(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸のうち少なくとも一種をポリエステル原料樹脂に使用していることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロール。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス瓶やPETボトル等の保護と商品の表示を兼ねたラベル包装、キャップシール、集積包装等の用途に、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等からなる延伸フィルム(所謂、熱収縮性フィルム)が広範に使用されるようになってきている。そのような熱収縮性フィルムの内、ポリ塩化ビニル系フィルムは、耐熱性が低い上に、焼却時に塩化水素ガスを発生したり、ダイオキシンの原因となる等の問題がある。また、ポリスチレン系フィルムは、耐溶剤性に劣り、印刷の際に特殊な組成のインキを使用しなければならない上、高温で焼却する必要があり、焼却時に異臭を伴って多量の黒煙が発生するという問題がある。それゆえ、耐熱性が高く、焼却が容易であり、耐溶剤性に優れたポリエステル系の熱収縮性フィルムが、収縮ラベルとして広汎に利用されるようになってきており、PET容器の流通量の増大に伴って、使用量が増加している傾向にある。
【0003】
また、通常の熱収縮性ポリエステル系フィルムとしては、幅方向に大きく収縮させるものが広く利用されている。ボトルのラベルフィルムや、弁当容器等を結束するバンディングフィルムとして用いる場合、フィルムを環状にしてボトルや弁当容器に装着した後に周方向に熱収縮させなければならないため、幅方向に熱収縮する熱収縮性フィルムをバンディングフィルムとして装着する際には、フィルムの幅方向が周方向となるように環状体を形成した上で、その環状体を所定の長さ毎に切断してボトルや弁当容器に手かぶせ等で装着しなければならない。したがって、幅方向に熱収縮する熱収縮性フィルムからなるラベルフィルムやバンディングフィルムを高速でボトルや弁当容器に装着するのは困難である。それゆえ、最近では、フィルムロールから直接、ボトルや弁当容器の周囲に巻き付けて装着することが可能な長手方向に熱収縮するフィルムが求められている。フィルム環状体を形成してシールするセンターシール工程や、裁断、手かぶせ等の加工が不要になり、高速で装着することも可能である。
【0004】
収縮フィルムの要望のひとつとして、フィルムの幅方向で収縮物性に差がないことが求められる。一般に、ラベル用途や弁当のバンディング用途に使用する時、製膜して巻き上げたフィルムロールを巻き出して所定の幅にスリットして再度スリットロールとして巻き上げる。つまりフィルム幅方向で収縮物性に差があると、スリットした位置によって収縮率が異なるスリットロールが得られることとなる。主収縮方向に対して直交する方向、つまり幅方向の収縮率がスリットロールごとで異なる場合、幅方向の収縮率はラベルやバンディングフィルム用途で使用する際のラベルやバンディングフィルムの高さと密接に関係しているため、使用するロールによってばらばらの高さのラベルやバンディングフィルムが得られることとなり問題である。幅方向の収縮率のバラつきが小さいことが、スリットロールごとでのラベルやバンディングフィルムの高さを均一にする上で理想的である。
【0005】
幅方向の収縮率のバラつきは縦延伸時のネックインが原因と考えられる。縦延伸時には、縦方向に延伸応力がかかることに伴い、幅方向にもフィルム中央に向かう応力が働く。この幅方向にかかる力は特にフィルム端部付近で大きく、延伸時フィルムの幅が減少する。この幅の減少つまり収縮をネックインと呼んでおり、フィルムの端部付近では中央付近に比べて幅方向の収縮率が小さくなり、フィルム幅方向でのバラつきが生じると考えられる。
【0006】
また、収縮フィルムの要望として、収縮後のゆがみが少ないことも求められる。収縮後のゆがみは、分子の主配向方向がフィルムの長手方向もしくは幅方向から傾いていることが原因で生じることが知られている。この傾きのことを分子配向角と呼ぶが、通常の縦一軸延伸を行った場合、フィルム中央部分では機械流れ方向を時計12時方向とした場合、12時方向とフィルム中の分子鎖のなす角度(以下、単に分子配向角と表記)が0°に近く分子配向角が小さくなるものの、フィルム端部付近では分子配向角が大きい。このフィルム端部付近で分子配向角が大きくなる原因に関しても縦延伸時にネックインが起こるためであると考えられ、フィルム中央付近ではネックインの影響が小さいため分子配向角が小さく、フィルム端部付近で幅方向にかかる力の影響が大きく、縦延伸による縦方向の力に加えて幅方向への力が働くため分子鎖が傾き分子配向角が大きくなる。フィルムの中央部分から端部にわたって、分子配向角が小さいことが収縮後のゆがみに関しては理想的である。
【0007】
フィルム幅方向の収縮率のバラつきが小さく、分子配向角が小さいフィルムを得る方法として、縦延伸後の工程として、ネックイン時の幅方向の力の影響のある部分をトリミングする方法が考えられるが、製品として取り幅が減少し、コストの増加につながる問題がある。
【0008】
他のフィルム幅方向の収縮率のバラつきが小さく、分子配向角が小さいフィルムを得る方法として、二軸延伸する方法がある。
【0009】
例えば、特許文献1では、未延伸フィルムをはじめに幅方向に2倍以上に延伸し、ついで長手方向に延伸することで、長手方向に高い収縮性を有し製品の取り幅の広いフィルムが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、二軸に延伸するための大規模な設備が必要であり、コストがかさむ問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムの構成について詳しく説明する。尚、熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法は、後に詳述するが、フィルムは通常、ロール等を用いて搬送し、延伸することにより得られる。このとき、フィルムの搬送方向を長手方向と称し、前記長手方向に対して直交する方向をフィルム幅方向と称する。従って、以下で示す熱収縮性ポリエステル系フィルムの幅方向とは、ロール巻き出し方向に対して直交する方向であり、フィルム長手方向とは、ロールの巻き出し方向に平行な方向をいう。実施例および比較例で得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムにおける主収縮方向は長手方向である。
【0017】
主収縮方向である長手方向に高い収縮率を有し、主収縮方向に対して直交する方向の収縮率のばらつきが小さく、かつ分子配向角が小さいフィルムを得るために、設備コストを鑑みて長手方向への一軸延伸を採用した。但し上述の通り、通常の長手方向の一軸延伸であると、ネックインの影響のある部分を延伸後のトリミング工程において切り落とすこととなり製品幅が狭くなりコストが上がる。そこで本発明者は、鋭意研究の結果、一軸延伸の際の延伸距離を狭くすることによりネックイン時にかかる幅方向の力が影響する範囲を小さくできることを見出した。ネックイン時にかかる幅方向の力の影響する範囲が小さいというのは、縦延伸時に働く幅方向の力の影響がフィルム端部付近にとどまり、中央付近にまで力が及びにくくなるということである。幅方向の力が影響する範囲を小さくすることで、主収縮方向と直交方向の収縮率のばらつきが小さく、配向角が小さいフィルムを広幅で得ることが可能となった。
【0018】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルは、エチレンテレフタレートユニットを主たる構成成分とするものであり、エチレンテレフタレートユニットは、ポリエステルの構成ユニット100モル%中、50モル%以上であることが好ましい。フィルムに剛性(腰)を持たせるために、エチレンテレフタレートユニットは、ポリエステルの構成ユニット100モル%中、65モル%以上がより好ましく、70モル%以上が更に好ましい。ただし、エチレンテレフタレートユニットの比率が高過ぎると、必要な収縮率を得ることが難しくなるため、エチレンテレフタレートユニットの上限は90%以下が好ましい。
【0019】
本発明のポリエステルを構成する他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0020】
脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等)をポリエステルに含有させる場合、含有率は3モル%未満(ジカルボン酸成分100モル%中)であることが好ましい。
【0021】
また、3価以上の多価カルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物等)をポリエステルに含有させないことが好ましい。これらの多価カルボン酸を含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
【0022】
ポリエステルを構成するジオール成分としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等を挙げることができる。
【0023】
また、ポリエステルは、全ポリエステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中あるいは多価カルボン酸成分100モル%中の非晶質成分となり得る1種以上のモノマー成分の合計が2%未満であると必要な収縮率が得られず、収縮仕上げ時に収縮不足となる。非晶モノマー成分は2%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは4%以上、特に好ましくは5%以上である。
【0024】
非晶質成分となり得るモノマーとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,2−ジエチル1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、ヘキサンジオールを挙げることができる。これらの中でも、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたはイソフタル酸を用いるのが好ましい。また、ε−カプロラクトンを用いることも好ましい。
【0025】
ここで、上記の「非晶質成分となり得る」の用語の解釈について詳細に説明する。
【0026】
本発明において、「非晶性ポリマー」とは、具体的にはDSC示差走査熱量分析装置における測定で融解による吸熱ピークを有さない場合を指す。非晶性ポリマーは実質的に結晶化が進行しておらず、結晶状態をとりえないか、結晶化しても結晶化度が極めて低いものである。
【0027】
また、本発明において「結晶性ポリマー」とは上記の「非晶性ポリマー」ではないもの、即ち、DSC示差走査熱量分析装置における測定で融解による吸熱ピークを有する場合を指す。結晶性ポリマーは、ポリマーが昇温すると結晶化されうる、結晶化可能な性質を有する、あるいは既に結晶化しているものである。
【0028】
一般的には、モノマーユニットが多数結合した状態であるポリマーについて、ポリマーの立体規則性が低い、ポリマーの対象性が悪い、ポリマーの側鎖が大きい、ポリマーの枝分かれが多い、ポリマー同士の分子間凝集力が小さい、などの諸条件を有する場合、非晶性ポリマーとなる。しかし存在状態によっては、結晶化が十分に進行し、結晶性ポリマーとなる場合がある。例えば、側鎖が大きいポリマーであっても、ポリマーが単一のモノマーユニットから構成される場合、結晶化が十分に進行し、結晶性となり得る。そのため、同一のモノマーユニットであっても、ポリマーが結晶性になる場合もあれば、非晶性になる場合もあるため、本発明では「非晶質成分となり得るモノマー由来のユニット」という表現を用いた。
【0029】
ここで、本発明においてモノマーユニットとは、1つの多価アルコール分子および1つの多価カルボン酸分子から誘導されるポリマーを構成する繰り返し単位のことであり、また、ε−カプロラクトンの場合は、ラクトン環の開環で得られる構成単位を示す。
【0030】
テレフタル酸とエチレングリコールからなるモノマーユニットがポリマーを構成する主たるモノマーユニットである場合、イソフタル酸とエチレングリコールからなるモノマーユニット、テレフタル酸とネオペンチルグリコールからなるモノマーユニット、テレフタル酸と1.4−シクロヘキサンジメタノールからなるモノマーユニット、イソフタル酸とブタンジオールからなるモノマーユニット等が、上記の非晶質成分となり得るモノマー由来のユニットとして挙げられる。
【0031】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、例えば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0032】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、フィルムの作業性(滑り性)を良好にする滑剤としての微粒子を添加することが好ましい。微粒子としては、任意のものを選択することができるが、例えば、無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等、有機系微粒子としては、例えば、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等を挙げることができる。微粒子の平均粒径は、0.05〜3.0μmの範囲内(コールターカウンタで測定した場合)で、必要に応じて適宜選択することができる。
【0033】
熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中に上記粒子を配合する方法としては、例えば、ポリエステル系樹脂を製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行うのも好ましい。
【0034】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムには、フィルム表面の接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したりすることも可能である。
【0035】
本発明の熱収縮フィルムは単層でも異なる樹脂組成からなる樹脂層を積層させた積層フィルムでもよい。
【0036】
積層フィルムとする際は、積層フィルムを製造する際に用いられる公知の方法によって製造することができ、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式などの方法が挙げられる。例えば、共押出法であれば層を形成する各種樹脂混合物について、押出機で個別に溶融を行い、マルチマニホールド方式を備えたTダイ金型内で合流させて押出し、延伸装置で延伸することによって積層フィルムを得る事ができる。
【0037】
積層フィルムの形態は、特に限定されないが、例えば、A/Bの2種2層構成、B/A/B構成の2種3層構成、C/A/Bの3種3層構成の積層形態が挙げられる。
【0038】
〔本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの特性〕
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、98℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、下式1により算出したフィルムの主収縮方向である長手方向の熱収縮率(すなわち、98℃の温湯熱収縮率)が、50%以上である。
熱収縮率={(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%)・・・式(1)
【0039】
98℃における、長手方向の温湯熱収縮率が50%未満であると、ラベルやバンディングフィルムとして使用する場合に、収縮量が小さいために、熱収縮した後のラベルにシワやタルミが生じてしまうので好ましくない。98℃における長手方向の温湯熱収縮率の下限値は55%以上であるとより好ましく、60%以上であるとさらに好ましい。
【0040】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、フィルム幅方向100mmごとに試料を採取し、全ての試料について98℃の温水中で10秒間に亘って処理した場合におけるフィルム主収縮方向に対して直交する方向の温湯収縮率を求めたときのバラツキが5%以下である。尚、主収縮方向に対して直交する方向の温湯収縮率のバラツキの測定方法については、実施例において詳述する。
【0041】
主収縮方向に対して直交する方向の収縮率のばらつきが5%以上であった場合、ラベルやバンディングフィルムとして用いる場合に、使用したフィルムの幅方向の位置によって異なる高さのラベルやバンディングフィルムが得られることになり好ましくない。主収縮方向に対して直交する方向の収縮率のばらつきの上限値は4.5%以下であるとより好ましく、4%以下であるとさらに好ましい。尚、主収縮方向に対して直交する方向の収縮率のばらつきの下限については小さい程好ましいが、縦延伸時のネックインによる影響により0%とすることは難しく、現在の技術水準では2%程度が限界である。主収縮方向に対して直交する方向の収縮率のばらつきは3%であっても実質的に問題はない。
【0042】
さらに、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、下式(2)で示される主収縮方向である長手方向の屈折率と、主収縮方向に対して直交する方向である幅方向の屈折率の差が0.06以上であることが好ましい。
屈折率差=(主収縮方向の屈折率)―(主収縮方向に対して直交する方向の屈折率)・・・式(2)
【0043】
屈折率の差が0.06より少ない場合、長手方向および長手方向に対して直交する方向に分子が配向していないか、もしくは、長手方向および長手方向に対して直交する方向のいずれにも分子が配向していることを意味し、前者の場合、主収縮方向の長手方向に分子が配向していないため必要な収縮率が得られず、後者の場合は、主収縮方向と直交する方向にも分子が配向しており、不必要な幅方向の収縮率が生じるため好ましくない。屈折率の差の下限値は0.065以上であるとより好ましく、0.070以上であるとさらに好ましい。
【0044】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、分子配向角の絶対値が15度以下である必要がある。分子配向角の絶対値が15度より大きい場合、弁当等の容器に巻いて収縮させた時に、ゆがみが生じるために好ましくない。なお分子配向角の絶対値の上限値は13度以下であるとより好ましく、12度以下であるとさらに好ましい。分子配向角の絶対値は0度に近づくほどよいが、1度であっても特に問題ない。尚、分子配向角の詳細な測定法については後述する。
【0045】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、ラベル用途やバンディング用途の熱収縮性フィルムとして5〜100μmが好ましく、10〜95μmがより好ましい。
【0046】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、その製造方法について何ら制限される物ではないが、例えば、上記したポリエステル原料を押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを以下に示す方法により、延伸することによって得ることができる。
【0047】
原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエステル原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200〜300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。かかる押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
【0048】
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金より回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。
【0049】
さらに、得られた未延伸フィルムを、後述するように、所定の条件で長手方向に延伸し、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることが可能となる。以下、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための好ましい延伸について、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムの延伸方法との差異を考慮しつつ詳細に説明する。
【0050】
[熱収縮性ポリエステル系フィルムの好ましい延伸方法]
通常の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、収縮させたい方向に未延伸フィルムを延伸することによって製造される。本発明では主収縮方向である長手方向に一軸延伸する。通常の長手方向に一軸延伸する場合、未延伸フィルムを複数のロール群が連続的に配置した縦延伸機に導き、予熱ロール上(低速ロール)でフィルムを所定の温度まで加熱した後、予熱ロールの下流に予熱ロールよりも速度の速い低温ロール(高速ロール)を設けて、低速ロールと高速ロールの速度差によってフィルムを長手方向に延伸する。この時、低速ロールからフィルムが離れる地点から、高速ロールにフィルムが接する地点までの距離を延伸距離と呼ぶが、延伸距離と縦延伸時のネックインには密接な関係があり、延伸距離が長いほどネックインによる幅方向の力が影響する範囲が大きくなる。本発明ではこの延伸距離を小さくすることでネックインによる幅方向の力が影響する範囲を小さくした。
【0051】
延伸前または延伸中のフィルムの加熱方法には種々あり、低速ロールと高速ロールの間を通るフィルムをIRヒーターや集光IRヒーターで加熱する方法があるが、ヒーター設備のために低速ロールと高速ロールの位置が遠くなり、延伸距離が広がるため好ましくない。また、予熱ロール上のみでの加熱する延伸方法においても、低速ロールと高速ロールが水平方向に配置され、フィルムは低速ロール、高速ロールの上部に通紙し、フィルムをニップロールなどで抑えながら延伸する方法も考えられるが、フィルムが低速ロールから離れる点と、高速ロールに接する点が広いためネックインによる幅方向の力が影響する範囲が広がる。好ましくは、予熱ロール上のみの加熱にし、フィルムをたすき掛けで低速ロールと高速ロールに通す方法(たとえば、低速ロールではフィルム上部を通り、高速ロールではフィルムがロール下部を通す方法)を採用することで、延伸距離はきわめて短くなる。このとき延伸距離は、100mm以下であることが好ましい。より好ましくは80mm以下であり、更に好ましくは60mm以下である。
【0052】
上記の研究結果より、長手方向への延伸倍率は2.5倍以上7倍以下であることが好ましい。長手方向への延伸倍率が2.5倍未満であると、必要な収縮率を得ることが困難となり、また、フィルム縦方向の厚み斑が大きくなり好ましくない。縦延伸倍率の上限が7倍より高いと、ネックインが大きくなり、幅方向の収縮率のばらつきが大きくなり、配向角が大きくなる上に、長手方向に延伸し難くなる(所謂、破断が生じやすくなる)ので好ましくない。より好ましくは2.7倍以上6.5倍以下であり、更に好ましくは3倍以上6倍以下である。
【0053】
長手方向の延伸は多段延伸を採用してもよい。つまり例えば二段延伸の場合、上記低速ロールと高速ロールの間に、低速ロールより速度が速く、高速ロールよりも遅いロール(中速ロール)を配置し、低速ロールと中速ロールの間で一段目の延伸を行い、中速ロールと高速ロールの間で二段目の延伸を行う。低速ロールと高速ロールの間のみの一段延伸と比較して、多段延伸の場合は必然的に延伸距離が長くなるため、一段目の延伸と二段目の延伸を合わせた総延伸倍率の上限値は6倍以下が好ましい。より好ましくは5.5倍以下であり、更に好ましくは5.0倍以下である。また、一段目の延伸距離と二段目の延伸距離を合わせた累計の延伸距離は200mm以下が好ましい。より好ましくは180mm以下であり、さらに好ましくは160mm以下である。
【0054】
本発明の包装体は、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムから得られたバンディングフィルム(及びラベル)が、包装対象物の少なくとも外周の一部に被覆して熱収縮させて形成されるものである。包装対象物としては、(飲料用のPETボトルを始め、各種の瓶、缶、菓子や)弁当等のプラスチック容器、紙製の箱等を挙げることができる。なお、通常、それらの包装対象物に、熱収縮性ポリエステル系フィルムから得られるラベルを熱収縮させて被覆させる場合には、当該バンディングフィルム(及びラベル)を約5〜70%程度熱収縮させて包装体に密着させる。なお、包装対象物に被覆されるバンディングフィルム(及びラベル)には、印刷が施されていても良いし、印刷が施されていなくても良い。
【0055】
バンディングフィルム(及びラベル)を作製する方法としては、長方形状のフィルムを長手方向に丸めて端部を重ね合わせて接着してラベル状にするか、あるいは、ロール状に巻き取ったフィルムをロール長手方向に丸めて端部をフィルムに重ね合わせて接着して、チューブ状体としたものをカットしてラベル状とする。フィルム同士を接着する方法は、溶断シール、溶剤接着、ホットメルト接着剤による接着、エネルギー線硬化型接着剤による接着など、既知の方法を用いて行うことができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。実施例、比較例で使用した原料の組成を表1に、各層に用いた混合原料の比率を表2に、実施例、比較例におけるフィルムの製造条件および評価結果を、表3に示す。
【0057】
フィルムの評価方法は下記の通りである。尚、以下の実施例において、特に断りが無い限り、「フィルム」とは熱収縮させる前のフィルムサンプルを意味する。
[Tg(ガラス転移点)]
示差走査熱量分析装置(セイコー電子工業株式会社製、DSC220)を用いて、JIS−K7121−1987に基づいて求めた。未延伸フィルム5mgをサンプルパンに入れ、パンのふたをし、窒素ガス雰囲気下で−40℃から120℃に10℃/分の昇温速度で昇温して測定し、昇温プロファイルを得た。ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0058】
[固有粘度 (IV)]
ポリエステル0.2gをフェノール/1,1,2,2-テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した(単位:dl/g)。
【0059】
[熱収縮率(温湯熱収縮率)]
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、98±0.5℃の温水中に無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に10秒間浸漬し、水中から引き出してフィルムの縦および横方向の寸法を測定し、下記式(1)にしたがって、それぞれ熱収縮率を求めた。熱収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
熱収縮率={(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%) 式1
【0060】
[収縮率のばらつき(温湯熱収縮率)]
フィルム幅方向(主収縮方向に対して直交する方向)で一方の端縁からもう一方の端縁まで10cm×10cmの正方形のサンプルを10cmピッチで採取し、上記式(1)に従い、各サンプルの幅方向の収縮率を測定した。前記方法により測定した各サンプルの幅方向の収縮率につき、その最大値と最小値の差を収縮率のバラツキとした。
【0061】
[分子配向角]
本発明における分子配向軸とは、フィルムの長手方向をX軸、フィルムの幅方向をY軸、フィルムの厚み方向をZ軸方向とした場合に、フィルムのXY平面上で見た場合に、最も分子配向度が大きい方向を分子配向軸と称する。そして、分子配向角とは上記分子配向軸を測定した場合の分子配向軸が、フィルム長手方向又はフィルム幅方向からずれてくる角度を意味する。分子配向角の測定方法としては、まずフィルムから長手方向×幅方向=140mm×100mmの矩形のサンプルを採取する。切り出したフィルムサンプルについて分子配向角(分子配向軸方向の角度)を王子計測機器株式会社製の分子配向角測定装置(MOA-6004)で測定する。分子配向角は、フィルムの長手方向の角度を0度とし、上記分子配向軸の方向が、長手方向を基準として45度より小さい時は0度からの差、45度より大きい時は90度からの差を求める。前記方法による分子配向角測定を、フィルム幅方向において一方の端縁からもう一方の端縁まで10cmピッチで採取した矩形サンプルの全てについて行い、その絶対値が最大となるものを本発明における「分子配向角の絶対値」とした。
【0062】
[屈折率]
各試料フィルムを23℃、65%RHの雰囲気中で2時間以上放置した後、アタゴ社製の「アッベ屈折計4T型」を用いて、ナトリウムD線(波長:589.3nm)における屈折率を、フィルムの主収縮方向および主収縮方向に対して直交する方向のそれぞれについて求めた。そして下式(3)の通り、主収縮方向(フィルム長手方向)の屈折率から、主収縮方向に対して直交する方向(フィルム幅方向)の屈折率を引いた値を「屈折率の差」とした。
屈折率差=(主収縮方向の屈折率)―(主収縮方向に対して直交する方向の屈折率)・・・式(3)
【0063】
[収縮仕上り性(ラップ・ラウンド)]
弁当のプラスチック容器(辺 150×150mm、高さ100mm)に対して、容器の胴部と蓋部をフィルムが結束するように、幅50mmのフィルムを容器の周方向をフィルムの収縮方向にして巻き付け、220℃で溶断シール後、設定温度90℃のシュリンクトンネルにて加熱収縮させた。収縮仕上り性の評価においては、シワとゆがみの2点において評価した。シワに関しては、
図2において、弁当容器の辺方向に入る長さ5cm以上のシワの個数で判断し、基準は下記のようにした
○:0〜4個
△ : 5〜14個
× : 15個以上
【0064】
収縮後の弁当容器のゆがみについては、
図3は収縮後のバンディングフィルムと弁当容器を横から見た図であるが、弁当容器を置いた床からバンディングフィルムの端までの距離を高さHとし、Hを弁当容器の周方向に5mmピッチで測定したときの最大値Hmaxと最小値Hminの差をRとした。Rが大きいものをゆがみが大きいと判断し、基準は以下のようにした
○:0mm ≦ R < 5mm
△ : 5mm ≦ R < 10mm
× : 10mm ≦ R
<ポリエステル原料の調製>
【0065】
合成例1
撹拌機、温度計および部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、ジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、多価アルコール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%とを、エチレングリコールがモル比でジメチルテレフタレートの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.225モル%(酸成分に対して)を添加し、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、280℃で26.7Paの減圧条件のもとで重縮合反応を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステル1を得た。組成を表1に示す。
【0066】
合成例2〜4
合成例1と同様の方法により、表1に示すポリエステル2〜4を得た。ポリエステル2の製造の際には、滑剤としてSiO2(富士シリシア社製サイリシア266;平均粒径1.5μm)をポリエステルに対して7200ppmの割合で添加した。なお、表中、NPGはネオペンチルグリコール、BDは1,4−ブタンジオール、DEGは副生成物のジエチレングリコールである。各ポリエステルの固有粘度は、それぞれ、2:0.75dl/g,3:1.20dl/g,4:1.20dl/gであった。なお、各ポリエステルは、適宜チップ状にした。
【0067】
〔実施例1〕
上記したポリエステル1、ポリエステル2、ポリエステル3およびポリエステル4を質量比25:5:60:10で混合して(混合原料A)押出機に投入した。しかる後、その混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが42μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムのTgは75℃であった。当該未延伸フィルムを複数のロール群が連続的に配置した縦延伸機に導き、予熱ロール状でフィルム温度80℃になるまで加熱した後に、ロール延伸法の1段延伸によって長手方向の延伸倍率を3.5倍、延伸後のフィルムの厚さが12μmになるように縦延伸した。この時延伸距離は31mmであった。縦延伸後は表面温度25℃に設定された冷却ロールで冷却し、次いでロール状に巻き取った。得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。評価結果を表3に示す。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮仕上がり性が良いフィルムであった。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
〔実施例2〕
長手方向の延伸倍率を4.5倍とし、長手方向への延伸後のフィルムの厚さが12μmになるように溶融させた混合樹脂のTダイから押出し量を調整した以外は実施例1と同様とした。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮仕上がり性が良いフィルムであった。
【0072】
〔実施例3〕
長手方向の延伸倍率を5.5倍とし、長手方向への延伸後のフィルムの厚さが12μmになるように溶融させた混合樹脂のTダイから押出し量を調整した以外は実施例1と同様とした。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮仕上がり性が良いフィルムであった。
【0073】
〔実施例4〕
長手方向の延伸倍率を6倍とし、長手方向への延伸後のフィルムの厚さが12μmになるように溶融させた混合樹脂のTダイから押出し量を調整した以外は実施例1と同様とした。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮仕上がり性が良いフィルムであった。
【0074】
〔実施例5〕
ロール延伸方式の二段延伸によって一段目の延伸を1.3倍、2段目の延伸を2.7倍にした以外は実施例1と同様とした。この時の一段目の延伸距離を160mm、二段目の延伸距離を31mmであった。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮仕上がり性が良いフィルムであった。
【0075】
〔実施例6〕
ロール延伸方式の二段延伸によって一段目の延伸を1.5倍、2段目の延伸を3.0倍にした以外は実施例2と同様とした。この時の一段目の延伸距離を160mm、二段目の延伸距離を31mmであった。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮仕上がり性が良いフィルムであった。
【0076】
〔実施例7〕
ロール延伸方式の二段延伸によって一段目の延伸を1.9倍、2段目の延伸を2.9倍にした以外は実施例3と同様とした。この時の一段目の延伸距離を160mm、二段目の延伸距離を31mmであった。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮仕上がり性が良いフィルムであった。
【0077】
〔実施例8〕
上記したポリエステル1、ポリエステル2およびポリエステル3を質量比70:5:25で混合して(混合原料B)、スキン層用の樹脂混合物とした。上記したポリエステル1、ポリエステル2、ポリエステル3およびポリエステル4を質量比5:5:66:24で混合して(混合原料C)、コア層用の樹脂混合物とした。上記、スキン層およびコア層の各層用の樹脂混合物を、2台の2軸押出機を使用して2層マルチマニホールドを備えたTダイ金型を用いて280℃の温度で共押出し、速やかに冷却ロールで冷却し、スキン層/コア層の2層のシートを作製した。この時、スキン層とコア層の厚み比がスキン層:コア層=2:8となるように共押出しした。次いで、当該シートを80℃に加熱し、ロール延伸法の一段延伸によって長手方向の延伸倍率を4.5倍、延伸後のフィルムの総厚さが12μmとなるように縦延伸した。この時延伸距離は31mmであった。縦延伸後は冷却ロールで冷却し、次いでロール状に巻き取った。得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。評価結果を表2に示す。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮仕上がり性が良いフィルムであった。
【0078】
〔実施例9〕
上記したポリエステル1、ポリエステル2およびポリエステル3を質量比70:5:25で混合して(混合原料B)、スキン層用の樹脂混合物とした。上記したポリエステル1、ポリエステル2、ポリエステル3およびポリエステル4を質量比5:5:66:24で混合して(混合原料C)、コア層用の樹脂混合物とした。上記、スキン層およびコア層の各層用の樹脂混合物を、2台の2軸押出機を使用して3層マルチマニホールドを備えたTダイ金型を用いて280℃の温度で共押出し、速やかに冷却ロールで冷却しスキン層/コア層/スキン層の3層のシートを作製した。この時、スキン層とコア層の厚み比がスキン層:コア層:スキン層=1:8:1となるように共押出しした。次いで、当該シートを80℃に加熱し、ロール延伸法の一段延伸によって長手方向の延伸倍率を4.5倍、延伸後のフィルムの総厚さが12μmとなるように縦延伸した。この時延伸距離は31mmであった。縦延伸後は冷却ロールで冷却し、次いでロール状に巻き取った。得られたフィルムの特性を上記の方法により評価した。評価結果を表2に示す。評価の結果、十分な収縮性を有し、収縮仕上がり性が良いフィルムであった。
【0079】
〔比較例1〕
予熱ロール状でフィルム温度75℃になるまで加熱した後に、赤外線ヒーターで低速ロールと高速ロールの間のフィルムを加熱しながら、ロールの速度差を利用して長手方向に4.5倍、延伸後のフィルムが12μmとなるように縦延伸した以外は実施例1と同様とした。この時、延伸距離は300mmであった。評価の結果、幅方向の収縮率のばらつきが大きく、収縮後のバンディングフィルムにシワが生じ、ゆがみが発生して仕上り性に劣るフィルムであった。
【0080】
[比較例2]
予熱ロール状でフィルム温度75℃になるまで加熱した後に、赤外線ヒーターで低速ロールと高速ロールの間のフィルムを加熱しながら、ロールの速度差を利用して長手方向に4.5倍、延伸後のフィルムが12μmとなるように縦延伸した以外は実施例8と同様とした。この時、延伸距離は300mmであった。評価の結果、幅方向の収縮率のばらつきが大きく、収縮後のバンディングフィルムにシワが生じ、ゆがみが発生して仕上り性に劣るフィルムであった。
【0081】
[比較例3]
予熱ロール状でフィルム温度75℃になるまで加熱した後に、赤外線ヒーターで低速ロールと高速ロールの間のフィルムを加熱しながら、ロールの速度差を利用して長手方向に4.5倍、延伸後のフィルムが12μmとなるように縦延伸した以外は実施例9と同様とした。この時、延伸距離は300mmであった。評価の結果、幅方向の収縮率のばらつきが大きく、収縮後のバンディングフィルムにシワが生じ、ゆがみが発生して仕上り性に劣るフィルムであった。
【0082】
[比較例4]
延伸距離を250mmにした以外は実施例2と同様とした。評価の結果、幅方向の収縮率のばらつきが大きく、収縮後のバンディングフィルムにシワが生じ、ゆがみが発生して仕上り性に劣るフィルムであった。