(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を具体化した実施形態について、図面を参照して順に説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0012】
<切断装置1Aの概要>
図1〜
図3を参照し、切断装置1Aの概要を説明する。切断装置1Aは、切断刃モジュールCを固定可能なカートリッジ4A又は針モジュールPを固定可能なカートリッジ4Bが装着された状態で使用される。切断装置1Aは、カートリッジ4Aが装着された場合、切断刃モジュールCの切断刃Csを用いてシート状の対象物20を切断することが可能である。又、切断装置1Aは、カートリッジ4Bが装着された場合、針モジュールPの針Psを対象物20に突き刺して複数の穴を開けることによって、パーフォレイティングを行うことが可能である。カートリッジ4A、4Bを総称して、「カートリッジ4」という。
図1の左下側、右上側、右下側、左上側、上側、下側を、各々、切断装置1A及びカートリッジ4の左側、右側、前側、後側、上側、下側とする。
【0013】
切断装置1Aは、本体カバー9、プラテン3、ヘッド5、搬送部7、移動部8、保持部材10、制御部71(
図6参照)を備える。保持部材10は長手方向を前後方向とする姿勢で、切断装置1Aによって前後方向に搬送される。保持部材10は矩形板状を有し、対象物20を上面で保持する。保持部材10の詳細は後述する。本体カバー9には、開口部91、カバー92、及び操作部50が設けられている。開口部91は、本体カバー9の正面部に設けられた開口である。カバー92は、左右方向に長い板状の部材である。カバー92の下端側は、回動可能に本体カバー9に支持される。
図1では、カバー92が開けられ、開口部91が開放されている。
【0014】
操作部50は、液晶ディスプレイ(LCD)51、複数の操作スイッチ52、及びタッチパネル53を備える。LCD51には、コマンド、イラスト、設定値、及びメッセージ等の様々な項目を含む画像が表示される。タッチパネル53は、LCD51の表面に設けられる。ユーザは、指及びスタイラスペンの何れかを用いてタッチパネル53の押圧操作を行う(以下、この操作を「パネル操作」という)。切断装置1Aでは、タッチパネル53により検知される押圧位置に対応して、どの項目が選択されたかが認識される。ユーザは、操作スイッチ52及びタッチパネル53を用いて、LCD51に表示された模様の選択、各種パラメータの設定、及び入力の操作等を行うことができる。
【0015】
プラテン3は、本体カバー9内に設けられる。プラテン3は左右方向に延びる板状部材である。プラテン3は保持部材10の下面を受け、対象物20を保持する保持部材10を載置可能である。保持部材10は、開口部91が開放された状態で、プラテン3上にセットされる。
【0016】
ヘッド5は、キャリッジ19、装着部32、検出器41(
図3参照)、及び上下駆動機構33を備える。装着部32及び上下駆動機構33は各々、キャリッジ19に対して前後に配置される。装着部32は、カートリッジ4を装着可能である。切断刃モジュールCを固定した状態のカートリッジ4Aが装着された場合、カートリッジ4Aは、下端に切断刃Csが配置された状態で装着部32に固定される。針モジュールPを固定した状態でカートリッジ4Bが装着された場合、カートリッジ4Bは、下端に針Psが配置された状態で装着部32に固定される。
【0017】
上下駆動機構33は、装着部32が保持部材10に向かう方向(下方)及び装着部32が保持部材10から離隔する方向(上方)に装着部32を移動させる。これにより上下駆動機構33は、装着部32に装着されたカートリッジ4を上下方向に移動させる。本例の上下駆動機構33は、Z軸モータ34及び伝達部材を備え、Z軸モータ34の回動運動を、Z軸モータ34の出力軸に連結した伝達部材により減速し且つ上下運動に変換して、装着部32に伝達し、装着部32及びカートリッジ4を上下方向(Z方向ともいう。)に駆動させる。すなわち、Z軸モータ34は、装着部32及びカートリッジ4を上下方向に駆動する。
【0018】
図2及び
図3に示すように、上下駆動機構33は、伝達部材として、ギヤ35、36、軸37、板部48、ピニオン38、及びラック39を有する。ギヤ35は、Z軸モータ34の出力軸40の前端に固定されている。ギヤ35は、ギヤ36と噛み合う。ギヤ35の径は、ギヤ36の径よりも小さい。ギヤ36は前後方向に延びる筒状の軸部46を有する。ギヤ36の軸部46は軸37に挿通される。Z軸モータ34の出力軸40と、軸37とは前後方向に延びる。板部48は、ギヤ36の径よりもやや小さい円盤状である。板部48の前端部はピニオン38の後端部と連結する。板部48はピニオン38と一体の部材である。板部48はギヤ36とは別体の部材である。板部48及びピニオン38は、ギヤ36の回動とは独立して、回動可能である。ピニオン38及び板部48はギヤ36の前方において軸37に挿通される。ピニオン38及び板部48は軸37に対して相対的に回動可能である。ピニオン38の径は、ギヤ35、36の径よりも小さい。ラック39は上下方向に延び、右面にピニオン38と噛み合うギヤ歯を備える。ラック39は、装着部32の背面に固定されている。
【0019】
上下駆動機構33は更に、圧力変更部材31を備える。圧力変更部材31は、ギヤ36の軸部46に挿入されたネジリバネである。圧力変更部材31は、装着部32に加える下方の圧力を変更可能な部材である。圧力変更部材31は、一端が軸部46に固定され、他端が板部48に固定される。圧力変更部材31は、ギヤ36の回動を、板部48に伝達する。圧力変更部材31は、ギヤ36の回動に応じてネジリバネの圧縮量が変化することにより、装着部32に加える下方の圧力を変化させる。
【0020】
検出器41は、装着部32の上下方向の位置を出力可能な位置センサである。検出器41は、装着部32の左後方に配置される。検出器41は、装着部32の上下方向の位置を特定し、特定された位置を示す信号を出力可能である。
【0021】
搬送部7は後述の主走査方向に対して直交する副走査方向に保持部材10の第2保持部102(後述)を搬送することにより、保持部材10に保持された対象物20を副走査方向に搬送する。本例の主走査方向及び副走査方向は各々、左右方向及び前後方向である。搬送部7は、プラテン3上にセットされた保持部材10を、切断装置1Aの前後方向(Y方向ともいう)に搬送可能に構成されている。搬送部7は、保持部材10により保持された対象物20を副走査方向に搬送させる。搬送部7は、駆動ローラ12、ピンチローラ13、取付フレーム14、Y軸モータ15、及び減速機構17を備える。本体カバー9内には、一対の側壁部111、112が、互いに向かい合うように設けられている。側壁部111は、プラテン3の左側に位置する。側壁部112は、プラテン3の右側に位置する。駆動ローラ12及びピンチローラ13は、側壁部111、112の間に回転可能に支持される。駆動ローラ12及びピンチローラ13は、保持部材10を移送する。駆動ローラ12及びピンチローラ13は、切断装置1Aの左右方向(X方向ともいう)に延び、上下方向に並んで配設される。ピンチローラ13の左部にはローラ部(図示略)が設けられ、右部にはローラ部131が設けられる。
【0022】
取付フレーム14は、側壁部112の外面側(右側)に固定される。取付フレーム14には、Y軸モータ15が取付けられる。Y軸モータ15の出力軸は、減速機構17の駆動ギヤ(図示略)に固定されている。駆動ギヤは従動ギヤ(図示略)に噛合する。従動ギヤは、駆動ローラ12の右端部の先端に固着されている。
【0023】
保持部材10が搬送される時、保持部材10の左外側の部位は、駆動ローラ12と、ピンチローラ13の左側のローラ部(図示略)との間に挟持される。保持部材10の右外側の部位は、駆動ローラ12とローラ部131との間に挟持される。Y軸モータ15が正転駆動又は逆転駆動されると、Y軸モータ15の回転運動が、減速機構17を介して駆動ローラ12に伝わる。すなわち、Y軸モータ15は駆動ローラ12を駆動する。これにより、保持部材10が後方又は前方へ搬送される。
【0024】
移動部8は、ヘッド5を、保持部材10の搬送方向と交差する方向、すなわちX方向に移動可能に構成されている。つまり、ヘッド5の移動方向は、保持部材10の搬送方向と直交する。移動部8は、上下一対のガイドレール21、22、取付フレーム24、X軸モータ25、減速機構としての駆動ギヤ27及び従動ギヤ29、並びに伝達機構30等を備える。ガイドレール21、22は、側壁部111、112の間に固定されている。ガイドレール21及び22は、ピンチローラ13に対して後方且つ上方に位置する。ガイドレール21及び22は、ピンチローラ13と略平行つまりX方向に延びる。ヘッド5のキャリッジ19は、ガイドレール21及び22に沿ってX方向へ移動可能に、ガイドレール21及び22に支持される。
【0025】
取付フレーム24は、側壁部111の外面側(左側)に固定されている。X軸モータ25は、取付フレーム24の後方に、下向きに取り付けられている。駆動ギヤ27は、X軸モータ25の出力軸に固定されている。従動ギヤ29は駆動ギヤ27に噛合する。伝達機構30は、図示しない、左右一対のタイミングプーリと、左右一対のタイミングプーリに掛装された無端状のタイミングベルトを有する。一方のタイミングプーリ28は、従動ギヤ29と一体に回動可能に、取付フレーム24に設けられる。他方のタイミングプーリは、取付フレーム14に設けられる。タイミングベルトはX方向に延び、キャリッジ19に連結されている。
【0026】
移動部8は、ヘッド5の装着部32に装着されたカートリッジ4を、主走査方向に移動する。移動部8は、X軸モータ25の回転運動をX方向の運動に変換して、キャリッジ19に伝達する。X軸モータ25が正転駆動又は逆転駆動すると、X軸モータ25の回転運動が、駆動ギヤ27、従動ギヤ29、及びタイミングプーリ28を介してタイミングベルトに伝わる。これにより、キャリッジ19は、左方又は右方へ移動される。即ち、搬送部7及び移動部8は、保持部材10に対して前後方向(副走査方向)及び左右方向(主走査方向)に装着部32を移動させる。
【0027】
<保持部材10>
図1、
図4を参照し、保持部材10について説明する。
図1に示すように、保持部材10は、第1保持部101及び第2保持部102を有する。第1保持部101及び第2保持部102は、それぞれ板状を有する。
【0028】
第1保持部101は略矩形状を有し、上下方向と直交する。第1保持部101の右後端部に、後方に向けて突出する突出部10Tが設けられる。
図4に示すように、第1保持部101は、ウレタンゲルマット10B、基材フィルム10C、粘着層10D、非粘着フィルム10Eが上から順に積層した断面構造を有する。
【0029】
基材フィルム10Cはフィルム状を有し、第1保持部101の基台となる。基材フィルム10Cは、PET(ポリエチレンテレフタラート)からなる。なお、基材フィルム10Cの材料はPETに限定されず、他の材料(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等)でもよい。ウレタンゲルマット10Bは、基材フィルム10Cの上面に形成される。ウレタンゲルマット10Bは、自己粘着性を有するエラストマーゲル、より詳細には、ウレタンエラストマーゲルにより構成される。ウレタンゲルマット10Bの厚さは、約1mmである。ウレタンゲルマット10BのアスカーC硬度は、20以上40以下、より好ましくは、25以上35以下である。ウレタンゲルマット10Bの粘着力は、20度のときに0.5N/25mm以上6.0N/25mm以下、より好ましくは、20度のときに1.5N/25mm以上4.0N/25mm以下である。ウレタンゲルマット10Bの上面は、第1保持部101の上面に対応する。以下、この面を「第1面101A」という。第1保持部101は、ウレタンゲルマット10Bの自己粘着性により対象物20を第1面101Aに貼付することによって、対象物20を第1面101Aで保持することが可能である。
【0030】
基材フィルム10Cの下面に、非粘着フィルム10Eが配置される。非粘着フィルム10EはPETからなる。非粘着フィルム10Eは非粘着性を有し、他のフィルム等に対して貼付され難い。このため、非粘着フィルム10Eの上面は、粘着層10Dの粘着剤によって基材フィルム10Cの下面に貼付される。非粘着フィルム10Eの下面は、第1保持部101の下面、言い換えれば、第1保持部101の第1面101Aとは反対の面に対応する。以下、この面を「第2面101B」という。第2面101Bは、非粘着フィルム10Eが露出するため非粘着性を有する。
【0031】
第1保持部101の第1面101Aには、カバーフィルム10Aが貼付される場合がある。カバーフィルム10Aはフィルム状を有する。カバーフィルム10Aは、第1保持部101の未使用時、ウレタンゲルマット10Bに他の物体が貼り付くことを防止する。カバーフィルム10Aは、ウレタンゲルマット10Bから剥がすことが可能である。第1保持部101は、使用時に第1面101Aからカバーフィルム10Aが剥がされて使用される。カバーフィルム10Aが第1面101Aから剥がれた状態で、ウレタンゲルマット10Bは露出する。この状態で、第1保持部101は対象物20を第1面101Aに貼り付けて保持することが可能となる。
【0032】
図1に示すように、第2保持部102は矩形状を有し、上下方向と直交する。第2保持部102は、例えば合成樹脂材料からなる。第2保持部102の硬度は、第1保持部101のウレタンゲルマット10Bの硬度よりも高い。第2保持部102の前後方向及び左右方向の長さは、それぞれ、第1保持部101の前後方向及び左右方向の長さよりも長い。保持部材10を上方から視た場合、第1保持部材101の周端部は、第2保持部102の周端部よりも内側に位置する。第1保持部101は、第2保持部102の周端部により囲まれている。このため第2保持部102は、第1保持部101よりも面積が大きい。第2保持部102の上面を「第3面102A」といい、第2保持部102の下面を「第4面102B」という。
【0033】
第2保持部102の第3面102Aのうち、周縁部を除く領域(以下、「粘着領域」という。)は、粘着性を有する。第2保持部102は、第1保持部101の第2面101B(
図4参照)を、第3面102Aの粘着領域に接触させて貼り付けることによって、第1保持部101を第3面102Aで保持できる。搬送部7は、第1保持部101を保持した状態の第2保持部102を搬送することにより、装着部32と第1保持部101とを前後方向に相対移動させる。これによって、搬送部7は、第1保持部101の第1面101Aに保持された対象物20と装着部32とを前後方向に相対移動させることができる。
【0034】
又、第2保持部102は、第1保持部101を第3面102Aの粘着領域から剥がすことによって、第1保持部101を脱離可能である。更に、第2保持部102は、第1保持部101が脱離された状態で対象物20を第3面102Aの粘着領域に貼り付けることによって、対象物20を第3面102Aで直接保持できる。搬送部7は、対象物20を直接保持した状態の第2保持部102を搬送することにより、対象物20と装着部32とを前後方向に相対移動させることができる。
【0035】
図1に示すように、保持部材10に検出領域Rd、Rnを定義する。検出領域Rdは、第2保持部102により第1保持部101が保持された状態で、第1保持部101の突出部10Tと第2保持部102とが積層して配置される領域である。なお、第2保持部102から第1保持部101が剥がされた状態では、検出領域Rdに第1保持部101の突出部10Tは配置されず、第2保持部102のみ配置される。検出領域Rnは、検出領域Rdに対して左方に位置する。検出領域Rnには、第2保持部102によって第1保持部101が保持されているか否かに関わらず、常に第2保持部102のみ配置される。
【0036】
<針モジュールP>
針モジュールPは、カートリッジ4B(
図1参照)に装着されて使用される。
図5に示すように、針モジュールPは、基部61、ツマミ62、カバー63、及び、針Psを有する。基部61は略円柱状を有し、上下方向に延びる。ツマミ62は板状を有し、基部61の上端に設けられる。ツマミ62は、カートリッジ4Bに対して針モジュールPを着脱する場合において、ユーザによって把持される。カバー63は、基部61の下端に設けられる。カバー63は、円柱体63A及び切欠き63Bにより構成される。円柱体63Aは、基部61の下端から下方に向けて延びる。切欠き63Bは、円柱体63Aの下面に設けられる。切欠き63Bは、上方に凹んだ凹部である。切欠き63Bは、円柱体63Aの下端を前端から後端に亘って前後方向に延びる。
【0037】
針Psは、基部61内で保持される。針Psの軸線は、上下方向に延びる。針Psの先端部は、カバー63の切欠き63Bの底面から、下方に向けて突出する。針Psのうち切欠き63Bの底面から突出する部分は、第1部66及び第2部67を有する。第1部66の径は、軸方向において、約0.4mm〜0.8mmで同一となる。第2部67は、第1部66よりも先端側に位置する。第2部67は、軸方向において径が先端に向かう程小さくなる。第2部67の軸方向の長さNは、約1mmである。針Psの先端は、カバー63の円柱体63Aの下端よりも下方に突出する。
【0038】
なお、上記のように、第1保持部101のウレタンゲルマット10Bの厚さは1mmであるため、第1保持部101全体の厚さは1mmよりも大きくなる。従って、第1保持部101の厚さ(>1mm)は、第2部67の軸方向の長さN(1mm)よりも大きくなる。
【0039】
<切断装置1Aの電気的構成>
図6を参照して、切断装置1Aの電気的構成を説明する。切断装置1Aは、制御部71、ROM72、RAM73、及び入出力(I/O)インタフェイス75を備える。制御部71は、ROM72、RAM73、及びI/Oインタフェイス75と電気的に接続されている。制御部71は、ROM72及びRAM73と共に、切断装置1Aの主制御を司るCPUである。ROM72は、切断装置1Aを動作させるための各種プログラム等を記憶する。RAM73は、制御部71が演算処理した演算結果等を一時的に記憶する。
【0040】
I/Oインタフェイス75には、更に、フラッシュメモリ74、操作スイッチ52、タッチパネル53、LCD51、検出器41、駆動回路77〜79が接続されている。フラッシュメモリ74は、各種パラメータ、切断データ、プロットデータ等を記憶する不揮発性記憶素子である。
【0041】
切断データは、切断刃Csにより対象物20を切断して所望の形状を切り取るための上下駆動機構33、搬送部7、及び移動部8の制御条件を示す。切断データは、搬送部7及び移動部8を制御するための開始座標及び終了座標を含む。プロットデータは、針Psにより対象物20に穴を開けることによりパーフォレイティングを実行する場合の上下駆動機構33、搬送部7、移動部8の制御条件を示す。プロットデータは、搬送部7及び移動部8を制御するための複数のプロット座標を含む。座標系の原点は、切断又は穴開け可能な領域の左後方の点である。左右方向がX方向に設定され、前後方向がY方向に設定される。切断データ及びプロットデータは、切断又はパーフォレイティングの対象となる模様や図柄等(以下、「オブジェクト」という。)毎にフラッシュメモリ74に記憶される。
【0042】
LCD51は、各種指示を報知可能である。検出器41は、装着部32の上下方向の位置を示す信号を出力する。駆動回路77〜79は各々、Y軸モータ15、X軸モータ25、及びZ軸モータ34を駆動する。制御部71は、駆動回路77〜79を介してY軸モータ15、X軸モータ25、及びZ軸モータ34等を駆動し、搬送部7、移動部8、及び上下駆動機構33を制御する。これにより制御部71は、装着部32と保持部材10とを相対移動させる。
【0043】
<切断装置1Aの動作概要(パーフォレイティング動作)>
切断装置1Aがプロットデータに従って対象物20に針Psで穴を開ける動作(以下、「パーフォレイティング動作」という。)の概要を説明する。はじめに制御部71は、針モジュールPの針Psが対象物20から上方に離隔した状態で、搬送部7及び移動部8を制御して、プロットデータのプロット座標によって示されるプロット位置に装着部32を移動させる。制御部71は、上下駆動機構33を制御し、針モジュールPの針Psの先端が保持部材10に刺さる位置まで、装着部32を下方に移動させる。これによって、保持部材10により保持された対象物20に針Psが貫通し、対象物20に穴が開けられる。その後、制御部71は、上下駆動機構33を制御し、針モジュールPの針Psが対象物20から上方に離隔した位置まで、装着部32を上方移動させる。以上の処理が、プロットデータに含まれるプロット座標の数分実行されることにより、保持部材10に保持された対象物20に対して針Psにより複数の穴が開けられる。
【0044】
なお、上記のパーフォレイティング動作は、第2保持部102に第1保持部101が保持され、且つ、第1保持部101により対象物20が保持された状態で実行可能である。この場合、針Psにより対象物20に穴が開けられると同時に第1保持部101に針Psが刺さって凹部が形成されても、ウレタンゲルマット10Bのゴム弾性により、凹部を消滅させることができる。又、第1保持部101は、ウレタンゲルマット10Bの自己粘着性により、凹部の壁面同士が粘着することでより効果的に凹部を消滅させることができる。一方、上記のパーフォレイティング動作は、第2保持部102により対象物20が直接保持された状態では実行できない。理由は、第2保持部102は第1保持部101よりも硬いので、針Psにより対象物20に十分な大きさの穴を開けることが可能な程度まで、第2保持部102に針Psを深く刺すことができないためである。
【0045】
<切断装置1Aの動作概要(切断動作)>
切断装置1Aが切断データに従って対象物20を切断刃Csで切断する動作(以下、「切断動作」という。)の概要を説明する。はじめに制御部71は、切断刃モジュールCの切断刃Csが対象物20から上方に離隔した状態で、搬送部7及び移動部8を制御して、切断データの開始座標によって示される開始位置に装着部32を移動させる。制御部71は、上下駆動機構33を制御し、切断刃モジュールCの切断刃Csが保持部材10に接触する位置まで装着部32を下方に移動させる。この状態で、制御部71は、搬送部7及び移動部8を制御し、切断データの終了座標によって示される終了位置まで、保持部材10及び装着部32をX方向及びY方向に相対移動させる。その後、制御部71は、上下駆動機構33を制御し、切断刃モジュールCの切断刃Csが対象物20から上方に離隔した位置まで、装着部32を上方に移動させる。以上の処理が、切断データに含まれる開始座標及び終了座標の数分実行されることにより、保持部材10に保持された対象物20が切断刃Csにより切断される。
【0046】
なお、上記の切断動作は、第2保持部102に第1保持部101が保持され、且つ、第1保持部101により対象物20が保持された状態で実行可能である。この場合、切断刃Csにより対象物20が切断されると同時に第1保持部101に凹部である切れ込みが形成されても、ウレタンゲルマット10Bのゴム弾性により、切れ込みを消滅させることができる。又、第1保持部101は、ウレタンゲルマット10Bの自己粘着性により、凹部の壁面同士が粘着することでより効果的に凹部を消滅させることができる。又、上記の切断動作は、パーフォレイティング動作と異なり、第2保持部102により対象物20が直接保持された状態でも実行可能である。なぜならば、切断動作時において切断刃Csにより形成される切れ込みの深さが、パーフォレイティング動作時において針Psにより形成される凹部の深さよりも小さく設定されるためである。理由は、切断刃Csが保持部材10に深く入り込んだ状態では、搬送部7及び移動部8によって切断刃Csと保持部材10とを相対移動させる際の移動負荷が大きく、相対移動させることができないためである。従って、対象物20を保持する保持部材10が第1保持部101及び第2保持部102の何れの場合も、切断刃Csが保持部材10に入り込んだ状態で切断刃Csと保持部材10とを相対移動させることができることになる。
【0047】
<切断刃Cs又は針Psと保持部材10との接触を検出する方法>
切断装置1Aの制御部71は、カートリッジ4が装着された装着部32が下方に移動した場合において切断刃Cs又は針Psが保持部材10に接触したことを、次の方法で検出する。
【0048】
制御部71は、上下駆動機構33のZ軸モータ34を回転させることによって、装着部32を下方に移動させる。このとき、
図2、
図3に示すように、Z軸モータ34の出力軸40及びギヤ35、36は回動し、圧力変更部材31はギヤ36の回動を板部48に伝達する。切断刃Cs又は針Psが保持部材10(第1保持部101又は第2保持部102)に接触していない状態では、装着部32に対して上向きの圧力は加わらない。このため、圧力変更部材31によりギヤ36の回動が板部48に伝達されるのに応じて、板部48及びピニオン38は、ギヤ36の回動と同じだけ回動する。一方、切断刃Cs又は針Psが保持部材10に接触した状態では、装着部32に対して上向きの圧力が作用する。従って、圧力変更部材31によりギヤ36の回動が板部48に伝達されることに応じて装着部32に作用する下向きの圧力が、装着部32に加わる上向きの圧力を上回るまで、板部48及びピニオン38は回動しない。
【0049】
Z軸モータ34の出力軸40が更に回動すると、ギヤ36は板部48及びピニオン38に対して相対的に回動し、圧力変更部材31のねじれが大きくなる。これに伴い、圧力変更部材31から板部48及びピニオン38を介して装着部32に作用する下向きの圧力が大きくなる。圧力変更部材31から装着部32に作用する下向きの圧力が、装着部32に加わる上向きの圧力を上回った場合、ピニオン38は回動し、装着部32は下方に移動する。
【0050】
ここで、Z軸モータ34はパルスモータであり、Z軸モータ34に入力されるパルス数と、圧力変更部材31から装着部32に作用する下向きの圧力とには相関がある。このため、制御部71は、装着部32を下方に移動する際にZ軸モータ34に入力されるパルス数をカウントし、同時に、検出器41から出力される信号に基づいて装着部32の位置を取得する。制御部71は、パルス数と装着部32の位置との関係が変化したタイミングを、保持部材10に切断刃Cs又は針Psが接触したタイミングとして特定する。更に制御部71は、このタイミングにおける装着部32の位置に基づき、保持部材10に接触する切断刃Cs又は針Psの先端の上下方向の位置(以下、「接触位置」という。)を特定する。
【0051】
<メイン処理>
図7を参照し、切断装置1Aの制御部71によって実行されるメイン処理について説明する。メイン処理は、切断装置1Aの電源を投入する操作が実行された場合、ROM72に記憶されたプログラムを制御部71が読み出して実行することによって開始される。はじめに制御部71は、第2保持部102によって第1保持部101が保持された状態であるか否かを、次の方法により判定する(S11)。
【0052】
制御部71は、搬送部7及び移動部8を制御し、保持部材10の検出領域Rd(
図1参照)の上方に、カートリッジ4が装着された状態の装着部32を移動させる。制御部71は、上下駆動機構33を制御して装着部32を下方に移動させる。制御部71は、装着部32を下方に移動する際にZ軸モータ34に入力されるパルス数と、検出器41から出力される信号に基づいて、切断刃Cs又は針Psが保持部材10に接触したときの装着部32の上下方向の位置を特定する。更に、制御部71は、特定された装着部32の位置と、装着部32から切断刃Cs又は針Psまでの間の上下方向の間隔とに基づき、切断刃Cs又は針Psの先端が保持部材10に接触した場合における切断刃Cs又は針Psの先端の上下方向の位置を、接触位置Qdとして特定する。その後、制御部71は、上下駆動機構33を制御し、切断刃Cs又は針Psが保持部材10から上方に離隔した位置まで、装着部32を上方移動させる。以下、接触位置Qdが特定される上記の工程を、「第1工程」という。
【0053】
次に、制御部71は、搬送部7及び移動部8を制御し、保持部材10の検出領域Rn(
図1参照)の上方に、カートリッジ4が装着された状態の装着部32を移動させる。制御部71は、上下駆動機構33を制御して装着部32を下方に移動させる。制御部71は、第1工程と同様の方法により、切断刃Cs又は針Psの先端が保持部材10に接触した場合における切断刃Cs又は針Psの先端の上下方向の位置を、接触位置Qnとして特定する。その後、制御部71は、上下駆動機構33を制御し、切断刃Cs又は針Psが保持部材10から上方に離隔した位置まで、装着部32を上方移動させる。以下、接触位置Qnが特定される上記の工程を、「第2工程」という。
【0054】
例えば、第2保持部102によって第1保持部101が保持されている場合、第1工程において、第1保持部101のうち突出部10T(
図1参照)の第1面101Aに切断刃Cs又は針Psが接触することになる(
図8(a)参照)。この場合の接触位置Qdを、
図8(a)に示すように第1位置B1と表記する。又、第2保持部102によって第1保持部101が保持されていない場合、第1工程において、第2保持部102の第3面102Aに切断刃Cs又は針Psが接触することになる(
図8(b)参照)。この場合の接触位置Qdを、
図8(b)に示すように第2位置B2と表記する。この場合、第2位置B2は第1位置B1よりも下方に配置される。これに対し、第2工程では、第2保持部102によって第1保持部101が保持されているか否かに関わらず、第2保持部102の第3面102Aに切断刃Cs又は針Psが接触することになる(
図8(c)、(d)参照)。この場合の接触位置Qnは、
図8(c)、(d)に示すように、何れも第2位置B2となる。
【0055】
このため、制御部71は、第1工程により特定された接触位置Qdと、第2工程により特定された接触位置Qnとが相違する場合(
図8(a)、(c)参照)、第2保持部102によって第1保持部101が保持された状態であると判定する(S11:YES)。一方、制御部71は、第1工程により特定された接触位置Qdと、第2工程により特定された接触位置Qnとが一致する場合(
図8(b)、(d)参照)、第2保持部102によって第1保持部101が保持された状態でないと判定する(S11:NO)。
【0056】
図7に示すように、制御部71は、第2保持部102によって第1保持部101が保持された状態であると判定した場合(S11:YES)、装着部32を上下方向に移動させるときに基準となる基準位置として、第1工程において接触位置Qdとして特定された第1位置B1を設定する(S13)。制御部71は、処理をS17に進める。制御部71は、第2保持部102によって第1保持部101が保持された状態でないと判定した場合(S11:NO)、基準位置として、第1工程及び第2工程において接触位置Qn、Qdとして特定され且つ第1位置B1よりも下方に配置された第2位置B2を設定する(S15)。制御部71は処理をS17に進める。
【0057】
ユーザは、パーフォレイティング動作を切断装置1Aに実行させる場合、針Psを含む針モジュールPが固定されたカートリッジ4Bを、切断装置1Aの装着部32に装着する。このとき、カートリッジ4Bの針Psは、保持部材10に対して上方に離隔するように配置される。又、ユーザは、第1保持部101を使用して対象物20に穴を開けてパーフォレイティングを実行するために、第2保持部102の第3面102Aの粘着領域に第1保持部101の第2面101Bを接触させて貼り付け、第2保持部102によって第1保持部101を保持する。更にユーザは、第1保持部101の第1面101Aに対象物20を接触させて貼り付け、第1保持部101によって対象物20を保持する。その後、ユーザは、オブジェクトを指定してパーフォレイティング動作の開始を指示するためのパネル操作を行う。
【0058】
一方、ユーザは、切断動作を切断装置1Aに実行させる場合、切断刃Csを含む切断刃モジュールCが固定されたカートリッジ4Aを、切断装置1Aの装着部32に装着する。このとき、カートリッジ4Aの切断刃Csは、保持部材10に対して上方に離隔するように配置される。又、ユーザは、第1保持部101を使用して対象物20を切断する場合、第2保持部102の第3面102Aの粘着領域に第1保持部101の第2面101Bを接触させて貼り付け、第2保持部102によって第1保持部101を保持する。更にユーザは、第1保持部101の第1面101Aに対象物20を接触させて貼り付け、第1保持部101によって対象物20を保持する。一方、ユーザは、第1保持部101を使用せずに対象物20を切断する場合、第2保持部102の第3面102Aの粘着領域に対象物20を接触させて貼り付け、第2保持部102によって対象物20を保持する。その後、ユーザは、オブジェクトを指定して切断動作の開始を指示するためのパネル操作を行う。
【0059】
制御部71は、パーフォレイティング動作を開始するための指示がパネル操作により入力されたかを判定する(S17)。パーフォレイティング動作を開始するための指示が入力されたと判定された場合(S17:YES)、制御部71は、指定されたオブジェクトに対応するプロットデータを、フラッシュメモリ74から読み出して取得する(S19)。
【0060】
制御部71は、基準位置として第1位置B1が設定されている(S13参照)か判定する(S21)。制御部71は、基準位置として第1位置B1が設定されていると判定した場合(S21:YES)、第2保持部102により第1保持部101が保持され、且つ、第1保持部101により対象物20が保持されているので、パーフォレイティング動作が実行可能であると判定する。この場合、制御部71は、基準位置として設定された第1位置B1から、下方に距離D1だけ離隔した第3位置B3を算出する(
図9(e)参照)。制御部71は、パーフォレイティング動作により対象物20に針Psで穴を開けるために装着部32を下方に移動させたときの針Psの先端の位置として、算出された第3位置B3を設定する(S23)。制御部71は、処理をS37に進める。
【0061】
なお、距離D1は、第1保持部101の厚さよりも小さい。従って、第3位置B3は、第2保持部102の第3面102Aの位置である第2位置B2よりも上方に配置される。このため、パーフォレイティング動作に応じて第1保持部101に針Psが刺さった場合、針Psの先端は、第1保持部101の第2面101Bと第2保持部102の第3面102Aとの接触部分よりも上方に位置する。このため、針Psは第1保持部101を貫通しない。又、距離D1は、針Psの第2部67の軸方向の長さNよりも長い(
図9(e)参照)。従って、パーフォレイティング動作に応じて針Psの第1部66の径と略同一径の穴が対象物20に開けられる。
【0062】
一方、制御部71は、基準位置として第2位置B2が設定されている(S15参照)と判定した場合(S21:NO)、第2保持部102により対象物20が直接保持されているので、パーフォレイティング動作が実行できないと判定する。この場合、制御部71は、パーフォレイティング動作の実行が不可能であることを通知するエラー画面を、LCD51に表示する(S25)。制御部71は、メイン処理を終了させる。
【0063】
制御部71は、パーフォレイティング動作を開始するための指示が入力されていないと判定した場合(S17:NO)、処理をS27に進める。制御部71は、切断動作を開始するための指示がパネル操作により入力されたかを判定する(S27)。切断動作を開始するための指示が入力されたと判定された場合(S27:YES)、制御部71は、指定されたオブジェクトに対応する切断データを、フラッシュメモリ74から読み出して取得する(S29)。
【0064】
制御部71は、基準位置として第1位置B1が設定されている(S13参照)か判定する(S31)。制御部71は、基準位置として第1位置B1が設定されていると判定した場合(S31:YES)、第2保持部102により第1保持部101が保持され、且つ、第1保持部101により対象物20が保持されており、切断動作が実行可能であると判定する。この場合、制御部71は、基準位置として設定された第1位置B1から、下方に距離D2だけ離隔した第4位置B4を算出する(
図9(f)参照)。制御部71は、切断動作により対象物20を切断刃Csで切断するために装着部32を下方に移動させたときの切断刃Csの先端の位置として、算出された第4位置B4を設定する(S33)。制御部71は、処理をS37に進める。
【0065】
なお、距離D2は、パーフォレイティング動作時において第3位置B3(
図9(e)参照)が算出されたときに用いられた距離D1よりも小さい。従って、第4位置B4は、パーフォレイティング動作に応じて第1保持部101に針Psが刺さった場合の針Psの先端の位置である第3位置B3よりも上方に配置される(
図9(e)(f)参照)。
【0066】
一方、制御部71は、基準位置として第2位置B2が設定されている(S15参照)と判定した場合(S31:NO)、第2保持部102により対象物20が直接保持されており、切断動作が実行可能であると判定する。この場合、制御部71は、基準位置として設定された第2位置B2から、下方に距離D2だけ離隔した第5位置B5を算出する(
図9(g)参照)。制御部71は、切断動作により対象物20を切断刃Csで切断するために装着部32を下方に移動させたときの切断刃Csの先端の位置として、算出された第5位置B5を設定する(S35)。制御部71は、処理をS37に進める。
【0067】
以下、パーフォレイティング動作により対象物20に針Psで穴を開けるために装着部32を下方に移動させたときの針Psの先端の位置、及び、切断動作により対象物20を切断刃Csで切断するために装着部32を下方に移動させたときの切断刃Csの先端の位置を、総称して「加工位置」という。加工位置は、S23の処理によって第3位置B3(
図9(e)参照)に設定され、S33の処理によって第4位置B4(
図9(f)参照)に設定され、S35の処理によって第5位置B5(
図9(g)参照)に設定されたことになる。
【0068】
制御部71は、パーフォレイティング動作又は切断動作を実行する(S37)。パーフォレイティング動作が実行される場合、制御部71は、搬送部7及び移動部8を制御し、プロットデータのプロット座標によって示されるプロット位置に装着部32を移動させる。制御部71は、上下駆動機構33を制御し、針モジュールPの針Psの先端が加工位置(第3位置B3)に到達するまで、装着部32を下方に移動させる。これにより第2保持部102に第1保持部101が保持され、且つ、第1保持部101により対象物20が保持された状態で、対象物20に穴が開けられる。その後、制御部71は、上下駆動機構33を制御し、針モジュールPの針Psが保持部材10から上方に離隔した位置まで、装着部32を上方移動させる。上記の処理は、S19の処理によって取得されたプロットデータに含まれるプロット座標の数分実行される。
【0069】
一方、切断動作が実行される場合、制御部71は、搬送部7及び移動部8を制御し、切断データの開始座標によって示される開始位置に装着部32を移動させる。制御部71は、上下駆動機構33を制御し、切断刃モジュールCの切断刃Csの先端が加工位置(第4位置B4又は第5位置B5)に到達するまで、装着部32を下方に移動させる。なお、第2保持部102に第1保持部101が保持され、且つ、第1保持部101により対象物20が保持された状態で、加工位置は第4位置B4であり、第2保持部102により対象物20が直接保持された状態で、加工位置は第5位置B5である。この状態で、制御部71は、搬送部7及び移動部8を制御し、切断データの終了座標によって示される終了位置まで、保持部材10及び装着部32をX方向及びY方向に相対移動させる。その後、制御部71は、上下駆動機構33を制御し、切断刃モジュールCの切断刃Csが保持部材10から上方に離隔した位置まで、装着部32を上方に移動させる。上記の処理は、S29の処理によって取得された切断データに含まれる開始座標及び終了座標の数分実行される。
【0070】
制御部71は、S37の処理によりパーフォレイティング動作又は切断動作が完了した場合、処理をS17に戻す。
【0071】
例えばユーザは、パーフォレイティング動作の実行(S19〜S23、S37)後、第1保持部101に保持され且つ針Psによって穴が開けられた状態の対象物20に対して切断動作を実行する場合、針Psを含む針モジュールPが固定されたカートリッジ4Bを装着部32から取り外し、代わりに、切断刃Csを含む切断刃モジュールCが固定されたカートリッジ4Aを装着部32に装着する。その後、ユーザは、オブジェクトを指定して切断動作の開始を指示するためのパネル操作を行う。この場合、制御部71は、切断動作(S29〜S35、S37)を実行し、第1保持部101に保持された状態の対象物20を切断刃Csによって切断する。この場合、パーフォレイティング動作が開始されてから、切断動作が終了するまでの間、第1保持部101に対象物20が保持された状態は維持される。
【0072】
又、例えばユーザは、切断動作の実行(S29〜S35、S37)後、第1保持部101に保持され且つ切断刃Csによって切断された状態の対象物20に対してパーフォレイティング動作を実行する場合、切断刃Csを含む切断刃モジュールCが固定されたカートリッジ4Aを装着部32から取り外し、代わりに、針Psを含む針モジュールPが固定されたカートリッジ4Bを装着部32に装着する。その後、ユーザは、オブジェクトを指定してパーフォレイティング動作の開始を指示するためのパネル操作を行う。この場合、制御部71は、パーフォレイティング動作(S21〜S23、S37)を実行し、第1保持部101に保持された状態の対象物20に針Psによって穴を開ける。この場合、切断動作が開始されてから、パーフォレイティング動作が終了するまでの間、第1保持部101に対象物20が保持された状態は維持される。
【0073】
制御部71は、パーフォレイティング動作及び切断動作を開始するための指示がパネル操作により入力されていない場合(S17:NO、S27:NO)、パーフォレイティング動作及び切断動作を終了させるための指示がパネル操作により入力されたか判定する(S39)。制御部71は、パーフォレイティング動作及び切断動作を終了させるための指示がパネル操作により入力されていないと判定した場合(S39:NO)、処理をS17に戻す。制御部71は、パーフォレイティング動作及び切断動作を終了させるための指示がパネル操作により入力されたと判定した場合(S39:YES)、メイン処理を終了させる。
【0074】
<実験結果>
図10〜
図13を参照し、第1保持部101のウレタンゲルマット10Bの特性(切断時又はパーフォレイティング時)を評価した結果について説明する。
【0075】
図10、
図11は、ウレタンゲルマット10Bに対する各種対象物(普通紙、パーチメント紙、布)の切断動作時(
図10参照)又はパーフォレイティング動作時(
図11参照)における粘着性能を、ウレタンゲルマット10B(
図4参照)のアスカーC硬度(以下、単に「硬度」という。)毎に評価した結果を示す。試料として、粘着力が1.5(N/25mm)のウレタンゲルマット10Bを用いた。粘着性能は、「○」(良好)、「△」(概ね良好)、「×」(やや劣る)の3段階で測定した。評価基準は、
(1)ウレタンゲルマット10Bにより保持された対象物20を切断動作又はパーフォレイティング動作により加工した場合、ウレタンゲルマット10Bにより対象物20を保持できているか否か、及び、
(2)切断動作又はパーフォレイティング動作後、ウレタンゲルマット10Bから対象物20を剥がす場合、対象物20をカールさせずに剥がすことができるか否か
とした。
図10(切断動作時)及び
図11(パーフォレイティング動作時)は、評価した対象物20に布が含まれるか否かという点で異なる。切断動作の対象となる対象物20に布は含まれる(
図10参照)が、パーフォレイティング動作の対象となる対象物20に布は含まれない(
図11参照)。この理由は、通常、パーフォレイティング動作の対象となる対象物20として布は用いられないためである。なお、一般的に、硬度が小さい程、粘着性能は大きくなり、ウレタンゲルマット10Bに対して対象物20を強く貼り付けることができる。一方で、硬度が小さすぎると、ウレタンゲルマット10Bから対象物20が剥がれ難くなり、好ましくない。
【0076】
図10、
図11に示すように、対象物20として普通紙が用いられた場合、ウレタンゲルマット10Bの硬度を25〜40とした場合に、ウレタンゲルマット10Bに対して対象物20(普通紙)が貼り付き易く且つ剥がれ易い結果(○又は△)となった。更に、ウレタンゲルマット10Bの硬度を30〜35とした場合に、ウレタンゲルマット10Bに対して対象物20(普通紙)が更に良好に貼り付き易く且つ剥がれ易い結果(○)となった。対象物20としてパーチメント紙が用いられた場合、ウレタンゲルマット10Bの硬度を20〜35とした場合に、ウレタンゲルマット10Bに対して対象物20(パーチメント紙)が貼り付き易く且つ剥がれ易い結果(○又は△)となった。更に、ウレタンゲルマット10Bの硬度を25〜30とした場合に、ウレタンゲルマット10Bに対して対象物20(パーチメント紙)が更に良好に貼り付き易く且つ剥がれ易い結果(○)となった。
図10に示すように、対象物20として布が用いられた場合、ウレタンゲルマット10Bの硬度を20〜30とした場合に、ウレタンゲルマット10Bに対して対象物20(布)が貼り付き易く且つ剥がれ易い結果(○又は△)となった。更に、ウレタンゲルマット10Bの硬度を20〜25とした場合に、ウレタンゲルマット10Bに対して対象物20(布)が更に良好に貼り付き易く且つ剥がれ易い結果(○)となった。
【0077】
以上の結果から、ウレタンゲルマット10BのアスカーC硬度を、20以上40以下、より好ましくは、25以上35以下とすることにより、加工方法(切断動作又はパーフォレイティング動作)及び対象物20の種類に依らず、常に、貼り付き易く且つ剥がれ易いウレタンゲルマット10Bを形成できることが明らかとなった。
【0078】
図12、
図13は、ウレタンゲルマット10Bに対する各種対象物(普通紙、パーチメント紙、布)の切断動作時(
図12参照)又はパーフォレイティング動作時(
図13参照)における粘着性能を、ウレタンゲルマット10B(
図4参照)の粘着力(単位:N/25mm)毎に評価した結果を示す。試料として、アスカーC硬度が30のウレタンゲルマット10Bを用いた。評価基準(上記(1)及び(2))、評価段階(「○」「△」「×」の何れか)、及び、
図12及び
図13の相違点は、上記のアスカーC硬度の評価結果(
図10、
図11参照)と同一とした。一般的に、粘着力が大きい程、ウレタンゲルマット10Bに対して対象物20を強く貼り付けることができる。一方で、粘着力が大きすぎると、ウレタンゲルマット10Bから対象物20が剥がれ難くなり、好ましくない。
【0079】
なお、粘着力の測定は、JIS Z0237に準拠して行った。又、2kgゴムローラにて対象物20とウレタンゲルマット10Bとを1往復圧着後、剥離速度:300mm/min、180°剥離の条件で剥離させた場合の粘着性能を、「○」「△」「×」の3段階で測定した。又、粘着性能の評価は、20℃の環境下で実施された。
【0080】
図12、
図13に示すように、対象物20として普通紙が用いられた場合、ウレタンゲルマット10Bの粘着力を0.5〜4.0(N/25mm)とした場合に、ウレタンゲルマット10Bに対して対象物20(普通紙)が貼り付き易く且つ剥がれ易い結果(○又は△)となった。更に、ウレタンゲルマット10Bの粘着力を0.75〜1.5とした場合に、ウレタンゲルマット10Bに対して対象物20(普通紙)が更に良好に貼り付き易く且つ剥がれ易い結果(○)となった。対象物20としてパーチメント紙が用いられた場合、ウレタンゲルマット10Bの粘着力を0.75〜6.0(N/25mm)とした場合に、ウレタンゲルマット10Bに対して対象物20(パーチメント紙)が貼り付き易く且つ剥がれ易い結果(○又は△)となった。更に、ウレタンゲルマット10Bの粘着力を1.5〜4.0(N/25mm)とした場合に、ウレタンゲルマット10Bに対して対象物20(パーチメント紙)が更に良好に貼り付き易く且つ剥がれ易い結果(○)となった。
図12に示すように、対象物20として布が用いられた場合、ウレタンゲルマット10Bの粘着力を1.5〜6.0(N/25mm)とした場合に、ウレタンゲルマット10Bに対して対象物20(布)が貼り付き易く且つ剥がれ易い結果(○又は△)となった。更に、ウレタンゲルマット10Bの粘着力を4.0〜6.0(N/25mm)とした場合に、ウレタンゲルマット10Bに対して対象物20(布)が更に良好に貼り付き易く且つ剥がれ易い結果(○)となった。
【0081】
以上の結果から、ウレタンゲルマット10Bの粘着力を、20℃の環境下で0.5N/25mm以上6.0N/25mm以下、より好ましくは、20℃のときに0.75N/25mm以上4.0N/25mm以下とすることにより、加工方法(切断動作又はパーフォレイティング動作)及び対象物20の種類に依らず、常に、貼り付き易く且つ剥がれ易いウレタンゲルマット10Bを形成できることが明らかとなった。
【0082】
<本実施形態の作用、効果>
切断装置1Aにおいて、対象物20は、エラストマーゲルにより構成されたウレタンゲルマット10Bを含む第1保持部101の第1面101Aに保持される。エラストマーゲルは自己粘着性を有するので、対象物20は、第1保持部101のうちウレタンゲルマット10Bが露出した第1面101Aに良好に保持される。又、エラストマーゲルはゴム弾性を有するので、切断刃Csや針Psが対象物を貫通し、第1保持部101に突き刺さった際に第1保持部101に形成される凹部は、第1保持部101から切断刃Csや針Psが抜けた後、凹部の壁面同士が粘着することで消滅する。このため、第1保持部101の保持能力は維持される。従って切断装置1Aは、上下駆動機構33、搬送部7、及び移動部8を制御することにより、第1保持部101に適切に保持された状態の対象物20に対して針Psで複数の穴を開けたり、切断刃Csで切断したりすることができる。このため、切断装置1Aは、切断動作やパーフォレイティング動作を適切に行うことができる。
【0083】
第1保持部101のウレタンゲルマット10Bは、ウレタンエラストマーゲルにより構成される。ウレタンエラストマーゲルは、ゴム弾性、機械的な強度、耐摩耗性、耐屈曲性等の点で優れた特性を有する。従って、切断装置1Aは、第1保持部101のウレタンゲルマット10Bの材料としてウレタンエラストマーゲル以外の材料が用いられた場合と比べて、第1保持部101の保持性能を更に良好に維持できる。又、切断装置1Aは、第1保持部101の耐久性を高めることができる。更に、切断装置1Aは、対象物20に穴を開ける過程、又は、対象物20を切断する過程で第1保持部101が変形することを防止できる。
【0084】
保持部材10の第2保持部102は、第1保持部101よりも面積が大きい。又、第2保持部102の第3面102Aの粘着領域は粘着性を有する。このため、第2保持部102は、第3面102Aの粘着領域を第1保持部101の第2面101Bに接触させて第1保持部101を良好に保持し、第2保持部102に対して第1保持部101がずれることを抑制できる。又、第1保持部101の第2面101Bには、非粘着フィルム10Eが露出し、非粘着性を有する。このため、切断装置1Aは、第2保持部102から第1保持部101を脱離した状態で対象物20の加工を行うことが可能となる。従って、例えば切断装置1Aは、第1保持部101が不要となる加工方法(例えば切断動作)により対象物20を加工する場合、第1保持部101を第2保持部102から容易に取り外すことができる。
【0085】
第1保持部101が第2保持部102に保持された状態で切断装置1Aが使用される場合、対象物20は、第1保持部101により保持される。一方、第1保持部101が第2保持部102に保持されていない状態で切断装置1Aが使用される場合、対象物20は、第2保持部102により直接保持される。ここで、それぞれの場合において、対象物20の上下方向の位置は相違する。このため、切断装置1Aが切断動作を行う場合、第1保持部101が第2保持部102に保持されているか否かに応じて、装着部32を下方に移動させた場合の切断刃Csの先端の位置(加工位置)が調整される必要がある。これに対し、切断装置1Aは、第1保持部101が第2保持部102に保持されているか否かを判定し(S11)、判定結果に応じて、装着部32を上下方向に移動させる場合に基準となる基準位置を変更する(S13、S15)。切断装置1Aは、基準位置に応じて加工位置を変更する(S29,S31)。このため、切断装置1Aは、第1保持部101が使用されるか否かに関わらず、対象物20を適切に切断できる。
【0086】
第1保持部101のウレタンゲルマット10BのアスカーC硬度は、20以上40以下である。この場合、第1保持部101は、対象物20の加工中に第1保持部101から対象物20がずれることを抑制できる。又、第1保持部は101、加工後に第1保持部101から対象物20を容易に取り外すことができる。又、第1保持部101のウレタンゲルマット10BのアスカーC硬度は、より好ましくは25以上35以下である。この場合、第1保持部101は、加工中に第1保持部101から対象物20がずれることを更に良好に抑制できる。又、第1保持部101は、加工後に第1保持部101から対象物20を更に容易に取り外すことができる。
【0087】
第1保持部101のウレタンゲルマット10Bの粘着力は、20℃のときに0.5N/25mm以上6.0N/25mm以下である。この場合、第1保持部101は、対象物20の加工中に第1保持部101から対象物20がずれることを抑制できる。又、第1保持部は101、加工後に第1保持部101から対象物20を容易に取り外すことができる。又、第1保持部101の粘着力が、より好ましくは、20℃のときに0.75N/25mm以上4.0N/25mm以下である。この場合、第1保持部101は、加工中に第1保持部101から対象物20がずれることを更に良好に抑制できる。又、第1保持部101は、加工後に第1保持部101から対象物20を更に容易に取り外すことができる。
【0088】
針Psは、軸方向において径が同一である第1部66と、第1部66よりも先端側に位置し、軸方向において径が先端に向かう程小さくなる第2部67とを有する。なお、パーフォレイティング動作時において、対象物20に十分な大きさの穴を開けるためには、針Psの第1部66が対象物20を貫通するまで、針Psを下方に移動させる必要がある。この場合、針Psの第2部67が第1保持部101に突き刺さることになる。これに対し、第1保持部101のウレタンゲルマット10Bの厚さは、針Psの第2部67の軸方向の長さNと略同一である。このため、第1保持部101の厚さは、針Psの第2部67の軸方向の長さNよりも大きくなる。このため、切断装置1Aは、パーフォレイティング動作時、対象物20を貫通して第1保持部101に突き刺さった針Psが、第1保持部101を貫通する可能性を低減できる。
【0089】
パーフォレイティング動作(S21〜S23、S37)の終了後、切断動作(S29〜S35、S37)が続けて実行される場合、又は、切断動作の終了後、パーフォレイティング動作が続けて実行される場合がある。これらの場合において、前動作が開始されてから後動作が終了するまでの間、第1保持部101に対象物20が保持された状態は維持される。この場合、異なる2つの動作の間に第1保持部101に対して対象物20がずれる可能性を低減できる。
【0090】
第1保持部101に対象物20が保持された状態で針Psによるパーフォレイティング動作が実行される場合、対象物20に針Psで穴を開けるために装着部32を下方に移動させた場合の針Psの先端の位置(加工位置)は、第3位置B3に設定される(S23)。一方、第1保持部101に対象物20が保持された状態で切断刃Csによる切断動作が実行される場合、対象物20を切断刃Csで適切に切断するために装着部32を下方に移動させた場合の切断刃Csの先端の位置(加工位置)は、第3位置B3よりも上方の第4位置B4に設定される(S33)。つまり、切断時において第1保持部101に入り込む切断刃Csの深さは、パーフォレイティング動作時において第1保持部101に刺さる針Psの深さよりも小さい。このため、切断装置1Aは、切断刃Csによる対象物20の切断と同時に切断刃Csが第1保持部101のウレタンゲルマット10Bに大きく食い込み、切断刃Csの移動が妨げられることを抑制できる。
【0091】
<変形例>
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。切断装置1Aは、針Psで対象物20に穴を開ける機能を実現するための専用機(例えば、穴開け加工装置)であってもよい。また、切断装置1Aは、切断刃Csで対象物を切断する機能を実現するための専用機であってもよい。第1保持部101は、ウレタンゲルマット10Bのみによって形成されてもよい。この場合、第1保持部101は、基材フィルム10C、粘着層10D、及び、非粘着フィルム10Eのいずれかを有さなくてもよい。
【0092】
第1保持部101の第2面101B、及び、第2保持部102の第3面102Aの両面が粘着性を有してもよい。第1保持部101の第2面101Bのみ粘着性を有し、第2保持部102の第3面102Aは非粘着性を有してもよい。第1保持部101と第2保持部102とのそれぞれの面積は同一であってもよい。切断装置1Aは、保持部材10として第1保持部101のみ有し、第2保持部102を有さなくてもよい。搬送部7は、第1保持部101を前後方向に直接搬送させてもよい。
【0093】
例えば、第1保持部101がウレタンゲルマット10Bのみによって形成される場合、
図14に示すように、第1保持部101と第2保持部102との間に、接着剤からなる接着層10Fが介在してもよい。接着層10Fの接着剤は、第1保持部101(ウレタンゲルマット10B)の第2面101Bと、第2保持部102の第3面102Aとを接着してもよい。上記実施形態と異なり、第1保持部101及び第2保持部102は一体となって保持部材を形成してもよい。第1保持部101は第2保持部102に対して剥がれないように形成されてもよい。
【0094】
又、
図15に示すように、第2保持部102の前後方向及び左右方向の長さは、それぞれ、第1保持部101の前後方向及び左右方向の長さよりも長くてもよい。保持部材10を上方から視た場合、第1保持部材101の周端部は、第2保持部102の周端部よりも内側に位置してもよい。第1保持部101は、第2保持部102の周端部により囲まれてもよい。第2保持部102は、第1保持部101よりも面積が大きくてもよい。この場合、
図14に示す接着層10Fの接着剤は、第2保持部102の第3面102Aのうち、周縁部Rsを除く領域(以下、「接着領域Rb」という。)に設けられてもよい。第1保持部101は、第2保持部102の第3面102Aのうち接着領域Rbで第2保持部102に接着剤で接着されてもよい。
【0095】
更に、
図14、
図15のように第1保持部101と第2保持部102とが一体となって形成された保持部材(以下、「一体型保持部10G」という。)と、第2保持部102に対象物20を直接保持して使用される保持部材(以下、「単体保持部」という。)とが、切断装置1Aによって使い分けられる場合、切断装置1Aは、次のようにしてそれぞれを識別してもよい。
【0096】
例えば、
図15に示すように、一体型保持部10Gのうち周縁部Rsの所定の位置(例えば、上記実施形態における検出領域Rdに対応する位置)に、所定の形状を有するマークMが付されていてもよい。マークMは、第2保持部102によって第1保持部101が保持された保持部材であることを示す。切断装置1Aは、マークMを検出可能な光学センサを有していてもよい。光学センサは、ヘッド5に設けられたカメラであってもよいし、プラテン3の近傍に設けられたスキャナでもよい。
【0097】
切断装置1Aの制御部71は、光学センサによりマークMを検出した場合、一体型保持部10Gが利用されているので、第1保持部101が第2保持部102により保持された状態であると判定してもよい(S11:YES)。この場合、制御部71は、基準位置として第1位置B1を設定してもよい(S13)。一方、制御部71は、光学センサによりマークMを検出しない場合、単体保持部が使用されているので、第2保持部102によって第1保持部101が保持された状態でないと判定してもよい(S11:NO)。この場合、制御部71は、基準位置として第2位置B2を設定してもよい(S15)。
【0098】
一体型保持部10Gだけでなく、単体保持部にもマークMが付されていてもよい。この場合、一体型保持部10Gに付されたマークMと、単体保持部に付されたマークMとのそれぞれの形状が相違してもよい。制御部71は、それぞれのマークMの形状を識別することによって、一体型保持部10Gが使用されているか、又は、単体保持部が使用されているかを判定してもよい。更に、一体型保持部10Gに付されたマークMの形状を、第2保持部102により保持された第1保持部101の厚さに応じて相違させてもよい。この場合、制御部71は、第2保持部102によって第1保持部101が保持された状態であると判定した場合(S11:YES)、マークMの形状毎に予め規定された第1位置を設定してもよい。
【0099】
S17では、制御部71は、パーフォレイティング動作を開始するための指示がパネル操作により入力されたかを判定していた。これに代わり、制御部71は、針Psを含む針モジュールPが固定されたカートリッジ4Bが、装着部32に装着されているかを判定してもよい。この場合、制御部71は、カートリッジ4Bが装着部32に装着されていると判定した場合、処理をS19に移行するとよい。一方、制御部71は、カートリッジ4Bが装着部32に装着されていないと判定した場合、処理をS27に移行するとよい。同様に、S27では、切断動作を開始するための指示がパネル操作により入力されたかを判定していた。これに代わり、制御部71は、切断刃Csを含む切断刃モジュールCが固定されたカートリッジ4Aが、装着部32に装着されているかを判定してもよい。この場合、制御部71は、カートリッジ4Aが装着部32に装着されていると判定した場合、処理をS29に移行するとよい。一方、制御部71は、カートリッジ4Aが装着部32に装着されていないと判定した場合、処理をS39に移行するとよい。なお、切断装置1Aの装着部32にカートリッジ4A、4Bの何れが装着されているかの判定は、次のように実行するとよい。例えば、切断装置1Aは、装着部32に装着されたカートリッジ4の種別を識別して識別結果を示す信号を出力することが可能なセンサを、装着部32に有していてもよい。制御部71は、このセンサから出力される信号に応じて、カートリッジ4A、4Bの何れが装着されているかを判定してもよい。切断装置1Aは、第2保持部102に対象物20が直接保持された状態で、パーフォレイティング動作を実行することが可能であってもよい。
【0100】
第1保持部101が第2保持部102に保持されているか否かの判定方法は、上記の方法に限定されない。例えば制御部71は、第1工程により特定された接触位置Qdが、フラッシュメモリ74に予め記憶された第1位置B1と一致する場合、第1保持部101が第2保持部102に保持されていると判定してもよい。一方、制御部71は、第1工程により特定された接触位置Qdが、フラッシュメモリ74に予め記憶された第2位置B2と一致する場合、第1保持部101が第2保持部102に保持されていないと判定してもよい。
【0101】
ウレタンゲルマット10Bの硬度及び粘着力の数値範囲は、上記実施形態に限定されず、他の値に変更可能であることはいうまでもない。
【0102】
針Psの第2部67の軸方向の長さNは、ウレタンゲルマット10Bの厚さよりも小さくてもよい。又は、針Psの第2部67の軸方向の長さNは、ウレタンゲルマット10Bを含む第1保持部101の厚さよりも大きくてもよい。針Psは、軸方向の径が同一となる第1部66のみ有し、第2部67を有さなくてもよい。
【0103】
例えば、第2保持部102によって対象物20が直接保持された状態で切断動作が実行された後、パーフォレイティング動作が実行される場合がある。この場合、ユーザは、切断動作後、第2保持部102から対象物20を剥がし、第2保持部102に第1保持部101を貼り付け、貼り付けた第1保持部101によって対象物20を保持し、この状態で切断装置1Aによりパーフォレイティング動作を開始させることになる。この場合、制御部71は、パーフォレイティング動作が開始される前に、第1保持部101が第2保持部102によって保持された状態であるか否かを、S11の処理を実行することで判定してもよい。
【0104】
切断装置1Aは、厚手の対象物20に対してパーフォレイティング動作を実行する場合、装着部32を上下方向に往復移動させて対象物20の同一位置に針Psを繰り返し刺すことによって対象物20に穴を開けてもよい。この場合、針Psが下方に移動したときの先端の位置である加工位置は、針Psを刺す動作が繰り返される毎に徐々に下方に移動し、最終的に第3位置B3まで到達してもよい。又、切断装置1Aは、厚手の対象物20に対して切断動作を実行する場合、装着部32を開始座標から終了座標までの間をX方向及びY方向に繰り返し移動させて切断刃Csにより切れ込みを複数回入れることによって、対象物20を切断してもよい。この場合、切断刃Csが下方に移動したときの先端の位置である加工位置は、切断刃Csにより切れ込みを入れる動作が繰り得させる度に徐々に下方に移動し、最終的に第4位置B4又は第5位置B5まで到達してもよい。
【0105】
<その他>
切断装置1Aは、本発明の「加工装置」の一例である。切断刃Cs及び針Psは、本発明の「加工ツール」の一例である。上下駆動機構33は、本発明の「第1移動部」の一例である。上下方向は、本発明の「第1方向」の一例である。下側は、本発明の「第1方向の一方側」の一例である。上側は、本発明の「第1方向の他方側」の一例である。左右方向及び前後方向のうち一方は、本発明の「第2方向」の一例である。左右方向及び前後方向のうち他方は、本発明の「第3方向」の一例である。搬送部7及び移動部8は、本発明の「第2移動部」の一例である。プロットデータ及び切断データは、本発明の「加工データ」の一例である。