(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エミッタ領域と接し、前記境界メサ部と前記トランジスタ部側のメサ部との間の前記ダミートレンチ部から、前記高濃度境界メサ部と前記ベース境界メサ部との間の前記ダミートレンチ部までの距離(Dd)は、
前記高濃度境界メサ部と前記ベース境界メサ部との間の前記ダミートレンチ部から、前記ベース境界メサ部と前記ダイオード部との境界までの距離(De)よりも小さい
請求項10に記載の半導体装置。
前記エミッタ領域と接し、前記境界メサ部と前記トランジスタ部側のメサ部との間の前記ダミートレンチ部から、前記高濃度境界メサ部と前記ベース境界メサ部との間の前記ダミートレンチ部までの距離(Dd)は、
前記高濃度境界メサ部と前記ベース境界メサ部との間の前記ダミートレンチ部から、前記ベース境界メサ部と前記ダイオード部との境界までの距離(De)よりも大きい
請求項10に記載の半導体装置。
前記トランジスタ部に形成された前記メサ部の少なくとも一つには、前記ベース領域および前記ドリフト領域の間に、前記ドリフト領域よりも高濃度の第1導電型の蓄積領域が設けられる、
請求項16から19のいずれか一項に記載の半導体装置。
前記ダイオード部の前記コレクタ領域の、前記延伸方向に沿った内側の端部は、前記トランジスタ部の前記蓄積領域の前記延伸方向に沿った外側の端部よりも内側に位置する
請求項20に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0027】
図1は、半導体装置100の一例を示す上面図である。本例の半導体装置100は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のトランジスタを含むトランジスタ部70、および、FWD(Free Wheel Diode)等のダイオードを含むダイオード部80を有する半導体チップである。ダイオード部80は、半導体基板の上面においてトランジスタ部70と隣接して形成される。半導体基板の上面とは、半導体基板において対向する2つの主面の一方を指す。
図1においてはチップ端部周辺のチップ上面を示しており、他の領域を省略している。
【0028】
なお、本明細書において、ダイオード部80は、活性領域において、カソード領域に一致する裏面の領域、またはおもて面側に対して、半導体基板の裏面に垂直にカソード領域を投影したときの投影領域としてよい。また、トランジスタ部70は、活性領域において、おもて面側に対して、半導体基板の裏面に垂直にコレクタ領域を投影したときの投影領域であって、エミッタ領域12およびコンタクト領域15を含む所定の単位構成が規則的に配置された領域としてよい。
【0029】
また、
図1においては半導体装置100における半導体基板の活性領域を示すが、半導体装置100は、活性領域を囲んでエッジ終端部を有してよい。活性領域は、半導体装置100をオン状態に制御した場合に電流が流れる領域を指す。エッジ終端部は、半導体基板の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端部は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
【0030】
本例の半導体装置100は、半導体基板の上面側の内部に形成されたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域17、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。また、本例の半導体装置100は、半導体基板の上面の上方に設けられたエミッタ電極52およびゲート電極50を備える。エミッタ電極52およびゲート電極50は互いに分離して設けられる。本明細書では、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、トレンチ部の一例である。
【0031】
エミッタ電極52およびゲート電極50と、半導体基板の上面との間には層間絶縁膜が形成されるが、
図1では省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール54、コンタクトホール55およびコンタクトホール56が、当該層間絶縁膜を貫通して形成される。
【0032】
エミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、半導体基板の上面におけるエミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14と接触する。また、エミッタ電極52は、コンタクトホール56を通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52とダミー導電部との間には、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料で形成された接続部57が設けられてよい。接続部57は、半導体基板の上面に形成される。接続部57と半導体基板との間には、熱酸化膜等の絶縁膜が形成される。
【0033】
ゲート電極50は、コンタクトホール55を通って、ゲート配線51と接触する。ゲート配線51は、不純物がドープされたポリシリコン等で形成される。ゲート配線51は、半導体基板の上面において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部と接続される。つまりゲート配線51は、半導体基板の上面において、ゲートトレンチ部40の一部分と、コンタクトホール55との間に渡って形成される。
【0034】
エミッタ電極52およびゲート電極50は、金属を含む材料で形成される。例えば、各電極の少なくとも一部の領域はアルミニウムまたはアルミニウム−シリコン合金で形成される。各電極は、アルミニウム等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよく、コンタクトホール内においてタングステン等で形成されたプラグを有してもよい。
【0035】
1以上のゲートトレンチ部40および1以上のダミートレンチ部30は、トランジスタ部70の領域において所定の配列方向に沿って所定の間隔で配列される。トランジスタ部70においては、配列方向に沿って1以上のゲートトレンチ部40と、1以上のダミートレンチ部30とが交互に形成されてよい。また、ダミートレンチ部30は、ダイオード部80の領域において配列方向に沿って所定の間隔で配列される。
【0036】
ダミートレンチ部30は、半導体基板の上面において予め定められた延伸方向に延伸して形成される。本例のトランジスタ部70におけるダミートレンチ部30の一部は、直線形状を有しており、上述した配列方向とは垂直な延伸方向に延伸して形成される。また、トランジスタ部70におけるダミートレンチ部30の一部は、2本の直線が端部において曲線部で接続されている形状を有する。
【0037】
図1においてはX軸方向をトレンチ部の配列方向とする。また、Y軸方向をトレンチ部の延伸方向とする。X軸およびY軸は、半導体基板の上面と平行な面内において互いに直交する軸である。また、X軸およびY軸と直交する軸をZ軸とする。本明細書においては、Z軸方向を深さ方向と称する場合がある。
【0038】
なお、トランジスタ部70において、ダイオード部80との境界には、複数のダミートレンチ部30が連続して配列されてよい。ダイオード部80との境界において連続して配列されるダミートレンチ部30の数は、ダイオード部80と離れたトランジスタ部70の内側において連続して配列されるダミートレンチ部30の数よりも多くてよい。
【0039】
図1の例では、ダイオード部80との境界におけるトランジスタ部70では、端部で連結された2本と、直線形状の1本の計3本のダミートレンチ部30が連続して配列されている(トランジスタ部70およびダイオード部80の境界に重なるダミートレンチ部30は計数していない)。これに対して、トランジスタ部70の内側では、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30が1本ずつ交互に配列されている。
【0040】
ゲートトレンチ部40は、対向部41および突出部43を有する。対向部41は、トランジスタ部70におけるダミートレンチ部30と対向する範囲において、上述した延伸方向に延伸して形成される。つまり、対向部41は、ダミートレンチ部30と平行に形成される。突出部43は、対向部41から更に延伸して、ダミートレンチ部30と対向しない範囲に形成される。本例において、ダミートレンチ部30の両側に設けられた2つの対向部41が、1つの突出部43により接続される。突出部43の少なくとも一部は曲線形状を有してよい。
【0041】
突出部43において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部と、ゲート配線51とが接続する。ゲート配線51は、突出部43の対向部41から最も離れた領域において、ゲート導電部と接続してよい。本例の突出部43は、対向部41から最も離れた領域において、対向部41とは直交する方向に延伸する部分を有する。ゲート配線51は、突出部43の当該部分においてゲート導電部と接続してよい。
【0042】
ダイオード部80におけるダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40におけるダミートレンチ部30と同様の形状を有してよく、ゲートトレンチ部40と同様の形状を有してもよい。ただし、ダイオード部80におけるダミートレンチ部30は、トランジスタ部70におけるダミートレンチ部30と同一の長さを有する。
【0043】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域17、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に形成される。ウェル領域17は、ゲート電極50が設けられる側の活性領域の端部から、所定の範囲で形成される。ウェル領域17の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の、ゲート電極50側の一部の領域はウェル領域17に形成される。ダミートレンチ部30の延伸方向の端の底は、ウェル領域17に覆われていてよい。
【0044】
ゲートトレンチ部40の突出部43は、全体がウェル領域17に形成されてよい。半導体基板は第1導電型を有し、ウェル領域17は半導体基板とは異なる第2導電型を有する。本例の半導体基板はN−型であり、ウェル領域17はP+型である。本例においては、第1導電型をN型として、第2導電型をP型として説明する。ただし、第1および第2導電型は逆の導電型であってもよい。
【0045】
各トレンチ部に挟まれた領域であるメサ部94には、ベース領域14が形成される。さらにメサ部94は、配列方向に沿って隣り合うトレンチ部に挟まれた領域で、トレンチ部の底面で最も深い位置から、半導体基板の上面(即ち、おもて面)までの領域であってよい。ベース領域14は、ウェル領域17よりもドーピング濃度の低い第2導電型である。本例のベース領域14はP−型である。
【0046】
メサ部94においてベース領域14の上面には、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域15が形成される。本例のコンタクト領域15はP+型である。また、トランジスタ部70においては、コンタクト領域15の上面の一部に、半導体基板よりもドーピング濃度が高い第1導電型のエミッタ領域12が選択的に形成される。本例のエミッタ領域12はN+型である。
【0047】
コンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、隣接する一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで形成される。トランジスタ部70の1以上のコンタクト領域15および1以上のエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向に沿って交互にメサ部94の上面に露出するように形成される。ダイオード部80のメサ部94には、トランジスタ部70における少なくとも一つのコンタクト領域15と対向する領域にコンタクト領域15が形成される。
図1の例では、ダイオード部80のメサ部94には、トランジスタ部70において最もゲート電極50側のコンタクト領域15と対向する領域に、コンタクト領域15が形成されており、他の領域にはベース領域14が形成されている。
【0048】
トランジスタ部70において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびエミッタ領域12の各領域の上方に形成される。コンタクトホール54は、ベース領域14およびウェル領域17に対応する領域には形成されない。
【0049】
ダイオード部80において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびベース領域14の上方に形成される。本例のコンタクトホール54は、ダイオード部80のメサ部94における複数のベース領域14のうち、最もゲート電極50に近いベース領域14に対しては形成されない。本例においてトランジスタ部70のコンタクトホール54と、ダイオード部80のコンタクトホール54とは、各トレンチ部の延伸方向において同一の長さを有する。
図1のダイオード部80において、コンタクトホール54の延伸方向の端に、コンタクト領域15を形成しているが、このコンタクト領域15は無くてもよい。また、ダイオード部80においても、コンタクトホール内においてタングステン等で形成されたプラグを形成する場合、コンタクトホールで露出したベース領域14の表面に、コンタクト領域15を形成してもよい。
【0050】
なお、複数のメサ部94のうち、トランジスタ部70およびダイオード部80との境界における少なくとも1つの境界メサ部94−1は、半導体基板の上面においてベース領域14よりも高濃度のP+型のコンタクト領域15を有する。境界メサ部94−1において半導体基板の上面に露出するコンタクト領域15の面積は、他のメサ部94において半導体基板の上面に露出するコンタクト領域15の面積よりも大きい。
【0051】
図1の例では、トランジスタ部70およびダイオード部80との境界に隣接する、トランジスタ部70側の1つのメサ部94が境界メサ部94−1である。境界メサ部94−1においては、トランジスタ部70の他のメサ部94でコンタクト領域15が形成されている領域に加え、トランジスタ部70の他のメサ部94ではエミッタ領域12が形成されている領域にも、コンタクト領域15が形成されている。つまり、本例の境界メサ部94−1は、半導体基板の上面においてエミッタ領域12を有さない。
【0052】
また、境界メサ部94−1よりもダイオード部80側のメサ部94のうち少なくとも一部は、半導体基板の上面においてベース領域14を有する。当該メサ部94は、境界メサ部94−1におけるコンタクト領域15と対向する領域も、ベース領域14である。本例において当該ベース領域14は、ダイオードのアノード領域として機能する。
【0053】
また、トランジスタ部70の一部の領域には、ベース領域14の下方に蓄積領域16が形成される。
図1においては、蓄積領域16が形成される領域を点線で示している。また、ダイオード部80の一部の領域には、ベース領域14の下方にカソード領域82が形成される。
図1においては、カソード領域82が形成される領域を点線で示している。
【0054】
カソード領域82は、半導体基板の上面(即ち、おもて面)に露出したベース領域14を、半導体基板の下面に投影した位置にあってよい。すなわち、コンタクトホール54のトレンチ部延伸方向で端に形成されたコンタクト領域15を、半導体基板の下面(即ち、裏面)に投影した位置から、カソード領域82は離れていてよい。
【0055】
図2は、
図1に示した半導体装置100のa−a'断面の一例を示す図である。a−a'断面は、X−Z面と平行で、且つ、トランジスタ部70のエミッタ領域12を通る断面である。
図2においては、半導体装置100の製造時に用いるマスク110を合わせて示している。
【0056】
本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜26、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は、半導体基板10および層間絶縁膜26の上面に形成される。
【0057】
コレクタ電極24は、半導体基板10の下面に形成される。下面とは、上面とは逆側の面を指す。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。また本明細書において、基板、層、領域等の各部材のエミッタ電極52側の面または端部を上面または上端、コレクタ電極24側の面または端部を下面または下端と称する。また、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向を深さ方向と称する。
【0058】
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。半導体基板10の上面側には、P−型のベース領域14が形成される。
【0059】
当該断面において、トランジスタ部70の各メサ部94の上面側には、N+型のエミッタ領域12、P−型のベース領域14およびN+型の蓄積領域16が、半導体基板10の上面側から順番に形成される。
【0060】
当該断面において、ダイオード部80の各メサ部94の上面側には、P−型のベース領域14が形成されている。ダイオード部80の各メサ部94には、蓄積領域16が形成されない。
【0061】
トランジスタ部70において、蓄積領域16の下面にはN−型のドリフト領域18が形成される。ドリフト領域18とベース領域14との間に、ドリフト領域18よりも高濃度の蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減することができる。
【0062】
蓄積領域16は、トランジスタ部70の各メサ部94に形成される。蓄積領域16は、各メサ部94におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。ただし、トランジスタ部70とダイオード部80との境界近傍における一部のメサ部94においては、ベース領域14の下面が蓄積領域16に覆われていない。
【0063】
ダイオード部80において、ベース領域14の下面には、ドリフト領域18が形成される。トランジスタ部70およびダイオード部80の双方において、ドリフト領域18の下面にはN−型のバッファ領域20が形成される。
【0064】
バッファ領域20は、ドリフト領域18の下面側に形成される。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0065】
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下面には、P+型のコレクタ領域22が形成される。ダイオード部80において、バッファ領域20の下面には、N+型のカソード領域82が形成される。
【0066】
本明細書では、コレクタ領域22と、カソード領域82との境界を通り、Y−Z面と平行な面を、トランジスタ部70およびダイオード部80の境界とする。コレクタ領域22およびカソード領域82の境界は、X軸方向における不純物のネットドーピング濃度の分布が極小値となる位置であってよい。いずれかのダミートレンチ部30は、トランジスタ部70およびダイオード部80の境界に形成されてよい。また、X軸において、当該ネットドーピング濃度が極小値となる位置に最も近いダミートレンチ部30の位置を、トランジスタ部70およびダイオード部80の境界位置としてもよい。また、コレクタ領域22およびカソード領域82の下面にはコレクタ電極24が設けられる。
【0067】
半導体基板10の上面側には、1以上のゲートトレンチ部40、および、1以上のダミートレンチ部30が形成される。各トレンチ部は、半導体基板10の上面から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に到達する。エミッタ領域12、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらの領域も貫通して、ドリフト領域18に到達する。
【0068】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面側に形成されたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に形成される。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0069】
ゲート導電部44は、Z軸方向において、少なくとも隣接するベース領域14と対向する領域を含む。ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面において層間絶縁膜26により覆われる。本例では、
図1に示したように突出部43におけるゲート導電部44が、ゲート配線51を介してゲート電極50と電気的に接続する。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層にチャネルが形成される。
【0070】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面側に形成されたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って形成される。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に形成され、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に形成される。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えばダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。
【0071】
ダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面において層間絶縁膜26により覆われる。本例では、
図1に示したようにコンタクトホール56を介して、ダミー導電部34がエミッタ電極52と電気的に接続する。
【0072】
本例では、複数のメサ部94のうち、トランジスタ部70とダイオード部80との境界における境界メサ部94−1においては、半導体基板10の上面に露出するエミッタ領域12が形成されず、半導体基板10の上面に露出するコンタクト領域15が形成される。
図1に示すように、境界メサ部94−1の全体において、半導体基板10の上面に露出するエミッタ領域12が形成されないことが好ましい。境界メサ部94−1のコンタクト領域15は、コンタクトホール54を介してエミッタ電極52と接続される。
【0073】
トランジスタ部70およびダイオード部80との境界におけるメサ部94とは、X軸において当該境界と重なるメサ部94を指す。X軸において当該境界がいずれかのトレンチ部と重なる場合、トランジスタ部70およびダイオード部80との境界に隣接するメサ部94とは、当該トレンチ部と隣接するメサ部94を指す。本例では、トランジスタ部70およびダイオード部80との境界に重なるダミートレンチ部30−1と隣接するメサ部94のうち、トランジスタ部70側のメサ部94が境界メサ部94−1である。
【0074】
トランジスタ部70およびダイオード部80との境界に隣接して、配列方向において連続する複数のメサ部94が境界メサ部94−1であってもよい。また、ダイオード部80側において当該境界に隣接するメサ部94が境界メサ部94−1であってもよい。
【0075】
境界メサ部94−1を設けることで、半導体装置100のターンオフ時に、トランジスタ部70とダイオード部80との境界近傍におけるホールを効率よく引き抜くことができる。これにより、ターンオフ時のテール電流を効率よく低減させて、オフ時の損失を低減することができる。また、半導体装置100の耐量低下を抑制できる。また、トランジスタ部70の領域に蓄積されたホールが、ダイオード部80の領域に流れることを抑制して、ダイオード部80への影響を低減できる。
【0076】
また、境界メサ部94−1の少なくとも一つには、蓄積領域16が設けられないことが好ましい。一例として、全ての境界メサ部94−1において、蓄積領域16が設けられない。これにより、蓄積領域16により阻害されずに、境界メサ部94−1においてホールを引き抜くことができる。
【0077】
マスク110は、蓄積領域16に対応する領域に不純物を注入する工程で用いられる。マスク110は、ダイオード部80および境界メサ部94−1を覆って配置される。マスク110は、レジスト等を塗布して所定形状にパターニングして形成されてよい。マスク110により覆われた領域には蓄積領域16が形成されず、マスク110に覆われない領域に蓄積領域16が形成される。
【0078】
マスク110の端部は、境界メサ部94−1の端部と対向する位置において垂直に形成されることが好ましい。しかし、マスク110にレジストだれ等が生じると、当該位置を超えて超過部分112が形成される場合がある。超過部分112が形成されると、超過部分112に覆われたメサ部94には、所定の深さに蓄積領域16が形成されない。例えば超過部分112に覆われたメサ部94には、蓄積領域16が全く形成されないか、所定の深さよりも浅く形成されてしまう。
【0079】
本例の蓄積領域16は、第1蓄積領域16−1および第2蓄積領域16−2を含む。第1蓄積領域16−1は、予め定められた深さ位置に形成される。第1蓄積領域16−1は、トランジスタ部70の内側に形成されている。
【0080】
第2蓄積領域16−2は、第1蓄積領域16−1よりもダイオード部80に近い位置に形成される。第2蓄積領域16−2は、第1蓄積領域16−1よりも浅い位置に形成される。つまり第2蓄積領域16−2は、第1蓄積領域16−1よりも、半導体基板10の上面側に形成される。第2蓄積領域16−2は、ダイオード部80に近づくにつれて、徐々に浅く形成されてよい。第1蓄積領域16−1および第2蓄積領域16−2は、連続して形成されてよく、深さ方向において不連続に形成されていてもよい。
【0081】
蓄積領域16の深さ位置が変化すると、当該メサ部94におけるベース領域14の深さ方向における長さが変化する。このため、当該メサ部94に隣接してゲートトレンチ部40を設けると、当該メサ部94のしきい値電圧Vthが、他のメサ部94のしきい値電圧Vthに対して変動して、しきい値電圧のばらつきが増大してしまう。また、飽和電流のばらつきも増大する。また、ダイオード部80の順方向電圧が、所定の設計値よりも低下する場合もある。
【0082】
これに対して本例の半導体装置100は、境界メサ部94−1に隣接するトレンチ部はダミートレンチ部30である。また、境界メサ部94−1に隣接するトレンチ部よりも更にトランジスタ部70側に隣接して設けられた少なくとも一つのトレンチ部が、ダミートレンチ部30である。これにより、閾値電圧のばらつき等を低減することができる。より好ましくは、第2蓄積領域16−2が設けられたメサ部94に隣接するトレンチ部は、全てダミートレンチ部30である。また、第2蓄積領域16−2が設けられたメサ部94よりもダイオード部80側のトレンチ部は、全てダミートレンチ部30であることが好ましい。これにより、閾値電圧のばらつき等を更に低減することができる。
【0083】
ただし、一つのメサ部94において、第1蓄積領域16−1および第2蓄積領域16−2の両方が形成されている場合、第1蓄積領域16−1に隣接するトレンチ部は、ゲートトレンチ部40であってもよい。この場合、第2蓄積領域16−2に隣接するトレンチ部は、ダミートレンチ部30であることが好ましい。
【0084】
図3は、半導体基板10のa−a'断面の他の例を示す図である。本例では、
図2に示した半導体基板10の構成に加えて、ライフタイムキラー96を更に備える。また、
図3の半導体基板10には、複数の境界メサ部94−1が形成されている。他の構造は、
図2に示した例と同一であってよい。
【0085】
ライフタイムキラー96は、半導体基板10の上面側に設けられる。半導体基板10の上面側とは、深さ方向において、少なくともドリフト領域18の中間よりも上面側を指す。ライフタイムキラー96は、ダイオード部80の全体に形成されてよい。これにより、ダイオード部80におけるキャリアライフタイムを調整することができ、例えばダイオード部80をソフトリカバリ動作させることができる。ライフタイムキラー96は、半導体基板10のキャリアライフタイムを、深さ方向において局所的に調整できるものであればよい。例えばライフタイムキラー96は、半導体基板10に局所的に注入されたヘリウムである。
【0086】
本例のライフタイムキラー96は、トランジスタ部70において、ダイオード部80に隣接する領域にも形成される。ただし、トランジスタ部70において、第1蓄積領域16−1が形成された領域の下方には、ライフタイムキラー96は形成されない。これにより、蓄積領域16によるIE効果が、ライフタイムキラー96により相殺されることを防ぐことができる。
【0087】
本例のライフタイムキラー96は、第1蓄積領域16−1が形成されたメサ部94の下方には形成されない。また、第1蓄積領域16−1が形成されたメサ部94に対して、ダイオード部80側に隣接する少なくとも一つのメサ部94の下方にも、ライフタイムキラー96が形成されなくともよい。これにより、IE効果に対するライフタイムキラー96の影響を小さくすることができる。
【0088】
少なくとも最もダイオード部80側の一つの境界メサ部94−1の下方には、ライフタイムキラー96が形成されてよい。本例では、全ての境界メサ部94−1の下方に、ライフタイムキラー96が形成されている。これにより、トランジスタ部70におけるキャリアが、ダイオード部80に与える影響を低減できる。
【0089】
また、第2蓄積領域16−2が形成されているメサ部94の下方にも、ライフタイムキラー96が形成されてよい。ライフタイムキラー96が形成される領域は、第2蓄積領域16−2が形成されている領域の下方で終端していてよい。これにより、ライフタイムキラー96がIE効果に与える影響と、ダイオード部80に与える影響とを低減することができる。
【0090】
図4は、
図2または
図3に示した半導体基板10における所定の部位のサイズを説明する図である。X軸方向において、トランジスタ部70とダイオード部80との境界から、エミッタ領域12を有するメサ部94−2と、境界メサ部94−1との間のダミートレンチ部30−2までの距離をDaとする。なおダミートレンチ部30の位置は、X軸方向におけるダミートレンチ部30の中央の位置を指す。
【0091】
また、X軸方向において、当該ダミートレンチ部30−2から、ダミートレンチ部30−3までの距離をDbとする。ダミートレンチ部30−3は、トランジスタ部70およびダイオード部80の境界からトランジスタ部70側に連続して配列されるダミートレンチ部30のうち、最もトランジスタ部70側のダミートレンチ部30を指す。Z軸方向において、半導体基板10の下面から、ベース領域14の下面までの距離をDtとする。Z軸方向において、マスク110の厚みをDcとする。
【0092】
ここで、100μm<Da+Dt<150μmであることが好ましい。100μm<Da+Dtとすることで、メサ部94−2と、カソード領域82との間の距離を確保することができる。このため、メサ部94−2に蓄積領域16が形成されないことによるダイオード部80における順方向電圧の変動を、抑制することができる。また、Da+Dt<150μmとすることで、トランジスタ部70において、トランジスタとして機能しない無効領域の大きさを制限することができる。なお一例として、Dtは70μm程度であってよい。
【0093】
また、Db>1.2Dcであることが好ましい。マスク110の超過部分112のX軸方向における長さは、マスク110の厚みDcに依存する。Db>1.2Dcとすることで、第2蓄積領域16−2が形成される可能性が高い領域に隣接するトレンチ部を、ダミートレンチ部30とすることができる。このため、しきい値電圧および飽和電流のばらつきを低減することができる。また、Dbは6μm以上であってもよい。また、2.0Dc>Dbであってよく、1.5Dc>Dbであってもよい。これにより、トランジスタ部70において、トランジスタとして機能しない無効領域の大きさを制限することができる。
【0094】
図5は、
図1に示した半導体装置100のb−b'断面の一例を示す図である。b−b'断面は、Y−Z面と平行な面であり、且つ、境界メサ部94−1よりもトランジスタ部70側のメサ部94において接続部57を通る面である。当該メサ部94には、蓄積領域16が形成されている。また
図5には、当該断面に対向して形成されるコンタクトホール54の位置を点線で示している。
【0095】
図1に示したように、当該メサ部94は、半導体基板10の上面において、トレンチ部の延伸方向に沿ってエミッタ領域12およびコンタクト領域15を交互に有する。また、ベース領域14の下面には、蓄積領域16が形成されている。
【0096】
また、Y軸方向における最も外側(すなわちゲート電極50側)の蓄積領域16の端部位置をP1とする。コンタクトホール54の、Y軸方向における最も外側の端部位置をP2とする。Y軸方向において最も外側に形成されたエミッタ領域12の、ゲート電極50側の端部位置をP3とする。Y軸方向において最も外側に形成されたコンタクト領域15の、ゲート電極50側の端部位置をP4とする。
【0097】
蓄積領域16は、Y軸方向において、最も外側に形成されたエミッタ領域12の端部よりも外側まで形成されることが好ましい。つまり、蓄積領域16の端部位置P1は、エミッタ領域12の端部位置P3よりも外側に配置されることが好ましい。これにより、蓄積領域16におけるIE効果を高めることができる。
【0098】
また、コンタクトホール54は、Y軸方向において、蓄積領域16よりも外側まで形成されることが好ましい。つまり、コンタクトホール54の端部位置P2は、蓄積領域16の端部位置P1よりも外側に配置されることが好ましい。これにより、半導体装置100のターンオフ時に、蓄積領域16よりも外側から、ホールを効率よく引き抜くことができる。
【0099】
また、Y軸方向において最も外側に形成されたコンタクト領域15は、コンタクトホール54よりも外側まで形成されることが好ましい。つまり、コンタクト領域15の端部位置P4は、コンタクトホール54の端部位置P2よりも外側に配置されることが好ましい。これにより、半導体装置100のターンオフ時に、蓄積領域16よりも外側から、ホールを効率よく引き抜くことができる。
【0100】
また、エミッタ領域12の端部位置P3から、蓄積領域16の端部位置P1までの距離は、蓄積領域16の端部位置P1から、コンタクト領域15の端部位置P4までの距離よりも短くてよい。これにより、蓄積領域16により、ホールの引抜が阻害されることを抑制できる。また、蓄積領域16の端部における電界集中を緩和できる。端部位置P3からP1までの距離は、蓄積領域16の端部位置P1から、コンタクトホール54の端部位置P2までの距離より短いことが好ましい。
【0101】
一例として、エミッタ領域12の端部位置P3から、蓄積領域16の端部位置P1までの距離は12μm以下である。また、蓄積領域16の端部位置P1から、コンタクトホール54の端部位置P2までの距離は20μm以下である。また、コンタクトホール54の端部位置P2からコンタクト領域15の端部位置P4までの距離は1μm以下である。
【0102】
図1から
図4においては、ダイオード部80を備える半導体装置100を説明した。これに対して、
図5に示す半導体装置100は、ダイオード部80を備えてもよいし、備えなくともよい。ダイオード部80を備えずとも、半導体装置100は上述した効果を奏することができる。
【0103】
また、半導体基板10の上面において、最も外側のコンタクト領域15と、ウェル領域17の間には、ベース領域14が形成される。つまり、コンタクト領域15の外側に、比較的に高抵抗の領域が配置される。これにより、逆回復時に、トランジスタ部70からダイオード部80に回り込むキャリアを低減できる。従って、ダイオード部80におけるコンタクト領域15の端部にキャリアが集中することを抑制して、ダイオード部80の耐量が低下することを抑制できる。Y軸方向において、コンタクト領域15と、ウェル領域17の間のベース領域14の長さは、10μm以上、50μm以下であってよい。
【0104】
図6は、
図5に示した断面における、蓄積領域16の端部98近傍の拡大図である。蓄積領域16の端部98は、Y軸方向において外側ほど浅く形成されてよい。例えば、蓄積領域16のY軸方向における先端は、エミッタ領域12の下方における蓄積領域16よりも浅い位置に形成される。蓄積領域16の当該先端は、ドリフト領域18に接しない位置に形成されてよい。蓄積領域16の当該先端は、Z軸方向におけるベース領域14の中間よりも浅い位置に設けられてよい。
【0105】
このような形状により、半導体装置100のターンオフ時に、蓄積領域16の端部98近傍においてホールを効率よく引き抜くことができる。本例の蓄積領域16は、
図2において説明した超過部分112を有するマスク110を用いることで、容易に形成できる。また、蓄積領域16の端部98の形状は、マスク110の超過部分112の形状を調整することで制御できる。一例として、マスク110のベーク温度、ベーク時間、マスク110の厚み、または、材料を調整してよい。
【0106】
図7は、比較例に係る半導体装置200の一例を示す図である。本例の半導体装置200は、第2蓄積領域16−2に隣接してゲートトレンチ部40が形成されている。上述したように、第2蓄積領域16−2に隣接してゲートトレンチ部40を設けると、トランジスタ部70におけるしきい値電圧Vthおよび飽和電流のばらつきが大きくなってしまう。これに対して半導体装置100によれば、第2蓄積領域16−2に隣接してダミートレンチ部30を設けるので、トランジスタ部70におけるしきい値電圧Vthおよび飽和電流のばらつきを低減できる。
【0107】
図8は、半導体装置300の一例を示す上面図である。半導体装置300は、
図1から
図6において説明した各態様の半導体装置100に対して、蓄積領域16の構造が異なる。他の構造は、いずれかの態様の半導体装置100と同一であってよい。
【0108】
半導体装置300における蓄積領域16は、コンタクト領域15の下方の少なくとも一部の領域には設けられており、且つ、エミッタ領域12の下方の少なくとも一部の領域には設けられていない。本例の蓄積領域16は、X軸方向に沿って伸びる帯形状を有する。帯形状の蓄積領域16が、Y軸方向に沿って離散的に設けられている。一例として、それぞれの帯形状の蓄積領域16は、コンタクト領域15と重なり、且つ、エミッタ領域12とは重ならない範囲に形成される。本例では、帯形状の蓄積領域16のY軸方向における幅は、コンタクト領域15のY軸方向における幅よりも小さい。
【0109】
図9は、
図8におけるc−c'断面の一例を示す図である。c−c'断面は、X−Z面と平行であり、且つ、エミッタ領域12を通る面である。上述したように、エミッタ領域12の下方の少なくとも一部の領域には、蓄積領域16が形成されていないキャリア通過領域19が設けられている。
【0110】
キャリア通過領域19は、蓄積領域16よりもホールの移動度が大きい領域である。本例のキャリア通過領域19は、蓄積領域16が形成されずに残存したベース領域14とドリフト領域18とが接触している界面近傍の領域を指す。キャリア通過領域19は、メサ部94のX軸方向の幅全体にわたって設けられてよい。他の例では、キャリア通過領域19は、蓄積領域16よりもドーピング濃度が低く、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高いN型の領域を含んでいてもよい。この場合、キャリア通過領域19のN型不純物の濃度は、蓄積領域16のN型不純物の濃度の1/10以下であってよく、1/100以下であってもよい。
【0111】
図10は、
図8におけるd−d'断面の一例を示す図である。d−d'断面は、X−Z面と平行であり、且つ、コンタクト領域15を通る面である。上述したように、コンタクト領域15の下方の少なくとも一部の領域には、蓄積領域16が形成されている。
【0112】
図11は、
図8におけるe−e'断面の一例を示す図である。e−e'断面は、Y−Z面と平行であり、且つ、接続部57を通る面である。上述したように、エミッタ領域12の下方にはキャリア通過領域19が設けられ、コンタクト領域15の下方には蓄積領域16が設けられている。
【0113】
キャリア通過領域19を設けることで、ベース領域14の下方にホールが過剰に蓄積されるのを防ぐことができる。このため、蓄積領域16を設けることに伴う耐量の低下を抑制できる。
【0114】
本例では、エミッタ領域12の下方の領域全体に、キャリア通過領域19が設けられている。つまり、キャリア通過領域19のY軸方向における幅は、エミッタ領域12のY軸方向の幅以上である。
【0115】
キャリア通過領域19のY軸方向における幅は、エミッタ領域12のY軸方向の幅より大きくてもよい。この場合、エミッタ領域12の下方の領域に加えて、コンタクト領域15の端部の下方にも、キャリア通過領域19が設けられる。これにより、蓄積領域16を離散的に形成する場合に用いるレジストにだれが生じ、浅い位置に蓄積領域16が形成されてしまっても、浅い蓄積領域16がエミッタ領域12の下方に設けられることを抑制できる。
【0116】
本例では、帯状に形成された複数の蓄積領域16のうち、Y軸方向における最も外側(すなわちゲート電極50側)の蓄積領域16の端部位置をP1とする。他の端部位置P2、P3、P4は、
図5の例と同様である。
【0117】
本例の蓄積領域16は、Y軸方向において、コンタクトホール54の端部位置P2よりも外側まで形成されている。つまり、蓄積領域16の端部位置P1は、コンタクトホール54の端部位置P2よりも外側に配置されている。本例では、キャリア通過領域19を設けているので、蓄積領域16をコンタクトホール54よりも外側まで形成しても、耐量の低下を抑制できる。また、蓄積領域16をコンタクトホール54よりも外側まで形成することで、端部領域においても一定のキャリアを蓄積できる。
【0118】
なお、蓄積領域16の端部位置P1は、コンタクト領域15の端部位置P4よりも内側に配置されてよい。これにより、ターンオフ時において端部領域からのホールの引き抜きが、蓄積領域16により阻害されるのを抑制できる。
【0119】
図12は、Y−Z面と平行な面におけるメサ部94の断面の一例を示す図である。メサ部94の上面には、Y軸方向に沿ってコンタクト領域15およびエミッタ領域12が交互に配置されている。
【0120】
上述したように、キャリア通過領域19は、コンタクト領域15のうち、エミッタ領域12に隣接する端部21の下方にも設けられている。キャリア通過領域19が、コンタクト領域15の一つの端部21と重なる部分の、Y軸方向における長さLは、コンタクト領域15のY軸方向における幅の10%以上であってよく、20%以上であってもよい。長さLは、コンタクト領域15のY軸方向における幅の30%以下であってよい。
【0121】
図13は、Y−Z面と平行な面におけるメサ部94の断面の他の例を示す図である。本例の蓄積領域16は、予め定められた深さ位置に形成された第1蓄積領域16−1と、第1蓄積領域16−1よりも浅い位置に形成された第2蓄積領域16−2とを含む。第2蓄積領域16−2は、Y軸方向において、第1蓄積領域16−1よりもエミッタ領域12に近い。つまり、第2蓄積領域16−2は、Y軸方向において、第1蓄積領域16−1とエミッタ領域12との間に配置されている。
【0122】
第1蓄積領域16−1は、ベース領域14とドリフト領域18との間に配置される。第2蓄積領域16−2は、コンタクト領域15に接していてよく、コンタクト領域15と離れていてもよい。また、第2蓄積領域16−2の少なくとも一部が、コンタクト領域15内に形成されていてもよい。また、第1蓄積領域16−1および第2蓄積領域16−2は、連続して形成されていてよく、互いに離れて形成されていてもよい。
【0123】
上述したように、蓄積領域16を形成するのに用いるマスク110に超過部分112が生じると、超過部分112の下方に、浅い第2蓄積領域16−2が形成される場合がある。本例では、第1蓄積領域16−1および第2蓄積領域16−2のいずれも、コンタクト領域15の下方に形成されており、エミッタ領域12の下方には形成されていない。このため、第2蓄積領域16−2が形成された場合であっても、半導体装置100のしきい値電圧等の特性に影響を与えない。
【0124】
なお、マスク110の端部と、コンタクト領域15の端部とが重なるように、マスク110を配置することが好ましい。これにより、マスク110に超過部分112が生じた場合であっても、超過部分112の下方に形成される第2蓄積領域16−2を、エミッタ領域12と重ならないように配置できる。
【0125】
図14は、半導体装置400の一例を示す上面図である。本例のダイオード部80においては、N+型のカソード領域82の外側の端部が、
図1から
図13に示したいずれかの半導体装置に比べて、Y軸正方向に後退している。
図14においてはコレクタ領域22を図示しないが、トランジスタ部70およびダイオード部80はコレクタ領域22を有してよい。本例のトランジスタ部70は、半導体装置100、半導体装置200または半導体装置300と同様に、下面側の全面にコレクタ領域22を有する。これに対して、本例のダイオード部80は、下面側の一部にコレクタ領域22を有し、下面側の他の一部にカソード領域82を有する。つまり、本例のダイオード部80の下面側においては、コレクタ領域22が設けられない領域にカソード領域82が設けられる。
【0126】
ダイオード部80のコレクタ領域22の内側の端部は、トランジスタ部70の蓄積領域16の外側の端部よりも内側に位置してよく、トランジスタ部70においてY軸方向の最も外側に設けられたエミッタ領域12の外側の端部よりも内側に位置してもよい。なお、本例において、ダイオード部80のコレクタ領域22の内側の端部は、ダイオード部80のカソード領域82の外側の端部に一致する。本例において、ダイオード部80のコレクタ領域22の内側の端部からトランジスタ部70の蓄積領域16の外側端部までのY軸方向の長さをLと称する。一例において、長さLは200μmとしてよい。
【0127】
図15は、
図14に示した半導体装置400のc−c'断面の一例を示す図である。
図14は、ダイオード部80におけるY−Z断面である。コンタクト領域15近傍の点線は、
図14におけるトランジスタ部70の蓄積領域16の外側の端部のY軸方向の位置を示す。これに対して、コレクタ領域22とカソード領域82との境界は、トランジスタ部70の蓄積領域16の外側の端部よりも長さLだけY軸正方向に位置する。
【0128】
本例においては、ダイオード部80においてP+型のコレクタ領域22が拡張しているので、コレクタ領域22からドリフト領域18にホールを注入しやすくなる。これにより、例えば、直列接続された上アームと下アームとが同時にオンする直列アーム短絡が発生した場合に、裏面側からホールを注入することにより裏面におけるアバランシェを防ぐことができる。また、
図15に示すウェル領域17の湾曲部分は電界集中によりアバランシェが発生しやすいが、裏面側からのホール注入により当該アバランシェを抑制することができる。
【0129】
図16は、半導体装置500の一例を示す上面図である。半導体装置500は、
図1から
図6において説明した各態様の半導体装置100に対して異なる構造の境界メサ部94−1を備える。半導体装置500の他の構造は、いずれかの態様の半導体装置100と同一であってよい。
【0130】
境界メサ部94−1は、トランジスタ部70の側において、半導体基板の上面に露出するコンタクト領域15の面積が、ベース領域14の露出する面積よりも大きい境界メサ部94−1Aを1つ以上備える。境界メサ部94−1は、境界メサ部94−1Aを複数備えてもよい。また、境界メサ部94−1は、ダイオード部80の側において、半導体基板の上面に露出するコンタクト領域15の面積が、ベース領域14の露出する面積よりも小さい境界メサ部94−1Bを1つ以上備える。境界メサ部94−1は、境界メサ部94−1Bを複数備えてもよい。
【0131】
トランジスタ部70のメサ部94のうち、最もダイオード部80の側に位置するメサ部94は、配列方向に沿って境界メサ部94−1Aと隣り合う。ダイオード部80のメサ部94のうち、最もトランジスタ部70の側に位置するメサ部94は、配列方向に沿って境界メサ部94−1Bと隣り合う。境界メサ部94−1Aは、ダミートレンチ部30に挟まれてよい。境界メサ部94−1Bは、ダミートレンチ部30に挟まれてよい。
【0132】
なお、
図5に示すエミッタ領域12の端部位置P3から蓄積領域16の端部位置P1までの距離をDfとする。また、蓄積領域16の端部位置P1からコンタクト領域15の端部位置P4までの距離をDgとする。
【0133】
図17は、
図16に示した半導体装置500のa−a'断面の一例を示す図である。a−a'断面は、X−Z面と平行で、且つ、トランジスタ部70のエミッタ領域12を通る断面である。
図16においては、エミッタ電極52とコレクタ電極24の図示を省略している。境界メサ部94−1Aと境界メサ部94−1Bは、対応する半導体基板の下面(即ち、裏面)にコレクタ領域22を備える。コレクタ領域22は、トランジスタ部70から延伸していてよい。また、
図17においては、g−g'断面におけるドーピング濃度(/cm
3)および欠陥濃度(/cm
3)の分布例を合わせて示している。濃度分布における実線はドーピング濃度を示し、点線は欠陥濃度を示している。
【0134】
X軸方向において、エミッタ領域12を有するメサ部94−2と、境界メサ部94−1Aとの間のダミートレンチ部30−2から、境界メサ部94−1Aと境界メサ部94−1Bとの間のダミートレンチ部30までの距離をDdとする。境界メサ部94−1Aと境界メサ部94−1Bとの間のダミートレンチ部30から、トランジスタ部70とダイオード部80との境界までの距離をDeとする。なおダミートレンチ部30の位置は、X軸方向におけるダミートレンチ部30の中央の位置を指す。また、Z軸方向において、半導体基板10の下面から、ベース領域14の下面までの距離をDtとする。
【0135】
距離Ddは、距離Deより大きくてよい。トランジスタ部70がターンオフするときには、少数キャリアが効果的に引き抜かれ、ターンオフ破壊を防ぐことができる。少数キャリアは、本例では正孔である。
【0136】
一方で、距離Deは、距離Ddより大きくてもよい。ダイオード部80が導通状態のときは、境界メサ部94−1Aと境界メサ部94−1Bの両方から少数キャリアが注入される。境界メサ部94−1Aは、ベース領域14よりも高濃度であるコンタクト領域15の面積割合が、境界メサ部94−1Bよりも大きい。そのため、ダイオード部80が導通状態のときに、境界メサ部94−1およびダイオード部80のトレンチ部配列方向の端で、少数キャリアの濃度が高くなり、逆回復時の破壊が起きやすくなり得る。距離Deを距離Ddよりも大きくすることで、境界メサ部94−1Aとカソード領域82を離すことができ、少数キャリアの濃度増加を抑えられる。
【0137】
距離Ddと距離Deとの和は、距離Daと一致してよい(Dd+De=Da)。距離Daと距離Dtとの和(Da+Dt)は、100μmより大きく、150μmより小さくてよい。
【0138】
距離Ddと距離Deの和、あるいは距離Daは、エミッタ領域12の端部位置P3から蓄積領域16の端部位置P1までの距離Dfより大きくてよい。または、距離Ddと距離Deの和、あるいは距離Daは、蓄積領域16の端部位置P1からコンタクト領域15の端部位置P4までの距離であるDgより大きくてよい。これにより、トランジスタ部70がターンオフするときには、少数キャリアの引き抜きが効果的にできるようになる。また、ダイオード部80の導通時に、境界メサ部94−1やダイオード部80の少数キャリアの注入と蓄積を抑え、逆回復破壊を防ぐことができる。
【0139】
距離Ddと距離Deの和、あるいは距離Daは、境界メサ部94−1のベース領域14の底面から、ライフタイムキラー96の欠陥濃度のピーク位置までの距離Dhよりも大きくてよい。さらに、距離Ddまたは距離Deは、境界メサ部94−1Aかまたは境界メサ部94−1Bのベース領域14の底面から、ライフタイムキラー96の欠陥濃度のピーク位置までの距離Dhよりも大きくてよい。これにより、トランジスタ部70がターンオフするときには、少数キャリアの引き抜きが効果的にできるようになる。また、ダイオード部80の導通時に、境界メサ部94−1やダイオード部80の少数キャリアの注入と蓄積を抑え、逆回復破壊を防ぐことができる。
【0140】
距離Ddと距離Deの和、あるいは距離Daは、境界メサ部94−1のベース領域14の底面から、ドーピング濃度が半導体基板のドーピング濃度よりも高くなる位置までの距離Diより大きくてよい。さらに、距離Ddと距離Deの和、あるいは距離Daは、境界メサ部94−1のベース領域14の底面から、バッファ領域20における複数のドーピング濃度のピーク位置のうち、半導体基板の最も上面側のピーク位置までの距離Djより大きくてよい。これにより、トランジスタ部70がターンオフするときには、少数キャリアの引き抜きが効果的にできるようになる。また、ダイオード部80の導通時に、境界メサ部94−1やダイオード部80の少数キャリアの注入と蓄積を抑え、逆回復破壊を防ぐことができる。
【0141】
バッファ領域20におけるドーピング濃度のピーク位置の領域は、水素ドナーを含む領域であってよい。水素ドナーは、プロトン注入により形成されてよい。水素ドナーは、空孔、酸素および水素によるVOH複合欠陥であってよい。ドーピング濃度が半導体基板のドーピング濃度よりも高くなる位置から、バッファ領域20における複数のドーピング濃度のピーク位置のうち半導体基板の最も上面側のピーク位置までの領域Fは、ドーピング濃度が略平坦であってよい。さらに領域Fは、水素ドナーを含む領域であってよい。領域Fは、ライフタイムキラー96が形成されていない領域の下方に比べて、ライフタイムキラー96が形成された領域の下方において深さ方向に長く形成されてよい。ライフタイムキラー96を半導体基板の下面から照射した場合、ライフタイムキラー96が形成された領域の下方の領域には欠陥が比較的に多く形成され、バッファ領域20からの水素が拡散しやすくなる。
【0142】
距離Ddと距離Deの和、あるいは距離Daは、半導体基板10の下面からベース領域14の下面までの距離Dtよりも小さくてよい。距離Ddと距離Deの和、あるいは距離Daが距離Dtより大きいと、ターンオフ時の少数キャリアの引き抜きおよび逆回復破壊の防止の効果が飽和するとともに、電流の伝導に寄与しない領域(無効領域)が増えるため、導通損失やスイッチング損失が増加に転ずる。特に、距離Ddが距離Dtよりも小さくてよい。
【0143】
距離Ddと距離Deの和、あるいは距離Daは、半導体基板の熱拡散長Ltより大きくてよい。半導体基板の熱伝導度をκ、単位体積当たりの熱容量をC、半導体基板の熱拡散係数をαとすると、α=κ/Cと表される。熱拡散長Ltは、熱が拡散する所定の時間をtとして、Lt=2(αt)
0.5と表される。一例として、半導体基板がシリコン(珪素)の場合は、例えばα=1.5×10
−5(m
2/s)程度であり、1回のスイッチング(例えば1回のターンオフまたは逆回復)にt=1μs程度発熱すると、Ltは7.7μmとなる。よって、距離Ddと距離Deの和、あるいは距離Daは、例えば7.7μmよりも大きくしてよい。距離Ddまたは距離Deを熱拡散長Ltより大きくしてよい。トランジスタ部70の発熱がダイオード部80に影響すると、ダイオード部80の温度も増加する。同様に、ダイオード部80の発熱がトランジスタ部70に影響すると、トランジスタ部70の温度も増加する。温度の増加により、少数キャリアの濃度が増加するので、その分、より多くのキャリアの引き抜きをしなければならない。距離Dd、距離Deあるいは距離Daなどを熱拡散長Ltよりも大きくすれば、温度上昇の影響を抑えることができるので、キャリアの引き抜きが容易となる。熱が拡散する所定の時間tは、1回のスイッチングの所要時間であってよく、0.1μs〜10μsで、たとえば1μsであってよい。
【0144】
なお、前述の境界メサ部94−1Bを備えない例(例えば
図1〜
図6の半導体装置100、
図8〜
図13の半導体装置300、
図14〜
図15の半導体装置400、あるいはこれらの組合せの例など)においても、本例の距離Deを0とすることで、上記関係を満たしてよい。
【0145】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0146】
本明細書における「上」、「下」、「上方」、「下方」、「上面」、「下面」の用語は、重力方向における上下方向に限定されない。これらの用語は、所定の軸における相対的な方向を指している。