(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワークが載置される載置面を有する基台と、前記ワークの両側に配置され、下面に形成された吸着面において前記ワークの両側を負圧により吸着保持する吸着ユニットと、当該吸着ユニットによって吸着された前記ワークを前記載置面から離反させる離反ユニットと、当該離反ユニットによって前記載置面から前記ワークを離反させる際に、又は離反させた後に、前記ワークの両側間に張力を加えることによって、前記両側間からたわみを除去するたわみ除去ユニットと、を具備するワーク吸着装置であって、
前記吸着ユニットは、ワークを吸着する吸着ヘッド及び当該吸着ヘッドが設けられるブラッケットを備え、
前記たわみ除去ユニットは、前記ブラケットに挿入され前記ブラケットを擦動可能とするアーム、前記ブラケットを前記アームに固定する固定装置、及び前記ブラケットに連結され前記ブラケットを復元力により前記ワークの外側方向に移動させる弾性部材を備えていることを特徴とするワーク吸着装置。
基台の載置面にワークを載置し、前記ワークの両側に吸着ユニットの吸着面を各々接触させ、前記吸着面において前記ワークを負圧により吸着保持し、前記ワークを前記載置面から持ち上げつつ、又は持ち上げた後に、前記ワークの両側間に張力を加えることにより、前記両側間からたわみを除去するワーク吸着方法であって、
前記吸着ユニットが前記ワークを持ち上げるとき、前記吸着ユニットが備える前記ワークを吸着する吸着ヘッドが設けられるブラッケットを当該ブラケットに挿入されるアームに沿って、前記ブラケットに連結される弾性部材を伸ばしながら前記ワークの内側に移動させ、
前記アームに前記ブラケットを固定し、
前記吸着ユニットが前記ワークを持ち上げたのち、前記ブラケットの固定を取り除くことで、前記弾性部材の復元力により、前記ワークの前記両側を各々吸着した箇所をそれぞれ前記ワークの外側方向に移動させることにより前記ワークの前記両側間に張力を加えることを特徴とするワーク吸着方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0018】
なお、以下のワーク吸着装置Kの説明において、便宜的に
図1に示す左・右方向をワークWの長さ(前後)方向、手前・奥行方向をワークWの幅(左右)方向として説明する。
【0019】
本発明のワーク吸着装置Kは、ワークWを吸着するワーク吸着装置、及びそのワーク吸着装置を備えた搬送装置全般に適用されるものである。また、ワークWとは、例えば、シート状の基材であって、特に前後方向に長く帯状に形成された薄型のシート状の基材が想定されるが、その大きさ等は特に限定されるものではない。また、本実施形態に用いられる基材としては、一例として厚さ0.5mm以下の金属薄膜が用いられるが、その材質等は
特に限定されるものではない。
【0020】
<実施の形態1>
このワーク吸着装置Kは、
図1に示すように、ワークWが載置される載置面2を有する基台5と、このワークWを吸着する吸着ユニット10と、この吸着ユニット10をワークWが載置された載置面2に対して近接させ、吸着ユニット10がワークWを吸着した後に、吸着ユニット10ごとワークWを載置面2から離反させる離反ユニット30と、ワークWが吸着ユニット10によって吸着され離反ユニット30によって載置面2の上方に持ち上げられる際にワークWに生じるたわみを除去するたわみ除去ユニット40と、を備えている。
【0021】
基台5は、載置面2を有する平板状の基体3と、この基体3を支持する架台4と、を備え、基体3は、架台4により所定の高さに保持される。また、例えば、架台4の下端部四隅には必要に応じて、キャスタ4aが取り付けられ、このキャスタ4aによって、ワーク吸着装置Kは、床面を自由に動かすことが可能である。
【0022】
吸着ユニット10は、後述する吸着ヘッド13の吸着面12において前記ワークWを負圧により吸着保持するものである。
図2に示すように、この吸着ユニット10は、ワークWの両側に配置され、ワークWを吸着する吸着面12を有する吸着ヘッド13と、この吸着ヘッド13をワークWの上方で保持する保持ユニット20を備えている。
【0023】
吸着ヘッド13は、下方に延びる中空状の支持体14と、この支持体14の先端部に取り付けられるヘッド本体15と、を備え、ヘッド本体15は、基端部から先端部に向けて径寸法が大きくなるように拡径され略椀状に形成される。ヘッド本体15の下面には大気と連絡する開口13aが形成され、この開口13aはワークWを吸着する吸着面12として機能する。
【0024】
そして、吸着ヘッド13の開口13aをワークWの表面に接触させ、ヘッド本体15の内周側全域に形成される空間を負圧状態にすることで前記ワークWを吸着する。
【0025】
支持体14には、ヘッド本体15の内部と連絡する連絡通路として機能するノズル16が取り付けられ、このノズル16は機械式又は電気式の開閉バルブ17に接続され、吸着ヘッド13の開口13aがワークWで閉塞された後に、開閉バルブ17を閉じることでヘッド本体15の内部には密閉空間が形成される。
【0026】
そして、ワークWは、その表面に吸着ヘッド13の開口13aが接触して閉塞された状態で開閉バルブ17が閉じられることでヘッド本体15内の空間が負圧状態となり吸着ヘッド13に吸着される。一方、開閉バルブ17が開けられることでヘッド本体15内の空気が大気開放され、ヘッド本体15内の空間が大気圧に戻され吸着ヘッド13からワークWが離反(解放)される。
【0027】
このヘッド本体15は、例えば、ゴム製の弾性部材で成形されており、弾性変形するため、ワークWに密着させやすい。なお、ヘッド本体15の材質は、吸着するワークWの性質等によって適宜変更することが可能であって、例えば、弾性変形しない金属又は樹脂製の部材で成形されても構わない。この材料としては、シリコンゴムやテフロン(登録商標)樹脂、ニトリルゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム等が好適に用いられる。
【0028】
保持ユニット20は、
図2a及び
図2bに示すように、基台5に着脱自在に取り付けられ、ワークWを横切るようにしてその上方に設けられるアーム22と、このアーム22に取り付けられ吸着ヘッド13をワークWの上方に保持するブラケット25とを備える。
【0029】
アーム22は、例えば、中空状の角型パイプにより構成され、ワークWの長さ方向の長さよりも長く形成される。このアーム22には、作業者が操作しやすい位置に開閉バルブ17が取り付けられ、当該開閉バルブ17は作業者によって操作される。
【0030】
ブラケット25は、ワークWの幅方向に吸着ヘッド13が複数設けられる略矩形状に形成された板状のベース27と、このベース27に立設し前記アーム22に連結される連結体28とを備える。
【0031】
連結体28の上端部には、矩形状の孔部28aが形成されており、この孔部28aにはアーム22が挿入され、連結体28がアーム22の長さ方向に擦動可能に設けられる。また、この連結体28は、ネジ等の固定装置29によってアーム22の所定位置で固定される。
【0032】
したがって、ブラケット25は、ワークWの長さ方向に自由に移動可能となっており、ワークWの形状に応じて吸着ヘッド13の位置を調整することが可能となっている。
【0033】
離反ユニット30は、アーム22の両端部から垂下する伸縮体31として構成され、この伸縮体31には、例えば、バネ等の弾性体が用いられる。伸縮体31の下端には、基台5の載置面2に接離可能に接し、伸縮体31から上方の部位を一体的に安定した静止状態で保持する足部材30aが固定される。
【0034】
そして、作業者によってアーム22に下方への力が加えられると、この伸縮体31が縮むことで、アーム22を下降させ、吸着ユニット10のヘッド本体15をワークWに近接させ吸着面12をワークWに接触可能であるとともに、アーム22への力が取り除かれることで、伸縮体31の復元力によりアーム22を上昇させて元の位置に戻し、吸着ヘッド13のヘッド本体15を載置面2から離反可能である。
【0035】
なお、伸縮体31は、バネ等の機械的な機構に限られず、空圧又は油圧式のシリンダ装置等の電気的な機構を用いても構わない。
【0036】
たわみ除去ユニット40は、吸着面12で吸着されたワークWの長さ方向における両側を各々ワークWの外側に引っ張ることによりワークWの両側間に張力を発生させる引張機構部41を備える。この引張機構部41は、ワークWの両側に配置された吸着ヘッド13に対してワークWの内側に近接して設けられ、吸着ヘッド13によりワークWが吸着され持ち上げられた後に、ワークWの両側における吸着ヘッド13,13で吸着された箇所の内側を下方に押圧することで、ワークWの両側を各々外側に引っ張ってワークWの両側間に張力を加えることにより、吸着されたワークWが持ち上げられた際に生じるワークWのたわみを除去する。
【0037】
この引張機構部41は、ワークWの表面に接触させる接触体43と、この接触体43を吸着後のワークWに押し当てる押当部材45と、この押当部材45を介して接触体43を保持する保持体47と、を備えている。
【0038】
接触体43は、例えば、所定の接地面積を有する平板状の部材であって、その材質は金属、樹脂等で形成され、押当部材45は、伸縮可能なバネ等の弾性体が用いられる。また、保持体47は、吸着ヘッド13のヘッド本体15の内側に配置されるようにして、ブラケット25に取り付けられる。
【0039】
また、接触体43は、吸着後のワークWに押し当てるために、吸着ヘッド13のヘッド本体15の先端よりも下方に配置されるようにバネや保持体の長さが調整される。
【0040】
そして、吸着ヘッド13がワークWを吸着する際には、
図3(b)に示すように、載置面2からの押圧力を受けて押当部材45が縮み、吸着ヘッド13によりワークWが吸着され持ち上げられた際には、
図3(c)に示すように、押当部材45の弾性力により接触体43をワークWに押し当て、ワークWを下方に押圧する。これにより、ワークWは外側へと引っ張られ、たわみの発生が防止される。
【0041】
また、
図1及び
図2(a)(b)に示すように、吸着ヘッド13は、例えば、3つを1組として、ブラケット25のベース27の左右方向に並んで設けられており、ワークWの隅部を含む両側が当該吸着ヘッド13によって吸着されるように構成される。なお、吸着ヘッド13の装着個数等はその大きさ等によって適宜設定されるものである。
【0042】
また、引張機構部41は、例えば、2つを1組として、吸着ヘッド13の内側であってブラケット25のベース27の左右両側に設けられており、ワークWの四隅近傍が当該引張機構部41の接触体43によって押圧されるように構成される。なお、引張機構部41の装着個数等はその大きさ等によって適宜設定されるものである。
【0043】
また、ワーク吸着装置Kは、載置面2に載置されたワークWの位置を検知する検知装置を備えている。ワーク吸着装置Kは、
図1及び
図2(a)(b)に示すように、ワークWの長さ方向の両側端部の辺の位置をそれぞれ検出する一対の第1のセンサ51、51と、ワークWの幅方向の一方の端部の辺の位置を検出する第2のセンサ52と、当該第1及び第2のセンサ51、52とケーブルを介して電気的に接続され、各センサ51、52による検出結果と予め規定されたワークWの位置情報とを比較してワークWの位置の正否を判断し、その結果を作業者に報知する報知装置55とを備える。この第1及び第2のセンサ51、52や報知装置55は、それぞれ位置決めされたうえでアーム22に取り付けられ、作業者はこの報知装置55による報知を受けてワークWの位置の正否を判断する。
【0044】
次に、ワークWの一連の吸着動作について
図2(a)(b)及び
図3(a)(b)(c)を用いて説明する。
【0045】
本実施形態のワーク吸着装置Kは、作業者の手動による操作によって動作する。
【0046】
なお、以下の一連の動作をモータ等の駆動手段を用いて自動で行うようにしても構わない。
【0047】
まず、
図2(a)(b)及び
図3(a)に示した状態で、作業者によってアーム22に力が加えられることによって、アーム22が離反ユニット30の伸縮体31(弾性体)の弾性力に抗して下降し、
図3(b)に示すように、更に吸着ヘッド13のヘッド本体15をワークWの表面に押し付けた上で開閉バルブ17が閉じられるように操作される。
【0048】
これにより、ワークWにヘッド本体15が押し付けられて変形し、ヘッド本体15の内部の空気が抜かれた状態で開閉バルブ17が閉じられるため、ヘッド本体15の復元力により内部の空間に負圧が生じワークWが吸着される。
【0049】
なお、このとき、たわみ除去ユニット40の押当部材45(弾性体)は、
図3(b)中の矢印に示すように、載置面2からの押圧力を受けて、縮んだ状態が保持される。
【0050】
次に、作業者によってアーム22への力が取り除かれると、伸縮体31(弾性体)の復元力によりアーム22が上昇し、ワークWが載置面2から離反する。
【0051】
図3(c)に示すように、載置面2からのワークWの離反にともなって、たわみ除去ユニット40の押当部材45(弾性体)は、その復元力により伸び、ワークWを下方に押圧する。その結果、吸着ヘッド13のヘッド本体15によって長さ方向における両側が吸着されたワークWが、その外側へと引っ張られるため、ワークWにたわみを発生させることなく、ワークWが持ち上げられる。
【0052】
次に、作業者によってアーム22が基台5の上方向へ持ち上げられる。これにより、足部材30aが基台5の載置面2から離反し、アーム22から足部材30aに至る箇所が一体となって基台5から離れた場所へと搬送される。例えば、次の工程のための図示しない他の基台へと搬送される。この搬送中、
図3(c)に示したごとく、ワークWは吸着ヘッド13に吸着されたままの状態にあり、かつ、張力を加えられてたわみを生ずることなく伸長したままの状態に保持される。
【0053】
アーム22から足部材30aに至る箇所が一体となって、上記他の基台上へと搬送され、この基台の載置面に足部材30aが当てられると、
図2(a)に示したと同様にして、アーム22から足部材30aに至る箇所が載置面上に静置される。このときワークWは、
図3(c)に示したような、たわみ除去ユニットにより張力が負荷され、たわみの解消された伸長状態にある。
【0054】
そこで、作業者によってアーム22に押圧力が加えられることによって、アーム22が離反ユニット30の伸縮体31(弾性体)の弾性力に抗して下降し、
図3(b)に示すように、吸着ヘッド13ごとワークWが、他の基台の載置面に押し付けられる。
【0055】
続いて、開閉バルブ17が開けられ、ヘッド本体15の内部に大気が導入されることで、ワークWが吸着ヘッド13から解放される。
【0056】
そして、作業者によるアーム22に対する押圧が解除されると、伸縮体31(弾性体)の復元力によりアーム22が上昇する。これにより、ワークWが他の基台の載置面に残留する。
【0057】
ワークWを解放した吸着ヘッド13は、アーム22等と共に例えばもとの基台5へと戻され、他のワークWの吸着処理に供される。
【0058】
なお、作業者によってアーム22が基台5の上方向へ持ち上げられたうえで、基台5が次の工程のための他の基台と入れ替えられるようにしてもよい。この場合も前記操作と同様な操作によってワークWを伸長状態のまま他の基台上にセットすることができる。
【0059】
このように本実施形態のワーク吸着装置Kは、吸着ヘッド13によるワークWへの吸着後に、吸着ヘッド13が接触している前記ワークWの接触部の内側を下方に押圧する押圧手段としての押当部材45と接触体43を備え、接触体43によってワークWを下方に押圧することにより、吸着後のワークWの両側を外側に引っ張るものであり、簡易な設備で吸着後のワークWにたわみが生じることを簡単且つ確実に防止することができる。
【0060】
<実施の形態2>
図4(a)(b)に基づき、他の形態のたわみ除去ユニットを具備したワーク吸着装置K1について説明する。
【0061】
図1乃至
図3に示すワーク吸着装置Kは、吸着ヘッド13によりワークWが吸着され持ち上げられた状態において、吸着ヘッド13の内側に配置されている接触体43をワークWに押し当て、ワークWの両側を各々外側に引っ張るのに対して、
図4(a)(b)に示すワーク吸着装置K1は、吸着ヘッド13によりワークWが吸着され持ち上げられた状態において、吸着ヘッド13を各々ワークWの外側に移動させ、ワークWの両側間に引っ張り力を加えるものである。
【0062】
ワーク吸着装置K1は、
図4(a)(b)に示すように、ワークWが載置される載置面2を有する基台5と、このワークWを吸着する吸着ユニット10と、この吸着ユニット10をワークWに対して近接又は離反させるために移動する離反ユニット30と、吸着ユニット10によって吸着され持ち上げられた際に生じるワークWのたわみを除去するたわみ除去ユニット40と、を備えている。
【0063】
なお、基台5、吸着ユニット10、及び離反ユニット30は、上記
図1乃至
図3に示すワーク吸着装置Kと同一であるので詳細な説明は省略するものとし、たわみ除去ユニット40についてのみ説明する。
【0064】
たわみ除去ユニット40は、吸着ヘッド13をワークWの外側に引っ張る引張機構部60を備える。この引張機構部60は、例えば、吸着ヘッドを保持するブラケット25とアーム22の両側端部との間にそれぞれ設けられる伸縮体62、62である。この伸縮体62は、例えば、バネ等の弾性部材62aが適用される。
【0065】
そして、ブラケット25は、
図5(a)に示すように、弾性部材62aの弾性限度の範囲内でアーム22の長さ方向に自由に移動可能となっており、例えば、アーム22の内側に移動する場合には、ブラケット25に対して力が加えられることで弾性部材62aの弾性力に抗して移動させることが可能である。一方で、力を取り除くことで、
図5(b)に示すように、弾性部材62aの復元力により元の位置に戻る。
【0066】
次に、本実施形態におけるワークの一連の吸着動作について
図4(a)、
図4(b)及び
図5(a)(b)を用いて説明する。
【0067】
本実施形態のワーク吸着装置K1は、作業者の手動による操作によって動作する。
【0068】
なお、以下の一連の動作をモータ等の駆動手段を用いて自動で行うようにしても構わない。
【0069】
まず、ブラケット25に対して作業者によって力が加えられ、
図5(a)に示すように、ワークWの両側の規定位置上方に吸着ヘッド13が配置されるようにブラケット25をアーム22の内側に移動し、固定装置29によりブラケット25をアーム22に対して固定する。
【0070】
次に、アーム22に対して作業者によって力が加えられ、
図4に示すアーム22が伸縮体31(弾性体)の弾性力に抗して下降され、更に吸着ヘッド13をワークWの表面に押し付けた上で開閉バルブ17が閉じられるように操作される。
【0071】
これにより、ワークWにヘッド本体15が押し付けられて変形し、ヘッド本体15の内部の空気が抜かれた状態で開閉バルブ17が閉じられるため、ヘッド本体15の復元力により内部の空間に負圧が生じワークWが吸着される。
【0072】
次に、作業者によってアームに対する力が取り除かれた上で、固定装置29による固定が取り除かられると、
図5(b)に示すように、弾性部材62aの復元力によりブラケット25が元の位置に戻るように移動する。その結果、ワークWの両側が外側へと引っ張られるため、ワークWにたわみを発生させることなく、ワークWが持ち上げられる。
【0073】
その後、実施の形態1の場合と同様な操作及び処理が行われる。
【0074】
このように本実施形態のワーク吸着装置K1は、吸着ヘッド13によるワークWへの吸着後にブラケット25を外側に移動する移動手段としての伸縮体62(弾性部材62a)を備え、ブラケット25の移動により、吸着ヘッド13をワークWの外側方向に移動させて吸着後のワークWの両側を外側に引っ張るものであり、簡易な設備で吸着後のワークWにたわみが生じることを簡単且つ確実に防止することができる。
【0075】
<実施の形態3>
図6(a)及び
図6(b)に示すように、この実施の形態3では、足部材30aがワークWの幅方向において実施の形態1、2の場合よりも、より長く形成される。これにより、ワーク吸着装置の基台5上での姿勢の安定性が高まる。
【0076】
また、押圧手段の引張機構部41におけるワークWの表面に接触させる接触体43が、ワークWの幅方向において実施の形態1、2の場合よりも、より長く形成される。これにより、ワークWが下方へ、より均一な力で押圧され、ワークWからたわみがより好適に除去されることとなる。
【0077】
さらに、押圧手段におけるワークWに当接する箇所である接触体43の裏面には、滑りがよく、柔軟なシリコンゴム等からなるクッション部材43aが貼り付けられる。これにより、ワークWに無理なく引っ張り力が負荷されることとなり、ワークWからたわみが円滑に除去される。
【0078】
なお、実施の形態3において、実施の形態1の場合と同一箇所には同一の符号を用いて表すこととし、重複した説明を省略する。
【0079】
<実施の形態4>
図7(a)及び
図7(b)に示すように、この実施の形態4では、吸着ヘッド13の吸着面12においてワークWを負圧により吸着保持する際に、この負圧を発生させる手段として、手動ポンプ63が設けられる。
【0080】
手動ポンプ63は、シリンダ63aと、シリンダ63a内で往復動可能なピストン63bと、ピストン63bをシリンダ63a外から操作可能なピストンロッド63cとを具備する。この手動ポンプ63が、例えばアーム22に対して固定される。
【0081】
ピストンロッド63cが作業者によって操作され、ピストン63bがシリンダ63a内で吸引方向に移動させられることにより、負圧がシリンダ63a内に生じる。
【0082】
手動ポンプ63のシリンダ63aと吸着ヘッド13との間は、導管64によって連結される。導管64には、シリンダ63a内に発生する負圧の大きさを表示するゲージ65と、開閉バルブ17とが連結される。
【0083】
開閉バルブ17は、常時閉じているが、作業者が開操作することにより、導管内を大気中に開放可能である。開閉バルブ17は吸着ヘッド13毎に設けられているが、一か所にのみ設けてもよい。
【0084】
吸着ヘッド13の吸着面12がワークWに当てられた際に、作業者によって、手動ポンプ63のピストンロッド63cが操作されると、導管64内から吸着ヘッド13に至る間が大気圧よりも低い負圧となる。これにより、ワークWが吸着ヘッド13に吸着される。この負圧の大きさはゲージ65によって可視化され、これを作業者が手動ポンプ63を操作しながら見ることによって、ワークWが吸着ヘッド13によって適正に保持されたか否かが確認される。ワークWが吸着ヘッド13によって保持されたことがゲージ65の示す数値によって確認されたところで、手動ポンプ63の操作が停止される。吸着ヘッド13内の負圧は、開閉バルブ17が開操作されるまで保持され、ワークWは吸着ヘッド13によって吸着される。
【0085】
次に、ワークWの一連の吸着動作について
図8(a)、同図(b)及び同図(c)を用いて説明する。
【0086】
本実施形態のワーク吸着装置Kは、作業者の手動による操作によって動作する。
【0087】
まず、
図7(a)及び同図(b)に示した状態で、作業者によってアーム22に力が加えられることによって、アーム22が離反ユニット30の伸縮体31(弾性体)の弾性力に抗して下降し、
図8(a)に示すように、更に吸着ヘッド13のヘッド本体15がワークWの表面に押し付けられる。
【0088】
そこで、手動ポンプ63が作業者によって吸引操作され、吸着ヘッド13によってワークWが適正に吸着されたか否かがゲージ65の観察によって判断される。
【0089】
ゲージ65の観察によって負圧の大きさが適正値に到達したと、作業者によって判断されると、手動ポンプ63の吸引操作が停止される。この吸引操作が停止された状態で、ヘッド本体15はワークWに押し付けられて変形し、ワークWを吸着保持する。
【0090】
このとき、たわみ除去ユニット40の押当部材45(弾性体)は、
図8(a)に示すように、載置面2からの押圧力を受けて、縮んだ状態になる。
【0091】
次に、作業者によってアーム22への力が取り除かれると、
図8(b)に示すように、伸縮体31(弾性体)の復元力によりアーム22が上昇し、ワークWが載置面2から離反する。
【0092】
また、
図8(b)に示すように、載置面2からのワークWの離反にともなって、たわみ除去ユニット40の押当部材45(弾性体)は、その復元力により伸び、ワークWを下方に押圧する。その結果、吸着ヘッド13のヘッド本体15によって長さ方向における両側が吸着されたワークWの両側が、各々外側へと引っ張られるため、ワークWにたわみを発生させることなく、ワークWが持ち上げられる。
【0093】
次に、
図8(c)に示すように、作業者によってアーム22が基台5の上方向へ持ち上げられる。これにより、足部材30aが基台5の載置面2から離反し、アーム22から足部材30aに至る箇所が一体となって基台5から離れた場所へと搬送される。例えば、次の工程のための他の基台(図示せず)へと搬送される。この搬送中、
図8(c)に示すごとく、ワークWは吸着ヘッド13に吸着されたままの状態にあり、かつ、張力を加えられてたわみを生ずることなく伸長したままの状態に保持される。
【0094】
アーム22から足部材30aに至る箇所が一体となって、図示しない他の基台上へと搬送され、この基台の載置面に足部材30aが当てられると、
図7(a)に示したと同様にして、アーム22から足部材30aに至る箇所が載置面上に静置される。このときワークWは、
図8(c)に示したように、たわみ除去ユニット40により張力が負荷され、たわみの解消された伸長状態にある。
【0095】
そこで、作業者によってアーム22に押圧力が加えられることによって、アーム22が離反ユニット30の伸縮体31(弾性体)の弾性力に抗して下降し、
図8(a)に示すように、吸着ヘッド13ごとワークWが、他の基台の載置面に押し付けられる。
【0096】
続いて、開閉バルブ17が開けられ、ヘッド本体15の内部に大気が導入されることで、ワークWが吸着ヘッド13から解放される。
【0097】
そして、作業者によるアーム22に対する押圧が解除されると、伸縮体31(弾性体)の復元力によりアーム22が上昇する。これにより、ワークWが、
図7(a)に示したと同様に、上記他の基台の載置面に残留する。
【0098】
ワークWを解放した吸着ヘッド13は、アーム22等と共に例えばもとの基台5へと戻され、他のワークWの吸着処理に供される。
【0099】
なお、
図8(c)のごとく作業者によってアーム22が基台5の上方向へ持ち上げられたうえで、基台5が次の工程のための他の基台と入れ替えられるようにしてもよい。この場合も前記操作と同様な操作によってワークWを伸長状態のまま他の基台上にセットすることができる。
【0100】
なお、実施の形態4において、実施の形態1〜3の場合と同一箇所には同一の符号を用いて表すこととし、重複した説明を省略する。
【0101】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々変更可能である。