(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の第1実施形態および第2実施形態を説明する。図面において、同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面において、各部材の大きさや比率は、第1実施形態および第2実施形態の理解を容易にするために誇張し、実際の大きさや比率とは異なる場合がある。
【0009】
(第1実施形態)
図3を参照して、第1実施形態にかかる複合材料(プリプレグシート10)の成形方法は、概説すれば、基材(炭素繊維11)に樹脂(マトリックス樹脂12)を含浸させてなるプリプレグシート10を積層して成形する方法である。このプリプレグシート10の成形方法では、表層の第1プリプレグシート10Pに隣接する、第2プリプレグシート10Qに含まれる第2マトリックス樹脂12Qの硬化を開始する前に、第1プリプレグシート10Pに含まれる第1マトリックス樹脂12Pの硬化を完了させる。
【0010】
ここで、表層の第1プリプレグシート10Pは、裏面の一層(最裏層)のプリプレグシート10以外の全てのプリプレグシート10に該当する。すなわち、表層の第1プリプレグシート10Pは、積層した複数のプリプレグシート10のうち、例えば、表面側において外部に露出している一層(最表層)のみであってもよいし、裏面側において外部に露出している一層(最裏層)を除く複数の層であってもよい。
【0011】
(プリプレグシート10)
プリプレグシート10(複合材料)は、基材(炭素繊維11)に樹脂(マトリックス樹脂12)を含浸させて、長尺な薄板形状に形成している。プリプレグシート10を用いて、炭素繊維強化プラスチック(carbon fiber reinforced plastic:CFRP)からなる成形品20を成形する。
【0012】
基材は、炭素繊維11に限定されることなく、ガラス繊維や有機繊維等から構成することができる。炭素繊維11は、一方向に配向した長繊維を用いることによって、繊維の配向がランダムな短繊維を用いる場合と比較して、繊維の配向性を均一化している。すなわち、長繊維の炭素繊維11を用いることによって、繊維の乱れに起因するシワ、ヨレ、および凹凸を抑制している。
【0013】
マトリックス樹脂12は、例えば、光硬化性および熱硬化性を備えたエポキシ樹脂や、光硬化性および熱硬化性を備えたアクリル系やウレタン系の樹脂から構成する。マトリックス樹脂12は、積層する複数のプリプレグシート10のうち、少なくとも最表面であって外部に露出している第1プリプレグシート10Pのみ、光硬化性を備えていればよい。
【0014】
(プリプレグシート10の成形方法)
プリプレグシート10の成形方法は、次のような工程によって、具現化される。すなわち、プリプレグシート10の成形方法は、長尺なプリプレグシート10を切断して個片化する切断工程S11、個片化されたプリプレグシート10を積層する積層工程S12、および積層された複数のプリプレグシート10を予備成形する賦形工程S13によって具現化される。さらに、プリプレグシート10の成形方法は、予備成形された複数のプリプレグシート10の表層の第1プリプレグシート10Pを硬化させる表層硬化工程S14、表層のみ硬化された状態の複数のプリプレグシート10全体を熱硬化させる熱成形工程S15、および熱硬化させた複数のプリプレグシート10(成形品20)を型から取り出す脱型工程S16によって具現化される。
【0015】
プリプレグシート10の成形方法(切断工程S11〜脱型工程S16によって具現化)を、
図1および
図2A〜
図2Fを参照しつつ説明する。
図1は、プリプレグシート10の成形方法を示すフローチャートである。
図2A〜
図2Fは、プリプレグシート10の成形方法を示す模式図である。
【0016】
(切断工程S11)
切断工程S11は、
図2Aに示すように、長尺なプリプレグシート10を切断して個片化する工程である。
【0017】
図2Aは、切断工程S11に相当し、巻回された長尺なプリプレグシート10を伸長させつつ一定の間隔毎に切断して個片化する状態を示す模式図である。
【0018】
図2Aに示すように、巻回された長尺状のプリプレグシート10を伸長させつつ、一定の間隔毎に、切断刃101によって切断して個片化する。個片化されたプリプレグシート10は、積層工程S12に搬送される。
【0019】
(積層工程S12)
積層工程S12は、
図2Bに示すように、個片化されたプリプレグシート10を積層する工程である。
【0020】
図2Bは、
図2Aの状態から引き続き、積層工程S12に相当し、個片化されたプリプレグシート10を積層する状態を示す模式図である。
【0021】
図2Bに示すように、個片化されたプリプレグシート10を複数枚積み重ねる。プリプレグシート10は、皺を生じないように伸長させた状態において、成形品20の厚みに応じて、数枚から数十枚積み重ねる。
【0022】
(賦形工程S13)
賦形工程S13は、
図2Cに示すように、積層された複数のプリプレグシート10を予備成形する工程である。
【0023】
図2Cは、
図2Bの状態から引き続き、賦形工程S13に相当し、積層された複数のプリプレグシート10を成形品20の外形形状に合わせて予備成形する状態を示す模式図である。
【0024】
図2Cに示すように、積層された複数のプリプレグシート10を予備金型(賦形用固定型102および賦形用移動型103)によって予備成形する。賦形用固定型102および賦形用移動型103は、成形品20の主要な形状に対応している。賦形用移動型103を上昇させて、賦形用固定型102に対して複数のプリプレグシート10を載置した後、賦形用移動型103を降下させる。賦形用固定型102および賦形用移動型103によって、複数のプリプレグシート10を挟み込んで型締めする。
【0025】
(表層硬化工程S14)
表層硬化工程S14は、
図2Dおよび
図3に示すように、予備成形された複数のプリプレグシート10の表層の第1プリプレグシート10Pを硬化させる工程である。
【0026】
図2Dは、
図2Cの状態から引き続き、表層硬化工程S14に相当し、予備成形された複数のプリプレグシート10の表面に光Lを照射して表層の第1プリプレグシート10Pを硬化させる状態を示す模式図である。
図3は、
図2Dに示す表層硬化工程S14に関連し、複数のプリプレグシート10のうち表層の第1プリプレグシート10Pの樹脂(マトリックス樹脂12)を光硬化させる状態を示す模式図である。
【0027】
図2Dおよび
図3に示すように、賦形用固定型102から賦形用移動型103を離間させ、賦形用固定型102に保持されている複数のプリプレグシート10に対して、光源104を対向させる。光源104は、紫外線を含む光Lを発するランプや発光ダイオードまたはレーザダイオードから構成する。光源104は、予備金型(賦形用固定型102および賦形用移動型103)に接近および離間させるために、直動ステージ(不図示)に取り付けされている。光源104から複数のプリプレグシート10の表面に対して光Lを照射する。
図3に示すように、積層した複数のプリプレグシート10のうち、少なくとも最表面であって外部に露出している第1プリプレグシート10Pに含まれる第1マトリックス樹脂12Pを、光Lによって硬化させる。
【0028】
表層硬化工程S14における第1マトリックス樹脂12Pの硬化は、硬化が完了した状態に加えて、硬化が未完了であっても一定の定形性を保つ硬度まで硬化が進んだ状態も含む。
【0029】
(熱成形工程S15)
熱成形工程S15は、
図2Eおよび
図4に示すように、表層のみ硬化された状態の複数のプリプレグシート10全体を熱硬化させる工程である。
【0030】
図2Eは、
図2Dの状態から引き続き、熱成形工程S15に相当し、表層のみ硬化された状態の複数のプリプレグシート10を熱硬化させる状態を示す模式図である。
図4は、
図2Eに示す熱成形工程S15に関連し、プリプレグシート10の樹脂(マトリックス樹脂12)の温度と粘度の関係を示す図である。
【0031】
図2Eに示すように、予備成形を終えている複数のプリプレグシート10を金型(熱成形用固定型105および熱成形用移動型106)によって本成形する。熱成形用固定型105および熱成形用移動型106は、少なくとも一方に加熱用のヒータを内蔵している。熱成形用固定型105および熱成形用移動型106は、成形品20の形状に対応している。熱成形用移動型106を上昇させて、熱成形用固定型105に対して予備成形を終えている複数のプリプレグシート10を載置した後、熱成形用移動型106を降下させる。熱成形用固定型105および熱成形用移動型106によって、予備成形を終えている複数のプリプレグシート10を挟み込んで型締めする。
【0032】
図4に示すように、マトリックス樹脂12は、積層された複数のプリプレグシート10に熱が入力されて昇温すると、硬化に至る前に粘度が一旦下がって流動が始まる。ここで、積層された複数のプリプレグシート10のうち、表層の第1プリプレグシート10Pは、既に表層硬化工程S14において硬化が促進されている。したがって、積層された複数のプリプレグシート10の表面については、熱が入力されても、マトリックス樹脂12の粘度が極端に下がることなく、マトリックス樹脂12の流動を抑制することができる。すなわち、積層された複数のプリプレグシート10の表面については、熱が入力されても、炭素繊維11の配向が乱されることなく、繊維の乱れに起因するシワ、ヨレ、凹凸、および局所的な引けを抑制することができる。したがって、積層された複数のプリプレグシート10の表面は、外観を良好に維持することができる。
【0033】
積層された複数のプリプレグシート10のうち、表層の第1プリプレグシート10P以外のプリプレグシート10は、表層硬化工程S14において光Lを照射されていない。すなわち、表層の第1プリプレグシート10P以外のプリプレグシート10は、熱成形工程S15における熱の入力に伴い、含侵されているマトリックス樹脂12の流動が始まる。したがって、表層の第1プリプレグシート10P以外のプリプレグシート10において、マトリックス樹脂12は、隣接するプリプレグシート10の微小な隙間にも、粘度が低い状態で流れ込み、含浸性を高めることができる。このため、積層された複数のプリプレグシート10は、外観を良好に維持しつつ、ボイド等に起因する剥離強度の低下や耐久性の低下を防止することができる。
【0034】
(脱型工程S16)
脱型工程S16は、
図2Fに示すように、熱硬化させた複数のプリプレグシート10(成形品20)を型から取り出す工程である。
【0035】
図2Fは、
図2Eの状態から引き続き、脱型工程S16に相当し、熱硬化させた複数のプリプレグシート10(成形品20)を熱成形用固定型105および熱成形用移動型106から取り出す状態を示す模式図である。
【0036】
図2Fに示すように、熱硬化させた複数のプリプレグシート10(成形品20)を室温まで冷却した後、熱成形用固定型105から熱成形用移動型106を離間させて、成形品20を外部に取り出す。その後、必要に応じて、成形品20の外縁を切断刃によって切断して仕上げる(トリム工程)。また、成形品20に塗装を行う(塗装工程)。
【0037】
以上説明した第1実施形態の作用効果を説明する。
【0038】
プリプレグシート10の成形方法は、基材(炭素繊維11)に樹脂(マトリックス樹脂12)を含浸させてなるプリプレグシート10を積層して成形する方法である。このプリプレグシート10の成形方法では、表層の第1プリプレグシート10Pに隣接する、第2プリプレグシート10Qに含まれる第2マトリックス樹脂12Qの硬化を開始する前に、第1プリプレグシート10Pに含まれる第1マトリックス樹脂12Pの硬化を完了させる。
【0039】
かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、積層したプリプレグシート10のうち、表層の第1プリプレグシート10Pの第1マトリックス樹脂12Pを硬化させてから、内部の第2プリプレグシート10Qの第2マトリックス樹脂12Qを硬化させる。すなわち、積層したプリプレグシート10を硬化させるときに、積層したプリプレグシート10の内部において、炭素繊維11に含侵させているマトリックス樹脂12の粘度が低下して流動しても、積層したプリプレグシート10の表面への影響を十分に抑制することができる。したがって、かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、良好な外観を得ることができる。
【0040】
プリプレグシート10の成形方法において、第2マトリックス樹脂12Qは、熱硬化性を備えたものを用いることが好ましい。
【0041】
かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、汎用性が高く硬化の制御が容易な熱硬化性を備えた第2マトリックス樹脂12Qを用いて成形することができる。
【0042】
プリプレグシート10の成形方法において、第1マトリックス樹脂12Pは、光硬化性を備え、第1プリプレグシート10Pに対して光Lを照射して第1マトリックス樹脂12Pを硬化させることが好ましい。
【0043】
かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、第1プリプレグシート10Pの第1マトリックス樹脂12Pを部分的に硬化させる場合、必要な部分(領域)に対して光Lを照射して、必要な部分(領域)の第1マトリックス樹脂12Pを選択的に硬化させることができる。また、第1マトリックス樹脂12Pを部分的に硬化させる場合、必要な部分(領域)以外を反射シート等によってマスキングした上で、第1プリプレグシート10Pの全体に対して光Lを照射して、必要な部分(領域)の第1マトリックス樹脂12Pを選択的に硬化させることもできる。したがって、かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、必要な部分(領域)を選択して、良好な外観を得ることができる。
【0044】
さらに、かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、光Lが第1プリプレグシート10Pに入射しつつ第1プリプレグシート10Pに吸収される。すなわち、光Lが第1プリプレグシート10Pの真下に位置する第2プリプレグシート10Qに到達(入射)して第2プリプレグシート10Qの第2マトリックス樹脂12Qを硬化させることを抑制できる。なお、第1プリプレグシート10Pと、第2プリプレグシート10Qの間には、界面が発生することから、仮に、光Lが第1プリプレグシート10Pから出射しても、第2プリプレグシート10Qに入射させ難くすることができる。したがって、積層した複数のプリプレグシート10のうち、最も表層に位置する第1プリプレグシート10Pの第1マトリックス樹脂12Pを選択的に硬化させることができる。したがって、かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、必要な部分(領域)を選択して、良好な外観を得ることができる。
【0045】
プリプレグシート10の成形方法において、第1マトリックス樹脂12Pは、紫外線に対して光硬化性を備え、第1プリプレグシート10Pに対して紫外線を含む光Lを照射して第1マトリックス樹脂12Pを硬化させることが好ましい。
【0046】
かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、相対的に短波長であってエネルギーが大きい紫外線の光Lを用いることによって、第1プリプレグシート10Pを効率良く硬化させることができる。したがって、かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、良好な外観を得ることができる。
【0047】
さらに、かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、相対的に短波長であってエネルギーが大きい紫外線の光Lを用いることによって、光Lを第1プリプレグシート10Pの内部で十分に減衰させることができる。すなわち、光Lが第1プリプレグシート10Pの真下に位置する第2プリプレグシート10Qに到達(入射)して、第2プリプレグシート10Qの第2マトリックス樹脂12Qを硬化させることを抑制できる。したがって、積層した複数のプリプレグシート10のうち、最も表層に位置する第1プリプレグシート10Pの第1マトリックス樹脂12Pを選択的に硬化させることができる。したがって、かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、良好な外観を得ることができる。
【0048】
プリプレグシート10の成形方法において、基材は、一方向に配向した複数の炭素繊維11を含むことが好ましい。
【0049】
かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、織物として構成し配向が交互に直交する炭素繊維を含む基材を用いる場合と比較して、プリプレグシート10の表面の凹凸を抑制することができる。したがって、かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、良好な外観を得ることができる。なお、通常は、一方向に配向した複数の炭素繊維11を用いる場合、繊維直交方向の拘束力が弱く、樹脂のわずかな流動でも容易に配向が乱される等が懸念されるが、第1実施形態のように、表層の第1プリプレグシート10Pの第1マトリックス樹脂12Pを硬化させてから、内部の第2プリプレグシート10Qの第2マトリックス樹脂12Qを硬化させることによって、上記の懸念は解消される。
【0050】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかるプリプレグシート10の成形方法は、
図5に示すように表層硬化工程を賦形工程と共に行う(表層硬化工程および賦形工程S23)点において、上記の第1実施形態にかかるプリプレグシート10の成形方法と相違する。上記の第1実施形態では、表層硬化工程S14を、賦形工程S13の後であって熱成形工程S15の前に行っていた。
【0051】
第2実施形態にかかるプリプレグシート10の成形方法を、
図5(第2実施形態のフローチャート)、
図6(第2実施形態の1)および
図7(第2実施形態の2)を参照しつつ説明する。
【0052】
第2実施形態では、積層された複数のプリプレグシート10を予備金型(賦形用固定型102および賦形用移動型203または303)によって予備成形するときに、光源104から積層された複数のプリプレグシート10に対して光Lを照射する。すなわち、表層硬化工程と賦形工程を同時に行う。
【0053】
(第2実施形態の1)
図5は、第2実施形態にかかるプリプレグシート10の成形方法を示すフローチャートである。
図6は、第2実施形態の1にかかる表層硬化工程および賦形工程S23に相当し、複数のプリプレグシート10に対して賦形用移動型203を透過した光Lを照射して、表層の第1プリプレグシート10Pを硬化させる状態を示す模式図である。
【0054】
図6に示すように、賦形用移動型203は、第1実施形態の賦形用移動型103と外形形状は同一であるが、材質は耐熱性を備え紫外線を透過する合成石英のようなガラスからなる。賦形用移動型203は、耐熱性を備え紫外線を透過させるものであれば、合成石英に限定されない。光源104は、賦形用移動型203の後方に配置している。光源104から導出された光Lは、賦形用移動型103を透過して、積層された複数のプリプレグシート10に照射される。
【0055】
(第2実施形態の2)
図7は、第2実施形態の2にかかる表層硬化工程および賦形工程S23に相当し、複数のプリプレグシート10に対して賦形用移動型303の内部から光Lを照射して、表層の第1プリプレグシート10Pを硬化させる状態を示す模式図である。
【0056】
図7に示すように、賦形用移動型303は、第1実施形態の賦形用移動型103と外形形状は同一であるが、賦形用固定型102と対向する部分に光源304を備えている。さらに、賦形用移動型303は、光源304から出射された光Lを外部に向かって透過させる部分を、合成石英のようなガラスによって構成している。光源304は、例えば、発光ダイオードまたはレーザダイオードから構成している。光源304から導出された光Lは、積層された複数のプリプレグシート10に照射される。
【0057】
以上説明した第2実施形態の作用効果を説明する。
【0058】
プリプレグシート10の成形方法において、積層されたプリプレグシート10に光Lを照射すると共に賦形してから熱成形することが好ましい。
【0059】
かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、積層されたプリプレグシート10を賦形しつつ表層を硬化させて剛性を向上させた後に、熱成形を行うことができる。すなわち、積層されたプリプレグシート10を、賦形の工程から熱成形の工程に移動させるときに、その形状を保持することができ、かつ、位置決め精度を確保することができる。したがって、かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、賦形の工程から熱成形の工程への移動や熱成形の工程での位置決め精度の影響を排除して、良好な外観を得ることができる。
【0060】
さらに、かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、加熱を伴わない賦形の工程において、熱の影響を排除した状態で、光Lを第1プリプレグシート10Pに照射して第1マトリックス樹脂12Pのみを効率良く硬化させることができる。したがって、かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、熱の影響を排除して、良好な外観を得ることができる。
【0061】
プリプレグシート10の成形方法において、積層されたプリプレグシート10に対して成形品20の外形形状に対応する賦形用移動型203または賦形用移動型303を押圧して成形し、賦形用移動型203または賦形用移動型303は、積層されたプリプレグシート10に向かって光Lを透過させることが好ましい。
【0062】
かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、積層されたプリプレグシート10を賦形用移動型203または賦形用移動型303によって押圧(拘束)した状態で、表層のプリプレグシート10を硬化させることができる。すなわち、積層されたプリプレグシート10は、賦形用移動型203または賦形用移動型303の形状の転写性が良い。したがって、かかるプリプレグシート10の成形方法によれば、賦形用移動型203または賦形用移動型303の形状が転写された良好な外観を得ることができる。
【0063】
そのほか、本発明は、特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。
【0064】
第1実施形態および第2実施形態において、表層硬化工程では、表層の第1プリプレグシート10Pに対して紫外線を照射して硬化させているが、紫外線よりも波長の長い可視光線や赤外線を照射して硬化させる構成としてもよい。
【0065】
第1実施形態および第2実施形態において、プリプレグシート10の炭素繊維11は、一方向に配向したものを用いているが、互い違いに織り込んだものを用いてもよい。この場合、表層の第1プリプレグシート10P以外のプリプレグシート10について、互い違いに織り込んだ炭素繊維11を用いてもよい。
【0066】
第1実施形態において、表層硬化工程S14は、賦形工程S13の終了後に賦形工程S13の型(賦形用固定型102および賦形用移動型103)の中で行っている。しかしながら、表層硬化工程S14は、熱成形工程S15の開始前に熱成形工程S15の型(熱成形用固定型105および熱成形用移動型106)の中で行ってもよい。
【0067】
第2実施形態において、表層硬化工程および賦形工程S23は、賦形用移動型103に換えて、賦形用固定型102を例えば合成石英によって形成し、賦形用固定型102を透過させた光Lを積層されたプリプレグシート10の表面に照射する構成としてもよい。
【0068】
第2実施形態の表層硬化工程は、熱成形用移動型106または熱成形用固定型105を例えば合成石英によって形成し、熱成形用移動型106または熱成形用固定型105を透過させた光Lを積層されたプリプレグシート10の表面に照射する構成としてもよい。すなわち、第2実施形態の表層硬化工程は、第1実施形態の熱成形工程S15と同時に行ってもよい。