特許第6791471号(P6791471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791471
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】コヒーレントレシーバの組立方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20201116BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20201116BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20201116BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   G02B6/42
   G02B6/32
   H01L31/02 C
   G02F1/01 F
【請求項の数】2
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-130446(P2016-130446)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-4896(P2018-4896A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 建
(72)【発明者】
【氏名】中川 覚司
【審査官】 奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−018225(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105629402(CN,A)
【文献】 特開平03−021905(JP,A)
【文献】 特開2003−228025(JP,A)
【文献】 特開平07−099477(JP,A)
【文献】 米国特許第04929080(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26− 6/27
G02B 6/30− 6/34
G02B 6/42− 6/43
G02F 1/00− 1/125
G02F 1/21− 7/00
H01S 5/00− 5/50
H01L 31/00−31/02
H01L 31/08−31/10
H01L 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体に固定された光ファイバと、前記筐体内に設けられた偏光ビームスプリッタと、複数の受光素子と、を有するコヒーレントレシーバにおいて、
偏光方向が互いに直交する第1の光及び第2の光を偏波合成器を用い信号光に対応する調整光として合成する工程と、
前記調整光を前記筐体内に入射させ、前記偏光ビームスプリッタに導入する工程と、
前記偏光ビームスプリッタで分岐し出力される前記第1の光及び前記第2の光の光強度を前記複数の受光素子で検出しながら、前記偏光ビームスプリッタと前記複数の受光素子との間において、前記第1の光及び前記第2の光それぞれに対応した光路上に配置される光学部品の光軸調整を行う工程と、を含む、コヒーレントレシーバの組立方法。
【請求項2】
前記光軸調整は、前記偏光をビームスプリッタから出力される前記第1の光の前記光強度を前記複数の受光素子の一方が検知し、前記偏光ビームスプリッタから出力される前記第2の光の前記光強度を前記複数の受光素子の他方が検知し、且つ前記第1の光及び前記第2の光の前記光強度同時に検知しつつなされる、請求項1に記載のコヒーレントレシーバの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品の組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コヒーレント光受信装置に関する技術が開示されている。コヒーレント通信用光受信デバイス等の光受信器では、偏波や位相が多重化された光信号が偏波保持ファイバを介して入力され、偏光ビームスプリッタ(PBS:Polarization Beam Splitter)により偏光に応じて分波される。分波された光信号は、例えば光90度ハイブリッド素子により位相に応じて分離される。分離された光信号は、受光素子により電気信号に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5‐158096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図16は、このコヒーレント光受信装置の構成を概略的に示す。図16に示されるコヒーレント光受信装置200は、偏光ビームスプリッタ202、ビームスプリッタ204、モニタ用受光素子206、2個の多モード干渉器(光90度ハイブリッド)211及び212、8個(4組)の信号光用受光素子234、4個のアンプ235、並びに8個(4組)のカップリングコンデンサ236を備えている。
【0005】
このコヒーレント光受信装置200には、偏光方向が互いに異なる2つの偏光成分を有する信号光N0と、局発光L0とが入力される。信号光N0の一部は、ビームスプリッタ208によって分岐されてモニタ用受光素子206に入力される。モニタ用受光素子206は、信号光N0の平均光強度を検出する。信号光N0の残部は、可変減衰器210を経て偏光ビームスプリッタ202に達し、偏光ビームスプリッタ202によって一方の偏光成分N1と他方の偏光成分N2とに分岐される。一方の偏光成分N1は一方の多モード干渉器211に入力され、他方の偏光成分N2は他方の多モード干渉器212に入力される。
【0006】
局発光L0は、ビームスプリッタ204によって分岐される。分岐された一方の局発光L1は多モード干渉器212に入力され、他方の局発光L2は多モード干渉器211に入力される。多モード干渉器211は、局発光L2と偏光成分N1とを干渉させることにより、XI信号成分及びXQ信号成分をそれぞれ示す2対の干渉光を出力する。多モード干渉器212は、局発光L1と偏光成分N2とを干渉させることにより、YI信号成分及びYQ信号成分をそれぞれ示す2対の干渉光を出力する。これらの干渉光は、各信号光用受光素子234によって電流信号に変換される。各信号光用受光素子234から出力された電流信号は、アンプ235によって差動の電圧信号に変換されたのち、カップリングコンデンサ236を介して外部に出力される。
【0007】
図16に示される光受信装置200においては、信号光N0及び各偏光成分N1,N2の各光路上に様々な光学部品が配置される。例えば、多モード干渉器211,212の光導入口が小さい場合、各偏光成分N1,N2を光導入口に向けて集光するためのレンズが必要になる。また、各偏光成分N1,N2を多モード干渉器211,212に向けるためのミラーが必要に応じて配置される。
【0008】
図16に示される光受信装置200を組み立てる際には、これらの光学部品を、多モード干渉器211,212に対して光軸調整を行いつつ配置することが求められる。その為に、信号光N0を模擬する調整光を外部から入力し、その調整光と多モード干渉器211,212との光結合効率が高まるようにこれらの光学部品の光軸調整を行うことが考えられる。その際、偏光ビームスプリッタ202を介して多モード干渉器211,212に調整光を到達させることが求められる。図17は、偏光の概念について説明する図である。一般に光は、xy平面内に電場ベクトルEと磁場ベクトルHとを有する。そして、+z方向に進む光の電場ベクトルEは、x成分Exとy成分Eyとに分解されうる。すなわち、電場ベクトルEはx成分Exとy成分Eyとの和(Ex+Ey)として表される。従って、調整光を図18に示されるような直線偏光とすることにより、調整光は偏光ビームスプリッタ202においてx成分Exとy成分Eyとに分岐されるので、x成分Exを一方の多モード干渉器211に入力させ、y成分Eyを他方の多モード干渉器211に入力させることができる。
【0009】
図19は、そのような光軸調整方式の一例を示す図である。同図に示されるように、光源221から直線偏光の試験光LDを出力させ、この試験光LDを、偏波コントローラ222を介して光受信装置200に入力する。そして、偏光ビームスプリッタ202によって分岐された試験光LDの一方の偏光成分LD1の光強度と他方の偏光成分LD2の光強度とがそれぞれ所望の大きさになるように、偏波コントローラ222によって試験光LDの偏光方向を調整する。その後、試験光LD及び各偏光成分LD1,LD2の各光路上に種々の光学部品を配置し、偏光成分LD1,LD2と多モード干渉器211,212との光結合効率が最大になるようにそれらの光学部品の光軸調整を行う。
【0010】
しかしながら、上記の方法では、偏光ビームスプリッタ202と試験光LDの偏光方向との光軸周りの相対角度に誤差が生じると、x成分Exとy成分Eyとの強度比(分岐比)が所定の強度比から変動してしまい、各偏光成分LD1,LD2と多モード干渉器211,212との光結合効率を正確に測定することができない。すなわち、各偏光成分LD1,LD2を個別に測定すると、偏光成分LD1の測定と偏光成分LD2の測定は、それぞれの測定で偏波を調整して実施されるので、各偏光成分LD1とLD2を正確に測定できない。従って、偏光ビームスプリッタ202と試験光LDの偏光方向との相対角度を予め精度良く調整する必要があり、光受信装置200の組立作業に長時間を要するとともに、組立作業を難しくするという問題がある。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、各偏光成分の信号光に対応した光路上に配置される光学部品の光軸調整を容易に且つ精度良く行うことができる光学部品の組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る光学部品の組立方法は、偏光方向が互いに直交する二つの偏光成分を含む信号光を一方の偏光成分と他方の偏光成分とに分岐する偏光ビームスプリッタに対し、偏光方向が互いに直交する第1の光及び第2の光を偏波合成器を用いて合成した調整光を導入しつつ、調整光の光強度を検出しながら、各偏光成分の信号光に対応した光路上に配置される光学部品の光軸調整を行う工程を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明による光学部品の組立方法によれば、各偏光成分の信号光に対応した光路上に配置される光学部品の光軸調整を容易に且つ精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る組立方法の対象であるコヒーレントレシーバを概略的に示す平面図である。
図2図2は、図1に示すコヒーレントレシーバの内部を示す斜視図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、コヒーレントレシーバの製造方法を説明するための図である。図3(a)は、互いに垂直な光反射面及び底面を有する標準ミラーを設置する様子を示している。図3(b)は、標準ミラーを、ベース及びVOAキャリアを搭載したパッケージに置き換える様子を示している。
図4図4は、コヒーレントレシーバの製造方法を説明するための図であって、モニタPDをVOAキャリア上に搭載する様子を示している。
図5図5は、模擬ポートを保持するためのマニピュレータの一部を示す斜視図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、調整光を生成するための構成を示すブロック図である。
図7図7は、偏波合成器の構成例を示す斜視図である。
図8図8は、コヒーレントレシーバの製造方法を説明するための図であって、反射器の調芯及び固定を行う様子を示している。
図9図9は、コヒーレントレシーバの製造方法を説明するための図であって、第1レンズの調芯及び固定を行う様子を示している。
図10図10は、コヒーレントレシーバの製造方法を説明するための図であって、第2レンズの調芯及び固定を行う様子を示している。
図11図11は、コヒーレントレシーバの製造方法を説明するための図であって、Sig光入力レンズの調芯及び固定を行う様子を示している。
図12図12は、コヒーレントレシーバの製造方法を説明するための図であって、VOAをVOAキャリア上に搭載する様子を示している。
図13図13は、コヒーレントレシーバの製造方法を説明するための図であって、減衰器を搭載する様子を示している。
図14図14は、コヒーレントレシーバの製造方法を説明するための図であって、筐体を塞ぐリッドをシームシールにより取り付け、筐体の内部を気密封止する様子を示している。
図15図15は、コヒーレントレシーバの製造方法を説明するための図であって、模擬ポートを本来のSig光入力ポート及びLo光ポートに置き換え、Sig光入力ポート及びLo光ポートの調芯及び固定を行う様子を示している。
図16図16は、特許文献1に示されたコヒーレント光受信装置の構成を概略的に示す。
図17図17は、偏光の概念について説明する図である。
図18図18は、偏光の概念について説明する図である。
図19図19は、光軸調整方式の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の一実施形態に係る光学部品の組立方法は、偏光方向が互いに直交する二つの偏光成分を含む信号光を一方の偏光成分と他方の偏光成分とに分岐する偏光ビームスプリッタに対し、偏光方向が互いに直交する第1の光及び第2の光を偏波合成器を用いて合成した調整光を導入しつつ、調整光の光強度を検出しながら、各偏光成分の信号光に対応した光路上に配置される光学部品の光軸調整を行う工程を含む。
【0016】
この組立方法では、光学部品の光軸調整を行うために、偏光方向が互いに直交する第1及び第2の光を偏波合成器によって合成し、信号光に代わる調整光として偏光ビームスプリッタに導入する。このとき、第1及び第2の光の偏光方向が互いに直交するので、調整光と偏光ビームスプリッタとの光軸周りの相対角度に誤差が生じても、分岐比への影響は殆ど生じない。すなわち、相対角度が或る一方向にずれた場合、第1の光については分岐後の一方の偏光成分の光強度が減り、他方の偏光成分の光強度が増すが、第2の光については分岐後の一方の偏光成分の光強度が増し、他方の偏光成分の光強度が減る。従って、分岐後の第1の光の偏光成分と第2の光の偏光成分とを合わせた光強度は常に一定であり、調整光と偏光ビームスプリッタとの光軸周りの相対角度の誤差の影響を殆ど受けない。従って、上記の組立方法によれば、図19に示された偏波コントローラ222による偏光方向の調整をしなくても、分岐後の調整光の光強度を精度良く所定の大きさにできるので、各偏光成分の光路上に配置される光学部品の光軸調整を容易に且つ精度良く行うことができる。
【0017】
また、上記の組立方法において、光軸調整は、第1の光及び第2の光の光強度を複数の光検知手段で同時に検知しつつなされてもよい。
【0018】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光学部品の組立方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る組立方法の対象である光学部品としてのコヒーレントレシーバ1を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示すコヒーレントレシーバ1の内部を示す斜視図である。コヒーレントレシーバ1は、局発光(Local Beam:Lo光)と信号光(Signal Beam:Sig光)とを干渉させ、位相変調された信号光に含まれる情報を復調する装置である。復調された情報は電気信号に変換されてコヒーレントレシーバ1の外部に出力される。コヒーレントレシーバ1は、局発光、信号光それぞれに対する光学系と、二つの多モード干渉器(Multi-Mode Interference:MMI)40,50とを備える。更に、コヒーレントレシーバ1は、これらの光学系とMMI40,50とを収容する筐体2を備える。光学系及びMMI40,50は、ベース4を介して筐体2の底面2E上に搭載されている。ベース4は、アルミナ(Al23)若しくは窒化アルミニウム(AlN)等の絶縁材料によって構成される。また、底面2E上には、復調された情報を処理する回路を搭載する回路基板46,56が搭載されている。二つのMMI40,50は半導体MMIであり、たとえばInP製である。MMI40は、Lo光導入口41及びSig光導入口42を有し、Lo光導入口41に入力された局発光と、Sig光導入口42に入力された信号光とを干渉させることにより、信号光の位相情報を復調する。同様に、MMI50は、Lo光導入口51及びSig光導入口52を有し、Lo光導入口51に入力された局発光と、Sig光導入口52に入力された信号光とを干渉させることにより、信号光の位相情報を復調する。なお、本実施形態では二つのMMI40,50が互いに独立して設けられているが、これらは一体に集積化されていてもよい。
【0020】
筐体2は、前壁2Aを有する。以下の説明において、前壁2A側を前方、反対側を後方と呼ぶ。但し、これら前方/後方はあくまでも説明のためだけであり、本発明の範囲を制限するものではない。前壁2Aには、Lo光入力ポート5及びSig光入力ポート6が、たとえばレーザ溶接により固定されている。Lo光入力ポート5には偏波保持ファイバ35を介して局発光L0が提供され、Sig光入力ポート6には単一モードファイバ36を介して信号光N0が提供される。入力ポート5,6は、それぞれコリメートレンズを有しており、偏波保持ファイバ35、単一モードファイバ36から出射された局発光L0、信号光N0(それぞのファイバから出射された状態では発散光)をそれぞれコリメート光に変更して筐体2内に導く。
【0021】
Lo光用光学系は、Lo光入力ポート5から提供されたLo光をMMI40,50のLo光導入口41,51に導く。具体的には、Lo光用光学系は、偏光子(polarizer)11、光分波器(Beam Splitter:BS)12、反射器13、二つのレンズ群14,15、スキュー調整素子16、及び減衰器71を含む。なお、スキュー調整素子16及び減衰器71は、必要でなければ省かれてもよい。
【0022】
偏光子11はLo光入力ポート5に光結合し、Lo光入力ポート5から提供された局発光L0の偏波方向を整える。局発光L0の光源は、極めて扁平な楕円偏光を出力する。また、局発光L0の光源が直線偏光を出力したとしても、光源からこのコヒーレントレシーバ1に至る光経路に挿入された光部品の実装精度などにより、Lo光入力ポート5から入力される局発光L0が所望の方向に沿った直線偏光を有しているわけではない。偏光子11は、Lo光入力ポート5から入力された局発光L0を、所望の偏光方向(たとえば底面2Eに平行な方向)を有する直線偏光に変換する。
【0023】
BS12は、偏光子11から出力される局発光L0を二分岐する。分岐比は50:50である。分岐された一方の局発光L1はBS12を直進してMMI40に向かう。他方の局発光L0は、BS12によりその光軸を90°変換され、さらに、反射器13により再度その光軸を90°変換されてMMI50に向かう。なお、図1及び図2に示されるBS12及び反射器13はプリズム型であり、互いに張り合わされた二つのプリズムの界面が光分岐面あるいは光反射面とされている。しかしながら、BS12及び反射器13はプリズム型に限定されず、いわゆる平板型のBS及び反射器であってもよい。
【0024】
レンズ群14は、BS12とMMI40との間の光路上に配置され、BS12によって分岐された一方の局発光L1を、MMI40のLo光導入口41に集光する。レンズ群15は、反射器13とMMI50との間の光路上に配置され、BS12によって分岐され反射器13において反射した他方の局発光L2を、MMI50のLo光導入口51に集光する。レンズ群14,15は、それぞれMMI40,50に相対的に近接配置された第1レンズ14b,15b、及び相対的にMMI40,50から離間して配置された第2レンズ14a,15aを有する。このように、第1レンズ14b,15bと第2レンズ14a,15aとを組み合わせて集光レンズとすることによって、MMI40,50の小さなLo光導入口41,51に対する局発光L1,L2の光結合効率を高めることができる。
【0025】
スキュー調整素子16は、BS12とレンズ群14との間の光路上に配置され、BS12によって分岐された二つの局発光L1,L2の、BS12から各Lo光導入口41,51に至る光学長の差を補正する。すなわち、局発光L2の光路長は、BS12から反射器13に至る光路長の分だけ局発光L1の光路長よりも長い。スキュー調整素子16は、この光路長差、換言すると各Lo光導入口41,51に至るまでの局発光L1,L2の時間差を補償する。スキュー調整素子16はシリコン製であり、また、局発光L1,L2に対する透過率は99%程度と、局発光L1,L2の波長に対しては実質透明な材料で構成される。
【0026】
Sig光用光学系は、偏光ビームスプリッタ(Polarization Beam Splitter:PBS)21、反射器22、二つのレンズ群23,24、半波長(λ/2)板25、スキュー調整素子26、及び減衰器81を含む。なお、スキュー調整素子26及び減衰器81は、必要でなければ省かれてもよい。
【0027】
PBS21は、Sig光入力ポート6に光結合し、単一モードファイバ36からSig光入力ポート6を介して提供された信号光N0の二つの偏光成分を分岐する。分岐比は例えば50:50である。単一モードファイバ36が提供する信号光N0の偏光方向は不定である。PBS21は、信号光N0の偏光方向に基づいてこれを二分する。たとえば、PBS21は、信号光N0のうち、筐体2の底面2Eに平行な偏光成分を透過して信号光N1とし、底面2Eに垂直な偏光成分を反射して信号光N2とする。
【0028】
PBS21を透過した信号光N1は、減衰器81及びスキュー調整素子26を透過した後、レンズ群23によりMMI50のSig光導入口52に光結合する。スキュー調整素子26は、PBS21とレンズ群23との間の光路上に配置され、PBS21によって分岐された二つの信号光N1,N2の、PBS21から各Sig光導入口42,52に至る光学長の差を補正する。すなわち、信号光N2の光路長は、PBS21から反射器22に至る光路長の分だけ信号光N1の光路長よりも長い。スキュー調整素子26は、この光路長差、換言すると各Sig光導入口42,52に至るまでの信号光N1,N2の時間差を補償する。スキュー調整素子26は、スキュー調整素子16と同様の材料により構成される。
【0029】
PBS21により反射された他方の信号光N2は、λ/2板25を通過する間にその偏光方向が90°回転される。分岐直後の信号光N1,N2の偏光は互いに直交している。信号光N2についてλ/2板25を通過させることで、信号光N2の偏光方向は90°回転され、他方の信号光N1と同様となる。そして、信号光N2は反射器22によりその光軸が90°変換され、MMI40のSig光導入口42にレンズ群24を介して光結合される。なお、図1及び図2に示されるPBS21及び反射器22はプリズム型であり、互いに張り合わされた二つのプリズムの界面が光分岐面あるいは光反射面とされている。しかしながら、PBS21及び反射器22はプリズム型に限定されず、透明平板部材の表面に光分岐機能或いは光反射機能を持たせた、いわゆる平板型のPBS及び反射器であってもよい。
【0030】
レンズ群23は、PBS21とMMI50との間の光路上に配置され、PBS21によって分岐された一方の信号光N1を、MMI50のSig光導入口52に集光する。レンズ群24は、反射器22とMMI40との間の光路上に配置され、PBS21によって分岐され反射器22において反射した他方の信号光N2を、MMI40のSig光導入口42に集光する。レンズ群23,24は、それぞれMMI50,40に相対的に近接配置された第1レンズ23b,24b、及び相対的にMMI50,40から離間して配置された第2レンズ23a,24aを有する。このように、第1レンズ23b,24bと第2レンズ23a,24aとを組み合わせて集光レンズとすることによって、MMI50,40の小さなSig光導入口52,42に対する信号光N1,N2の光結合効率を高めることができる。
【0031】
MMI40は、マルチモード干渉導波路(MMI導波路)と、この導波路に光結合したフォトダイオード(PD)とを含む。MMI導波路は、たとえばInP基板上に形成された導波路であり、Lo光導入口41に入力された局発光L1と、Sig光導入口42に入力された信号光N2とを干渉させて、信号光N2に含まれている情報を、局発光L1の位相に一致する位相成分と、局発光L1の位相と90°異なる位相成分とに分離して復調する。すなわち、MMI40は、信号光N2について二つの独立した情報を復調する。同様に、MMI50は、MMI導波路と、この導波路に光結合したPDとを含む。MMI導波路はInP基板上に形成された導波路であり、Lo光導入口51に入力された局発光L2と、Sig光導入口52に入力された信号光N1とを干渉させて、二つの互いに独立した情報を復調する。
【0032】
筐体2は、前壁2Aとは反対側に後壁2Bを有する。また、筐体2は、前壁2Aと後壁2Bとを接続する二つの側壁から後壁2Bにわたって連続して設けられたフィードスルー61を有する。後壁2Bのフィードスルー61には複数の信号出力端子65が設けられ、MMI40,50によって復調された4つの独立情報は、集積回路43,53において信号処理された後、これらの信号出力端子65を介してコヒーレントレシーバ1の外部に導かれる。また、二つの側壁には別の端子66,67が設けられている。端子66,67は、MMI40,50を駆動するための信号、各光部品を駆動するための信号といったDCあるいは低周波の信号を筐体2内部に提供する。集積回路43,53それぞれは、MMI40,50を取り囲む回路基板46,56それぞれの上に実装されている。さらに、これらの回路基板46,56上には、抵抗素子や容量素子、また必要に応じてDC/DC変換器が実装される。
【0033】
なお、MMI40に対する局発光L1の光結合効率が、MMI40に対する信号光N2の光結合効率よりも大きいとき、減衰器71が配置される。同様に、MMI50に対する信号光N1の光結合効率が、MMI50に対する局発光L2の光結合効率よりも大きいとき、減衰器81が配置される。これらの減衰器71,81により、MMI40,50に対する局発光L2,L1の結合効率と、信号光N1,N2の結合効率とを同程度に設定することが可能となり、MMI40,50での情報復調精度の劣化を抑制することができる。
【0034】
コヒーレントレシーバ1は、Sig光入力レンズ27、可変光減衰器(VOA)31、BS32、及びモニタ用PD33を、PBS21とSig光入力ポート6との間の信号光N0の光路上に更に備える。BS32は、Sig光入力ポート6から入力された信号光N0を分離する。分離された信号光N0の一部は、モニタ用PD33に入射する。モニタ用PD33は、信号光N0の強度に応じた電気信号を生成する。
【0035】
VOA31は、BS32を通過した信号光N0を必要に応じて減衰する。減衰度は、コヒーレントレシーバ1の外部からの電気信号によって制御される。例えば、上述したモニタ用PD33からの電気信号に基づいて過入力状態が検知された場合には、VOA31の減衰度を大きくして、MMI40,50に向かう信号光N1,N2の強度を小さくする。Sig光入力レンズ27は、VOA31を通過した信号光N0を平行化(コリメート)する。なお、VOA31は、Sig光入力ポート6の集光レンズとSig光入力レンズ27との間に形成されるビームウェストに位置することが望ましい。これにより、VOA31の開口に対して十分に絞られたビーム径を確保できる。また、Sig光入力レンズ27によって信号光N0がコリメート光となることにより、MMI40,50までの光路において高い結合効率を確保できる。BS32、VOA31、及びモニタ用PD33は、筐体2の底面2Eに搭載されたVOAキャリア30上に固定される。VOAキャリア30は、段差を形成する上下二つの面にこれらの光部品を搭載する。具体的には、一方の面にBS32及びモニタ用PD33を搭載し、他方の面にVOA31を搭載する。
【0036】
以上の構成を備える本実施形態のコヒーレントレシーバ1の製造方法について説明する。まず、MMI40,50を、板状のキャリア上に配置する。このとき、MMI40,50のアライメントは、目印を基準とする目視によって行われる。次に、MMI40を囲むように回路基板46を該キャリア上に配置し、MMI50を囲むように回路基板56を該キャリア上に配置する。続いて、上記キャリアを筐体2の底面2E上に搭載することにより、底面2E上にMMI40,50等を配置する(第1実装工程)。また、キャリアとともにVOAキャリア30を筐体2の底面2E上に搭載する。底面2Eへのキャリア及びVOAキャリア30の固定は、例えば半田を用いて行われる。
【0037】
続いて、集積回路43,53を回路基板46,56上に実装する。集積回路43,53の実装は、たとえば銀ペースト等の導電性樹脂を使用して行う。集積回路43,53の搭載後、筐体2全体を昇温(〜180℃)することにより、導電性樹脂に含まれる溶剤を気化する。その後、集積回路43,53の上面の電極パッドと、筐体2の後方側の端子65とをワイヤリングにより電気的に接続する。なお、このワイヤリングにより、次工程以降における各光部品のアクティブ調芯、すなわちMMI40,50に調整光を入力し、MMI40,50に内蔵されているPDの出力信号強度が最大となる位置に各光部品を配置することが可能となる。
【0038】
続いて、各光部品を筐体2内に搭載する。まず、光学調芯のためのLo光を生成する。図3(a)に示されるように、互いに垂直な光反射面94a及び底面94bを有する標準反射器94を用意する。光反射面94aは筐体2の前壁2Aを模擬し、底面94bは筐体2の底面を模擬する。標準反射器94は、例えば直方体状のガラスブロックにより構成される。そして、この標準反射器94を、調芯装置の支持台95上に固定されたステージ93上に設置する。このとき、底面94bとステージ93とを密に接触させる。
【0039】
標準反射器94の光軸方向にオートコリメータ125の光軸方向を合わせる。具体的には、オートコリメータ125から可視レーザ光Lを出力し、該レーザ光Lを光反射面94aに当てる。そして、光反射面94aが反射した可視レーザ光Lの光強度を、オートコリメータ125側で検出する。反射前の可視レーザ光Lと反射後の可視レーザ光Lとが互いに重なるとき、検出される光強度は最大となる。このことを利用して、光反射面94aの法線方向、すなわち標準反射器94の光軸方向にオートコリメータ125の光軸方向を合わせる。その後、標準反射器94をステージ93から取り外し、MMI40,50、回路基板46,56及びVOAキャリア30を搭載した筐体2に置き換える(図3(b))。このとき、筐体2の底面をステージ93に密に接触させる。オートコリメータ125の光軸は筐体2の上方空間を通過するので、可視レーザ光Lは筐体2の上方を通過し、筐体2内には導入されない。
【0040】
続いて、図4に示すように、モニタ用PD33をVOAキャリア30上に搭載する。また、PBS21、スキュー調整素子16,26、λ/2板25、偏光子11、及びBS12を筐体2内の所定の位置にそれぞれ配置する(第2実装工程)。これらの光部品は、調芯作業を実施しない光部品であって、その光入射面の方向のみが調整されたのち固定される。具体的には、この工程では、すでにその調整が終了しているオートコリメータ125の光軸を利用して光部品の角度(光入射面の角度)を調整する。これらの光部品の一側面をオートコリメータ125の可視レーザ光Lに対する反射面とし、反射前の可視レーザ光Lと反射後の可視レーザ光Lとを互いに重ね合わせ、これらの光部品の角度(光軸方向)を調整する。なお、この作業はオートコリメータ125の光軸上すなわち筐体2の上方空間において行われる。そして、その向きを保持したまま(或いは必要に応じて所定角度だけ回転させ)、各搭載位置に設けられた接着樹脂上にこれらの光部品を移動させ、該接着樹脂を硬化させてこれらを固定する。
【0041】
PBS21、スキュー調整素子16,26、及び偏光子11については、筐体2に搭載された状態において光入射面が前壁2A側を向くので、該光入射面の法線方向とオートコリメータ125の光軸とを一致させて光軸方向を調整し、その向きを維持しつつ搭載するとよい。また、λ/2板25およびモニタ用PD33については、筐体2に搭載された状態において光入射面が側方を向くので、該光入射面の法線方向とオートコリメータ125の光軸とを一致させてそれらの光軸方向を調整したのち、底面2Eの法線周りに90°回転してから搭載する。BS12については、筐体2に搭載された状態において光入射面が側方を向くが、光出射面が後方を向くので、光出射面若しくはこの光出射面とは反対側の面の法線方向とオートコリメータ125の光軸とを一致させて光軸方向を調整したのち、その向きを維持しつつ筐体2内に搭載するとよい。
【0042】
続いて、上述の各光部品とは別の光部品、すなわちMMI40,50に対する光結合トレランスが上記の各光部品よりも小さい故に調芯を必要とするSig光入力レンズ27、反射器13,22、及び各レンズ群14,15,23,24を筐体2内に搭載する。その準備として、二つの模擬ポートを筐体2の前壁2Aに配置する。これらの模擬ポートは、それぞれSig光入力ポート6及びLo光入力ポート5を模擬する。これらの模擬ポートからは、当該別の光部品の調芯に用いられる調整光が入力される。以下、調整光を準備する工程の詳細について説明する。
【0043】
図5は、模擬ポートを保持するためのマニピュレータ90の一部を示す斜視図である。マニピュレータ90は、位置及び角度(具体的には、互いに直交する3軸(X、Y、Z軸)の各方向の位置、及び模擬ポートの光軸方向に垂直な2軸周りの角度)を自在に変更可能なアーム91と、アーム91の先端に設けられたヘッド92とを有する。一の模擬ポートは、ヘッド92上に保持され、Sig光入力ポート6の取り付け予定位置に配置される。他の模擬ポートもまた、別のマニピュレータ90によって一の模擬ポートと同様に保持され、Lo光入力ポート5の取り付け予定位置に配置される。
【0044】
図6(a)は、調整光を生成するための構成を示すブロック図である。この構成では、偏光方向が互いに異なる第1の光LS1及び第2の光LS2を偏波合成器(偏波ビームコンバイナ)113を用いて合成する。具体的には、バイアス電源111aが出力するバイアス電圧を光源112a(例えば半導体レーザ)に与えて、直線偏光の第1の光LS1を発生させる。また、バイアス電源111bが出力するバイアス電圧を光源112b(例えば半導体レーザ)に与えて、直線偏光の第2の光LS2を発生させる。そして、第1の光LS1,第2の光LS2を、互いの偏光方向が直交するように調整したのち、偏波合成器113に入力する。なお、光源112a,112bと偏波合成器113とは、偏波保持ファイバによって接続される。光LS1の波長と光LS2の波長とは、互いに等しくてもよく、異なってもよい。光LS1,LS2の波長が互いに等しい場合、一つのバイアス電源及び一つの単波長光源を用いて単一の調整光を生成し、その調整光を二分岐して一方を光LS1とし、他方の偏光方向を90°回転させて光LS2としてもよい。
【0045】
ここで、図7は、偏波合成器113の構成例を示す斜視図である。図7に示すように、偏波合成器113は、2本の偏波保持ファイバが中央部において結合された構成を備え、2つの入力端113a,113bと、一つの出力端113cとを有する。2つの入力端113a,113bは2本の偏波保持ファイバの各一端面であり、一方の入力端113aには第1の光LS1が入力され、他方の入力端113bには第2の光LS2が入力される。これらの光LS1,LS2はその偏光方向を維持しつつ偏波合成器113の中央部に進み、該中央部において互いに合成される。合成された調整光LS3は、互いに異なる2つの偏光面を有する光となり、その偏光方向を維持しつつ出力端113cから出力される。なお、図7では一例として、第1の光LS1の偏光方向が偏波保持ファイバのスロー軸方向に沿っており、第2の光LS2の偏光方向が偏波保持ファイバのファスト軸方向に沿っている場合を示している。
【0046】
その後、調整光LS3は光カプラ114を介してコネクタ116に達する。コネクタ116は、コネクタ117、118のいずれか一方と選択的に接続される。コネクタ117には、Sig光入力ポート6を模擬する模擬ポート123aが光結合しており、他方のコネクタ118には光パワーメータ119が光結合している。また、光カプラ114にはパワーメータ115が接続されている。図6(a)は二つのパワーメータ115、119を備える系を示しているが、一つのパワーメータを、パワーメータ115,119として併用してもよい。また、Lo光入力ポート5を模擬する模擬ポート123bに対しても、上記と同様の構成が用意される。
【0047】
まず、光コネクタ116と光コネクタ118とを接続する。そして、調整光LS3の強度をパワーメータ119により検出し、バイアス電圧を調整することにより調整光LS3の強度、すなわち、筐体2に対する入射光強度を所定の値に設定する。次に、筐体2をステージ93から再び取り外し、標準反射器94に置き換える。そして、光コネクタ116と光コネクタ117を接続し、模擬ポート123a,123bを、標準反射器94の光反射面94aと対向させる。この状態で調整光LS3を出射すると、調整光LS3は模擬ポート123a,123bから出射されたのち光反射面94aにて反射し、再び模擬ポート123a,123bに入射する。この調整光LS3の強度は、光カプラ114を経由してパワーメータ115において検出される。模擬ポート123a,123bの光軸方向を調整してその光検出強度を最大とすることで、標準反射器94の光軸方向に模擬ポート123a,123bの光軸方向を合わせる。その後、図3(b)に示すように、標準反射器94をステージ93から取り外し、筐体2に置き換える。
【0048】
この工程では、更に、模擬ポート123a,123bの調芯を行う。まず、模擬ポート123aから筐体2内に入射した調整光LS3の強度を、MMI40に内蔵されたPDにより検出する。そして、検出される調整光LS3の強度が大きくなる方向に模擬ポート123aを筐体2の前壁2A上で移動させ、模擬ポート123aの光軸に垂直な面内での調芯を行う。同様に、模擬ポート123bから筐体2内に入射した調整光LS3の強度を、他方のMMI50に内蔵されたPDで検出し、その光強度が大きくなる方向に模擬ポート123bを移動する。これにより、模擬ポート123bの光軸に垂直な面内での調芯を行う。なお、調整光LS3のフィールド径は300μm程度もあり、一方、MMI40,50の光入力端は小さく、例えば幅数μm、厚さ1μm以下といった程度である。従って、MMI40,50に入力される調整光LS3の強度は微弱となるが、調整光LS3の光軸を決定する程度の検出信号を得ることは可能である。
【0049】
模擬ポート123a,123bの光軸方向の位置に関しては、模擬ポート123a,123bの端面を筐体2の前壁2Aに当接させることにより決定することができる。
【0050】
続いて、調芯を要する各光部品を模擬ポート123a,123bとMMI40,50との間の光路上に配置し、MMI40,50に内蔵されるPDで検出される調整光LS3の強度を参照し、これらの光部品の調芯を行う(第3実装工程)。更に、これらの光部品を筐体2内に固定する。なお、これらの光部品の調芯及び固定の順序は以下の説明に限られるものではなく、任意の順序で行うことができる。
【0051】
この工程では、図6(b)に示すように、VOAバイアス電源120、電圧モニタ121、122を筐体2と接続する。VOAバイアス電源120は、後述するVOA31をVOAキャリア30上に設置する際に、VOA31にバイアス電圧を与える。電圧モニタ121、122は、回路基板46,56からの電圧信号をそれぞれモニタする。
【0052】
まず、BS32(図1図2を参照)の調芯及び固定を行う。すなわち、BS32の前面を反射面とし、筐体2の上方空間を通過しているオートコリメータ125の可視レーザ光Lを用いて、BS32の角度(光軸方向)を調整する。そして、BS32の向きを維持したまま、VOAキャリア30上にBS32を移動する。そして、VOAキャリア30上で、BS32を信号光の光軸に沿って移動させ、モニタ用PD33の受光強度が最大となるBS32の搭載位置を決定する。その後、接着樹脂を用いてBS32をVOAキャリア30に固定する。
【0053】
次に、図8に示されるように、反射器13,22の調芯及び固定を行う。まず、これらの反射器13,22の前面を反射面とし、筐体2の上方空間を通過しているオートコリメータ125の可視レーザ光を用いて、反射器13,22の角度(光軸方向)を調整する。そして、反射器13,22の角度を維持しつつ、模擬ポート123a,123bからの各調整光LS3をPBS21,BS12にそれぞれ入射させる。このとき、PBS21,BS12によって各調整光LS3が二分岐され、分岐された一方の調整光が反射器13,22により反射され、MMI40,50に入射するので、その光強度をMMI40,50の内蔵PDにより検出する。そして、反射器13,22を二つの模擬ポート123a,123bの光軸に垂直な方向に僅かに移動しながら、内蔵PDの検出強度が最大となる位置を決定する。留意すべきは、反射器13,22の調芯に際しては、オートコリメータ125が出射する可視レーザ光により決定された角度は、以後の調芯作業で維持される点にある。MMI40,50の筐体2に対する搭載角度、及び、光入力ポート5,6の光軸が既に決定されているため、光軸を90°変換する反射器13,22についてその搭載角度を変更することは、これら既に実施された調芯状態を狂わせてしまうからである。
【0054】
続いて、4つのレンズ群14,15,23,及び24の調芯、及び固定を行う。まず、図9に示すように、第1レンズ14b,15b,23b,24b(すなわちMMI40,50寄りのレンズ)の調芯及び固定を行う。これらのレンズ14b,15b,23b,24bを所定の搭載位置に配置し、各模擬ポート123a,123bからの各調整光LS3を入射する。模擬ポート123aからの調整光LS3は、PBS21によって二分岐され、それぞれレンズ23b,24bを通過してMMI50,40に入力される。模擬ポート123bからの調整光LS3は、BS12によって二分岐され、それぞれレンズ14b,15bを通過してMMI40,50に入力される。こうしてMMI40,50に入力された調整光の強度を、MMI40,50の内蔵PDにより検出する。そして、レンズ14b,15b,23b,24bの位置及び角度を僅かに変化させ、内蔵PDの受光強度が最大となる位置及び角度を決定する。位置及び角度の決定後、紫外線硬化樹脂を用いてレンズ14b,15b,23b,24bを固定する。続いて、図10に示すように、第2レンズ14a,15a,23a,24aの調芯及び固定を行う。これらの調芯及び固定の方法は、上述した第1レンズ14b,15b,23b,24bの調芯及び固定の方法と同様である。
【0055】
続いて、図11に示すように、Sig光入力レンズ27の調芯及び固定を行う。Sig光入力ポート6には集光レンズが内蔵されており、この内蔵レンズの焦点とSig光入力レンズ27の焦点とは一致する。そして、内蔵レンズとSig光入力レンズ27の間に形成されるビームウェストの位置にVOA31を配置することにより、VOA31の限られた面積のシャッタに信号光を通過させることができ、VOA31の消光比を大きくすることができる。以上の理由により、Sig光入力レンズ27の調芯には、模擬ポート123aに代えて、Sig光入力ポート6に内蔵されているレンズと同じ焦点距離を有するレンズを内蔵する別の模擬ポート123cを用いるとよい。従って、本工程では、模擬ポート123bを模擬ポート123cに置き換える。
【0056】
具体的には、筐体2に代えて標準反射器94をステージ93上に再び設置し、図6(b)に示されたコネクタ116を模擬ポート123bから模擬ポート123cに付け替える。そして、模擬ポート123cを、図5に示されたマニピュレータ90を用いてSig光入力ポート6の取り付け予定位置に配置し、標準反射器94の光反射面94aと対向させる。この状態で模擬ポート123cから調整光LS3を出力し、模擬ポート123cの光軸位置を調整してパワーメータ115により検出される光強度を最大とし、標準反射器94の光軸方向に模擬ポート123cの光軸方向を合わせる。そして、模擬ポート123cから筐体2内に入射した調整光LS3の強度をMMI50に内蔵されたPDにより検出し、その受光強度が大きくなる方向に模擬ポート123cを移動させることにより、模擬ポート123cの光軸に垂直な面内での調芯を行う。なお、模擬ポート123cの光軸方向の位置に関しては、模擬ポート123cの端面を筐体2の前壁2Aに当接させることにより決定することができる。
【0057】
次に、Sig光入力レンズ27を搭載位置に移動し、Sig光入力レンズ27に模擬ポート123cが提供する調整光LS3を入射し、通過した調整光LS3の強度をMMI50に内蔵したPDにより検出する。そして、Sig光入力レンズ27の位置を僅かに変化させ、内蔵PDの受光強度が最大となる位置(前後方向、左右方向、及び上下方向)を決定する。決定後、接着樹脂を用いてSig光入力レンズ27を固定する。
【0058】
続いて、図12に示すように、VOA31をVOAキャリア30上に搭載する。この工程では、VOA31を特殊マニピュレータ90Aにより把持し、VOA31を調整光LS3の光路上に配置する。マニピュレータ90Aは、位置及び角度(具体的には、互いに直交する3軸方向の位置、及びVOA31の光軸方向に垂直な2軸まわりの角度)を自在に変更可能な2本のアーム91Aと、これらのアーム91Aの先端に設けられたヘッド92Aとを有する。VOA31は、ヘッド92Aにより挟まれ、保持される。このとき、一方のヘッド92AはVOA31の一方の電極に電気的に接触している。また、他方のヘッド92AはVOA31の他方の電極に電気的に接触している。そして、図6(b)に示されたVOAバイアス電源120からアーム91A及びヘッド92Aを介して、VOA31にバイアス電圧を印加する。
【0059】
VOAキャリア30上に予め紫外線硬化樹脂を所定厚さ(例えば100μm以上)塗布しておき、VOA31をVOAキャリア30の表面から所定距離(例えば100μm)離れた状態で保持する。そして、VOAバイアス電源120から提供されるバイアスを、0〜5Vの間で繰り返し(例えば1秒程度の周期)VOA31に印加する。同時に、筐体2の底面2Eに平行で且つ光軸に垂直な方向にVOA31を移動させ、VOA31による減衰後の調整光LS3の分岐後の強度を、MMI40,50にある複数の内蔵PDにより検出する。
【0060】
その後、調整光LS3の分岐後の減衰度の差が許容範囲内に収まる位置にてVOA31を固定する。このとき、複数の内蔵PDを同時に測定することができるため、MMI40,50の内蔵PDの出力差を、調整光LS3の分岐後の減衰度の差と見なしてもよい。第1の光LS1,第2のLS2を個別に測定すると、第1の光LS1,第2のLS2の互いの偏光方向に誤差が発生するので、互いの偏光方向の直交状態を維持したまま調整することは難しい。本実施形態では、第1の光LS1,第2のLS2を、互いの偏光方向が直交するように調整したのち偏波合成器113に入力するので、個別に偏光方向を調整した場合と異なり、互いの偏光方向の誤差が抑制される。なお、VOA31は、模擬ポート123c内の集光レンズと入力レンズ27とを結ぶ光軸に対して所定角度(例えば7°)傾けて搭載される。反射光をSig光入力ポート6に回帰させないためである。
【0061】
続いて図13に示すように、減衰器71,81を搭載する。具体的には、BS12及びPBS21と同様に、筐体2の上方においてオートコリメータ125からの可視レーザ光により、減衰器71,81の角度を決定する。その後、当該角度を維持したまま、それぞれ所定の搭載領域上に載置し、固定用の樹脂を硬化させて減衰器71,81を固定する。
【0062】
続いて、図14に示すように、筐体2を塞ぐリッド2Cをシームシールにより取り付け、筐体2の内部を気密封止する。そして、図15に示すように、模擬ポート123a,123bを本来のSig光入力ポート6及びLo光入力ポート5に置き換え、Sig光入力ポート6及びLo光入力ポート5の調芯及び固定を行う。具体的には、Sig光入力ポート6から模擬信号光を導入し、該信号光の強度をMMI40の内蔵PDにより検出する。そして、検出される信号光の強度を参照しSig光入力ポート6の位置を変化させ、内蔵PDでの受光強度が最大となる位置を決定する。Lo光入力ポート5についても同様に、実際にLo光を導入し、該Lo光の強度をMMI40,50の内蔵PDにより検出する。検出されるLo光の強度を参照しつつLo光入力ポート5の位置を変化させ、内蔵PDでの受光強度が最大となる位置を決定する。決定後、Sig光入力ポート6及びLo光入力ポート5を筐体2に固定する。固定はYAG溶接を採用することができる。
【0063】
以上に説明した、本実施形態による組立方法によって得られる効果は次のとおりである。この組立方法では、MMI40,50及びPBS21を配置したのち、光学部品の光軸調整を行うために、偏光方向が互いに直交する第1の光LS1及び第2の光LS2を偏波合成器113によって合成し、信号光N0に代わる調整光LS3としてPBS21に導入する。このとき、第1の光LS1及び第2の光LS2の偏光方向が互いに直交するので、調整光LS3とPBS21との光軸周りの相対角度に誤差が生じても、分岐比への影響は殆ど生じない。これは、第1の光LS1及び第2の光LS2の偏光方向を個別に設定せずに光学部品の光軸調整を行えるので、合成後の第1の光LS1及び第2の光LS2の偏光方向に誤差が生じることは少ないからである。よって、第1の光LS1及び第2の光LS2の光路において、同時に光軸調整を行うことができ、第1の光LS1及び第2の光LS2の偏光方向を個別に設定するときと比較して、第1の光LS1及び第2の光LS2の偏光方向の誤差を抑制できる。すなわち、相対角度が或る一方向にずれた場合、第1の光LS1については分岐後の一方の偏光成分の光強度が減り、他方の偏光成分の光強度が増すが、第2の光LS2については分岐後の一方の偏光成分の光強度が増し、他方の偏光成分の光強度が減る。従って、PBS21による分岐後の第1の光LS1の偏光成分と第2の光LS2の偏光成分とを合わせた光強度は常に一定であり、調整光LS3とPBS21との光軸周りの相対角度の誤差の影響を殆ど受けない。従って、本実施形態の組立方法によれば、図19に示された偏波コントローラ222による偏光方向の調整をしなくても、分岐後の調整光LS3の光強度を精度良く所定の大きさにできるので、信号光N0若しくは各偏光成分N1,N2の光路上に配置される光学部品の光軸調整を容易に且つ精度良く行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
1…コヒーレントレシーバ、2…筐体、2A…前壁、2B…後壁、2C…リッド、2E…底面、4…ベース、5…Lo光入力ポート、6…Sig光入力ポート、11…偏光子、12…BS、13,22…反射器、14,15,23,24…レンズ群、14a,15a,23a,24a…第2レンズ、14b,15b,23b,24b…第1レンズ、16,26…スキュー調整素子、21…PBS、25…λ/2板、27…Sig光入力レンズ、30…VOAキャリア、31…VOA、32…BS、33…モニタ用PD、35…偏波保持ファイバ、36…単一モードファイバ、40,50…MMI、41,51…Lo光導入口、42,52…Sig光導入口、43,53…集積回路、46,56…回路基板、61…フィードスルー、71,81…減衰器、111a,111b…バイアス電源、112a,112b…光源、113…偏波合成器、113a,113b…入力端、113c…出力端、114…光カプラ、115,119…パワーメータ、116,117,118…光コネクタ、120…VOAバイアス電源、121…電圧モニタ、123a,123b,123c…模擬ポート、125…オートコリメータ、L0…局発光、LD…調整光、LS1…第1の光、LS2…第2の光、LS3…調整光、N0…信号光、N1,N2…偏光成分。
図1
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