特許第6791510号(P6791510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カンケンテクノ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6791510-排ガスのプラズマ除害方法とその装置 図000002
  • 特許6791510-排ガスのプラズマ除害方法とその装置 図000003
  • 特許6791510-排ガスのプラズマ除害方法とその装置 図000004
  • 特許6791510-排ガスのプラズマ除害方法とその装置 図000005
  • 特許6791510-排ガスのプラズマ除害方法とその装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791510
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】排ガスのプラズマ除害方法とその装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/74 20060101AFI20201116BHJP
   H05H 1/26 20060101ALI20201116BHJP
   B01D 53/70 20060101ALI20201116BHJP
   H01L 21/205 20060101ALN20201116BHJP
【FI】
   B01D53/74ZAB
   H05H1/26
   B01D53/70
   !H01L21/205
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-234623(P2018-234623)
(22)【出願日】2018年12月14日
(65)【公開番号】特開2020-93237(P2020-93237A)
(43)【公開日】2020年6月18日
【審査請求日】2020年1月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592010106
【氏名又は名称】カンケンテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】池奥 哲也
【審査官】 青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−205330(JP,A)
【文献】 特開平04−362094(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/101927(WO,A1)
【文献】 特開2000−346323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34−53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01J 10/00−12/02
B01J 14/00−19/32
H01L 21/205
H05H 1/00− 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に難分解性半導体排ガスの反応空間を有する塔本体と、
前記塔本体の天井部に設置された複数のプラズマジェットトーチと、
前記複数のプラズマジェットトーチの間にて前記塔本体の天井部に設置された排ガス供給部とで構成され、
前記複数のプラズマジェットトーチは、前記プラズマジェットトーチからそれぞれ発生させたプラズマジェットが前記排ガス供給部の直下に設けられた前記反応空間内の点で交差するようにそれぞれ配置され、
前記排ガス供給部の噴出口は、前記点に向けて前記排ガスを供給するように配置されていることを特徴とする排ガスのプラズマ除害装置。
【請求項2】
内部に難分解性半導体排ガスの反応空間を有する塔本体と、
前記塔本体の天井部に設置された複数のプラズマジェットトーチと、
前記複数のプラズマジェットトーチの間にて前記塔本体の天井部に設置された排ガス供給部とで構成され、
前記複数のプラズマジェットトーチは、前記プラズマジェットトーチからそれぞれ発生させたプラズマジェットが前記排ガス供給部の直下に設けられた前記反応空間内の点の周囲に設けられた複数の点に向けて互いに捻れの位置関係を保つようにそれぞれ配置され、
前記排ガス供給部の噴出口は、前記複数の点の間に形成される高温領域に向けて排ガスを供給するように配置され、
複数のプラズマジェットトーチから生成されたプラズマジェットの高温領域は、前記複数の点内の前記点を共有することを特徴とする排ガスのプラズマ除害装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセスから排出される排ガスの熱分解工程におけるプラズマ除害方法とその装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶等の電子デバイスの製造プロセスでは様々な化合物のガスが使用されており、例えば、CF4およびC26のようなパーフルオロカーボンやNFのような炭素を含まないフッ素化合物などのパーフルオロコンパウンド(以下、「PFC」という)はCVDチャンバーのクリーニングガスとして使用されている。なお、本明細書において、パーフルオロコンパウンドを含む排ガスをパーフルオロコンパウンド排ガス或いはPFC排ガスという。
【0003】
このうち、CF4やC26を代表とするパーフルオロカーボンは不燃性であり、且つ化合物そのものが安定であるため、大気中に放出された場合、長期にわたって変化せず滞留することになる。大気中における消費までのライフはCF4で50,000年、C26で10,000年といわれており、又、地球温暖化係数(CO2を1としての比較値)はCF4で4,400、C26で6,200(20年経過時点)であり、地球環境上放置できない所謂温室効果問題を孕んでおり、CF4,C26を代表とするパーフルオロカーボンを含むPFCを除害する手段の確立が望まれている。
【0004】
しかしながら、PFCのうち特にパーフルオロカーボンはC−F結合が安定であるため(結合エネルギーが130kcal/molと大きく)、分解が容易でなく、燃焼式などの一般的な加熱分解でPFCを完全に除害するのは極めて難しい。例えば、単純な加熱分解ではC26の場合はC−C結合枝の切断で分解が進むため、処理温度1,000℃において処理風量を250リットル/分以下に制限すれば除害が可能であるが、CF4は最も結合エネルギーの大きなC−Fを切断せねばならず、上記風量においても1,400〜1,500℃程度の高温が必要となる。
【0005】
このように分解が困難なPFCを含む半導体排ガスを分解処理する技術として、簡単な構成にてCF4を含むPFC排ガスを少ないエネルギー消費量で確実に熱分解することができる排ガス処理システムが提案された(特許文献1)。
【0006】
この排ガス処理システムは、熱分解塔の天井部にプラズマジェットトーチを下向き垂直に配置し、非移行型電極間に放電電圧を印加してアークを発生させると共に、アークに作動ガスを送給してアノード側から垂直に約10,000℃と言う高温のプラズマジェットを熱分解塔の中心軸に合致させてプラズマジェットを噴出させるようにしていた。そして、生成したプラズマジェットのアノード側の上流部近傍に向け、水洗により水溶性成分と粉塵とが除去され且つ水分が付加されたPFC排ガスを外側から供給するようにしている。供給されたPFC排ガスは高温のプラズマジェットの周囲を螺旋回転しながら出口に向かい、その間に約10,000℃と言う高温のプラズマジェットの周囲の高温雰囲気にて熱分解され、出口スクラバに排出されるようになっている。これにより、従来の電熱ヒータでは分解することができなかったCF4なども迅速且つ不可逆的に分解することができるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−205330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
処が、上記のような排ガス処理システムにおける、プラズマ除害装置としての熱分解塔では以下のような問題点があった。
上記のように、細長く垂直に伸びたプラズマジェットの上流部近傍に向けてPFC排ガスを外側から供給し、その周囲を螺旋回転させながらその過程で熱分解させているが、約10,000℃に達するプラズマジェットは細長い形状であるため、その周囲に形成される1,400〜1,500℃程度の高温領域も必然的に細く長くなる。特に、熱分解塔の内面近傍ではプラズマジェットから離れ、上記高温領域の温度に達しないスペースも発生することがある。それ故、排ガスの全てがプラズマジェットの周囲に形成される高温領域を通過して熱分解されるとは限られず、一部は低温領域内を摺り抜けて未分解のまま放出される恐れがあった。
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その解決課題は、プラズマ除害装置としての熱分解塔に投入された排ガスの全量が必ずプラズマジェットによって形成された高温領域を通過し、確実に分解されるプラズマ除害方法とその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1のプラズマ除害方法は、複数のプラズマジェットPを点Qに向けて集中させる方法で、
排ガスHの反応空間Dに向けて設置された複数のプラズマジェットトーチ2a、2b、(2c)から前記反応空間D内の或る点Qに向けてそれぞれのプラズマジェットPを発生させ、
前記複数のプラズマジェットトーチ2a、2b、(2c)の間から前記点Qに向けて排ガスHを供給することを特徴とする。
【0011】
本発明の第2プラズマ除害方法は、複数のプラズマジェットPを点Qの周囲の複数の点Q1、Q2、(Q3)に分散させる方法で、
排ガスHの反応空間Dに向けて設置された複数のプラズマジェットトーチ2a、2b、(2c)から前記反応空間D内の或る点Qの周囲の複数の点Q1、Q2、(Q3)に向けて互いに捻れの位置関係を保つようにそれぞれのプラズマジェットPを発生させ、
前記複数のプラズマジェットトーチ2a、2b、(2c)の間から前記複数の点Q1、Q2、(Q3)の間に形成される高温領域Tに向けて排ガスHを供給することを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明は、上記第1の方法を実現する装置(プラズマ除害用の熱分解塔1)で、
内部に難分解性半導体排ガスHの反応空間Dを有する塔本体1aと、
前記塔本体1aの天井部3に設置された複数のプラズマジェットトーチ2a、2b、(2c)と、
前記複数のプラズマジェットトーチ2a、2b、(2c)の間にて前記塔本体1aの天井部3に設置された排ガス供給部29とで構成され、
前記複数のプラズマジェットトーチ2a、2b、(2c)は、前記プラズマジェットトーチ2a、2b、(2c)からそれぞれ発生させたプラズマジェットPが前記排ガス供給部29の直下に設けられた前記反応空間D内の点Qで交差するようにそれぞれ配置され、
前記排ガス供給部29の噴出口29aは、前記点Qに向けて前記排ガスをH供給するように配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、上記第2の方法を実現する装置(プラズマ除害用の熱分解塔1)で、
内部に難分解性半導体排ガスHの反応空間Dを有する塔本体1aと、
前記塔本体1aの天井部3に設置された複数のプラズマジェットトーチ2a、2b、(2c)と、
前記複数のプラズマジェットトーチ2a、2b、(2c)の間にて前記塔本体1aの天井部3に設置された排ガス供給部29とで構成され、
前記複数のプラズマジェットトーチ2a、2b、(2c)は、前記プラズマジェットトーチ2a、2b、(2c)からそれぞれ発生させたプラズマジェットPが前記排ガス供給部の直下に設けられた前記反応空間D内の或る点Qの周囲に設けられた複数の点Q1、Q2、(Q3)に向けて互いに捻れの位置関係を保つようにそれぞれ配置され、
前記排ガス供給部29の噴出口29aは、前記複数の点点Q1、Q2、(Q3)の間に形成される高温領域Tに向けて排ガスHを供給するように配置され、
複数のプラズマジェットトーチ2a、2b、(2c)から生成されたプラズマジェットPの高温領域Tは、前記複数の点Q1、Q2、(Q3)内の前記点Qを共有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、複数のプラズマジェットPに対する排ガスHの供給関係から、排ガスHの全量が複数のプラズマジェットPで形成される高温領域Tを通過することになるので、排ガスHの除害効率が飛躍的に高まる。そして、複数のプラズマジェットPの位置関係が、点Qに集中させる場合に比べてその周囲の複数の点Q1、Q2、(Q3)に分散させる方が排ガスHの反応空間Dにおける高温領域Tをより広く出来る。なお、この場合、複数のプラズマジェットPで形成される高温領域Tは、点Qを含め、その一部で重なり合うことが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明装置の全体のフロー図である。
図2】本発明の複数のプラズマジェットが2つの場合の点Qを含む横断面の平面図である。
図3図2の他の例の点Qを含む横断面の平面図である。
図4】本発明の複数のプラズマジェットが3つの場合の点Qを含む横断面の平面図である。
図5図4の他の例の点Qを含む横断面の平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を図示実施例に従って説明する。図1は本発明の排ガス処理装置Xである。これらは半導体製造プロセスで用いられる装置で、例えば、CVD成膜装置Sから排出された排ガスHを真空ポンプVで吸引して排ガス処理装置Xに送り、熱分解して無害化し、大気放出する設備である。
なお、背景技術の説明ではPFC排ガスの除害を代表例として説明したが、難分解性の排ガスはPFC排ガスに限られないので、本発明の処理対象ガスは、単に、排ガスHとする。
【0018】
図1の排ガス処理装置Xは、その1例で、独立の水処理装置A、出口スクラバ60が設置された熱分解装置Bとで構成されている。図示していないが、水処理装置Aは熱分解装置Bの水槽40に一体的に設置することも可能である。
【0019】
図1の排ガス処理装置Xのフローの概略は以下の通りである。CVD成膜装置Sからの排ガスHを真空ポンプVで吸引し、該真空ポンプVと水処理装置Aとを繋ぐ排ガス導入配管18で排ガスHを水処理装置Aに送り込む。水処理装置Aでは、排ガスHに含まれる加水分解性の成分ガスを加水分解して固形の加水分解生成物として、供給された水等(加水分解用のスプレー水や加熱水蒸気)Mと共に除去する。同時に排ガスHに伴って送り込まれた粉塵も同様に水洗除去する。また、塩素等、水溶性ガスが含まれている場合には、これも同時に水等Mで除去する。
【0020】
加水分解性の成分ガスや粉塵などが除去された排ガスHは、排気管26によって熱分解塔1に送り込まれ、ここで熱分解された後、隣接する出口側のスクラバ60に送られ、熱分解後の熱分解排ガスHを洗浄した後、無害の大気放出排ガスHとして大気放出される。
【0021】
排ガス処理装置Xの水処理装置Aは、排ガス導入ノズル19と入口側の充填物層25が内部に設けられた水処理タンク20、水分供給部30、蒸気配管21、及び排気管26とで概略構成されている。
水処理タンク20は、中空容器で頂部の排ガス導入部22に排ガス導入ノズル19が設置されており、底部に循環用の水Mが貯留されている。
排ガス導入ノズル19の下方に、工場の蒸気供給配管(図示せず)に接続された蒸気配管21が設置されている。蒸気配管21には上向きのノズル口21aが排ガス導入ノズル19を挟むようにその両側に配置され、排ガス導入ノズル19の両側でノズル口21aから加熱水蒸気が上向きに噴出するようになっている。
蒸気配管21の下、或いは横に並べて入口側のスプレー配管23が設置されている。入口側のスプレー配管23には下向きのノズル口23bが設けられている。この下向きのノズル口23bは排ガス導入ノズル19の直下に配置され、この下向きのノズル口23bから放射状に微細なスプレー水滴Mが下方に降り注ぐようになっている。
【0022】
入口側のスプレー配管23の下方にはプラスチック又はセラミック或いはガラス製の充填物(例えば、テラレット(登録商標)やラシヒリング)が充填された充填物層25が設けられている。
【0023】
充填物層25の下方の空間には、この空間から引き出され、後述する熱分解搭50の排ガス供給部29に至る排気管26が設けられている。
【0024】
入口側のスプレー配管23には、水処理タンク20の底部から立ち上げられ、水分供給部30を構成する入口側の揚水配管31が接続されている。この入口側の揚水配管31には入口側の揚水ポンプ34が設置され、水処理タンク20の底部に溜まった循環用の水Mを入口側のスプレー配管23に供給している。更に、水処理タンク20の底部には循環水用のMの水位を維持するためのオーバーフロー配管37が設置され、オーバーフロー分の水が外部から供給されている。
【0025】
熱分解装置Bは、水槽40、プラズマ除害装置としての熱分解塔1及び出口側のスクラバ60とで構成されている。熱分解塔1と出口側のスクラバ60は、水槽40の上に並置して立設されている。
【0026】
熱分解塔1は、塔本体1a、複数の非移行型のプラズマジェットトーチ2とで構成されている。プラズマジェットトーチは複数基使用され、上位概念として使用する場合は符号2で表し、個別に示す場合はアルファベットを枝番とする。
塔本体1aは、円筒状の部材で、その上端は上向き円錐形に形成された天井部3で閉塞され、その中央頂部に排気管26に連なる排ガス供給部29が接続されている。塔本体1aの下端は水槽40に開口している。天井部3に設置されたプラズマジェットトーチ2は、2基の場合、排ガス供給部29の両側に対称に配置され、3基或いはそれ以上の場合は排ガス供給部29を中心とする円上に等角度で設置されている。3基の場合は120°間隔である。
塔本体1aの天井部3は上向き円錐形に形成されているので、各プラズマジェットトーチ2から生成されたプラズマジェットPは、塔本体1aの中心軸Lに対して傾斜することになる。それ故、塔本体1aの胴部1bは、その内面がプラズマジェットPの先端から熱影響を受けない距離だけ遠く離れるようにする必要があり、太く形成されている。そして、胴部1bの下端はロート状に絞られ、水槽40の天井部41に立設される脚部1cに連通して一体化される。
胴部1bの外面は断熱材(図示せず)で覆われている。塔本体1aの上端外周部分には水溜部4が設けられており、塔本体1aの上端から水がオーバーフローして塔本体1aの内周面全面に水壁5を形成している。水溜部4にはオーバーフロー分の水が外部から供給されている。
【0027】
プラズマジェットトーチ2は複数基使用され、個別に示す場合は2a、2b、2cと言うようにアルファベットを枝番として付する。プラズマジェットトーチ2は、内部にプラズマ発生室(図示せず)を有し、プラズマジェットトーチ2の下面中心部にはプラズマ発生室内で生成したプラズマジェットPを噴出させるプラズマジェット噴出孔(図示せず)が設けられている。プラズマジェットトーチ2の側面上部には必要に応じて窒素ガスのような作動ガス送給配管(図示せず)が設けられている。
【0028】
熱分解塔1と出口側のスクラバ60の底部は水槽40に開口しており、熱分解塔1の底部と出口側のスクラバ60の底部は水槽40の天井部41と循環用の水Mとの間の空間で連通している。
【0029】
プラズマジェットトーチ2の設置数は、最小で2基、図4及び図5では3基である。勿論、3基以上の設置も可能である。まず、2基の場合に付いて説明する(図2及び図3)。
プラズマジェットトーチ2a、2bが2基の場合は、上記のように排ガス供給部29を中心にして左右対称に設置される。
左右のプラズマジェットトーチ2a、2bからのプラズマジェットPの噴出角度は、図2の場合、塔本体1aの頂部に設けられた排ガス供給部29を通る塔本体1aの中心軸Lに対して傾斜し、中心軸L上で排ガス供給部29の直下の或る点Qに向くように設置される。そして左右のプラズマジェットトーチ2a、2bからの両プラズマジェットPは点Qで交差する。両プラズマジェットPの先端は塔本体1aの胴部1bの内面に影響を与えないように設定されている。
【0030】
プラズマジェットPの中心部分は約10,000℃で、中心部分から離れるに従って温度は低下する。前記中心部分を含み、プラズマジェットPの全周囲に形成される対象排ガスHの分解可能温度領域(1,400℃以上の領域)を高温領域Tとし、破線と部分ハッチングで示す。高温領域TはプラズマジェットPの可視範囲より広い。この点は、後述する場合も同じである。
【0031】
図3の場合は、両プラズマジェットPが前記点Qで交差せず、点Qを中心とし、点Qを含む水平面上の円E上の2点Q1、Q2に向くように設定されている。この場合、2点Q1、Q2が離れすぎていると中心点である点Qの温度が熱分解温度に達しない場合があるので、これを避けるために点Q1、Q2をそれぞれ通過する、或いはこれらに向けて生成される両プラズマジェットPの高温領域Tが点Qを含むことができる範囲となる。換言すれば、両プラズマジェットPの高温領域Tが点Qを共有することになる。この点は、後述する図5でも言える。
これにより両プラズマジェットPの高温領域Tが点Qを中心としてその周囲に、図2の場合より大きく面状に広がることになる。
【0032】
図4の場合は、プラズマジェットPが3つの場合で、プラズマジェットトーチ2a、2b、2cが排ガス供給部29を中心に120°の等間隔に設置されている場合で、プラズマジェットPが点Qに向けて噴き出すように設定されている。3つのプラズマジェットPは点Qで3方向から交差し、プラズマジェットPの全周囲に高温領域Tを形成する。この場合、この高温領域Tの上面は点Qに向かってロート状に凹み、後述する排ガスHを包み込むような状態を呈する。
【0033】
図5の場合は、3つのプラズマジェットPが前記点Qで交差せず、点Qを中心とする水平面上の円E上の3点Q1、Q2、Q3に向くように設定されている。この場合、図3と同様、上記同様3点Q1、Q2、Q3が離れすぎていると中心点である点Qの温度が熱分解温度に達しない場合があるので、これを避けるために点Q1、Q2、Q3をそれぞれ通過する、或いはこれらに向けて生成される両プラズマジェットPの高温領域Tが点Qを含むことができる範囲となる。
これによりプラズマジェットPの高温領域Tが点Qを中心としてその周囲に、図4の場合より大きく面状に広がることになる。この場合も高温領域Tの上面は点Qに向かうロート状に凹みが生じる。
【0034】
なお、点Qの排ガス供給部29からの離間位置は、プラズマジェットP或いはその周囲に形成される高温領域Tが届く範囲内で、プラズマジェットPが塔本体1aにダメージを与えない範囲が選ばれる。
【0035】
排ガス供給部29は上記のように塔本体1aの天井部3の頂部に設けられ、いずれのプラズマジェットトーチ2までの距離は等しい。そして排ガス供給部29の噴出口29aは、前記点Q、又は前記複数の点Q1、Q2、(Q3)の間の高温領域Tに向けて排ガスHを供給するように配置されている。
【0036】
水槽40は中空直方体のような部材で、その天井部41には前記熱分解塔1と後述する出口スクラバ60とが並んで立設されている。水槽40は、底部に循環用の水Mが湛えられ、該水Mと天井部41との間が熱分解排ガスHの流通路となっている。そして内部の水位を一定に保つオーバーフロー配管42と、オーバーフロー水Mと等量の水を水槽40に供給する給水管45とが水槽40に設置されている。
【0037】
出口側のスクラバ60は、いわゆる湿式のスクラバであり、その概略構造を説明すると、水槽40の天井部41に立設された直管型のスクラバ本体60aと、出口側の揚水配管61とその途中に設けられた出口側の揚水ポンプ64、前記揚水配管61に接続され、スクラバ本体60aの内部の頂部近傍に設置された出口側のスプレー配管63、該スプレー配管63に設置され、アルカリ液、酸性液等の薬液、或いは水蒸気や水Mを下向きに散布する出口側の出口側のノズル口63aと、出口側のノズル口63aの下方に設置された気液接触のための出口側の充填物層65と、スクラバ本体60aの頂部に設置された排気ブロア67及び該排気ブロア67に設置された大気放出用排気管68で構成されている。散布された前記薬液又は水Mは水槽40に収納されるようになっている。
【0038】
次に図1の排ガス処理装置Xの作用に付いて説明する。排ガス処理装置Xの水処理装置Aから出口スクラバ60に至る排ガスHの通流路は、排気ブロア67を作動させることにより負圧に保たれている。そして上記のように半導体製造装置Sからの排ガスHを真空ポンプVで吸引し、排ガス導入ノズル19を介して内部が負圧に保たれた水処理装置Aに送り込む。
【0039】
水処理装置Aでは、蒸気配管21の上向きのノズル口21aからは排ガス導入ノズル19の両側で加熱水蒸気Mが噴き上げられると同時に、入口側の揚水配管31の揚水ポンプ34を作動させ、循環用の水Mを揚水して入口側のスプレー配管23に供給し、下向きのノズル口23bからも水を細かい水滴Mとして下方に向けて傘のように散布する。
【0040】
水処理装置A内に送り込まれた排ガスHは、上記加熱水蒸気Mと細かい水滴Mによってその中の加水分解性成分ガスと粉塵が除去され、水洗排ガスHとして熱分解塔1に送られる。
【0041】
上記水洗排ガスHの供給に先駆けて、プラズマジェットトーチ2の制御部(図示せず)の電源をオンにすると、大気圧下で超高温(約10、000℃前後)のガス流すなわち非移行型のプラズマジェットPが生成され、複数のプラズマジェットトーチ2のプラズマジェット噴出孔から各プラズマジェットPが塔本体1a内に上記のような位置関係を以って噴出する。
【0042】
高温領域Tである、このプラズマジェットPの交差部分(図2図4)、換言すれば点Q、又はプラズマジェットP(換言すれば、点Q1、点Q2、(点Q3))で囲まれた部分或いは挟まれた部分(図3図5)に向けて排ガスHが吹き込まれるので、吹き込まれた排ガスHの全量はプラズマジェットPで形成された高温領域Tを漏れなく通過することになり、全量が分解される。
【0043】
ここで、(図3図5)のようにプラズマジェットPが捻じれの位置関係にある場合は、プラズマジェットPの流れにより、プラズマジェットPの間、或いは囲まれた範囲内で大気に渦巻Uが発生し、排ガス供給部29の噴出口29aから反応空間Dに吹き込まれた排ガスHは、上記渦巻Uに巻き込まれて中心点である点Qに向かう。
特に、プラズマジェットトーチ2を3基使用した場合は、その傾向がより強く、且つ高温領域Tの上面がロート状に凹むので、排ガスHの逃げ場がなく、2基の場合より高い分解効率を示す。
【0044】
そして、ここで熱分解された熱分解排ガスHは出口スクラバ60に送られ、十分に洗浄されると共に大気放出可能な温度まで下げられ、排気ブロア67にて大気放出される。
以上は、本発明において最も好ましい例を代表例として示したもので、本発明はこれら例示に限定されることはない。
【符号の説明】
【0045】
A:水処理装置、B:熱分解装置、D:反応空間、E:円、H:排ガス、L:中心軸、M:水等(霧、加熱水蒸気、循環用の水)、P:プラズマジェット、Q:1点、Q1〜Q3:周囲の点、S:半導体製造装置(半導体成膜装置)、T:高温領域、U:渦巻、V:真空ポンプ、X:本発明の排ガス処理装置、
1:熱分解塔、1a:塔本体、1b:胴部、1c:脚部、2:プラズマジェットトーチ、3:天井部、4:水溜部、5:水壁、18:排ガス導入配管、19:排ガス導入ノズル、20:水処理タンク、21:蒸気配管、21a:上向きのノズル口、22:排ガス導入部、23:入口側のスプレー配管、23b:下向きのノズル口、25:入口側の充填物層、26:排気管、29:排ガス供給部、29a:噴出口、30:水分供給部、31:入口側の揚水配管、34:入口側の揚水ポンプ、37:オーバーフロー配管、40:水槽、41:天井部、42:オーバーフロー配管、45:給水管、
60:出口スクラバ、60a:スクラバ本体、61:出口側の揚水配管、63:出口側のスプレー配管、63a:ノズル口、64:出口側の揚水ポンプ、65:出口側の充填物層、67:排気ブロア、68:大気放出用排気管。
図1
図2
図3
図4
図5