(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態である散水ノズル100の斜視図である。
図2は、散水ノズル100の側面図である。
図3は、散水ノズル100の正面図である。
図4は、散水ノズル100の断面図である。
【0016】
散水ノズル100は、本体102、切替操作部104、吐水スクリーン106及び接続部108、を有する。更に、散水ノズル100は、流量調整部110を有する。使用時には、本体102が把持される。切替操作部104は、水形を切り替える。水は、吐水スクリーン106から吐出される。接続部108には、ホースの一端部に取り付けられたコネクターが接続される。
【0017】
図3が示すように、吐水スクリーン106は、吐出孔として、センター孔Hcと、シャワー孔Hsとを有する。センター孔Hcは、吐水スクリーン106の中央に設けられている。シャワー孔Hsは、センター孔Hcの周囲に多数設けられている。センター孔Hcの孔径は、シャワー孔Hsの孔径よりも大きい。
【0018】
なお、吐出孔が円形でないとき、その吐出孔の開口面積と同じ面積を有する円の直径が、当該吐出孔の孔径とみなされる。
【0019】
切替操作部104は、操作レバー120と、多段カム機構とを有している。
図4が示すように、この多段カム機構は、カム本体122と、係止アーム124とを有している。カム本体122は操作レバー120側に固定されているのに対して、係止アーム124は本体102側に固定されている。
図4では図示されていないが、係止アーム124は、左右両側のそれぞれに配置された金属製の細い棒材により構成されている。明確に図示されないが、この棒材は、その自由端(
図4における下端)が鉤状に折り曲げられて、先端係合部125を形成している。係止アーム124の根元側は、係止アーム124の姿勢が所定の自然状態(
図4の状態)で維持されるように固定されているが、係止アーム124の自由端側(
図4における下側)は、(容易に)弾性変形して曲がる。
【0020】
図5(a)はカム本体122の斜視図である。
図5(b)はカム本体122の側面図である。
図5(c)はカム本体122の背面図である。カム本体122は、誘引面126と、複雑に曲がる誘導経路128とを有する。誘引面126は、誘導経路128の入口である。誘導経路128は、係止アーム124の先端係合部125が移動可能な溝である。カム本体122は左右対称の部材である。これら誘引面126及び誘導経路128は、カム本体122の左右両側のそれぞれに設けられている(
図5(a)参照)。
【0021】
誘導経路128は、入口側(誘引面126側)から順に、突き当たり屈曲部t1、係止屈曲部k1、突き当たり屈曲部t2、係止屈曲部k2、突き当たり屈曲部t3、係止屈曲部k3、出口d1を有する。これらの屈曲部が、1本の誘導経路128で繋がっている。
【0022】
本体102は、軸部材130と、この軸部材130の先端側に配置され当該軸部材130に連結された先端軸部材132と、これら軸部材130,132の外側に位置する外側部材134とを有する。外側部材134は、複数の部材が組み合わされて形成されている。外側部材134は、操作レバー120の操作に関わらず、移動しない。軸部材130,132は、外側部材134に対して、軸方向に移動しうる。この移動は、操作レバー120の操作により生ずる。この移動により、水形が変化する。
【0023】
軸部材130と先端軸部材132とは互いに連結されているが、互いの軸方向位置が(若干)変動しうる。図示されないが、軸部材130と先端軸部材132とは、軸方向に沿った長穴を介して互いに係合している。この長穴の長さの分だけ、軸部材130と先端軸部材132との間で軸方向の移動が生じうる。この移動を、遊び移動とも称する。ただし軸部材130と先端軸部材132とは、常に同軸で配置されている。
【0024】
軸部材130と先端軸部材132との間に、圧縮ばね140が配置されている(
図4参照)。この圧縮ばね140は、軸部材130と先端軸部材132とが軸方向において離れるような付勢力を、常に付与している。この付勢力に抗しうる力を加えない限り、軸部材130と先端軸部材132との間の遊び移動は生じない。すなわち、この付勢力に抗しうる力を加えない限り、軸部材130及び先端軸部材132は一体的に移動する。
【0025】
先端軸部材132は、シール部材SL1を有する。シール部材SL1は、Oリングである。一方、外側部材134は、シール部材SL1が当接しうる当接面142を有する。
図4が示すように、当接面142は、円錐凹面である。先端軸部材132が前方に移動すると、シール部材SL1が当接面142に当接する。この当接により、第1流路WR1(後述)が閉じられる。
【0026】
流量調整部110は、操作レバー152と、回転流路部154とを有する。操作レバー152を操作することにより、回転流路部154が回転する。この回転の角度によって流路の断面積が変化する。結果として、操作レバー152の操作により流量が変化する。なお
図4は全開(流量最大)の状態を示している。
【0027】
散水ノズル100の多段カム機構は、複数(4つ)の状態を取りうる。以下、これらの状態が、第1〜第4状態とされる。
【0028】
第1状態は、
図4に示される通り、先端係合部125がフリーの状態である。この第1状態では、係止アーム124がカム本体122に係合していない。第2状態は、先端係合部125が係止屈曲部k1に係止されている状態である。第3状態は、先端係合部125が係止屈曲部k2に係止されている状態である。第4状態は、先端係合部125が係止屈曲部k3に係止されている状態である。
【0029】
図5に示される係止屈曲部k1〜k4の位置関係から理解できるように、操作レバー120の押し込み量が最大となるのは第2状態であり、次いで大きいのは第3状態であり、次いで大きいのは第4状態である。最も操作レバー120の押し込み量が小さいのは、第1状態である。換言すれば、操作レバー120が最も突出しているのが、第1状態である。
【0030】
図4が示すように、操作レバー120は、中レバー160に回動自在に連結する連結部162を有する。中レバー160は、略L字状の部材である。中レバー160の一端T1は連結部162に連結され、中レバー160の他端T2は軸部材130に当接している。中レバー160は、回転軸164により、回転自在に、外側部材134に取り付けられている。
【0031】
操作レバー120が押し込まれるほど、中レバー160の一端T1は軸部材130に近い側(
図4における上側)に移動し、中レバー160の回転(
図4における右回転)が生ずる。この回転に起因して、中レバー160の他端T2は軸方向後方(給水側)に移動し、軸部材130を軸方向後方に移動させる。
【0032】
図4では見にくいが、散水ノズル100は、軸部材130を常に軸方向前方に付勢する付勢ばね170を有する。この付勢ばね170の付勢力は、中レバー160を介して、操作レバー120に伝達されている。結果として、操作レバー120は、常時、突出方向に付勢されている。
【0033】
第1状態から順に、多段カム機構の動きを説明する。第1状態から操作レバー120を押し込むと、先端係合部125は、誘引面126上を摺動し、突き当たり屈曲部t1に追い込まれる。この状態で操作レバー120を離すと、先端係合部125は、誘導経路128を移動して、係止屈曲部k1に至る。つまり、第2状態となる。続いて操作レバー120を押し込むと、先端係合部125は、突き当たり屈曲部t2に追い込まれ、同様にして係止屈曲部k2に至る。つまり第3状態となる。更に操作レバー120を押し込むと、先端係合部125は、突き当たり屈曲部t3に追い込まれ、同様にして係止屈曲部k3に至る。つまり第4状態となる。更に操作レバー120を押し込むと、先端係合部125は、出口d1に至り、誘導経路128から抜け出す。つまり、第1状態に戻る。先端係合部125がこのように移動する背景には、直線状に戻ろうとする係止アーム124の付勢力、突出方向に向かう操作レバー120の付勢力、及び、カム本体122と係止アーム124との位置関係がある。
【0034】
このように、操作レバー120を押す動作を繰り返すだけで、状態が変化する。換言すれば、操作レバー120を押す動作を繰り返すだけで、水形が変化する。
【0035】
上述の通り、
図4は、第1状態を示す。
図6は、この第1状態の拡大断面図である。
図7は、第2状態の拡大断面図である。
図8は、第3状態の拡大断面図である。
図9は、第4状態の拡大断面図である。操作レバー120を押すごとに、第1状態、第2状態、第3状態、第4状態、第1状態、・・・のサイクルが繰り返される。この散水ノズル100は、水形を容易に切り替えることができ、操作性に優れている。例えば、片手で水形を簡単に切り替えることができる。
【0036】
本実施形態では、第1状態(
図4、
図6)が、止水状態である。第2状態(
図7)では、水形がストレートである。第3状態(
図8)では、水形がキリである。第4状態(
図9)では、水形がシャワーである。
【0037】
第1状態(止水状態)では、軸部材130の位置は可動範囲の最も前方にあり、シール部材(Oリング)180が水路を閉塞している(
図4参照)。この閉塞の位置は、第2流路WR2の分岐点よりも上流側に位置する。このため、第1流路WR1及び第2流路WR2のいずれにも、水は流れない。この第1状態は、止水状態である。
【0038】
第2状態から第4状態では、水が吐出されている。第2状態から第4状態では、第1流路WR1又は第2流路WR2からの水が、吐出されている。各状態では、第1流路WR1からの水が吐出されるか、第2流路WR2からの水が吐出されるかが、選択されている。
【0039】
図6から
図9が示すように、散水ノズル100は、第1流路WR1と第2流路WR2とを有している。第2流路WR2は、第1流路WR1の途中から分岐した流路である。
【0040】
第1流路WR1の終端には、第1吐出孔H1が繋がっている。本実施形態では、第1吐出孔H1は、センター孔Hcである。第1流路WR1を経由した水は、第1吐出孔H1(センター孔Hc)から吐出される。なお、終端とは、下流側の端を意味する。
【0041】
図7等が示すように、第1流路WR1は、断面積が途中で拡大している負圧発生部NP1を有する。第1流路WR1は、負圧発生部NP1の上流側に、細流路WR11を有する。第1流路WR1の断面積は、細流路WR11の出口において拡大する。この出口の近傍で、負圧発生部NP1が生ずる。断面積の拡大により負圧が発生すること自体は、公知である。
【0042】
第2流路WR2の始点は、負圧発生部NP1である。第2流路WR2は、負圧発生部NP1から分岐して下流側に延びている。第2流路WR2の終端には、第2吐出孔H2が繋がっている。第2流路WR2は、負圧発生部NP1から第2吐出孔H2まで延びている。本実施形態では、第2吐出孔H2はシャワー孔Hsである。第2流路WR2を経由した水は、第2吐出孔H2(シャワー孔Hs)から吐出される。
【0043】
負圧発生部NP1よりも下流側には、第1流路WR1を閉塞しうる開閉弁VL1が設けられている。本実施形態では、開閉弁VL1は、シール部材SL1である。一方、第2流路WR2には、第2流路WR2を閉塞しうる開閉弁は設けられていない。
【0044】
開閉弁VL1が閉状態である場合、水は第2流路WR2に流れ、第2吐出孔H2から排出される。開閉弁VL1が開状態である場合、水は第2流路WR2には流れず、第1流路WR1を経由して第1吐出孔H1から排出される。開閉弁VL1が開状態である場合、負圧発生部NP1で負圧が発生する。この負圧により、第2流路WR2への水の流入が防止される。このように、負圧発生部NP1は、切替弁の役割を果たしている。つまり、負圧が切替弁として利用されている。負圧発生部NP1は、弁を有しないにも関わらず、切替弁の役割を果たしうる。
【0045】
散水ノズル100は、互いの相対移動が可能とされた第1部材PT1及び第2部材PT2を有している。散水ノズル100において、第1部材PT1は、軸部材130及び先端軸部材132である。第2部材PT2は、外側部材134である。第1部材PT1と第2部材PT2との間の相対移動によって、シール部材SL1が当接面142に当接するか否かが切り替わる。すなわち、この相対移動によって、開閉弁VL1が開状態と閉状態とに切り替わる。
【0046】
散水ノズル100では、第1部材PT1である先端軸部材132に、シール部材SL1(Oリング)が取り付けられている。前記相対移動に伴うシール部材SL1と外側部材134(の当接面142)との当接により、開閉弁VL1が閉状態となる。前記相対移動に伴うシール部材SL1と第2部材PT2との離間により、開閉弁VL1は開状態となる。
【0047】
[第2実施形態]
図10は、第2実施形態である散水ノズル200の斜視図である。
図11は、散水ノズル200の側面図である。
図12は、散水ノズル200の正面図である。
図13は、散水ノズル200の断面図である。
【0048】
散水ノズル200は、本体202、切替操作部204、吐水スクリーン206及び接続部208、を有する。使用時には、本体202が把持される。切替操作部204は、水形を切り替える。水は、吐水スクリーン206から吐出される。接続部208には、ホースの一端部に取り付けられたコネクターが接続される。
【0049】
図12が示すように、吐水スクリーン206は、吐出孔として、センター孔Hcと、シャワー孔Hsとを有する。センター孔Hcは、吐水スクリーン206の中央に設けられている。シャワー孔Hsは、センター孔Hcの周囲に多数設けられている。センター孔Hcの孔径は、シャワー孔Hsの孔径よりも大きい。
【0050】
切替操作部204は、操作レバー220と、多段カム機構222とを有している。多段カム機構222の動作原理は、前述の散水ノズル100と同じである。
【0051】
本体202は、軸部材230と、この軸部材230の先端側に配置され当該軸部材230に連結された第1先端部材232と、この第1先端軸部材232に連結された第2先端部材234と、これら部材230,232,234の外側に位置する外側部材236とを有する。第1先端部材232は、軸部材230の先端側(上流側)に取り付けられている。第1先端部材232は、第2先端部材234を貫通している。外側部材236は、複数の部材が組み合わされて形成されている。外側部材236は、操作レバー220の操作に関わらず、移動しない。部材230,232,234は、外側部材236に対して、軸方向に移動しうる。この移動は、操作レバー220の操作により生ずる。この移動により、水形が変化する。
【0052】
第1先端部材232と第2先端部材234とは互いに連結されているが、互いの軸方向位置が(若干)移動しうる。図示されないが、第1先端部材232と第2先端部材234とは、軸方向に沿った長穴を介して互いに係合している。この長穴の長さの分だけ、第1先端部材232と第2先端部材234との間で軸方向の移動が生じうる。この移動を、遊び移動とも称する。ただし、第1先端部材232と第2先端部材234とは、常に同軸で配置されている。
【0053】
第1先端部材232と第2先端部材234との間に、圧縮ばね240が配置されている(
図13参照)。この圧縮ばね240は、第1先端部材232と第2先端部材234とが軸方向において離れるような付勢力を、常に付与している。この付勢力に抗しうる力を加えない限り、第1先端部材232と第2先端部材234との間の遊び移動は生じない。すなわち、この付勢力に抗しうる力を加えない限り、第1先端部材232及び第2先端部材234は一体的に移動する。
【0054】
第2先端部材234は、シール部材SL1を有する。シール部材SL1は、Oリングである。一方、外側部材236は、シール部材SL1が当接しうる当接面242を有する。
図13が示すように、当接面242は、円錐凹面である。第2先端部材234が前方に移動すると、シール部材SL1が当接面242に当接する。この当接により、第1流路WR1(後述)が、負圧発生部NP1(後述)よりも下流において閉じられる。シール部材SL1は、負圧発生部NP1よりも下流において第1流路WR1が有する開閉弁VL1である。
【0055】
軸部材230は、シール部材SL2を有している。外側部材236は、シール部材SL2が当接しうる当接面250を有している(
図13参照)。軸部材230が前方に移動すると、シール部材SL2が当接面250に当接する。この当接により、第1流路WR1は、負圧発生部NP1(後述)よりも上流において閉じられる。この当接により、止水状態が達成される。
【0056】
散水ノズル200の多段カム機構222は、複数(4つ)の状態を取りうる。以下、これらの状態が、第1〜第4状態とされる。軸部材230、第1先端部材232及び第2先端部材234が移動することによって、各状態へと切り替わる。
【0057】
第1状態は、図示されないが、止水状態である。前述の通り、軸部材230が前方に移動し、シール部材SL2が当接面250に当接することで、止水状態が達成される。
【0058】
図13及び
図14の断面図は、第2状態を示す。
図14は、
図13の一部が示された拡大断面図である。この第2状態の水形は、キリである。
図15は、第3状態を示す拡大断面図である。この第3状態の水形は、ストレートである。
図16は、第4状態を示す拡大断面図である。この第4状態の水形は、シャワーである。
【0059】
散水ノズル100と同様に、この散水ノズル200でも、操作レバー220を押す動作を繰り返すだけで、状態が変化する。換言すれば、操作レバー220を押す動作を繰り返すだけで、水形が変化する。操作レバー220を押すごとに、第1状態、第2状態、第3状態、第4状態、第1状態、・・・のサイクルが繰り返される。
【0060】
図14の第2状態では、第3状態及び第4状態に比べて、第1先端部材232が前方にある。この第2状態では、シール部材SL1が当接面242に当接しており、この当接により第1流路WR1が閉じられている。よって、水は、第1流路WR1から分岐する第2流路WR2に流れ込み、センター孔Hcから排出される。第2状態では、第1先端部材232の先端に形成された傘状部の裏面K1にセンター孔Hcの開口付近に位置する。このため、裏面K1に水が当たり、キリ水形が実現する。
【0061】
この第2状態では、負圧発生部NP1は存在しない。
【0062】
図15の第3状態では、第1先端部材232は、第2状態と第4状態との間に位置する。この第3状態では、シール部材SL1が当接面242に当接しており、この当接により第1流路WR1が閉じられている。よって、水は、第1流路WR1から分岐する第2流路WR2に流れ込み、センター孔Hcから排出される。第3状態では、ストレート水形が実現する。
【0063】
この第3状態でも、負圧発生部NP1は存在しない。
【0064】
図16の第4状態では、第1先端部材232は、最も後方に位置する。この第4状態では、シール部材SL1が当接面242から離れている。水は、第2流路WR2には流れず、第1流路WR1のみを通って、シャワー孔Hsから排出される。第4状態では、シャワー水形が実現する。
【0065】
この第4状態では、第1先端部材232と外側部材236との位置関係に起因して、細流路WR11が生じている。この結果、負圧発生部NP1が生じる(
図16)。このように、負圧発生部NP1は、第1部材PT1と第2部材PT2との位置関係に起因して生じてもよい。逆に言えば、負圧発生部NP1は、第1部材PT1と第2部材PT2との位置関係によって消滅してもよい。
【0066】
図14から16が示すように、散水ノズル200では、シール部材SL1が閉じる方向に動くにつれて、細流路WR11になりうる部分の第1流路WR1の断面積が大きくなる。換言すれば、シール部材SL1が開く方向に動くにつれて、細流路WR11になりうる部分の第1流路WR1の断面積が小さくなる。よって、細流路WR11の発生と開閉弁VL1の開状態とが確実に連携している。加えて、細流路WR11の消滅と開閉弁VL1の閉状態とが確実に連携している。
【0067】
[第3実施形態]
図17は、第3実施形態である散水ノズル300の斜視図である。
図18は、散水ノズル300の側面図である。
図19は、散水ノズル300の正面図である。
図20は、散水ノズル300の断面図である。
【0068】
散水ノズル300は、本体302、切替操作部304、吐水スクリーン306及び接続部308、を有する。使用時には、本体302が把持される。切替操作部304は、水形を切り替える。水は、吐水スクリーン306から吐出される。接続部308には、ホースの一端部に取り付けられたコネクターが接続される。
【0069】
図19が示すように、吐水スクリーン306は、吐出孔として、センター孔Hcと、シャワー孔Hsとを有する。センター孔Hcは、吐水スクリーン306の中央に設けられている。シャワー孔Hsは、センター孔Hcの周囲に多数設けられている。センター孔Hcの孔径は、シャワー孔Hsの孔径よりも大きい。
【0070】
切替操作部304は、操作レバー320と、多段カム機構(図示されず)とを有している。多段カム機構の動作原理は、前述の散水ノズル100と同じである。
【0071】
この散水ノズル300でも、第1流路WR1と第2流路WR2とが切り替えられ、複数の水形が選択される。
図20が示すように、散水ノズル300も、負圧発生部NP1を有する。細流路WR11の出口の近傍に、負圧発生部NP1が形成されている。第2流路WR2は、負圧発生部NP1から分岐して、シャワー孔Hsに繋がっている。シール部材SL1は、負圧発生部NP1の下流において第1流路WR1を開閉する開閉弁VL1である。
【0072】
散水ノズル300は、空気取り入れ孔330を有している。空気取り入れ孔330は、負圧発生部NP1よりも下流において、第2流路WR2に繋がっている。空気取り入れ孔330は、負圧発生部NP1に吸入される空気ARの増大に寄与する。
【0073】
[第4実施形態]
図21は、第4実施形態である散水ノズル400の斜視図である。
図22は、散水ノズル400の側面図である。
図23は、散水ノズル400の正面図である。
図24は、散水ノズル400の断面図である。
【0074】
散水ノズル400は、本体402、切替操作部404、吐水スクリーン406及び接続部408、を有する。使用時には、本体402が把持される。切替操作部404は、水形を切り替える。水は、吐水スクリーン406から吐出される。接続部408には、ホースの一端部に取り付けられたコネクターが接続される。
【0075】
図23が示すように、吐水スクリーン406は、吐出孔として、センター孔Hcと、シャワー孔Hsとを有する。センター孔Hcは、吐水スクリーン306の中央に設けられている。シャワー孔Hsは、センター孔Hcの周囲に多数設けられている。センター孔Hcの孔径は、シャワー孔Hsの孔径よりも大きい。
【0076】
切替操作部404は、操作レバー420を有する。操作レバー420の握り量が大きくなるほど、軸部材422は後方に移動する。操作レバー420を握らずに離すと、
図24に示されるように、軸部材422は最も前方に移動する。
【0077】
この散水ノズル400でも、第1流路WR1と第2流路WR2とが切り替えられ、複数の水形が選択される。
図24が示すように、散水ノズル400も、負圧発生部NP1を有する。細流路WR11の出口の近傍に、負圧発生部NP1が形成されている。第2流路WR2は、負圧発生部NP1から分岐して、シャワー孔Hsに繋がっている。シール部材SL1は、負圧発生部NP1の下流において第1流路WR1を開閉する開閉弁VL1である。操作レバー420を握ることで、開閉弁VL1が開く。操作レバー420を離すことで、開閉弁VL1が閉じる。
【0078】
[負圧切替弁効果]
以上の通り、上述の各実施形態では、負圧発生部NP1を有する。負圧発生部NP1は、第1流路WR1から第2流路WR2が分岐する分岐点に位置している。
【0079】
従来の散水ノズルでは、水路の切替は、パッキンによりなされる。つまり、パッキンを利用することで、水路の分岐点において水がどちらに流れるかが、確実に制御されている。これは、水路の切替を確実するために当然のことと考えられてきた。
【0080】
これに対して本発明は、この当然と思われていた技術常識を覆すものである。すなわち、水路の分岐点において、パッキンを用いず、負圧を利用するものである。負圧を利用することで、水路の分岐点が第1流路WR1と第2流路WR2との両方に開放されているにも関わらず、水流を確実に第1流路WR1に導くことができる。負圧発生部NP1は、弁が無いにも関わらず、切替弁としての役割を果たす。この効果が、負圧切替弁効果とも称される。
【0081】
図7及び
図16が示すように、負圧発生部NP1よりも下流に位置する上記開閉弁VL1が開いている場合、水WTは第1流路WR1を当該開閉弁VL1に向かって流れ、負圧発生部NP1では負圧が発生する。この負圧により、水WTが第2流路WR2に流れ込むことが防止され、水路の切替は確実である。一方、開閉弁VL1が閉じている場合、水WTは確実に第2流路WR2に流れる。
【0082】
[操作荷重低減効果、操作性向上効果]
水路の分岐点を負圧発生部NP1とすることで、当該分岐点で従来用いられていたパッキンが不要となる。よって、当該パッキンに起因する摺動荷重が無くなり、操作荷重を低減することができる。よって、散水ノズルの操作性が向上する。もちろん、パッキンが不要とされることは、コストの低下にも繋がる。
【0083】
前述した各実施形態では、操作レバーの操作によって片手で水形の切替が可能である。この構成に、操作荷重を低減する負圧発生部NP1を適用することで、片手での切替操作がより一層軽快となる。よって、操作性がより一層高まる。
【0084】
散水ノズル100は、互いの相対移動が可能とされた第1部材PT1(先端軸部材132)と第2部材PT2(外側部材134)とを有している。そして、この相対移動によって、開閉弁VL1が開状態と閉状態とに切り替わる。よって、単純な機構によって開閉弁VL1を構成することが可能となる。
【0085】
散水ノズル100では、第1部材PT1と第2部材PT2との相対移動に伴うシール部材SL1と当接面142(第2部材PT2)との当接により、開閉弁VL1が閉状態となる。また、散水ノズル100では、第1部材PT1と第2部材PT2との相対移動に伴うシール部材SL1と当接面142(第2部材PT2)との離間により、開閉弁VL1が開状態となる。この構成により、開閉弁VL1が当接及び離間によって構成されているため、開閉弁VL1の開閉においても、シール部材の摺動は生じない。よって、切替操作がより一層軽快となる。
【0086】
[信頼性向上効果]
また、従来技術の上記パッキンは、繰り返しの摺動により劣化する。この劣化は、水流の切替不良を招来しうる。しかし、本発明では、当該パッキンを不要することができるので、当該パッキンの劣化に伴う切替不良とは無縁である。本発明の散水ノズルは、耐久性及び信頼性に優れる。
【0087】
[空気導入効果]
更に、この負圧発生部NP1を利用した構成は、更なる別の効果を奏するすることが判明した。
図7及び
図16が示すように、負圧発生部NP1における負圧により、外部から第2流路WR2を経由して空気ARが導入される。空気ARは、負圧発生部NP1を通過する水WTに混入する。この空気ARの混入は、様々な効果を奏しうる。先ず、節水効果が挙げられる。更に、空気ARの混入した水は、洗浄力に優れうる。加えて、空気ARの混入した水では、水当たりの軟らかさが実現しうる。
【0088】
図7及び
図16が示すように、空気ARは第2流路WR2から導入される。第2流路WR2は、水WTの水路として利用されるのに加えて、空気ARの取り入れにも利用される。したがって、この空気ARの混入に際して、別途空気孔を設ける必要がない。このように、水形の切替に必要な第1流路WR1及び第2流路WR2を設けるだけで、空気ARの導入も可能な構成が実現する。
【0089】
[水抜き効果]
本実施形態では、開閉弁VL1の開閉に関わらず、第2流路WR2が常に外部に開放されている。特に、開閉弁VL1が開いている場合、第1流路WR1及び第2流路WR2の2つの流路が共に外部に連通した状態となる。よって、使用後の散水ノズルにおいて、ノズル内部に残留した水が排水されやすい。ノズル内部に残留した水が抜けることで、凍結による破損が防止される。
【0090】
[セルフクリーニング効果]
上述の通り、負圧発生部NP1に導入される空気ARは、第2吐出孔H2から吸い込まれる。このため、第2吐出孔H2の内面側に付着している砂や藻等の異物が、逆方向に流れる空気ARによって効果的に除去されうる。よって、第2吐出孔H2の目詰まりが解消しうる。この効果は、散水ノズルの通常の使用において自然に生ずるものであるため、本願においてセルフクリーニング効果とも称される。
【0091】
このセルフクリーニング効果により、吐水スクリーンを外すこと無く、吐水スクリーンの清掃が可能となる。このため、吐水スクリーンを取り外すことができる構造が不要となり、コストダウン及び耐久性向上につながる。例えば、吐水スクリーンを本体と一体の構造とすることも可能である。
【0092】
図7に示す散水ノズル100では、第1流路WR1の終端に繋がる第1吐出孔H1は、センター孔Hcである。また、第2流路WR2の終端に繋がる第2吐出孔H2は、シャワー孔Hsである。この実施形態では、第2吐出孔H2の孔径D2が、第1吐出孔H1の孔径D1よりも小さい。
【0093】
D2<D1とされることで、上述したセルフクリーニング効果が更に高まる。この場合、第2吐出孔H2の孔径D2が小さいため、第2吐出孔H2に異物が溜まりやすく、目詰まりが生じやすい。よって、セルフクリーニング効果がより顕著に奏される。また、この異物は水流により第1吐出孔H1から外部へと排出されうる。第1吐出孔H1の孔径D1が孔径D2よりも大きいため、異物が排出されやすい。
【0094】
なお、上述の通り、このセルフクリーニング効果は通常の使用において自動的に発現するが、特にクリーニング効果を高めたい場合、バケツ等に溜められた水中で散水ノズルの切替を行うこともできる。この場合、空気ARの代わりに水が吸入されるので、異物の除去効果が更に高まる。
【0095】
図7の散水ノズル100では、第2吐出孔H2がシャワー孔Hsである。シャワー孔Hsの孔径は小さい。シャワー孔Hsには砂や藻などの異物が付着しやすい。第2吐出孔H2がシャワー孔Hsである場合、セルフクリーニング効果がより一層効果的に発揮される。
【0096】
図16に示す散水ノズル200では、 第1流路WR1の終端に繋がる第1吐出孔H1は、シャワー孔Hsである。また、第2流路WR2の終端に繋がる第2吐出孔H2は、センター孔Hcである。この実施形態では、第2吐出孔H2の孔径D2が、第1吐出孔H1の孔径D1よりも大きい。
【0097】
この場合、孔径D1が小さい第1吐出孔H1から、空気が混入された水が吐出される。小さな第1吐出孔H1から吐出される細い水に空気ARが混ざることで、前述した節水効果が高まる。また、水流による洗浄力が向上しうる。更に、当たりの軟らかな吐水となる。これらの効果は、第1吐出孔H1がシャワー孔Hsである場合により一層高まる。
【0098】
なお、シャワー孔Hsの孔径は、好ましくは、1.0mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、より好ましくは0.4mm以下である。吐水流量が過少となることを防ぐ観点から、シャワー孔Hsの孔径は、0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.35mm以上がより好ましい。センター孔Hcの孔径は、5mm以上10mm以下が好ましい。これらの孔径は、吐水スクリーンの内面(つまり、孔の入口)において測定される。シャワー孔Hsの孔径が小さいほど、前述したセルフクリーニング効果は顕著である。
【0099】
図16に示される散水ノズル200では、第1先端部材232及び第2先端部材234と外側部材236とが、互いに相対移動しうる。第1先端部材232及び第2先端部材234は、第1部材PT1である。外側部材236は、第2部材PT2である。
【0100】
散水ノズル200では、
図14及び
図15の局面では、負圧発生部NP1が形成されていない。これに対して、
図16の局面では、負圧発生部NP1が形成されている。このように、散水ノズル200は、互いの相対移動が可能とされた第1部材PT1(第1先端部材232)と第2部材PT2(外側部材236)との間の位置関係に起因して第1流路WR1の断面積が変動し、この断面積が小さい時にのみ、負圧発生部NP1が形成される。散水ノズル200では、第1部材PT1と第2部材PT2との間の位置関係によって、第1流路WR1か第2流路WR2かの切替がなされると共に、負圧発生部NP1の有無が決定される。この構成では、所望の水形のときにだけ負圧発生部NP1を発生させることができる。よって、どの水形を空気入りとするかという選択の自由度が高まる。
【0101】
更に、
図14及び
図15の局面では、細流路WR11が存在しないため、圧力損失が少なくなり、充分な流量が確保される。この散水ノズル200では、孔径が小さい第1吐出孔H1からの吐水(シャワー水形)の場合に細流路WR11及び負圧発生部NP1が生じ、孔径が大きい第2吐出孔H2からの吐水(ストレート水形及びキリ水形)の場合には細流路WR11が無く、充分な流量が確保される。つまり、より大きな吐出孔から水が出る場合に、流量を多くすることができる。したがって、各孔径に応じた適切な流量が確保されうる。
【0102】
負圧の形成の観点から、細流路WR11の断面積は小さいのが好ましい。負圧発生部NP1の上流側に隣接する細流路WR11の断面積S1は、負圧発生部NP1及びそれより下流の第1流路WR1及び第2流路WR2の断面積を考慮して決定されうる。断面積S1は、例えば、22mm
2以下が好ましく、17mm
2以下がより好ましく、12mm
2以下が更に好ましい。流量の観点から、断面積S1は、10mm
2以上が好ましく、15mm
2以上がより好ましく、20mm
2以上が更に好ましい。この断面積S1は、負圧発生部NP1と細流路WR11との境界(つまり細流路WR11の出口)の開口面積と定義される。
【0103】
負圧発生部NP1の上流側に隣接する細流路WR11の断面積がS1とされ、負圧発生部NP1の下流側に隣接する第1流路WR1の断面積がS2とされる。負圧の形成の観点から、S2/S1は、1以上5以下が好ましく、1.1以上3以下がより好ましく、1.2以上2以下が更に好ましい。この断面積S2は、負圧発生部NP1と第1流路WR1との境界(つまり第1流路WR1の入口)の開口面積と定義される。
【0104】
負圧の形成の観点から、負圧発生部NP1の上流側に隣接する細流路WR11と、負圧発生部NP1の下流側に隣接する第1流路WR1とは、水流の方向が同一であるのが好ましい。この場合、負圧発生部NP1の上流側に隣接する細流路WR11の水流の方向は、負圧発生部NP1と細流路WR11との境界(つまり細流路WR11の出口)における水流の方向とされうる。また、負圧発生部NP1の下流側に隣接する第1流路WR1の水流の方向は、負圧発生部NP1と第1流路WR1との境界(つまり第1流路WR1の入口)から5mm以内の部分における当該第1流路WR1の延在方向とされうる。
【0105】
先端軸部材132及び第1先端部材232のような流路制御部材の材質として、金属及び樹脂が挙げられる。材料コスト、生産性、軽量性及び耐腐食性の観点から樹脂が好ましく、成形性も考慮すると熱可塑性樹脂が好ましい。この熱可塑性樹脂として、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。強度及び耐久性の観点から、ポリアセタール樹脂がより好ましい。
【0106】
シール部材SL1が当接する当接面を有する部材の材質として、金属及び樹脂が挙げられる。材料コスト、生産性、軽量性及び耐腐食性の観点から樹脂が好ましく、成形性も考慮すると熱可塑性樹脂が好ましい。この熱可塑性樹脂として、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。当接面の寸法精度の観点から、ABS樹脂がより好ましい
【0107】
外側部材のうち外部に露出する部材の材質として、金属及び樹脂が挙げられる。材料コスト、生産性、軽量性及び耐腐食性の観点から樹脂が好ましく、成形性も考慮すると熱可塑性樹脂が好ましい。この熱可塑性樹脂として、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。外観性の観点から、成形性に優れたABS樹脂がより好ましい
【0108】
シール部材SL1の材質として、エラストマー(ゴムを含む)及び樹脂が例示される。水密性の観点から、エラストマー(ゴムを含む)が好ましい。シール部材SL1が流路制御部材と別体である場合、コストの観点から、汎用性のあるOリングが好ましい。
【0109】
本願には、独立形式請求項に係る発明に含まれない他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成等は、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。
【0110】
上記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成をそなえなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。