(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の気筒と、これら気筒から排出された排気ガスが流通する排気通路とを備え、複数の気筒のうち一部の気筒である休止気筒の稼働を休止する減筒運転と、全ての気筒が稼働される全筒運転とを切替可能なエンジンに適用される制御装置において、
減筒運転時に前記休止気筒の吸気弁及び排気弁の閉弁を保持する弁停止機構と、
各気筒に供給される空気量を調整可能な空気量調整手段と、
各気筒の点火時期を調整可能な点火時期調整手段と、
前記弁停止機構と前記空気量調整手段と前記点火時期調整手段とを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
各気筒の点火時期の基本値である基本点火時期を、エンジン回転数とエンジン負荷とに基づいて設定し、
全筒運転から減筒運転への切替実行条件が成立したとき、前記空気量調整手段を用いて各気筒の空気量を増大させる空気量増大制御を実施し、前記休止気筒の吸気弁及び排気弁が閉弁保持されるように前記弁停止機構を制御し、
減筒運転から全筒運転への切替実行条件が成立したとき、吸気弁及び排気弁の前記閉弁保持が解除されるように前記弁停止機構を制御し、前記空気量調整手段を用いて各気筒の空気量を減少させる空気量減少制御を実施し、
前記空気量増大制御および前記空気量減少制御の非実施中は、各気筒の点火時期を前記基本点火時期に設定し、
前記空気量増大制御の実施中は、各気筒の点火時期を前記基本点火時期よりも遅角させ、
前記空気量減少制御の実施中は、各気筒の点火時期を前記基本点火時期よりも遅角させるとともに、少なくとも全筒運転の開始時における休止気筒の点火時期の前記基本点火時期に対する遅角量を、前記減筒運転から前記全筒運転への切替時である全筒運転切替時に前記休止気筒内に存在する既燃ガスの量が多いほど少なくなるように設定することを特徴とするエンジンの制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
以下の説明は、本発明に係るエンジンの制御装置を車両に適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
【0019】
以下、本発明の実施形態について
図1〜
図11に基づいて説明する。
【0020】
(エンジンの全体構成)
図1,
図2に示すように、エンジン1は、例えば、第1気筒から第4気筒が直列状に順次配置された直列4気筒ガソリンエンジンであり、自動車等の車両に搭載されている。
【0021】
本実施形態では、エンジン1は、エンジン1の全ての気筒(4気筒)のうち一部の気筒(本実施形態では、第1,第4気筒)の稼働を停止させる減筒運転と、全ての気筒(4気筒)を稼働させる全筒運転とを実施可能に構成されている。以下では、減筒運転時に稼働が停止される(つまり、燃焼が停止される)気筒(第1,第4気筒)を、適宜、休止気筒という。
【0022】
エンジン1は、ヘッドカバー2と、シリンダヘッド3と、シリンダブロック4と、クランクケース(図示略)と、オイルパン5(
図4参照)とを備え、これらは夫々上下に連結されている。
【0023】
エンジン1は、シリンダブロック4に形成された4つのシリンダボア9内を夫々摺動可能なピストン6と、クランクケースに回転自在に支持されたクランク軸7とを備える。これらピストン6とクランク軸7とは、コネクティングロッド8によって連結されている。各気筒には、シリンダブロック4のシリンダボア9とピストン6とシリンダヘッド3とによって区画された燃焼室11が形成されている。
【0024】
各燃焼室11には、燃焼室11内に燃料を噴射するインジェクタ12と、燃焼室11内の燃料と空気の混合気に点火する点火プラグ13とが夫々設けられている。本実施形態では、第1気筒→第3気筒→第4気筒→第2気筒の順に点火が行われる。
【0025】
エンジン1は、その吸気系の要素として、燃焼室11に夫々連通する吸気ポート21と、これら吸気ポート21に夫々連通する独立吸気通路22と、これら独立吸気通路22に共通して接続されたサージタンク23と、このサージタンク23から上流側に延びる吸気管24等を備える。各燃焼室11(各気筒)には、エアダクト(図示略)、吸気管24、サージタンク23、独立吸気通路22、吸気ポート21を介して空気が導入される。吸気管24の途中部には、各気筒に導入される空気の量を調整可能なバタフライ式のスロットルバルブ25(空気量調整手段)が設けられている。スロットルバルブ25の近傍位置には、スロットルバルブ25を駆動するためのアクチュエータ26(電動モータ)が設置されている。本実施形態では、独立吸気通路22の下流側部分が、各気筒に導入される吸気が流通するインテークマニホールドとして機能する。
【0026】
エンジン1は、各気筒から排出された排気ガスが流通する排気通路130を備える。排気通路130は、燃焼室11に夫々連通する排気ポート31と、これら排気ポート31に夫々連通する独立排気通路32と、これら独立排気通路32が集合した集合部33と、この集合部33から下流側に延びる排気管34等を備える。排気管34の途中部には、排気管34を流れる排気ガスの量を調整可能なバタフライ式の排気シャッタ弁35(排気ガス量調整手段)が設けられている。排気シャッタ弁35が閉じ側にされると、排気管34(排気通路130)を流れる排気ガスの量は減少する。排気シャッタ弁35の近傍位置には排気シャッタ弁35を駆動するためのアクチュエータ36(電動モータ)が設置されている。
【0027】
図2に示すように、吸気ポート21及び排気ポート31には、各々を開閉する吸気弁41及び排気弁51が配設されている。
【0028】
これら吸気弁41の位相つまり開閉時期及び排気弁51の位相つまり開閉時期は、それぞれ、吸気用可変バルブタイミング機構19及び排気用可変バルブタイミング機構20によって変更される。本実施形態では、これらバルブタイミング機構19、20によって、吸気弁41および排気弁51の開閉時期は、それぞれ、開弁期間を一定とした状態で変更される。本実施形態では、吸気弁41の位相を変更する吸気用可変バルブタイミング機構19は、電動式である。一方、排気弁51の位相を変更する排気用可変バルブタイミング機構20は、油圧式である。なお、図では、可変バルブタイミング機構は、S−VTと示されている。
【0029】
これら吸気弁41及び排気弁51は、それぞれリターンスプリング42,52によって閉弁方向(上方)に付勢されている。それぞれ回動するカム軸43,53の外周に設けられたカム部43a,53aは、スイングアーム44,54の略中央部に回転自在に設けられたカムフォロア44a,54aを下方に押圧する。
【0030】
スイングアーム44,54は、それぞれ、その一端側に設けられたピボッド機構14a,15aの頂部を支点として揺動する。吸気弁41及び排気弁51は、各スイングアーム44,54の他端部に接続されている。従って、スイングアーム44,54が揺動し、これに伴って、各スイングアーム44,54の他端部、吸気弁41および排気弁51がリターンスプリング42,52の付勢力に抗して下方に押し下げられると、吸気弁41および排気弁51は開弁する。
【0031】
エンジン1の気筒配列方向の中央部分に形成された気筒である第2,第3気筒のスイングアーム44,54には、オイル(作動油)の圧力(以下、単に油圧と省略する)によりバルブクリアランスを自動的に零に調整する公知の油圧ラッシュアジャスタ(Hydraulic Lash Adjuster: 以下、HLAと略す)15を備えたピボット機構15aがそれぞれ設けられている。
【0032】
一方、
図2に示すように、エンジン1の気筒配列方向の両端部分に形成された気筒である第1,第4気筒のスイングアーム44,54には、弁停止機構付きHLA14を備えたピボット機構14aが夫々設けられている。これら弁停止機構付きHLA14は、HLA15と同様に、油圧によりバルブクリアランスを自動的に零に調整可能に構成されている。
【0033】
HLA14は、減筒運転の時、休止気筒である第1,第4気筒の吸気弁41および排気弁51の開閉動作を停止させてこれら吸気弁41および排気弁51を閉弁保持する。一方で、HLA14は、全筒運転時、休止気筒である第1,第4気筒の吸気弁41および排気弁51を開閉動作させる。なお、第2,第3気筒の吸気弁41および排気弁51は、減筒運転及び全筒運転の双方で作動する。
【0034】
このようにして、HLA14によって、減筒運転時、エンジン1の第1〜第4気筒のうち第1,第4気筒の吸気弁41および排気弁51の作動が停止されて、全筒運転時、第1〜第4気筒の吸気弁41および排気弁51が作動する。尚、減筒運転及び全筒運転は、後述するように、エンジン1の運転状態に応じて適宜切り替えられる。
【0035】
シリンダヘッド3の第1,第4気筒に夫々対応する部分のうちの吸気側及び排気側の部分には、HLA14の下端部分を挿入して装着するための装着穴45,55が夫々設けられている。また、シリンダヘッド3の第2,第3気筒に夫々対応する部分のうちの吸気側及び排気側の部分には、HLA15の下端部分を挿入して装着するため、装着穴45,55と同様の装着穴(図示略)が夫々設けられている。
【0036】
装着穴45には、1対の油路71,73が穿設され、装着穴55には、1対の油路72,74が穿設されている。油路71,72は、HLA14の弁停止機構14bに、これを作動させる油圧を供給するための油路である。油路73,74は、ピボット機構14aに、これを作動させる油圧を供給するための油路である。尚、第2、第3気筒のピボット機構15aには、油路73,74のみが連通されている。
【0037】
図3(a)に示すように、弁停止機構14bには、ピボット機構14aの動作をロックするロック機構140が設けられている。ピボット機構14aは、有底の外筒141に、外筒141の軸方向に摺動自在に収納されている。外筒141の側周面のうち外筒141の径方向について互いに対向する2箇所には、それぞれ貫通孔141aが形成されている。ロック機構140は、各貫通孔141aに夫々進退可能な1対のロックピン142を備えている。これら1対のロックピン142は、スプリング143によって外筒141の径方向の外側に付勢されている。外筒141の内底部とピボット機構14aの底部との間には、ピボット機構14aを外筒141の上方に押圧して付勢するロストモーションスプリング144が配置されている。
【0038】
両ロックピン142が外筒141の貫通孔141aに嵌合している場合、ロックピン142の上方に位置するピボット機構14aは上方に突出した状態で固定される。
【0039】
これにより、ピボット機構14aの頂部がスイングアーム44,54の揺動の支点になる。従って、このときは、カム軸43,53の回動に伴ってカム部43a,53aがカムフォロア44a,54aを下方に押すと、吸気弁41および排気弁51がリターンスプリング42,52の付勢力に抗して下方に押されて開弁する。即ち、両ロックピン142が貫通孔141aに嵌合した状態では、吸気弁41および排気弁51は開閉可能とされる。
【0040】
一方、
図3(b),
図3(c)に示すように、黒矢印で示すように、油圧によって両ロックピン142の外側端部が押圧された場合、スプリング143の付勢力に抗して両ロックピン142が互いに接近するように外筒141の径方向内側に後退する。
【0041】
これにより、両ロックピン142は貫通孔141aから抜け、ロックピン142の上方に位置するピボット機構14aは外筒141の軸方向の下側へ移行可能となる。
【0042】
リターンスプリング42,52の付勢力は、ロストモーションスプリング144の付勢力よりも強い。それ故、両ロックピン142が貫通孔141aから抜けた状態では、カム軸43,53の回動に伴ってカム部43a,53aがカムフォロア44a,54aを下方に押すと、吸気弁41および排気弁51の頂部がスイングアーム44,54の揺動の支点になる。従って、このときは、吸気弁41および排気弁51が閉弁されたまま、ピボット機構14aがロストモーションスプリング144の付勢力に抗して下方に押される。このように、両ロックピン142が貫通孔141aに対して嵌合していない状態になることで、吸気弁41および排気弁51は閉弁保持される。
【0043】
(オイル供給回路)
図4に示すように、オイル供給回路は、クランク軸7の回転によって駆動される可変容量型オイルポンプ16と、このオイルポンプ16に接続された給油路60とを備えている。給油路60は、オイルポンプ16によって昇圧されたオイルをエンジン1の各潤滑部及び各油圧作動装置に導くための油路である。
【0044】
給油路60は、シリンダヘッド3及びシリンダブロック4等に穿設されたオイル通路である。この給油路60は、第1〜第3連通路61〜63と、メインギャラリ64と、複数の油路71〜79等を備えている。
【0045】
第1連通路61は、オイルポンプ16と連通され、このオイルポンプ16の吐出口16bからシリンダブロック4内の分岐点64aまで延びている。
【0046】
メインギャラリ64は、シリンダブロック4内で気筒列方向に延びている。
【0047】
第2連通路62は、メインギャラリ64上の分岐点64bからシリンダヘッド3上の分岐部63bまで延びている。第3連通路63は、シリンダヘッド3内で吸気側と排気側との間を略水平方向に延びている。複数の油路71〜79は、シリンダヘッド3内で第3連通路63から分岐している。
【0048】
オイルポンプ16は、このオイルポンプ16の容量の変更に伴ってオイルポンプ16からのオイルの吐出量が変更される公知の可変容量型オイルポンプである。オイルポンプ16は、ハウジングと、駆動軸と、ポンプ要素と、カムリングと、スプリングと、リング部材等を有している。
【0049】
オイルポンプ16のハウジングは、その内部に形成されたポンプ室161と、ポンプ室161にオイルを供給する吸入口16aと、ポンプ室161からオイルを吐出する吐出口16bとを有している。
【0050】
オイルポンプ16のハウジングの内部には、このハウジングの内周面とカムリングの外周面とによって画成された圧力室162が形成され、この圧力室162には導入孔16cが設けられている。
【0051】
オイルポンプ16の吸入口16aには、オイルパン5に臨むオイルストレーナ18が設けられている。オイルポンプ16の吐出口16bと連通する第1連通路61には、上流側から下流側に順に、オイルフィルタ65及びオイルクーラ66が配置されている。
【0052】
オイルパン5内に貯留されたオイルは、オイルポンプ16により、オイルストレーナ18を介して汲み上げられ、その後、オイルフィルタ65で濾過され、オイルクーラ66で冷却された後、シリンダブロック4内のメインギャラリ64に導入される。
【0053】
メインギャラリ64は、クランク軸7を回動自在に支持する5つのメインジャーナルに配置されたメタルベアリングのオイル供給部81と、クランク軸7のクランクピンに配置されて4つのコネクティングロッド8を回転自在に連結するメタルベアリングのオイル供給部82とに接続されている。メインギャラリ64には、オイルが常時供給される。
【0054】
メインギャラリ64の分岐点64cの下流側には、タイミングチェーンの油圧式チェーンテンショナ(何れも図示略)にオイルを供給するオイル供給部83と、オイルポンプ16の圧力室162にオイルを供給する油路70とが接続されている。油路70は、メインギャラリ64の分岐点64cとオイルポンプ16の導入孔16cとを連通している。油路70の途中部には、オイルの流量を電気的にデューティ制御可能なリニアソレノイドバルブ89が設けられている。
【0055】
第3連通路63の分岐点63aから分岐する油路78は、排気側第1方向切替バルブ84に接続されている。この排気側第1方向切替バルブ84を介して、油路78は、進角側油路201と遅角側油路202に接続されている。後述する排気用の可変バルブタイミング機構20の進角作動室203には、この進角側油路201を介してオイルが供給される。一方、後述する排気用の可変バルブタイミング機構20の遅角作動室204には、この遅角側油路202を介してオイルが供給される。
【0056】
また、分岐点63aから分岐する油路74は、オイル供給部(
図4の白抜き三角△を参照。)と、HLA15と、HLA14と、燃料ポンプ87と、バキュームポンプ88とに接続されている。
【0057】
油路74の分岐点74aから分岐する油路76は、排気側のスイングアーム54に潤滑用オイルを供給するオイルシャワーに接続され、この油路76にもオイルが常時供給される。
【0058】
第3連通路63の分岐点63cから分岐する油路77には、この油路77の油圧を検出する油圧センサ90が配設されている。また、分岐点63dから分岐する油路73は、吸気側のカム軸43におけるカムジャーナルのオイル供給部(
図4の白抜き三角△を参照。)と、HLA15と、HLA14とに接続されている。また、油路73の分岐点73aから分岐する油路75は、吸気側のスイングアーム44に潤滑用オイルを供給するオイルシャワーに接続されている。
【0059】
第3連通路63の分岐点63cから分岐する油路79には、オイルが流れる方向を上流側から下流側への一方向のみに規制する逆止バルブが配設されている。この油路79は、逆止バルブの下流側の分岐点79aで、2つの油路71、72に分岐する。これら油路71、72は、前記の通り、弁停止機構付きHLA14用の装着穴45、55と連通しており、油圧制御バルブとしての吸気側第2方向切替バルブ86及び排気側第2方向切替バルブ85を介して、吸気側及び排気側の各バルブ停止機構付きHLA14の弁停止機構14bと夫々接続されている。これら吸気側第2方向切替バルブ86及び排気側第2方向切替バルブ85によって、各弁停止機構14bへのオイルの供給状態が変更される。
【0060】
(位相制御機構)
吸気用可変バルブタイミング機構19及び排気用可変バルブタイミング機構20の各カムプーリは、クランク軸のスプロケット(図示略)によって、タイミングチェーンを介して駆動される。
【0061】
(吸気用可変バルブタイミング機構)
図4に示すように、吸気用可変バルブタイミング機構19は、電動モータ191と、カム軸43の一端部に形成された変換部(図示略)とを備える。
【0062】
タイミングチェーンには、クランク軸7と同期回転するギヤプーリが噛合している。電動モータ191は、ギヤプーリと一体形成され、変換部は、カム軸43と一体形成されている。
【0063】
電動モータ191に対して変換部が電動モータ191の軸心回りに相対変位すると、ギヤプーリ(タイミングチェーン)とカム軸43との位相が変更される。これにより、吸気弁41の位相が変更される。
【0064】
(排気用可変バルブタイミング機構)
排気用可変バルブタイミング機構20は、円環状のハウジングと、このハウジングの内部に収容されたベーン体とを有している(何れも図示略)。排気用可変バルブタイミング機構20のハウジングは、クランク軸7と同期して回転するカムプーリと一体に回転可能に連結されており、クランク軸7と連動して回転する。排気用可変バルブタイミング機構20のベーン体は、締結ボルトによって、排気弁51を開閉するカム軸53と一体に回転可能に連結されている。
【0065】
排気用可変バルブタイミング機構20のハウジングの内部には、ベーン体の外周面に設けられた複数のベーンとハウジングの内周面とによって、複数の進角作動室203及び遅角作動室204が区画されている。
【0066】
進角作動室203及び遅角作動室204は、
図4に示すように、また、前記のように、それぞれ進角側油路201及び遅角側油路202を介して、排気側第1方向切替バルブ84に接続されている。この排気側第1方向切替バルブ84は、可変容量型オイルポンプ16に接続されている。カム軸53及び排気用可変バルブタイミング機構20のベーン体には、これら進角側油路201及び遅角側油路202の一部が夫々形成されている。
【0067】
図4に示すように、排気用可変バルブタイミング機構20には、この排気用可変バルブタイミング機構20の動作をロックするロック機構が設けられている。ロック機構は、カム軸53のクランク軸7に対する位相角を特定の位相で固定するためのロックピン205を有している。
【0068】
進角側通路201を通して供給されたオイルにより、各ベーンがカムプーリ(クランク軸7)に対して進角位置に回動される。遅角側通路202を通して供給されたオイルにより、各ベーンがカムプーリに対して遅角位置に回動される。そして、付勢ばねによって付勢されたロックピン205が、ベーン体のうちベーンが形成されていない部分に形成された嵌合凹部に嵌合してロック状態になる。これにより、ベーン体がハウジングに固定されて、カム軸53のクランク軸7に対する位相が固定される。
【0069】
排気側第1方向切替バルブ84は、排気用可変バルブタイミング機構20の進角側油路201および進角作動室203に供給されるオイルの量と、排気用可変バルブタイミング機構20の遅角側油路202および遅角作動室204に供給されるオイルの量とを変更可能である。従って、排気側第1方向切替バルブ84によって、排気弁51の開閉時期が変更される。
【0070】
具体的には、排気側第1方向切替バルブ84によって進角作動室203に遅角作動室204よりも多くのオイルが供給されると(進角作動室203に供給される油圧が遅角作動室204に供給される油圧よりも高くされると)、カム軸53がその回転方向に回動して、排気弁51の開閉時期が早い(進角側の)時期)に変更される。
【0071】
一方、排気側第1方向切替バルブ84によって、遅角作動室204に進角作動室203よりも多くのオイルが供給されると(遅角作動室204に供給される油圧が進角作動室203に供給される油圧よりも高くされると)、カム軸53がその回転方向とは逆向きに回動して、排気バルブ51の開時期が遅い(遅角側の)時期に変更される。
【0072】
(制御系統)
エンジン1は、ECU(Electric Control Unit)110によって制御されている。
【0073】
このECU110は、全筒運転の実行条件が成立したとき、第1〜第4気筒による全筒運転を実行し、減筒運転の実行条件が成立したとき、休止気筒である第1,第4気筒による運転を停止すると共に第2,第3気筒による運転のみを行う減筒運転を実行する。
【0074】
ECU110は、CPU(Central Processing Unit)と、ROMと、RAMと、イン側インタフェースと、アウト側インタフェース等によって構成されている。
【0075】
図5に示すように、ECU110は、油圧センサ90と、車速センサ91と、アクセル開度センサ92と、ギヤ段センサ93と、インマニ圧センサ94と、吸気量センサ95と、吸気温センサ96と、吸気圧センサ97と、クランク角センサ98と、カム角センサ99と、油温センサ100等に電気的に接続されている。
【0076】
車速センサ91は、車両の走行速度を検出する。アクセル開度センサ92は、乗員によるアクセルペダル(図示略)の踏込量を検出する。ギヤ段センサ93は、車両に搭載された変速機において現在設定されている変速ギヤ段を検出する。インマニ圧センサ94は、インテークマニホールド内の圧力(インテークマニホールド圧、インマニ圧)を検出する。吸気量センサ95は、各燃焼室11に吸入される吸気量を検出する。吸気温センサ96は、各燃焼室に吸入される吸気の温度を検出する。吸気圧センサ97は、各燃焼室に吸入される吸気の圧力を検出する。クランク角センサ98は、クランク軸7の回転角度を検出し、この回転角度に基づきエンジン回転速度を検出する。カム角センサ99は、カム軸43、53の回転角度を検出し、この回転角度に基づきカム軸43、53の回転位相や各可変バルブタイミング機構19、20の位相角を検出する。油温センサ100は、給油路70内を流れる油温を検出する。
【0077】
これらのセンサ90〜100による検出値は、ECU110に出力され、ECU110によってエンジン1の作動が制御される。
【0078】
このECU110は、全筒運転と減筒運転の一方の運転から他方の運転への切替時、エンジン1から出力されるトータルトルク(要求トルク)が略一定になるように、センサ90〜100の検出値に基づき、インジェクタ12と、点火プラグ13と、HLA14と、可変バルブタイミング機構19,20と、スロットルバルブ25と、排気シャッタ弁35を時系列的に協調制御する。
【0079】
図5に示すように、ECU110は、運転条件判定部111と、可変バルブタイミング機構制御部112と、点火時期制御部113と、燃料制御部114と、スロットルバルブ制御部115と、弁停止機構制御部116と、排気シャッタ弁制御部117等を備えている。
【0080】
(運転条件判定部)
まず、運転条件判定部111について説明する。
【0081】
運転条件判定部111は、運転状態に基づき、全筒運転と減筒運転の何れの運転を実行するかについて判定する。
【0082】
図6に示すように、運転条件判定部111は、全筒運転を実施する全筒運転領域A1と減筒運転を実施する減筒運転領域A2とが設定されたマップMを予め記憶している。運転条件判定部111は、このマップMとエンジンの運転状態とに基づき、エンジンがどの領域A1、A2で運転されているかを判定する。そして、運転条件判定部111は、全筒運転領域A1でエンジンが運転されているときは全筒運転の実行条件が成立した(減筒運転から全筒運転への切替実行条件が成立した)と判定する。以下、この全筒運転の実行条件を、全筒運転実行条件という。また、運転条件判定部111は、減筒運転領域A2でエンジンが運転されているときは減筒運転の実行条件が成立した(全筒運転から減筒運転への切替実行条件が成立した)と判定する。以下、この減筒運転の実行条件を、減筒運転実行条件という。
【0083】
減筒運転領域A2は、低回転から高回転に亙って領域範囲が設定されている。減筒運転領域A1のうち各エンジン回転数でエンジントルクが最も高い点を結んだ上限トルクラインは、回転数が高いほどエンジントルクが高くなるラインに設定されている。この減筒運転領域A2の範囲は、損域分岐トルクや吸気脈動制限等に基づき設定されている。
【0084】
マップMの横軸はエンジン回転数、縦軸は目標図示トルクである。
【0085】
目標図示トルクは、車両の目標加速度に基づき演算されるエンジントルクの基本値である基本トルクである。この基本トルクに基づきエンジン1の出力や変速機の変速段制御は実行される。具体的には、予め設定されたマップ(図示略)を用いてアクセルペダルの踏込量と車速とギヤ段から車両の目標加速度が設定され、この目標加速度に基づきホイールトルクが演算される。
【0086】
このホイールトルクと、変速機の出力トルク及び入力トルクとに基づいて、エンジン1に必要な軸トルクが求められる。その後、このエンジン軸トルクに補機ロス及びメカロス等の補正用トルクが加算されて、最終的に目標図示トルクが求められる。
【0087】
ECU110は、運転条件判定部111によって減筒運転実行条件が成立したと判定された場合でも、直ちに第1,第4気筒を停止する減筒運転の実行を行わず、まず、準備行程を実施し、準備行程の終了後に第1,第4気筒を停止して減筒運転を開始する。
【0088】
一方、ECU110は、運転条件判定部111によって全筒運転実行条件が成立したと判定された場合は、直ちに第1,第4気筒を稼働する。
【0089】
(準備行程の概要)
減筒運転では、第1,第4気筒の吸気弁41および排気弁51が夫々閉弁保持される。また、減筒運転では、可変バルブタイミング機構19,20の位相つまり吸気弁41および排気弁51の位相が全筒運転時よりも遅角側の位相に設定される。また、スロットルバルブ25の開度が、全筒運転時よりも増大(開き側に)される。減筒運転において、吸気弁41および排気弁51の各位相を遅角するのは、燃焼ガスを高膨張化してトルクを増大させるため、および、ポンピングロスを低減するためである。
【0090】
これに対応して、準備行程では、第1,第4気筒の吸気弁41および排気弁51の閉弁が維持されるように、油路70の油圧が、切替用目標油圧まで昇圧される。切替用目標油圧は、第1、第4気筒のHLA14(弁停止機構14a)に供給される油圧が、このHLA14(弁停止機構14a)が第1,第4気筒の吸気弁41および排気弁51を閉弁保持することが可能な油圧(保持油圧)よりも高くなる油圧である。
【0091】
また、準備行程では、吸気弁41および排気弁51の位相が遅角側の位相に変更される。
【0092】
また、準備行程では、スロットルバルブ25の開度が増大されて、各燃焼室11に導入される吸気の量を増大する(各気筒の空気量を増大させる)空気量増大制御が実施される。
【0093】
また、準備行程では、空気量増大制御の実施中、点火時期が後述する基本点火時期よりも遅角される。
【0094】
ここで、排気用可変バルブタイミング機構20が排気弁51の位相を遅角することによって消費される油圧は大きい。そのため、排気弁51の遅角操作をすると、HLA14に供給される油圧の低下或いはオーバーシュートやアンダーシュート等の油圧変動が発生するおそれがある。そして、これに伴ってHLA14によって休止気筒の排気弁51が閉弁保持されるまでの時間が長くなるおそれがある。そこで、本実施形態では、この時間が短くなるように、排気用可変バルブタイミング機構20による排気弁51の位相の遅角操作の終了後に、油路70の油圧ひいてはHLA14に供給される油圧の上昇操作が行われる。
【0095】
また、本実施形態では、燃費悪化を抑制するべく点火時期の遅角制御の期間が短く抑えられるように、排気用可変バルブタイミング機構20による排気弁51の位相の遅角操作、および、油路70の油圧ひいては第1、第4気筒のHLA14に供給される油圧の上昇操作の終了後に、空気量増大制御および点火時期の遅角制御が行われる。本実施形態では、後述するように、上記油圧の上昇操作の後、さらに、排気用可変バルブタイミング機構20によって排気弁51の位相が補正される補正制御が実施される場合がある。この場合は、この補正制御の終了後に、空気量増大制御および点火時期の遅角制御が行われる。
【0096】
これより、ECU110は、運転条件判定部111が減筒運転実行条件の成立を判定すると、まず、排気用可変バルブタイミング機構20による排気弁51の位相の遅角操作を開始する。
【0097】
(可変バルブタイミング機構制御部)
可変バルブタイミング機構制御部112は、各気筒の空気充填効率(Ce)に基づいて吸気弁41と排気弁51の位相の目標値である目標位相を設定する。可変バルブタイミング機構制御部112は、この目標位相が実現されるように、電動モータ191及び排気側第1方向切替バルブ84に指令を出す。
【0098】
本実施形態では、可変バルブタイミング機構制御部112は、空気充填効率と目標位相との関係が設定された制御マップ(図示略)を予め記憶している。可変バルブタイミング機構制御部112は、このマップから、現在の空気充填効率に対応する目標位相を抽出する。
【0099】
現在の空気充填効率は次のようにして算出される。
【0100】
図9に示すように、インマニ圧センサ94の検出値と、吸気量センサ95により検出された吸入量と、吸気温センサ96により検出された吸気温度とに基づいて、インテークマニホールド圧が演算される。なお、これに代えて、または、所定の運転条件では、インマニ圧センサ94の検出値そのものをインテークマニホールド圧として用いてもよい。
【0101】
また、エンジン回転数と、吸気弁41と排気弁51の各位相と、インテークマニホールド圧と、排気圧力とに基づいてインテークマニホールド内の体積効率ηvpが演算される。インテークマニホールド圧と体積効率ηvpとにより、各気筒の空気充填効率が算出される。
【0102】
排気圧力は、排気通路130内の圧力である。排気圧力は、排気通路130を流通する排気ガスの量(吸入空気量、エンジン回転数等により推定される)と排気シャッタ弁35の開度とに基づいて推定される。
【0103】
前記のように、吸気弁41および排気弁51の各位相は、減筒運転時の方が全筒運転時よりも遅角側の位相に設定される。これに伴い、準備行程において、可変バルブタイミング機構制御部112は、全筒運転用の位相からこれよりも遅角側の減筒運転用の目標位相(以下、適宜、減筒運転用目標位相という)に向けて、吸気弁41および排気弁51の各位相を徐々に遅角させる(
図7参照)。
【0104】
準備行程では、前記のように、排気用可変バルブタイミング機構20によって吸気弁41および排気弁51の位相がまず変更され、その後、切替用目標油圧に向けて油路70の油圧が昇圧される。そのため、この油路70の油圧の昇圧途中に、エンジンの運転状態が変化することがある。そこで、本実施形態では、準備行程において、油路70の油圧を切替用目標油圧に昇圧した後で且つ空気量増大制御を実施する前に、排気用可変バルブタイミング機構20によって排気弁51の位相を補正して現在の吸気充填効率に対応した目標位相である減筒運転用補正目標位相(新たな減筒運転における目標位相、最終的な目標位相)にする補正制御を行う。この補正制御の実施に伴う排気弁51の位相の変化量は、先に行われる位相の変化量(減筒運転用目標位相に向けた位相の変更量)に比べて少量であるため、油路70の油圧変動は小さい。
【0105】
尚、切替用目標油圧に向けて油路70の油圧が昇圧されている間に、エンジンの運転状態が変化しなかった場合には、前記の補正制御は省略される。
【0106】
一方、吸気用可変バルブタイミング機構20は、電動モータ191により駆動される。そのため、吸気用可変バルブタイミング機構20による吸気弁41の位相の変化と、油路70の油圧の昇圧操作とは、互いに影響を与えない。そこで、本実施形態では、準備行程において、油路70の油圧の昇圧操作の間であっても、吸気用可変バルブタイミング機構20によって吸気弁41の位相が目標位相となるように変更される。
【0107】
ここで、
図8に示すように、吸排気弁41,51の各位相を進角側に移行する場合において、この移行中の吸排気弁41,51のオーバーラップ量を確保するため、排気弁51の進角作動速度を吸気弁41の進角作動速度よりも遅くしても良い。この場合、吸排気弁41,51の作動速度を油圧及び油温に基づき調整する。
【0108】
一方、全筒運転実行条件が成立すると、可変バルブタイミング機構制御部112は、減筒運転用の目標位相からこれよりも進角側の全筒運転用の目標位相に向けて、吸気弁41および排気弁51の各位相を徐々に進角側にする(
図8参照)。この進角制御は、全筒運転実行条件が成立したほぼ直後から開始される。
【0109】
(スロットルバルブ制御部)
スロットルバルブ制御部115は、目標図示トルクが実現されるように、アクチュエータ26を制御してスロットルバルブ25の開度を変更する。
【0110】
減筒運転時は、稼動する気筒数が減少する。そのため、減筒運転時は、稼動している気筒(第2,第3気筒)の1気筒当りの出力が全筒運転時における1気筒当りの出力よりも大きくなるように、稼働している気筒の空気充填効率を全筒運転時よりも大きくする必要がある。従って、スロットルバルブ制御部115は、減筒運転時、スロットルバルブ25の開度を全筒運転時よりも開き側にする(同じようなエンジン回転数、エンジン負荷において)。ただし、スロットルバルブ25の開度変更を行っても、即座には気筒の空気充填効率は増大しない。そこで、前記のように、準備行程において、スロットルバルブ制御部115は、スロットルバルブ25の開度を増大させて、各燃焼室11に導入される吸気の量を増大させる(各気筒の空気量を増大させる)空気量増大制御を実施する。具体的には、このとき、スロットルバルブ25の開度は徐々に増大される。より詳細には、準備行程において、スロットルバルブ制御部115は、仮に減筒運転を実施したとしたときに目標図示トルクが実現されるスロットルバルブ25の開度、つまり、減筒運転用のスロットルバルブ25の開度の目標値を設定する。そして、スロットルバルブ制御部115は、準備行程において、この減筒運転用の目標値に向けて、スロットルバルブ25の開度を徐々に増大させる。
【0111】
本実施形態では、前記のように、準備行程において、排気用可変バルブタイミング機構20による補正制御の終了後(補正制御が実施されない場合は、油圧の上昇操作の終了後)に、空気量増大制御が開始されてスロットルバルブ25の開度の増加操作が開始される。
【0112】
一方、減筒運転から全筒運転に移行する時は、各気筒の空気充填効率を減筒運転時の値よりも低減する必要がある。そこで、スロットルバルブ制御部115は、全筒運転実行条件が成立すると、スロットルバルブ25の開度を低減させて、各燃焼室11に導入される吸気の量を減少させる(各気筒の空気量を減少させる)空気量減少制御を実施する。より詳細には、スロットルバルブ制御部115は、全筒運転を実施したとしたときに目標図示トルクが実現されるスロットルバルブ25の開度、つまり、全筒運転用のスロットルバルブ25の開度の目標値を設定する。そして、スロットルバルブ制御部115は、この全筒運転用の目標値に向けて、スロットルバルブ25の開度を徐々に低減する。
【0113】
前記のように、スロットルバルブ25の開度変更を行っても、即座には各気筒の空気充填効率は低減しないため、空気量減少制御を開始してもエンジントルクが要求値よりも大きくなるおそれがある。これに対して、本実施形態では、全筒運転が成立すると、空気量減少制御を実施するとともに、点火時期を後述する基本点火時期よりも遅角させる制御を実施する。なお、空気量減少制御は、可変バルブタイミング機構19,20による吸気弁41および排気弁51の位相を進角させる制御の開始と同時に開始される。
【0114】
(点火時期制御部)
次に、点火時期制御部113について説明する。
【0115】
点火時期制御部113は、車両の運転状態に応じて点火時期を決定し、点火プラグ13に指令を出力する。点火時期制御部113は、エンジン回転数と、エンジン回転数およびアクセル開度等から算出されるエンジン負荷と、点火時期との関係を表すマップ(図示略)を予め記憶している。点火時期制御部113は、このマップから点火時期を抽出し、抽出された点火時期を吸気圧センサ97により検出された吸気圧力に基づいて補正して基本点火時期を設定する。
【0116】
点火時期のマップは、全筒運転用と減筒運転用の2種類用意されている。全筒運転時は、点火時期制御部113は、全筒運転用のマップからエンジン回転数とエンジン負荷とに対応する点火時期を抽出し、抽出した点火時期を吸気圧力によって補正して基本点火時期を設定する。減筒運転時は、点火時期制御部113は、減筒運転用のマップからエンジン回転数とエンジン負荷とに対応する点火時期を抽出し、抽出した点火時期を吸気圧力によって補正して基本点火時期を設定する。
【0117】
基本点火時期は、各気筒の空気充填効率が目標の空気充填効率に制御されている状態で要求されるエンジントルクつまりエンジン負荷を実現できる点火時期に設定される。そのため、通常の全筒運転時であって各気筒の空気充填効率が目標の空気充填効率に制御されているときは、点火時期は全筒運転用の基本点火時期とされる。また、通常の減筒運転時であって各気筒の空気充填効率が目標の空気充填効率に制御されているときは、点火時期は減筒運転用の基本点火時期とされる。
【0118】
ただし、減筒運転への移行時は、前記の空気量増大制御が実施される。そのため、空気量増大制御の実施中は、各気筒の空気充填効率が、全筒運転時の目標の空気充填効率よりも大きくなる。従って、空気量増大制御の実施中に、仮に点火時期が全筒運転用の基本点火時期にされると、エンジントルクが要求値よりも大きくなる。そこで、空気量増大制御の実施中は、点火時期が、基本点火時期(全筒運転用の基本点火時期)よりも遅角される。
【0119】
具体的には、点火時期制御部113は、全筒運転用のマップから基本点火時期を抽出する。点火時期制御部113は、各気筒の空気充填効率の、全筒運転時の目標の空気充填効率からの増加量を算出する。そして、点火時期制御部113は、この増加量に基づいて点火時期の遅角量を算出し、基本点火時期から算出した遅角量だけ遅角させた時期を、点火時期に設定する。
【0120】
このようにして、準備行程では、空気量増大制御の実施に伴って、点火時期が、全筒運転用の基本点火時期よりも遅角側の時期にされるとともに、空気量増大制御の開始後、点火時期は徐々に遅角されていく。
【0121】
この点火時期の遅角制御は、減筒運転が開始すると停止される。減筒運転が開始すると、点火時期は、減筒運転用の基本点火時期とされる。
【0122】
一方、全筒運転実行条件が成立したときは、前記のように、点火時期が基本点火時期よりも遅角される。つまり、減筒運転時の各気筒の空気充填効率は、全筒運転時の値よりも大きい。そして、全筒運転実行条件が成立すると、前記のように空気量減少制御が実施されるが、全筒運転実行条件が成立してからしばらくの間は、各気筒の空気充填効率は全筒運転用の目標値よりも大きい。そのため、各気筒の空気充填効率が全筒運転用の目標値よりも大きい状態で仮に点火時期を全筒運転用の基本点火時期にすると、エンジントルクが要求値よりも大きくなる。これより、全筒運転実行条件が成立すると、空気量減少制御が実施されるとともに、点火時期が基本点火時期よりも遅角される。
【0123】
具体的には、点火時期制御部113は、全筒運転用のマップから基本点火時期を抽出する。点火時期制御部113は、各気筒の空気充填効率の、全筒運転時の目標の空気充填効率からの増加量を算出する。そして、点火時期制御部113は、基本的に、この増加量に基づいて点火時期の遅角量を算出し、算出した遅角量だけ基本点火時期から遅角させた時期を点火時期に設定する。
【0124】
このように、本実施形態では、全筒運転実行条件が成立すると、点火時期が、全筒運転用の基本点火時期よりも遅角側の時期にされるとともに、点火時期は、基本的に、全筒運転用の基本点火時期に向けて徐々に進角されていく。稼働気筒の点火時期は、この基本的な手順に沿って設定される。
【0125】
ただし、減筒運転中、休止気筒の燃焼室11に閉じ込められた空気は、シリンダボア9とピストン6との隙間等から抜けていく。そのため、休止気筒内の圧力は徐々に低くなっていく。そして、全筒運転が再開される時(減筒運転から全筒運転への切替時である全筒運転切替時)、休止気筒では吸気弁41に先行して排気弁51が開弁される。そのため、全筒運転切替時において、休止気筒の排気弁51が開弁すると、休止気筒内の圧力と排気ポート31内の圧力との圧力差によって、稼動気筒から排出された排気ガスが休止気筒内に導入される。
【0126】
従って、全筒運転切替時において、休止気筒の最初の点火時期を、前記のように、各気筒の空気充填効率の目標値からの増加量に基づいて設定したのでは、点火時期が過度に遅角側となって失火等が生じるおそれがある。
【0127】
そこで、点火時期制御部113は、全筒運転切替時の休止気筒の点火時期であって、全筒運転が再開されるときの休止気筒の1回目の点火の点火時期の目標値(以下、復帰点火時期という)を、全筒運転切替時の休止気筒内の内部EGRガス量(内部EGRガスの量、既燃ガスの量)に応じて設定する。
【0128】
具体的には、点火時期制御部113は、基本点火時期からの遅角量を、全筒運転切替時の休止気筒内の内部EGRガス量に応じて設定し、基本点火時期からこの遅角量だけ遅角させた時期を、復帰点火時期にする。
【0129】
ここで、既燃ガスが燃焼室内に存在すると、燃料と空気の混合気は燃焼しにくくなる、あるいは、燃焼が緩慢となってエンジントルクが小さく抑えられる。そのため、同じエンジントルクを得ようとした場合、既燃ガスが燃焼室にあるときは、ないときよりも点火時期を進角側にする必要がある。従って、内部EGRガス量に応じて設定される前記の遅角量は、空気充填効率のみに基づいて設定される遅角量よりも少なくなる。
【0130】
本実施形態では、2つの休止気筒(第1気筒、第4気筒)のそれぞれについて、その復帰点火時期を設定する。そして、各休止気筒のそれぞれについて、稼働が再開されたときの最初の点火時期を復帰点火時期にする。なお、各休止気筒の2回目以降の点火時期は、前記のように、各気筒の空気充填効率に基づいて設定される。
【0131】
休止気筒の排気弁51が開弁したときの休止気筒内の圧力と排気ポート31内の圧力との圧力差は、休止気筒内の圧力に影響を及ぼす減筒運転の継続時間や、排気ポート31内の圧力に影響を及ぼすエンジン回転数や、全筒運転復帰時の吸排気弁41,51の位相等の影響を受ける。
【0132】
全筒運転復帰時の休止気筒内の内部EGRガス量の推定手順について次に説明する。
【0133】
点火時期制御部113は、
図9に示すように、全筒運転実行条件の成立時のエンジン回転数とインテークマニホールド圧と稼働気筒の吸排気弁41,51の各位相等を用いて、全筒運転実行条件の成立時の稼働気筒の空気充填効率を算出する。そして、点火時期制御部113は、
図12に示すように、この稼働気筒の空気充填効率と、全筒運転実行条件の成立時に稼働気筒に噴射されている燃料の量である燃料噴射量とに基づいて、全筒運転切替時に稼働気筒から排気通路130に排出された排気ガスの量を演算する。
【0134】
また、点火時期制御部113は、休止気筒の吸排気弁41,51の閉弁保持が開始する時(減筒運転直前)における休止気筒の空気充填効率を、
図9に示した手順で演算する。
【0135】
また、点火時期制御部113は、この休止気筒の空気充填効率と、減筒運転の継続時間とに基づいて、全筒運転切替時の休止気筒内の圧力Pmaxを演算する。具体的には、横軸を減筒運転の継続時間、休止気筒内の圧力Pmaxとした
図13に示すように、減筒運転の継続時間が長いほど休止気筒内の圧力Pmaxは小さい値に算出される。
【0136】
点火時期制御部113は、算出した全筒運転切替時の排気ガスの量と、全筒運転切替時の休止気筒内の圧力Pmaxと、全筒運転切替時のインテークマニホールド圧と、全筒運転切替時の休止気筒の吸気弁41と排気弁51の各位相とに基づいて、全筒運転切替時の休止気筒の内部EGRガス量を算出する。詳細には、全筒運転切替時の休止気筒の吸気弁41と排気弁51の各位相から求めた、休止気筒の吸気弁41と排気弁51のオーバーラップ期間(吸気弁41の開弁期間と排気弁51の開弁期間とのオーバーラップ期間)と、前記の排気ガスの量と、前記の圧力Pmaxと、前記のインテークマニホールド圧とに基づいて、前記内部EGRガス量を算出する。
【0137】
そして、点火時期制御部113は、算出した全筒運転切替時の休止気筒の内部EGRガス量に基づき復帰点火時期を設定する。
【0138】
(燃料制御部)
燃料制御部114は、運転状態に応じてインジェクタ12から噴射される燃料の量である燃料噴射量及びインジェクタ12による燃料噴射のタイミングを決定し、インジェクタ12に噴射実行指令を出力する。燃料制御部114は、目標図示トルクに対応する予め設定された燃料噴射マップ(図示略)を記憶しており、このマップに基づき燃料噴射量及びタイミングを設定する。
【0139】
また、燃料制御部114は、全筒運転か減筒運転かに応じて休止気筒(第1,第4気筒)のインジェクタ12の制御を切り替える。つまり、全筒運転時、燃料制御部114は、第1〜第4気筒のインジェクタ12を駆動して燃料噴射を実行する。一方、燃料制御部114は、減筒運転時、休止気筒(第1,第4気筒)のインジェクタ12による燃料噴射を禁止する。
【0140】
(弁停止機構制御部)
次に、弁停止機構制御部116について説明する。
【0141】
弁停止機構制御部116は、全筒運転か減筒運転かに応じて、排気側第2方向切替バルブ85、吸気側第2方向切替バルブ86およびリニアソレノイドバルブ89の制御を切り替える。
【0142】
弁停止機構制御部116は、全筒運転時、排気側第2方向切替バルブ85および吸気側第2方向切替バルブ86をオフ状態にする。これにより、第1〜第4気筒の吸排気弁41,51の開閉動作は可能となる。一方、弁停止機構制御部116は、減筒運転時、リニアソレノイドバルブ89を駆動して前記のように油路70の油圧を切替用目標油圧まで上昇させるとともに、排気側第2方向切替バルブ85および吸気側第2方向切替バルブ86をオン状態にして、休止気筒のHLA14に供給される油圧を保持油圧に保持する。これにより休止気筒の吸排気弁41,51は閉弁状態に維持される。
【0143】
弁停止機構制御部116は、減筒運転切替時、各気筒の空気充填効率が減筒運転時における目標値に到達した後、排気側第2方向切替バルブ85をオン状態としてHLA14に休止気筒の排気弁51を閉弁保持させる。そして、弁停止機構制御部116は、排気弁51の閉弁保持の後、吸気側第2方向切替バルブ86をオン状態にしてHLA14に吸気弁41を閉弁保持させる。
【0144】
また、弁停止機構制御部116は、全筒運転切替時、排気側第2方向切替バルブ85をオフ状態にして休止気筒の排気弁51を開弁可能とする。そして、弁停止機構制御部116は、休止気筒の排気弁51の開弁後、吸気側第2方向切替バルブ86をオフ状態にして休止気筒の吸気弁41を開弁可能とする。
【0145】
これにより、全筒運転切替時、休止気筒の吸気弁41と排気弁51のうち排気弁51が吸気弁41よりも先に開弁される。
【0146】
(排気シャッタ弁制御部)
次に、排気シャッタ弁制御部117について説明する。
【0147】
排気シャッタ弁制御部117は、減筒運転時、排気シャッタ弁35を閉弁側(排気の流量が減少する側)に制御する。排気シャッタ弁35が閉じ側にされると、前記のように、排気管34を流れる排気ガスの流量は減少する。一方、排気シャッタ弁制御部117は、全筒運転時、排気通路130のうち排気シャッタ弁35の上流側の圧力が設定圧力(例えば、排気弁51のシール圧)以下になるように排気シャッタ弁35を制御する。
【0148】
減筒運転時に排気シャッタ弁35を閉弁側に制御するのは、騒音を低減するためである。具体的には、減筒運転時と全筒運転時とでは、稼働気筒の数が異なることで、排気通路130内を通過する排気ガスの脈動の周波数が異なる。従って、減筒運転時には、排気通路内で生じる振動が大きくなって騒音が増大するおそれがある。これに対して、前記のように、減筒運転時に排気シャッタ弁35を閉弁側にして排気通路を流れる排気ガスの量を低減すれば、排気通路内での排気ガスの振動ひいては騒音を低減できる。
【0149】
次に、
図10のフローチャート及び
図11のタイムチャートに基づいて、ECU110によって実施される制御処理内容について説明する。
【0150】
ここでは、減筒運転用の基本点火時期と全筒運転用の基本点火時期とが同じ場合について説明する。
【0151】
尚、Si(i=1,2…)は、各処理のためのステップを示し、t1〜t12は、タイムチャートにおける時点を示している。
【0152】
図10のフローチャートに示すように、まず、ECU110は、ステップS1にて、各センサ90〜100の出力値、各マップ及び各種情報を読み込み、ステップS2に移行する。
【0153】
ステップS2では、減筒運転実行条件の成立が判定されたか否か判定する。前記のように、本実施形態では、マップMの減筒運転領域A2でエンジンが運転されていると、減筒運転実行条件が成立したと判定される。
【0154】
ステップS2の判定の結果、減筒運転実行条件の成立が判定された場合(t1)、減筒運転の準備行程を実行する。まず、ステップS3において、吸排気弁41,51の遅角操作が行われる。具体的には、吸排気弁41,51が徐々に遅角するように可変バルブタイミング機構19、20が制御される。次に、ステップS4に移行する。
【0155】
ステップS4では、吸排気弁41、51の位相が減筒運転用目標位相に到達したか否かを判定する。
【0156】
ステップS4の判定の結果、排気弁51の位相が減筒運転用目標位相に到達した場合(t2)、ステップS5に進み、リニアソレノイドバルブ89を駆動して油路70の油圧を昇圧する。次にステップS6に移行する。
【0157】
ここで、排気弁51の位相が減筒運転用目標位相に到達した時点t2で、排気用可変バルブタイミング機構20への油圧供給は停止される。そのため、排気弁51の位相変更に伴う油圧変動が抑制される。
【0158】
一方、ステップS4の判定の結果、排気弁51の位相が減筒運転用目標位相に到達していない場合、ステップS3に戻って排気弁51の位相を遅角する操作を継続する。
【0159】
ステップS6では、油路70の油圧が切替用目標油圧を超えたか否か判定する。
【0160】
ステップS6の判定の結果、油路70の油圧が切替用目標油圧を超えた場合(t3)、ステップS7に進み、油路70の油圧を昇圧している期間中にエンジンの運転状態に変化があったか否か判定する。
【0161】
一方、ステップS6の判定の結果、油路70の油圧が切替用目標油圧を超えていない場合、S5に戻ってリニアソレノイドバルブ89のオン状態を継続し、油路70の油圧の昇圧を継続する。
【0162】
ステップS7の判定の結果、油路70の油圧の昇圧期間中にエンジンの運転状態に変化があった場合は、減筒運転用目標位相が現在のエンジンの運転状態に適合していない。そこで、この場合は、ステップS8に進み、排気側第1方向切替バルブ84を更に作動させて排気用可変バルブタイミング機構20による排気弁51の位相の補正制御を実行する。ステップS8の後は、S9に移行する。
【0163】
ステップS9では、排気弁51の位相が減筒運転用補正目標位相に到達したか否か判定する。
【0164】
ステップS9の判定の結果、排気弁51の位相が減筒運転用補正目標位相に到達した場合(t4)、ステップS10に移行する。
【0165】
一方、ステップS9の判定の結果、排気弁51の位相が減筒運転用補正目標位相に到達していない場合、ステップS8に戻って排気弁51の位相の補正制御を継続する。
【0166】
ステップS7の判定の結果、油路70の油圧の昇圧期間中にエンジンの運転状態に変化がない場合、減筒運転用目標位相が現在の運転状態に適合している。そこで、この場合は、ステップS10に移行する。
【0167】
ステップS10では、スロットルバルブ25の開度を増加するスロットルバルブ増加操作(空気量増加制御)と点火時期を遅角する点火時期遅角制御の実行を開始する(t4)。その後、ステップS11に移行する。
【0168】
ステップS11では、各気筒の空気充填効率が減筒運転用の空気充填効率の目標値である目標空気充填効率を超えたか否か判定する。
【0169】
ステップS11の判定の結果、空気充填効率が減筒運転用の目標空気充填効率を超えた場合(t5)、吸気側第2方向切替バルブ86及び排気側第2方向切替バルブ85をオンにして休止気筒(第1、第4気筒)の吸排気弁41,51を閉弁保持状態にし(S12)、その後、ステップS13に移行する。
【0170】
前記のように、排気弁51の閉弁保持操作は、吸気弁41の閉弁保持操作のよりも若干早く開始される。
【0171】
ステップS11の判定の結果、空気充填効率が減筒運転用の目標空気充填効率を超えていない場合、ステップS10に戻ってスロットルバルブ増加操作を継続する。
【0172】
ステップS13では、吸排気弁41,51の閉弁保持の完了後、第1、第4気筒の燃料噴射を禁止すると共に、点火時期遅角制御を禁止して点火時期を減筒運転用の基本点火時期にする。ここでは、前記のように、減筒運転用と全筒運転用とで基本点火時期が同一とされており、点火時期は元に戻される(t6)。その後、S14に移行する。
【0173】
この時点で、HLA14に供給される油圧を切替用目標油圧から閉弁保持油圧に調整する。減筒運転は、油圧の追従性によりt7から開始される。それ故、t5〜t7間は減筒運転への移行期間である。
【0174】
ステップS14では、排気シャッタ弁35を閉弁側に制御して、排気ガスの流量を減少させる。その後、フラグを1に変更し(S15)、リターンする。このフラグは、全筒運転時に0となり、減筒運転時に1となる。
【0175】
マップMの減筒運転領域A2でエンジンが運転されていないときは、ステップS2において減筒運転実行条件の成立が判定されない。この場合は、ステップS16に移行し、フラグが1か否か判定する。
【0176】
ステップS16の判定の結果、フラグが1ではない場合、前の運転状態が全筒運転であるため、全筒運転を継続実行して(S24)、リターンする。
【0177】
一方、ステップS16の判定の結果、フラグが1の場合、減筒運転中に全筒運転実行条件が成立したことになる(t8)。ステップS16の判定の結果、フラグが1の場合はステップS17に移行する。
【0178】
ステップS17では、第1、第4気筒の燃料噴射禁止を解除すると共に点火時期遅角制御禁止を解除し、ステップS18に移行する。
【0179】
ステップS18では、排気シャッタ弁制御を終了し、ステップS19に移行する。ステップS19では、休止気筒の吸排気弁41,51の閉弁操作を解除する。休止気筒の排気弁51の開弁操作は、休止気筒の吸気弁41の開弁操作よりも早く開始される。その後、ステップS20にて、リニアソレノイドバルブ89をオフ状態に操作する。ステップS20の後はステップS21に移行する。
【0180】
ステップS21では、HLA14に供給される油圧が閉弁保持油圧から全筒運転時の目標油圧まで降下したか否か判定する。
【0181】
ステップS21の判定の結果、HLA14に供給される油圧が閉弁保持油圧から全筒運転時の目標油圧まで降下していない場合、S20にリターンしてリニアソレノイドバルブ89のオフ状態を継続し、降圧を継続する。
【0182】
一方、ステップS21の判定の結果、HLA14に供給される油圧が閉弁保持油圧から全筒運転時の目標油圧まで降下した場合(t9)、ステップS22に移行する。HLA14に供給される油圧が閉弁保持油圧から全筒運転時の目標油圧まで降下すると、第1、第4気筒の吸排気弁41,51は開閉可能とされて、全筒運転が可能となる。それ故、t9にてはじめて全筒運転が可能となる。
【0183】
ステップS22では、スロットルバルブ25の開度を低減するスロットルバルブ低減操作(空気量減少制御)の実行が開始される。この操作によって、
図11に示すように、HLA14に供給される油圧が全筒運転時の目標油圧まで降下した時刻t9後、各気筒の空気充填効率は全筒運転用の目標値に向けて徐々に減少していく。なお、休止気筒(第1、第4気筒)の空気充填効率は、吸排気弁41、51が開弁されることで一旦増大する。
【0184】
また、ステップS22では、吸排気弁41、51の位相の進角操作が行われる。具体的には、吸排気弁41、51の位相が減筒運転用の目標位相から全筒運転用の目標位相に向けて徐々に進角するように可変バルブタイミング機構19、20が制御される。
【0185】
また、ステップS22では、休止気筒(第1、第4気筒)の燃料噴射が開始されるとともに休止気筒(第1、第4気筒)の点火が開始される。
【0186】
図11に示すように、時刻t9にて全筒運転が再開されるとき(つまり、全筒運転切替時)、休止気筒(第1、第4気筒)の最初の点火時期は、前記のように復帰点火時期とされる。復帰点火時期は、破線で示した全筒運転用の基本点火時期よりも遅角側の時期である。ただし、この復帰点火時期の基本点火時期に対する遅角量は、前記のように内部EGRガス量に応じて設定されることで、少なく抑えられる。これに対して、休止気筒の2回目以降の点火時期の基本点火時期に対する遅角量は、前記のように、各気筒の空気充填効率の全筒運転用の目標値に対する増加量に応じて設定される。従って、2回目以降の点火時期の基本点火時期に対する遅角量は、復帰点火時期に係る遅角量よりも多くなり、2回目の点火時期は復帰点火時期よりも遅角側となる。そして、これ以降は、空気量減少制御の実施によって各気筒の空気充填効率が徐々に低減していくことに伴い、点火時期は全筒運転用の基本点火時期に向けて徐々に進角されていく。
【0187】
また、時刻t9後に全筒運転が再開されると、稼働気筒(第2、第3気筒)の点火時期は、全筒運転用の基本点火時期よりも遅角側の時期であって、稼働気筒の空気充填効率に基づいて設定された時期とされる。そして、全筒運転用の基本点火時期に向けて徐々に進角されていく。
【0188】
前記の空気量減少制御および吸排気弁41、51の進角制御によって、時刻t10にて、スロットルバルブ25の開度が低減される制御が停止し、時刻t11にて、吸排気弁41、51の位相が全筒運転用目標位相に到達するとともに、各気筒の空気充填効率が全筒運転用の目標値に空気充填効率に到達する。
【0189】
ステップS22の後はステップS23に移行する。ステップS23では、フラグを0に変更し、リターンする。
【0190】
次に、上記エンジンの制御装置の作用、効果について説明する。
【0191】
本制御装置によれば、ECU110は、減筒運転実行条件が成立したとき、スロットルバルブ25を用いて、各気筒の空気充填効率つまり空気量を増大させる空気量増大制御を実施する。そのため、減筒運転開始時に稼働気筒の空気充填効率が不足するのを防止することができる。このことは、減筒運転開始時にエンジントルクが低下するのを防止する。
【0192】
ECU110は、全筒運転実行条件が成立したとき、スロットルバルブ25を用いて、各気筒の空気充填効率つまり空気量を減少させる空気量減少制御を実施するとともに、点火時期を基本点火時期(全筒運転用の基本点火時期)よりも遅角させる。そのため、各気筒の空気充填効率を全筒運転用の目標値に変更することができるとともに、各気筒の空気充填効率が全筒運転用の目標値よりも大きいことに伴ってエンジントルクが要求値よりも高くなってしまうこと、および、全筒運転の開始に伴ってエンジントルクが増大するのを防止できる。
【0193】
ECU110は、全筒運転実行条件が成立したとき、休止気筒の最初の点火時期の遅角量を、全筒運転切替時における休止気筒(第1,第4気筒)内の内部EGRガス量(既燃ガスの量)に応じて設定する。そのため、休止気筒の最初の点火時期が過度に遅角されるのを回避することができ、エンジントルクを適切にすることができる。
【0194】
ECU110は、休止気筒内の内部EGRガス量を、全筒運転切替時において排気通路32〜34から休止気筒に逆流する排気ガスの量に基づいて推定する。そのため、休止気筒内の内部EGRガス量が、精度よく推定される。つまり、稼動気筒から排出されて休止気筒に導入される排気ガスの量が考慮されるため、休止気筒内に存在する内部EGRガス量の推定精度を高くすることができる。
【0195】
ECU110は、休止気筒に逆流する排気ガスの量を全筒運転切替時における休止気筒の吸気弁の開弁期間と排気弁の開弁期間とのオーバーラップ期間を用いて推定する。そのため、排気通路32〜34から休止気筒に逆流する排気ガスの量の推定精度を高くすることができる。
【0196】
ECU110は、休止気筒に逆流する排気ガスの量を、減筒運転切替時における休止気筒の気筒内の圧力Pmaxを用いて推定しており、減筒運転開始時の休止気筒のエンジン回転数、インテークマニホールド圧、吸排気弁41、51の位相等が考慮されて前記排気ガスの量が推定される。従って、休止気筒内に存在する既燃ガス量の推定精度を高くすることができる。
【0197】
ECU110は、減筒運転切替時における休止気筒内の圧力Pmaxを、全筒運転から減筒運転への切替時における休止気筒の空気充填効率と減筒運転が継続された時間とに基づいて推定する。そのため、減筒運転切替時における休止気筒内の圧力Pmaxを精度よく推定できる。
【0198】
エンジン1の吸排気弁41,51の位相を変更可能な可変バルブタイミング機構19,20を有し、ECU110は、休止気筒の気筒内圧力を、エンジン回転数とインテークマニホールド内圧力と休止気筒の吸排気弁41,51の位相を用いて推定する。そのため、全筒運転切替時において、休止気筒内の排気ガスの量を高精度に推定することができる。
【0199】
排気管34を流れる排気ガスの量を調整可能な排気シャッタ弁制御部117を有し、ECU110は、減筒運転時、排気シャッタ弁制御部117によって排気管34を流れる排気ガスの量を減少制御する。そのため、エンジン周辺から発せられる振動および騒音を低減できる。また、このように排気シャッタ弁35によって振動および騒音を低減しつつ、排気シャッタ弁35の駆動に伴ってエンジントルクが不安定になるのを防止できる。つまり、前記のように、排気シャッタ弁制御部117の作動により排気管34から休止気筒に逆流する排気ガスの量が増加する場合であっても、エンジントルクが低減するのを防止できる。
【0200】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、直列4気筒ガソリンエンジンの例を説明したが、例えば、6気筒エンジンやV型エンジン等エンジンの型式に制限されること無く適用することが可能であり、特に直列4気筒ガソリンエンジンに限られるものではない。
【0201】
また、4気筒のうち半数の2気筒を休止させる減筒運転を行うエンジンの例を説明したが、休止気筒の数を任意に設定しても良い。
【0202】
2〕前記実施形態においては、全筒運転が再開されたときの休止気筒の1回目の点火時期のみを、休止気筒の内部EGRガスの量に基づいて設定した場合の例を説明したが、全筒運転が再開された後、複数回、例えば、2回目、3回目等の点火時期を、内部EGRガスの量に基づいて設定してもよい。
【0203】
3〕前記実施形態においては、全筒運転切替時の休止気筒の内部EGRガス量を休止気筒内の圧力Pmaxと、復帰時のインテークマニホールド圧と、復帰時の吸排気弁41,51の開閉弁タイミング及び排気弁51の閉弁タイミングとを用いて推定した例を説明したが、全筒運転切替時の休止気筒の内部EGRガス量を休止気筒内の圧力Pmaxのみを用いて推定しても良い。
【0204】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【0205】
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
【0206】
エンジンの制御装置は、複数の気筒と、これら気筒から排出された排気ガスが流通する排気通路と、これら気筒に導入される吸気が流通するインテークマニホールドとを備え、複数の気筒のうち一部の気筒である休止気筒の稼働を休止する減筒運転と、全ての気筒が稼働される全筒運転とを切替可能なエンジンに適用される制御装置において、減筒運転時に前記休止気筒の吸気弁及び排気弁の閉弁を保持する弁停止機構と、各気筒に供給される空気量を調整可能な空気量調整手段と、各気筒の点火時期を調整可能な点火時期調整手段と、前記弁停止機構と前記空気量調整手段と前記点火時期調整手段とを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、各気筒の点火時期の基本値である基本点火時期を、エンジン回転数とエンジン負荷とに基づいて設定し、全筒運転から減筒運転への切替実行条件が成立したとき、前記空気量調整手段を用いて各気筒の空気量を増大させる空気量増大制御を実施し、前記休止気筒の吸気弁及び排気弁が閉弁保持されるように前記弁停止機構を制御し、減筒運転から全筒運転への切替実行条件が成立したとき、吸気弁及び排気弁の前記閉弁保持が解除されるように前記弁停止機構を制御し、前記空気量調整手段を用いて各気筒の空気量を減少させる空気量減少制御を実施し、前記空気量増大制御および前記空気量減少制御の非実施中は、各気筒の点火時期を前記基本点火時期に設定し、前記空気量増大制御の実施中は、各気筒の点火時期を前記基本点火時期よりも遅角させ、前記空気量減少制御の実施中は、各気筒の点火時期を前記基本点火時期よりも遅角させるとともに、少なくとも全筒運転の開始時における休止気筒の点火時期の前記基本点火時期に対する遅角量を、前記減筒運転から前記全筒運転への切替時である全筒運転切替時に前記休止気筒内に存在する既燃ガスの量に応じて設定する。
【0207】
このエンジンの制御装置では、全筒運転から減筒運転への切替実行条件が成立すると、空気量増大制御が実施される。そのため、減筒運転の開始時の稼働気筒の空気充填効率を高くすることができ、減筒運転開始時にエンジントルクが低下するのを防止できる。
【0208】
また、減筒運転から全筒運転への切替実行条件が成立すると、空気量減少制御が実施されるとともに、点火時期が基本点火時期よりも遅角される。そのため、各気筒の吸気充填効率を全筒運転用の目標値に変更することができるとともに、この変更途中にエンジントルクが要求値よりも高くなるのを防止できる。そして、全筒運転の再開に伴ってエンジントルクが増加するのを防止して、エンジントルクを安定化できる。
【0209】
しかも、少なくとも全筒運転の開始時における休止気筒の点火時期の基本点火時期に対する遅角量が、減筒運転から全筒運転への切替時に休止気筒内に存在する既燃ガスの量に応じて設定される。つまり、全筒運転の開始時に、休止気筒内の圧力と排気ポート内の圧力との圧力差に起因して休止気筒内に導入される排気ガスの量を加味した点火時期で休止気筒に点火が行われる。
【0210】
従って、休止気筒の点火時期を休止気筒内に存在する既燃ガスの量に応じた適切な時期にでき、エンジントルクを適切にすることができる。
【0211】
前記制御手段は、前記全筒運転切替時に前記休止気筒内に存在する既燃ガスの量を、前記全筒運転切替時に前記排気通路から前記休止気筒に逆流する排気ガスの量に基づいて推定する、のが好ましい。
【0212】
この構成によれば、減筒運転から全筒運転への切替時に、稼働気筒から排出されて休止気筒に導入される排気ガスの量が考慮されて、前記切替時に休止気筒内に存在する既燃ガスの量が推定される。そのため、休止気筒内に存在する既燃ガスの量の推定精度を高くすることができる。
【0213】
前記制御手段は、前記全筒運転切替時に前記休止気筒に逆流する排気ガスの量を、前記全筒運転切替時における前記休止気筒の吸気弁の開弁期間と排気弁の開弁期間とのオーバーラップ期間を用いて推定する、のが好ましい。
【0214】
前記制御手段は、前記制御手段は、前記全筒運転復帰時に前記休止気筒内に逆流する排気ガスの量を、前記全筒運転切替時における前記休止気筒内の圧力を用いて推定する、のが好ましい。
【0215】
前記制御手段は、前記全筒運転切替時における前記休止気筒内の圧力を、全筒運転から減筒運転への切替時における前記休止気筒の空気充填効率に基づいて推定する、のが好ましい。
【0216】
これらの構成によれば、休止気筒内に存在する既燃ガスの量のより精度よく推定できる。
【0217】
前記制御手段は、前記全筒運転切替時における前記休止気筒内の圧力を、全筒運転から減筒運転への切替時における前記休止気筒の空気充填効率と減筒運転が継続された時間とに基づいて推定する、のが好ましい。
【0218】
この構成によれば、休止気筒内に存在する既燃ガスの量のより精度よく推定できる。具体的には、減筒運転中、燃焼室内の空気は少しずつ外部に漏れていき、これに伴って休止気筒内の圧力は低下していく。そのため、全筒運転から減筒運転への切替時における前記休止気筒の空気充填効率と減筒運転が継続された時間とを用いれば、全筒運転切替時における前記休止気筒内の圧力をより精度よく推定することができる。
【0219】
各気筒の吸気弁又は排気弁の位相を変更可能な位相制御機構を有し、前記制御手段は、前記全筒運転切替時における前記休止気筒内の圧力を、エンジン回転数と前記インテークマニホールド内の圧力と前記休止気筒の吸気弁又は排気弁の位相とのうちの少なくとも何れか1つを用いて推定する、のが好ましい。
【0220】
この構成によれば、全筒運転切替時における休止気筒内の圧力ひいてはこの切替時に休止気筒内に存在する既燃ガスの量を高精度に推定することができる。
【0221】
排気通路を流れる排気ガスの量を調整可能な排気ガス量調整手段を有し、前記制御手段は、減筒運転時、前記排気通路を流れる排気ガスの量が減少するように前記排気ガス量調整手段を制御する、のが好ましい。
【0222】
この構成によれば、減筒運転時の騒音を低減することができる。具体的には、減筒運転時と全筒運転時とでは稼働気筒の数が異なる。そのため、減筒運転時と全筒運転時とでは、排気通路内を通過する排気ガスの脈動の周波数が異なる。従って、減筒運転時には、排気通路内で生じる振動が大きくなって騒音が増大するおそれがある。これに対して、減筒運転時に排気通路を流れる排気ガスの量を低減すれば、排気通路内での排気ガスの振動ひいては騒音を低減できる。ただし、このように減筒運転時に排気ガスの量が減少するように排気ガス量調整手段を制御すると、減筒運転から全筒運転への切り替え時に、排気通路を流れる排気ガスの量が少なくされたままとなって、休止気筒に逆流する既燃ガスの量が増大するおそれがある。これに対して、本発明では、前記のように休止気筒に逆流する既燃ガスの量に応じて点火時期が設定されるので、この既燃ガスの量が増大してもエンジントルクを安定化することができる。