(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791483
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】工具交換装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/04 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
B25J15/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-186145(P2016-186145)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-47540(P2018-47540A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137800
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100148253
【弁理士】
【氏名又は名称】今枝 弘充
(74)【代理人】
【識別番号】100148079
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 裕明
(74)【代理人】
【識別番号】100158241
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 安子
(72)【発明者】
【氏名】西尾 英樹
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 康嗣
【審査官】
貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平5−92383(JP,A)
【文献】
特開平4−360783(JP,A)
【文献】
特開平8−111256(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0012053(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の本体側に取り付けられる雄型部材と、工具側に取り付けられる雌型部材とを備える工具交換装置において、
前記雄型部材と前記雌型部材は、
互いを機械的に接続する複数の連結部と、
前記本体の内部に配置された動力供給路と前記工具を接続するコネクタ部と
を有し、
前記複数の連結部及び前記コネクタ部は、前記雄型部材と前記雌型部材との接合面内に設けられており、
前記複数の連結部は、前記コネクタ部の周囲に配置されており、
前記コネクタ部は、第1コネクタ部と第2コネクタ部とを有し、
前記雄型部材は、雄型本体の中央に第1コネクタ設置部を有し、
前記第1コネクタ設置部は、前記雄型本体の厚さ方向に貫通した穴と、前記雄型部材の前記接合面側から挿入された前記第1コネクタ部の底面を支持する第1設置台とを有し、
前記雌型部材は、雌型本体の中央に第2コネクタ設置部を有し、
前記第2コネクタ設置部は、前記雌型本体の厚さ方向に貫通した穴と、前記雌型部材の前記接合面側から挿入された前記第2コネクタ部の底面を支持する第2設置台とを有する
ことを特徴とする工具交換装置。
【請求項2】
前記第1コネクタ設置部に取り付けられている前記第1コネクタ部は、前記雄型部材の前記接合面側から取り外し可能であり、
前記第2コネクタ設置部に取り付けられている前記第2コネクタ部は、前記雌型部材の前記接合面側から取り外し可能である
ことを特徴とする請求項1記載の工具交換装置。
【請求項3】
前記雄型部材は、
前記本体に固定される固定面に開口した気体導入口と、
前記気体導入口へ供給される圧縮気体を、前記複数の連結部に分配する分配流路と
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の工具交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具交換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種機器、例えば産業用ロボットに適用される工具交換装置として、ロボット側に取り付けられる雄型部材と、工具側に取り付けられる雌型部材とを備えるものが開示されている(例えば、特許文献1)。雄型部材と雌型部材は、中央に設けられた連結部によって、連結、分離する。雄型部材は、突起部と、突起部から半径方向に突出可能なカムとを有する第1連結部が雄型本体に設けられている。雌型部材には、前記突起部が挿入可能な連結穴と、当該連結穴の内周面に設けられ前記カムが係合する係合部品とを有する第2連結部が雌型本体に設けられている。工具交換装置は、突起部が連結穴に挿入された状態で、カムが係合部品に係合することにより、雄型部材と雌型部材が連結する。またカムと係合部品の係合を解除することにより、雄型部材と雌型部材は分離し得る。このようにして工具交換装置は、産業用ロボットに取り付ける工具を交換することができる。
【0003】
工具交換装置は、雄型部材と、雌型部材との連結・分離に連動して、信号線の接続、切断を行うコネクタ部を有する。コネクタ部は、雄型本体の外側に配置された第1コネクタ部と、雌型本体の外側に配置された第2コネクタ部とを有する。第1コネクタ部は、ロボット側コネクタと、第1中継コネクタとを有する。ロボット側から引き出されたケーブルは、雄型部材のロボット側コネクタに接続される。第2コネクタ部は、工具側コネクタと、第2中継コネクタとを有する。工具側コネクタは、動力供給路としてのケーブルを介して工具のサーボモジュールに接続される。第1中継コネクタと第2中継コネクタが接続されることによって、ロボットと工具が電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−250327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、他の機器やワークと干渉するのを防ぐため、ケーブルをロボット内部に配設したロボットが用いられるようになっている。工具交換装置は、コネクタ部が雄型本体及び雌型本体の外側に配置されているため、ロボット内部に配設されたケーブルをロボットの先端において外側に引き出してコネクタ部に接続する必要があるため、ケーブルがロボットの動作を制限してしまう、という問題があった。また工具交換装置は、ロボットの先端と雄型部材の間に、ケーブルを引き出すためのスペースが必要であり、小型化が困難であるだけでなく、ロボットに生じるモーメントが増加してしまうため、ロボットの定格出力が得られない、という問題があった。
【0006】
本発明は、ロボット内部に配設された動力供給路を外部に引き出さずに連結することができる工具交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る工具交換装置は、機器の本体側に取り付けられる雄型部材と、工具側に取り付けられる雌型部材とを備える工具交換装置において、前記雄型部材と前記雌型部材は、互いを機械的に接続する複数の連結部と、前記本体の内部に配置された動力供給路と前記工具を接続するコネクタ部を有し、前記複数の連結部及び前記コネクタ部は、前記雄型部材と前記雌型部材との接合面内に設けられており、前記複数の連結部は、前記コネクタ部の周囲に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コネクタ部は前記雄型部材と前記雌型部材との接合面内に設けられているので、ケーブルやチューブなどの動力供給路が本体の外部に露出しない。工具交換装置は、機器の先端と雄型部材の間に、動力供給路を引き出すためのスペースが不要であり、容易に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る工具交換装置の使用状態を示す斜視図である。
【
図4】
図2のB−B断面における雄型部材の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1に示す工具交換装置10は、産業用ロボット12の本体としてアーム14の先端に固定される雄型部材16と、工具18に固定される雌型部材20とを備える。雄型部材16は、固定面(本図には図示しない)がアーム14に接触した状態で、図示しない締結具により、アーム14に着脱自在に固定される。雌型部材20は、固定面(本図には図示しない)が工具18に接触した状態で、図示しない締結具により、工具18に着脱自在に固定される。締結具は、例えばボルトを用いることができる。
【0012】
工具18は、特に限定されず、例えばマニピュレータ、バリ取り工具、ハンドリング治具やスポット溶接ガンなどが適用できる。工具18は、1つのアーム14に対し、雌型部材20を取り付けた状態で、種類が異なる複数個が用意される。アーム14と工具18は、工具交換装置10を介して連結されるとともに分離可能であり、工具18が交換自在になっている。雄型部材16には、図示しない制御部が接続されており、この制御部によって、雄型部材16と雌型部材20との連結・分離が制御される。
【0013】
工具交換装置10は、接合面16A,20A内にコネクタ部38を備え、当該コネクタ部38を介してロボットと工具18を電気的に接続する。コネクタ部38は、第1コネクタ部26と第2コネクタ部36とを有する。雄型部材16は、接合面16Aの中央に第1コネクタ部26が取り付けられている。第1コネクタ部26は、図示しないが、固定面16B側に配置されたロボット側コネクタと、接合面16A側に配置された第1中継コネクタとを有する。アーム14内に配置された動力供給路としてのケーブルは、雄型部材16の固定面16B側において、ロボット側コネクタに接続される。第2コネクタ部36は、図示しないが、固定面20B側に配置された工具側コネクタと、接合面20A側に配置された第2中継コネクタとを有する。工具側コネクタは、工具側動力供給路としてのケーブルを介して工具14のサーボモジュールに接続される。
【0014】
第1コネクタ部26と第2コネクタ部36は、雄型部材16と雌型部材20の連結に伴い、第1中継コネクタと第2中継コネクタが接続されることにより、動力としての電源装置(図示しない)や上記制御部が工具18のサーボモータ部に電気的に接続される。電気的な接続により、例えば、制御装置とサーボモータ部間でサーボモータを制御するための各種回路信号を送受信し、電源装置からサーボモータへ電力を供給する。
【0015】
工具交換装置10は、コネクタ部38の周囲に、複数の連結部34を備え、当該連結部34を介してロボットと工具18とを機械的に接続する。連結部34は、第1連結部24と第2連結部32とを有する。雄型部材16は、第1コネクタ部26の周囲に複数(本図の場合、2個)の第1連結部24が設けられている。雌型部材20は、第2コネクタ部36の周囲に第1連結部24と同数(本図の場合、2個)の第2連結部32が設けられている。
【0016】
工具18とアーム14を連結する場合、アーム14を移動し、接合面16Aと接合面20Aとが接触し、かつ第1連結部24を第2連結部32に挿入した状態で、カムなどで構成された係合機構を作動させることで雄型部材16と雌型部材20を固定する。工具18とアーム14を分離する場合、係合機構による固定を解除してから、雄型部材16を雌型部材20から離れる方向にアーム14を移動することによって、雄型部材16と雌型部材20を分離する。
【0017】
雄型部材16は、
図2及び
図3に示すように、板状の雄型本体22を有する。雄型本体22は、中央に第1コネクタ設置部40と、第1コネクタ設置部40を挟んで両側に突起部43とを有する。第1コネクタ設置部40は、雄型本体22の厚さ方向に貫通した矩形状の穴41と、第1設置台42とを有する。第1設置台42は、接合面16A側から挿入された第1コネクタ部26の底面を支持する。第1設置台42に設置された第1コネクタ部26は、接合面16A側に第1中継コネクタ、固定面16B側にロボット側コネクタが露出する。
【0018】
本図の場合、第1設置台42は、穴41の対向する内面にそれぞれ形成されており、当該内面より内側に突出した2個の突起である。第1設置台42は、上端が雄型本体22の厚さ方向の略中央であって、下端が固定面16Bと同じである。第1設置台42は、雌ネジが形成されており、第1コネクタ部26を固定するボルト(図示しない)が、接合面16A側からねじ込まれる。第1コネクタ設置部40の固定面16B側は、通し穴44が形成されている。ケーブルは、通し穴44を通じて、ロボット側コネクタに接続される。
【0019】
雄型本体22は、固定面16B側に開口した、気体導入口として第1気体導入口50と、第2気体導入口54とを有する。第1気体導入口50は、第1分配流路46に接続されている。第1分配流路46は、雄型本体22の接合面16Aと固定面16Bの間に形成され、面方向に貫通した穴である。第1分配流路46は、2個の突起部43にそれぞれ設けられた第1給排気ポート58に接続されている。第2気体導入口54は、第2分配流路48に接続されている。第2分配流路48は、雄型本体22の接合面16Aと固定面16Bの間に形成され、面方向に貫通した穴である。第2分配流路48は、2個の突起部43にそれぞれ設けられた第2給排気ポート60に接続されている。
【0020】
図4に示すように、雄型部材16は、係合機構としてのシリンダ部59及びカム61を有する。シリンダ部59は、シリンダ室62、このシリンダ室62内に収容されたピストン63、このピストン63に連結されたピストンロッド64を備えたエアシリンダであり、ピストンロッド64が直線運動することにより、カム61を回動させる。
【0021】
ピストン63は、円筒形状であり、その軸方向(図中、上下方向)に移動自在になっている。ピストン63は、気体の圧力(以下、「空気圧」という)で往復動する。本図に示すピストン63の位置は、第2連結部34との係合を解除する解除位置にカム61を移動させた位置である。ピストン63を図中上方向に移動することにより、第2連結部34に係合する係合位置にカム61が移動する。
【0022】
シリンダ室62は、側壁を貫通した第1給排気ポート58と第2給排気ポート60とが設けられている。第1給排気ポート58は、シリンダ室62内で解除位置のピストン63よりも下側に開口している。第2給排気ポート60は、シリンダ室62内で係合位置のピストン63よりも上側に開口している。
【0023】
第1気体導入口50から第1分配流路46を通じて第1給排気ポート58、及び、第2気体導入口54から第2分配流路48を通じて第2給排気ポート60の一方を介してシリンダ室62内に気体を送り込み、他方を介してシリンダ室62外に気体を排出することにより、ピストン63を解除位置または係合位置に移動する。なお、図示しないが、ピストン63を係合位置に向けて付勢するコイルバネが設けられており、解除位置にピストン63を移動する場合には、このコイルバネの付勢力に抗してピストン63を空気圧で移動させる。
【0024】
雌型部材は、
図5及び
図6に示すように、板状の雌型本体30を有する。雌型本体30は、中央に第2コネクタ設置部70を有する。第2コネクタ設置部70は、雌型本体30の厚さ方向に貫通した穴71と、第2設置台72とを有する。第2設置台72は、接合面20A側から挿入された第2コネクタ部36の底面を支持する。第2設置台72に設置された第2コネクタ部36は、接合面20A側に第2中継コネクタ、固定面20B側に工具側コネクタが露出する。
【0025】
本図の場合、第2設置台72は、穴71の対向する内面にそれぞれ形成されており、当該内面より内側に突出した2個の突起である。第2設置台72は、上端が雌型本体30の厚さ方向の略中央であって、下端が固定面20Bと同じである。第2設置台72は、雌ネジが形成されており、第2コネクタ部36を固定するボルト(図示しない)が、接合面20A側からねじ込まれる。第2コネクタ設置部70の固定面20B側は、通し穴74が形成されている。工具側コネクタに接続されたケーブルは、通し穴74を通じて、サーボモータ部に接続される。
【0026】
本実施形態に係る雄型部材16は、アーム14内部に配置したケーブルをアーム14の先端において、接合面16Aの中央に設けられた第1コネクタ部26に接続することができる。したがって工具交換装置10は、アーム14内部に配置したケーブルをアーム14の外部に引き出さずに第1コネクタ部26に連結することができる。
【0027】
工具交換装置10は、ケーブルがアーム14の外部に露出しないため、ケーブルによって産業用ロボット12の動作を制限することがない。また工具交換装置10は、産業用ロボット12の先端と雄型部材16の間に、ケーブルを引き出すためのスペースが不要であり、容易に小型化することができ、産業用ロボット12に余計なモーメントが生じることを防ぐことができるので、産業用ロボット12の定格出力が得られる。
【0028】
雄型本体22が、第1気体導入口50及び第2気体導入口54へ供給された圧縮気体を2個の連結部34に分配する第1分配流路46及び第2分配流路48を有するので、工具交換装置10は、複数の連結部34を、同じタイミングで、動作させることができる。
【0029】
雄型本体22及び雌型本体30は、接合面16A,20A側から、第1コネクタ部26及び第2コネクタ部36を取り付け可能な第1コネクタ設置部40及び第2コネクタ設置部70を有する。これにより、ケーブルの変更の再に雄型部材16をアーム14から、及び雌型部材20を工具18から取り外さずに、第1コネクタ部26及び第2コネクタ部36を取り外すことができるので、メンテナンス性を向上することができる。
【0030】
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0031】
上記実施形態の場合、連結部34は、2個である場合について説明したが、3個以上でもよい。
【0032】
上記実施形態の場合、動力としての電源、動力供給路としてのケーブルを用い、コネクタ部38は電気的に接続する場合について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、動力としては、水や気体などの流体を圧送するポンプであってもよい。この場合、動力供給路及び工具側動力供給路としてはチューブを用いることができ、コネクタ部は管継手を用いることができる。
【0033】
工具交換装置10は、接合面の中央にコネクタ部38を有する場合について説明したが、接合面の中央を挟んで対称に複数有することとしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 工具交換装置
12 産業用ロボット(機器)
14 アーム(本体)
16 雄型部材
16A,20A 接合面
18 工具
20 雌型部材
34 連結部
38 コネクタ部
46 第1分配流路
48 第2分配流路
50 第1気体導入口
54 第2気体導入口