(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1次コイル及び前記2次コイルは、前記給電回路から前記第1放射素子に向かって電流が流れるときに前記1次コイルに生じる磁束の向きと、前記グランドから前記第2放射素子に向かって電流が流れるときに前記2次コイルに生じる磁束の向きとが互いに逆となるように巻回されている、請求項1に記載のアンテナ装置。
前記複数の2次コイル導体パターンのうち、積層方向に隣接する二つの2次コイル導体パターンの内縁同士の位置又は外縁同士の位置の少なくとも一方は、平面視で互いに異なる、
請求項1から3のいずれかに記載のアンテナ装置。
前記複数の1次コイル導体パターンの内縁は、前記複数の2次コイル導体パターンのうち、当該複数の2次コイル導体パターンが共有する巻回軸に最も近い2次コイル導体パターンの内縁から、前記巻回軸から最も遠い2次コイル導体パターンの内縁までの範囲に収まる、
請求項1から4のいずれかに記載のアンテナ装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明に係るアンテナ装置の幾つかの態様について記載する。
【0013】
本発明に係る第1の態様のアンテナ装置は、課題を解決する手段で記述したとおりであり、給電回路が接続される第1放射素子と、第2放射素子と、1次コイル及び2次コイルを有する積層構造の結合素子と、を備え、
前記第1放射素子は、第1共振周波数及び前記第1共振周波数よりも高い周波数である第2共振周波数を有し、
前記第2放射素子は、前記第2共振周波数よりも前記第1共振周波数に近い共振周波数を有し、
前記1次コイルは複数の1次コイル導体パターンを含み、
前記2次コイルは複数の2次コイル導体パターンを含み、
前記1次コイル及び前記2次コイルの積層方向から視て、前記1次コイルと前記2次コイルとは重なり、
前記1次コイルと前記2次コイルとは磁界結合し、
前記1次コイルの一端は前記第1放射素子に接続され、
前記2次コイルは前記第2放射素子とグランドとの間に接続され、
前記2次コイルの巻回数は前記1次コイルの巻回数より多く、
前記複数の2次コイル導体パターンは、平面視で、内縁同士の位置及び外縁同士の位置の少なくとも一方が異なる複数の導体パターンを含む。
【0014】
上記構成によれば、第1放射素子の第1共振周波数付近が、第2放射素子の共振周波数特性によって、高利得化され、広帯域化される。また、2次コイル導体パターン同士の間に生じる寄生容量が抑制され、結合素子の自己共振周波数が高まる。
【0015】
したがって、第2放射素子に対する起電力が確保され、ローバンド側の利得が充分に高められる。また、結合素子の自己共振周波数が高まることによって、この自己共振周波数が使用周波数帯域外となって、自己共振による放射阻害が防止される。
【0016】
本発明に係る第2の態様のアンテナ装置では、前記1次コイル及び前記2次コイルは、前記給電回路から前記第1放射素子に向かって電流が流れるときに前記1次コイルに生じる磁束の向きと、前記グランドから前記第2放射素子に向かって電流が流れるときに前記2次コイルに生じる磁束の向きとが互いに逆となるように巻回されている。この構成によれば、第1放射素子と第2放射素子が実質的に同方向に延びる部分がある場合であっても、2つの素子から発生される磁束は強め合う方向に1次コイル及び2次コイルが巻回されているため、放射効率の低下が抑制される。このような構造による効果は、特に、放射素子が相対的に長くなるローバンド用のアンテナ装置において顕著である。
【0017】
本発明に係る第3の態様のアンテナ装置では、前記複数の1次コイル導体パターンの内縁は平面視でほぼ重なる。この構造によれば、1次コイルと2次コイルとの結合係数を効果的に高めることができる。
【0018】
本発明に係る第4の態様のアンテナ装置では、前記複数の2次コイル導体パターンのうち、積層方向に隣接する二つの2次コイル導体パターンの内縁同士の位置又は外縁同士の位置の少なくとも一方は、平面視で互いに異なる。この構造によれば、2次コイル導体パターン同士の寄生容量が効果的に抑制される。また、副次的な効果として、積層体である結合素子において積みずれが抑制される。
【0019】
本発明に係る第5の態様のアンテナ装置では、前記複数の1次コイル導体パターンの内縁は、前記複数の2次コイル導体パターンのうち、当該複数の2次コイル導体パターンが共有する巻回軸に最も近い2次コイル導体パターンの内縁から、前記巻回軸から最も遠い2次コイル導体パターンの内縁までの範囲に収まる。この構造によれば、1次コイルと2次コイルとの結合係数を大きく低下させることなく、所定の結合係数を維持できる。
【0020】
本発明に係る第6の態様のアンテナ装置では、前記複数の1次コイル導体パターンは、前記2次コイル導体パターンと最近接する第1最近接コイル導体パターンを含み、前記複数の2次コイル導体パターンは、前記1次コイル導体パターンと最近接する第2最近接コイル導体パターンを含み、前記積層方向から視て、前記第1最近接コイル導体パターンと前記第2最近接コイル導体パターンとが重なる面積は、前記複数の1次コイル導体パターンのうち前記第1最近接コイル導体パターン以外の導体パターンと前記第2最近接コイル導体パターンとが重なる面積よりも小さい。この構造によれば、1次コイルと2次コイルとの間の寄生容量も抑制されて、結合素子の自己共振周波数が更に高められる。その結果、自己共振による放射阻害が効果的に防止される。
【0021】
本発明に係る第7の態様のアンテナ装置では、上記第5の態様において、前記第1最近接コイル導体パターンの内縁は、前記第2最近接コイル導体パターンの内縁とほぼ重なる。この構造によれば、磁束が通過するコイル開口が揃い、1次コイルと2次コイルの結合が強まる。
【0022】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、実施形態を説明の便宜上分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0023】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係るアンテナ装置101の回路図である。このアンテナ装置101は、第1放射素子10、第2放射素子20及び結合素子2を備える。結合素子2は、互いに磁界結合する1次コイルL1及び2次コイルL2で構成されている。第1放射素子10の給電端には結合素子2の1次コイルL1の一端が接続されている。1次コイルL1の他端とグランドとの間には給電回路1が接続される。つまり、第1放射素子10の給電端には結合素子2の1次コイルL1を介して給電回路1が接続される。
【0024】
第2放射素子20の一端は結合素子2の2次コイルL2の一端に接続されていて、2次コイルL2の他端はグランドに接続されている。
【0025】
本実施形態のアンテナ装置101において、第1放射素子10は給電放射素子であり、第2放射素子20は無給電放射素子である。第1放射素子10は第1共振周波数と、第1共振周波数より高い周波数である第2共振周波数とを有している。第2放射素子20は、第2共振周波数よりも第1共振周波数に近い共振周波数を有している。なお、第1放射素子10が有する共振周波数は第1放射素子10と結合素子2の1次コイルL1とのそれぞれのインダクタンス値によって定められる。また、第2放射素子20が有する共振周波数は第2放射素子20と2次コイルL2とのそれぞれのインダクタンス値によって定められる。さらに、第1放射素子10と第2放射素子20とが有する共振周波数は、結合素子2の磁界結合(電界結合を含んでいてもよい。)によって、相互に変化する場合がある。本願明細書における「共振周波数」にはそのような変化も含まれている。
【0026】
第1放射素子10は結合素子2の1次コイルL1を介して給電回路1によって直接的に給電され、第2放射素子20は結合素子2を介して給電回路1によって間接的に給電される。また、第2放射素子20は場合によって、第1放射素子10に対して電界結合、磁界結合、又は電界結合及び磁界結合、によっても給電される。
【0027】
図2は結合素子2の斜視図であり、
図3は結合素子2を構成する多層基板の各層の平面図である。
【0028】
結合素子2は回路基板に実装される直方体状のチップ部品である。
図2においては、結合素子2の外形を二点鎖線で表している。結合素子2の外面には、給電回路接続端子PF、給電放射素子接続端子PA、グランド端子PG、及び無給電放射素子接続端子PSが形成されている。また、結合素子2は第1面MS1と当該第1面とは反対側の面である第2面MS2とを備える。本実施形態では、第1面MS1が実装面であり、この面が回路基板に対向する。
【0029】
図3は、
図2における中央の層MLを構成する複数の絶縁基材について表している。絶縁基板S11,S12には、1次コイル導体パターンL11,L12がそれぞれ形成されている。絶縁基板S21,S22,S23,S24には、2次コイル導体パターンL21,L22,L23,L24がそれぞれ形成されている。
【0030】
1次コイル導体パターンL11と1次コイル導体パターンL12とは層間接続導体V1を介して接続されている。2次コイル導体パターンL21と2次コイル導体パターンL22とは層間接続導体V2を介して接続されていて、2次コイル導体パターンL22と2次コイル導体パターンL23とは層間接続導体V3を介して接続されていて、2次コイル導体パターンL23と2次コイル導体パターンL24とは層間接続導体V4を介して接続されている。
【0031】
1次コイル導体パターンL11,L12及び層間接続導体V1によって1次コイルL1が構成されていて、2次コイル導体パターンL21〜L24及び層間接続導体V2,V3,V4によって2次コイルL2が構成されている。
【0032】
1次コイル導体パターンL11の一端は給電回路接続端子PFに接続されていて、1次コイル導体パターンL12の一端は給電放射素子接続端子PAに接続されている。また、2次コイル導体パターンL21の一端は無給電放射素子接続端子PSに接続されていて、2次コイル導体パターンL24の一端はグランド端子PGに接続されている。
【0033】
1次コイルL1は、給電回路接続端子PFから給電放射素子接続端子PAまで約1.5ターンのコイルである。1次コイル導体パターンL11,L12は線幅の全幅に亘って、平面視で互いに重なる。つまり、1次コイル導体パターンL11,L12は互いの内縁がほぼ重なる。ただし、製造精度による位置の違いは「ほぼ重なる」に含まれる。
【0034】
2次コイルL2は、無給電放射素子接続端子PSからグランド端子PGまで約3.5ターンのコイルである。2次コイル導体パターンL21,L23の内縁はそれぞれ互いにほぼ等しい小径コイル導体パターンであり、2次コイル導体パターンL22,L24の内縁はそれぞれ互いにほぼ等しい大径コイル導体パターンである。小径コイル導体パターンは、大径コイル導体パターンよりも平均コイル径が小さく、小径コイル導体パターンの内縁は、大径コイル導体パターンの内縁よりも内側にある。つまり、2次コイル導体パターンL21〜L24は、互いに内縁が異なる複数の導体パターンを含む。
【0035】
図3に示す例では、小径のコイル2次コイル導体パターンL21,L23の内縁は、平面視で大径のコイル2次コイル導体パターンL22,L24と重ならない。また、小径の2次コイル導体パターンL21,L23の外縁は、平面視で大径の2次コイル導体パターンL22,L24と重なる。
【0036】
1次コイル導体パターンL11,L12の外縁は、平面視で、2次コイル導体パターンL21,L23の外縁にほぼ重なり、1次コイル導体パターンL11,L12の内縁は平面視で、2次コイル導体パターンL22,L24の内縁にほぼ重なる。つまり、1次コイル導体パターンL11,L12の内縁及び外縁が2次コイル導体パターンL21〜L24のいずれの内縁及び外縁とも大きく異なっているわけではない。ただし、小径の2次コイル導体パターンL21,L23と大径の2次コイル導体パターンL22,L24とが、平面視で重なる部分に1次コイル導体パターンL11,L12も重なることは必須ではない。
【0037】
図3において、1次コイル導体パターンL12は2次コイル導体パターンL21〜L24と最近接する導体パターンであり、本発明に係る「第1最近接コイル導体パターン」に相当する。また、2次コイル導体パターンL21は1次コイル導体パターンL11,L12と最近接する導体パターンであり、本発明に係る「第2最近接コイル導体パターン」に相当する。
【0038】
次に、結合素子2を構成する多層基板の各層に形成される導体パターンの別の例について示す。
図4及び
図5は、いずれも結合素子2の多層基板の各層の平面図である。
図4及び
図5に示す導体パターンは、
図3に示した導体パターンとは部分的に異なる。
【0039】
1次コイル導体パターンL11と1次コイル導体パターンL12とは層間接続導体V1を介して接続されている。2次コイル導体パターンL21と2次コイル導体パターンL22とは層間接続導体V2を介して接続されていて、2次コイル導体パターンL22と2次コイル導体パターンL23とは層間接続導体V3を介して接続されていて、2次コイル導体パターンL23と2次コイル導体パターンL24とは層間接続導体V4を介して接続されている。1次コイル導体パターンL11,L12及び層間接続導体V1によって1次コイルL1が構成されていて、2次コイル導体パターンL21〜L24及び層間接続導体V2,V3,V4によって2次コイルL2が構成されている。1次コイル導体パターンL11の一端は給電回路接続端子PFに接続されていて、1次コイル導体パターンL12の一端は給電放射素子接続端子PAに接続されている。また、2次コイル導体パターンL21の一端は無給電放射素子接続端子PSに接続されていて、2次コイル導体パターンL24の一端はグランド端子PGに接続されている。
【0040】
図4に示した例、
図5に示した例のいずれにおいても、
図3に示した例とは異なり、給電回路接続端子PFから給電放射素子接続端子PAの方向に電流が流れた時に1次コイルL1に生じる磁界の向きと、グランド端子PGから無給電放射素子接続端子PSの方向に電流が流れた時に2次コイルL2に生じる磁界の向きとが互いに逆になるように、1次コイルL1と2次コイルL2が巻回されている。この構造によって、例えば、第1放射素子10と第2放射素子20とが実質的に同方向に延びる部分があっても、この2つの素子から発生される磁束は強めあう方向に1次コイルL1及び2次コイルL2が巻回されているため、放射効率の低下が抑制される。このような構造による効果は、特に、放射素子が相対的に長くなるローバンド用のアンテナ装置において顕著である。
【0041】
図6は結合素子2の等価回路図である。
図6において寄生容量C12は1次コイルL1と2次コイルL2との間の寄生容量、寄生容量C2は2次コイルL2に生じる寄生容量である。
図3に示した構造によれば、積層方向に隣接する導体パターン同士の対向面積が小さくので、2次コイル導体パターン同士の寄生容量C2が効果的に抑制される。また、第1最近接コイル導体パターンである1次コイル導体パターンL12と、第2最近接コイル導体パターンである2次コイル導体パターンL21との対向面積が小さいので、1次コイルL1と2次コイルL2との間の寄生容量C12も抑制される。
【0042】
なお、1次コイルの巻回数は少ないので、1次コイルL1に生じる寄生容量は2次コイルL2に生じる寄生容量C2に比べて無視できる程度に小さい。特に、
図3、
図4及び
図5においては、1次コイル導体パターンL11,L12は2次コイル導体パターンL21〜L24に比べ、線幅が細く、層数が少ない(2層)。このような特徴からも、1次コイルL1に生じる寄生容量は2次コイルL2に生じる寄生容量C2に比べて無視できる程度に小さいといえる。
【0043】
以上に示した構造の結合素子2は、2次コイルの巻回数が1次コイルよりも多いため、第1放射素子10が有する低い共振周波数側においても高利得化及び広帯域化を可能とする。具体的には、第2放射素子20に対する起電力が確保され、低い共振周波数であっても利得を充分に高めることができる。また、結合素子2の不要な結合容量を抑制できるため、結合素子2の自己共振周波数が高まる。このことにより、以下に示すように、自己共振による放射阻害が防止される。
【0044】
図7(A)は本実施形態のアンテナ装置101の反射損失の周波数特性を示す図である。
図7(B)は比較例としてのアンテナ装置の反射損失の周波数特性を示す図である。この比較例のアンテナ装置は、
図3に示した2次コイル導体パターンL21〜L24の全ての内縁及び外縁が1次コイル導体パターンL11,L12の内縁及び外縁のそれぞれに重なる結合素子を備えるアンテナ装置である。
【0045】
図7(A)、
図7(B)において、実線は第1放射素子10単体での反射係数(共振特性)であり、破線は結合素子2を含む第2放射素子20の反射係数(共振特性)である。
図7(A)、
図7(B)においては、隣接する二つの二点鎖線の間は図示を省略している。周波数f1Lは第1放射素子10の基本共振(1/4波長共振)の周波数、周波数f1Hは第1放射素子10の高次共振(例えば3/4波長共振)周波数である。また、周波数f2Lは結合素子2を含む第2放射素子20の基本共振(1/4波長共振)の周波数、周波数SRは結合素子2の自己共振周波数である。この自己共振は放射には寄与しないばかりか、第1放射素子10によるハイバンドHBの放射を阻害する。
図7(B)において、自己共振周波数の帯域SBはハイバンドHB内での放射を阻害する周波数帯域を表している。
【0046】
本実施形態のアンテナ装置101は、第1放射素子10の基本共振周波数f1Lと第2放射素子20の基本共振周波数f2LとでローバンドLBをカバーし、第1放射素子10の高次共振周波数f1HでハイバンドHBをカバーする。さらに第2放射素子20の高次共振周波数でハイバンドHBをカバーしてもよい。この例では、ローバンドLBは0.70GHz〜0.96GHzの周波数帯であり、ハイバンドHBは例えば0.96GHz〜3.6GHzの周波数帯である。
【0047】
結合素子2の自己共振周波数は、結合素子2の寄生容量の影響を大きく受ける。
図7(A)に示す本実施形態のアンテナ装置101では、
図7(B)と比較すれば明らかなように、結合素子2の自己共振周波数SRはハイバンドHBの使用周波数帯外にまでシフトしている。これに伴って、第1放射素子10の高次共振周波数f1HによるハイバンドHBの放射が上記自己共振によって阻害されることなく、所定の利得が確保される。
【0048】
なお、
図3、
図4及び
図5では、小径の2次コイル導体パターンL21,L23と大径の2次コイル導体パターンL22,L24とが平面視で部分的に重なる例を示した。また、小径の2次コイル導体パターンL21,L23と大径の2次コイル導体パターンL22,L24とが交互に積層された例を示した。このような構造によれば、絶縁基板S21,S22,S23,S24の積みずれに対するコイル導体パターンの重なり量のばらつきが少ない。つまり、製造時の位置合わせや寸法精度に起因する、2次コイルの寄生容量のばらつきが少ない。したがって、電気的特性のばらつきが抑制される。
【0049】
2次コイル導体パターンL21〜L24のパターンは、2次コイル導体パターンL21,L23の内縁及び外縁と2次コイル導体パターンL22,L24の内縁及び外縁とのそれぞれの平面視での距離の差を大きくして、2次コイル導体パターンL21,L23と2次コイル導体パターンL22,L24とが平面視で重ならない関係であってもよい。この構造であれば、2次コイルの寄生容量を効果的に抑制できる。
【0050】
また、
図3、
図4及び
図5では、小径のコイル導体パターンと大径のコイル導体パターンとが交互に積層された例を示したが、小径のコイル導体パターン同士が積層方向で隣接していてもよい。同様に、大径のコイル導体パターン同士が積層方向で隣接していてもよい。
【0051】
また、
図3、
図4及び
図5では、2次コイルが、小径の2次コイル導体パターンL21,L23と大径の2次コイル導体パターンL22,L24とで構成される例を示したが、複数の2次コイル導体が共有する巻回軸からの距離が異なる内縁及び外縁を有する2次コイル導体が3種以上あってもよい。
【0052】
また、第2最近接コイル導体パターンの内縁が1次コイル導体パターンの内縁とほぼ重なると、磁束が通過するコイル開口が揃い、1次コイルと2次コイルの結合が強まるため、好ましい。
【0053】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、第1最近接コイル導体パターンが第1の実施形態で示した第1最近接コイル導体パターンとは異なるアンテナ装置について示す。
【0054】
図8は第2の実施形態に係るアンテナ装置が備える結合素子に関する図であり、結合素子を構成する多層基板の各層の平面図である。
【0055】
絶縁基板S11,S12には、1次コイル導体パターンL11,L12がそれぞれ形成されている。絶縁基板S21,S22,S23,S24には、2次コイル導体パターンL21,L22,L23,L24がそれぞれ形成されている。
【0056】
1次コイル導体パターンL11と1次コイル導体パターンL12とは層間接続導体V1を介して接続されている。2次コイル導体パターンL21と2次コイル導体パターンL22とは層間接続導体V2を介して接続されていて、2次コイル導体パターンL22と2次コイル導体パターンL23とは層間接続導体V3を介して接続されていて、2次コイル導体パターンL23と2次コイル導体パターンL24とは層間接続導体V4を介して接続されている。
【0057】
1次コイル導体パターンL11,L12及び層間接続導体V1によって1次コイルL1が構成されていて、2次コイル導体パターンL21〜L24及び層間接続導体V2,V3,V4によって2次コイルL2が構成されている。
【0058】
次に、第2の実施形態に係る結合素子を構成する多層基板の各層に形成される導体パターンの別の例について示す。
図9及び
図10は、いずれも第2の実施形態に係る結合素子の多層基板の各層の平面図である。
図9及び
図10に示す導体パターンは、
図8に示した導体パターンとは部分的に異なる。
【0059】
1次コイル導体パターンL11と1次コイル導体パターンL12とは層間接続導体V1を介して接続されている。2次コイル導体パターンL21と2次コイル導体パターンL22とは層間接続導体V2を介して接続されていて、2次コイル導体パターンL22と2次コイル導体パターンL23とは層間接続導体V3を介して接続されていて、2次コイル導体パターンL23と2次コイル導体パターンL24とは層間接続導体V4を介して接続されている。1次コイル導体パターンL11,L12及び層間接続導体V1によって1次コイルL1が構成されていて、2次コイル導体パターンL21〜L24及び層間接続導体V2,V3,V4によって2次コイルL2が構成されている。1次コイル導体パターンL11の一端は給電回路接続端子PFに接続されていて、1次コイル導体パターンL12の一端は給電放射素子接続端子PAに接続されている。また、2次コイル導体パターンL21の一端は無給電放射素子接続端子PSに接続されていて、2次コイル導体パターンL24の一端はグランド端子PGに接続されている。
【0060】
図9に示した例、
図10に示した例のいずれにおいても、
図8に示した例とは異なり、給電回路接続端子PFから給電放射素子接続端子PAの方向に電流が流れた時に1次コイルL1に生じる磁界の向きと、グランド端子PGから無給電放射素子接続端子PSの方向に電流が流れた時に2次コイルL2に生じる磁界の向きとが互いに逆になるように、1次コイルL1と2次コイルL2が巻回されている。この構造によって、例えば、第1放射素子10と第2放射素子20とが実質的に同方向に延びる部分があっても、この2つの素子から発生される磁束は強めあう方向に1次コイルL1及び2次コイルL2が巻回されているため、放射効率の低下が抑制される。このような構造による効果は、特に、放射素子が相対的に長くなるローバンド用のアンテナ装置において顕著である。
【0061】
図3、
図4及び
図5に示した例とは、1次コイル導体パターンL11,L12の形状がそれぞれ異なる。
図3、
図4及び
図5に示した例では、第1最近接導体パターンである1次コイル導体パターンL12が約1ターンであったのに対し、
図8、
図9及び
図10に示す例では、第1最近接導体パターンである1次コイル導体パターンL12が約1/2ターンである。そのため、
図3、
図4及び
図5に示した例に比べて、1次コイル導体パターンL12と2次コイル導体パターンL21(第2最近接導体パターン)との対向面積は小さい。そのため、1次コイルL1と2次コイルL2との間の寄生容量も抑制されて、結合素子の自己共振周波数が更に高められる。その結果、放射阻害が防止され、アンテナ装置の通信帯域の広帯域化に有利となる。
【0062】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、第1放射素子及び第2放射素子の構造が第1の実施形態で示したものとは異なるアンテナ装置の例を示す。
【0063】
図11は第3の実施形態に係るアンテナ装置102Aの回路図である。アンテナ装置102Aは、逆Fアンテナ又はPIFA構造の第1放射素子10と逆Lアンテナ構造の第2放射素子20とを備える。第1放射素子10の接地端には結合素子2の給電放射素子接続端子PAが接続されている。また、第1放射素子10の給電端とグランドとの間に給電回路1が接続されている。第2放射素子20の給電端には無給電放射素子接続端子PSが接続されている。結合素子2のグランド端子PGはグランドに接続されている。
【0064】
アンテナ装置102Aの第1放射素子10は逆Fアンテナ又はPIFA(Planar Inverted-F Antenna)として作用する。第2放射素子20は結合素子2を介して給電回路1によって間接的に給電される。また、第2放射素子20は第1放射素子10と電界結合又は磁界結合することによっても給電される。
【0065】
図12は第3の実施形態に係る別のアンテナ装置102Bの回路図である。アンテナ装置102Bは、逆Fアンテナ又はPIFA構造の第1放射素子10と逆Lアンテナ構造の第2放射素子20とを備える。
図11に示した例とは、第1放射素子10の給電端及び接地端の位置が異なる。第1放射素子10の給電端には結合素子2の給電放射素子接続端子PAが接続されている。結合素子2の給電回路接続端子PFとグランドとの間に給電回路1が接続されている。第1放射素子10の接地端はグランドに接続されている。第2放射素子20の給電端には無給電放射素子接続端子PSが接続されている。結合素子2のグランド端子PGはグランドに接続されている。
【0066】
アンテナ装置102Bの第1放射素子10は逆Fアンテナ又はPIFAとして作用する。第2放射素子20は結合素子2を介して給電回路1によって間接的に給電される。また、第2放射素子20は第1放射素子10と電界結合又は磁界結合することによっても給電される。
【0067】
図13は第3の実施形態に係る更に別のアンテナ装置102Cの回路図である。アンテナ装置102Cは、モノポール型の第1放射素子10と、逆Fアンテナ又はPIFA構造の第2放射素子20とを備える。第1放射素子10の給電端には結合素子2の給電放射素子接続端子PAが接続されている。結合素子2の給電回路接続端子PFとグランドとの間に給電回路1が接続されている。第2放射素子20の給電端には結合素子2の無給電放射素子接続端子PSが接続されている。第2放射素子20の接地端はグランドに接続されている。
【0068】
以上例示したように、第1放射素子及び第2放射素子は、逆Fアンテナ、PIFA、逆Lアンテナ等であってもよい。これらの場合でも、第1放射素子10及び第2放射素子20の基本共振モード及び高次共振モードを利用したマルチバンドのアンテナ装置が構成され、ハイバンドが効果的に広帯域化される。
【0069】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【0070】
例えば、
図7(A)では、第1放射素子10の基本共振周波数f1Lと第2放射素子20の基本共振周波数f2Lとでローバンドをカバーし、第1放射素子10の高次共振周波数f1Hでハイバンドをカバーする例を示したが、ローバンドからハイバンドに亘るフルバンドをカバーする放射素子として、第1放射素子10及び第2放射素子20を用いてもよい。