(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1要素固定具の、前記カラムの流路に対応する位置に貫通孔が形成され、該貫通孔が、該カラムが位置する側から前記イオン化プローブが位置する側に向かって内径が大きくなるテーパ状部を有する
ことを特徴とする請求項4に記載のイオン化プローブ接続用治具。
【背景技術】
【0002】
液体試料に含まれる成分を分析する装置として、液体クロマトグラフが広く用いられている。液体クロマトグラフでは、移動相の流れに乗せて液体試料をカラムに導入し、該液体試料に含まれる各種成分を時間的に分離した後、検出器で測定する。検出器として質量分析計を有する液体クロマトグラフは、液体クロマトグラフ質量分析装置と呼ばれる。液体クロマトグラフ質量分析装置では、液体クロマトグラフのカラムから順次溶出される各種成分を質量分析計のイオン化プローブに導入してイオン化し、生成されたイオンを質量電荷比ごとに測定する。
【0003】
従来、液体クロマトグラフのカラムとイオン化プローブの接続は、所定の位置に固定された液体クロマトグラフのカラム出口側の端面にイオン化プローブの入口側の端面を押し当てることにより行われている。こうした作業には、例えば、一端側から他端側に向かって徐々に内径が大きくなる形状を有し該他端側の内周面にねじ
溝が形成されたスリーブ、該スリーブに内挿されるフェルール、及び前記ねじ
溝に螺合されるねじ
山が外周面に形成された筒状の押し込み部材からなる接続治具が用いられる。イオン化プローブの入口側流路の端部にフェルール及び押し込み部材を取り付けてスリーブに内挿し、押し込み部材の外周
のねじ
山をスリーブの内周
のねじ
溝に螺合してフェルールをスリーブに押し込むことによって、イオン化プローブの入口側端面を所定の位置に固定されたカラム出口側端面に押し当て、両者を面当たりさせて接続する。
【0004】
液体クロマトグラフ質量分析装置において、試料に含まれる微量の成分を高感度で測定するために、最近ではナノESIやマイクロESIと呼ばれるものが広く用いられている。これらは、細径のカラムを使用するとともに移動相の流量をnL/minレベルからμL/minレベルに抑えることにより、イオン化プローブに導入される溶出液の単位時間当たりの量を抑えることで、帯電効率を高めたり脱溶媒させやすくしたりしてイオン化効率を高めたものである。
【0005】
上述のように移動相の流量を低く抑えると、カラム後の配管内部に僅かな空間(デッドボリューム)が存在するだけで、カラムで分離された各成分が拡散しやすくなる。例えば、カラム出口とイオン化プローブの入口の間の流路にデッドボリュームが存在すると、その容積により成分の拡散が生じる。未熟な使用者が上述の接続用治具を用いてカラムとイオン化プローブを接続すると、フェルールの押し込み量が十分でなく、大きなデッドボリュームが生じてしまう場合があった。そこで、上述の接続用治具のフェルールに代えて円筒状の部材を用い、イオン化プローブの入口の押し込み量を多くすることによりカラムとイオン化プローブの接続部のデッドボリュームを小さくすることが提案されている(例えば非特許文献1)。
【0006】
また、カラムおよびイオン化プローブを、カラムの出口とイオン化プローブの入口の間のデッドボリュームを最小化した状態で一体化し、使用者がカラムとイオン化プローブの接続作業を行う必要をなくすことも提案されている(例えば特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
マイクロESIやナノESIと呼ばれる液体クロマトグラフ質量分析装置では、細径のカラムを効率よく温調するために、小型のカラムオーブンが用いられる。非特許文献1に記載のイオン化プローブ接続用治具を用いて、小型のカラムオーブンの内部にセットされたカラムにイオン化プローブを接続するには、カラムオーブン内の狭い空間に手を差し込んで、押し込み部材の外周
のねじ
山をスリーブの内周
のねじ
溝に螺合しなければならず、作業効率が悪いという問題があった。
【0010】
一方、特許文献1に記載の構成では、使用者がカラムとイオン化プローブを接続する作業を行う必要がないため上記の問題は生じない。しかし、カラムとイオン化プローブが一体的に構成されているため、ESIプローブの配置を調整し、該プローブを固定した状態でカラムのみを取り外すことができず、使用するカラムを交換するたびにESIプローブの配置を再調整しなければならず手間がかかるという問題があった。
【0011】
ここでは液体クロマトグラフ質量分析装置を例に説明したが、質量分析以外のイオン分析装置(イオン移動度分析計、分級装置など)を検出器として備える液体クロマトグラフにおいても上記同様の問題があった。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、イオン分析装置を検出器として有する液体クロマトグラフにおいて、カラムの出口側流路に、該カラムと別体であるイオン化プローブの入口側流路を、デッドボリュームを生じることなく容易に接続することができるイオン化プローブ接続用治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために成された本発明は、液体クロマトグラフにおいて、カラムの出口側流路とイオン化プローブの入口側流路を接続するために用いられるイオン化プローブ接続用治具であって、
a) 前記カラムと前記イオン化プローブのうちのいずれか一方である第1要素に固定される第1要素固定具と、
b) 前記カラムと前記イオン化プローブのうちの他方である第2要素に固定される第2要素固定具と、
c) 前記第1要素と前記第2要素の流路が合致するように前記第1要素又は前記第1要素固定具と前記第2要素又は前記第2要素固定具とを規制しつつ前記第1要素固定具が前記第1要素の軸方向に前進することを許容する一方、前記第2要素固定具が前記第2要素の軸方向の所定位置以上に後退しないように規制する移動規制具と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るイオン化プローブ接続用治具を使用する際には、まず、カラムとイオン化プローブのいずれか一方である第1要素に第1要素固定具を固定し、また第2要素に第2要素固定具を固定する。そして、両者を移動規制具に取り付ける。これにより、第1要素の流路と第2要素の流路が位置合わせされる。また、第1要素固定具が第1要素の軸方向(流路が延びる方向)への前進(第2要素が位置する側に向かう方向への移動)が許容され、第2要素固定具が第2要素の軸方向において所定位置を超えて後退(第1要素が位置する側と反対側に移動)しないように規制される。この状態で、使用者が第1要素固定具を前進させるように力を加えると、まず、第1要素の流路と第2要素の流路が当接する。そして、両者が同じ方向に移動(第1要素が前進し第2要素は後退)する。その後、第2要素固定具が前記所定位置まで後退すると、移動規制具によってそれ以上の後退が規制され、第1要素の流路が第2要素の流路に対して押し当てられる。これにより両者が面当たり接続される。本発明に係るイオン化プローブ接続用治具では、第1要素固定具を第2要素固定具に向かって押すだけでよく、従来のように、カラムとイオン化プローブの接続箇所の狭い空間でねじを螺合する必要がないため、作業効率が向上する。また、別体で構成されたカラムとイオン化プローブを用いるため、イオン化プローブの配置を調整して該プローブを固定した状態でカラムのみを取り外すことができる。
【0015】
本発明に係るイオン化プローブ接続用治具は、さらに
d) 前記第1要素固定具を前進させるように押圧するための押圧機構
を備えることが好ましい。
この態様では、液体クロマトグラフの各部の配置を考慮し、押圧機構の力点を広い空間に配置することにより、さらに作業性を高めることができる。なお、この押圧機構は、前記第1要素固定具を直接押圧するものであってもよく、あるいは前記第1要素を押圧することにより該第1要素に固定された第1要素固定具等を押圧する(即ち、間接的に第1要素固定具を押圧する)ものであってもよい。
【0016】
本発明に係るイオン化プローブ接続用治具では、
前記第1要素がカラムであり、該第1要素固定具が該カラムの出口側の端部に固定される
ことが好ましい。
第1要素固定具をカラムの入口側の端部あるいはカラムの本体に固定すると、該第1要素固定具を押す力は、カラム本体を介してイオン化プローブとの接続部分に伝わる。そのため、キャピラリカラムのような破損しやすいカラムを用いる際には慎重に力を加える必要がある。これに対し、第1要素固定具をカラムの出口側の端部に取り付ければ、該第1要素固定具を押す力がカラム本体を介さずにイオン化プローブとの接続部に伝わるため、キャピラリカラム等を用いる場合でも特に慎重な操作を必要としない。
【0017】
前記第1要素固定具が前記カラムの出口側の端部に固定される態様のイオン化プローブ接続用治具では、
前記第1要素固定具の、前記カラムの流路に対応する位置に貫通孔が形成され、該貫通孔が、該カラムが位置する側から前記イオン化プローブが位置する側に向かって内径が大きくなるテーパ状部を有する
ことが好ましい。
この態様では、イオン化プローブの入口側配管を容易に貫通孔に差し込むことができる。また、イオン化プローブの入口側配管を差し込んでいくと、貫通孔の内部でイオン化プローブの入口側流路がカラムの出口側流路の位置にガイドされるため、より精緻に接続され液漏れが生じる心配がない。
【0018】
本発明に係るイオン化プローブ接続用治具では、
前記第1要素固定具が、前記液体クロマトグラフに着脱可能に保持される
ことが好ましい。
これにより、第1要素固定具に固定されたカラムと該カラムに接続されたイオン化プローブ(あるいは第1要素固定具に固定されたイオン化プローブと該イオン化プローブに接続されたカラム)が液体クロマトグラフに保持されるため、装置外部の振動等によりカラムやイオン化プローブが振動して液体試料中の成分の不所望の脱着や拡散が生じるのを抑制することができる。前記第1要素固定具は、液体クロマトグラフに間接的に(例えば液体クロマトグラフに着脱可能に取り付けられる筐体に)固定されるものであってもよい。
【0019】
前記貫通孔が形成された前記第1要素固定具が前記液体クロマトグラフに着脱可能に保持される態様のイオン化プローブ接続用治具では、
前記第1要素固定具が、該貫通孔の中心軸周りに回転可能に前記液体クロマトグラフに保持される
ことが好ましい。
これにより、第1要素固定具を液体クロマトグラフに取り付けた後に該固定具を回転させ、該カラムの入口側流路に接続された流路等のねじれを解消することができる。この態様では、前記第1要素固定具を円盤状の部分を有するものとすることが好ましい。
【0020】
前記第1要素固定具が前記液体クロマトグラフに保持される態様のイオン化プローブ接続用治具は、さらに、
e) 前記第1要素固定具に着脱可能に取り付けられる操作部材
を備えることが好ましい。
この態様では、カラムと該カラムに固定された第1要素固定具をカラムオーブン内に収容する等の作業を行う際に、適宜の形状や大きさの操作部材を選択することで、使用者は、高温のカラムオーブン等に触れることなく、安全かつ簡便に接続用治具を取り付けることができる。
【0021】
本発明に係るイオン化プローブ接続用治具では、
前記押圧機構が、前記第1要素の軸方向に弾性を有する弾性部材を含む
ことが好ましい。これにより、使用者が押圧機構に過度な力が加えた場合でも、弾性部材(例えばばね)の弾性によって力の一部が吸収されるため、カラムやイオン化プローブが損傷するのを防止することができる。また、カラムは複数の会社で製造されており、その会社やカラムの種類によってカラムの出口から突出する配管の長さが異なる。弾性部材を含む構成を有する押圧機構を用いると、その違いを吸収してカラムの出口側端面とイオン化プローブの入口側端面を確実に面当たり接続することができる。
【0022】
本発明に係るイオン化プローブ接続用治具は、
前記第1要素固定具がユニファイねじによって前記カラムに固定される
ことが好ましい。
上述のとおり、カラムは複数社により製造されており、その製造会社やカラムの種類によってカラムの形状が異なる。しかし、例えば非特許文献2に記載されているように、それらの多くにはユニファイねじ(インチねじ)規格に対応した接続具を取り付け可能であるため、上記態様を採ることにより形状が異なる複数種類のカラムに対応することができる。
【0023】
また、本発明に係るイオン化プローブ接続用治具によりカラムに接続されるイオン化プローブは、
入口側の端面の面積が、前記端面以外の部分の断面積よりも小さい
ことが好ましい。これにより、カラムの出口側端面とイオン化プローブの入口側端面を面当たりさせて接続する際に必要な力が小さくなる。従って、第1要素固定具を前進させるために必要な力が小さくなり、非力な者であっても容易に両者を面当たりさせて接続することができる。
【0024】
また、前記イオン化プローブの入口側の端部がテーパ状であることがより好ましい。これにより、第1要素固定具に対して加えられた力を分散し、イオン化プローブの入口側端部の変形や破損を防止して耐久性を高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るイオン化プローブ接続用治具を用いることにより、液体クロマトグラフにおいて、カラムの出口側流路に、該カラムと別体であるイオン化プローブの入口側流路を、デッドボリュームを生じることなく容易に接続することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係るイオン化プローブ接続用治具の一実施例について、以下、図面を参照して説明する。本実施例のイオン化プローブ接続用治具は、液体クロマトグラフ質量分析装置においてカラムの出口側流路とイオン化プローブの入口側流路を接続するために用いられる。なお、以下の説明に使用する図面では、各構成要素の特徴的な部分を強調するため、当該図により説明する内容に応じて図示する各部の縮尺が異なっている。
【0028】
図1に本実施例における液体クロマトグラフ質量分析装置の要部構成を示す。
【0029】
本実施例の液体クロマトグラフ質量分析装置は、大別して、液体クロマトグラフ100と質量分析計200から構成され、図示しない制御部により各部の動作が制御される。液体クロマトグラフ100は、移動相が貯留された移動相容器110と、移動相を吸引して一定流量で送給するポンプ111と、移動相中に所定量の液体試料を注入するインジェクタ112と、液体試料に含まれる各種化合物を時間方向に分離するカラム113とを備えている。また、インジェクタ112に複数の液体試料を1つずつ導入するオートサンプラ(図示なし)を備えている。
【0030】
質量分析計200は、略大気圧であるイオン化室210と、真空ポンプ(図示なし)により真空排気された中間真空室220及び高真空の分析室230を備えた差動排気系の構成を有している。イオン化室210には、試料溶液に電荷を付与しながら噴霧するエレクトロスプレイイオン化プローブ(ESIプローブ)211が設置されている。イオン化室210と後段の中間真空室220との間は細径の加熱キャピラリ212を通して連通している。中間真空室220にはイオンを収束させつつ後段へ輸送するためのイオンガイド221が設置されており、中間真空室220と分析室230との間は頂部に小孔を有するスキマー222で隔てられている。分析室230には、四重極マスフィルタ231とイオン検出器232が設置されている。本実施例では質量分析計を簡素な四重極型のものとしたが、他の構成(三連四重極型、イオントラップ−飛行時間型等)の質量分析計を用いてもよい。
【0031】
質量分析計200では、SIM(選択イオンモニタリング)測定やMSスキャン測定を行うことができる。SIM測定では、四重極マスフィルタ231を通過させるイオンの質量電荷比を固定してイオンを検出する。MSスキャン測定では、四重極マスフィルタ231を通過させるイオンの質量電荷比を走査しつつイオンを検出する。
【0032】
本実施例のイオン化プローブ接続用治具は、
図1に一点鎖線で示す領域において、カラム113の出口側流路とESIプローブ211の入口側流路を接続するために用いられる。本実施例では、カラム113が前記第1要素、ESIプローブ211が前記第2要素に相当する。
【0033】
はじめに、本実施例のイオン化プローブ用接続治具の構成要素について説明する。本実施例のイオン化プローブ接続用治具は、大別してアダプタ10、プローブ固定具20、ハウジング30(
図6参照)、及び押圧機構40(
図7参照)を備えている。
【0034】
図2に示すように、アダプタ10は、円盤状のフランジ部11、該フランジ部11の一方の面(カラム113側の面)に設けられたカラム固定部12、該フランジ部11の他方の面(ESIプローブ211側の面)に設けられたプローブ接続部13を有している。これらがアダプタ10の本体を構成する。
【0035】
図3(a)に、カラム113の接続部113aの構造を示す。
図3(a)
の左は横断面図、
図3(a)の右はイオン化プローブ211側から接続部113aを見た図である。カラム113の接続部113aの内部の一端側には、カラム113の出口側流路113cが形成されている。出口側流路113cの先には接続空間113dが設けられており、その内周面の一部にユニファイねじ規格のねじ部(雌ねじ)113bが形成されている。カラム113の出口側流路113cの端部の、カラム113の長手方向(軸方向)に垂直な面は配管当接面113eとなっており、この配管当接面113eがイオン化プローブ211の入口側配管211aの端面が当接してカラム113の出口側流路113cと面当たり接続される。接続部113aの形状はカラム113の種類によって異なり、その接続空間113dの長さ(
図3(a), (b)に記載のL1, L2)も異なる。なお、カラム113の種類を問わずねじ部113bは共通である。以下の説明では、「軸方向」という文言はカラム113の長手方向を意味する。本実施例ではカラム113とESIプローブ211が同軸で配置されるため、この「軸方向」は両者に共通する軸方向である。なお、この「同軸」は本実施例における特徴であって、必ずしも両者の軸を共通の方向とする必要はない。
【0036】
カラム固定部12の外周面にも、ユニファイねじの規格(カラム113の接続部113aの接続空間113dの内周面に形成されたねじ部113bの形状)に対応したねじ部(雄ねじ)が設けられている。
図4はアダプタ10の本体の構成を説明する図であり、中央は断面図、左はカラム113側から見た図、右はESIプローブ211側から見た図である。アダプタ10の本体には軸方向(カラム113の長手方向)に貫通する貫通孔14が形成されている。貫通孔14はフランジ部11からプローブ接続部13にかけて、ESIプローブ211側に向かってテーパ状に広がっている。
【0037】
図5に示すように、操作部材15は、L字状の取っ手151の先端にC字状のリング部152を形成したものであり、該リング部152の内周面の3箇所に突出部153が設けられている。操作部材15の3つの突出部153をアダプタ10のフランジ部11とプローブ接続部13の間の凹部16(
図4参照)に差し込むことにより、アダプタ10の本体が軸周りの回転自在に保持される。
【0038】
プローブ固定具20は、ESIプローブ211の入口側配管211aを差し込むための貫通孔が形成された円錐台形の部材である。
図2の右上に拡大図で示すように、ESIプローブ211の入口側配管211aの端部はテーパ状に形成されており、該入口側配管211aにプローブ固定具20が取り付けられる。
【0039】
図6(a)はハウジング30を上方から見た概略図、
図6(b)はハウジング30を側方から見た概略図である。ハウジング30は、上面と、カラム113を挿入する側の面が開放された直方体状の筐体であり、液体クロマトグラフ100のカラムオーブン内に収容される。ハウジング30には、アダプタ取り付け部31、押圧機構収容部32、及びカラム載置部36が設けられている。
【0040】
アダプタ取り付け部31は、アダプタ10のフランジ部11の外形に対応した形状のスロット311aが形成され外面に突出部311bを有するアダプタ収容部311と、該突出部311bが差し込まれるレール部が形成され
図6(a)に実線で示す位置と一点鎖線で示す位置の間で該アダプタ収容部311を移動可能に保持するアダプタ収容部保持部312とを有している。スロット311aを挟んでその両側に位置する2つの側壁部には、それぞれ、上部が解放した凹部311cが形成されており、一方の側壁部の凹部311cにはカラム113の接続部113aが、他方の側壁部の凹部311cには、アダプタ10のプローブ接続部13が配置される。
【0041】
また、アダプタ収容部311と一体的に構成され、該アダプタ収容部311とともに軸方向に移動する2つの押圧機構収容部32が、カラム113が収容される位置を挟んで両側に設けられている。2つの押圧機構収容部32のそれぞれには、後述する2つの押圧機構40がそれぞれ有するばね44が収容される。
【0042】
さらに、ハウジング30の、ESIプローブ211が取り付けられる側の側面には、上方に開放した凹部であるイオン化プローブ収容部33が形成されている。この凹部の大きさ(孔の軸に垂直な断面の径)はESIプローブ211の入口側配管211aよりも少し大きく、従って該入口側配管211aはこの長孔に遊嵌される。また、この凹部の大きさはプローブ固定具20の底面(カラム113と反対側に位置する面。前記円錐台形の底面)の外径よりも小さい。従って、プローブ固定具20が取り付けられたESIプローブ211が所定の距離だけ後退すると、ハウジング30のイオン化プローブ収容部33周辺の内壁面にプローブ固定具20(前記円錐台形の底面)が当接し、それ以上のESIプローブ211の後退(前記所定位置以上の後退)が規制される。なお、本実施例の説明において、カラム113やESIプローブ211の「前進」は、一方が他方の側に向う移動を意味し、「後退」はその逆方向の移動を意味する。
【0043】
ハウジング30の2つの側面(軸方向と平行な2側面)にはそれぞれ、後述する押圧機構40の移動を規制する円形の孔34と軸方向に延びる長孔35(2つの側面に合計4つの孔)が形成されている。孔34はカラム113よりも低い位置に設けられ、長孔35はカラム113と同じ高さに設けられている。その他、ハウジング30の底部には、収容されるカラム113を下方から支えるカラム載置部36が形成されている。カラム載置部36の高さはカラム113のサイズに合わせて適宜変更することができるように構成してもよい。また、アダプタ収容部311とカラム載置部36を一体の部材として構成してもよい。
【0044】
図7(a)に押圧機構40の概略構成を示す。押圧機構40は、ハウジング30に収容される部材であり、カラム113を挟んでその両側に配置される。2つの押圧機構40はそれぞれ、L字状のアーム41と、一端が該アーム41の先端の接続点Aに角度θ(θ>90度)で固定された棒状の第1接続部材42、該第1接続部材42の他端の接続点Bに回動自在に一端が固定された棒状の第2接続部材43、該第2接続部材43の他端の接続点Cに接続されたばね(弾性部材)44、及び押圧部45を有している。この押圧機構40における押圧部45は前述のアダプタ収容部311と同一部品となっている。また、後述する別の態様のように、ばね44に取り付けられた板状の部材を押圧部45とすることもできる。即ち、アーム41、第1接続部材42、第2接続部材43、ばね44、及び押圧部45(アダプタ収容部311)が順に接続される。この押圧機構40では、ばね44はアダプタ収容部311に接続される。アダプタ収容部311のスロット311aには、アダプタ10のフランジ部11が収容されているため、押圧機構40によりアダプタ収容部311を移動させると、同時にアダプタ10も同方向に移動し、さらに該アダプタ10のカラム固定部12に固定されたカラム113も同方向に移動する。
図7(a)の押圧機構40は、同図に実線で示したアーム41、第1接続部材42、第2接続部材43、ばね44、及びアダプタ収容部311から構成される。後述する
図7(b), (c)においても同様に、押圧機構40a、40bを構成する部材を実線で、それ以外の部材を破線で示す。
【0045】
押圧機構40は、
図7(a)に示す形態の他にも種々の形態を採ることができる。
図7(b)及び(c)にそれぞれ一例を示す。
【0046】
図7(b)の押圧機構40aは、ばね44の端部に板状の押圧部45が取り付けられており、その押圧部45がカラム113の接続部113a(カラム113の外径よりも外側に延出した部分)に当接した構成となっている。カラム113の形状はカラムの種類によって様々であるが、カラム113が押圧機構40aにより押圧可能な領域を有する場合には、
図7(b)に示す押圧機構40aにより、カラム113を前進するように押圧することができる。
【0047】
図7(c)に示す押圧機構40bは、ハウジング30がアダプタ収容部311を有しない場合に用いられる一例である。この押圧機構40bでは、ばね44の端部に取り付けられた押圧部45が、アダプタ10のフランジ部11の、カラム113の接続部113aの外径よりも外側の領域(押圧可能領域11a、
図8参照)に取り付けられる。この押圧機構40bはフランジ部11の前記外側の領域を押圧して、アダプタ10及びカラム113を前進させる。
【0048】
図7(a)〜(c)に例示したように、押圧機構40(40a、40b)は、カラム113をその軸方向に前進させるような力を与えることができればよく、そのような機能を有するものであれば適宜の構成を採ることができる。別の表現を用いれば、押圧機構40は、アダプタ10(前記第1要素固定具)を直接押圧するものであってもよく、あるいはカラム113(前記第1要素)を押圧することにより該カラム113に固定されたアダプタ10を押圧するものや、アダプタ収容部311を押圧することにより該アダプタ収容部311のスロット311aに収容されたアダプタ10を押圧する(即ち、間接的にアダプタ10を押圧する)ものであってもよい。なお、本明細書で説明する各実施例(
図6、
図9、
図10、
図12、
図13、
図14等)では、
図7(a)により説明した押圧機構40を用いている。
【0049】
図8に、カラム固定部12を取り付けた状態のフランジ部11の構成を示す。左は横断面図、右はカラム113側から見た図である。
図8の左図に示すように、フランジ部11は、カラム113の接続部113aの外径よりも外側に延出した押圧可能領域11aを有している。上述のとおり、本実施例では
図7(a)に示す押圧機構40を用いているが、
図7(c)の押圧機構40bを用いてこの押圧可能領域11aを押圧するように構成することもできる。以下、
図7(a)の押圧機構40又は
図7(c)の押圧機構40bを用いる場合の、本実施例のアダプタ10の利点を説明する。
【0050】
カラム113の形状はカラム種類によって様々であるため、その接続部113aに、押圧機構40aの押圧部45により押圧可能な領域が無い(即ち
図7(b)の押圧機構40aを用いることができない)場合がある。一方、本実施例のアダプタ10は押圧可能領域11aを有するフランジ部11を備えているため、接続部113aが押圧機構40aにより押圧可能な領域を有しないカラム113でも、
図7(a)の押圧機構40の押圧部45(アダプタ収容部311)または
図7(c)の押圧機構40bの押圧部45をフランジ部11の押圧可能領域11aに当接させてカラム113を前進させる力を与えることができる。
【0051】
本実施例のフランジ部11は円盤状であるが、フランジ部11は必ずしも円盤状である必要はなく、カラム固定部12の周縁(外側)に押圧可能領域11aを有するものであれば他の形状であってもよい。しかし、本実施例のような円盤状のフランジ部11を用いると、カラム113の入口側配管のねじれを解消するためにアダプタ10の本体を回転させたうえでハウジング30内のスロット311aに収容した場合でも、
図7(a)の押圧機構40の押圧部45(アダプタ収容部311)または
図7(c)の押圧機構40bの押圧部45によって確実にフランジ部11を押圧することができる。
【0052】
以上の理由から、フランジ部11は、本実施例のように、カラム113の長手軸まわりのカラム113の全長にわたる外形よりも外側に延出する押圧可能領域11aを有することが好ましい。これにより、
図8の左図のように、カラム113の後方(カラム113の出口端よりも上流側)からフランジ部11の押圧可能領域11aを見通せる状態となり、カラム113の後方からフランジ部11を押圧する押圧部45の形状を単純化する(例えば簡素な板状部材とする)ことができる。また、押圧機構40、40bをカラム113の後方に設けることができるため、カラム113の出口よりも下流側に位置するイオン化プローブの入口側配管211aの長さを最小限に抑えることができる。
【0053】
図7(a)に示すとおり、本実施例の押圧機構40では、アーム41と第1接続部材42の接続点Aは、カラム113よりも下方に位置している。カラム113の両側に配置されているアーム41と第1接続部材42には1本の第1連結部材46が貫通しており、該第1連結部材46(
図9参照)の両端はハウジング30の側面に形成された孔34に取り付けられている。これにより接続点Aの位置が固定される。また、第2接続部材43とばね44は接続点Cで連結されており、第2連結部材47(
図9参照)はハウジング30の側面に形成された長孔35に、軸方向にのみ移動可能に取り付けられている。第1接続部材42と第2接続部材43の接続点Bはアーム41、第1接続部材42、及び第2接続部材43の動作に応じて適宜の位置に移動する。
【0054】
図9及び
図10を参照し、本実施例のイオン化プローブ接続用治具を用いてカラム113の出口側流路にESIプローブ211の入口側配管211aを接続する際の操作手順を説明する。
図9はハウジング30の上方から見た要部の配置、
図10は側面から見た要部の配置を示す図である。なお、アダプタ10の形状は
図4及び
図6に示したとおりであるが、
図9及び
図10では、アダプタ10を簡略化してフランジ部11のみ図示している。また、押圧機構40の各部の位置を分かりやすく示すために、
図9ではアーム41の図示を省略している。
【0055】
本実施例のイオン化プローブ接続用治具の使用時には、まず、カラム113の接続部113aをアダプタ10のカラム固定部12に固定する。上述のとおり、これは、接続部113aの内周面に形成されたねじ部113bをアダプタ10のカラム固定部12のねじ部に螺合することにより行う。そして、操作部材15によりアダプタ10を保持し、アダプタ10のフランジ部11をアダプタ収容部311のスロット311aに収容する。
【0056】
次に、ESIプローブ211の入口側配管211aにプローブ固定具20を取り付け、プローブ固定具20がハウジング30の内部に位置するように、該入口側配管211aをイオン化プローブ収容部33内に載置する(凹部に遊嵌する)。プローブ固定具20の取り付け位置は、ESIプローブ211の後退可能な距離を規定することから、後述する操作時のESIプローブ211の移動距離を勘案して設定される。このときの各部の配置は
図9(a)及び
図10(a)に示すとおりである。
【0057】
その後、使用者がハンドルを操作して2つの押圧機構40のアーム41を倒していくと、第1接続部材42と第2接続部材43の成す角度が徐々に大きくなり、180度に近づいていく。上述のとおり、接続点Aは孔34に取り付けられた第1連結部材46によって固定されており、接続点Cは長孔35に取り付けられた第2連結部材47によって移動方向が軸方向のみに規制されている。従って、ばね44がフランジ部11側に移動し、該フランジ部11がESIプローブ211側に移動する。
【0058】
その間に、ESIプローブ211の入口側配管211aがアダプタ10のテーパ状の貫通孔14に進入し、少しずつ貫通孔14の内部を進んでいく。そして、ESIプローブ211の入口側配管211aの端面が貫通孔14を通過して、カラム113の接続部113a内の接続空間113dにおいてカラム113の出口側流路113cの端面及び配管当接面113eに当接する。この状態からさらにアーム41を倒していくと、配管当接面113eによってESIプローブ211の入口側配管211aの端面が押され、ESIプローブ211が後退していく。ESIプローブ211が所定の距離だけ後退すると、プローブ固定具20の端部がハウジング30の内壁面に当接し、ESIプローブ211の移動が規制される。そして、カラム113の出口側流路の端面がESIプローブ211の入口側流路の端面を押す力が徐々に大きくなり両者が面当たり接続される。その間、ばね44は少しずつ縮められていく。このときの各部の配置は
図9(b)及び
図10(b)に示すとおりである。
【0059】
図9(b)及び
図10(b)に示すように、第1接続部材42と第2接続部材43が直線上に位置する状態からさらにアーム41を倒していくと、第1接続部材42と第2接続部材43の屈曲方向がそれまでと逆になり接続点Bがさらに下方に移動し、縮められたばね44が復元されていく。本実施例では、L字状のアーム41の一方の辺(第1接続部材42が接続されていない側の辺)が水平になるまでアーム41を倒していくことによりこの状態(
図9(c)及び
図10(c)に示す状態)が実現され、カラム113の出口側流路とESIプローブ211の入口側流路の接続状態がロックされる。
【0060】
図9(b)及び
図10(b)に示す状態は、ばね44が最も縮められた状態であり、外部からいずれかの部材に力が加わるとばね44を復元する力が働き、接続点Bが上方と下方のいずれかに容易に移動する。このとき、接続点Bが上方に移動して
図9(a)及び
図10(a)に示す方向に戻ってしまうとカラム113の出口側流路113cとESIプローブ211の入口側流路の接続が解除されてしまう。そこで本実施例では、
図9(c)及び
図10(c)に示す状態までアーム41を押し込んでいる。この状態では、使用者がハンドルを操作し、ばね44を縮める力を加えない限り
図9(b)及び
図10(b)に示す状態に移行することがないため、カラム113の出口側流路とESIプローブ211の入口側流路の接続状態が維持される。
【0061】
図8に示したように、本実施例では、上記のような操作を行うことにより、カラム113の出口側流路113cとESIプローブ211の入口側配管211aの流路が連通した状態で、両流路の端面が配管当接面113eで面当たり接続され、接続部のデッドボリュームを最小限に抑えた接続状態が実現される。
【0062】
以上、説明したように、本実施例のイオン化プローブ接続用治具では、カラム113の出口側にアダプタ10を固定し、そのフランジ部11をESIプローブ211に向かって押すだけでよく、従来のように、カラム113とESIプローブ211の接続箇所の狭い空間でねじを螺合する必要がないため、作業効率が向上する。また、別体で構成されたカラム113とESIプローブ211を用いるため、ESIプローブ211の配置を調整して固定した状態でカラム113のみを取り外すことができる。また、フランジ部11には押圧機構40が取り付けられており、2本のアーム41の一方の接続点Xに取り付けられたハンドルがハウジング30の外部に配置されているため、使用者はこのハンドルを操作して簡単にカラム113の出口側流路113cとESIプローブ211の入口側流路を接続することができる。
【0063】
本実施例のイオン化プローブ接続用治具は、アダプタ10をカラム113の入口側や本体に固定するように構成することもできるが、その場合、アーム41に加えられた力がカラム113本体を介してESIプローブ211との接続部に伝わる。そのため、キャピラリカラムのような破損しやすいカラム113を用いる際には慎重に力を加える必要がある。従って、上述した構成のように、アダプタ10をカラム113の出口側の端部(接続部113a)に取り付けることが好ましい。この場合、アーム41に加えられた力がカラム113本体を介さずにESIプローブ211との接続部に伝わるため、キャピラリカラム等を用いる場合でも特に慎重な操作を必要としない。
【0064】
本実施例のイオン化プローブ接続用治具では、アダプタ10にESIプローブ211の入口側配管211aを挿入するための貫通孔14が形成されており、また、その貫通孔14がテーパ状である。そのため、ESIプローブ211の入口側配管211aを差し込んでいくと、貫通孔14の内部でESIプローブ211の入口側流路とカラム113の出口側流路113cが精緻に位置合わせされ、接続箇所で液漏れが生じる心配がない。
【0065】
本実施例のイオン化プローブ接続用治具は、各部を収容するハウジング30を有しており、その筐体が液体クロマトグラフ100のカラムオーブン内に収容される。そのため、液体クロマトグラフ質量分析装置の外部の振動等によってカラム113やESIプローブ211が振動する心配がなく、カラム113の内部で液体試料中の成分の不所望の脱着や拡散が生じたり、カラム113の出口側流路とESIプローブ211の入口側流路の接続が解除され液漏れが生じたりする心配がない。また、本実施例のイオン化プローブ接続用治具を構成する各部材をアルミニウムや銅などの熱伝導率の高い材料で構成しておくことにより、カラム113を効率よく温調することができる。
【0066】
本実施例のイオン化プローブ接続用治具では、操作部材15が円盤状のフランジ部11を回転可能に保持する構成を採っている。そのため、アダプタ10をアダプタ収容部311にセットした後に、フランジ部11を回転させてカラム113の入口側に接続された配管のねじれを解消することができる。また、使用者は操作部材15を持ってアダプタ10をアダプタ収容部311にセットすることができるため、カラムオーブン等に触れることなく、安全かつ簡便に取り付けることができる。
【0067】
本実施例のイオン化プローブ接続用治具では、押圧機構40に、軸方向に収縮するばね44が含まれている。そのため、使用者がハンドルに大きな力を加え、その結果、アーム41に過度な力が加えられた場合でも、ばね44の弾性によって力の一部が吸収され、カラム113やESIプローブ211の入口側配管211aが損傷するのを防止することができる。また、カラム113の種類によってカラム113の出口から突出する配管の長さ(つまり
図3の接続空間113dの長さL1, L2)が異なるが、ばね44を含む構成を有する押圧機構40を用いることにより、貫通孔14内部(つまり、カラム113の接続部113aの接続空間113d)へのESIプローブ211の入口側配管211aの進入量が調整されるため、カラム113毎の接続部113aの形状の違いを吸収してカラム113の出口側端面とESIプローブ211の入口側端面を確実に面当たりさせることができる。
【0068】
カラム113とESIプローブ211の面当たり接続部にある一定の圧力(面圧)を付与するために必要な力の大きさは、両者の当接面積に比例する。本実施例ではESIプローブ211の入口側配管211aの端部がテーパ状であることから、カラム113の出口側の端面と当接する面積が小さくなり、上記面圧を付与するために必要な力が小さくなる。従って、ばね定数の小さいばね44を用い、非力な者でも容易に両者を面当たり接続できるように構成することができる。さらに、ESIプローブ211の入口側配管211aの端部がテーパ状であるため、アーム41に加えられた力を分散し、ESIプローブ211の入口側配管211aの端部の変形や破損を防止して耐久性を高めることができる。
【0069】
ESIプローブ211の入口側配管211aの端部の形状に関して本発明者が行った実験の結果を
図11に示す。本発明者が入口側配管211aの端部に段差を形成したESIプローブ211(
図11(a))をカラム113と面当たり接続(使用)したところ、1度使用しただけで大きく変形してしまった(
図11(b))。一方、入口側配管211aの端部をテーパ状に形成したところ(
図11(c))、200回使用しても殆ど変形せず(
図11(d))耐久性が大きく向上することが分かった。このように、配管の端部をテーパ状に構成することは、上記実施例のESIプローブ211としてだけでなく、ある配管を、該配管よりと外径が同じ配管、又は外径が大きい別の配管と面当たり接続する、あらゆる場合に有効である。
【0070】
上記実施例は一例であって、本発明の主旨に沿って適宜に変更することができる。
上記実施例では接続点Aをカラム113よりも低い位置としたが、接続点Aの高さをカラム113と同じ高さにすることもできる。以下、そのような変形例について、
図12〜
図14を参照して説明する。
【0071】
図12は、変形例のイオン化プローブ接続用治具のハウジング30aを側面から見た図(
図6(b)に対応する図)である。また、
図13は、変形例のイオン化プローブ接続用治具の構成要素の配置を示す図(
図9(a)に対応する図)である。この変形例では、孔34aと長孔35が同じ高さ(カラムと同じ高さ)に設けられている。
【0072】
図14は、変形例における押圧機構40aの操作を説明する図(
図10に対応する図)である。上記実施例では、接続点Aがカラム113よりも低い位置に固定されていたが、変形例では接続点A'がカラム113と同じ高さであり、その位置で第1連結部材46aに固定される。ただし、上記実施例と異なり、第1連結部材46aは、アーム41aと第1接続部材42aの接続点A’毎にそれぞれ(合計2つ)設けられ、それぞれ孔34aに固定される。上記実施例では2本のアーム41を、カラム113よりも低い位置にある接続点Aで第1連結部材46により連結し、一方のアーム41の端部にハンドルを設けたが、変形例では接続点A’がカラム113と同じ高さに位置しており、この位置で2本のアーム41aを連結することはできない。そこで、変形例では接続点X’において第3連結部材(図示なし)により2本のアーム41aを連結し、これをハンドルとしても用いる。接続点C及び第2連結部材47aの位置は上記実施例と同じである。変形例においても押圧機構40aの操作手順は上記実施例と同様である。即ち、ハンドルを操作し、第1接続部材42aと第2接続部材43aが直線上に位置するまでアーム41aを倒していくことによりカラム113の出口側流路とESIプローブ211の入口側配管211aを圧接して両者を接続し、さらにアーム41aを倒すことによりそれらの接続状態がロックされる。
【0073】
上記実施例では液体クロマトグラフ質量分析装置を例に挙げて説明したが、質量分析計に代えてイオン移動度分析計や分級装置を検出部として備えた液体クロマトグラフにおいても同様のものを用いることができる。
また、上記実施例では、ESIプローブを例に挙げたが、APCIプローブ等、他のイオン化プローブを接続する場合も上記同様の構成を採ることができる。
【0074】
さらに、上記実施例ではカラム113とESIプローブ211の流路が合致するようにアダプタ10とプローブ固定具20とを規制しつつアダプタ10がカラム113の軸方向に前進することを許容する一方、プローブ固定具20がESIプローブ211の軸方向の所定位置以上に後退しないように規制する構成としたが、
図15に示すように、カラム113とESIプローブ211とを両者の流路が合致するように規制しつつESIプローブ211がその軸方向に前進する(つまりカラム113に向かう方向に前進する)ことを許容する一方、カラム113がその軸方向の所定位置以上に後退しないように規制する構成とすることもできる。
図15では上記実施例の押圧機構40の各要素に対応する要素を同様の符号(42b等)で表し、カラム113及びESIプローブの入口側配管211a以外の各要素の符号を省略している。この構成によっても、デッドボリュームを生じることなくカラム113の出口側流路とESIプローブ211の入口側流路を接続できるという点では上記実施例の構成と同等の効果が得られるものの、押圧機構40の長さの分だけESIプローブ211の入口側配管211aが長くなり(
図15の配管延長部)、その分だけ溶出液に含まれる成分が拡散しやすくなる。従って、上記実施例の構成、つまりカラム113の軸方向に前進することを許容する一方、プローブ固定具20がESIプローブ211の軸方向の所定位置以上に後退しないように規制する構成がより好ましい。この構成によると、カラム113の出口側流路とESIプローブ211の入口側流路の接続部、及びESIプローブ211の配管長を最短にし、溶出液中の成分の拡散を最小限に抑えることができる。
【0075】
その他、上記実施例で説明した各部の形状や個数は一例に過ぎず、それらは使用する装置の構成や使用環境等に応じて適宜に変更することができる。