(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ホルダ側保持面の中心軸に対する前記ホルダ側被保持面の中心軸の偏心方向と、前記ガイド側保持面の中心軸に対する前記ガイド部材の外周面の中心軸の偏心方向とが互いに反対方向となっており、かつ、
前記ホルダ側保持面の中心軸に対する前記ホルダ側被保持面の中心軸の偏心量と、前記ガイド側保持面の中心軸に対する前記ガイド部材の外周面の中心軸の偏心量とが互いに同じである、請求項2に記載のウォーム減速機。
前記軸受には、前記ウォーム減速機の運転時に作用している、前記第1の弾性付勢部材と前記第2の弾性付勢部材とのばね荷重によって予圧が付与される、請求項5又は6に記載のウォーム減速機。
前記ハウジングに設けられたハウジング側係合部と、前記ガイド部材に設けられたガイド側係合部とを凹凸係合させることにより、前記ハウジングに対し前記ガイド部材が回転することが規制されている、請求項1〜7のうちの何れか1項に記載のウォーム減速機。
【背景技術】
【0002】
図7は、自動車用の操舵装置の従来構造の1例を示している。ステアリングホイール1の回転は、ステアリングギヤユニット2の入力軸3に伝達され、入力軸3の回転に伴って左右1対のタイロッド4が押し引きされて、前車輪に舵角が付与される。ステアリングホイール1は、ステアリングシャフト5の後端部に支持固定されており、ステアリングシャフト5は、円筒状のステアリングコラム6に軸方向に挿通された状態で、ステアリングコラム6に回転可能に支持されている。ステアリングシャフト5の前端部は、自在継手7を介して中間シャフト8の後端部に接続され、中間シャフト8の前端部は、別の自在継手9を介して、入力軸3に接続されている。
【0003】
図示の例では、電動モータ10を補助動力源としてステアリングホイール1を操作するために要する力の低減を図る、電動式パワーステアリング装置が組み込まれている。電動式パワーステアリング装置には減速機が組み込まれているが、この減速機として、大きなリード角を有し、動力の伝達方向に関して可逆性を有するウォーム減速機が、一般的に使用されている。
図8は、特許第4381024号公報に記載されている、ウォーム減速機の従来構造の1例を示している。ウォーム減速機11は、ハウジング12と、ウォームホイール13と、ウォーム14とを備える。
【0004】
ハウジング12は、電動モータ10に対して支持固定されており、ホイール収容部15と、ホイール収容部15に対し捩れの位置に存在し、かつ、軸方向中間部がホイール収容部15内に開口したウォーム収容部16とを有する。ウォームホイール13は、外周面にホイール歯24を有し、ホイール収容部15の内側に回転自在に支持された、被駆動軸であるステアリングシャフト5(
図7参照)の前端寄り部分に、ステアリングシャフト5と同軸に支持固定されている。
【0005】
ウォーム14は、軸方向中間部外周面にホイール歯24と噛合するウォーム歯17を有している。ウォーム14は、ウォーム歯17を挟んだ軸方向2箇所位置を、深溝型玉軸受などの1対の転がり軸受18a、18bにより、ウォーム収容部16の内側に回転自在に支持されている。1対の転がり軸受18a、18bのうち、ウォーム14の先端側の転がり軸受18aの外輪は、ウォーム収容部16の奥端寄り部分の内側に締り嵌めで内嵌されたホルダ19に圧入されている。また、ウォーム14の先端側の転がり軸受18aの内輪は、ウォーム14の先端寄り部分でウォーム歯17から外れた部分に設けられた大径部20に、弾性材製のブッシュ21を介して外嵌されている。一方、ウォーム14の基端側の転がり軸受18bの外輪は、ウォーム収容部16の開口部に圧入されており、ウォーム14の基端側の転がり軸受18bの内輪は、ウォーム14の基端部に隙間嵌で外嵌されている。ウォーム14は、基端部(
図8の左端部)に、駆動軸である電動モータ10の出力軸が接続されている。すなわち、ウォーム14は、電動モータ10により回転駆動可能となっている。
【0006】
従来のウォーム減速機11では、ホイール歯24とウォーム歯17との噛合部に、ウォーム減速機11を構成する部材のそれぞれの寸法誤差や組立誤差などに基づいて、不可避のバックラッシュが存在する。このバックラッシュの存在に基づき、ステアリングシャフト5の回転方向を変える際に、噛合部で耳障りな歯打ち音が発生する場合がある。これに対し、図示の例では、基端側の転がり軸受18bの内輪の内周面と、ウォーム14の基端部外周面との間に微小隙間が設けられ、ウォーム14の基端部がウォーム収容部16に対し、若干の揺動変位を可能に支持されている。ウォーム14の先端寄り部分に設けられた大径部20の外周面と、ブッシュ21の内周面との間には微小隙間が設けられている。ウォーム14の先端部には合成樹脂製の予圧パッド22が締り嵌めで外嵌され、予圧パッド22とホルダ19との間には捩りコイルばね23が設けられている。この捩りコイルばね23により、予圧パッド22を介して、ウォーム14の先端部が、電動モータ10の出力軸の中心軸およびウォーム14の中心軸に直交する方向である第1の方向D1(
図8の上下方向)に関して、ウォームホイール13側(
図8の上側)に向け弾性的に押圧されている。この結果、ホイール歯24とウォーム歯17との間のバックラッシュが抑えられ、歯打ち音の発生を抑えられる。ただし、ウォーム歯17とホイール歯24との噛合部での歯打ち音の発生をより効果的に抑える面からは改良の余地がある。また、特に、ホイール歯とウォーム歯の歯面が摩耗した場合でも、該噛合部での歯打ち音の発生をより効果的に抑えることが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述のような事情に鑑み、ホイール歯とウォーム歯との噛合部での歯打ち音の発生をより効果的に抑えることができる構造を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のウォーム減速機は、ハウジングと、ウォームホイールと、ウォームと、軸受と、ホルダ部材と、ガイド部材と、第1の弾性付勢部材とを備える。
前記ハウジングは、ガイド保持部を有する。
前記ウォームホイールは、ホイール歯を有する。
前記ウォームは、前記ホイール歯と噛合するウォーム歯を有する。
前記軸受は、前記ウォームの先端部に外嵌されている。
前記ホルダ部材は、前記軸受を内嵌保持するホルダ側保持面と、該ホルダ側保持面の中心軸に対し偏心したホルダ側被保持面とを有する。
前記ガイド部材は、前記ホルダ部材を、前記ホルダ側被保持面の中心軸を中心とする揺動を可能に内嵌保持するガイド側保持面を有し、かつ、前記ガイド保持部に内嵌保持されている。
前記第1の弾性付勢部材は、前記ホルダ部材を前記ガイド部材に対して回転させる方向に弾性的に付勢することにより、前記ウォームの先端部を前記ウォームホイール側に向けて弾性的に付勢する。
【0010】
なお、前記軸受としては、例えば、内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に転動自在に配置された転動体とを備える転がり軸受を使用することができる。前記軸受として転がり軸受を使用する場合、より具体的には、ラジアル玉軸受やラジアルころ軸受、ラジアル円すいころ軸受などを使用できる。または、前記軸受として、滑り軸受を使用しても良い。
【0011】
前記ガイド部材の外周面を、円筒面状とし、かつ、前記ガイド側保持面の中心軸に対し偏心させることができる。
【0012】
前記ホルダ側保持面の中心軸に対する前記ホルダ側被保持面の中心軸の偏心方向と、前記ガイド側保持面の中心軸に対する前記ガイド部材の外周面の中心軸の偏心方向とが互いに反対方向となっており、かつ、前記ホルダ側保持面の中心軸に対する前記ホルダ側被保持面の中心軸の偏心量と、前記ガイド側保持面の中心軸に対する前記ガイド部材の外周面の中心軸の偏心量とが互いに同じであるようにしてもよい。
【0013】
前記第1の弾性付勢部材を捩りコイルばねとすることができる。
【0014】
前記ガイド部材を前記ウォームホイール側に向けて弾性的に付勢する、第2の弾性付勢部材をさらに備えることができる。この場合、前記第2の弾性付勢部材を板ばねとすることができる。
【0015】
前記軸受には、前記ウォーム減速機の運転時に作用している、前記第1の弾性付勢部材と前記第2の弾性付勢部材とのばね荷重によって予圧が付与されるようにできる。
【0016】
前記ハウジングに設けられたハウジング側係合部と、前記ガイド部材に設けられたガイド側係合部とを凹凸係合させることにより、前記ハウジングに対し前記ガイド部材が回転することを規制することができる。
【0017】
前記第1の弾性付勢部材を、前記軸受の軸方向両側部分のうち、前記ウォームホイール側に設置することができる。
【発明の効果】
【0018】
上述のような本発明のウォーム減速機によれば、ホイール歯とウォーム歯との噛合部での歯打ち音の発生をより効果的に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜
図6は、本発明の実施の形態の1例を示している。本例のウォーム減速機は、
図8に示した従来構造のウォーム減速機11と同様に、ハウジング12aと、ウォームホイール13と、ウォーム14とを備える。ハウジング12aは、ホイール収容部15と、ホイール収容部15に対し捩れの位置に存在し、かつ、軸方向中間部がホイール収容部15内に開口したウォーム収容部16aとを有する。ウォーム収容部16aは、軸方向片端部(
図1の左端部)内周面に、円筒面状のガイド保持部25を有する。ガイド保持部25は、径方向に関してホイール収容部15と反対側に位置する部分に、径方向外方に凹んだ断面円形の凹部であるハウジング側係合部54を有する。
【0021】
ウォームホイール13は、外周面にホイール歯24を有し、ホイール収容部15の内側に回転自在に支持された、被駆動軸であるステアリングシャフト5(
図7参照)の前端寄り部分に、ステアリングシャフト5と同軸に支持固定されている。ウォームホイール13は、例えば、金属材料製の円盤状部材の周囲に合成樹脂製のホイール歯24を結合固定したものを使用することができる。あるいは、ウォームホイール13全体を、金属材料または合成樹脂により構成しても良い。
【0022】
ウォーム14は、金属材料製で、軸方向中間部に設けられたウォーム歯17をホイール歯24に噛合させた状態で、基端部を電動モータ10の出力軸に、トルクの伝達を可能に連結されている。ウォーム14は、ハウジング12aのウォーム収容部16aに、回転自在に、かつ、基端部を中心とする揺動変位を可能に支持されている。このために、ウォーム14のうち、ウォーム歯17を挟んだ軸方向両側2箇所位置に、1対の転がり軸受18b、18cが外嵌されている。なお、1対の転がり軸受18b、18cはそれぞれ、単列深溝型のラジアル玉軸受やラジアルころ軸受、ラジアル円すいころ軸受などにより構成されている。
【0023】
ウォーム14をウォーム収容部16aに、回転自在に、かつ、基端部を中心とする揺動変位を可能に支持するための具体的な構造について、従来技術に関する
図8を参照しながら説明する。ウォーム収容部16aの開口部には軸受嵌合部26が設けられており、軸受嵌合部26の軸方向片端部(
図8の右端部)には軸方向他方に向いたハウジング側段差部27が設けられている。基端側の転がり軸受18bを構成する外輪28の軸方向片側面は、ハウジング側段差部27に突き当てられており、外輪28の外周面は、軸受嵌合部26に締り嵌めで内嵌されている。外輪28の軸方向他側面(
図8の左側面)には、ウォーム収容部16aの開口部のうち、軸受嵌合部26の軸方向他側に隣接する部分に係止された止め輪29の軸方向片側面が突き当られており、これにより、外輪28の軸方向変位が規制されている。ウォーム14の基端部には、小径部30が設けられており、小径部30の軸方向片端部には、軸方向他方に向いたウォーム側段差部31が設けられている。基端側の転がり軸受18bを構成する内輪32の軸方向片側面は、皿ばねなどの弾性体33を介してウォーム側段差部31に突き当てられており、内輪32の内周面は、小径部30に隙間嵌で外嵌されている。内輪32の軸方向他側面には、小径部30の軸方向他端部に螺合されたナット34の先端面(軸方向片側面)が、弾性体33を介して突き当られている。換言すれば、内輪32は、小径部30に隙間嵌で外嵌された状態で、ウォーム側段差部31とナット34との間で、1対の弾性体33を介して弾性的に挟持されている。これにより、ウォーム14の基端部がウォーム収容部16aの開口部に対し、基端側の転がり軸受18bを介して支持されている。
【0024】
ただし、ウォーム14をウォーム収容部16aに、基端部を中心とする揺動変位を可能に支持するための構造は、本例の構造に限定されるものではない。すなわち、例えば、基端側の転がり軸受18bの内部隙間を大きくすることで、ウォーム14を、基端部を中心とする揺動変位を可能に構成することもできる。あるいは、ウォーム14の基端部周囲に軸受を設けず、電動モータ10の出力軸とウォーム14の基端部とを、径方向に弾性変形可能な弾性部材を備えた継手を介して連結しても良い。
【0025】
ウォーム14の先端部(
図1の左端部)は、ウォーム収容部16aのガイド保持部25の内径側に、先端側の転がり軸受18cにより、回転およびウォームホイール13に対する若干の遠近動を可能に支持されている。先端側の転がり軸受18cを構成する内輪は、ウォーム14の先端部に締り嵌めで外嵌固定されている。ただし、先端側の転がり軸受18cの内輪を、ウォーム14の先端部に、径方向にがたつかない程度に緩く外嵌することもできる。
【0026】
先端側の転がり軸受18cの外輪と、ウォーム収容部16aのガイド保持部25との間には、ウォーム14の先端部を、電動モータ10の出力軸の中心軸およびウォームホイール13の中心軸に直交する第1の方向D1(
図1〜
図3および
図6の上下方向)に関して、ウォームホイール13側(
図1〜
図3および
図6の下側)に向けて弾性的に押圧するための付勢機構35が設けられている。付勢機構35は、ホルダ部材36と、ガイド部材37と、第1の弾性付勢部材である捩りコイルばね38と、第2の弾性付勢部材である板ばね39とを備える。
【0027】
ホルダ部材36は、合成樹脂製、または、アルミニウム系合金若しくはマグネシウム系合金などの軽合金製で、全体を略円筒状に構成されている。ホルダ部材36は、内周面に、先端側の転がり軸受18cを内嵌保持するためのホルダ側保持面40を有し、かつ、ホルダ側保持面40の軸方向他端部から径方向内方に折れ曲がった内向フランジ部63を有する。本例では、先端側の転がり軸受18cの外輪の軸方向他側面の外径寄り部分を内向フランジ部63に突き当てることにより、ホルダ部材36に対する先端側の転がり軸受18cの軸方向に関する位置決めを図りつつ、この外輪の外周面をホルダ側保持面40に締り嵌めで内嵌している。なお、本例では、ホルダ側保持面40の径方向反対側2箇所位置に、径方向外方に凹んだ断面略矩形の凹部41を設けることにより、ホルダ側保持面40に先端側の転がり軸受18cの外輪を圧入しやすくしている。
【0028】
また、ホルダ部材36は、外周面に、ホルダ側保持面40の中心軸O
40に対し偏心した中心軸O
42を有するホルダ側被保持面42を有する。ホルダ側被保持面42は、円周方向1箇所位置に径方向内方に凹んだ断面半円弧形の凹部である、ホルダ側目印部43を有する。本例では、ホルダ側目印部43は、ホルダ側被保持面42のうち、ホルダ側保持面40の中心軸O
40に対するホルダ側被保持面42の中心軸O
42の偏心方向に直交する方向に関する片側の端部(
図2および
図3の下端部)に設けられている。
【0029】
さらに、ホルダ部材36は、軸方向他側面の円周方向1箇所位置から軸方向他側に突出するように設けられた変位側ピン部44を有する。
【0030】
ガイド部材37は、合成樹脂製、または、アルミニウム系合金若しくはマグネシウム系合金などの軽合金製で、外径側筒部45と、側板部46と、内径側筒部47とを備える。外径側筒部45は、略円筒状に構成され、内周面に、ホルダ部材36を内嵌保持するためのガイド側保持面48を有し、外周面に、ガイド側保持面48の中心軸O
48に対し偏心した中心軸O
50を有するガイド側被保持面50を有する。ガイド側保持面48は、円周方向1箇所位置に径方向内方に凹んだ断面半円形の凹部である、ガイド側目印部49を有する。本例では、ガイド側目印部49は、ガイド側保持面48のうち、ガイド側保持面48の中心軸O
48に対するガイド側被保持面50の中心軸O
50の偏心方向に直交する方向に関する片側の端部(
図2および
図3の下端部)に設けられている。
【0031】
ガイド側保持面48は、ホルダ部材36を、ホルダ側被保持面42の中心軸O
42を中心とする揺動を可能に保持する。すなわち、ガイド側保持面48の内径は、ホルダ側被保持面42の外径よりもわずかに大きくなっている。
【0032】
また、外径側筒部45は、外周面のうち、径方向に関してガイド側目印部49と反対側に位置する部分(
図2および
図3の上端部)に、切り欠き部51を有する。切り欠き部51の軸方向片側部には、軸方向から見た形状が半円形である抑えピン部52の基端部が支持されている。抑えピン部52の先端部(軸方向他半部)内側面と、切り欠き部51の軸方向他側部との間にはスリット53が設けられている。換言すれば、抑えピン部52の先端部内側面と切り欠き部51の軸方向他側部とは、径方向に関する微小隙間であるスリット53を介して対向している。なお、本例では、スリット53の断面形状は、後述する板ばね39の基部60に沿って、波形になっている。
【0033】
側板部46は、円輪状で、外径側筒部45の軸方向他側縁から径方向内方に伸長するように設けられている。側板部46の円周方向1箇所位置には、変位側ピン部44を挿通するための部分円弧形の透孔55が設けられている。このような構成により、ホルダ部材36をガイド側保持面48内に内嵌保持した状態で、変位側ピン部44の先端部が、透孔55を通じて側板部46の軸方向他側面から突出するようになっている。また、
図5も参照して、側板部46の軸方向他側面のうち、径方向に関して透孔55と略反対側となる部分には、静止側ピン部56が軸方向他方に突出するように設けられている。
【0034】
内径側筒部47は、略円筒状で、側板部46の内周縁から軸方向他側に伸長するように設けられている。内径側筒部47は、外周面のうち、円周方向に関する位相がウォーム歯17とホイール歯24との噛合部と一致する部分に、径方向外方に突出する位置決め用凸部57を有する。
【0035】
ガイド部材37は、ハウジング12aのガイド保持部25の内径側に、抑えピン部52とハウジング側係合部54とを緩く係合させることにより、ウォーム歯17とホイール歯24との噛合部に対する遠近動を可能に、かつ、この遠近動を阻害しない程度にガイド保持部25に対する回転を実質的に阻止した状態で内嵌されている。すなわち、本例では、抑えピン部52が、ガイド側係合部としての機能も有し、ハウジング側係合部54と凹凸係合する。また、本例では、ガイド保持部25の内径を、ガイド側被保持面50の外径よりも大きくすることにより、ガイド部材37がガイド保持部25の内径側で、第1の方向D1に関してウォームホイール13に対する遠近動が可能になっている。ただし、ガイド保持部25は、ガイド部材37を、第1の方向D1に関してウォームホイール13に対する遠近動を可能に内嵌できれば、円筒面状に限らず、軸方向から見た形状を楕円形や小判型の長円形、矩形状などにすることもできる。さらに、ガイド側被保持面50についても、円筒面状に限らず、軸方向から見た形状を楕円形や小判型の長円形としたり、矩形筒状としたりすることもできる。
【0036】
捩りコイルばね38は、金属線を曲げ成形してなり、コイル部58と、1対の腕部59a、59bとを備える。コイル部58には、ガイド部材37の内径側筒部47が挿入されている。1対の腕部59a、59のうちの一方の腕部59aは、ホルダ部材36の変位側ピン部44に押し付けられ、他方の腕部59bは、ガイド部材37の静止側ピン部56に押し付けられる。一方の腕部59aにより、変位側ピン部44が円周方向に弾性的に押圧されると、ホルダ部材36がガイド部材37に対して回転する方向(
図2の反時計回り、
図3の時計回り)に弾性的に付勢される。なお、捩りコイルばね38が弾力を発揮した状態では、内径側筒部47の位置決め用凸部57の先端部が、コイル部58の内周面と当接する。換言すれば、位置決め用凸部57により、内径側筒部47の外周面とコイル部58の内周面との当接部の位置決めが図られている。また、位置決め用凸部57が設けられる円周方向位相は、捩りコイルばね38によってガイド部材37が付勢される方向となり、したがって、位置決め用凸部57によって、ガイド部材37が付勢される方向を確認できる。
【0037】
板ばね39は、弾性を有する金属板製で、波形に湾曲した基部60と、この基部60の両側縁から円周方向に伸長する部分円筒状の1対の腕部61とを備える。板ばね39は、基部60を、ガイド部材37のスリット53に内に挿入することで、ガイド部材37に対して支持されている。
【0038】
付勢機構35をガイド保持部25の内径側に組み付ける以前の自由状態での、1対の腕部61の曲率は、ガイド保持部25の曲率よりも小さくなっている。このため、付勢機構35をガイド保持部25の内径側に組み付けた状態では、1対の腕部61の周方向両端部が、ガイド保持部25の内周面に押し付けられる。そして、ガイド部材37のガイド側被保持面50のうち、第1の方向D1に関してウォームホイール13に近い側(
図2の下側)の端部が、ガイド保持部25に対し弾性的に押し付けられる。この結果、ガイド側被保持面50とガイド保持部25との間部分のうちで、第1の方向D1に関してウォームホイール13から遠い側(
図2の上側)の端部に、ウォーム減速機の運転時にウォーム14に加わる噛み合い反力に基づいてガイド部材37が変位することを許容するための隙間が設けられる。このような構成により、ホイール歯24とウォーム歯17との噛合部からウォーム14に加わる噛み合い反力に基づいて、ウォーム14の先端部が、第1の方向D1に関してウォームホイール13から離れる方向に変位可能となっている。ウォーム14の先端部が、第1の方向D1に関してウォームホイール13から離れる方向に変位すると、板ばね39により、ウォーム14の先端部に対し、このウォーム14の先端部を、第1の方向D1に関してウォームホイール13側に向けて弾性的に押圧する力(弾力)が付与される。なお、板ばね39のばね定数は、十分に小さく設定されている。なお、板ばね39によって、ウォーム14の先端部が、第1の方向D1に関してウォームホイール13から離れる方向に変位するように付勢できれば、1対の腕部61の曲率は、ガイド保持部25の曲率よりも小さくてもよいが、大きくしてもよい。また、板ばね39によって、ウォーム14の先端部が、第1の方向D1に関してウォームホイール13から離れる方向に変位するように付勢できれば、1対の腕部61の長さも、任意に設定される。
【0039】
このような構成を有する付勢機構35は、次のようにしてガイド保持部25の内径側に組み付けられる。まず、ホルダ部材36のホルダ側保持面40に、先端側の転がり軸受18cの外輪を圧入により内嵌保持する。次に、ホルダ側目印部43とガイド側目印部49との円周方向に関する位相を一致させた状態で、ホルダ部材36のホルダ側被保持面42を、ガイド部材37のガイド側保持面48に内嵌保持する。そして、変位側ピン部44の先端部を、透孔55を通じて側板部46の軸方向他側面から突出させる。なお、捩りコイルばね38に付勢力が作用していない自由状態、或いは、変位側ピン部44が
図3に示す透孔55の反時計方向の進み側の端部に当接した状態では、
図2において、ホルダ部材36のホルダ側目印部43がガイド部材37のガイド側目印部49に対して時計方向の進み側に位置している。一方、ホルダ側目印部43とガイド側目印部49との円周方向に関する位相を一致させた状態では、ホルダ側保持面40の中心軸O
40に対するホルダ側被保持面42の中心軸O
42とは、第2の方向D2(
図2、
図3および
図6の左右方向)に沿って、水平となっている。なお、本例では、ホルダ側保持面40の中心軸O
40に対するホルダ側被保持面42の中心軸O
42の偏心方向(
図2の右方向)と、ガイド側保持面48の中心軸O
48に対するガイド側被保持面50の中心軸O
50の偏心方向(
図2の左方向)とが互いに反対方向となっており、かつ、ホルダ側保持面40の中心軸O
40に対するホルダ側被保持面42の中心軸O
42の偏心量と、ガイド側保持面48の中心軸O
48に対するガイド側被保持面50の中心軸O
50の偏心量とが互いに同じとなっている。
【0040】
次いで、ガイド部材37のスリット53に、板ばね39の基部60を圧入して、ガイド部材37に対し板ばね39を支持する。また、捩りコイルばね38のコイル部58に内径側筒部47を挿入し、1対の腕部59a、59bを、変位側ピン部44と静止側ピン部56とにそれぞれ押し付ける。そして、抑えピン部52とハウジング側係合部54とを係合させながら、ガイド部材37のガイド側被保持面50を、ハウジング12aのガイド保持部25に内嵌しつつ、先端側の転がり軸受18cの内輪に、ウォーム14の先端部を圧入する。このようにして、ウォーム14の先端部と、ハウジング12aのガイド保持部25との間に、先端側の転がり軸受18cと付勢機構35とを組み付けた後、本例では、ハウジング12aの軸方向片端部をカバー62により塞いでいる。
【0041】
なお、先端側の転がり軸受18cと付勢機構35とを組み付ける手順は、矛盾を生じない限り、その順番を入れ替えたり、同時に実施したりすることができる。具体的には、例えば、ウォーム14の先端部に、先端側の転がり軸受18cの内輪を圧入した後で、先端側の転がり軸受18cとガイド保持部25との間に、付勢機構35を組み付けるようにしても良い。
【0042】
本例のウォーム減速機では、ホルダ部材36のうち、外周面であるホルダ側被保持面42の中心軸O
42が、内周面であるホルダ側保持面40の中心軸O
40に対し、
図2の右方向に偏心している。これにより、捩りコイルばね38により、ホルダ部材36をガイド部材37に対し回転させる方向に弾性的に付勢する力を、ウォーム14の先端部を、第1の方向D1に関してウォームホイール13側に向けて弾性的に付勢する力に変換可能としている。すなわち、捩りコイルばね38の弾力により、ホルダ部材36がガイド部材37に対し、
図2の反時計回りに回転すると、ホルダ側保持面40の中心軸O
40は、
図6(A)→
図6(B)に示すように、ホルダ側被保持面42の中心軸O
42を中心として反時計方向に変位する。この結果、ホルダ部材36のうち、径方向に関して噛合部に近い側の端部に位置する部分の肉厚が小さくなる。そして、ホルダ側保持面40に内嵌保持されたウォーム14の先端部が、第1の方向D1に関してウォームホイール13側に向けて弾性的に付勢される。
【0043】
なお、本例では、ウォーム歯17とホイール歯24との噛合部における噛み合い抵抗が過度に大きくなることがないように、捩りコイルばね38の弾力を調整して、この捩りコイルばね38の弾力に基づき、ウォーム14の先端部を、第1の方向D1に関してウォームホイール13側に向けて弾性的に押圧する力を十分小さくしている。
【0044】
本例のウォーム減速機によれば、ウォーム歯17とホイール歯24との噛合部でのバックラッシュが抑えられるとともに、ウォーム減速機を構成する部材のそれぞれの寸法誤差や組立誤差、ホイール歯24やウォーム歯17の歯面の摩耗などにかかわらず、ウォーム歯17とホイール歯24との噛合位置のばらつきが抑えられる。すなわち、ウォーム減速機を構成する部材のそれぞれに寸法誤差や組立誤差が生じたり、ホイール歯24やウォーム歯17の歯面が摩耗したりすると、捩りコイルばね38の弾力に基づいて、ウォーム14の先端部が、第1の方向D1に関してウォームホイール13側に向けて押圧されて、ホイール歯24とウォーム歯17との噛合位置のずれが補正される。このため、本例のウォーム減速機では、ウォーム減速機を構成する部材のそれぞれの寸法精度や組立精度を特に高くしなくても、このような寸法誤差や組立誤差を効果的に吸収でき、ウォーム歯17とホイール歯24との噛み合い位置のばらつきが抑えられ、さらに、ホイール歯24の歯面が摩耗した場合でもこの噛み合い位置のばらつきが防止される。この結果、ウォーム歯17とホイール歯24との噛合部での歯打ち音の発生がより効果的に防止される。
【0045】
これに対し、
図7に示した従来構造では、捩りコイルばね23により、ウォーム14の先端部を、第1の方向D1に関してウォームホイール13側に弾性的に押圧する力を適切な大きさに調節するためには、ウォーム減速機11を構成する部材のそれぞれの寸法精度および組立精度を十分に確保する必要があり、このウォーム減速機11の製造コストが増大する可能性がある。すなわち、従来のウォーム減速機11では、ハウジング12のウォーム収容部16の内側にホルダ19が圧入され、このホルダ19に、先端側の転がり軸受18aの外輪が圧入されている。先端側の転がり軸受18aの内輪はブッシュ21に隙間なく外嵌され、このブッシュ21が、ウォーム14の大径部20に径方向の微小隙間を介して外嵌されている。ウォーム14の先端部に圧入された予圧パッド22と、ホルダ19との間に捩りコイルばね23が設けられており、この捩りコイルばね23により、ウォーム14の先端部が、第1の方向D1に関してウォームホイール13側に弾性的に押圧され、バックラッシュが抑えられている。したがって、ウォーム減速機11を構成する部材のそれぞれの寸法誤差や組立誤差により、径方向の微小隙間の径方向寸法がばらつくと、ウォーム14の先端部をウォームホイール13側に弾性的に押圧する力を適切な大きさに調節できなくなる可能性がある。
【0046】
なお、本例では、ガイド部材37の外周面であるガイド側被保持面50の中心軸O
50を、ガイド部材37の内周面であり、ホルダ部材36を内嵌保持するためのガイド側保持面48の中心軸O
48に対し偏心させている。そして、ホルダ側保持面40の中心軸O
40に対するホルダ側被保持面42の中心軸O
42の偏心方向と、ガイド側保持面48の中心軸O
48に対するガイド側被保持面50の中心軸O
50の偏心方向とを互いに反対方向とし、かつ、ホルダ側保持面40の中心軸O
40に対するホルダ側被保持面42の中心軸O
42の偏心量と、ガイド側保持面48の中心軸O
48に対するガイド側被保持面50の中心軸O
50の偏心量とを互いに同じとしている。このため、ホルダ部材36がガイド部材37に対し回転した場合でも、ウォームホイール13の軸方向と平行な方向である第2の方向D2(
図2、
図3および
図5の左右方向)に関して、先端側の転がり軸受18cをほぼ中央位置に配置することができる。
【0047】
また、本例では、ウォーム減速機の運転時に、ウォーム歯17とホイール歯24との噛合部からウォーム14に噛み合い反力が加わると、ガイド側被保持面50とガイド保持部25との間に存在する隙間のうち、第1の方向D1に関してウォームホイール13から遠い側の端部に位置する部分における隙間の存在に基づき、ウォーム14の先端部が、板ばね39を弾性的に押し潰しつつ、第1の方向D1に関してウォームホイール13から離れる方向に変位する。これにより、ホイール歯24とウォーム歯17との噛合状態が適正に維持される。また、本例では、ウォーム減速機の運転を停止し、噛合部からウォーム14に噛み合い反力が加わらなくなると、板ばね39により、ウォーム14が第1の方向D1に関してウォームホイール13側に押圧され、ウォーム14が元の位置に戻る。すなわち、ガイド側被保持面50とガイド保持部25とが、円周方向に関する位相が、ウォーム歯17とホイール歯24との噛合部と一致する部分で当接する。したがって、ガイド側被保持面50とガイド保持部25との間に存在する隙間のうち、第1の方向D1に関してウォームホイール13から遠い側の端部に位置する部分における隙間を、長期間にわたって維持することができる。
【0048】
なお、ウォーム歯17は、ウォーム14の軸方向中間部外周面にらせん状に形成されている。このため、ウォーム14が回転駆動され、ウォーム14からウォームホイール13に駆動力が伝達されると、ウォームホイール13からウォーム14に、ウォーム14の軸方向および第1の方向D1だけでなく、第2の方向D2の成分を含む噛み合い反力が加わる。本例では、ウォーム歯17とホイール歯24との噛合部からウォーム14に噛み合い反力が加わっていない状態で、ガイド側被保持面50のうち、円周方向に関する位相が噛合部と一致する部分が、ガイド保持部25の内周面に当接しており、板ばね39により、ガイド部材37をウォームホイール13側に弾性的に付勢している。このため、電動モータ10の出力軸の回転方向が変わる際に、ウォーム14の先端部が第2の方向D2に変位することを、前述の
図7に記載した構造と比較して小さく抑えられて、噛合部での歯打ち音の発生をより確実に抑えることができる。
【0049】
また、ガイド側被保持面50とガイド保持部25との間に存在する隙間のうち、第1の方向D1に関してウォームホイール13から遠い側の端部に位置する部分における隙間の維持は、捩りコイルばね38と板ばね39の2つのばね荷重特性のバランスによって与えられる。
その際、転がり軸受18cにも、ウォーム減速機の運転時に作用している、捩りコイルばね38と板ばね39のばね荷重によって予圧が付与される。即ち、付勢機構35による第1の方向D1への移動距離が大きくなるにつれて、該隙間の調整は、板ばね39のばね荷重による調整から捩りコイルばね38のばね荷重による調整へと切り換わる。このため、付勢機構35の第1の方向D1への移動距離が短い場合には、転がり軸受18cの予圧は、主に板ばね39によって行われ、付勢機構35の第1の方向D1への移動距離が長い場合には、転がり軸受18cの予圧は、主に捩りコイルばね38によって行われる。
【0050】
なお、ウォーム14の先端部が第1の方向D1に変位可能な量は、ガイド側被保持面50と、ガイド保持部25の内周面との間の隙間のうち、第1の方向D1に関してウォームホイール13から遠い側の端部に位置する部分における隙間の径方向寸法に依存する。この径方向寸法の管理(調整)は、
図7に記載の従来構造のように、大径部20の外周面とブッシュ21の内周面との間に全周にわたって設けられた微小隙間の大きさを管理する場合に比べて、比較的容易に行うことができる。すなわち、従来構造では、ウォーム14やウォームホイール13の寸法誤差や組立誤差に基づいて、ウォーム歯17とホイール歯24との噛み合い位置がばらついたり、ハウジング12に対するホルダ19の組み付け誤差が大きくなったりすると、前記微小隙間のうち、第1の方向D1に関してウォームホイール13から遠い側の端部に位置する部分における微小隙間の径方向寸法が確保し難くなる可能性がある。これに対し、本例では、前記隙間のうち、第1の方向D1に関してウォームホイール13から遠い側の端部に位置する部分における隙間の径方向寸法の確保は、ガイド保持部25に対するガイド部材37の組み付け位置を調整することにより図ることができる。したがって、ウォーム14の先端部が第1の方向D1に変位可能な量の確保を比較的に容易に図ることができ、ウォーム減速機の製造コストの上昇を抑えられる。
【0051】
なお、本例では、板ばね39のばね定数を十分に小さいため、ウォームホイール13やウォーム14の回転速度、ウォーム歯17とホイール歯24との噛合部で伝達されるトルクの大きさ、ハウジング12a内の温度変化に伴う、ウォームホイール13とウォーム14との中心軸同士の距離の変化にかかわらず、噛合部における噛み合い抵抗の変化を小さくできる。
【0052】
また、本例では、捩りコイルばね38を、ガイド部材37の側板部46の外周縁から軸方向他側に伸長するように設けられた内径側筒部47の周囲に設けるようにしている。すなわち、捩りコイルばね38を、先端側の転がり軸受18cの軸方向両側部分のうち、ウォームホイール13側に設置している。このため、ハウジング12aのウォーム収容部16aの軸方向に関する寸法を小さく抑えられ、ウォーム減速機の小型化および軽量化を図りやすい。
【0053】
本出願は、2017年8月31日出願の日本特許出願2017−167675に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。