合に関与しないR
x1〜R
x4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表す。)
(viii')R
x1とR
x2またはR
x3とR
x4とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の炭化水素環または複素環(但し、前記結合に関与しないR
x1〜R
x4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表す。)
(ix')R
x2とR
x3とが、相互に結合して形成された単環の炭化水素環または複素環(但し、前記結合に関与しないR
x1とR
x4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表す。)
【0076】
【化6】
式(Y
0)中、R
y1およびR
y2はそれぞれ独立に、前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表すか、R
y1とR
y2とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の脂環式炭化水素、芳香族炭化水素または複素環を表し、k
yおよびp
yはそれぞれ独立に、0または正の整数を表す。
【0077】
≪芳香族ポリエーテル系樹脂≫
芳香族ポリエーテル系樹脂は、下記式(1)で表される構造単位および下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。
【0078】
【化7】
式(1)中、R
1〜R
4はそれぞれ独立に、炭素数1〜12の1価の有機基を示し、a〜dはそれぞれ独立に、0〜4の整数を示す。
【0079】
【化8】
式(2)中、R
1〜R
4およびa〜dはそれぞれ独立に、前記式(1)中のR
1〜R
4およびa〜dと同義であり、Yは、単結合、−SO
2−または>C=Oを示し、R
7およびR
8はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhはそれぞれ独立に、0〜4の整数を示し、mは0または1を示す。但し、mが0のとき、R
7はシアノ基ではない。
【0080】
また、前記芳香族ポリエーテル系樹脂は、さらに下記式(3)で表される構造単位および下記式(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。
【0081】
【化9】
式(3)中、R
5およびR
6はそれぞれ独立に、炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO
2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、eおよびfはそれぞれ独立に、0〜4の整数を示し、nは0または1を示す。
【0082】
【化10】
式(4)中、R
7、R
8、Y、m、gおよびhはそれぞれ独立に、前記式(2)中のR
7、R
8、Y、m、gおよびhと同義であり、R
5、R
6、Z、n、eおよびfはそれぞれ独立に、前記式(3)中のR
5、R
6、Z、n、eおよびfと同義である。
【0083】
≪ポリイミド系樹脂≫
ポリイミド系樹脂としては、特に制限されず、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子化合物であればよく、例えば、特開2006−199945号公報や特開2008−163107号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0084】
≪フルオレンポリカーボネート系樹脂≫
フルオレンポリカーボネート系樹脂としては、特に制限されず、フルオレン部位を含むポリカーボネート樹脂であればよく、例えば、特開2008−163194号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0085】
≪フルオレンポリエステル系樹脂≫
フルオレンポリエステル系樹脂としては、特に制限されず、フルオレン部位を含むポリエステル樹脂であればよく、例えば、特開2010−285505号公報や特開2011−197450号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0086】
≪フッ素化芳香族ポリマー系樹脂≫
フッ素化芳香族ポリマー系樹脂としては、特に制限されないが、フッ素原子を少なくとも1つ有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合およびエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも1つの結合を含む繰り返し単位とを含有するポリマーであることが好ましく、例えば特開2008−181121号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0087】
≪アクリル系紫外線硬化型樹脂≫
アクリル系紫外線硬化型樹脂としては、特に制限されないが、分子内に一つ以上のアクリル基もしくはメタクリル基を有する化合物と、紫外線によって分解して活性ラジカルを発生させる化合物を含有する樹脂組成物から合成されるものを挙げることができる。アクリル系紫外線硬化型樹脂は、前記基材として、ガラス支持体上やベースとなる樹脂製支持体上に化合物(A)および硬化性樹脂を含む透明樹脂層が積層された基材や、化合物(A)を含有する透明樹脂製基板上に硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された基材を用いる場合、該硬化性樹脂として特に好適に使用することができる。
【0088】
≪エポキシ系樹脂≫
エポキシ系樹脂としては、特に制限されないが、紫外線硬化型と熱硬化型に大別することができる。紫外線硬化型エポキシ系樹脂としては、例えば、分子内に一つ以上のエポキシ基を有する化合物と、紫外線によって酸を発生させる化合物(以下「光酸発生剤」ともいう)を含有する組成物から合成されるものを挙げることができ、熱硬化型エポキシ系樹脂としては、例えば、分子内に一つ以上のエポキシ基を有する化合物と、酸無水物を含有する組成物から合成されるものを挙げることができる。エポキシ系紫外線硬化型樹脂は、前記基材として、ガラス支持体上やベースとなる樹脂製支持体上に化合物(A)を含む透明樹脂層が積層された基材や、化合物(A)を含有する透明樹脂製基板上に硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された基材を用いる場合、該硬化性樹脂として特に好適に使用することができる。
【0089】
≪市販品≫
透明樹脂の市販品としては、以下の市販品等を挙げることができる。環状ポリオレフィン系樹脂の市販品としては、JSR(株)製アートン、日本ゼオン(株)製ゼオノア、三井化学(株)製APEL、ポリプラスチックス(株)製TOPASなどを挙げることができる。ポリエーテルサルホン系樹脂の市販品としては、住友化学(株)製スミカエクセルPESなどを挙げることができる。ポリイミド系樹脂の市販品としては、三菱ガス化学(株)製ネオプリムLなどを挙げることができる。ポリカーボネート系樹脂の市販品としては、帝人(株)製ピュアエースなどを挙げることができる。フルオレンポリカーボネート系樹脂の市販品としては、三菱ガス化学(株)製ユピゼータEP−5000などを挙げることができる。フルオレンポリエステル系樹脂の市販品としては、大阪ガスケミカル(株)製OKP4HTなどを挙げることができる。アクリル系樹脂の市販品としては、(株)日本触媒製アクリビュアなどを挙げることができる。シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂の市販品としては、新日鐵化学(株)製シルプラスなどを挙げることができる。
【0090】
<その他の色素(X)>
前記基材には、さらに、化合物(A)および化合物(S)に該当しない、その他の色素(X)が含まれていてもよい。
【0091】
その他の色素(X)としては、吸収極大波長が波長650nm未満もしくは波長760nm超1050nm未満の領域にある色素であれば特に制限されないが、吸収極大波長が760nm超1050nm未満の領域にある色素が好ましい。このような色素としては、例えば、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クロコニウム系化合物、オクタフィリン系化合物、ジイモニウム系化合物、ピロロピロール系化合物、ボロンジピロメテン(BODIPY)系化合物、ペリレン系化合物および金属ジチオラート系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0092】
その他の色素(X)の含有量は、前記基材として、例えば、その他の色素(X)を含有する透明樹脂製基板からなる基材を用いる場合には、透明樹脂100重量部に対して、好ましくは0.005〜1.0重量部、より好ましくは0.01〜0.9重量部、特に好ましくは0.02〜0.8重量部であり、前記基材として、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体などの支持体上にその他の色素(X)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの透明樹脂層が積層された基材や、化合物(A)を含有する透明樹脂製基板上にその他の色素(X)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された基材を用いる場合には、その他の色素(X)を含む透明樹脂層を形成する樹脂100重量部に対して、好ましくは0.05〜4.0重量部、より好ましくは0.1〜3.0重量部、特に好ましくは0.2〜2.0重量部である。
【0093】
<その他成分>
前記基材は、本発明の効果を損なわない範囲において、その他成分として、さらに酸化防止剤、近紫外線吸収剤および蛍光消光剤などを含有してもよい。これらその他成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
前記近紫外線吸収剤としては、例えばアゾメチン系化合物、インドール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。
【0095】
前記酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。
【0096】
なお、これらその他成分は、基材を製造する際に、樹脂などとともに混合してもよいし、樹脂を合成する際に添加してもよい。また、添加量は、所望の特性に応じて適宜選択されるものであるが、樹脂100重量部に対して、通常0.01〜5.0重量部、好ましくは0.05〜2.0重量部である。
【0097】
<基材の製造方法>
前記基材が、化合物(A)を含有する透明樹脂製基板を含む基材である場合、該透明樹脂製基板は、例えば、溶融成形またはキャスト成形により形成することができ、さらに、必要により、成形後に、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤をコーティングすることで、オーバーコート層が積層された基材を製造することができる。
【0098】
前記基材が、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体などの支持体上または化合物(A)を含有しない透明樹脂製基板上に化合物(A)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの透明樹脂層が積層された基材である場合、例えば、前記支持体または前記透明樹脂製基板上に化合物(A)を含む樹脂溶液を溶融成形またはキャスト成形することで、好ましくはスピンコート、スリットコート、インクジェットなどの方法にて塗工した後に溶媒を乾燥除去し、必要に応じてさらに光照射や加熱を行うことで、前記支持体または前記透明樹脂製基板上に化合物(A)を含む透明樹脂層が形成された基材を製造することができる。
【0099】
≪溶融成形≫
前記溶融成形としては、具体的には、樹脂と化合物(A)と必要に応じて他の成分とを溶融混練りして得られたペレットを溶融成形する方法;樹脂と化合物(A)と必要応じて他の成分とを含有する樹脂組成物を溶融成形する方法;または、化合物(A)、樹脂、溶剤および必要に応じて他の成分を含む樹脂組成物から溶剤を除去して得られたペレットを溶融成形する方法などが挙げられる。溶融成形方法としては、射出成形、溶融押出成形またはブロー成形などを挙げることができる。
【0100】
≪キャスト成形≫
前記キャスト成形としては、化合物(A)、樹脂、溶剤および必要に応じて他の成分を含む樹脂組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶剤を除去する方法;または化合物(A)と、光硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂と、必要に応じて他の成分とを含む硬化性組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶媒を除去した後、紫外線照射や加熱などの適切な手法により硬化させる方法などにより製造することもできる。
【0101】
前記基材が、化合物(A)を含有する透明樹脂製基板からなる基材である場合には、該基材は、キャスト成形後、支持体から塗膜を剥離することにより得ることができ、また、前記基材が、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体などの支持体上または化合物(A)を含有しない透明樹脂製基板上に化合物(A)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの透明樹脂層が積層された基材である場合には、該基材は、キャスト成形後、塗膜を剥離しないことで得ることができる。
【0102】
前記支持体としては、例えば、近赤外吸収ガラス板(例えば、松浪硝子工業社製「BS−11」やAGC テクノグラス社製「NF−50T」などのような銅成分を含有するリン酸塩系ガラス板)、透明ガラス板(例えば、日本電気硝子社製「OA−10G」や旭硝子社製「AN100」などのような無アルカリガラス板)、スチールベルト、スチールドラムおよび透明樹脂(例えば、ポリエステルフィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム)製支持体が挙げられる。
【0103】
さらに、ガラス板、石英または透明プラスチック製等の光学部品に、前記樹脂組成物をコーティングして溶剤を乾燥させる方法、または、前記硬化性組成物をコーティングして硬化および乾燥させる方法などにより、光学部品上に透明樹脂層を形成することもできる。
【0104】
前記方法で得られた透明樹脂層(透明樹脂製基板)中の残留溶剤量は可能な限り少ない方がよい。具体的には、前記残留溶剤量は、透明樹脂層(透明樹脂製基板)の重さに対して、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。残留溶剤量が前記範囲にあると、変形や特性が変化しにくい、所望の機能を容易に発揮できる透明樹脂層(透明樹脂製基板)が得られる。
【0105】
[光学フィルター]
本発明に係る光学フィルターは、前記要件(a)、(b)および(c)を満たす基材を有し、かつ、下記要件(d)および(e)を満たすことを特徴とする:
(d)波長430〜580nmの領域において、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値(d1)が75%以上である;
(e)波長1100nm〜1200nmの領域において、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値(e1)が5%以下である。
【0106】
本発明の光学フィルターは、前記要件(d)および(e)を満たすことから、可視波長域での透過率特性および近赤外線カット特性に優れ、入射角依存性が少なく、色シェーディング抑制効果およびゴースト抑制効果に優れた光学フィルターである。
【0107】
<要件(d)>
要件(d)における前記透過率の平均値(d1)は、好ましくは78%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは82%以上である。前記透過率の平均値(d1)がこの範囲にあると、本発明の光学フィルターを固体撮像素子用途として使用した場合、優れた撮像感度を達成することができる。
【0108】
<要件(e)>
要件(e)における前記透過率の平均値(e1)は、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下である。前記透過率の平均値(e1)がこの範囲にあると、カメラ画像の中心付近において良好な黒色再現性を達成することができる。
【0109】
<その他の特性および物性>
本発明の光学フィルターは、前記基材を有するため、誘電体多層膜を有する形態においても光学特性の入射角依存を低減することができる。具体的には、波長600〜800nmの範囲において、光学フィルターの垂直方向から測定した時の透過率が50%となる最も短い波長の値(Xa)と、光学フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した時の透過率が50%となる波長の値(Xb)との差の絶対値|Xa−Xb|は、好ましくは20nm未満、より好ましくは15nm未満、さらに好ましくは10nm未満である。
【0110】
本発明の光学フィルターの厚みは、近年の固体撮像装置の薄型化、軽量化等の流れを考慮すると、薄いことが好ましい。本発明の光学フィルターは、前記基材を含むため、薄型化が可能である。
【0111】
本発明の光学フィルターの厚みは、好ましくは210μm以下、より好ましくは190μm以下、さらに好ましくは160μm以下、特に好ましくは130μm以下であり、下限は特に制限されないが、20μm以上であることが好ましい。
【0112】
[誘電体多層膜]
本発明の光学フィルターは、前記基材の少なくとも一方の面に誘電体多層膜を有することが好ましい。本発明における誘電体多層膜とは、近赤外線を反射する能力を有する膜または可視域における反射防止効果を有する膜であり、誘電体多層膜を有することでより優れた可視光透過率と近赤外線カット特性を達成することができる。
【0113】
本発明では、誘電体多層膜は前記基材の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。片面に設ける場合、製造コストや製造容易性に優れ、両面に設ける場合、高い強度を有し、反りやねじれが生じにくい光学フィルターを得ることができる。光学フィルターを固体撮像素子用途に適用する場合、光学フィルターの反りやねじれが小さい方が好ましいことから、誘電体多層膜を樹脂製基板の両面に設けることが好ましい。
【0114】
前記誘電体多層膜は、好ましくは波長700〜1100nm、より好ましくは波長700〜1150nm、さらに好ましくは700〜1200nmの範囲全体にわたって反射特性を有することが望ましい。
【0115】
基材の両面に誘電体多層膜を有する形態として、光学フィルターの垂直方向に対して5°の角度から測定した場合に、主に波長700〜950nm付近に反射特性を有する第一光学層を基材の片面に有し、主に900nm〜1150nm付近に反射特性を有する第二光学層を基材の他方の面上に有する形態(
図1(a)参照)や、光学フィルターの垂直方向に対して5°の角度から測定した場合に、主に波長700〜1150nm付近に反射特性を有する第三光学層を基材の片面に有し、可視域の反射防止特性を有する第四光学層を基材の他方の面上に有する形態(
図1(b)参照)などが挙げられる。
【0116】
誘電体多層膜としては、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層したものが挙げられる。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率が通常は1.7〜2.5の材料が選択される。このような材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛または酸化インジウム等を主成分とし、酸化チタン、酸化錫および/または酸化セリウム等を少量(例えば、主成分に対して0〜10重量%)含有させたものが挙げられる。
【0117】
低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率が通常は1.2〜1.6の材料が選択される。このような材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムが挙げられる。
【0118】
高屈折率材料層と低屈折率材料層とを積層する方法については、これらの材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はない。例えば、基材上に、直接、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法またはイオンプレーティング法等により、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することができる。
【0119】
高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さは、通常、遮断しようとする近赤外線波長をλ(nm)とすると、0.1λ〜0.5λの厚さが好ましい。λ(nm)の値としては、例えば700〜1400nm、好ましくは750〜1300nmである。厚さがこの範囲であると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学的膜厚と、高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さとがほぼ同じ値となって、反射・屈折の光学的特性の関係から、特定波長の遮断・透過を容易にコントロールできる傾向にある。
【0120】
誘電体多層膜における高屈折率材料層と低屈折率材料層との合計の積層数は、光学フィルター全体として16〜70層であることが好ましく、20〜60層であることがより好ましい。各層の厚み、光学フィルター全体としての誘電体多層膜の厚みや合計の積層数が前記範囲にあると、十分な製造マージンを確保できる上に、光学フィルターの反りや誘電体多層膜のクラックを低減することができる。
【0121】
本発明では、化合物(A)や化合物(S)などの近赤外線吸収剤の吸収特性に合わせて高屈折率材料層および低屈折率材料層を構成する材料種、高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さ、積層の順番、積層数を適切に選択することで、可視域に十分な透過率を確保した上で近赤外波長域に十分な光線カット特性を有し、且つ、斜め方向から近赤外線が入射した際の反射率を低減することができる。
【0122】
ここで、前記条件を最適化するには、例えば、光学薄膜設計ソフト(例えば、Essential Macleod、Thin Film Center社製)を用い、可視域の反射防止効果と近赤外域の光線カット効果を両立できるようにパラメーターを設定すればよい。上記ソフトの場合、例えば第一光学層の設計にあたっては、波長400〜700nmの目標透過率を100%、Target Toleranceの値を1とした上で、波長705〜950nmの目標透過率を0%、Target Toleranceの値を0.5にするなどのパラメーター設定方法が挙げられる。これらのパラメーターは基材(i)の各種特性などに合わせて波長範囲をさらに細かく区切ってTarget Toleranceの値を変えることもできる。
【0123】
[その他の機能膜]
本発明の光学フィルターは、本発明の効果を損なわない範囲において、基材と誘電体多層膜との間、基材の誘電体多層膜が設けられた面と反対側の面、または誘電体多層膜の基材が設けられた面と反対側の面に、基材や誘電体多層膜の表面硬度の向上、耐薬品性の向上、帯電防止および傷消しなどの目的で、反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を適宜設けることができる。
【0124】
本発明の光学フィルターは、前記機能膜からなる層を1層含んでもよく、2層以上含んでもよい。本発明の光学フィルターが前記機能膜からなる層を2層以上含む場合には、同様の層を2層以上含んでもよいし、異なる層を2層以上含んでもよい。
【0125】
機能膜を積層する方法としては、特に制限されないが、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤などを基材または誘電体多層膜に、前記と同様に溶融成形またはキャスト成形する方法等を挙げることができる。
【0126】
また、前記コーティング剤などを含む硬化性組成物をバーコーター等で基材または誘電体多層膜上に塗布した後、紫外線照射等により硬化することによっても製造することができる。
【0127】
前記コーティング剤としては、紫外線(UV)/電子線(EB)硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などが挙げられ、具体的には、ビニル化合物類や、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系樹脂などが挙げられる。これらのコーティング剤を含む前記硬化性組成物としては、ビニル系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系硬化性組成物などが挙げられる。
【0128】
また、前記硬化性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。前記重合開始剤としては、公知の光重合開始剤または熱重合開始剤を用いることができ、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0129】
前記硬化性組成物中、重合開始剤の配合割合は、硬化性組成物の全量を100重量%とした場合、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%である。重合開始剤の配合割合が前記範囲にあると、硬化性組成物の硬化特性および取り扱い性が優れ、所望の硬度を有する反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を得ることができる。
【0130】
さらに、前記硬化性組成物には溶剤として有機溶剤を加えてもよく、有機溶剤としては、公知のものを使用することができる。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。
【0131】
これら溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0132】
前記機能膜の厚さは、好ましくは0.1〜20μm、さらに好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは0.7〜5μmである。
【0133】
また、基材と機能膜および/または誘電体多層膜との密着性や、機能膜と誘電体多層膜との密着性を上げる目的で、基材、機能膜または誘電体多層膜の表面にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理をしてもよい。
【0134】
[光学フィルターの用途]
本発明の光学フィルターは、視野角が広く、優れた近赤外線カット能等を有する。したがって、カメラモジュールのCCDやCMOSイメージセンサー等の固体撮像素子の視感度補正用として有用である。特に、デジタルスチルカメラ、スマートフォン用カメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、ウェアラブルデバイス用カメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、テレビ、カーナビゲーション、携帯情報端末、ビデオゲーム機、携帯ゲーム機、指紋認証システム、デジタルミュージックプレーヤー等に有用である。さらに、自動車や建物等のガラス板等に装着される熱線カットフィルターなどとしても有用である。
【0135】
[固体撮像装置]
本発明の固体撮像装置は、本発明の光学フィルターを具備する。ここで、固体撮像装置とは、CCDやCMOSイメージセンサー等といった固体撮像素子を備えたイメージセンサーであり、具体的にはデジタルスチルカメラ、スマートフォン用カメラ、携帯電話用カメラ、ウェアラブルデバイス用カメラ、デジタルビデオカメラ等の用途に用いることができる。例えば、本発明のカメラモジュールは、本発明の光学フィルターを具備する。
【実施例】
【0136】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、「部」は、特に断りのない限り「重量部」を意味する。また、各物性値の測定方法および物性の評価方法は以下のとおりである。
【0137】
<分子量>
樹脂の分子量は、各樹脂の溶剤への溶解性等を考慮し、下記の(a)または(b)の方法にて測定を行った。
(a)ウォターズ(WATERS)社製のゲルパーミエ−ションクロマトグラフィー(GPC)装置(150C型、カラム:東ソー社製Hタイプカラム、展開溶剤:o−ジクロロベンゼン)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
(b)東ソー社製GPC装置(HLC−8220型、カラム:TSKgelα‐M、展開溶剤:THF)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
【0138】
なお、後述する樹脂合成例3で合成した樹脂については、上記方法による分子量の測定ではなく、下記方法(c)による対数粘度の測定を行った。
(c)ポリイミド樹脂溶液の一部を無水メタノールに投入してポリイミド樹脂を析出させ、ろ過して未反応単量体から分離した。80℃で12時間真空乾燥して得られたポリイミド0.1gをN−メチル−2−ピロリドン20mLに溶解し、キャノン−フェンスケ粘度計を使用して30℃における対数粘度(μ)を下記式により求めた。
【0139】
μ={ln(t
s/t
0)}/C
t
0:溶媒の流下時間
t
s:希薄高分子溶液の流下時間
C:0.5g/dL
<ガラス転移温度(Tg)>
エスアイアイ・ナノテクノロジーズ株式会社製の示差走査熱量計(DSC6200)を用いて、昇温速度:毎分20℃、窒素気流下で測定した。
【0140】
<分光透過率>
基材の各波長における透過率、(T
1)、(X
1)、(X
2)および(Xc)、ならびに、光学フィルターの各波長域における透過率、(Xa)および(Xb)は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計(U−4100)を用いて測定した。
【0141】
ここで、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率では、
図2(a)のようにフィルターに対して垂直に透過した光を測定し、光学フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率では、
図2(b)のようにフィルターの垂直方向に対して30°の角度で透過した光を測定した。
【0142】
なお、この透過率は、(Xb)を測定する場合を除き、光が基板およびフィルターに対して垂直に入射する条件で、該分光光度計を使用して測定したものである。(Xb)を測定する場合には、光がフィルターの垂直方向に対して30°の角度で入射する条件で該分光光度計を使用して測定したものである。
【0143】
<カメラ画像の色シェーディング評価>
光学フィルターをカメラモジュールに組み込んだ際の色シェーディング評価は下記の方法で行った。特開2016−110067号公報と同様の方法でカメラモジュールを作成し、作成したカメラモジュールを用いて300mm×400mmサイズの白色板をD65光源(X−Rite社製標準光源装置「マクベスジャッジII」)下で撮影し、カメラ画像における白色板の中央部と端部における色目の違いを以下の基準で評価した。
【0144】
全く問題がなく許容可能なレベルをA、若干色目の違いは認められるが高画質カメラモジュールとして実用上問題がなく許容可能なレベルをB、色目の違いが有り高画質カメラモジュール用途としては許容不可能なレベルをC、明らかな色目の違いが有り一般的なカメラモジュール用途としても許容不可能なレベルをDと判定した。
【0145】
なお、
図11に示すように、撮影を行う際はカメラ画像111の中で白色板112が面積の90%以上を占めるように白色板112とカメラモジュールの位置関係を調節した。
【0146】
<カメラ画像のゴースト評価>
光学フィルターをカメラモジュールに組み込んだ際のゴースト評価は下記の方法で行った。特開2016−110067号公報と同様の方法でカメラモジュールを作成し、作成したカメラモジュールを用いて暗室中ハロゲンランプ光源(林時計工業社製「ルミナーエースLA−150TX」)下で撮影し、カメラ画像における光源周辺のゴースト発生具合を以下の基準で評価した。
【0147】
全く問題がなく許容可能なレベルをA、若干のゴーストは認められるが高画質カメラモジュールとして実用上問題がなく許容可能なレベルをB、ゴーストが発生しており高画質カメラモジュール用途としては許容不可能なレベルをC、ゴーストの度合いがひどく一般的なカメラモジュール用途としても許容不可能なレベルをDと判定した。
【0148】
なお、
図12に示すように、撮影を行う際は、光源122がカメラ画像121の右上端部となるように調節した。
【0149】
[合成例]
下記実施例で用いた化合物(A)および化合物(S)は、一般的に知られている方法で合成した。一般的合成方法としては、例えば、特開昭60−228448号公報、特開平1−146846号公報、特開平1−228960号公報、特許第4081149号公報、「フタロシアニン −化学と機能―」(アイピーシー、1997年)、特開2009−108267号公報、特開2010−241873号公報、特許第3699464号公報、特許第4740631号公報などに記載されている方法を挙げることができる。
【0150】
<樹脂合成例1>
下記式(a)で表される8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン(以下「DNM」ともいう。)100g、1−ヘキセン(分子量調節剤)18gおよびトルエン(開環重合反応用溶媒)300gを、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/リットル)0.2gと、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9gとを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
【0151】
【化11】
このようにして得られた開環重合体溶液1,000gをオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C
6H
5)
3]
3を0.12g添加し、水素ガス圧100kg/cm
2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反応を行った。得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下「樹脂A」ともいう。)を得た。得られた樹脂Aは、数平均分子量(Mn)が32,000、重量平均分子量(Mw)が137,000であり、ガラス転移温度(Tg)が165℃であった。
【0152】
<樹脂合成例2>
3Lの4つ口フラスコに2,6−ジフルオロベンゾニトリル35.12g、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン87.60g、炭酸カリウム41.46g、N,N−ジメチルアセトアミド(以下「DMAc」ともいう。)443gおよびトルエン111gを添加した。続いて、4つ口フラスコに温度計、撹拌機、窒素導入管付き三方コック、ディーンスターク管および冷却管を取り付けた。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、得られた溶液を140℃で3時間反応させ、生成する水をディーンスターク管から随時取り除いた。水の生成が認められなくなったところで、徐々に温度を160℃まで上昇させ、そのままの温度で6時間反応させた。室温(25℃)まで冷却後、生成した塩をろ紙で除去し、ろ液をメタノールに投じて再沈殿させ、ろ別によりろ物(残渣)を単離した。得られたろ物を60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末(以下「樹脂B」ともいう。)を得た(収率95%)。得られた樹脂Bは、数平均分子量(Mn)が75,000、重量平均分子量(Mw)が188,000であり、ガラス転移温度(Tg)が285℃であった。
【0153】
<樹脂合成例3>
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク管および冷却管を備えた500mLの5つ口フラスコに、窒素気流下、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン27.66gおよび4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル7.38gを入れて、γ―ブチロラクトン68.65g及びN,N−ジメチルアセトアミド17.16gに溶解させた。得られた溶液を、氷水バスを用いて5℃に冷却し、同温に保ちながら1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物22.62gおよびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.50gを一括添加した。添加終了後、180℃に昇温し、随時留出液を留去させながら、6時間還流させた。反応終了後、内温が100℃になるまで空冷した後、N,N−ジメチルアセトアミド143.6gを加えて希釈し、攪拌しながら冷却し、固形分濃度20重量%のポリイミド樹脂溶液264.16gを得た。このポリイミド樹脂溶液の一部を1Lのメタノール中に注ぎいれてポリイミドを沈殿させた。濾別したポリイミドをメタノールで洗浄した後、100℃の真空乾燥機中で24時間乾燥させて白色粉末(以下「樹脂C」ともいう。)を得た。得られた樹脂CのIRスペクトルを測定したところ、イミド基に特有の1704cm
-1、1770cm
-1の吸収が見られた。樹脂Cはガラス転移温度(Tg)が310℃であり、対数粘度を測定したところ、0.87であった。
【0154】
[実施例1]
実施例1では、透明樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作成した。
【0155】
容器に、樹脂合成例1で得られた樹脂A 100部、化合物(A)として下記式(a−1)で表わされる化合物(a−1)(ジクロロメタン中での吸収極大波長698nm)0.04部および下記式(a−2)で表わされる化合物(a−2)(ジクロロメタン中での吸収極大波長733nm)0.04部、化合物(S)として上記表2−2に記載の化合物(s−6)(ジクロロメタン中での吸収極大波長1093nm)0.07部、および塩化メチレンを加えて樹脂濃度が20重量%の溶液を調製した。得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの透明樹脂製基板からなる基材を得た。この基材の分光透過率を測定し、(T
1)、(X
1)、(X
2)、(Xc)および各波長における透過率を求めた。結果を
図3および表5−1に示す。
【0156】
【化12】
【0157】
【化13】
続いて、得られた基材の片面に第一光学層として誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に第二光学層として誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.105mmの光学フィルターを得た。
【0158】
誘電体多層膜(I)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO
2)層とチタニア(TiO
2)層とが交互に積層されてなる(合計26層)。誘電体多層膜(II)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO
2)層とチタニア(TiO
2)層とが交互に積層されてなる(合計20層)。誘電体多層膜(I)および(II)のいずれにおいても、シリカ層およびチタニア層は、基材側からチタニア層、シリカ層、チタニア層、・・・シリカ層、チタニア層、シリカ層の順で交互に積層されており、光学フィルターの最外層をシリカ層とした。
【0159】
誘電体多層膜(I)および(II)の設計は、以下のようにして行った。
【0160】
各層の厚さと層数については、可視域の反射防止効果と近赤外域の選択的な透過・反射性能を達成できるよう基材屈折率の波長依存特性や、適用した化合物(S)および化合物(A)の吸収特性に合わせて光学薄膜設計ソフト(Essential Macleod、Thin Film Center社製)を用いて最適化を行った。最適化を行う際、本実施例においてはソフトへの入力パラメーター(Target値)を下記表3の通りとした。
【0161】
【表3】
膜構成最適化の結果、実施例1では、誘電体多層膜(I)は、膜厚31〜157nmのシリカ層と膜厚10〜95nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数26の多層蒸着膜となり、誘電体多層膜(II)は、膜厚37〜194nmのシリカ層と膜厚12〜114nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数20の多層蒸着膜となった。最適化を行った膜構成の一例を下記表4に示す。
【0162】
【表4】
得られた光学フィルターの垂直方向および垂直方向から30°の角度から測定した分光透過率を測定し、各波長領域における光学特性を評価した。結果を
図4および表5−1に示す。波長430〜580nmにおける透過率の平均値は84%、波長1100〜1200nmにおける透過率の平均値は1%以下、絶対値|Xa−Xb|は2nmであった。
【0163】
また、得られた光学フィルターを用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の色シェーディングおよびゴーストの評価を行った。結果を表5−1に示す。得られたカメラ画像は色シェーディングおよびゴーストにおいて良好な結果であった。
【0164】
[実施例2]
実施例2では、透明樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作成した。
【0165】
実施例1において、化合物(A)として下記式(a−3)で表わされる化合物(a−3)(ジクロロメタン中での吸収極大波長703nm)0.04部および下記式(a−4)で表わされる化合物(a−4)(ジクロロメタン中での吸収極大波長736nm)0.08部を用いたこと、化合物(S)として上記表2−3に記載の化合物(s−8)(ジクロロメタン中での吸収極大波長1096nm)0.06部を用いたこと、ならびにその他の色素(X)として下記式(X−1)で表される色素(X−1)(ジクロロメタン中での吸収極大波長887nm)0.01部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順および条件で化合物(A)および化合物(S)を含む透明樹脂製基板からなる基材を得た。この基材の分光透過率を測定し、(T
1)、(X
1)、(X
2)、(Xc)および各波長における透過率を求めた。結果を
図5および表5−1に示す。
【0166】
【化14】
【0167】
【化15】
【0168】
【化16】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に第一光学層としてシリカ(SiO
2)層とチタニア(TiO
2)層とが交互に積層されてなる(合計26層)誘電体多層膜(III)を形成し、さらに基材のもう一方の面に第二光学層としてシリカ(SiO
2)層とチタニア(TiO
2)層とが交互に積層されてなる(合計20層)誘電体多層膜(IV)を形成し、厚さ約0.105mmの光学フィルターを得た。誘電体多層膜の設計は、基材屈折率の波長依存性を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。得られた光学フィルターの垂直方向および垂直方向から30°の角度から測定した分光透過率を測定し、各波長領域における光学特性を評価した。また、得られた光学フィルターを用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の色シェーディングおよびゴーストの評価を行った。結果を表5−1に示す。
【0169】
[実施例3]
実施例3では、両面に樹脂層を有する透明樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作成した。
【0170】
実施例1において、化合物(A)として化合物(a−4)0.06部および下記式(a−5)で表わされる化合物(a−5)(ジクロロメタン中での吸収極大波長713nm)0.06部を用いたこと、化合物(S)として上記表2−4に記載の化合物(s−13)(ジクロロメタン中での吸収極大波長1096nm)0.08部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順および条件で化合物(A)および化合物(S)を含む透明樹脂製基板を得た。
【0171】
【化17】
得られた透明樹脂製基板の片面に、下記組成の樹脂組成物(1)をバーコーターで塗布し、オーブン中70℃で2分間加熱し、溶剤を揮発除去した。この際、乾燥後の厚みが2μmとなるように、バーコーターの塗布条件を調整した。次に、コンベア式露光機を用いて露光(露光量500mJ/cm
2,200mW)を行い、樹脂組成物(1)を硬化させ、透明樹脂製基板上に樹脂層を形成した。同様に、透明樹脂製基板のもう一方の面にも樹脂組成物(1)からなる樹脂層を形成し、化合物(A)および化合物(S)を含む透明樹脂製基板の両面に樹脂層を有する基材を得た。この基材の分光透過率を測定し、(T
1)、(X
1)、(X
2)、(Xc)および各波長における透過率を求めた。結果を表5−1に示す。
【0172】
樹脂組成物(1):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート 60重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 40重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 5重量部、メチルエチルケトン(溶剤、固形分濃度(TSC):30%)
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に第一光学層としてシリカ(SiO
2)層とチタニア(TiO
2)層とが交互に積層されてなる(合計26層)誘電体多層膜(V)を形成し、さらに基材のもう一方の面に第二光学層としてシリカ(SiO
2)層とチタニア(TiO
2)層とが交互に積層されてなる(合計20層)誘電体多層膜(VI)を形成し、厚さ約0.109mmの光学フィルターを得た。誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に基材屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。得られた光学フィルターの垂直方向および垂直方向から30°の角度から測定した分光透過率を測定し、各波長領域における光学特性を評価した。また、得られた光学フィルターを用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の色シェーディングおよびゴーストの評価を行った。結果を表5−1に示す。
【0173】
[実施例4]
実施例4では、樹脂製支持体の両面に化合物(A)を含む透明樹脂層を形成してなる基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作成した。
【0174】
容器に、樹脂合成例1で得られた樹脂Aおよび塩化メチレンを加えて樹脂濃度が20重量%の溶液を調製し、得られた溶液を用いたこと以外は、実施例1の樹脂製基板の作成と同様にして樹脂製支持体を作成した。
【0175】
得られた樹脂製支持体の両面に、実施例3と同様にして、下記組成の樹脂組成物(2)からなる樹脂層を形成し、樹脂製支持体の両面に化合物(A)および化合物(S)を含む透明樹脂層を形成してなる基材を得た。この基材の分光透過率を測定し、(T
1)、(X
1)、(X
2)、(Xc)および各波長における透過率を求めた。結果を表5−1に示す。
【0176】
樹脂組成物(2):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート 100重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4重量部、化合物(a−1)0.10重量部、化合物(a−2)0.10重量部、化合物(s−6)1.75重量部、メチルエチルケトン(溶剤、TSC:25%)
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に第一光学層としてシリカ(SiO
2)層とチタニア(TiO
2)層とが交互に積層されてなる(合計26層)誘電体多層膜(VII)を形成し、さらに基材のもう一方の面に第二光学層としてシリカ(SiO
2)層とチタニア(TiO
2)層とが交互に積層されてなる(合計20層)誘電体多層膜(VIII)を形成し、厚さ約0.109mmの光学フィルターを得た。誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に基材屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。得られた光学フィルターの垂直方向および垂直方向から30°の角度から測定した分光透過率を測定し、各波長領域における光学特性を評価した。また、得られた光学フィルターを用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の色シェーディングおよびゴーストの評価を行った。結果を表5−1に示す。
【0177】
[実施例5]
実施例5では、片面に化合物(A)を含む透明樹脂層を有する透明ガラス基板からなる基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作成した。
【0178】
縦60mm、横60mmの大きさにカットした透明ガラス基板「OA−10G(厚み150um)」(日本電気硝子(株)製)上に下記組成の樹脂組成物(3)をスピンコーターで塗布し、ホットプレート上80℃で2分間加熱して溶剤を揮発除去した。この際、乾燥後の厚みが2μmとなるように、スピンコーターの塗布条件を調整した。次に、コンベア式露光機を用いて露光(露光量500mJ/cm
2,200mW)を行い、樹脂組成物(3)を硬化させ、化合物(A)および化合物(S)を含む透明樹脂層を有する透明ガラス基板からなる基材を得た。この基材の分光透過率を測定し、(T
1)、(X
1)、(X
2)、(Xc)および各波長における透過率を求めた。結果を表5−1に示す。
【0179】
樹脂組成物(3):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート 20重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 80重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4重量部、化合物(a−1)0.20重量部、化合物(a−2)0.20重量部、化合物(s−6)3.50重量部、メチルエチルケトン(溶剤、TSC:35%)
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に第一光学層としてシリカ(SiO
2)層とチタニア(TiO
2)層とが交互に積層されてなる(合計26層)誘電体多層膜(IX)を形成し、さらに基材のもう一方の面に第二光学層としてシリカ(SiO
2)層とチタニア(TiO
2)層とが交互に積層されてなる(合計20層)誘電体多層膜(X)を形成し、厚さ約0.107mmの光学フィルターを得た。誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に基材屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。得られた光学フィルターの垂直方向および垂直方向から30°の角度から測定した分光透過率を測定し、各波長領域における光学特性を評価した。また、得られた光学フィルターを用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の色シェーディングおよびゴーストの評価を行った。結果を表5−1に示す。
【0180】
[実施例6]
実施例6では、片面に化合物(A)を含む透明樹脂層を有する近赤外線吸収ガラス基板からなる基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作成した。
【0181】
縦60mm、横60mmの大きさにカットした近赤外線吸収ガラス基板「BS−11(厚み120μm)」(松浪硝子工業(株)製)上に下記組成の樹脂組成物(4)をスピンコーターで塗布し、ホットプレート上80℃で2分間加熱して溶剤を揮発除去した。この際、乾燥後の厚みが2μmとなるように、スピンコーターの塗布条件を調整した。次に、コンベア式露光機を用いて露光(露光量500mJ/cm
2,200mW)を行い、樹脂組成物(4)を硬化させ、化合物(A)を含む透明樹脂層を有する近赤外線吸収ガラス基板からなる基材を得た。この基材の分光透過率を測定し、(T
1)、(X
1)、(X
2)、(Xc)および各波長における透過率を求めた。結果を
図6および表5−1に示す。
【0182】
樹脂組成物(4):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート 20重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 80重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4重量部、化合物(a−3)0.15重量部、化合物(a−4)0.30重量部、メチルエチルケトン(溶剤、TSC:35%)
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に第一光学層としてシリカ(SiO
2)層とチタニア(TiO
2)層とが交互に積層されてなる(合計26層)誘電体多層膜(XI)を形成し、さらに基材のもう一方の面に第二光学層としてシリカ(SiO
2)層とチタニア(TiO
2)層とが交互に積層されてなる(合計20層)誘電体多層膜(XII)を形成し、厚さ約0.107mmの光学フィルターを得た。誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に基材屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。得られた光学フィルターの垂直方向および垂直方向から30°の角度から測定した分光透過率を測定し、各波長領域における光学特性を評価した。また、得られた光学フィルターを用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の色シェーディングおよびゴーストの評価を行った。結果を表5−1に示す。
【0183】
[実施例7]
実施例7では、両面に近赤外線吸収微粒子を含む透明樹脂層を有する、化合物(A)を含む透明樹脂製基板からなる基材を有する光学フィルターを以下の手順および条件で作成した。
【0184】
実施例2において、化合物(S−8)とその他の色素(X−1)を用いなかったこと以外は、実施例2と同様の手順および条件で化合物(A)を含む透明樹脂製基板を得た。
【0185】
得られた樹脂製基板の両面に、実施例3と同様にして、下記組成の樹脂組成物(5)からなる樹脂層を形成し、両面に近赤外線吸収微粒子を含む透明樹脂層を有する、化合物(A)を含む透明樹脂製基板からなる基材を得た。この基材の分光透過率を測定し、(T
1)、(X
1)、(X
2)、(Xc)および各波長における透過率を求めた。結果を
図7および表5−1に示す。
【0186】
樹脂組成物(5):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート 100重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4重量部、近赤外線吸収微粒子分散液(住友金属鉱山(株)製YMF−02A)35重量部(固形分換算で約10重量部)、メチルエチルケトン(溶剤、TSC:30%)
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に第一光学層としてシリカ(SiO
2)層とチタニア(TiO
2)層とが交互に積層されてなる(合計26層)誘電体多層膜(XIII)を形成し、さらに基材のもう一方の面に第二光学層としてシリカ(SiO
2)層とチタニア(TiO
2)層とが交互に積層されてなる(合計20層)誘電体多層膜(XIV)を形成し、厚さ約0.109mmの光学フィルターを得た。誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に基材屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。得られた光学フィルターの垂直方向および垂直方向から30°の角度から測定した分光透過率を測定し、各波長領域における光学特性を評価した。また、得られた光学フィルターを用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の色シェーディングおよびゴーストの評価を行った。結果を表5−1に示す。
【0187】
[実施例8〜13]
樹脂、溶媒、樹脂製基板の乾燥条件、化合物(A)、化合物(S)およびその他の色素(X)を表5−1に示すように変更したこと以外は、実施例3と同様にして基材および光学フィルターを作成した。得られた基材および光学フィルターの光学特性を表5−1に示す。また、得られた光学フィルターを用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の色シェーディングおよびゴーストの評価を行った。結果を表5−1に示す。
【0188】
[比較例1]
実施例1において、化合物(S)および化合物(A)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして基材および光学フィルターを作成し、光学特性を評価した。また、得られた光学フィルターを用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の色シェーディングおよびゴーストの評価を行った。結果を表5−2に示す。比較例1で得られた光学フィルターは、比較的良好な可視光透過率を示すものの、光学特性の入射角依存性が大きく、基材が700nm付近や近赤外波長領域に吸収を持たないことから、色シェーディング抑制効果やゴースト抑制効果に劣ることが確認された。
【0189】
[比較例2]
基材として透明ガラス基板「OA−10G(厚み150um)」(日本電気硝子(株)製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして光学フィルターを作成し、光学特性を評価した。また、得られた光学フィルターを用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の色シェーディングおよびゴーストの評価を行った。結果を表5−2に示す。比較例2で得られた光学フィルターは、比較的良好な可視光透過率を示すものの、光学特性の入射角依存性が大きく、基材が700nm付近や近赤外波長領域に吸収を持たないことから、色シェーディング抑制効果やゴースト抑制効果に劣ることが確認された。
【0190】
[比較例3]
基材として近赤外線吸収ガラス基板「BS−11(厚み120um)」(松浪硝子工業(株)製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして光学フィルターを作成し、光学特性を評価した。また、得られた光学フィルターを用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の色シェーディングおよびゴーストの評価を行った。結果を表5−2に示す。また、基材の分光透過スペクトルを
図8に示す。比較例3で得られた光学フィルターは、比較的良好な光学特性を示すものの、基材の700nm付近の吸収強度が十分でなく、色シェーディング抑制効果に劣ることが確認された。
【0191】
[比較例4]
実施例3において、化合物(S)を用いずに、化合物(A)として化合物(a−4)0.08部および化合物(a−5)0.06部を用いたこと、ならびに色素(X−1)0.01部を用いたこと以外は、実施例3と同様にして基材および光学フィルターを作成し、光学特性を評価した。また、得られた光学フィルターを用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の色シェーディングおよびゴーストの評価を行った。結果を表5−2に示す。また、基材の分光透過スペクトルを
図9に示す。比較例5で得られた光学フィルターは、比較的良好な光学特性を示すものの、基材の近赤外波長領域における吸収強度が十分でなく、ゴースト抑制効果に劣ることが確認された。
【0192】
[比較例5]
実施例6において、樹脂組成物(4)の代わりに下記組成の樹脂組成物(6)を用いたこと以外は、実施例6と同様にして基材および光学フィルターを作成した。
【0193】
樹脂組成物(6):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート 20重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 80重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4重量部、化合物(a−1)0.15重量部、メチルエチルケトン(溶剤、TSC:35%)
得られた基材および光学フィルターの光学特性を評価した。また、得られた光学フィルターを用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の色シェーディングおよびゴーストの評価を行った。結果を表5−2に示す。また、基材の分光透過スペクトルを
図10に示す。比較例5で得られた光学フィルターは、比較的良好な光学特性を示すものの、基材の700nm付近の吸収強度が十分でなく、色シェーディング抑制効果に劣ることが確認された。
【0194】
[比較例6]
実施例3において、化合物(A)として化合物(a−3)0.04部および化合物(a−4)0.08部を用いたこと、化合物(S)として化合物(s−6)0.01部を用いたこと以外は、実施例3と同様にして基材および光学フィルターを作成し、光学特性を評価した。また、得られた光学フィルターを用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の色シェーディングおよびゴーストの評価を行った。結果を表5−2に示す。比較例6で得られた光学フィルターは、比較的良好な光学特性を示すものの、基材の近赤外波長領域における吸収強度が十分でなく、ゴースト抑制効果に劣ることが確認された。
【0195】
[比較例7]
実施例3において、化合物(A)として化合物(a−1)0.04部を用いたこと、化合物(S)として化合物(s−6)0.07部を用いたこと以外は、実施例3と同様にして基材および光学フィルターを作成し、光学特性を評価した。また、得られた光学フィルターを用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の色シェーディングおよびゴーストの評価を行った。結果を表5−2に示す。比較例7で得られた光学フィルターは、比較的良好な光学特性を示すものの、基材の700nm付近の吸収強度が十分でなく、色シェーディング抑制効果に劣ることが確認された。
【0196】
[比較例8]
実施例3において、化合物(A)として化合物(a−1)0.04部を用いたこと、化合物(S)として上記表2−4に記載の化合物(s−14)(ジクロロメタン中での吸収極大波長1097nm)0.45部を用いたこと以外は、実施例3と同様にして基材および光学フィルターを作成し、光学特性を評価した。また、得られた光学フィルターを用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の色シェーディングおよびゴーストの評価を行った。結果を表5−2に示す。比較例8で得られた光学フィルターは、比較的良好な光学特性を示すものの、基材の700nm付近の吸収強度が十分でなく、色シェーディング抑制効果に劣ることが確認された。
【0197】
実施例および比較例で適用した基材の構成、各種化合物などは下記の通りである。
【0198】
<基材の形態>
形態(1):化合物(A)を含む透明樹脂製基板
形態(2):化合物(A)を含む透明樹脂製基板の両面に樹脂層を有する
形態(3):樹脂製支持体の両面に化合物(A)を含む透明樹脂層を有する
形態(4):透明ガラス基板の片方の面に化合物(A)を含む透明樹脂層を有する
形態(5):近赤外線吸収ガラス基板の片方の面に化合物(A)を含む透明樹脂層を有する
形態(6):化合物(A)を含む透明樹脂製基板の両面に近赤外線吸収微粒子を含む透明樹脂層を有する
形態(7):化合物(A)を含まない透明樹脂製基板(比較例)
形態(8):透明ガラス基板(比較例)
形態(9):近赤外線吸収ガラス基板(比較例)
<透明樹脂>
樹脂A:環状ポリオレフィン系樹脂(樹脂合成例1)
樹脂B:芳香族ポリエーテル系樹脂(樹脂合成例2)
樹脂C:ポリイミド系樹脂(樹脂合成例3)
樹脂D:環状オレフィン系樹脂「ゼオノア 1420R」(日本ゼオン(株)製)
<ガラス基板>
ガラス基板(1):縦60mm、横60mmの大きさにカットした透明ガラス基板「OA−10G(厚み150μm)」(日本電気硝子(株)製)
ガラス基板(2):縦60mm、横60mmの大きさにカットした近赤外線吸収ガラス基板「BS−11(厚み120μm)」(松浪硝子工業(株)製)
<近赤外線吸収色素>
≪化合物(A)≫
化合物(a−1):上記の化合物(a−1)(ジクロロメタン中での吸収極大波長698nm)
化合物(a−2):上記の化合物(a−2)(ジクロロメタン中での吸収極大波長733nm)
化合物(a−3):上記の化合物(a−3)(ジクロロメタン中での吸収極大波長703nm)
化合物(a−4):上記の化合物(a−4)(ジクロロメタン中での吸収極大波長736nm)
化合物(a−5):上記の化合物(a−5)(ジクロロメタン中での吸収極大波長713nm)
化合物(a−6):下記式(a−6)で表されるシアニン系化合物(ジクロロメタン中での吸収極大波長681nm)
【0199】
【化18】
≪化合物(S)≫
化合物(s−6):上記の化合物(s−6)(ジクロロメタン中での吸収極大波長1093nm)
化合物(s−8):上記の化合物(s−8)(ジクロロメタン中での吸収極大波長1096nm)
化合物(s−13):上記の化合物(s−14)(ジクロロメタン中での吸収極大波長1096nm)
化合物(s−14):上記の化合物(s−15)(ジクロロメタン中での吸収極大波長1097nm)
≪その他の色素(X)≫
色素(X−1):上記の色素(X−1)(ジクロロメタン中での吸収極大波長887nm)
色素(X−2):下記式(X−2)で表される色素(ジクロロメタン中での吸収極大波長811nm)
【0200】
【化19】
<溶媒>
溶媒(1):塩化メチレン
溶媒(2):N,N−ジメチルアセトアミド
溶媒(3):シクロヘキサン/キシレン(重量比:7/3)
表5−1および表5−2における、実施例および比較例の(透明)樹脂製基板の乾燥条件は以下の通りである。なお、減圧乾燥前に、塗膜をガラス板から剥離した。
【0201】
<フィルム乾燥条件>
条件(1):20℃/8hr→減圧下 100℃/8hr
条件(2):60℃/8hr→80℃/8hr→減圧下 140℃/8hr
条件(3):60℃/8hr→80℃/8hr→減圧下 100℃/24hr
【0202】
【表5-1】
【0203】
【表5-2】