特許第6791383号(P6791383)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791383
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】電力回路モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/34 20060101AFI20201116BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20201116BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20201116BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20201116BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20201116BHJP
   G01K 1/16 20060101ALI20201116BHJP
   G01K 7/22 20060101ALI20201116BHJP
   G01K 1/14 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   H01L23/34 D
   H01L23/36 D
   H01L25/04 C
   H05K7/20 F
   G01K1/16
   G01K7/22 J
   G01K1/14 L
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-527630(P2019-527630)
(86)(22)【出願日】2018年6月21日
(86)【国際出願番号】JP2018023607
(87)【国際公開番号】WO2019009088
(87)【国際公開日】20190110
【審査請求日】2019年7月19日
(31)【優先権主張番号】特願2017-133324(P2017-133324)
(32)【優先日】2017年7月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細谷 達也
【審査官】 豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−107359(JP,A)
【文献】 特開2011−33479(JP,A)
【文献】 特開2002−76236(JP,A)
【文献】 特開平3−283458(JP,A)
【文献】 特表2012−505528(JP,A)
【文献】 実開昭51−6870(JP,U)
【文献】 特開2002−124618(JP,A)
【文献】 特開平9−175145(JP,A)
【文献】 特開2002−353385(JP,A)
【文献】 特開平9−27690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K1/00−19/00
H01L23/29
23/34−23/36
23/373−23/427
23/44
23/467−23/473
25/00−25/07
25/10−25/11
25/16−25/18
H05K7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を実装する電子回路基板と、
前記電子回路基板の第1面に実装され、電力の変換または制御に伴って発熱する、電力回路の一部を構成する半導体電子部品である発熱素子と、
前記発熱素子の温度を検出する前記電子回路基板に実装された温度検出素子と、
前記電子回路基板に形成された電気回路配線と、
前記発熱素子の熱を放熱し、期待する放熱効果に応じて大きさを設定する放熱体と、
弾力性および可撓性を有し、厚みをもった熱伝導シートと、
を備え、
前記熱伝導シートは、前記発熱素子と前記放熱体との間に配置され、
前記温度検出素子は、前記熱伝導シートを通じて前記発熱素子に熱的に接続されるとともに、前記電気回路配線を通じて電気的にも接続され、
前記温度検出素子、前記発熱素子および前記放熱体の熱容量の大きさは、
温度検出素子<発熱素子<放熱体、の関係にあることを特徴とする、電力回路モジュール。
【請求項2】
前記電子回路基板は、銅箔パターンが形成された樹脂基材を含む複数の樹脂基材の一括積層加熱プレスにより形成され、当該電子回路基板に前記電気回路配線が形成された、フレキシブルな樹脂多層基板であり、
前記樹脂基材は、ガラス・エポキシ系基板用樹脂材料に比べて、比誘電率、誘電正接、吸水率、がそれぞれ小さい、請求項1に記載の電力回路モジュール。
【請求項3】
前記温度検出素子、前記発熱素子および前記放熱体のそれぞれの間における熱抵抗の大きさは、
前記発熱素子と前記温度検出素子との間の熱抵抗を(発熱素子−温度検出素子)で表し、前記発熱素子と前記放熱体との間の熱抵抗を(発熱素子−放熱体)で表し、前記温度検出素子と前記放熱体との間の熱抵抗を(温度検出素子−放熱体)で表すとき、
(発熱素子−温度検出素子)<(発熱素子−放熱体)<(温度検出素子−放熱体)、の関係にある、請求項1または2に記載の電力回路モジュール。
【請求項4】
前記電子回路基板の前記第1面とは反対面である第2面に接する第2面側熱伝導シートと、当該第2面側熱伝導シートに接する第2面側放熱体とを更に備える、請求項1または3に記載の電力回路モジュール。
【請求項5】
前記電気回路配線は前記発熱素子および前記温度検出素子に対して熱的に接続されている、請求項1から3のいずれかに記載の電力回路モジュール。
【請求項6】
前記電子回路基板に実装された前記発熱素子は複数あり、前記熱伝導シートは、複数の前記発熱素子に熱的に結合され、前記温度検出素子は、複数の前記発熱素子のうち発熱温度が最も高い高温発熱素子の近傍に配置され、前記温度検出素子と前記高温発熱素子との熱的な結合を最も大きくし、前記高温発熱素子の温度を検出する、請求項1から5のいずれかに記載の電力回路モジュール。
【請求項7】
前記発熱素子は、ガリウムナイトライドまたはシリコンカーバイドなどの化合物半導体素子である、請求項1から6のいずれかに記載の電力回路モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュール化された電力回路に関し、特に、放熱および温度検出の構造を備える電力回路モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電力回路の一部を構成する発熱体を備える装置の動作において、その発熱体の動作保護を行う場合は、装置に発熱体の温度を検出するための温度検出手段が設けられる。例えば特許文献1には、熱伝導シートと、この熱伝導シートの一端部に熱的に接続した発熱体と、熱伝導シートの一端部とは反対側の他端部に熱的に接続した温度検出素子とを備え、一端部と他端部との間の熱伝導シートの両面に断熱層を設けた構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−152502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されている温度検出装置によれば、エネルギー損失の少ない状態で熱を温度検出素子に伝えることができるので、温度検出の高精度化が図れる。
【0005】
ところが、一般に、発熱素子を過熱状態から保護するためには、発熱素子の温度を高精度に検出するだけでなく、発熱素子の熱を効率よく放熱する放熱体を備えることが重要である。また、発熱体での温度上昇の速度に対して、時間的に高速に応答した温度検出ができることが重要である。
【0006】
本発明の目的は、発熱素子の熱を放熱し、且つ、発熱素子の温度を精度良くまた時間的に高速に応答性良く検出して、発熱素子を実装した電力回路を保護できるようにした電力回路モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の高周波電力回路モジュールは、
電子部品を実装する電子回路基板と、
前記電子回路基板の第1面に実装され、電力の変換または制御に伴って発熱する、電力回路の一部を構成する半導体電子部品である発熱素子と、
前記発熱素子の温度を検出する前記電子回路基板に実装された温度検出素子と、
前記電子回路基板に形成された電気回路配線と、
前記発熱素子の熱を放熱し、期待する放熱効果に応じて大きさを設定する放熱体と、
弾力性および可撓性を有し、厚みをもった熱伝導シートと、
を備え、
前記熱伝導シートは、前記発熱素子と前記放熱体との間に配置され、
前記温度検出素子は、前記熱伝導シートを通じて前記発熱素子に熱的に接続されるとともに、前記電気回路配線を通じて電気的にも接続され、
前記温度検出素子、前記発熱素子および前記放熱体の熱容量の大きさは、
温度検出素子<発熱素子<放熱体、の関係にあることを特徴とする。
【0008】
上記構成により、発熱素子の熱を熱伝導シートおよび放熱体を通して外部に放熱させながら、熱的に接続されるだけでなく、電気的にも接続された温度検出素子によって発熱素子の温度を精度良くまた高速に応答性良く検出して、電力回路を保護できる。
【0009】
(2)前記電子回路基板は、銅箔パターンが形成された樹脂基材を含む複数の樹脂基材の一括積層加熱プレスにより形成され、当該電子回路基板に前記電気回路配線が形成された、フレキシブルな樹脂多層基板であり、前記樹脂基材は、ガラス・エポキシ系基板用樹脂材料に比べて、比誘電率、誘電正接、吸水率、がそれぞれ小さいことが好ましい。
【0010】
上記構成により、基材と基材とを接着層を介して接着する構造の多層基板に比べて、薄型、フレキシブルであり、限られた所定の3次元空間内に配置できる。また、高周波特性に優れた電子回路基板とすることができる。
【0011】
(3)前記温度検出素子、前記発熱素子および前記放熱体のそれぞれの間における熱抵抗の大きさは、
発熱素子と温度検出素子との間の熱抵抗を(発熱素子−温度検出素子)で表し、発熱素子と放熱体との間の熱抵抗を(発熱素子−放熱体)で表し、温度検出素子と放熱体との間の熱抵抗を(温度検出素子−放熱体)で表すとき、
(発熱素子−温度検出素子)<(発熱素子−放熱体)<(温度検出素子−放熱体)、の関係にあることが好ましい。
【0012】
このように、温度検出素子の熱容量が放熱体の熱容量よりも小さい関係のもとで、発熱素子と温度検出素子との間の熱抵抗が、発熱素子と放熱体との間の熱抵抗よりも小さければ、放熱体の温度が上昇するよりも先に、発熱素子の温度を温度検出素子により検出することができる。このため、放熱体の温度が上昇するよりも先に、電力回路モジュールの動作を停止するなどして、発熱体の温度上昇を抑制することができる。
【0013】
(4)前記電子回路基板の前記第1面とは反対面である第2面に接する第2面側熱伝導シートと、当該第2面側熱伝導シートに接する第2面側放熱体とを更に備えることが好ましい。これにより、放熱効果が高まる。また、このように発熱素子の発熱量に応じて、放熱体のサイズや数を変更した場合においても、温度検出素子の検出値を変更することなく発熱素子の温度を精度よく検出することができ、電力回路を保護できる。
【0014】
(5)前記電気回路配線は前記発熱素子および前記温度検出素子に対して熱的に接続されていることが好ましい。これにより、発熱素子と温度検出素子とは、熱伝導シートだけでなく、電気回路配線を通しても熱的に結合し、発熱素子の時間的な温度変化に対して応答よく温度を検出できる。
【0015】
(6)前記電子回路基板に実装された前記発熱素子は複数あり、前記熱伝導シートは、複数の前記発熱素子に熱的に結合され、前記温度検出素子は、複数の前記発熱素子のうち発熱温度が最も高い高温発熱素子の近傍に配置され、前記温度検出素子と前記高温発熱素子との熱的な結合を最も大きくし、前記高温発熱素子の温度を検出する、ことが好ましい。これにより、最も保護すべき発熱素子が保護される。
【0016】
(7)前記発熱素子は、ガリウムナイトライドまたはシリコンカーバイドなどの化合物半導体素子であることが好ましい。これにより、低い電流経路抵抗(オン抵抗)による低損失化(低導通損化)を実現でき、また、高速スイッチングに対応できることにより、インダクタンス素子やキャパシタンス素子の小型化が図れる。さらに高温動作が可能であるので、放熱体の小型化が図れる。これらのことにより、小型の割には高電力の電力回路モジュールが構成できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発熱素子の熱を放熱させながら、発熱素子の温度を精度良くまた高速に応答性良く検出して、発熱素子を有する電力回路を保護できるようにした電力回路モジュールが得られる。さらに例えば、発熱素子での電力損失が大きい場合や大きな電力損失に対応して放熱体のサイズを大きくした場合などにおいても、高速に応答性良く温度を検出できることから、温度検出素子の温度検出値を固定した所定値として設計することが可能とできる。発熱素子での電力損失の大きさ、また放熱体の放熱量の大きさに柔軟に対応して、発熱体の最高温度を所定の値に制限できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は第1の実施形態に係る電力回路モジュール101の主要部の縦断面図である。
図2図2は電力回路の回路図の一例である。
図3図3は第2の実施形態に係る電力回路モジュール102の主要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係る電力回路モジュール101の主要部の縦断面図である。この電力回路モジュール101は、電子回路基板1と、発熱素子2と、温度検出素子5と、電気回路配線6と、放熱体3と、熱伝導シート4と、を備える。
【0020】
例えば、発熱素子2は半導体電子部品であり、電子回路基板1の第1面S1に実装され、電力回路の一部を構成する。発熱素子2は、電力回路による電力の変換または制御に伴って、導通損やスイッチング損失により発熱する。温度検出素子5は、発熱素子2の温度を検出する。電気回路配線6は電子回路基板1に形成されている。放熱体3は発熱素子2の熱を放熱する。熱伝導シート4は弾力性および可撓性を有し、厚みをもつ。
【0021】
電子回路基板1は、ガラス・エポキシ系回路基板、液晶ポリマーなどを基材の主材料とする樹脂多層基板、ポリイミドフィルムを基材とするフレキシブル基板等の回路基板である。この第1面S1に発熱素子2、温度検出素子5およびその他の回路部品11,12,13,14等が実装されている。また、図1においては、特に発熱素子2および温度検出素子5に対して熱的に接続される電気回路配線6を明示している。
【0022】
上記電子回路基板1は、銅箔パターンが形成された樹脂基材を含む複数の樹脂基材の一括積層加熱プレスにより形成されたものであり、上記銅箔パターンにより電気回路配線が形成された、フレキシブルな樹脂多層基板であることが好ましい。特に、樹脂基材は、ガラス・エポキシ系基板用樹脂材料に比べて、比誘電率、誘電正接、吸水率、がそれぞれ小さいことが好ましい。このような電子回路基板1を用いることで、例えばガラス・エポキシ系基板のように、基材と基材とを接着層を介して接着する構造の多層基板に比べて、薄型、フレキシブルであり、限られた所定の3次元空間内に配置できる。また、高周波特性に優れた電子回路基板とすることができる。
【0023】
放熱体3は例えばAl、Fe、Cu等の金属成型板または樹脂成型体で構成された筐体の一部である。この放熱体3は、図1には表れていない他の構造部材に一体化されている。そのことで、放熱体3は熱伝導シート4、発熱素子2および温度検出素子5等との位置関係が定められている。
【0024】
発熱素子2は例えばDC−DCコンバータのスイッチング素子であり、表面実装型のMOS−FETである。温度検出素子5は例えば表面実装型のサーミスタ素子である。
【0025】
熱伝導シート4は、放熱性を向上させるための熱伝導性の高いフィラーを配合した放熱シリコーンゴムである。この熱伝導シート4は、発熱素子2および温度検出素子5と、放熱体3と、の間に挟み込まれる状態で配置されている。
【0026】
発熱素子2と温度検出素子5とは電気回路配線6に、電気的だけでなく熱的にも接続されている。したがって、発熱素子2と温度検出素子5とは電気回路配線6を通して熱的に結合する。
【0027】
温度検出素子5、発熱素子2および放熱体3の熱容量の大きさは、
温度検出素子<発熱素子<放熱体、の関係にある。すなわち、温度検出素子5の熱容量は発熱素子2の熱容量より小さく、放熱体3の熱容量は発熱素子2の熱容量より大きい。この関係により、発熱素子2の熱を熱伝導シート4および放熱体3を介して外部に放熱させながら、温度検出素子5によって発熱素子2の温度を精度良く、また高速に応答性良く検出して、電力回路を保護できる。さらに例えば、発熱素子での電力損失が大きい場合や、大きな電力損失に対応して、放熱体のサイズを大きくした場合などにおいても、高速に応答性良く温度を検出できることから、温度検出素子の温度検出値を固定した所定値として設計することで、発熱体の最高温度を所定値にできる。また、発熱素子での電力損失の大きさや放熱体の放熱量の大きさに柔軟に対応して、発熱体の最高温度を所定値に制限できる。
【0028】
また、ここで、発熱素子2と温度検出素子5との間の熱抵抗を(発熱素子−温度検出素子)で表し、発熱素子2と放熱体3との間の熱抵抗を(発熱素子−放熱体)で表し、温度検出素子5と放熱体3との間の熱抵抗を(温度検出素子−放熱体)で表すと、
(発熱素子−温度検出素子)<(発熱素子−放熱体)<(温度検出素子−放熱体)、の関係にある。このように、温度検出素子5の熱容量が、放熱体3の熱容量よりも小さい関係のもとで、発熱素子2と温度検出素子5との間の熱抵抗が、発熱素子2と放熱体3との間の熱抵抗よりも小さいと、放熱体3の温度が上昇するよりも先に、発熱素子2の温度を温度検出素子5により検出することができる。このため、放熱体3の温度が上昇するよりも先に、電力回路の動作を停止するなどして、放熱体3の温度上昇を抑制することができる。
【0029】
図2は上記電力回路の回路図の一例である。この電力回路はDC−DCコンバータである。図2において、トランスTの一次側にスイッチ素子Q1,Q2、共振キャパシタCrが設けられている。トランスTの二次側にダイオードブリッジDB、平滑キャパシタCoおよび負荷RLが設けられている。スイッチ素子Q1,Q2は図1に示した発熱素子2に相当する。
【0030】
上記スイッチ素子Q1,Q2はそれぞれMOS−FETである。制御回路CNTはスイッチ素子Q1,Q2のゲート・ソース間に制御電圧を与える。
【0031】
上記一次側には、更に抵抗R1およびシャントレギュレータSRによる定電圧回路が構成されている。この定電圧回路の出力には抵抗R2およびサーミスタRtによる抵抗分圧回路が接続されている。サーミスタRtは図1に示した温度検出素子5に相当する。したがって、サーミスタRtはスイッチ素子Q1,Q2と熱的に結合している。
【0032】
制御回路CNTはこの抵抗分圧回路の出力電圧を読み取ることにより、スイッチ素子Q1,Q2の温度を検出する。
【0033】
例えば負荷RLが過負荷状態となって、スイッチ素子Q1,Q2の発熱量が過大となれば、スイッチ素子Q1,Q2の温度が規定の上限値に達する。制御回路CNTはこの状態を抵抗R2およびサーミスタRtによる分圧電圧から検知すれば、スイッチ素子Q1,Q2のスイッチングを停止するか、または出力電力を抑制する。
【0034】
上記構成により、スイッチ素子Q1,Q2の熱を熱伝導シート4および放熱体3を介して外部に放熱させながら、サーミスタRtによって発熱素子2の温度を精度良くまた高速に応答性良く検出して、電力回路を保護できる。
【0035】
上記スイッチ素子Q1,Q2はガリウムナイトライド(GaN)またはシリコンカーバイド(SiC)などの化合物半導体によるスイッチ素子であることが好ましい。これにより、低い電流経路抵抗による低損失化を実現でき、高速スイッチングに対応できることにより、インダクタンス素子やキャパシタンス素子の小型化が図れる。さらに高温動作が可能であるので、放熱体の小型化が図れる。これらのことにより、小型の割には高電力の電力回路モジュールが構成できる。
【0036】
図1に示した例において、熱伝導シート4は、発熱素子2と温度検出素子5との間に入り込んでいる。これは熱伝導シート4が、発熱素子2および温度検出素子5と、放熱体3との間に挟み込まれたことで、発熱素子2と温度検出素子5との間に押し込まれるためである。
【0037】
より具体的に、発熱素子2と温度検出素子5とは、互いの側面同士が平行となるように配置されている。これにより、発熱素子2と温度検出素子5とは互いの側面同士が対向している。熱伝導シート4は、発熱素子2と温度検出素子5の側面同士が対向する部分に入り込んでいる。そして熱伝導シート4は発熱素子2と温度検出素子5の対向する側面に接している。
【0038】
これにより、発熱素子2と温度検出素子5とは、側面同士で対向する部分が熱伝導シート4により熱的に接続されている。つまり、熱伝導シート4は、発熱素子2と温度検出素子5の天面同士を熱的に接続するだけでなく、互いの側面同士も熱的に接続している。したがって、温度検出素子5によって発熱素子2の温度を高精度に、また高速に応答性良く検出して、電力回路を保護できる。
【0039】
さらに熱伝導シート4は、発熱素子2に押し込まれることで、発熱素子2の全ての側面に接している。また、熱伝導シート4は、温度検出素子5に押し込まれることで、温度検出素子5の全ての側面に接している。したがって、温度検出素子5によって発熱素子2の温度を高精度に、また高速に応答性良く検出して、電力回路を保護できる。
【0040】
なお、図1に示した例では、発熱素子2と温度検出素子5とは直接的に接することなく、間隙が設けられているが、発熱素子2と温度検出素子5とは直接接していてもよい。また、この間隙部分に熱伝導部材が挟み込まれていてもよいし、充填されていてもよい。
【0041】
また、温度検出素子であるサーミスタRtは二つのスイッチ素子Q1,Q2のうち、発熱温度の高い方に熱的に結合させてもよい。すなわち、複数の発熱素子を備える場合に、熱伝導シート4を複数の発熱素子に熱的に結合させ、温度検出素子5を複数の発熱素子のうち発熱温度が最も高くなる発熱素子の近傍に配置してもよい。
【0042】
また、複数の発熱素子を備える場合に、個別に温度検出素子を熱的に結合させてもよい。
【0043】
《第2の実施形態》
図3は第2の実施形態に係る電力回路モジュール102の主要部の縦断面図である。この電力回路モジュール102は、電子回路基板1と、発熱素子2と、温度検出素子5と、電気回路配線6と、放熱体3と、熱伝導シート4と、第2面側熱伝導シート8と、第2面側放熱体7と、を備える。図1に示した例とは、第2面側熱伝導シート8および第2面側放熱体7を備える更に点で異なる。その他の構成は第1の実施形態で示したとおりである。
【0044】
第2面側熱伝導シート8は、熱伝導シート4と同様の放熱シリコーンゴムであり、電子回路基板1の第1面S1とは反対面である第2面S2に接する。第2面側放熱体7は例えばAl、Fe、Cu等の金属板または樹脂成型体であり、第2面側熱伝導シート8に接する。この第2面側放熱体7は例えば筐体の一部であってもよい。
【0045】
本実施形態によれば、第2面側放熱体7による放熱作用が付加されるので全体の放熱効果が高い。そのため、発熱素子2の発熱量の割に放熱体3の熱容量や面積が小さい場合に、第2面側放熱体7を設けることで、必要な放熱効果を得ることができる。
【0046】
なお、発熱素子2と温度検出素子5との間の熱抵抗は相対的に小さいので、本実施形態のように、発熱素子2の発熱量に応じて第2面側放熱体7を付加した場合においても、そのことで、温度検出素子5による発熱素子2の温度の検出値は影響を受け難い。したがって、第2面側放熱体7を付加しても、発熱素子の温度を精度よく検出することができ、電力回路を保護できる。
【0047】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0048】
CNT…制御回路
Co…平滑キャパシタ
Cr…共振キャパシタ
DB…ダイオードブリッジ
Q1,Q2…スイッチ素子
R1,R2…抵抗
RL…負荷
Rt…サーミスタ
S1…第1面
S2…第2面
SR…シャントレギュレータ
T…トランス
1…電子回路基板
2…発熱素子
3…放熱体
4…熱伝導シート
5…温度検出素子
6…電気回路配線
7…第2面側放熱体
8…第2面側熱伝導シート
11,12,13,14…回路部品
101,102…電力回路モジュール
図1
図2
図3