(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2充電時間の演算において、前記第1タイミングの時の前記充電状態、前記バッテリ周囲温度、及び、前記第2充電電力に基づき、前記第2充電時間を演算する請求項1又は2記載の充電時間演算方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態に係る充電システムのブロック図である。本実施形態に係る充電システムは、電気自動車、プラグインハイブリッド車両の車両等に搭載のバッテリを充電するシステムである。なお、充電システムは、車両に限らず、バッテリを備えた他の装置に搭載されてもよい。
【0010】
本実施形態に係る充電システムは、バッテリ20、電源30、及び充電制御装置100を備えている。充電制御装置100は、バッテリ20の状態を管理し、電源30から入力される電力を制御し、バッテリ20に充電電力を制御することで、バッテリ20の充電を制御する。また、充電制御装置100はバッテリ20の充電時間を演算する。充電制御装置100は、コントローラ10、充電器11、電圧センサ12、電流センサ13、及び温度センサ14、15を有している。
【0011】
コントローラ10は、電圧センサ12、電流センサ13、及び温度センサ14、15の検出値を取得し、充電器11から出力されるバッテリ20への充電電力を制御する。なお以下の記載では、コントローラ10による充電器11からバッテリ20への充電電力の充電制御を、単にコントローラ10による充電制御とも記載する。コントローラ10は、バッテリ20への充電電力を制御する充電制御機能と、バッテリ20の充電時間(充電開始から終了までの充電時間であり、総充電時間とも記載する)を演算する充電時間演算機能を有している。コントローラ10は、CPU、メモリ等を有している。メモリには、バッテリ20に含まれる、充電制御機能及び充電時間演算機能などの各種機能を発揮するためのプログラムが記憶されている。そして、CPUは、メモリに記録された各種プログラムを実行するためのハードウェアである。CPUは、プログラムを実行することで、各種機能を発揮する。コントローラ10は、バッテリ20の充電状態(SOC:State оf Charge)を演算することでバッテリ20の状態を管理する。コントローラ10は、バッテリ20の充電モードに応じて、バッテリ20の充電時間を演算する。コントローラ10で算出された充電時間は例えば電気自動車、プラグインハイブリッド車両の車両等であれば、インストルメントパネル等の車両のユーザーが視認可能な位置に設けられた表示装置40に表示する。なお、算出した充電時間(充電開始から充電終了までの時間)から充電開始からの経過時間を減算した時間を、現在から充電終了までの時間(残充電時間)として表示装置40に表示してもよい。
【0012】
充電器11は、バッテリ20と電源30との間に接続されている。充電器11は、電源30に接続される。充電器11は、電源30から入力される電圧を、バッテリ20の充電に適した電圧に変換して、変換された電圧を、バッテリ20の充電電圧としてバッテリ20に出力する。充電器11は、電圧変換回路、スイッチ等を有している。
【0013】
電圧センサ12はバッテリ20の端子間電圧を検出するためのセンサである。バッテリ20が複数の電池で構成されている場合には、電圧センサ12は、複数の電池の各端子間電圧を検出する。電圧センサ12は、バッテリ20に含まれる各電池の端子間に接続されている。電流センサ13は、バッテリ20の充電電流を検出するためのセンサである。電流センサ13は、充電器11の出力とバッテリ20との間に接続されている。
【0014】
温度センサ14は、バッテリ20自体の温度を検出するためのセンサである。温度センサ14は、バッテリ20に直接接触した状態で、バッテリ20に設置されている。なお、温度センサ14は、バッテリ20を間接的に検出可能な位置に設置されてもよい。温度センサ15は、バッテリ20の周囲の温度(環境温度)を検出するためのセンサである。温度センサ15は、バッテリ20の外部に設置されている。
【0015】
バッテリ20は、リチウムイオン電池等の二次電池(セル)を有している。二次電池は並列又は直列に接続されている。電源30は、家庭用の交流電源等である。
【0016】
本実施形態において、一般家庭に設けられた交流電源を利用してバッテリ20を充電する場合(例えば普通充電の場合)には、電源30に含まれるコンセントと車両に設けられた充電器11との間が充電ケーブルで電気的に接続されることで、充電器11、バッテリ20及び電源30が電気的に接続される。屋外に設置された充電装置を利用してバッテリ20を充電する場合(例えば急速充電の場合)には、充電器11及び電源30は外部の充電装置に含まれる構成となり、充電器11の出力に接続される充電ケーブルを、バッテリ20に電気的に接続することで、充電器11、バッテリ20及び電源30が電気的に接続される。
【0017】
次に、コントローラ10の充電制御機能について説明する。コントローラ10は、バッテリの状態及びバッテリ20の上限電圧に応じて充電器11を制御して、バッテリ20を充電する際の充電電力を制御する。
【0018】
コントローラ10は、バッテリ20の電圧と予め定めた上限電圧(例えばバッテリ20が満充電となった場合の電圧)との差に基づいて充電可能電力を算出し、充電可能電力に基づいて充電器11からバッテリ20へ供給される充電電力を制御する。具体的には、充電器11の出力可能な電力の最大値である出力可能電力がバッテリ20の充電可能電力未満の場合は充電器11の出力可能電力で定電力充電を行い、充電器11の出力可能電力がバッテリ20の充電可能電力以上の場合は充電可能電力で充電を行うように充電器11を制御する。また、コントローラ10はバッテリ20の温度が予め定めた所定温度以上となった場合は充電器11からバッテリ20へ供給される充電電流を、バッテリ20の温度に応じたバッテリ20の温度上昇を抑制可能な電流値である制限充電電流に制限する。
【0019】
ここで通常、車両用の充電器11の出力可能電力(例えば50kW)に対して充電中のバッテリ20の電圧変化(例えば20V)は充分小さいため、充電器11の出力可能電力で定電力充電を行っている際の電流変化は小さい。従って、充電器11の出力可能電力での定電力充電は略CC充電(定電流充電)と言える。また、充電器11の出力可能電力がバッテリ20の充電可能電力以上となり、充電可能電力での充電を開始した際のバッテリ20の電圧は既に、上限電圧に近い状態であり、その後のバッテリ20の電圧変化は極小さい。従って、充電器11の出力可能電力がバッテリ20の充電可能電力以上となった後の充電可能電力での充電はCV充電(定電圧充電)と言える。
【0020】
上述の通り、コントローラ10によって実施される充電可能電力に基づく充電制御はCC-CV充電と言える。このため、コントローラ10は、CC充電モード、CC−CV充電モード及び温度切替充電モードを含んだ複数の充電モードを適宜切り替えて充電を実施してもよい。CC充電モードではCC(constant−current)方式(定電流方式)でバッテリ20を充電する。CC(constant−current)方式は、充電電流を一定にしてバッテリ20を充電する方式である。CC−CV充電モードでは、バッテリ20の充電可能電力に基づき、充電の途中で、CC方式からCV(constant−voltage)方式(定電圧方式)に切り換えて、バッテリ20を充電する。CV方式は、充電電圧を一定にしてバッテリ20を充電する方式である。CC方式による充電後に、CV方式による充電に切り換える場合に、CV方式による充電では、充電電圧を一定に保ちつつ、充電電流を段階的に小さくして、目標SOCまでバッテリ20を充電する。温度切替充電モードでは、バッテリ20の温度が制限温度に達した後は、バッテリ温度に応じて充電電流を、バッテリ20の温度上昇を抑制可能な電流値としての制限充電電流に制限して、制限充電電流でバッテリ20を充電する。
【0021】
コントローラ10は、バッテリ20の初期状態として、バッテリ20の現在のSOC(以下、現在SOCとも称す)及びバッテリ20の充電可能電力を演算する。コントローラ10のメモリには、バッテリ20の開放電圧(OCV)とSOCとの対応関係を示すマップ(電圧−SOCマップ)が記憶されている。コントローラ10は、電圧−SOCマップを参照し、電圧センサ12の検出電圧(開放電圧に相当)に対応するSOCを、バッテリ20の現在SOCとして演算する。なお、電圧−SOCマップで示される関係性は、バッテリ20の劣化度により変わるため、コントローラ10は、バッテリ20の劣化度を演算しつつ、劣化度に応じて、電圧とSOCの対応関係を補正した上で、現在SOCを演算してもよい。コントローラ10は、例えば、電池出荷時の開放電圧と現在の開放電圧との比較、あるいは、内部抵抗の大きさに基づき劣化度を演算すればよい。
【0022】
充電可能電力は、バッテリ20の充電の際、バッテリ20の劣化の促進を抑制しながら充電できる最大の電力であって、充電器11からバッテリ20に入力可能な最大の入力電力である。バッテリ20に対して入力可能な電力は、バッテリ20の現在の電圧とバッテリの上限電圧との差で変わるため、充電可能電力は、バッテリ20の現在の電圧とバッテリの上限電圧(充電上限電圧)との差から演算されてもよい。なお充電可能電力は一般的に、入力可能電力あるいは最大充電可能電力や最大入力可能電力とも言われ、本実施形態においては充電可能電力と記載する。コントローラ10は、以下の要領で、充電可能電力を演算する。
【0023】
バッテリ20には、バッテリ20の性能に応じて、充電上限電圧がセル毎に設定されている。充電上限電圧は、バッテリ20の劣化を防止するために、バッテリ20を充電する際の、上限となる電圧である。充電上限電圧は、バッテリ20を構成する電池(セル)の内部で、リチウムの析出が開始する電圧、または、リチウムの析出が開始する電圧よりも低い電圧が設定される。
【0024】
充電上限電圧は、バッテリ20へ入力される充電電流、バッテリ温度、及び、バッテリ20の内部抵抗に応じて、演算される。例えば、充電上限電圧は、バッテリ20の充電電流が大きいほど低く演算され、バッテリ20の充電電流が小さいほど高くなるように演算される。
【0025】
バッテリ20が複数の電池により構成されている場合には、複数の電池の中で最も電圧が高い電池の電圧を、充電上限電圧に抑えなければならない。コントローラ10は、各セルの電圧から、最も電圧が高いセルを特定する。充電可能電力演算部55は、特定されたセルの電圧、当該セルの内部抵抗、セルの充電電流及び充電上限電圧に基づき、バッテリに入力可能な入力可能電流を演算する。
【0026】
入力可能電流は、最も高い端子電圧を有するセルの内部抵抗と、当該セルの充電上限電圧から演算される。セルの内部抵抗は、セルの端子電圧と、当該セルの充電電流から演算される。
【0027】
図2は、入力可能電流(I
MAX)の演算方法を説明する図である。コントローラ10は、最も高い端子電圧を有するセルの内部抵抗から、
図2に示すように、当該セルの内部抵抗線L
Rを演算する。
【0028】
内部抵抗線L
Rは、最も高い端子電圧を有するセルについて、当該セルの充電電流と、当該セルの電圧との関係を示す直線である。なお、内部抵抗線L
Rは、例えばバッテリ20の総内部抵抗及びバッテリ20の開放電圧から演算することができる。バッテリ20の総内部抵抗は、バッテリ20に含まれる複数のセルの全体の抵抗値である。
【0029】
充電上限電圧線L
V_LIMは、バッテリ20の充電電流と相関性を有している。そのため、充電上限電圧(充電上限電圧線L
V_LIMに相当)とバッテリ20の充電電流との相関性をもつマップが、予めメモリに記録されている。
【0030】
図2に示す特性において、充電上限電圧線L
V_LIMと内部抵抗線L
Rとの交点における電流が、最も高い端子電圧を有するセルへの入力可能電流となる。これにより、入力可能電流が演算される。上述のとおり、内部抵抗はバッテリ20の開放電圧から演算でき、開放電圧が低いほど内部抵抗は小さくなる。そして、
図2の特性より、内部抵抗が低いほど、入力可能電流は高くなる。
【0031】
そして、充電可能電力演算部55は、バッテリ20の充電上限電圧に入力可能電流(I
MAX)を乗じることで、充電可能電力を演算することができる。これにより、コントローラ10は、バッテリ20の電圧とバッテリ20の充電上限電圧に基づき、バッテリ20の充電可能電力を演算する。コントローラ10は、バッテリ20の充電中も、充電可能電力を演算している。なお、充電可能電力の演算方法は、上記以外の方法であってもよい。
【0032】
コントローラ10は、バッテリ20の充電可能電力及び充電器11の出力可能電力に応じて、充電モードを切り替える。充電器11の出力可能電力は、充電器11から出力可能な最大の出力電力を示しており、充電器11の定格電力に相当する。すなわち、出力可能電力は充電器11の能力に応じて予め設定されている値であり、充電器11の出力電力は、この出力可能電力以下に制限されている。充電器11には、出力可能電力が高い急速充電器と、急速充電器よりも出力可能電力が低い普通充電器がある。コントローラ50は、ケーブル等により、充電器11とバッテリ20との間の接続を確認すると、充電器11から送信される信号を受信し、充電器11の出力可能電力を取得する。
【0033】
コントローラ10は、バッテリ20の充電可能電力と充電器11の出力可能電力を比較し、バッテリ20の充電可能電力が充電器11の出力可能電力より高い場合には、充電器11の出力可能電力をバッテリ20の充電電力に設定する。そして、コントローラ10は、バッテリ20への充電電力が演算された充電電力で一定に保たれるようにバッテリ20を充電する。なおここで、上述の通り充電器11の出力可能電力でのバッテリ20の充電は略CC方式での充電と言えるため、以下では便宜上CC方式と記載する。
【0034】
バッテリの充電可能電力が充電器11の出力可能電力より高くなった状態が、充電開始から充電終了まで保たれる場合には、コントローラ10はCC方式のみでバッテリ20を充電する。例えば、ユーザが満充電よりも低いSOCを目標値に設定し、普通充電器でバッテリ20を充電する場合には、バッテリ20が目標SOCまで充電したとしても、バッテリの充電可能電力は充電器11の出力可能電力より高いままである。このような充電では、コントローラ10はCC方式のみでバッテリ20を充電する。
【0035】
コントローラ10は、バッテリ20の充電可能電力が充電器の出力可能電力より低い場合には、バッテリ20の充電可能電力をバッテリ20の充電電力に設定する。ここで、バッテリ20の充電可能電力が充電器の出力可能電力より低い場合とはバッテリの電圧が略上限電圧に近い状態であるため、バッテリ20の電圧を略一定に保ちながら充電を行う事となる。すなわち、コントローラ10は、バッテリ20の電圧を略一定に保ちつつ、バッテリ20の充電電流を時間の経過と共に減少させる充電
を実施する。このため、このバッテリ20の充電可能電力での充電を以下では便宜上CV方式と記載する。
【0036】
例えば、ユーザが満充電に近いSOCを目標SOCに設定し、充電器でバッテリ20を充電する場合には、バッテリ20の充電開始時は、バッテリ20の充電可能電力が充電器の出力可能電力より高い。まずコントローラ10はCC方式でバッテリ20を充電する。バッテリ20の電圧は徐々に高くなり、バッテリ20の充電可能電力は低くなる。そして、バッテリ20の充電可能電力が充電器の出力可能電力より低くなると、コントローラ10は、バッテリ20の充電モードをCC方式からCV方式に切り換える。コントローラ10は、バッテリ20のSOCが目標SOCに達するまで、CV方式でバッテリ20を充電する。
【0037】
充電中、バッテリ20が高温状態になることを防ぐために、制限温度が設定されている。制限温度は、予め設定された温度閾値である。コントローラ10は、充電中、温度センサ14を用いてバッテリ20の温度を管理している。コントローラ10は、温度センサ14により検出された温度と制限温度とを比較する。温度センサ14の検出温度が制限温度より低い場合には、コントローラ10は、CC方式でバッテリ20を充電する。一方、温度センサ14の検出温度が制限温度以上である場合には、コントローラ10は、バッテリ20の温度上昇を抑制可能な電流値である制限充電電流でバッテリ20を充電する。例えば、バッテリ20の周囲温度が高い環境下でバッテリ20を充電する場合には、バッテリ20の温度は充電中も高くなるため、バッテリ20の温度が制限温度に達しやすい状態になる。このような環境下でバッテリ20を充電する場合には、コントローラ10は、CC方式でバッテリ20の充電を開始し、バッテリ20の温度が制限温度に達した時点で、充電電力を制限することによる充電電流の制限を開始する。そして、コントローラ10は、バッテリ20のSOCが目標SOCに達するまで、制限した充電電力で充電する。なお、この充電電流の制限は例えば充電電力を、バッテリ20の温度が高くなるほど小さくなる1以下の係数をバッテリ20の温度が制限温度に達した時点の充電電力に乗算した電力に制限する事によって実施することができる。この場合、バッテリ20の温度が高くなるほど充電電流(制限充電電流)は小さい値に制限されるため、充電電流はバッテリ20の温度が上昇しない電流値となる。充電電流の制限方法は上記に限らず、充電電流を予め定められたバッテリ20の温度上昇を防止する程度の充分小さな電流値に制限してもよい。
【0038】
上記のように、コントローラ10は、バッテリ20の充電可能電力及びバッテリ20の温度をそれぞれ管理しつつ、バッテリ20の充電電力を制御している。すなわち、バッテリ20の充電可能電力が充電器11の出力可能電力より低くなる前に、バッテリ20の温度が制限温度に達する場合には、コントローラ10は、温度切替充電モードにより、CC方式からバッテリ20の温度上昇を抑制する為の制限充電電流でバッテリ20を充電する。一方、バッテリ20の温度が制限温度より高くなる前に、バッテリ20の充電可能電力が充電器11の出力可能電力より低くなる場合には、コントローラ10は、CC−CV充電モードにより、CC方式からCV方式に切り替えて、バッテリ20を充電する。CV方式による充電では、SOCの増加に伴って充電電力(充電電流)が減少していくため、結果的にバッテリ20の温度上昇が抑制される。従って、バッテリ20の温度が制限温度に達する前にCC方式からCV方式による充電に切り替わった場合には、バッテリ20の温度が制限温度に達することは無い。これにより、本実施形態に係る充電システムでは、バッテリ20の高温状態を防ぎつつ、バッテリ20を充電する。
【0039】
コントローラ10は、充電中、電流センサ13を用いてバッテリ20の充電電流を検出している。コントローラ10は、検出された充電電流を積算することで、充電中のSOCを演算する。そして、バッテリ20の現在SOCが目標SOCに達した場合に、コントローラ10は、充電器11からバッテリ20への出力を停止して、バッテリ20の充電を終了させる。
【0040】
次に、コントローラ10の充電時間演算機能について、
図3を用いて説明する。
図3は、コントローラ10の充電時間演算機能を説明するためのブロック図である。なお、
図3の矢印は、主な制御フローの順序を示しているが、コントローラ10は必ずしも、矢印に示す順序で制御フローを実行する必要はない。
【0041】
コントローラ10は、予め設定された複数の目標SOC毎に、充電時間を演算する。複数の目標SOCは、例えば、25%、50%、75%、及び100%である。コントローラ10は、目標SOCに応じて充電制御モードを切り替えている。充電時間の演算方法は、充電制御モードに応じて異なる。そのため、コントローラ10は、目標SOCまで充電する際の充電制御モード、複数の目標SOC毎に決定し、決定された充電制御モードで充電した場合の充電時間を、複数の目標SOC毎に演算している。コントローラ10は、バッテリの充電が実際に開始される前に、以下に説明する方法にてバッテリ20の現在SOCから目標SOCまでの充電時間を演算する。
【0042】
ステップS1にて、コントローラ10は、バッテリ20の充電開始時の状態を確認するために、電圧センサ12を用いてバッテリ20の電圧を検出し、温度センサ14を用いてバッテリ20の現在の温度を検出する(バッテリ状態の検出)。また、コントローラ10は、温度センサ15を用いて、バッテリ20の周囲温度を検出する(バッテリ周囲温度の検出)。ステップS2にて、コントローラ10は、充電制御機能と同様の方法により、バッテリ20の現在の充電可能電力を演算する。ステップS3にて、コントローラ10は、充電制御機能と同様の方法により、バッテリ20の現在の開放電圧に基づき現在SOCを演算する。ステップS4にて、コントローラ10は、バッテリ20の現在の充電可能電力及び充電器11の出力可能電力に基づき、バッテリの充電電流を演算する。
【0043】
ステップS5にて、コントローラ10は、バッテリ20の充電上限電圧(CC充電時における上限電圧)を演算する。
図2に示すように、充電上限電圧は充電電流により変化する。コントローラ10には、
図2に示すマップが予め記憶されているため、コントローラ10は、マップを参照しつつ、ステップS4で演算された充電電流に基づき、充電上限電圧を演算する。
【0044】
ステップS6にて、コントローラ10は、バッテリ20の充電可能電力が充電器の出力可能電力未満となるタイミング(以下、CCCV切替タイミングとも称する)を演算しつつ、CCCV切替タイミング時のSOC(以下、CCCV切替SOCとも称する)を演算する。充電中におけるバッテリの状態変化(状態の推移)は、バッテリ20の特性及び充電器11の出力特性より、充電開始前に把握できる。そのため、コントローラ10は、CC方式による充電を行う場合に、バッテリ20の充電開始時からのバッテリ電圧の上昇推移を演算し、演算されたバッテリ電圧と上限電圧とから、充電可能電力が充電器の出力可能電力未満になるタイミングを、CCCV切替タイミングとして演算する。
【0045】
コントローラ10は、充電開始時からCCCV切替タイミングまでの、充電電流の積算値を求め、バッテリ20の現在の充電容量に積算値を加算することで、CCCV切替タイミング時の充電容量を演算する。現在の充電容量は、バッテリ20の現在のSOCから演算される。そして、コントローラ10は、CCCV切替タイミング時の充電容量をバッテリ20の満充電容量で除算することで、CCCV切替SOCを演算する。
【0046】
ステップS7にて、コントローラ10は、バッテリ20の温度、バッテリ20の周囲温度、CC方式による充電時の充電電流に基づき、制限温度到達時のタイミング(以下、制限温度タイミングとも称する)を演算する。制限温度タイミングは、充電により上昇するバッテリ温度が制限温度に達するタイミングである。制限温度は、バッテリ20の特性に応じて予め設定されており、例えば50℃に設定されている。
【0047】
具体的には、コントローラ10は、下記式(1)を用いて、制限温度タイミングを演算する。
[数1]
Δt=(T
LIM−T
b)/[{I
2×R−K×(T
a−T
b)}/Q
c] (1)
ただし、tは充電開始時から制限温度タイミングまでの時間を示し、T
LIMは制限温度を示し、T
aはバッテリ20の周囲温度を示し、T
bはバッテリ温度を示し、Iは充電電流を示し、Rはバッテリ20の内部抵抗を示し、Kは放熱係数を示し、Q
cは熱容量を示す。
【0048】
T
LIM及びKはバッテリ20の性能により予め決まっている。Q
cはバッテリ20を構成するセルのパック構造等により決まっている。T
aは温度センサ15から取得され、T
bは温度センサ14から取得される。Iは、ステップS4で演算されている。Rはバッテリ20の劣化度等により演算により求められる。
【0049】
コントローラ10は、式(1)に含まれるパラメータを、センサの検出値及び演算により取得し、式(1)により制限温度タイミングを演算する。
【0050】
ステップS8にて、コントローラ10は、バッテリ温度が制限温度に達する時のSOC(以下、制限温度SOCとも称する)を演算する。具体的には、コントローラ10は、充電開始時から制限温度タイミングまでの、充電電流の積算値を求め、バッテリ20の現在の充電容量に積算値を加算することで、制限温度タイミング時の充電容量を演算する。コントローラ10は、制限温度タイミング時の充電容量をバッテリ20の満充電容量で除算することで、制限温度SOCを演算する。
【0051】
ステップS9にて、コントローラ10は、図示しないメモリから、複数の目標SOCを取得する。
【0052】
ステップS10にて、コントローラ10は、目標SOC、制限温度SOC、及びCCCV切替SOCを比較し、最も低いSOCを特定する。例えば、制限温度SOCの演算結果が45%であり、CCCV切替SOCの演算結果が60%であると仮定する。目標SOCが25%である場合には、最も低いSOCは目標SOCとなり、目標SOCが50%、75%、又は100%である場合には、最も低いSOCは制限温度SOCとなる。
【0053】
コントローラ10は、3種類のSOC(目標SOC、制限温度SOC、及びCCCV切替SOC)のうち、最も低いSOCとして特定されたSOCの種類に応じて、充電時間の演算方法を切り替える。CCCV切替SOCが最も低い場合には、コントローラ10はステップS11の演算処理にて充電時間を演算する。目標SOCが最も低い場合には、コントローラ10はステップS12の演算処理にて充電時間を演算する。制限温度SOCが最も低い場合には、コントローラ10はステップS13の演算処理にて充電時間を演算する。
【0054】
ステップS11にて、コントローラ10は、充電開始時のバッテリの温度、充電開始時のSOC、及び充電電力に基づき、バッテリ20の充電時間を演算する。
図4は、バッテリ温度、SOC、充電電力、及び充電時間の対応関係を示すマップを説明するための図である。メモリには、
図4に示すマップが予め記憶されている。
図4に示すマップは、所定のSOCまで充電する際の充電時間を表しており、マップは複数の目標SOC毎に記憶されている。コントローラ10は、目標SOCに対応するマップを選択し、選択されたマップを参照しつつ、充電開始時のバッテリ温度、SOC、及び充電電力に対応する充電時間を演算する。
【0055】
ステップS12にて、コントローラ10は、充電開始時のSOCから目標SOCまで充電するために必要な充電容量を、CC方式による充電時の充電電流で除算することで、充電時間を演算する。
【0056】
ステップS13にて、コントローラ10は、制限温度タイミングより前の充電時間(以下、第1充電時間とも称す)に、制限温度タイミング以降の充電時間(以下、第2充電時間とも称す)を加算することで、総充電時間を演算する。総充電時間は、バッテリ20の現在SOCから目標SOCまでの充電時間である。第1充電時間は、制限温度タイミングで示される時間である。
【0057】
コントローラ10は、
図4に示すマップを用いて、第2充電時間を演算する。コントローラ10は、バッテリ20の充電開始時の周囲温度をマップ上のバッテリ温度に適用し、制限温度SOCをマップ上のSOCに適用する。また、コントローラ10は、充電器の出力可能電力をマップ上の充電電力に適用する。バッテリ20の温度が制限温度に達した場合には、充電電力がバッテリ温度(制限温度に相当)に応じて制限される。なお、コントローラ10は、充電電力の代わりに、制限温度タイミング時の充電電流を適用してもよい。充電電流を適用する際には、マップ上では、充電電力の代わりに充電電流で、充電時間との対応関係が示される。コントローラ10は、
図4に示すマップを参照し、バッテリ20の周囲温度、制限温度SOC、制限温度タイミングの時の充電電流に対応する充電時間を、第2充電時間として演算する。そして、コントローラ10は、第1充電時間に第2充電時間を加算することで、総充電時間を演算する。
【0058】
ステップS11〜S13の制御フローにより充電時間を終了した後、コントローラ10は、ユーザにより指定された目標SOCに応じて、演算された充電時間のうち、指定された目標SOCに対応する充電時間を決定する。コントローラ10は、バッテリ20の充電開始後、カウントダウンで充電時間を減算することで、充電中の充電時間を演算する。
【0059】
上記のように、本実施形態に係る充電制御装置において、コントローラ10は、バッテリ20の現在の電圧に基づきバッテリのSOCを演算し、バッテリ20の電圧とバッテリ20の充電上限電圧に基づき、バッテリの充電可能電力を演算する。コントローラ10は、充電可能電力及び充電器11の出力可能電力を比較し、低い方の電力を充電電力として演算し、バッテリ20の温度及びバッテリ20の周囲温度、及び充電電力で充電する際の充電電流に基づき、制限温度タイミングを演算する。また、コントローラ10は、バッテリ温度に応じて制限される制限充電電力を演算する。コントローラ10は、充電電力、充電状態、バッテリ温度、及び充電時間の対応関係を示すマップを参照し、制限温度タイミングに達する時のバッテリ20の状態及び充電電力に基づき、制限温度タイミングより後の第2充電時間を演算する。そして、コントローラ10は、制限温度タイミングに達するまでの第1充電時間に第2充電時間を加えた時間を、バッテリ20の総充電時間とし演算する。これにより、充電時間の演算制度を高めることができる。
【0060】
本実施形態では、制限温度タイミングがCCCV切替タイミングより早い場合に、第1充電時間及び第2充電時間をそれぞれ演算し、第1充電時間に第2充電時間を加算することで、総充電時間を演算している。
【0061】
制限温度タイミングがCCCV切替タイミングより早い場合に、本実施形態と異なる充電時間の演算方法として、充電開始時のバッテリ状態(SOC、バッテリ温度)と充電開始時の充電電力から、
図4に示すマップを参照して充電時間を演算することも考えられる。言い換えると、制限温度タイミングとCCCV切替タイミングを区別することなく、
図4に示すマップを用いたマップ演算のみで充電時間を演算する方法も考えられる。しかしながら、例えば、高速走行と急速充電を短期間で繰り返した場合には、充電開始時の温度がバッテリ20の周囲温度と比較して高くなっているため、
図4に示すマップを用いたマップ演算で総充電時間を求めると、演算精度が低いという問題がある。すなわち、
図4のマップに含まれる温度条件は、通常、バッテリ20が長時間放置され、バッテリ20の温度が安定し、バッテリ温度と周囲温度との間で大きな差がない状態を温度条件としている。そのため、マップで想定しているバッテリ20の状態と、実際のバッテリ20の状態が異なる場合には、演算精度が低くなってしまう。
【0062】
また、マップに含まれるパラメータに、バッテリ20の周囲温度を追加することも考えられる。しかしながら、マップが複雑になるという問題がある。
【0063】
本実施形態では、バッテリの充電開始時から、バッテリ温度が制限温度に達するまでの時間を、バッテリ20の発熱量、放熱量、パック熱容量、バッテリ温度、バッテリ20の周囲温度、及び充電開始時の充電電流を含む関係式を用いて、充電開始時のバッテリ20の状態に基づき、第1充電時間を演算する。そして、バッテリ20の温度が制限温度に達したときのバッテリの状態及び制限充電電力に基づき、マップ演算により、第2充電時間を演算する。これにより、充電開始時に、バッテリの状態がマップ演算に適さない状態でも、充電時間の演算精度を高めることができる。
【0064】
また本実施形態では、CCCV切替タイミングを演算し、CCCV切替タイミングが制限温度タイミングより早い場合には、
図4に示すマップを参照しつつ、充電開始時のバッテリ20の状態及び充電開始時の充電電力に基づき、総充電時間を演算する。これにより、本実施形形態では、充電開始から充電終了まで、バッテリ温度が制限温度以下に抑えられる場合に、高い精度で充電時間を演算できる。
【0065】
また本実施形態では、制限温度タイミング時のSOC、バッテリ20の周囲温度、及び制限充電電力に基づき、第2充電時間を演算する。これにより、充電時間の演算精度を高めることができる。
【0066】
また本実施形態では、バッテリの充電が実際に開始される前に、総充電時間を演算する。本実施形態おける充電時間の演算方法は、演算に必要なパラメータを、実際の充電よりも前に取得できるため、実際の充電開始前に充電時間を演算できる。