特許第6791338号(P6791338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791338
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】ジヒドロインドリジノン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20201116BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20201116BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20201116BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20201116BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20201116BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20201116BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20201116BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20201116BHJP
   A61P 11/16 20060101ALI20201116BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20201116BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20201116BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   C07D471/04 104A
   C07D471/04CSP
   C07D487/04 140
   A61P43/00 111
   A61P7/02
   A61P9/10
   A61P9/10 101
   A61P3/10
   A61P3/00
   A61P31/04
   A61P11/16
   A61P11/00
   A61K31/444
   A61K31/519
【請求項の数】6
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2019-194671(P2019-194671)
(22)【出願日】2019年10月25日
(62)【分割の表示】特願2016-563720(P2016-563720)の分割
【原出願日】2015年12月9日
(65)【公開番号】特開2020-12004(P2020-12004A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2019年10月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-249822(P2014-249822)
(32)【優先日】2014年12月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-263251(P2014-263251)
(32)【優先日】2014年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-46150(P2015-46150)
(32)【優先日】2015年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-160632(P2015-160632)
(32)【優先日】2015年8月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000185983
【氏名又は名称】小野薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】田中 元之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 康男
(72)【発明者】
【氏名】西山 泰平
(72)【発明者】
【氏名】平松 篤
(72)【発明者】
【氏名】耕田 智之
(72)【発明者】
【氏名】神山 祥
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/093484(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/120777(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/011940(WO,A1)
【文献】 国際公開第97/005160(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
[式中、
【化2】
は、
【化3】
を表し、
【化4】
は、
【化5】
を表し、
XはCHまたはNを表す。ただし、(3S)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノンを除く。
で示される化合物、その塩、その溶媒和物、またはそのN−オキシド体。
【請求項2】
一般式(I)で示される化合物が、(3S)−3−[5−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノンである請求項1記載の化合物、その塩、その溶媒和物、またはそのN−オキシド体。
【請求項3】
一般式(I)で示される化合物が、(6S)−6−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−7,8−ジヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−4(6H)−オンである請求項1記載の化合物、その塩、その溶媒和物、またはそのN−オキシド体。
【請求項4】
一般式(I)で示される化合物が、1−(2−{(3S)−3−[5−(4−アミノフェニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−7−インドリジニル}−4−クロロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボニトリルである請求項1記載の化合物、その塩、その溶媒和物、またはそのN−オキシド体。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項記載の化合物、その塩、その溶媒和物、またはそのN−オキシド体を活性成分とする医薬組成物。
【請求項6】
前記活性成分がFXIa阻害活性を有する、請求項5に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I)
【化1】
(式中、すべての記号は下記と同じ意味を表す。)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、そのN−オキシド体またはそのプロドラッグ(以下、本発明化合物と略記することがある。)に関する。
【背景技術】
【0002】
血栓症およびその合併症である血栓塞栓症(以下、血栓塞栓性疾患)は、癌と並んで成人における死亡原因の上位を占め、近年重要な問題となっている。血栓塞栓性疾患は、血栓が血管傷害部位で形成されることにより、もしくはその血栓が遊離して血流に乗って別の血管内に運ばれ血管を閉塞することにより発生する。血栓塞栓性疾患には、例えば深部静脈血栓症と肺塞栓症の総称である静脈血栓塞栓症、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、その他種々の動脈および静脈血栓症等が含まれる。
【0003】
血管の損傷などで血管壁に発現した組織因子は、血液凝固カスケードの起点となり、血中に微量に存在する血液凝固第VII因子と複合体を形成する。本複合体は血液凝固第IX因子および血液凝固第X因子を活性化し、活性化血液凝固第X因子がプロトロンビンをトロンビンへ変換する。トロンビンはフィブリノーゲンをフィブリンへ変換し、最終的に不溶性フィブリンが形成する(開始期)。この過程で産生されたトロンビンは、開始期の血栓形成を促すと考えられ、止血に重要と考えられる一方で、血液凝固第XI因子を活性化し、活性化血液凝固第XI因子(以下、FXIaともいう。)を介して爆発的なトロンビン産生を引き起こし(増幅期)、その結果、血栓が増大することが報告されている(非特許文献1−3参照)。
【0004】
血栓塞栓性疾患の治療および/または予防には一般的に抗凝固薬剤が用いられているが、既存の抗凝固薬剤は、優れた抗血栓作用を示す一方で、出血合併症という重篤な副作用が問題となっているか、あるいは出血合併症を引き起こさないために、投与量が制限され、十分な抗血栓作用を発揮していない可能性が考えられる。このような状況下で、病的血栓の成長あるいは増大を抑制し、かつ止血血栓の形成に影響しない、新しい作用機序を有する血栓症や血栓塞栓症の治療剤および/または予防剤が必要とされている。その標的の一つとして、近年、FXIaが注目されている。血液凝固第XI因子は、血液凝固の調節に関与する血漿中セリンプロテアーゼの一つであり、活性化血液凝固第XII因子、トロンビン、または自身によってFXIaとなる。FXIaは、古典的血液凝固カスケードにおいては内因系あるいは接触系と呼ばれる血液凝固経路の構成因子の一つであり、Arg−AlaとArg−Val間のペプチド結合を選択的に切断することにより、血液凝固第IX因子を活性化する。FXIaの安全性は、血友病Cと呼ばれるヒトの血液凝固第XI因子欠損症において、主に術後または外傷後の軽度から中程度の出血を特徴とした観察結果から支持されている。さらに、FXIaの効果と安全性の高さについては、ヒトの血液凝固第XI因子欠損症の観察結果に加えて、血液凝固第XI因子欠損マウスを用いた実験的血栓症および出血モデルにおける実験結果およびサルまたはウサギを用いた実験的血栓症および出血モデルにおける抗血液凝固第XI因子中和抗体またはアンチセンスの実験結果から証明されている(非特許文献4−8参照)。
【0005】
以上の結果から、FXIaは抗血栓治療剤および/または予防剤を開発する上で、出血という副作用の無い非常に魅力的な標的であり、FXIa阻害剤は出血等の望ましくない副作用を持たない、非常に強力かつ安全な抗血栓治療剤または予防剤になることが期待されている。
【0006】
ところで、本発明の先行技術として、特許文献1において、一般式(A)
【化2】
(式中、AAは、5から12員複素環などを表し;L1Aは、−CH=CH−などを表し;R11Aはベンジルなどを表し;MAはイミダゾリルなどを表す。)で示される化合物は、FXIaの選択的な阻害剤またはFXIaおよび血漿カリクレインの二重阻害剤として有用であることが記載されている。
【0007】
さらに、特許文献2において、一般式(B−I):
【化3】
(式中、ABは、5から12員複素環などを表し;L1Bは、−CH=CH−などを表し;R11Bはベンジルなどを表し;R3Bはフェニルなどを表し;R4Bは塩素などを表し;R8aBは水素などを表す。);または一般式(B−II):
【化4】
(式中、MBはピリジルなどを表し;他のシンボルは上記のものと同じ意味を有する。)で示される化合物は、FXIa及び/又は血漿カリクレインを阻害するということが記載されている。
【0008】
さらに、特許文献3において、一般式(C):
【化5】
(式中、WCはCOなどを表し;GCは、直接結合などを表し;G1C、G2C、G3CおよびG4Cは、それぞれ独立に、CまたはNなどを表し;R9Cは、アリールなどを表し;R10Cはヘテロアリールなどを表し;R1ACはヘテロアリールアルキルなどを表す。)で示される化合物は、γセレクターゼ調節因子として有用であることが記載されているが、式(C)により表される化合物がFXIa阻害活性を有することは報告されていない。
【0009】
さらに、特許文献4において、一般式(D):
【化6】
(式中、R1Dは水素などを表し;R2Dはアリールなどを表し;R3Dは水素などを表し;R4Dは水素などを表し;R5Dはヘテロアリールアルキルなどを表す。)で示される化合物は、p38MAPキナーゼ調節因子として有用であることが記載されている。
【0010】
さらに、特許文献5において、一般式(E):
【化7】
(式中、LEは、0から6個の原子をもたらすリンカーなどを表し;XEはヘテロアリールなどを表し;ZEはハロゲンなどを表し;QEはCOなどを表し;R2EおよびR3Eは、それぞれ独立に、水素、アリールなどを表す。)で示される化合物は、ジペプチジルぺプチダーゼ阻害剤として有用であることが記載されている。
【0011】
さらに、特許文献6において、一般式(F):
【化8】
(式中、Cyc1Fは5から10員のヘテロアリールなどを表し、Cyc2FはC5からC10アリールなどを表し、Cyc3FはC5−C10アリールまたは5から10員のヘテロアリールなどを表し、UはCH2などを表し、YはNまたはC(R5F)などを表し、R6Fは5から10員のヘテロアリールなどを表す。)で示される化合物は、FXIaの選択的な阻害剤またはFXIaおよび血漿カリクレインの二重阻害剤として有用であることが記載されている。
【0012】
しかし、いずれの文献にも本発明化合物は具体的に開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2007070826号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008076805号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2009076337号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2003068230号パンフレット
【特許文献5】欧州特許第1506967A1号明細書
【特許文献6】国際公開第2013093484号パンフレット
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】ブラッド・コアグレーション・アンド・フィブリノリシス(Blood Coagulation and Fibrinolysis)、2006年、第17巻、251−257頁
【非特許文献2】サイエンス(Science)、1991年、第253巻、909−912頁
【非特許文献3】ブラッド(Blood)、2003年、第102巻、953−955頁
【非特許文献4】ジャーナル・オブ・トロンボシス・アンド・ヘモスタシス(Journal of Thrombosis and Haemostasis)、2005年、第3巻、695−702頁
【非特許文献5】ジャーナル・オブ・トロンボシス・アンド・ヘモスタシス(Journal of Thrombosis and Haemostasis)、2006年、第4巻、1982−1988頁
【非特許文献6】ブラッド(Blood)、2012年、第119巻、2401−2408頁
【非特許文献7】ブラッド(Blood)、2009年、第113巻、936−944頁
【非特許文献8】ジャーナル・オブ・トロンボシス・アンド・ヘモスタシス(Journal of Thrombosis and Haemostasis)、2006年、第4巻、1496−1501頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、強力なFXIa阻害剤であって、経口吸収性および血中動態に優れ、経口投与後長時間にわたり強力な抗凝固活性を示し、かつ抗凝固活性とCYP阻害活性の間に乖離のある化合物を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明化合物が前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
すなわち、本発明は、
[1]一般式(I)
【化9】
[式中、
【化10】
は、
【化11】
を表し、
【化12】
は、
【化13】
を表し、
XはCHまたはNを表す。]
で示される化合物、その塩、その溶媒和物、そのN−オキシド体またはそのプロドラッグ、
[2]一般式(I)で示される化合物が、(3S)−3−[5−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノンである前記[1]記載の化合物、その塩、その溶媒和物、そのN−オキシド体またはそのプロドラッグ、
[3]一般式(I)で示される化合物が、(3S)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノンである前記[1]記載の化合物、その塩、その溶媒和物、そのN−オキシド体またはそのプロドラッグ、
[4]一般式(I)で示される化合物が、(6S)−6−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−7,8−ジヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−4(6H)−オンである前記[1]記載の化合物、その塩、その溶媒和物、そのN−オキシド体またはそのプロドラッグ、
[5]一般式(I)で示される化合物が、1−(2−{(3S)−3−[5−(4−アミノフェニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−7−インドリジニル}−4−クロロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボニトリルである前記[1]記載の化合物、その塩、その溶媒和物、そのN−オキシド体またはそのプロドラッグ、
[6]前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物、その塩、その溶媒和物、そのN−オキシド体またはそのプロドラッグを有効成分として含有する医薬組成物、
[7]前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物、その塩、その溶媒和物、そのN−オキシド体またはそのプロドラッグを有効成分として含有するFXIa阻害剤、
[8]前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物、その塩、その溶媒和物、そのN−オキシド体またはそのプロドラッグを有効成分として含有する血栓塞栓性疾患の予防および/または治療剤、
[9]血栓塞栓性疾患が、動脈性心血管血栓塞栓性障害、静脈性心血管血栓塞栓性障害、動脈性脳血管血栓塞栓性障害、静脈性脳血管血栓塞栓性障害、または心腔もしくは末梢循環における血栓塞栓性障害である前記[8]に記載の剤、
[10]血栓塞栓性疾患が、冠動脈疾患、不安定狭心症、急性冠症候群、心房細動、心筋梗塞、虚血性突然死、一過性脳虚血発作、脳卒中、末梢動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢閉塞性動脈疾患、静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、動脈塞栓症、冠状動脈血栓症、大脳動脈血栓症、脳塞栓症、腎臓塞栓症、門脈血栓症、肺塞栓症、肺梗塞、肝塞栓症、肝中心静脈閉塞症/類洞閉塞症候群、血栓性微小血管障害症、播種性血管内凝固症候群、敗血症、急性呼吸窮迫症候群、急性肺損傷、抗リン脂質抗体症候群、冠動脈バイパス移植手術に起因する血栓症または血栓形成を促進する人工物表面に血液が曝露される治療により引き起こされる血栓症である、前記[8]または[9]のいずれか1つに記載の剤、
[11]血栓塞栓性疾患が、静脈血栓塞栓症、虚血性脳卒中、血栓形成を促進する人工物表面に血液が暴露される治療により引き起こされる血栓塞栓性疾患、急性冠症候群、冠動脈疾患または末梢動脈疾患である、前記[8]〜[10]のいずれかに記載の剤、
[12]血栓塞栓性疾患を予防および/または治療するための前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物、その塩、その溶媒和物、そのN−オキシド体またはそのプロドラッグ、
[13]血栓塞栓性疾患の予防および/または治療剤を製造するための前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物、その塩、その溶媒和物、そのN−オキシド体またはそのプロドラッグの使用、および
[14]血栓塞栓性疾患の予防および/または治療が必要な患者に有効投与量の前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物、その塩、その溶媒和物、そのN−オキシド体またはそのプロドラッグを投与することからなる該疾患の予防および/または治療方法等に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明化合物は、強力なFXIa阻害剤であることから、血栓塞栓性疾患の有効な予防および/または治療剤となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ラットに経口投与(1mg/kg)した際における実施例2(10)記載の化合物の血漿中化合物濃度推移およびin vitroアッセイにおけるAPTT×2との関係を示す。縦軸は血漿中化合物濃度、横軸は経口投与後の時間を示す。
図2】ラットに経口投与(1mg/kg)した際における実施例4(10)記載の化合物の血漿中化合物濃度推移およびin vitroアッセイにおけるAPTT×2との関係を示す。縦軸は血漿中化合物濃度、横軸は経口投与後の時間を示す。
図3】ラットに経口投与(1mg/kg)した際における比較例2(3)記載の化合物の血漿中化合物濃度推移およびin vitroアッセイにおけるAPTT×2との関係を示す。縦軸は血漿中化合物濃度、横軸は経口投与後の時間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明においては、特に断わらない限り、当業者にとって明らかなように記号
【化14】
は紙面の向こう側(すなわちα配置)に結合していることを表わし、
【化15】
は紙面の手前側(すなわちβ配置)に結合していることを表わし、
【化16】
は、α配置とβ配置の任意の混合物であることを表わす。
【0022】
本発明においては、特に指示しない限り異性体はこれをすべて包含する。例えば、アルキル基には直鎖のものおよび分枝鎖のものが含まれる。さらに、不斉炭素の存在等による異性体(R、S体、α、β配置、エナンチオマー、ジアステレオマー)、旋光性を有する光学活性体(D、L、d、l体)、クロマトグラフ分離による極性体(高極性体、低極性体)、平衡化合物(例えば、アミド結合に生じる互変異性体等)、回転異性体、これらの任意の割合の混合物、ラセミ混合物はすべて本発明に含まれる。
【0023】
また、本発明における光学異性体は、100%純粋なものだけでなく、50%未満のその他の光学異性体が含まれていてもよい。
【0024】
本発明化合物は、公知の方法で相当する塩に変換される。塩は薬学的に許容される塩が好ましく、さらには水溶性のものが好ましい。適当な塩としては、酸付加塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩のような無機酸塩、酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩のような有機酸塩等)、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)の塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)の塩、アンモニウム塩または薬学的に許容される有機アミン(例えば、テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リジン、アルギニン、N−メチル−D−グルカミン等)の塩等が挙げられる。
【0025】
本発明化合物およびその塩は、溶媒和物に変換することもできる。溶媒和物は低毒性かつ水溶性であることが好ましい。適当な溶媒和物としては、例えば、水、アルコール系の溶媒(例えば、エタノール等)との溶媒和物が挙げられる。
【0026】
本発明化合物のN−オキシド体とは、本発明化合物の窒素原子が、酸化されたものを表す。また、本発明化合物のN―オキシド体は、さらに上記のアルカリ(土類)金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、酸付加物塩となっていてもよい。
【0027】
また、本発明化合物のプロドラッグは、生体内において酵素や胃酸等による反応により、本発明化合物に変換される化合物をいう。具体的には、例えば、本発明化合物のアミノ基がエイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化、アセトキシメチル化、tert−ブチル化された化合物などが挙げられ、これらの化合物は公知の方法によって製造することができる。また、本発明化合物のプロドラッグは水和物および非水和物のいずれであってもよい。また、本発明化合物のプロドラッグは、廣川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻「分子設計」163〜198頁に記載されているような、生理的条件で本発明化合物に変化するものであってもよい。
【0028】
さらに、本発明化合物を構成する各原子は、その同位元素(例えば、2H、3H、13C、14C、15N、16N、17O、18O、35S、36Cl、77Br、125I等)等で置換されていてもよい。
【0029】
本発明化合物は、薬学的に許容される共結晶または共結晶塩を形成することができる。ここで、共結晶または共結晶塩とは、それぞれが異なる物理的特性(例えば、構造、融点、融解熱、吸湿性、溶解性および安定性等)を持つ、室温で二種またはそれ以上の独特な固体から構成される結晶性物質を意味する。共結晶または共結晶塩は、自体公知の共結晶化法に従い製造することができる。
【0030】
[本発明化合物の製造方法]
本発明化合物は、公知の方法、例えば、以下に示す方法、実施例に記載した方法あるいは、Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations 2nd Edition(Richard C. Larock, John Wiley & Sons Inc, 1999に記載された方法等を適宜改良し、組み合わせて用いることで製造することができる。
【0031】
[毒性]
本発明化合物の毒性は十分に低いものであり、医薬品として安全に使用することができる。
【0032】
[医薬品への適用]
本発明化合物は、強力なFXIa阻害活性を有する。したがって、本発明化合物は血栓塞栓性疾患、例えば、動脈性心血管血栓塞栓性障害、静脈性心血管血栓塞栓性障害、動脈性脳血管血栓塞栓性障害、静脈性脳血管血栓塞栓性障害、および心腔または末梢循環における血栓塞栓性障害の予防および/または治療に有用である。
【0033】
動脈性心血管血栓塞栓性障害としては、例えば、冠動脈疾患、虚血性心筋症、急性冠症候群、冠状動脈血栓症、不安定狭心症および非Q波心筋梗塞の虚血性合併症、医学的に管理されるか、又は経皮的冠インターベンションを伴うST上昇型および/または非ST上昇型急性心筋梗塞、安定(労作性)狭心症等の狭心症、異型狭心症、不安定狭心症、心筋梗塞(初回心筋梗塞または再発性心筋梗塞等)、急性心筋梗塞、冠動脈バイパス手術後の血管再閉塞および狭窄、経皮経管的血管形成術、心臓/経冠動脈ステント留置手術後や冠動脈のための血栓溶解療法後の再閉塞および狭窄または虚血性突然死等が挙げられる。
【0034】
静脈性心血管血栓塞栓性疾患としては、例えば、主要な一般外科手術、腹部手術、人工股関節置換術、膝関節置換術、股関節骨折手術、多発骨折、多発外傷、外傷、脊髄損傷、火傷における,または重症管理室入室時における深部静脈血栓症(DVT)および/または肺塞栓症(PE)、身体活動が著しく制限された急性内科疾患患者におけるDVTおよび/またはPE、癌化学療法施行患者におけるDVTおよび/またはPE、脳卒中患者におけるDVTおよび/またはPE、PEの有無にかかわらない症候性または無症候性のDVT等が挙げられる。
【0035】
動脈性脳血管血栓塞栓性障害としては、例えば、脳卒中、虚血性脳卒中、脳梗塞急性期、非弁膜症性心房細動または弁膜症性心房細動患者における脳卒中、大脳動脈血栓症、脳梗塞、一過性脳虚血発作(TIA)、ラクナ梗塞、アテローム性血栓性脳梗塞、大脳動脈塞栓症、脳血栓症、脳血管障害、無症候性脳梗塞または脳血管性認知症等が挙げられる。
【0036】
静脈性脳血管血栓塞栓性障害としては、例えば、頭蓋内静脈血栓症、脳塞栓症、脳血栓症、脳静脈洞血栓症、頭蓋内静脈洞血栓症または海綿静脈洞血栓症等が挙げられる。
【0037】
心腔または末梢循環における血栓塞栓性疾患としては、静脈血栓症、全身性静脈血栓塞栓症、再発性静脈血栓塞栓症、血栓性静脈炎、非弁膜症および弁膜症性心房細動、心原性塞栓症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、敗血症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺損傷(ALI)、慢性閉塞性肺疾患、抗リン脂質抗体症候群、肝塞栓症、肝中心静脈閉塞症(VOD)、腎臓塞栓症、腎静脈血栓症、腎動脈閉塞、膜性腎症または巣状糸球体硬化症による難治性ネフローゼ、脾静脈血栓症、上腸間膜動脈閉塞症、門脈血栓症、網膜静脈閉塞症、アテローム性動脈硬化症、アテローム血栓症、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)、末梢動脈疾患、動脈塞栓症、糖尿病およびメタボリック症候群およびそれらの続発症、または血栓形成を促進する人工物(医療用インプラント、医療用デバイス、カテーテル、ステント、人工心臓弁または血液透析器等)の表面に血液が曝露される治療により引き起こされる血栓症等が挙げられる。
【0038】
血栓塞栓性疾患として好ましくは、冠動脈疾患、不安定狭心症、急性冠症候群、心房細動、心筋梗塞(初回心筋梗塞または再発性心筋梗塞等)、虚血性突然死、一過性脳虚血発作、脳卒中、末梢動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢閉塞性動脈疾患、静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、動脈塞栓症、冠状動脈血栓症、大脳動脈血栓症、脳塞栓症、腎臓塞栓症、門脈血栓症、肺塞栓症、肺梗塞、肝塞栓症、肝中心静脈閉塞症(VOD)/類洞閉塞症候群(SОS)、血栓性微小血管障害症(TMA)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、敗血症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺損傷(ALI)、抗リン脂質抗体症候群、冠動脈バイパス移植(グラフト)手術に起因する血栓症または血栓症を促進する人工物(医療用インプラント、医療用デバイス、カテーテル、ステント、人工心臓弁または血液透析器等)の表面に血液が曝露される治療により起こる血栓症等が挙げられる。
【0039】
本明細書において、心房細動、アテローム性硬化症または敗血症には、心房細動、アテローム性硬化症または敗血症により引き起こされる血栓塞栓性疾患が含まれる。
【0040】
血栓塞栓性疾患としてより好ましくは、静脈血栓塞栓症(VTE)、虚血性脳卒中、血栓形成を促進する人工物表面に血液が暴露される治療により引き起こされる血栓塞栓性疾患、急性冠症候群、冠動脈疾患または末梢動脈疾患等が挙げられる。
【0041】
静脈血栓塞栓症(VTE)には、深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓症(PE)または深部静脈血栓症を伴う肺塞栓症が含まれる。VTEの予防および/または治療には、下肢整形外科手術(人工膝関節全置換術、人工股関節全置換術又は股関節骨折術等)施行患者のVTEの発症抑性、身体活動が著しく制限された急性内科疾患患者におけるDVTおよび/またはPEの発症抑制、腹部外科手術施行患者の術中および/または術後におけるVTEの発症抑制、癌化学療法施行患者におけるDVTおよび/またはPEの発症抑制が含まれる。
【0042】
虚血性脳卒中の予防および/または治療には、非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制、塞栓源を特定できない塞栓性脳卒中(ESUS)患者における再発性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制、急性冠症候群(ACS)を合併した心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制、慢性腎臓病(CKD)または末期腎不全を伴う心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制、虚血性脳卒中(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制が含まれる。
【0043】
血栓形成を促進する人工物表面に血液が暴露される治療により引き起こされる血栓塞栓性疾患の予防および/または治療には、人工弁置換術施行患者の血栓塞栓性疾患の予防および/または治療、植込型、全置換型、経皮的、あるいは体外設置型等の補助人工心臓の装着患者の血栓塞栓性疾患の予防および/または治療、冠動脈ステント留置患者の血栓塞栓性疾患の予防および/または治療が含まれる。
【0044】
急性冠症候群(ACS)、冠動脈疾患、末梢動脈疾患の予防および/または治療には、急性冠症候群(ACS)患者における心血管イベントの抑制、冠動脈疾患または末梢動脈疾患患者における心血管イベントの抑制、心血管リスクの高い糖尿病患者(より好ましくは、2型糖尿病患者)における心血管イベントの抑制が含まれる。
【0045】
また、本発明化合物は血漿カリクレイン阻害作用を有するため、血漿カリクレインが関与する疾患の予防および/または治療に有用である。
【0046】
血漿カリクレインが関与する疾患としては、例えば、網膜症、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症、増殖性および非増殖性網膜症、加齢性黄斑変性症(AMD)、血腫の予防および/または治療、血管透過性増加と関連する障害、浮腫関連疾患、遺伝性血管浮腫(HAE)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、臨床的に重要な黄斑浮腫(CSME)、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、網膜浮腫、神経膠原関連浮腫、脳浮腫、リンパ浮腫、血管浮腫、外傷性脳障害、出血性卒中、脳内出血、脳動脈瘤、動静脈奇形、脊髄損傷、虚血再灌流傷害、虚血、脳虚血、疼痛、炎症要素を伴う障害、脳炎、多発性硬化症、掻痒、関節炎、炎症性腸疾患、痛風、乾癬、星状細胞活性化関連疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルト・ヤコブ病、癲癇、本態性高血圧、糖尿病または高脂血症と関連する血圧上昇、腎不全、慢性腎疾患、心不全、タンパク尿または手術時の失血等が挙げられる。
【0047】
血漿カリクレインが関与する疾患として好ましくは、浮腫関連疾患、遺伝性血管浮腫、黄斑浮腫、脳浮腫、網膜症、虚血再灌流傷害に関連する浮腫形成、心肺バイパスまたは冠動脈バイパス移植などの手術中の失血が挙げられる。
【0048】
本発明化合物を医薬適用するにあたっては、本発明化合物を単剤として用いるだけではなく、例えば、
(1)その予防、治療および/または症状改善効果の補完および/または増強、
(2)その動態・吸収改善、投与量の低減、および/または
(3)その副作用の軽減のために、他の有効成分、例えば、以下に列挙するような薬剤等と組み合わせ、併用剤として用いてもよい。
【0049】
本発明化合物を血栓塞栓性疾患の予防および/または治療に用いる場合、本発明化合物と組み合わせて用いられる併用薬剤としては、例えば、抗凝固剤、抗血小板剤、血栓溶解剤、線維素溶解剤、セリンプロテアーゼ阻害剤、エラスターゼ阻害剤、ステロイドまたはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0050】
抗凝固剤として、トロンビン阻害剤、アンチトロンビンIII活性化剤、ヘパリン補因子II活性化剤、他のFXIa阻害剤、血漿および/または組織カリクレイン阻害剤、プラスミノゲン活性化抑制因子(PAI−1)阻害剤、トロンビン活性化線溶阻害剤(TAFI)阻害剤、第VIIa因子阻害剤、第VIIIa因子阻害剤、第IXa因子阻害剤、第Xa因子阻害剤、第XIIa因子阻害剤、またはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0051】
抗血小板剤として、GPII/IIIa遮断薬、プロテアーゼ活性化受容体(PAR−1)アンタゴニスト、PAR−4アンタゴニスト、ホスホジエステラーゼIII阻害剤、他のホスホジエステラーゼ阻害剤、P2X1アンタゴニスト、P2Y1受容体アンタゴニスト、P2Y12アンタゴニスト、トロンボキサン受容体拮抗剤、トロンボキサンA2合成酵素阻害剤、シクロオキシゲナーゼ−1阻害剤、ホスホリパーゼD1阻害剤、ホスホリパーゼD2阻害剤、ホスホリパーゼD阻害剤、糖タンパク質VI(GPVI)アンタゴニスト、糖タンパク質Ib(GPIB)アンタゴニスト、GAS6アンタゴニスト、アスピリン、またはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0052】
併用薬として好ましくは、抗血小板剤である。
【0053】
抗血小板剤として、好ましくは、クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロール、カングレロール、エリノグレル、シロスタゾール、サルポグレラート、イロプロスト、ベラプロスト、リマプロストおよび/またはアスピリン、またはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0054】
併用薬として、好ましくは、ワルファリン、未分画ヘパリン、低分子量ヘパリン、エノキサパリン、ダルテパリン、ベミパリン、チンザパリン、セミュロパリン ナトリウム(AVE−5026)、ダナパロイド、合成五糖、フォンダパリヌクス、ヒルジン、ジスルファトヒルジン、レピルジン、ビバリルジン、デシルジン、アルガトロバン、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、スリンダク、インドメタシン、メフェナマート、ドロキシカム、ジクロフェナク、スルフィンピラゾン、ピロキシカム、チクロピジン、クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロール、カングレロール、エリノグレル、シロスタゾール、サルポグレラート、イロプロスト、ベラプロスト、リマプロスト、チロフィバン、エプチフィバチド、アブシキシマブ、メラガトラン、キシメラガトラン、ダビガトラン、リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ダレキサバン、ベトリキサバン、TAK−442、組織プラスミノゲン活性化因子、改変型組織プラスミノゲン活性化因子、アニストレプラーゼ、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ガベキサート、メシル酸ガベキサート、ナファモスタット、シベレスタット、シベレスタットナトリウム水和物、アルベレスタット(AZD−9668)、ZD−8321/0892、ICI−200880、ヒトエラフィン(tiprelestat)、エラフィン、α1−アンチトリプシン(A1AT)、コルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロンおよびトリアムシノロン、またはそれらの組み合わせである。
【0055】
別の実施形態において、本発明における併用薬剤としては、例えば、カリウムチャネル開口薬、カリウムチャネル遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、水素ナトリウム交換輸送体阻害剤、抗不整脈剤、抗動脈硬化剤、抗凝固剤、抗血小板剤、抗血栓剤、血栓溶解剤、フィブリノーゲン拮抗剤、利尿降圧剤、ATPアーゼ阻害剤、電解質コルチコイド受容体アンタゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤、抗糖尿病剤、プロテアーゼ阻害剤、エラスターゼ阻害剤、抗炎症剤、抗酸化剤、血管新生モジュレーター、骨粗鬆症治療剤、ホルモン補充療法、ホルモン受容体モジュレーター、経口避妊薬、抗肥満薬、抗うつ薬、抗不安剤、抗精神病剤、抗増殖剤、抗腫瘍剤、抗潰瘍および胃食道逆流症剤、成長ホルモン剤および/または成長ホルモン分泌促進物質、甲状腺模倣薬、抗感染剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤、コレステロール/脂質異常症治療薬および脂質プロフィール改善療法、および模擬的虚血性のプレコンディショニングおよび/または気絶心筋剤、またはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0056】
別の実施形態において、本発明における併用薬剤としては、例えば、さらに抗不整脈剤、抗高血圧剤、抗凝固剤、抗血小板剤、血栓溶解剤、線維素溶解剤、カルシウムチャネル遮断薬、カリウムチャネル遮断薬、コレステロール/脂質低下剤、セリンプロテアーゼ阻害剤、エラスターゼ阻害剤、抗炎症剤、またはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0057】
抗不整脈剤としては、IKur阻害薬、エラスターゼ阻害剤、セリンプロテアーゼ阻害剤、ステロイド等が挙げられる。
【0058】
抗高血圧剤としては、ACE阻害薬、AT−1受容体拮抗薬、β−アドレナリン受容体アンタゴニスト、ETA受容体アンタゴニスト、デュアルETA/AT−1受容体拮抗薬、バソペプチダーゼ阻害剤等が挙げられる。
【0059】
好ましい実施形態において、本発明における併用薬剤としては、抗血小板剤またはそれらの組み合わせである。
【0060】
本発明化合物とこれら他の薬剤の併用剤は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、別々の製剤を同一投与経路または別投与系路で投与する形態をとってもよい。別々の製剤を投与する場合は、必ずしも同時投与である必要はなく、必要に応じて投与に時間差を設けてもよい。また、投与に時間差を設ける場合、投与の順序に特に制限はなく、望む薬効が得られるように適宜調節すればよい。
【0061】
本発明化合物と組み合わせて用いられるこれら他の薬剤の投与量は、その薬剤もしくは類似薬の臨床上用いられている用量を基準に適宜増減することができる。また、本発明化合物と他の薬剤との配合比は、投与対象の年齢や体重、投与方法、投与時間、対象疾患、症状等を考慮して適宜調節することができる。おおむね、1重量部の本発明化合物に対して、他の薬剤を0.01乃至100重量部組み合わせればよい。他の薬剤は複数のものを用いてもよい。また、他の薬剤は、上に列挙したもののほか、それと同一メカニズムを有する薬物であってもよい。このような薬物には、現在までに見出されているものだけでなく、今後見出されるものも含まれる。
【0062】
本発明化合物は、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。経口剤としては、例えば、内服用液剤(例えば、エリキシル剤、シロップ剤、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤、乳剤)、内服用固形剤(例えば、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊錠を含む)、丸剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、ゼラチンカプセル、マイクロカプセルを含む)、散剤、顆粒剤、トローチ剤)等が挙げられる。非経口剤としては、例えば、液剤(例えば、注射剤(硝子体内注射剤、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、点滴剤等)、点眼剤(例えば、水性点眼剤(水性点眼液、水性懸濁点眼液、粘性点眼液、可溶化点眼液等)、非水性点眼剤(非水性点眼液、非水性懸濁点眼液等))等)、外用剤(例えば、軟膏(眼軟膏等))、点耳剤等が挙げられる。これらの製剤は、速放性製剤、徐放性製剤などの放出制御剤であってもよい。これらの製剤は公知の方法、例えば、日本薬局方に記載の方法等により製造することができる。
【0063】
経口剤としての内服用液剤は、例えば、有効成分を一般的に用いられる希釈剤(例えば、精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化されることにより製造される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0064】
経口剤としての内服用固形剤は、例えば、有効成分を賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(例えば、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合し、常法に従って製剤化される。また、必要によりコーティング剤(例えば、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。
【0065】
非経口剤としての外用剤は公知の方法または通常使用されている処方により製造される。例えば、軟膏剤は有効成分を基剤に研和または溶融させて製造される。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(例えば、アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(例えば、ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(例えば、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(例えば、ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(例えば、親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(例えば、ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(例えば、ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0066】
非経口剤としての注射剤には溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含される。注射剤は、例えば有効成分を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0067】
本発明化合物または本発明化合物と他の薬剤の併用剤を上記の目的で用いるには、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人当たり、一回につき、1ngから1000mgの範囲で一日一回から数回経口投与されるかまたは成人一人当たり、一回につき、0.1ngから10mgの範囲で一日一回から数回非経口投与されるかまたは一日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。もちろん前記したように、投与量は種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与の必要な場合もある。
【実施例】
【0068】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
クロマトグラフィーによる分離の箇所およびTLCに示されているカッコ内の溶媒は、使用した溶出溶媒または展開溶媒を示し、割合は体積比を表す。
【0070】
NMRの箇所に示されているカッコ内は測定に使用した溶媒を示す。
【0071】
本明細書中に用いた化合物名は、一般的にIUPACの規則に準じて命名を行なうコンピュータプログラム、Advanced Chemistry Development社のACD/Name(登録商標)を用いるかまたはIUPAC命名法に準じて命名したものである。
【0072】
以下の実施例におけるLC/MS分析で用いられた測定時間、溶媒およびカラム条件を以下に示す。なお、tRは保持時間を意味する。
条件a.カラムYMC−Triart C18、2.0mmx30mm、1.9μm;カラム温度30℃;移動相(A液)0.1%トリフルオロ酢酸水溶液および(B液)0.1%トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液;流速1.0mL/min;分析時間1.5分;グラジエント:0分(A液/B液=95/5)、0.1分(A液/B液=95/5)、1.2分(A液/B液=5/95)、1.4分(A液/B液=5/95)、1.41分(A液/B液=95/5),1.5分(A液/B液=95/5)
条件b.カラムWaters ACQUITY UPLC(登録商標) BEH C18、 2.1mm x 30mm、 1.7 μm;カラム温度40℃;移動相(A液)0.1%ギ酸水溶液および(B液)0.1%ギ酸アセトニトリル溶液;流速1.0mL/min;分析時間1.5分;グラジエント:0分(A液/B液=95/5)、0.1分(A液/B液=95/5)、1.2分(A液/B液=5/95)、1.4分(A液/B液=5/95)、1.41分(A液/B液=95/5),1.5分(A液/B液=95/5)
【0073】
[実験例]
実施例1(1):2−メチル−2−プロパニル (6−フルオロ−5−ヨード−2−ピリジニル)カルバマート
6−フルオロ−5−ヨードピリジン−2−アミン(17g)のアセトニトリル(150mL)溶液にジ−tert−ブチルジカーボネート(17.14g)および4−ジメチルアミノピリジン(0.87g)を加え、混合物を室温にて2時間撹拌した。さらにジ−tert−ブチルジカーボネート(7.8g)を加え、室温にてさらに2時間撹拌した。反応混合物に、飽和塩化アンモニウム水溶液と酢酸エチルを加え、不溶物を除去した。併せた有機層を飽和食塩水で洗浄し、乾燥後、濃縮した。残渣を2回のカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=0:100→25:75)、(アミノシリカ、酢酸エチル:ヘキサン=10:90→50:50にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(9.2g)を得た。
TLC:Rf 0.69(酢酸エチル:ヘキサン=25:75)。
【0074】
実施例1(2):2−メチル−2−プロパニル [5−(1−エトキシビニル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
実施例1(1)で製造した化合物(40g)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(200mL)にトリブチル(1−エトキシエテニル)すず(50g)を加えた。混合物をアルゴンで脱気し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(3.24g)を加え、混合物を100℃で16時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(200mL)で希釈し、1Mフッ化カリウム水溶液(500mL)に注いだ。混合物を30分撹拌した後、セライト(登録商標)を通して濾過し、ろ液を酢酸エチルで抽出した。併せた有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、乾燥後濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(アミノシリカ、酢酸エチル:ヘキサン=3:97→5:95)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(34.4g)を得た。
LC/MS tR 1.15 分: MS (ES+) m/z 227 [M-CH2C(CH3)2)+H] (条件a)。
【0075】
実施例1(3): 2−メチル−2−プロパニル [5−(ブロモアセチル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
実施例1(2)で製造した化合物(34.4g)をテトラヒドロフラン(150mL)と水(50mL)に溶解し、氷冷下N−ブロモコハク酸イミド(21.7g)を加えた。混合物を氷冷下30分撹拌した後、酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、乾燥後濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=10:90→30:70)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(27.58g)を得た。
TLC:Rf 0.26(酢酸エチル:ヘキサン=10:90)。
【0076】
実施例1(4): 2−メチル−2−プロパニル [5−(2−{(3S)−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−1H−イミダゾール−5−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
(3S)−7−[5−クロロ−2−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロインドリジン−3−カルボン酸(特許文献6の実施例9に記載)(27.58g)と実施例1(3)で製造した化合物(25.68g)のN−メチルピロリドン溶液(200mL)に氷冷下N,N−ジイソプロピルエチルアミン(26.7mL)を加えた。室温にて30分撹拌した後、反応混合物を酢酸エチル(200mL)で希釈し飽和塩化アンモニウム水溶液(500mL)で洗浄した。水層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水(500mL)、飽和食塩水(500mL)で洗浄し、乾燥後濃縮した。残渣をトルエン(500mL)と氷酢酸(50mL)に溶解し、酢酸アンモニウム(59.4g)を加え、混合物を100℃で3時間撹拌した。混合物を減圧濃縮し、酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸カリウム水溶液(500mL)にて洗浄した。水層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を乾燥後濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=50:50→100:0)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(33.5g)を得た。
LC/MS tR 0.84分: MS (ES+) m/z 590 (M+H) (条件a)。
【0077】
実施例1(5): 2−メチル−2−プロパニル [5−(2−{(3S)−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
実施例1(4)で製造した化合物(350mg)をテトラヒドロフラン(1.2mL)とアセトニトリル(3.6mL)に溶解し、ピリジン(0.14mL)を加え、−18oCにて1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン ビス(テトラフルオロボラート)(315mg)を加え、2時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、亜硫酸ナトリウム水溶液を加え撹拌した。水を加え分液し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、乾燥後濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=30:70→100:0)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(138mg)を得た。
TLC:Rf 0.51(酢酸エチル:ヘキサン=80:20)。
【0078】
実施例1(6): (3S)−3−[5−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン
【化17】
実施例1(5)で製造した化合物(12.2g)の1,4−ジオキサン溶液(100mL)に濃塩酸(5mL)を加え、混合物を40℃で1時間撹拌した。濃塩酸(5mL)を追加し1時間30分撹拌した後、混合物を濃縮した。残渣を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。水層を17%メタノール/酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を乾燥後濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(メタノール:酢酸エチル=5:95→10:90)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(8.27g)を得た。
TLC:Rf 0.48(酢酸エチル);
1H-NMR (CD3OD): δ 9.34 (s, 1H), 7.76 - 7.62 (m, 4H), 6.45 (dd, 1H), 6.13 (s, 1H), 6.07 (s, 1H), 5.71 (d, 1H), 3.42 (m, 1H), 3.06 (m, 1H), 2.58 (m, 1H), 2.42 (m, 1H)。
【0079】
実施例2(1):6−フルオロ−5−ヨード−2−ピリジナミン
N−ヨードスクシンイミド(56.5g)を氷冷下、6−フルオロ−2−ピリジナミン(25.6g)のN,N−ジメチルホルムアミド(200mL)溶液に分割投入(3回)した。室温で3時間撹拌した後、反応液に市水(0.5L)を加えた。酢酸エチル/ヘキサン(1/1、300mL)で3回抽出し、有機層を飽和亜硫酸水溶液(0.5L)、飽和炭酸ナトリウム水溶液(0.5L、2回)、市水(0.5L)、飽和食塩水(0.5L)で洗浄し、乾燥後、濃縮した。得られた残渣にヘキサン/酢酸エチル(3/1、150mL)を加え、室温下スラリー洗浄し、ろ過した。得られた固体を乾燥し、以下の物性値を有する標題化合物(36.7g)を得た。
TLC:Rf 0.56(酢酸エチル:ヘキサン=1:2)。
【0080】
実施例2(2):ビス(2−メチル−2−プロパニル) (6−フルオロ−5−ヨード−2−ピリジニル)イミドジカルボナート
実施例2(1)で製造した化合物(36.7g)と4−ジメチルアミノピリジン(0.9g)のアセトニトリル(300mL)溶液にジ−tert−ブチルジカーボネート(74.0g)のアセトニトリル(100mL)溶液を加え、室温で3時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、得られた残渣を酢酸エチル(500mL)に溶解し、飽和塩化アンモニウム水溶液(400mL)で洗浄し、水層を酢酸エチル(200mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(酢酸エチル:ヘキサン=5:95→10:90)し、以下の物性値を有する標題化合物(45.06g)を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ 8.14 (t, 1H), 7.03 (dd, 1H), 1.47 (s, 18H)。
【0081】
実施例2(3):2−メチル−2−プロパニル (5−シアノ−6−フルオロ−2−ピリジニル)カルバマート
実施例2(2)で製造した化合物(9.1g)、シアン化亜鉛(II)(7.32g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.2g)の1−メチル−2−ピロリジノン(60mL)溶液を減圧下脱気した。マイクロウェーブ照射下、130℃で1時間撹拌した後、放冷した。反応溶液を酢酸エチル(100mL)で希釈した後、セライトろ過により不溶物を除去し、不溶物を酢酸エチル(50mL)で洗浄した。ろ液を分液し、水層を酢酸エチル(100mL)で再抽出した。有機層を合わせ、乾燥後、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(酢酸エチル:ヘキサン=5:95→80:20)することで以下の物性値を有する標題化合物(2.1g)を得た。
TLC:Rf 0.25(酢酸エチル:ヘキサン=10:90)。
【0082】
実施例2(4):2−メチル−2−プロパニル [6−フルオロ−5−(N−ヒドロキシカルバミミドイル)−2−ピリジニル]カルバマート
実施例2(3)で製造した化合物(1.56g)とヒドロキシルアミン塩酸塩(0.91g)のエタノール(40mL)溶液にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.84mL)を加え、40℃で終夜撹拌した。反応溶液を濃縮し、得られた残渣を酢酸エチル(50mL)に溶解した。市水(50mL)を加え、洗浄した後、有機層を乾燥後、濃縮し、以下の物性値を有する未精製の標題化合物(1.93g)を得た。
LC/MS tR 0.60分; MS (ES+) m/z 271 (M+H) (条件a)。
【0083】
実施例2(5):2−メチル−2−プロパニル (5−カルバミミドイル−6−フルオロ−2−ピリジニル)カルバマート 酢酸塩
実施例2(4)で製造した化合物(1.93g)の酢酸(10mL)溶液に無水酢酸(0.75mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液に水酸化パラジウム(II)(20%、250mg)を加え、水素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮し、以下の物性値を有する未精製の標題化合物(2.99g)を得た。
LC/MS tR 0.59分; MS (ES+) m/z 255 (M+H) (条件a)。
【0084】
実施例2(6):2−メチル−2−プロパニル (5−カルバミミドイル−6−フルオロ−2−ピリジニル)カルバマート 塩酸塩
実施例2(5)で製造した化合物(2.6g)のメタノール(10mL)溶液に10%塩化水素/メタノール(6.5mL)溶液を加え、室温で10分間撹拌した。反応液にトルエンを加え濃縮し、以下の物性値を有する未精製の標題化合物(2.63g)を得た。
LC/MS tR 0.58分; MS (ES+) m/z 255 (M+H) (条件a)。
【0085】
実施例2(7):(3S)−3−(クロロアセチル)−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン
(3S)−7−[5−クロロ−2−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロインドリジン−3−カルボン酸(特許文献6の実施例9に記載)(3.0g)のジクロロメタン(15mL)溶液に、1−クロロ−N,N,2−トリメチル−1−プロペン−1−アミン(1.33mL)を氷冷下加え、0℃にて40分間撹拌した。トリメチルシリルジアゾメタン(2Mヘキサン溶液、8.4mL)を加えた後、さらに0℃で1時間撹拌した。濃塩酸(0.87mL)を氷冷下加え、室温で20分撹拌した。反応液に市水(50mL)を加え、ジクロロメタン(50mL)で2回抽出した。有機層を乾燥後、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(酢酸エチル:ヘキサン=40:60→100:0)し、以下の物性値を有する標題化合物(2.32g)を得た。
LC/MS tR 0.80分; MS (ES+) m/z 390 (M+H) (条件a)。
【0086】
実施例2(8):2−メチル−2−プロパニル [5−(5−{7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−1H−イミダゾール−2−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
実施例2(6)で製造した化合物(1.5g)および実施例2(7)で製造した化合物(1.0g)のアセトニトリル(50mL)溶液に炭酸カリウム(0.70g)を加え、80℃で17時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチル(100mL)で希釈した後、市水(100mL)、飽和食塩水(200mL)で洗浄し、乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(酢酸エチル:ヘキサン=50:50→100:0、続いてメタノール:酢酸エチル=5:95)し、以下の物性値を有する標題化合物(1.11g)を得た。
LC/MS tR 0.81分; MS (ES+) m/z 590 (M+H) (条件a)。
【0087】
実施例2(9):2−メチル−2−プロパニル [5−(5−{(3S)−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマートおよび2−メチル−2−プロパニル [5−(5−{(3R)−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
実施例2(8)で製造した化合物(264mg)および炭酸ナトリウム(118mg)のアセトニトリル(10mL)/テトラヒドロフラン(5mL)懸濁液に、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン ビス(テトラフルオロボラート)(selectfluor(登録商標))(95mg)を加え氷/食塩浴にて冷却下で3時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチル(20mL)で希釈し、亜硫酸ナトリウム水溶液(40mL)を加えた。水層を酢酸エチル(50mL)で2回抽出し、合わせた有機層を乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(アミノシリカ、酢酸エチル:ヘキサン=50:50→100:0、続いてメタノール:酢酸エチル=5:95)し、実施例2(9)のS体化合物とR体化合物の混合物(71.2mg)を得た。得られた混合物(20mg)を光学分割(DAICEL、CHIRALFLASH(登録商標)IC カラム、(粒子径:20μm;カラム長:100 x 30 mm I.D.)流速:24mL/min;カラム温度:室温;移動相(A):アセトニトリル;移動相(B):メタノール;イソクラティック(移動相(A):移動相(B)=90:10)20分;検出器:UV Yamazen UV-254W UV-Detector)によって精製し、標題化合物(実施例2(9)のS体化合物:7.9mg、実施例2(9)のR体化合物:7.7mg)を得た。なお、上記条件により光学分割した際における標題化合物の保持時間は、それぞれ13分(実施例2(9)のS体化合物)および9.5分(実施例2(9)のR体化合物)であった。
それぞれの標題化合物を下記括弧内の液体クロマトグラフィー条件により分析した際における物性値を以下に示す。
実施例2(9)のS体化合物:
LC tR 10.4分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 5μm 4.6mm×250mm、移動相アセトニトリル/メタノール=90/10、流速1.0mL/min)。
実施例2(9)のR体化合物:
LC tR 7.95分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 5μm 4.6mm×250mm、移動相アセトニトリル/メタノール=90/10、流速1.0mL/min)。
【0088】
実施例2(10):(3S)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン
【化18】
実施例2(9)のS体化合物(436mg)の酢酸エチル(6mL)懸濁液に濃塩酸(2mL)を加え、室温で20分間撹拌した。反応溶液を減圧下濃縮し、得られた残渣をテトラヒドロフラン(10mL)で再溶解した。その溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)を加え、酢酸エチル (20mL、2回)で抽出した。有機層を合わせ、乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(アミノシリカ、メタノール:酢酸エチル=0:100→5:95)し、以下の物性値を有する標題化合物(321mg)を得た。また本化合物の絶対立体配置は、本発明化合物とFXIaとの複合体の単結晶を用いて、X線結晶構造解析により決定した。
TLC:Rf 0.60(メタノール:酢酸エチル=5:95);
1H-NMR (CD3OD): δ 9.31 (s, 1H), 7.91 (dd, 1H), 7.74 - 7.65 (m, 3H), 6.44 (dd, 1H), 6.21 (s, 1H), 6.03 (s, 1H), 5.83 (dd, 1H), 3.39-3.06 (m, 2H), 2.62 - 2.48 (m, 2H);
LC tR 22.5分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 5μm 4.6mm×250mm、移動相ヘキサン/酢酸エチル=30/70、流速1.0mL/min);
[α]25D=+44.1°(CH3OH、c=1.00)。
【0089】
実施例2(11):(3S)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン 二塩酸塩
【化19】
実施例2(9)のS体化合物(43mg)のジクロロメタン(4mL)溶液にトリフルオロ酢酸(1mL)を加え、室温で70分間撹拌した。反応溶液を減圧下濃縮し、残渣を高速液体クロマトグラフィー(移動層B(0.1% トリフルオロ酢酸/アセトニトリル):移動層A(0.1% トリフルオロ酢酸水溶液)=5:95→95:5)にて分取精製した。得られた生成物を酢酸エチルに再溶解し、過剰量の4M塩酸/酢酸エチル溶液を加え、濃縮し乾燥させることで以下の物性値を有する標題化合物(28mg)を得た。
LC/MS tR 0.83分;MS(ES+) m/z 508(M+H) (条件a);
1H-NMR (d6-DMSO): δ 11.7 (brs, 1H), 9.64 (s, 1H), 7.87 (dd, 1H), 7.79 (brs, 2H), 7.75 (brs, 1H), 6.38 (dd, 1H), 6.00 (s, 1H), 5.92 (s, 1H), 5.69 (d, 1H), 3.23 - 2.96 (m, 2H), 2.58-2.22 (m, 2H)。
【0090】
実施例2(12):(3R)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン
【化20】
実施例2(9)のR体化合物を用いて、実施例2(10)と同様の操作を行うことで、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
1H-NMR (CD3OD): δ 9.31 (s, 1H), 7.91 (dd, 1H), 7.74 - 7.65 (m, 3H), 6.44 (dd, 1H), 6.21 (s, 1H), 6.03 (s, 1H), 5.83 (dd, 1H), 3.39 - 3.06 (m, 2H), 2.62 - 2.48 (m, 2H);
LC tR 13.6分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 5μm 4.6mm×250mm、移動相ヘキサン/酢酸エチル=30/70、流速1.0mL/min);
[α]23D= -39.6°(CH3OH、c=1.00)。
【0091】
実施例2(13)(3S)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン 二水和物
【化21】
実施例2(10)の化合物(100mg)をアセトニトリル(1.0mL)及び水(0.018mL)に75℃にて加熱溶解させ、その後40℃にて2時間撹拌、室温で30分撹拌し、生成した析出物を濾取し減圧乾燥させることで表題化合物(76mg)を得た。
1H-NMR (CD3OD): δ 9.31 (s, 1H), 7.91 (dd, 1H), 7.74 - 7.65 (m, 3H), 6.44 (dd, 1H), 6.21 (s, 1H), 6.03 (s, 1H), 5.83 (dd, 1H), 3.39 - 3.06 (m, 2H), 2.62 - 2.48 (m, 2H);
LC/MS tR 0.82分;MS(ES+) m/z 508(M+H) (条件a)。
【0092】
比較例2(1):(3S)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン
【化22】
実施例2(8)で製造した化合物を光学分割し、実施例2(10)と同様の操作を行うことで表題化合物を得た。
【0093】
比較例2(2):2−メチル−2−プロパニル[5−(4−クロロ−5−{7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−1H−イミダゾール−2−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
実施例2(8)で製造した化合物(1.47g)のTHF(28mL)溶液を0℃に冷却し、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン(491mg)を加え、30分間撹拌した。反応混合物に亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて試薬を分解し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を水、1M水酸化ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(酢酸エチル:ヘキサン=70:30→100:0)し、標題化合物(1.10g)を得た。
【0094】
比較例2(3):(3S)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−クロロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン
【化23】
比較例2(2)で製造した化合物を光学分割し、実施例2(10)と同様の操作を行うことにより、標題化合物を得た。
【0095】
比較例2(4):ビス(2−メチル−2−プロパニル)(5−カルバミミドイル−2−ピリジニル)イミドジカーボネート 塩酸塩
実施例2(1)で製造した化合物の代わりに6−アミノニコチノニトリルを用いて、実施例2(2)→実施例2(4)→実施例2(5)→実施例2(6)と同様の操作を行うことにより、標題化合物を得た。
【0096】
比較例2(5):(3S)−3−[2−(6−アミノ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン
【化24】
実施例2(7)で製造した化合物と、比較例2(4)で製造した化合物を用いて、実施例2(8)→実施例2(9)→実施例2(10)と同様の操作を行うことにより、標題化合物を得た。
【0097】
実施例3(1):(6S)−6−(クロロアセチル)−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−7,8−ジヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−4(6H)−オン
(6S)−2−[5−クロロ−2−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−オキソ−4H,6H,7H,8H−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボン酸(特許文献6の実施例336に記載)を用いて、実施例2(7)と同様の操作を行うことで、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
LC/MS tR 0.75分;MS(ES+) m/z 391(M+H) (条件a)。
【0098】
実施例3(2):2−メチル−2−プロパニル [5−(5−{2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−イル}−1H−イミダゾール−2−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
実施例2(6)で製造した化合物と実施例3(1)の化合物を用いて、実施例2(8)と同様の操作を行うことで、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
LC/MS tR 0.79分; MS (ES+) m/z 591 (M+H) (条件a)。
【0099】
実施例3(3):2−メチル−2−プロパニル [5−(5−{(6S)−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−イル}−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマートおよび2−メチル−2−プロパニル [5−(5−{(6R)−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−イル}−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
実施例3(2)で製造した化合物を用いて、実施例2(9)と同様の操作を行うことで、以下の物性値を有する標題化合物を得た。なお、光学分割(DAICEL、CHIRALFLASH(登録商標)IC カラム、(粒子径:20μm;カラム長:100 x 30 mm I.D.)流速:24mL/min;カラム温度:室温;移動相:アセトニトリル;検出器:UV Yamazen UV-254W UV-Detector)した際における標題化合物の保持時間は、それぞれ13.7分(実施例3(3)のS体化合物)および8.1分(実施例3(3)のR体化合物)であった。
【0100】
それぞれの標題化合物を下記括弧内の液体クロマトグラフィー条件により分析した際における物性値を以下に示す。
実施例3(3)のS体化合物:
LC tR 4.15分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 3μm 4.6mm×250mm、移動相メタノール、流速1.0mL/min)。
実施例3(3)のR体化合物:
LC tR 3.75分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 3μm 4.6mm×250mm、移動相メタノール、流速1.0mL/min)。
【0101】
実施例3(4):(6S)−6−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−7,8−ジヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−4(6H)−オン
【化25】
実施例3(3)のS体化合物を用いて、実施例2(10)と同様の操作を行うことで、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
TLC:Rf 0.65(メタノール:酢酸エチル=5:95);
1H-NMR (CD3OD): δ 9.40 (s, 1H), 7.95 - 7.86 (m,2H), 7.76 (dd, 1H), 7.68 (d, 1H), 6.44 (dd, 1H), 6.41 (s, 1H), 5.78 (dd, 1H), 3.12 (m, 1H), 2.90 (m, 1H), 2.62 (m, 1H) 2.41 (m, 1H);
LC tR 4.23分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 3μm 4.6mm×250mm、移動相メタノール、流速1.0mL/min);
[α]25D=+74.6°(CH3OH、c=1.00)。
【0102】
実施例3(5):(6R)−6−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−7,8−ジヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−4(6H)−オン 二塩酸塩
【化26】
実施例3(3)のR体化合物を用いて、実施例2(11)と同様の操作を行うことで、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
1H-NMR (CD3OD): δ 9.44 (s, 1H), 7.95 - 7.85 (m,2H), 7.78 (dd, 1H), 7.71 (d, 1H), 6.50 (dd, 1H), 6.42 (s, 1H), 5.80 (dd, 1H), 3.13 (m, 1H), 2.98 (m, 1H), 2.72 (m, 1H) 2.43 (m, 1H);
LC tR 4.63分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 3μm 4.6mm×250mm、移動相メタノール、流速1.0mL/min)。
【0103】
比較例3(1):メチル [4−(4−クロロ−5−{(6S)−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−イル}−1H−イミダゾール−2−イル)フェニル]カルバマート
【化27】
実施例3(1)で合成した化合物と特許文献6の実施例237に記載の化合物を用い、実施例2(8)→比較例2(2)と同様の操作を行うことにより得られた化合物を光学分割することで、標題化合物を得た。
【0104】
実施例4(1):エチル (3S)−7−(2−アジド−5−クロロフェニル)−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジンカルボキシレート
エチル (3S)−7−(2−アミノ−5−クロロフェニル)−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロインドリジン−3−カルボキシレート(特許文献6の実施例7に記載)(2.0g)のアセトニトリル溶液(15mL)に、冷却(0℃)下、トリメチルシリルアジド(1.39g)および亜硝酸アミル(1.41g)を加えた。混合物を室温にて1時間撹拌した後、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=10:90→100:0)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(1.89g)を得た。
TLC:Rf 0.75 (メタノール:酢酸エチル=5:95)。
【0105】
実施例4(2):エチル (3S)−7−[2−(4−カルバモイル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)−5−クロロフェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジンカルボキシレート
実施例4(1)で製造した化合物(15.0g)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(45mL)に、プロピオルアミド(3.18g)、(R)−3,4−ジヒドロキシ−5−((S)−1,2−ジヒドロキシエチル)フラン−2(5H)−オン(1.47g)および硫酸銅(II)(0.33g)を加えた。混合物を50℃にて10分撹拌した後、水を加えた。析出物を濾取し、水で洗浄後、乾燥し、以下の物性値を有する標題化合物(17.5g)を得た。
LC/MS tR 0.69 分: MS (ES+) m/z 428 (M+H) (条件b)。
【0106】
実施例4(3):(3S)−7−[2−(4−カルバモイル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)−5−クロロフェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジンカルボン酸
実施例4(2)で製造した化合物(100mg)の1,4−ジオキサン溶液(10mL)に、5M塩酸(5 mL)を加えた。混合物を60℃にて5時間撹拌した後、室温にて5M 水酸化ナトリウム水溶液(5mL)を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を乾燥後濃縮し、以下の物性値を有する標題化合物(61.7mg)を得た。
LC/MS tR 0.60 分: MS (ES+) m/z 400 (M+H) (条件b)。
【0107】
実施例4(4):2−[4−({[(2−メチル−2−プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)フェニル]−2−オキソエチル (3S)−7−[2−(4−カルバモイル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)−5−クロロフェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジンカルボキシレート
実施例4(3)で製造した化合物(6.10g)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(61mL)に、tert−ブチル N−[4−(2−ブロモアセチル)フェニル]カルバマート(7.19g)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(5.3mL)を加えた。混合物を室温にて3日間撹拌した後、水と酢酸エチルを加えた。析出物を濾過にて集めて水で洗浄後、乾燥し、以下の物性値を有する標題化合物(3.93g)を得た。
LC/MS tR 0.90分: MS (ES+) m/z 633 (M+H) (条件b)。
【0108】
実施例4(5):2−メチル−2−プロパニル [4−(2−{(3S)−7−[2−(4−カルバモイル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)−5−クロロフェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−1H−イミダゾール−5−イル)フェニル]カルバマート
実施例4(4)で製造した化合物(3.93g)をトルエン(79mL)と氷酢酸(3.9mL)に溶解し、酢酸アンモニウム(9.57g)を加えた。混合物を加熱還流下、4時間撹拌した後、水と酢酸エチルを加えた。有機層を水で洗浄後、乾燥し、以下の物性値を有する標題化合物(3.98g)を得た。
LC/MS tR 0.73分: MS (ES+) m/z 613 (M+H) (条件b)。
【0109】
実施例4(6):2−メチル−2−プロパニル [4−(2−{(3S)−7−[5−クロロ−2−(4−シアノ−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−1H−イミダゾール−5−イル)フェニル]カルバマート
実施例4(5)で製造した化合物(3.81g)のピリジン溶液(76mL)に、冷却(0℃)下、無水トリフルオロ酢酸(4.3mL)を加えた。混合物を0℃にて2時間撹拌した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、乾燥して濃縮し、得られた残渣をテトラヒドロフランに溶解し、アンモニア水を加え、30分撹拌した。混合物を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(ジオールシリカゲル、酢酸エチル:ヘキサン=50:50→80:20)(アミノシリカゲル、酢酸エチル:ヘキサン=50:50→80:20)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(2.39g)を得た。
LC/MS tR 0.83 分: MS (ES+) m/z 595 (M+H) (条件b)。
【0110】
実施例4(7):2−メチル−2−プロパニル [4−(2−{(3S)−7−[5−クロロ−2−(4−シアノ−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−イミダゾール−4−イル)フェニル]カルバマート
実施例4(6)で製造した化合物(2.00g)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(20mL)に、冷却(0℃)下、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.87mL)および2−(トリメチルシリル)エトキシメチルクロリド(0.66mL)を加えた。混合物を室温にて8時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、乾燥し濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ジオールシリカゲル、酢酸エチル:ヘキサン=30:70→50:50)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(2.27g)を得た。
LC/MS tR 1.17分: MS (ES+) m/z 725 (M+H) (条件b)。
【0111】
実施例4(8):2−メチル−2−プロパニル [4−(2−{(3S)−7−[5−クロロ−2−(4−シアノ−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−5−フルオロ−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−イミダゾール−4−イル)フェニル]カルバマート
実施例4(7)で製造した化合物(560mg)をテトラヒドロフラン(5.6mL)とアセトニトリル(2.8mL)に溶解し、−10℃にて炭酸ナトリウム(205mg)および1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン ビス(テトラフルオロボラート)(219mg)を加え、6時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水を加え分液し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、乾燥後濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=30:70→50:50)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(277mg)を得た。
LC/MS tR 1.30 分: MS (ES+) m/z 743 (M+H) (条件a)。
【0112】
実施例4(9):2−メチル−2−プロパニル [4−(2−{(3S)−7−[5−クロロ−2−(4−シアノ−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル)フェニル]カルバマート
実施例4(8)で製造した化合物(427mg)の1,4−ジオキサン溶液(4.3mL)に、5M塩酸水溶液(0.43mL)を加えた。混合物を室温にて30分撹拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、乾燥し濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ジオールシリカゲル、酢酸エチル:ヘキサン=35:65→50:50)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(320mg)を得た。
LC/MS tR 1.11 分: MS (ES+) m/z 613 (M+H) (条件a)。
【0113】
実施例4(10):1−(2−{(3S)−3−[5−(4−アミノフェニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−7−インドリジニル}−4−クロロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボニトリル
【化28】
実施例4(9)で製造した化合物(320mg)のジクロロメタン溶液(6.4mL)に、トリフルオロ酢酸(0.96mL)を加えた。混合物を室温にて45分撹拌した後、トルエンを加え濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(アミノシリカゲル、酢酸エチル:ヘキサン=65:35→100:0)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(232mg)を得た。
LC/MS tR 0.79 分: MS (ES+) m/z 513 (M+H) (条件a);
1H NMR (300 MHz, methanol-d4); δ 8.88 (s, 1H), 7.73-7.65 (m, 3H), 7.30 (d, 2H), 6.75 (d, 2H), 6.11 (s, 1H), 6.08 (s, 1H), 5.70 (d, 1H), 3.42 (m, 1H), 3.10 (m, 1H), 2.61 (m, 1H), 2.39 (m, 1H)。
【0114】
以下に生物学的実験例を示し、これらの実験方法に基づいて、本発明化合物の効果を確認した。
【0115】
なお比較化合物として、特許文献6に記載された以下の化合物を用い、下記生物学的実験例について本発明化合物と同様に評価した。
(3S)−3−[5−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−1H−イミダゾール−2−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン(比較例1(1)とする。):
【化29】
(3S)−3−[5−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−クロロ−1H−イミダゾール−2−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン(比較例1(2)とする。):
【化30】
(3S)−3−[5−(6−アミノ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン(比較例1(3)とする。):
【化31】
(3S)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン(比較例2(1)):
【化32】
(3S)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−クロロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン(比較例2(3)):
【化33】
(3S)−3−[2−(6−アミノ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン(比較例2(5)):
【化34】
メチル [4−(4−クロロ−5−{(6S)−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−イル}−1H−イミダゾール−2−イル)フェニル]カルバマート(比較例3(1)):
【化35】
(6S)−6−[5−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−クロロ−1H−イミダゾール−2−イル]−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−7,8−ジヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−4(6H)−オン(比較例3(2)):
【化36】
1−(2−{(3S)−3−[5−(6−アミノ−3−ピリジニル)−4−クロロ−1H−イミダゾール−2−イル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−7−インドリジニル}−4−クロロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボニトリル(比較例4とする。):
【化37】
【0116】
生物学的実施例1:
(1)in vitroアッセイ
本発明化合物のヒト血液凝固第XIa因子、第VIIa因子、第IXa因子、第Xa因子、第XIIa因子、血漿カリクレインおよびトロンビン阻害活性を評価した。各酵素液に発色基質液を添加し、405nmの吸光度を37℃で15秒間隔に連続的に5分間測定し、基質分解速度(mOD/min)を求めた。本発明化合物の各酵素に対する50%阻害濃度(IC50)は、本発明化合物の濃度の自然対数変換値と下記方程式に従って求めた酵素阻害率から、最小二乗法による直線回帰を行い、算出した。
本発明化合物の酵素阻害率(%)は、以下の式を用いて算出した。:
【数1】
【0117】
(1−1)ヒト血液凝固第XIa因子阻害活性の測定:
ヒト血液凝固第XIa因子(Haematologic Technologies Inc.)阻害活性は、300 mM NaCl、10 mM KCl、2 mg/mL PEG6000、100 mM HEPES−NaOH(pH7.4)を含む緩衝液で0.1 U/mLに調整した酵素液および蒸留水で1 mMに調整したS−2366(pyroglu−Pro−Arg−pNA、CHROMOGENIX)を用いて測定した。
【0118】
(1−2)ヒト血漿カリクレイン阻害活性の測定
ヒト血漿カリクレイン(Enzyme Research Laboratories Ltd.)阻害活性は、400 mM NaCl、10 mg/mL PEG6000および200 mMリン酸緩衝液(pH7.4)を含む緩衝液で20 mU/mLに調整した酵素液および蒸留水で500 μMに調整したS−2302(H−D−Pro−Phe−Arg−pNA、CHROMOGENIX)を用いて測定した。
【0119】
(1−3)ヒト血液凝固第Xa因子およびヒトトロンビン阻害活性の測定
ヒト血液凝固第Xa因子(Sekisui Diagnostics LLC.)阻害活性およびヒトトロンビン(Sigma)阻害活性は、300 mM NaCl、4 mg/mL PEG6000、100 mM トリス−HCl(pH7.4)を含む緩衝液でそれぞれ0.5 U/mLまたは0.25 U/mLに調整した各酵素液および蒸留水でそれぞれ1 mMに調整したS−2222[Bz−Ile−Glu(γ−OR)−Gly−Arg−pNA・HCl,R=H(50%) and R=CH3(50%)、CHROMOGENIX]またはS−2366を用いて測定した。
【0120】
(1−4)ヒト血液凝固第XIIa因子阻害活性の測定
ヒト血液凝固第XIIa因子(Enzyme Research Laboratories Ltd.)阻害活性は、300 mM NaCl、100 mM トリス−HCl(pH7.4)を含む緩衝液で0.78 U/mLに調整した酵素液および蒸留水で1mMに調整したS−2302を用いて測定した。
【0121】
(1−5)ヒト血液凝固第IXa因子阻害活性
ヒト血液凝固第IXa因子(Sekisui Diagnostics LLC.)阻害活性は、200 mM NaCl、10 mM CaCl2、60%エチレングリコール、100 mM トリス-HCl(pH7.4)を含む緩衝液で30 U/mLに調整した酵素液および蒸留水で10 mMに調整したSpectrozume FIXa(H−D−Leu−Ph’Gly−Arg−pNA・2AcOH、Sekisui Diagnostics LLC.)を用いて測定した。
【0122】
(1−6)ヒト血液凝固第VIIa因子阻害活性
ヒト血液凝固第VIIa因子(Sekisui Diagnostics LLC.)阻害活性は、300 mM NaCl、10 mM CaCl2、10 mg/mL PEG6000、100 mM HEPES−NaOH(pH7.4)、組換えヒト組織因子(アリレザ R.リザイエらの方法(プロテイン エクスプレッション アンド ピューリフィケーション(Protein expression and purification)、1992年、第3巻、第6号、453〜460頁)に従って製造した)を含む緩衝液で200U/mLに調整した酵素液および蒸留水で10mMに調整したS−2288(H−D−Ile−Pro−Arg−pNA、CHROMOGENIX)を用いて測定した。
【0123】
(2)活性化部分トロンボプラスチン時間、プロトロンビン時間測定
全自動血液凝固測定装置(CA−1500、Sysmex Corporation)を用いて、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)およびプロトロンビン時間(PT)を測定した。APTTまたはPT測定に対して、血液凝固試験用標準ヒト血漿(Siemens Healthcare Diagnostics GmbH)を本発明化合物希釈液と混合し、その後、血塊形成を開始させるために、APTT試薬(Siemens Healthcare Diagnostics GmbH)および0.02M塩化カルシウムまたはPT試薬(Siemens Healthcare Diagnostics GmbH)の自動添加を行った。本発明化合物の抗凝固活性(APTT×2またはPT×2)は、ビヒクル(1%DMSO)群における凝固時間を倍にするために必要な濃度として表した。APTT×2またはPT×2は、凝固時間の倍単位での増加に対して本発明の化合物の濃度をプロットすることによって決定した。
【表1】
【0124】
上記試験の結果、本発明化合物は強力なFXIa阻害活性、抗凝固活性を有することが確認された。なお、本発明化合物のヒト血液凝固第Xa因子、第XIIa因子、第IXa因子、第VIIa因子およびヒトトロンビン阻害活性は十分に弱いものであった。
【0125】
生物学的実験例2:ラットにおける薬物動態(PK)試験
本発明化合物を単回0.1mg/kg、i.v.用量(媒体:20%HP−β−CD溶液)として静脈内注射投与、及び1mg/kg、p.o.用量(媒体:0.5%メチルセルロース溶液)として強制経口投与により絶食オスCrj:CD(SD)ラットに与えた。静脈内注射投与後、0.08、0.25、0.5、1、3、7時間で、または経口投与後、0.08、0.25、0.5、1、2、4、6、8、24時間で、ヘパリン処理シリンジに、頸静脈から血液試料を採取した。遠心によって血漿を得て、血漿濃度の測定まで−20℃で保管した。
【0126】
本発明化合物の血漿濃度を測定するために、アセトニトリルを用いて血漿試料の除タンパクを行い、フィルターを用いてろ過した後、精製水で希釈しLC/MS/MSによって分析した。分析用カラム(Shim−pack XR−ODSII、2.0mm×75mm、2.2μm)および移動相(水中0.1%ギ酸およびアセトニトリル中0.1%ギ酸、流速0.5mL/分)を使用した。陽イオン検出により、多重反応モニタリング(MRM)モードでこの系を使用した。
【0127】
本発明化合物の血中濃度−時間曲線下面積(AUC)およびバイオアベイラビリティ(BA)を算出した。また、経口投与時における抗凝固活性の維持時間の指標として、AUCをAPTT×2で除した、AUC/APTT×2、およびC8h(投与8時間後の血漿濃度)をAPTT×2で除した、C8h/APTT×2を算出した。
【表2】
【0128】
さらに、1mg/kgの用量で本発明化合物を経口投与した際における血漿中化合物濃度推移から、本発明化合物の血漿中化合物濃度がAPTT×2を上回った時間(APTT×2維持時間)を算出した。APTT×2維持時間が長ければ長いほど、経口投与後において抗凝固活性が維持される時間が長くなることから、服薬回数の少ない優れた血栓塞栓性疾患の予防および/または治療剤になり得ることが示唆される。
【表3】
【0129】
また、実施例2(10)、実施例4(10)および比較例2(3)に記載の化合物の血漿中化合物濃度推移とAPTT×2との関係を図1図2および図3に示した。
【0130】
上記試験の結果、本発明化合物は良好な血中動態を示すことが確認された。また、本発明化合物は1mg/kgの用量で経口投与した場合において、1以上のC8h/APTT×2を示した。さらに、本発明化合物は8時間以上にわたってAPTT×2以上の血漿中濃度を維持したのに対し、比較化合物のAPTT×2維持時間はいずれもわずか2時間未満であった。
【0131】
以上より、本発明化合物は良好な血中動態と強力な抗凝固活性を併せ持ち、経口投与後、長時間にわたって抗凝固活性を発揮し得ることが確認された。
【0132】
生物学的実験例3:薬物間相互作用
(1)CYP阻害活性
競合阻害活性
ミダゾラム及び本発明化合物をヒト由来肝ミクロソーム懸濁液に添加し37℃で3分間振盪させた後、試料中の1’−ヒドロキシミダゾラム濃度をLC/MS/MSによって分析した。
【0133】
時間依存的阻害(TDI)活性
本発明化合物をヒト由来肝ミクロソーム懸濁液に添加し37℃で30分間振盪させた後ミダゾラムを添加し、更に3分間振盪させ、振盪後の試料中の1’−ヒドロキシミダゾラム濃度をLC/MS/MSによって分析した。
【0134】
競合阻害活性、TDI活性ともに分析用カラム(Shim−pack XR−ODSII、2.0mm×75mm、2.2μm)および移動相(水中0.1%ギ酸およびアセトニトリル中0.1%ギ酸、流速0.5mL/分)を使用した。陽イオン検出により、多重反応モニタリング(MRM)モードでこの系を使用した。本発明化合物の試料中濃度は1、3、10、15、30、50μmol/Lのいずれかの濃度を複数用い、競合阻害およびTDIのCYP阻害活性の指標として以下の式に従いIC50値を算出した。ただし各化合物を評価した最低濃度である1、または5μmol/Lで阻害率が50%以上の場合のIC50値は<1または<5μmol/Lとし、最高濃度である10、30、50μmol/Lで阻害率が50%以下の場合のIC50値はそれぞれ、>10、>30、>50μmol/Lとした。
【数2】
【0135】
阻害率50%を上回るもっとも低い阻害率をA(%)、そのときの本発明化合物濃度をB(μmol/L)、阻害率50%を下回るもっとも高い阻害率をC(%)、そのときの本発明化合物濃度をD(μmol/L)とした。
【0136】
また、抗凝固活性を発揮し得る濃度とCYP阻害活性との乖離の指標として、CYP IC50値(TDI)/APTT×2を算出した。
【表4】
【0137】
上記試験の結果、本発明化合物のCYP阻害活性は弱いことが確認され、抗凝固活性とCYP阻害活性との間に乖離があることが確認された。
【0138】
これら結果から、本発明化合物は強力なFXIa阻害剤であって、経口吸収性および血中動態に優れ、経口投与後長時間にわたり強力な抗凝固活性を示し、かつ抗凝固活性とCYP阻害活性の間に乖離のある化合物であることが確認された。
【0139】
(2)血清懸濁肝細胞を用いたCYP3A4阻害評価
本発明化合物をヒト血清で懸濁したヒト由来肝細胞懸濁液に添加し37℃で10分間振盪させた後、ミダゾラムを添加し更に90分間振盪させ、振盪後の試料中の1’−ヒドロキシミダゾラム濃度をLC/MS/MSによって分析した。分析用カラム(Shim−pack XR−ODSII、2.0mm×75mm、2.2μm)および移動相(水中0.1%ギ酸およびアセトニトリル中0.1%ギ酸、流速0.5mL/分)を使用した。陽イオン検出により、多重反応モニタリング(MRM)モードでこの系を使用した。本発明化合物の試料中濃度は10μmol/L、30μmol/L、100μmol/Lとした。
【0140】
生物学的実験例4:毒性
(1)hERG阻害作用
本発明化合物のhERG阻害活性を、以下の手順により測定した。
hERGの遺伝子導入CHO−K1細胞を使用し、刺激パルスにより誘導されるhERGチャンネル電流(IKr)を、アンフォテリシン穿孔パッチクランプ法によって全自動パッチクランプシステムを用いて測定した。刺激パルスは保持電圧:−80mV、脱分極電圧:+40mV(2秒間)、再分極電圧:−50mV(2秒間)とし、再分極電圧後に誘導される最大tail電流を測定した。刺激パルスは本発明化合物の添加前および添加5分後の2回適用し、添加前に対する最大tail電流の変化率を求めた。本発明化合物はジメチルスルホキシド(DMSO)溶液とし、1%の濃度で細胞外液に添加した。hERGチャンネルの阻害率(%)は本発明化合物の添加前後の最大tail電流の変化率を媒体処置群での変化率で補正することにより求めた。
【数3】
【0141】
結果として、細胞に添加する本発明化合物濃度を10μMとした場合におけるhERG阻害率は51%未満であった。以上より、本発明化合物はhERG阻害活性が低く安全性に優れた化合物であることが確認できた。
【0142】
(2)ステアトーシス評価
本発明化合物のステアトーシス誘導作用を、以下の手順により測定した。
ヒト不死化肝細胞株Fa2N−4に培地に6.25、12.5、25、50、100μMの濃度の本発明化合物DMSO溶液を1%添加し、72時間暴露させた後、Nile Redを添加し、励起波長485nm、蛍光波長570nmで細胞の蛍光強度を測定した。蛍光測定値が媒体処置の160%以上の値を示した場合、ステアトーシス誘導作用ありと判定した。
【0143】
結果として、培地中の本発明化合物濃度を25μMとした場合における蛍光測定値は、媒体処置時の蛍光測定値の160%未満であった。以上より、本発明化合物はステアトーシス作用が低く安全性に優れた化合物であることが確認できた。
【0144】
[製剤例]
製剤例1
以下の各成分を常法により混合した後打錠して、一錠中に10mgの活性成分を含有する錠剤1万錠を得る。
・(3S)−3−[5−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン…100g
・カルボキシメチルセルロースカルシウム … 20g
・ステアリン酸マグネシウム … 10g
・微結晶セルロース … 870g
【0145】
製剤例2
以下の各成分を常法により混合した後、除塵フィルターでろ過し、5mlずつアンプルに充填し、オートクレーブで加熱滅菌して、1アンプル中20mgの活性成分を含有するアンプル1万本を得る。
・(3S)−3−[5−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン…200g
・マンニトール … 20g
・蒸留水 … 50L
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明化合物は、強力なFXIa阻害活性を有するため、血栓塞栓性疾患の予防および/または治療に有用である。
図1
図2
図3