【実施例】
【0068】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
クロマトグラフィーによる分離の箇所およびTLCに示されているカッコ内の溶媒は、使用した溶出溶媒または展開溶媒を示し、割合は体積比を表す。
【0070】
NMRの箇所に示されているカッコ内は測定に使用した溶媒を示す。
【0071】
本明細書中に用いた化合物名は、一般的にIUPACの規則に準じて命名を行なうコンピュータプログラム、Advanced Chemistry Development社のACD/Name(登録商標)を用いるかまたはIUPAC命名法に準じて命名したものである。
【0072】
以下の実施例におけるLC/MS分析で用いられた測定時間、溶媒およびカラム条件を以下に示す。なお、t
Rは保持時間を意味する。
条件a.カラムYMC−Triart C18、2.0mmx30mm、1.9μm;カラム温度30℃;移動相(A液)0.1%トリフルオロ酢酸水溶液および(B液)0.1%トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液;流速1.0mL/min;分析時間1.5分;グラジエント:0分(A液/B液=95/5)、0.1分(A液/B液=95/5)、1.2分(A液/B液=5/95)、1.4分(A液/B液=5/95)、1.41分(A液/B液=95/5),1.5分(A液/B液=95/5)
条件b.カラムWaters ACQUITY UPLC(登録商標) BEH C18、 2.1mm x 30mm、 1.7 μm;カラム温度40℃;移動相(A液)0.1%ギ酸水溶液および(B液)0.1%ギ酸アセトニトリル溶液;流速1.0mL/min;分析時間1.5分;グラジエント:0分(A液/B液=95/5)、0.1分(A液/B液=95/5)、1.2分(A液/B液=5/95)、1.4分(A液/B液=5/95)、1.41分(A液/B液=95/5),1.5分(A液/B液=95/5)
【0073】
[実験例]
実施例1(1):2−メチル−2−プロパニル (6−フルオロ−5−ヨード−2−ピリジニル)カルバマート
6−フルオロ−5−ヨードピリジン−2−アミン(17g)のアセトニトリル(150mL)溶液にジ−tert−ブチルジカーボネート(17.14g)および4−ジメチルアミノピリジン(0.87g)を加え、混合物を室温にて2時間撹拌した。さらにジ−tert−ブチルジカーボネート(7.8g)を加え、室温にてさらに2時間撹拌した。反応混合物に、飽和塩化アンモニウム水溶液と酢酸エチルを加え、不溶物を除去した。併せた有機層を飽和食塩水で洗浄し、乾燥後、濃縮した。残渣を2回のカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=0:100→25:75)、(アミノシリカ、酢酸エチル:ヘキサン=10:90→50:50にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(9.2g)を得た。
TLC:Rf 0.69(酢酸エチル:ヘキサン=25:75)。
【0074】
実施例1(2):2−メチル−2−プロパニル [5−(1−エトキシビニル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
実施例1(1)で製造した化合物(40g)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(200mL)にトリブチル(1−エトキシエテニル)すず(50g)を加えた。混合物をアルゴンで脱気し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(3.24g)を加え、混合物を100℃で16時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(200mL)で希釈し、1Mフッ化カリウム水溶液(500mL)に注いだ。混合物を30分撹拌した後、セライト(登録商標)を通して濾過し、ろ液を酢酸エチルで抽出した。併せた有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、乾燥後濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(アミノシリカ、酢酸エチル:ヘキサン=3:97→5:95)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(34.4g)を得た。
LC/MS t
R 1.15 分: MS (ES
+) m/z 227 [M-CH
2C(CH
3)
2)+H] (条件a)。
【0075】
実施例1(3): 2−メチル−2−プロパニル [5−(ブロモアセチル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
実施例1(2)で製造した化合物(34.4g)をテトラヒドロフラン(150mL)と水(50mL)に溶解し、氷冷下N−ブロモコハク酸イミド(21.7g)を加えた。混合物を氷冷下30分撹拌した後、酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、乾燥後濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=10:90→30:70)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(27.58g)を得た。
TLC:Rf 0.26(酢酸エチル:ヘキサン=10:90)。
【0076】
実施例1(4): 2−メチル−2−プロパニル [5−(2−{(3S)−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−1H−イミダゾール−5−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
(3S)−7−[5−クロロ−2−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロインドリジン−3−カルボン酸(特許文献6の実施例9に記載)(27.58g)と実施例1(3)で製造した化合物(25.68g)のN−メチルピロリドン溶液(200mL)に氷冷下N,N−ジイソプロピルエチルアミン(26.7mL)を加えた。室温にて30分撹拌した後、反応混合物を酢酸エチル(200mL)で希釈し飽和塩化アンモニウム水溶液(500mL)で洗浄した。水層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を水(500mL)、飽和食塩水(500mL)で洗浄し、乾燥後濃縮した。残渣をトルエン(500mL)と氷酢酸(50mL)に溶解し、酢酸アンモニウム(59.4g)を加え、混合物を100℃で3時間撹拌した。混合物を減圧濃縮し、酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸カリウム水溶液(500mL)にて洗浄した。水層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を乾燥後濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=50:50→100:0)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(33.5g)を得た。
LC/MS t
R 0.84分: MS (ES
+) m/z 590 (M+H) (条件a)。
【0077】
実施例1(5): 2−メチル−2−プロパニル [5−(2−{(3S)−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
実施例1(4)で製造した化合物(350mg)をテトラヒドロフラン(1.2mL)とアセトニトリル(3.6mL)に溶解し、ピリジン(0.14mL)を加え、−18
oCにて1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン ビス(テトラフルオロボラート)(315mg)を加え、2時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、亜硫酸ナトリウム水溶液を加え撹拌した。水を加え分液し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、乾燥後濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=30:70→100:0)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(138mg)を得た。
TLC:Rf 0.51(酢酸エチル:ヘキサン=80:20)。
【0078】
実施例1(6): (3S)−3−[5−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン
【化17】
実施例1(5)で製造した化合物(12.2g)の1,4−ジオキサン溶液(100mL)に濃塩酸(5mL)を加え、混合物を40℃で1時間撹拌した。濃塩酸(5mL)を追加し1時間30分撹拌した後、混合物を濃縮した。残渣を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。水層を17%メタノール/酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を乾燥後濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(メタノール:酢酸エチル=5:95→10:90)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(8.27g)を得た。
TLC:Rf 0.48(酢酸エチル);
1H-NMR (CD
3OD): δ 9.34 (s, 1H), 7.76 - 7.62 (m, 4H), 6.45 (dd, 1H), 6.13 (s, 1H), 6.07 (s, 1H), 5.71 (d, 1H), 3.42 (m, 1H), 3.06 (m, 1H), 2.58 (m, 1H), 2.42 (m, 1H)。
【0079】
実施例2(1):6−フルオロ−5−ヨード−2−ピリジナミン
N−ヨードスクシンイミド(56.5g)を氷冷下、6−フルオロ−2−ピリジナミン(25.6g)のN,N−ジメチルホルムアミド(200mL)溶液に分割投入(3回)した。室温で3時間撹拌した後、反応液に市水(0.5L)を加えた。酢酸エチル/ヘキサン(1/1、300mL)で3回抽出し、有機層を飽和亜硫酸水溶液(0.5L)、飽和炭酸ナトリウム水溶液(0.5L、2回)、市水(0.5L)、飽和食塩水(0.5L)で洗浄し、乾燥後、濃縮した。得られた残渣にヘキサン/酢酸エチル(3/1、150mL)を加え、室温下スラリー洗浄し、ろ過した。得られた固体を乾燥し、以下の物性値を有する標題化合物(36.7g)を得た。
TLC:Rf 0.56(酢酸エチル:ヘキサン=1:2)。
【0080】
実施例2(2):ビス(2−メチル−2−プロパニル) (6−フルオロ−5−ヨード−2−ピリジニル)イミドジカルボナート
実施例2(1)で製造した化合物(36.7g)と4−ジメチルアミノピリジン(0.9g)のアセトニトリル(300mL)溶液にジ−tert−ブチルジカーボネート(74.0g)のアセトニトリル(100mL)溶液を加え、室温で3時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、得られた残渣を酢酸エチル(500mL)に溶解し、飽和塩化アンモニウム水溶液(400mL)で洗浄し、水層を酢酸エチル(200mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(酢酸エチル:ヘキサン=5:95→10:90)し、以下の物性値を有する標題化合物(45.06g)を得た。
1H-NMR (CDCl
3): δ 8.14 (t, 1H), 7.03 (dd, 1H), 1.47 (s, 18H)。
【0081】
実施例2(3):2−メチル−2−プロパニル (5−シアノ−6−フルオロ−2−ピリジニル)カルバマート
実施例2(2)で製造した化合物(9.1g)、シアン化亜鉛(II)(7.32g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.2g)の1−メチル−2−ピロリジノン(60mL)溶液を減圧下脱気した。マイクロウェーブ照射下、130℃で1時間撹拌した後、放冷した。反応溶液を酢酸エチル(100mL)で希釈した後、セライトろ過により不溶物を除去し、不溶物を酢酸エチル(50mL)で洗浄した。ろ液を分液し、水層を酢酸エチル(100mL)で再抽出した。有機層を合わせ、乾燥後、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(酢酸エチル:ヘキサン=5:95→80:20)することで以下の物性値を有する標題化合物(2.1g)を得た。
TLC:Rf 0.25(酢酸エチル:ヘキサン=10:90)。
【0082】
実施例2(4):2−メチル−2−プロパニル [6−フルオロ−5−(N−ヒドロキシカルバミミドイル)−2−ピリジニル]カルバマート
実施例2(3)で製造した化合物(1.56g)とヒドロキシルアミン塩酸塩(0.91g)のエタノール(40mL)溶液にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.84mL)を加え、40℃で終夜撹拌した。反応溶液を濃縮し、得られた残渣を酢酸エチル(50mL)に溶解した。市水(50mL)を加え、洗浄した後、有機層を乾燥後、濃縮し、以下の物性値を有する未精製の標題化合物(1.93g)を得た。
LC/MS t
R 0.60分; MS (ES+) m/z 271 (M+H) (条件a)。
【0083】
実施例2(5):2−メチル−2−プロパニル (5−カルバミミドイル−6−フルオロ−2−ピリジニル)カルバマート 酢酸塩
実施例2(4)で製造した化合物(1.93g)の酢酸(10mL)溶液に無水酢酸(0.75mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液に水酸化パラジウム(II)(20%、250mg)を加え、水素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮し、以下の物性値を有する未精製の標題化合物(2.99g)を得た。
LC/MS t
R 0.59分; MS (ES+) m/z 255 (M+H) (条件a)。
【0084】
実施例2(6):2−メチル−2−プロパニル (5−カルバミミドイル−6−フルオロ−2−ピリジニル)カルバマート 塩酸塩
実施例2(5)で製造した化合物(2.6g)のメタノール(10mL)溶液に10%塩化水素/メタノール(6.5mL)溶液を加え、室温で10分間撹拌した。反応液にトルエンを加え濃縮し、以下の物性値を有する未精製の標題化合物(2.63g)を得た。
LC/MS t
R 0.58分; MS (ES+) m/z 255 (M+H) (条件a)。
【0085】
実施例2(7):(3S)−3−(クロロアセチル)−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン
(3S)−7−[5−クロロ−2−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロインドリジン−3−カルボン酸(特許文献6の実施例9に記載)(3.0g)のジクロロメタン(15mL)溶液に、1−クロロ−N,N,2−トリメチル−1−プロペン−1−アミン(1.33mL)を氷冷下加え、0℃にて40分間撹拌した。トリメチルシリルジアゾメタン(2Mヘキサン溶液、8.4mL)を加えた後、さらに0℃で1時間撹拌した。濃塩酸(0.87mL)を氷冷下加え、室温で20分撹拌した。反応液に市水(50mL)を加え、ジクロロメタン(50mL)で2回抽出した。有機層を乾燥後、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(酢酸エチル:ヘキサン=40:60→100:0)し、以下の物性値を有する標題化合物(2.32g)を得た。
LC/MS t
R 0.80分; MS (ES+) m/z 390 (M+H) (条件a)。
【0086】
実施例2(8):2−メチル−2−プロパニル [5−(5−{7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−1H−イミダゾール−2−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
実施例2(6)で製造した化合物(1.5g)および実施例2(7)で製造した化合物(1.0g)のアセトニトリル(50mL)溶液に炭酸カリウム(0.70g)を加え、80℃で17時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチル(100mL)で希釈した後、市水(100mL)、飽和食塩水(200mL)で洗浄し、乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(酢酸エチル:ヘキサン=50:50→100:0、続いてメタノール:酢酸エチル=5:95)し、以下の物性値を有する標題化合物(1.11g)を得た。
LC/MS t
R 0.81分; MS (ES+) m/z 590 (M+H) (条件a)。
【0087】
実施例2(9):2−メチル−2−プロパニル [5−(5−{(3S)−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマートおよび2−メチル−2−プロパニル [5−(5−{(3R)−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
実施例2(8)で製造した化合物(264mg)および炭酸ナトリウム(118mg)のアセトニトリル(10mL)/テトラヒドロフラン(5mL)懸濁液に、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン ビス(テトラフルオロボラート)(selectfluor(登録商標))(95mg)を加え氷/食塩浴にて冷却下で3時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチル(20mL)で希釈し、亜硫酸ナトリウム水溶液(40mL)を加えた。水層を酢酸エチル(50mL)で2回抽出し、合わせた有機層を乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(アミノシリカ、酢酸エチル:ヘキサン=50:50→100:0、続いてメタノール:酢酸エチル=5:95)し、実施例2(9)のS体化合物とR体化合物の混合物(71.2mg)を得た。得られた混合物(20mg)を光学分割(DAICEL、CHIRALFLASH(登録商標)IC カラム、(粒子径:20μm;カラム長:100 x 30 mm I.D.)流速:24mL/min;カラム温度:室温;移動相(A):アセトニトリル;移動相(B):メタノール;イソクラティック(移動相(A):移動相(B)=90:10)20分;検出器:UV Yamazen UV-254W UV-Detector)によって精製し、標題化合物(実施例2(9)のS体化合物:7.9mg、実施例2(9)のR体化合物:7.7mg)を得た。なお、上記条件により光学分割した際における標題化合物の保持時間は、それぞれ13分(実施例2(9)のS体化合物)および9.5分(実施例2(9)のR体化合物)であった。
それぞれの標題化合物を下記括弧内の液体クロマトグラフィー条件により分析した際における物性値を以下に示す。
実施例2(9)のS体化合物:
LC t
R 10.4分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 5μm 4.6mm×250mm、移動相アセトニトリル/メタノール=90/10、流速1.0mL/min)。
実施例2(9)のR体化合物:
LC t
R 7.95分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 5μm 4.6mm×250mm、移動相アセトニトリル/メタノール=90/10、流速1.0mL/min)。
【0088】
実施例2(10):(3S)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン
【化18】
実施例2(9)のS体化合物(436mg)の酢酸エチル(6mL)懸濁液に濃塩酸(2mL)を加え、室温で20分間撹拌した。反応溶液を減圧下濃縮し、得られた残渣をテトラヒドロフラン(10mL)で再溶解した。その溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)を加え、酢酸エチル (20mL、2回)で抽出した。有機層を合わせ、乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(アミノシリカ、メタノール:酢酸エチル=0:100→5:95)し、以下の物性値を有する標題化合物(321mg)を得た。また本化合物の絶対立体配置は、本発明化合物とFXIaとの複合体の単結晶を用いて、X線結晶構造解析により決定した。
TLC:Rf 0.60(メタノール:酢酸エチル=5:95);
1H-NMR (CD
3OD): δ 9.31 (s, 1H), 7.91 (dd, 1H), 7.74 - 7.65 (m, 3H), 6.44 (dd, 1H), 6.21 (s, 1H), 6.03 (s, 1H), 5.83 (dd, 1H), 3.39-3.06 (m, 2H), 2.62 - 2.48 (m, 2H);
LC t
R 22.5分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 5μm 4.6mm×250mm、移動相ヘキサン/酢酸エチル=30/70、流速1.0mL/min);
[α]
25D=+44.1°(CH
3OH、c=1.00)。
【0089】
実施例2(11):(3S)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン 二塩酸塩
【化19】
実施例2(9)のS体化合物(43mg)のジクロロメタン(4mL)溶液にトリフルオロ酢酸(1mL)を加え、室温で70分間撹拌した。反応溶液を減圧下濃縮し、残渣を高速液体クロマトグラフィー(移動層B(0.1% トリフルオロ酢酸/アセトニトリル):移動層A(0.1% トリフルオロ酢酸水溶液)=5:95→95:5)にて分取精製した。得られた生成物を酢酸エチルに再溶解し、過剰量の4M塩酸/酢酸エチル溶液を加え、濃縮し乾燥させることで以下の物性値を有する標題化合物(28mg)を得た。
LC/MS t
R 0.83分;MS(ES+) m/z 508(M+H) (条件a);
1H-NMR (d
6-DMSO): δ 11.7 (brs, 1H), 9.64 (s, 1H), 7.87 (dd, 1H), 7.79 (brs, 2H), 7.75 (brs, 1H), 6.38 (dd, 1H), 6.00 (s, 1H), 5.92 (s, 1H), 5.69 (d, 1H), 3.23 - 2.96 (m, 2H), 2.58-2.22 (m, 2H)。
【0090】
実施例2(12):(3R)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン
【化20】
実施例2(9)のR体化合物を用いて、実施例2(10)と同様の操作を行うことで、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
1H-NMR (CD
3OD): δ 9.31 (s, 1H), 7.91 (dd, 1H), 7.74 - 7.65 (m, 3H), 6.44 (dd, 1H), 6.21 (s, 1H), 6.03 (s, 1H), 5.83 (dd, 1H), 3.39 - 3.06 (m, 2H), 2.62 - 2.48 (m, 2H);
LC t
R 13.6分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 5μm 4.6mm×250mm、移動相ヘキサン/酢酸エチル=30/70、流速1.0mL/min);
[α]
23D= -39.6°(CH
3OH、c=1.00)。
【0091】
実施例2(13)(3S)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン 二水和物
【化21】
実施例2(10)の化合物(100mg)をアセトニトリル(1.0mL)及び水(0.018mL)に75℃にて加熱溶解させ、その後40℃にて2時間撹拌、室温で30分撹拌し、生成した析出物を濾取し減圧乾燥させることで表題化合物(76mg)を得た。
1H-NMR (CD
3OD): δ 9.31 (s, 1H), 7.91 (dd, 1H), 7.74 - 7.65 (m, 3H), 6.44 (dd, 1H), 6.21 (s, 1H), 6.03 (s, 1H), 5.83 (dd, 1H), 3.39 - 3.06 (m, 2H), 2.62 - 2.48 (m, 2H);
LC/MS t
R 0.82分;MS(ES+) m/z 508(M+H) (条件a)。
【0092】
比較例2(1):(3S)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン
【化22】
実施例2(8)で製造した化合物を光学分割し、実施例2(10)と同様の操作を行うことで表題化合物を得た。
【0093】
比較例2(2):2−メチル−2−プロパニル[5−(4−クロロ−5−{7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−1H−イミダゾール−2−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
実施例2(8)で製造した化合物(1.47g)のTHF(28mL)溶液を0℃に冷却し、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン(491mg)を加え、30分間撹拌した。反応混合物に亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて試薬を分解し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を水、1M水酸化ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(酢酸エチル:ヘキサン=70:30→100:0)し、標題化合物(1.10g)を得た。
【0094】
比較例2(3):(3S)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−クロロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン
【化23】
比較例2(2)で製造した化合物を光学分割し、実施例2(10)と同様の操作を行うことにより、標題化合物を得た。
【0095】
比較例2(4):ビス(2−メチル−2−プロパニル)(5−カルバミミドイル−2−ピリジニル)イミドジカーボネート 塩酸塩
実施例2(1)で製造した化合物の代わりに6−アミノニコチノニトリルを用いて、実施例2(2)→実施例2(4)→実施例2(5)→実施例2(6)と同様の操作を行うことにより、標題化合物を得た。
【0096】
比較例2(5):(3S)−3−[2−(6−アミノ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン
【化24】
実施例2(7)で製造した化合物と、比較例2(4)で製造した化合物を用いて、実施例2(8)→実施例2(9)→実施例2(10)と同様の操作を行うことにより、標題化合物を得た。
【0097】
実施例3(1):(6S)−6−(クロロアセチル)−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−7,8−ジヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−4(6H)−オン
(6S)−2−[5−クロロ−2−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−オキソ−4H,6H,7H,8H−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−カルボン酸(特許文献6の実施例336に記載)を用いて、実施例2(7)と同様の操作を行うことで、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
LC/MS t
R 0.75分;MS(ES+) m/z 391(M+H) (条件a)。
【0098】
実施例3(2):2−メチル−2−プロパニル [5−(5−{2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−イル}−1H−イミダゾール−2−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
実施例2(6)で製造した化合物と実施例3(1)の化合物を用いて、実施例2(8)と同様の操作を行うことで、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
LC/MS t
R 0.79分; MS (ES+) m/z 591 (M+H) (条件a)。
【0099】
実施例3(3):2−メチル−2−プロパニル [5−(5−{(6S)−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−イル}−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマートおよび2−メチル−2−プロパニル [5−(5−{(6R)−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−イル}−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル)−6−フルオロ−2−ピリジニル]カルバマート
実施例3(2)で製造した化合物を用いて、実施例2(9)と同様の操作を行うことで、以下の物性値を有する標題化合物を得た。なお、光学分割(DAICEL、CHIRALFLASH(登録商標)IC カラム、(粒子径:20μm;カラム長:100 x 30 mm I.D.)流速:24mL/min;カラム温度:室温;移動相:アセトニトリル;検出器:UV Yamazen UV-254W UV-Detector)した際における標題化合物の保持時間は、それぞれ13.7分(実施例3(3)のS体化合物)および8.1分(実施例3(3)のR体化合物)であった。
【0100】
それぞれの標題化合物を下記括弧内の液体クロマトグラフィー条件により分析した際における物性値を以下に示す。
実施例3(3)のS体化合物:
LC t
R 4.15分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 3μm 4.6mm×250mm、移動相メタノール、流速1.0mL/min)。
実施例3(3)のR体化合物:
LC t
R 3.75分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 3μm 4.6mm×250mm、移動相メタノール、流速1.0mL/min)。
【0101】
実施例3(4):(6S)−6−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−7,8−ジヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−4(6H)−オン
【化25】
実施例3(3)のS体化合物を用いて、実施例2(10)と同様の操作を行うことで、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
TLC:Rf 0.65(メタノール:酢酸エチル=5:95);
1H-NMR (CD
3OD): δ 9.40 (s, 1H), 7.95 - 7.86 (m,2H), 7.76 (dd, 1H), 7.68 (d, 1H), 6.44 (dd, 1H), 6.41 (s, 1H), 5.78 (dd, 1H), 3.12 (m, 1H), 2.90 (m, 1H), 2.62 (m, 1H) 2.41 (m, 1H);
LC t
R 4.23分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 3μm 4.6mm×250mm、移動相メタノール、流速1.0mL/min);
[α]
25D=+74.6°(CH
3OH、c=1.00)。
【0102】
実施例3(5):(6R)−6−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−7,8−ジヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−4(6H)−オン 二塩酸塩
【化26】
実施例3(3)のR体化合物を用いて、実施例2(11)と同様の操作を行うことで、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
1H-NMR (CD
3OD): δ 9.44 (s, 1H), 7.95 - 7.85 (m,2H), 7.78 (dd, 1H), 7.71 (d, 1H), 6.50 (dd, 1H), 6.42 (s, 1H), 5.80 (dd, 1H), 3.13 (m, 1H), 2.98 (m, 1H), 2.72 (m, 1H) 2.43 (m, 1H);
LC t
R 4.63分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 3μm 4.6mm×250mm、移動相メタノール、流速1.0mL/min)。
【0103】
比較例3(1):メチル [4−(4−クロロ−5−{(6S)−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−イル}−1H−イミダゾール−2−イル)フェニル]カルバマート
【化27】
実施例3(1)で合成した化合物と特許文献6の実施例237に記載の化合物を用い、実施例2(8)→比較例2(2)と同様の操作を行うことにより得られた化合物を光学分割することで、標題化合物を得た。
【0104】
実施例4(1):エチル (3S)−7−(2−アジド−5−クロロフェニル)−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジンカルボキシレート
エチル (3S)−7−(2−アミノ−5−クロロフェニル)−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロインドリジン−3−カルボキシレート(特許文献6の実施例7に記載)(2.0g)のアセトニトリル溶液(15mL)に、冷却(0℃)下、トリメチルシリルアジド(1.39g)および亜硝酸アミル(1.41g)を加えた。混合物を室温にて1時間撹拌した後、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=10:90→100:0)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(1.89g)を得た。
TLC:Rf 0.75 (メタノール:酢酸エチル=5:95)。
【0105】
実施例4(2):エチル (3S)−7−[2−(4−カルバモイル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)−5−クロロフェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジンカルボキシレート
実施例4(1)で製造した化合物(15.0g)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(45mL)に、プロピオルアミド(3.18g)、(R)−3,4−ジヒドロキシ−5−((S)−1,2−ジヒドロキシエチル)フラン−2(5H)−オン(1.47g)および硫酸銅(II)(0.33g)を加えた。混合物を50℃にて10分撹拌した後、水を加えた。析出物を濾取し、水で洗浄後、乾燥し、以下の物性値を有する標題化合物(17.5g)を得た。
LC/MS t
R 0.69 分: MS (ES
+) m/z 428 (M+H) (条件b)。
【0106】
実施例4(3):(3S)−7−[2−(4−カルバモイル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)−5−クロロフェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジンカルボン酸
実施例4(2)で製造した化合物(100mg)の1,4−ジオキサン溶液(10mL)に、5M塩酸(5 mL)を加えた。混合物を60℃にて5時間撹拌した後、室温にて5M 水酸化ナトリウム水溶液(5mL)を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を乾燥後濃縮し、以下の物性値を有する標題化合物(61.7mg)を得た。
LC/MS t
R 0.60 分: MS (ES
+) m/z 400 (M+H) (条件b)。
【0107】
実施例4(4):2−[4−({[(2−メチル−2−プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)フェニル]−2−オキソエチル (3S)−7−[2−(4−カルバモイル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)−5−クロロフェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジンカルボキシレート
実施例4(3)で製造した化合物(6.10g)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(61mL)に、tert−ブチル N−[4−(2−ブロモアセチル)フェニル]カルバマート(7.19g)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(5.3mL)を加えた。混合物を室温にて3日間撹拌した後、水と酢酸エチルを加えた。析出物を濾過にて集めて水で洗浄後、乾燥し、以下の物性値を有する標題化合物(3.93g)を得た。
LC/MS t
R 0.90分: MS (ES
+) m/z 633 (M+H) (条件b)。
【0108】
実施例4(5):2−メチル−2−プロパニル [4−(2−{(3S)−7−[2−(4−カルバモイル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)−5−クロロフェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−1H−イミダゾール−5−イル)フェニル]カルバマート
実施例4(4)で製造した化合物(3.93g)をトルエン(79mL)と氷酢酸(3.9mL)に溶解し、酢酸アンモニウム(9.57g)を加えた。混合物を加熱還流下、4時間撹拌した後、水と酢酸エチルを加えた。有機層を水で洗浄後、乾燥し、以下の物性値を有する標題化合物(3.98g)を得た。
LC/MS t
R 0.73分: MS (ES
+) m/z 613 (M+H) (条件b)。
【0109】
実施例4(6):2−メチル−2−プロパニル [4−(2−{(3S)−7−[5−クロロ−2−(4−シアノ−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−1H−イミダゾール−5−イル)フェニル]カルバマート
実施例4(5)で製造した化合物(3.81g)のピリジン溶液(76mL)に、冷却(0℃)下、無水トリフルオロ酢酸(4.3mL)を加えた。混合物を0℃にて2時間撹拌した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、乾燥して濃縮し、得られた残渣をテトラヒドロフランに溶解し、アンモニア水を加え、30分撹拌した。混合物を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(ジオールシリカゲル、酢酸エチル:ヘキサン=50:50→80:20)(アミノシリカゲル、酢酸エチル:ヘキサン=50:50→80:20)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(2.39g)を得た。
LC/MS t
R 0.83 分: MS (ES+) m/z 595 (M+H) (条件b)。
【0110】
実施例4(7):2−メチル−2−プロパニル [4−(2−{(3S)−7−[5−クロロ−2−(4−シアノ−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−イミダゾール−4−イル)フェニル]カルバマート
実施例4(6)で製造した化合物(2.00g)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(20mL)に、冷却(0℃)下、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.87mL)および2−(トリメチルシリル)エトキシメチルクロリド(0.66mL)を加えた。混合物を室温にて8時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、乾燥し濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ジオールシリカゲル、酢酸エチル:ヘキサン=30:70→50:50)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(2.27g)を得た。
LC/MS t
R 1.17分: MS (ES
+) m/z 725 (M+H) (条件b)。
【0111】
実施例4(8):2−メチル−2−プロパニル [4−(2−{(3S)−7−[5−クロロ−2−(4−シアノ−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−5−フルオロ−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−イミダゾール−4−イル)フェニル]カルバマート
実施例4(7)で製造した化合物(560mg)をテトラヒドロフラン(5.6mL)とアセトニトリル(2.8mL)に溶解し、−10℃にて炭酸ナトリウム(205mg)および1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン ビス(テトラフルオロボラート)(219mg)を加え、6時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水を加え分液し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、乾燥後濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=30:70→50:50)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(277mg)を得た。
LC/MS t
R 1.30 分: MS (ES
+) m/z 743 (M+H) (条件a)。
【0112】
実施例4(9):2−メチル−2−プロパニル [4−(2−{(3S)−7−[5−クロロ−2−(4−シアノ−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−3−インドリジニル}−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル)フェニル]カルバマート
実施例4(8)で製造した化合物(427mg)の1,4−ジオキサン溶液(4.3mL)に、5M塩酸水溶液(0.43mL)を加えた。混合物を室温にて30分撹拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、乾燥し濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ジオールシリカゲル、酢酸エチル:ヘキサン=35:65→50:50)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(320mg)を得た。
LC/MS t
R 1.11 分: MS (ES
+) m/z 613 (M+H) (条件a)。
【0113】
実施例4(10):1−(2−{(3S)−3−[5−(4−アミノフェニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−7−インドリジニル}−4−クロロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボニトリル
【化28】
実施例4(9)で製造した化合物(320mg)のジクロロメタン溶液(6.4mL)に、トリフルオロ酢酸(0.96mL)を加えた。混合物を室温にて45分撹拌した後、トルエンを加え濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(アミノシリカゲル、酢酸エチル:ヘキサン=65:35→100:0)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(232mg)を得た。
LC/MS t
R 0.79 分: MS (ES
+) m/z 513 (M+H) (条件a);
1H NMR (300 MHz, methanol-d
4); δ 8.88 (s, 1H), 7.73-7.65 (m, 3H), 7.30 (d, 2H), 6.75 (d, 2H), 6.11 (s, 1H), 6.08 (s, 1H), 5.70 (d, 1H), 3.42 (m, 1H), 3.10 (m, 1H), 2.61 (m, 1H), 2.39 (m, 1H)。
【0114】
以下に生物学的実験例を示し、これらの実験方法に基づいて、本発明化合物の効果を確認した。
【0115】
なお比較化合物として、特許文献6に記載された以下の化合物を用い、下記生物学的実験例について本発明化合物と同様に評価した。
(3S)−3−[5−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−1H−イミダゾール−2−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン(比較例1(1)とする。):
【化29】
(3S)−3−[5−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−クロロ−1H−イミダゾール−2−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン(比較例1(2)とする。):
【化30】
(3S)−3−[5−(6−アミノ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン(比較例1(3)とする。):
【化31】
(3S)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン(比較例2(1)):
【化32】
(3S)−3−[2−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−クロロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン(比較例2(3)):
【化33】
(3S)−3−[2−(6−アミノ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−5−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン(比較例2(5)):
【化34】
メチル [4−(4−クロロ−5−{(6S)−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−6−イル}−1H−イミダゾール−2−イル)フェニル]カルバマート(比較例3(1)):
【化35】
(6S)−6−[5−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−クロロ−1H−イミダゾール−2−イル]−2−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−7,8−ジヒドロピロロ[1,2−a]ピリミジン−4(6H)−オン(比較例3(2)):
【化36】
1−(2−{(3S)−3−[5−(6−アミノ−3−ピリジニル)−4−クロロ−1H−イミダゾール−2−イル]−5−オキソ−1,2,3,5−テトラヒドロ−7−インドリジニル}−4−クロロフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボニトリル(比較例4とする。):
【化37】
【0116】
生物学的実施例1:
(1)in vitroアッセイ
本発明化合物のヒト血液凝固第XIa因子、第VIIa因子、第IXa因子、第Xa因子、第XIIa因子、血漿カリクレインおよびトロンビン阻害活性を評価した。各酵素液に発色基質液を添加し、405nmの吸光度を37℃で15秒間隔に連続的に5分間測定し、基質分解速度(mOD/min)を求めた。本発明化合物の各酵素に対する50%阻害濃度(IC50)は、本発明化合物の濃度の自然対数変換値と下記方程式に従って求めた酵素阻害率から、最小二乗法による直線回帰を行い、算出した。
本発明化合物の酵素阻害率(%)は、以下の式を用いて算出した。:
【数1】
【0117】
(1−1)ヒト血液凝固第XIa因子阻害活性の測定:
ヒト血液凝固第XIa因子(Haematologic Technologies Inc.)阻害活性は、300 mM NaCl、10 mM KCl、2 mg/mL PEG6000、100 mM HEPES−NaOH(pH7.4)を含む緩衝液で0.1 U/mLに調整した酵素液および蒸留水で1 mMに調整したS−2366(pyroglu−Pro−Arg−pNA、CHROMOGENIX)を用いて測定した。
【0118】
(1−2)ヒト血漿カリクレイン阻害活性の測定:
ヒト血漿カリクレイン(Enzyme Research Laboratories Ltd.)阻害活性は、400 mM NaCl、10 mg/mL PEG6000および200 mMリン酸緩衝液(pH7.4)を含む緩衝液で20 mU/mLに調整した酵素液および蒸留水で500 μMに調整したS−2302(H−D−Pro−Phe−Arg−pNA、CHROMOGENIX)を用いて測定した。
【0119】
(1−3)ヒト血液凝固第Xa因子およびヒトトロンビン阻害活性の測定:
ヒト血液凝固第Xa因子(Sekisui Diagnostics LLC.)阻害活性およびヒトトロンビン(Sigma)阻害活性は、300 mM NaCl、4 mg/mL PEG6000、100 mM トリス−HCl(pH7.4)を含む緩衝液でそれぞれ0.5 U/mLまたは0.25 U/mLに調整した各酵素液および蒸留水でそれぞれ1 mMに調整したS−2222[Bz−Ile−Glu(γ−OR)−Gly−Arg−pNA・HCl,R=H(50%) and R=CH3(50%)、CHROMOGENIX]またはS−2366を用いて測定した。
【0120】
(1−4)ヒト血液凝固第XIIa因子阻害活性の測定:
ヒト血液凝固第XIIa因子(Enzyme Research Laboratories Ltd.)阻害活性は、300 mM NaCl、100 mM トリス−HCl(pH7.4)を含む緩衝液で0.78 U/mLに調整した酵素液および蒸留水で1mMに調整したS−2302を用いて測定した。
【0121】
(1−5)ヒト血液凝固第IXa因子阻害活性:
ヒト血液凝固第IXa因子(Sekisui Diagnostics LLC.)阻害活性は、200 mM NaCl、10 mM CaCl
2、60%エチレングリコール、100 mM トリス-HCl(pH7.4)を含む緩衝液で30 U/mLに調整した酵素液および蒸留水で10 mMに調整したSpectrozume FIXa(H−D−Leu−Ph’Gly−Arg−pNA・2AcOH、Sekisui Diagnostics LLC.)を用いて測定した。
【0122】
(1−6)ヒト血液凝固第VIIa因子阻害活性:
ヒト血液凝固第VIIa因子(Sekisui Diagnostics LLC.)阻害活性は、300 mM NaCl、10 mM CaCl
2、10 mg/mL PEG6000、100 mM HEPES−NaOH(pH7.4)、組換えヒト組織因子(アリレザ R.リザイエらの方法(プロテイン エクスプレッション アンド ピューリフィケーション(Protein expression and purification)、1992年、第3巻、第6号、453〜460頁)に従って製造した)を含む緩衝液で200U/mLに調整した酵素液および蒸留水で10mMに調整したS−2288(H−D−Ile−Pro−Arg−pNA、CHROMOGENIX)を用いて測定した。
【0123】
(2)活性化部分トロンボプラスチン時間、プロトロンビン時間測定
全自動血液凝固測定装置(CA−1500、Sysmex Corporation)を用いて、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)およびプロトロンビン時間(PT)を測定した。APTTまたはPT測定に対して、血液凝固試験用標準ヒト血漿(Siemens Healthcare Diagnostics GmbH)を本発明化合物希釈液と混合し、その後、血塊形成を開始させるために、APTT試薬(Siemens Healthcare Diagnostics GmbH)および0.02M塩化カルシウムまたはPT試薬(Siemens Healthcare Diagnostics GmbH)の自動添加を行った。本発明化合物の抗凝固活性(APTT×2またはPT×2)は、ビヒクル(1%DMSO)群における凝固時間を倍にするために必要な濃度として表した。APTT×2またはPT×2は、凝固時間の倍単位での増加に対して本発明の化合物の濃度をプロットすることによって決定した。
【表1】
【0124】
上記試験の結果、本発明化合物は強力なFXIa阻害活性、抗凝固活性を有することが確認された。なお、本発明化合物のヒト血液凝固第Xa因子、第XIIa因子、第IXa因子、第VIIa因子およびヒトトロンビン阻害活性は十分に弱いものであった。
【0125】
生物学的実験例2:ラットにおける薬物動態(PK)試験
本発明化合物を単回0.1mg/kg、i.v.用量(媒体:20%HP−β−CD溶液)として静脈内注射投与、及び1mg/kg、p.o.用量(媒体:0.5%メチルセルロース溶液)として強制経口投与により絶食オスCrj:CD(SD)ラットに与えた。静脈内注射投与後、0.08、0.25、0.5、1、3、7時間で、または経口投与後、0.08、0.25、0.5、1、2、4、6、8、24時間で、ヘパリン処理シリンジに、頸静脈から血液試料を採取した。遠心によって血漿を得て、血漿濃度の測定まで−20℃で保管した。
【0126】
本発明化合物の血漿濃度を測定するために、アセトニトリルを用いて血漿試料の除タンパクを行い、フィルターを用いてろ過した後、精製水で希釈しLC/MS/MSによって分析した。分析用カラム(Shim−pack XR−ODSII、2.0mm×75mm、2.2μm)および移動相(水中0.1%ギ酸およびアセトニトリル中0.1%ギ酸、流速0.5mL/分)を使用した。陽イオン検出により、多重反応モニタリング(MRM)モードでこの系を使用した。
【0127】
本発明化合物の血中濃度−時間曲線下面積(AUC)およびバイオアベイラビリティ(BA)を算出した。また、経口投与時における抗凝固活性の維持時間の指標として、AUCをAPTT×2で除した、AUC/APTT×2、およびC8h(投与8時間後の血漿濃度)をAPTT×2で除した、C8h/APTT×2を算出した。
【表2】
【0128】
さらに、1mg/kgの用量で本発明化合物を経口投与した際における血漿中化合物濃度推移から、本発明化合物の血漿中化合物濃度がAPTT×2を上回った時間(APTT×2維持時間)を算出した。APTT×2維持時間が長ければ長いほど、経口投与後において抗凝固活性が維持される時間が長くなることから、服薬回数の少ない優れた血栓塞栓性疾患の予防および/または治療剤になり得ることが示唆される。
【表3】
【0129】
また、実施例2(10)、実施例4(10)および比較例2(3)に記載の化合物の血漿中化合物濃度推移とAPTT×2との関係を
図1、
図2および
図3に示した。
【0130】
上記試験の結果、本発明化合物は良好な血中動態を示すことが確認された。また、本発明化合物は1mg/kgの用量で経口投与した場合において、1以上のC8h/APTT×2を示した。さらに、本発明化合物は8時間以上にわたってAPTT×2以上の血漿中濃度を維持したのに対し、比較化合物のAPTT×2維持時間はいずれもわずか2時間未満であった。
【0131】
以上より、本発明化合物は良好な血中動態と強力な抗凝固活性を併せ持ち、経口投与後、長時間にわたって抗凝固活性を発揮し得ることが確認された。
【0132】
生物学的実験例3:薬物間相互作用
(1)CYP阻害活性
競合阻害活性
ミダゾラム及び本発明化合物をヒト由来肝ミクロソーム懸濁液に添加し37℃で3分間振盪させた後、試料中の1’−ヒドロキシミダゾラム濃度をLC/MS/MSによって分析した。
【0133】
時間依存的阻害(TDI)活性
本発明化合物をヒト由来肝ミクロソーム懸濁液に添加し37℃で30分間振盪させた後ミダゾラムを添加し、更に3分間振盪させ、振盪後の試料中の1’−ヒドロキシミダゾラム濃度をLC/MS/MSによって分析した。
【0134】
競合阻害活性、TDI活性ともに分析用カラム(Shim−pack XR−ODSII、2.0mm×75mm、2.2μm)および移動相(水中0.1%ギ酸およびアセトニトリル中0.1%ギ酸、流速0.5mL/分)を使用した。陽イオン検出により、多重反応モニタリング(MRM)モードでこの系を使用した。本発明化合物の試料中濃度は1、3、10、15、30、50μmol/Lのいずれかの濃度を複数用い、競合阻害およびTDIのCYP阻害活性の指標として以下の式に従いIC50値を算出した。ただし各化合物を評価した最低濃度である1、または5μmol/Lで阻害率が50%以上の場合のIC50値は<1または<5μmol/Lとし、最高濃度である10、30、50μmol/Lで阻害率が50%以下の場合のIC50値はそれぞれ、>10、>30、>50μmol/Lとした。
【数2】
【0135】
阻害率50%を上回るもっとも低い阻害率をA(%)、そのときの本発明化合物濃度をB(μmol/L)、阻害率50%を下回るもっとも高い阻害率をC(%)、そのときの本発明化合物濃度をD(μmol/L)とした。
【0136】
また、抗凝固活性を発揮し得る濃度とCYP阻害活性との乖離の指標として、CYP IC50値(TDI)/APTT×2を算出した。
【表4】
【0137】
上記試験の結果、本発明化合物のCYP阻害活性は弱いことが確認され、抗凝固活性とCYP阻害活性との間に乖離があることが確認された。
【0138】
これら結果から、本発明化合物は強力なFXIa阻害剤であって、経口吸収性および血中動態に優れ、経口投与後長時間にわたり強力な抗凝固活性を示し、かつ抗凝固活性とCYP阻害活性の間に乖離のある化合物であることが確認された。
【0139】
(2)血清懸濁肝細胞を用いたCYP3A4阻害評価
本発明化合物をヒト血清で懸濁したヒト由来肝細胞懸濁液に添加し37℃で10分間振盪させた後、ミダゾラムを添加し更に90分間振盪させ、振盪後の試料中の1’−ヒドロキシミダゾラム濃度をLC/MS/MSによって分析した。分析用カラム(Shim−pack XR−ODSII、2.0mm×75mm、2.2μm)および移動相(水中0.1%ギ酸およびアセトニトリル中0.1%ギ酸、流速0.5mL/分)を使用した。陽イオン検出により、多重反応モニタリング(MRM)モードでこの系を使用した。本発明化合物の試料中濃度は10μmol/L、30μmol/L、100μmol/Lとした。
【0140】
生物学的実験例4:毒性
(1)hERG阻害作用
本発明化合物のhERG阻害活性を、以下の手順により測定した。
hERGの遺伝子導入CHO−K1細胞を使用し、刺激パルスにより誘導されるhERGチャンネル電流(IKr)を、アンフォテリシン穿孔パッチクランプ法によって全自動パッチクランプシステムを用いて測定した。刺激パルスは保持電圧:−80mV、脱分極電圧:+40mV(2秒間)、再分極電圧:−50mV(2秒間)とし、再分極電圧後に誘導される最大tail電流を測定した。刺激パルスは本発明化合物の添加前および添加5分後の2回適用し、添加前に対する最大tail電流の変化率を求めた。本発明化合物はジメチルスルホキシド(DMSO)溶液とし、1%の濃度で細胞外液に添加した。hERGチャンネルの阻害率(%)は本発明化合物の添加前後の最大tail電流の変化率を媒体処置群での変化率で補正することにより求めた。
【数3】
【0141】
結果として、細胞に添加する本発明化合物濃度を10μMとした場合におけるhERG阻害率は51%未満であった。以上より、本発明化合物はhERG阻害活性が低く安全性に優れた化合物であることが確認できた。
【0142】
(2)ステアトーシス評価
本発明化合物のステアトーシス誘導作用を、以下の手順により測定した。
ヒト不死化肝細胞株Fa2N−4に培地に6.25、12.5、25、50、100μMの濃度の本発明化合物DMSO溶液を1%添加し、72時間暴露させた後、Nile Redを添加し、励起波長485nm、蛍光波長570nmで細胞の蛍光強度を測定した。蛍光測定値が媒体処置の160%以上の値を示した場合、ステアトーシス誘導作用ありと判定した。
【0143】
結果として、培地中の本発明化合物濃度を25μMとした場合における蛍光測定値は、媒体処置時の蛍光測定値の160%未満であった。以上より、本発明化合物はステアトーシス作用が低く安全性に優れた化合物であることが確認できた。
【0144】
[製剤例]
製剤例1
以下の各成分を常法により混合した後打錠して、一錠中に10mgの活性成分を含有する錠剤1万錠を得る。
・(3S)−3−[5−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン…100g
・カルボキシメチルセルロースカルシウム … 20g
・ステアリン酸マグネシウム … 10g
・微結晶セルロース … 870g
【0145】
製剤例2
以下の各成分を常法により混合した後、除塵フィルターでろ過し、5mlずつアンプルに充填し、オートクレーブで加熱滅菌して、1アンプル中20mgの活性成分を含有するアンプル1万本を得る。
・(3S)−3−[5−(6−アミノ−2−フルオロ−3−ピリジニル)−4−フルオロ−1H−イミダゾール−2−イル]−7−[5−クロロ−2−(1H−テトラゾール−1−イル)フェニル]−2,3−ジヒドロ−5(1H)−インドリジノン…200g
・マンニトール … 20g
・蒸留水 … 50L