(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6791517
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/12 20060101AFI20201116BHJP
H01L 33/00 20100101ALN20201116BHJP
【FI】
B01J19/12 C
!H01L33/00 L
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-204513(P2019-204513)
(22)【出願日】2019年11月12日
【審査請求日】2019年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】514315274
【氏名又は名称】株式会社セルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】渡 脩
(72)【発明者】
【氏名】藤野 健太
【審査官】
中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−308938(JP,A)
【文献】
特開2006−200971(JP,A)
【文献】
特開2007−023220(JP,A)
【文献】
特開2006−060159(JP,A)
【文献】
特開2016−014589(JP,A)
【文献】
特開2009−069099(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/038643(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/12
C07B 61/00
C12M 1/42
G01N 21/00、35/00
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸である第1の軸の回りに回転可能な回転ステージと、
長手方向を前記中心軸の方向とする複数の反応容器を、前記回転ステージ上で前記第1の軸を中心とする円周上に等間隔に保持する保持機構と、
前記回転ステージ上に設けられ、前記複数の反応容器のそれぞれの底部を保持し、かつ、前記反応容器のそれぞれを前記反応容器の中心軸である第2の軸の回りに自転させる複数の自転機構と、
前記回転ステージの外側の円周上に等間隔に配置される、少なくとも1つの発光ダイオードが設けられた複数の光照射機構と、
前記反応容器の近傍に設けられ、前記反応容器のそれぞれに投入された撹拌子を、磁力によって前記第2の軸と直交する方向を軸として回転させる複数の撹拌機構と、を備える、
光照射装置。
【請求項2】
前記自転機構は、保持している前記反応容器に投入された前記撹拌子を、磁力によって前記第2の軸まわりに回転させる撹拌機能を有する、
請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記光照射機構は、主面が前記第1の軸に向くように配置される、
請求項1又は2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記光照射機構は、前記主面の中心点を通る垂線が前記第1の軸と直交するように配置される、
請求項3に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記光照射機構は、前記主面の前中心点を通る前記第1の軸と平行な第3の軸上に、複数の前記発光ダイオードが配列される、
請求項3に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記光照射機構は、前記主面の前中心点を通って前記第3の軸と直交する第4の軸上に、複数の前記発光ダイオードが前記第3の軸に対して対称に配列される、
請求項5に記載の光照射装置。
【請求項7】
前記光照射機構は、前記第3の軸の方向及び前記第4の軸の方向に、複数の前記発光ダイオードがマトリックス状に配列される、
請求項6に記載の光照射装置。
【請求項8】
前記光照射機構に前記発光ダイオードが複数設けられる場合、
前記複数の発光ダイオードの発光波長は同じであり、
前記複数の発光ダイオードの発光波長はそれぞれ異なり、又は、
前記複数の発光ダイオードは、同じ発光波長を有する複数の発光ダイオードを含む群を複数含み、かつ、前記複数の群の発光波長はそれぞれ異なる、
請求項5乃至7にいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項9】
前記回転ステージが回転することで前記複数の反応容器のそれぞれが1回公転するごとに、前記自転機構は保持している前記反応容器を1回自転させる、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射装置に関し、特に反応容器に光を照射する光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒反応や光触媒反応などの光の照射を要する反応実験を行うため、試料が注入された試験管などの反応容器に光を照射する光照射装置が用いられる。このような光照射装置として、例えば、水銀灯からの紫外線を試験管内の試料に照射する装置がよく知られている(非特許文献1)。この装置では、中央に配置された水銀灯を囲むように複数の試験管が配置されて、これらの試験管に同時に紫外線を照射することができる。また、水銀灯からの発熱を除去するため、冷却水を流す冷却機構が設けられる。
【0003】
また、水銀灯の発熱の影響を避けるため、水銀灯をLED(Light Emitting Diode)に置き換えた構成も提案されている(特許文献1)。LEDは水銀灯と比べて発熱が大幅に小さいため、冷却水よる冷却が必要なく、空冷が可能である。これにより、冷却機構を小型化できるので、装置全体の寸法を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017−529236号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「光触媒反応装置」、小池精密機器製作所、[online]、[令和元年10月22日検索]、インターネット<URL: http://www.k-p-i.net/product/photocatalystreactor/reaction/>,<http://www.k-p-i.net/wp/wp-content/uploads/2017/02/photocatalystreactor.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の光照射マルチサンプル並行反応装置は、特許文献1の光触媒反応装置での水銀灯の発熱の影響は避けることが可能である。また、光照射マルチサンプル並行反応装置では、円筒形の反応容器の軸を中心として、反応容器内で撹拌子を回転させて試料を撹拌することが可能である。しかし、このような撹拌方法では試料を効率的に撹拌することは難しい。特に、試料に非水溶性の粉体が含まれる場合には、粉体が反応容器の底部に沈殿し、撹拌できなくなる事態が生じ得る。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、本発明の目的は、反応容器内の試料をより効率的に撹拌しつつ光を照射できる光照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様である光照射装置は、中心軸である第1の軸の回りに回転可能な回転ステージと、長手方向を前記中心軸の方向とする複数の反応容器を、前記回転ステージ上で前記第1の軸を中心とする円周上に等間隔に保持する保持機構と、前記回転ステージ上に設けられ、前記複数の反応容器のそれぞれの底部を保持し、かつ、前記反応容器のそれぞれを前記反応容器の中心軸である第2の軸の回りに自転させる複数の自転機構と、前記回転ステージの外側の円周上に等間隔に配置される、少なくとも1つの発光ダイオードが設けられた複数の光照射機構と、前記反応容器の近傍に設けられ、前記反応容器のそれぞれに投入された撹拌子を、磁力によって前記第2の軸と直交する方向を軸として回転させる複数の撹拌機構と、を有するものである。これにより、光を照射しながら、反応容器内の試料を、反応容器の長手方向に撹拌することが可能となる。
【0009】
本発明の第2の態様である光照射装置は、上記の光照射装置において、前記自転機構は、保持している前記反応容器に投入された前記撹拌子を、磁力によって前記第2の軸まわりに回転させる撹拌機能を有することが望ましい。これにより、光を照射しながら、反応容器内の試料を、さらに反応容器の中心軸まわりに撹拌することが可能となる。
【0010】
本発明の第3の態様である光照射装置は、上記の光照射装置において、前記光照射機構は、主面が前記第1の軸に向くように配置されることが望ましい。これにより、複数の反応容器に効率的に光を照射することができる。
【0011】
本発明の第4の態様である光照射装置は、上記の光照射装置において、前記光照射機構は、前記主面の中心点を通る垂線が前記第1の軸と直交するように配置されることが望ましい。これにより、複数の反応容器に効率的に光を照射することができる。
【0012】
本発明の第5の態様である光照射装置は、上記の光照射装置において、前記光照射機構は、前記主面の前中心点を通る前記第1の軸と平行な第3の軸上に、複数の前記発光ダイオードが配列されることが望ましい。これにより、これにより、複数の発光ダイオードからの光をバランスよく複数の反応容器に照射することができる。
【0013】
本発明の第6の態様である光照射装置は、上記の光照射装置において、前記光照射機構は、前記主面の前中心点を通って前記第3の軸と直交する第4の軸上に、複数の前記発光ダイオードが前記第3の軸に対して対称に配列されることが望ましい。これにより、これにより、複数の発光ダイオードからの光をバランスよく複数の反応容器に照射することができる。
【0014】
本発明の第7の態様である光照射装置は、上記の光照射装置において、前記光照射機構は、前記第3の軸の方向及び前記第4の軸の方向に、複数の前記発光ダイオードがマトリックス状に配列されることが望ましい。これにより、これにより、複数の発光ダイオードからの光をバランスよく複数の反応容器に照射することができる。
【0015】
本発明の第8の態様である光照射装置は、上記の光照射装置において、前記光照射機構に前記発光ダイオードが複数設けられる場合、前記複数の発光ダイオードの発光波長は同じであり、前記複数の発光ダイオードの発光波長はそれぞれ異なり、又は、前記複数の発光ダイオードは、同じ発光波長を有する複数の発光ダイオードを含む群を複数含み、かつ、前記複数の群の発光波長はそれぞれ異なることが望ましい。これにより、必要に応じて適切な波長のLEDを柔軟に配置することができる。
【0016】
本発明の第9の態様である光照射装置は、上記の光照射装置において、前記回転ステージが回転することで前記複数の反応容器のそれぞれが1回公転するごとに、前記自転機構は保持している前記反応容器を1回自転させることが望ましい。これにより、複数の反応容器に均等に光を照射することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、反応容器内の試料をより効率的に撹拌しつつ光を照射できる光照射装置を提供することができる。
【0018】
本発明の上述及び他の目的、特徴、及び長所は以下の詳細な説明及び付随する図面からより完全に理解されるだろう。付随する図面は図解のためだけに示されたものであり、本発明を制限するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態1にかかる光照射装置の外観を模式的に示す図である。
【
図2】実施の形態1にかかる光照射装置の内部構成を模式的に示す斜視図である。
【
図3】実施の形態1にかかる光照射装置の構成を模式的に示す上面図である。
【
図4】実施の形態1にかかる光照射装置を
図3のIV−IV線から見た場合の構成を模式的に示す図である。
【
図5】光照射機構の配置を模式的に示す斜視図である。
【
図6】光照射機構の配置を模式的に示す上面図である。
【
図8】反応容器の初期位置(0°)位置を示す図である。
【
図9】反応容器が初期位置から90°公転した場合の位置を示す図である。
【
図10】反応容器が初期位置から180°公転した場合の位置を示す図である。
【
図11】反応容器が初期位置から270°公転した場合の位置を示す図である。
【
図12】反応容器での撹拌子の回転を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0021】
実施の形態1
実施の形態1にかかる光照射装置100について説明する。
図1に、実施の形態1にかかる光照射装置100の外観を模式的に示す。光照射装置100は、台座1上に設けられた各種機構が、光を遮蔽するカバー2で覆われるように構成される。ここで、各種機構としては、回転ステージ、保持機構、自転機構、光照射機構及び撹拌機構を含む。
【0022】
カバー2は、例えば、内部の機構を冷却するためのファンユニット21や排気口22などが設けられる。カバー2内で照射される光の漏洩を防止するため、排気口22や窓部を設ける場合でも、なるべく小さくすることが望ましい。また、カバー2は、内部で照射される光、例えば紫外線、可視光、赤外線などの各種波長の光を遮蔽できる材料で構成される。
【0023】
図2は、光照射装置100の内部構成を模式的に示す斜視図である。
図3は、光照射装置100の構成を模式的に示す上面図である。
図4は、
図3のIV−IV線から見た場合の光照射装置100の構成を模式的に示す図である。
図2では、光照射装置100の内部構成を理解しやすくするため、カバー2及び光照射機構を省略している。以下では、
図1の紙面を概ね左から右へ向かう方向、
図2及び
図3の紙面を左から右へ向かう水平方向、
図4の紙面に垂直で手前から奥に向かう方向をX方向とする。
図1及び
図2の紙面に対して概ね手前から奥へ向かう方向、
図3の紙面を下から上へ向かう鉛直方向、
図4の紙面を右から左へ向かう水平方向をY方向とする。
図1、
図2及び
図4の紙面の下から上へ向かう鉛直方向、
図3の紙面の紙面に垂直で奥から手前へ向かう方向をZ方向とする。
【0024】
台座1上には、X−Y平面を主面とする円形の回転ステージ3が設けられ、中心を通るZ方向に平行な軸(第1の軸とも称する)の回りに回転可能に構成される。なお、図示しないが、回転ステージ3の下部には、台座1に固定され、かつ、回転ステージ3の中心軸と結合された、モータなどの駆動部が設けられ、この駆動部が駆動することで回転ステージ3が所定の速度で回転する。
【0025】
回転ステージ3上には、複数の反応容器を保持する保持機構4が設けられる。本実施の形態で用いられる反応容器は、X−Y平面において円形断面を有し、円形断面の中心軸(第2の軸とも称する)の方向(Z方向)を長手方向とする円筒形状の部分を有する容器である。反応容器としては、例えば、長手方向の一端が閉塞された円筒形状の容器である、試験管やバイアルなどの各種容器を用いることできる。また、反応容器としては、例えば、円筒形状の首部を有する各種のフラスコを用いてもよい。以下では、8本の反応容器RC1〜RC8が用いられる場合について説明する。
【0026】
保持機構4は、コラム41、ビームB1〜B8及び保持具H1〜H8を有する。コラム41は、棒状あるいは筒状部材であり、Z方向の中心軸が回転ステージ3の回転軸と一致するように、回転ステージ3上に立設される。回転ステージ3からは、45°の等間隔で、放射状に8本のビームB1〜B8が延材している。ビームB1〜B8の先端には、反応容器RC1〜RC8を保持する保持具H1〜H8がそれぞれ設けられる。保持具H1〜H8は、反応容器RC1〜RC8を回転可能に保持できる部材として構成され、例えば反応容器RC1〜RC8を挿通させて保持可能な孔が設けられた部材として構成される。
【0027】
なお、
図4では、構成の理解を容易にするため、反応容器RC1及びRC5に関する構成のみを表示している。
【0028】
保持機構4で保持された反応容器の底部は、自転機構により保持される。この例では、自転機構51〜58が反応容器RC1〜RC8の底部をそれぞれ保持する。すわなち、上面図において、保持具H1〜H8と重なる位置に、自転機構51〜58が設けられる。自転機構51〜58は円柱状の部材であり、Z方向の中心軸まわりに回転可能に構成される。なお、図示しないが、回転ステージ3の下部には、回転ステージ3に固定され、かつ、自転機構51〜58の中心軸と結合されたモータなどの駆動部が設けられ、この駆動部が駆動することで自転機構51〜58が所定の速度で回転する。反応容器RC1〜RC8の底部は自転機構51〜58とそれぞれ接触して保持されているため、自転機構51〜58が回転すると反応容器RC1〜RC8もそれぞれ回転、すなわち自転することとなる。
【0029】
なお、回転ステージ3、保持機構4及び自転機構51〜58は、回転ステージ3が回転しても相対的な位置関係は変わらない。よって、回転ステージ3が回転すると、反応容器RC1〜RC8も回転、すなわち公転することとなる。
【0030】
回転ステージ3の外側の台座1上には、複数の光照射機構が設けられる。
図5は、光照射機構の配置を模式的に示す斜視図である。
図6は、光照射機構の配置を模式的に示す上面図である。複数の光照射機構は、回転ステージ3の外側の周上に等間隔で配置される。本実施の形態では、回転ステージ3の外側の周上に90°の等間隔で4つの光照射機構61〜64が設けられている。この例では、光照射機構61と光照射機構63とは、回転ステージ3の回転軸(すなわち、コラム41の中心軸)を挟んで対抗するように配置される。光照射機構62と光照射機構64とは、回転ステージ3の回転軸(すなわち、コラム41の中心軸)を挟んで対抗するように配置される。
【0031】
光照射機構61〜64のそれぞれには、1つ以上のLEDが設けられる。例として、光照射機構61の構成について説明する。
図7に、光照射機構61の配置を模式的に示す。光照射機構61は、1つ以上のLEDが設けられる光照射機構61の主面PSが、回転ステージ3の回転軸AX(すなわち、コラム41の中心軸AX)と対向するように配置される。このとき、LEDの光を反応容器に効率的に照射するために、主面PSの中心点CPを通る主面PSの垂線Vが、回転ステージ3の回転軸AX(すなわち、コラム41の中心軸AX)と直交するように、光照射機構61を配置することが望ましい。
【0032】
LEDは、発光面の垂線が、主面の垂線Vと平行になるように設けられることが望ましい。また、LEDは、主面PSの中心点CPを通るZ方向と平行な鉛直線VL(第3の軸とも称する)上に配置されることが望ましい。複数のLEDを設ける場合には、主面PSの鉛直線VL上に並ぶように配列されることが望ましい。これにより、複数のLEDから、接近した反応容器に同様に光を照射することができる。
【0033】
また、複数のLEDを、主面SPにおいて鉛直線VLと直交する水平線HL(第4の軸とも称する)上に並べて配列してもよい。この場合、鉛直線VLで区切られる2つの領域から照射される光を均等にするため、複数のLEDは、鉛直線VLに対して対称に配置されることが望ましい。
【0034】
また、言うまでもないが、複数のLEDは、鉛直線VLの方向及び水平線HLに方向に2次元的に、換言すればマトリックス状に配列されてもよい。
【0035】
複数のLEDの発光波長は、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、複数のLEDには、発光波長が同じ所定個数のLEDの群が2つ以上含まれていてもよい。
【0036】
以上、光照射機構61の構成について説明したが、これは光照射機構62〜64でも同様であるので、説明を省略する。
【0037】
ここで、反応容器の公転及び自転について更に説明する。本実施の形態には、反応容器は、1回公転するごとに1回自転する。これにより、各反応容器の円形断面外周上で90°ずつ離れた4点が、順番に照明ユニットに最接近するように公転及び自転することとなる。
図8〜
図11に、反応容器の初期位置(0°)及び初期位置からそれぞれ90°、180°、270°公転した場合の位置を示す。
図8〜
図11では、着目する反応容器RCの外周上に、90°ずつ離隔した点を、時計回りに白丸、白四角形、黒丸及び黒四角形の印で表示している。また、
図8〜
図11では、公転方向及び自転方向は時計回りとする。
【0038】
図8の初期位置(0°)では、反応容器RCの白丸の印が最も光照射機構61に接近する位置にあるものとする。
【0039】
図9に示すように、反応容器RCが初期位置から時計回りに90°回転した位置では、反応容器RCの黒四角形の印が最も光照射機構62に接近することとなる。
【0040】
図10に示すように、反応容器RCが初期位置から時計回りに180°回転した位置では、反応容器RCの黒丸の印が最も光照射機構63に接近することとなる。
【0041】
図11に示すように、反応容器RCが初期位置から時計回りに270°回転した位置では、反応容器RCの白四角形が最も光照射機構64に接近することとなる。
【0042】
このように、本構成では、各反応容器に対してあらゆる方向から均等に光を照射することができる。また、各反応容器は同様に公転及び自転しているので、反応容器への光の照射状態を均一化することができる。これにより、各反応容器での実験環境を平均化することが可能となる。
【0043】
引き続き、光照射装置100の構成について説明する。回転ステージ3上には、反応容器内に投入された撹拌子を回転させる複数の撹拌機構が設けられる。この例では、自転機構51〜58の近傍に撹拌機構71〜78がそれぞれ配置される。撹拌機構71〜78は、それぞれ、反応容器RC1〜RC8の中心軸と直交する方向を回転軸として、反応容器RC1〜RC8の底部の撹拌子Sを磁力によって回転させるマグネチックスターラーのドライブユニットとして構成される。
図12に、反応容器RC1での撹拌子Sの回転を示す。
図12に示すように、反応容器RC1底部の撹拌子Sは、反応容器RC1の中心軸(Z方向)と直交するY方向を回転軸として、撹拌子Sが撹拌機構71によって回転する。この撹拌子の回転については、撹拌機構72〜78でも同様である。
【0044】
非特許文献1の光照射マルチサンプル並行反応装置は、上述したように、反応容器内の撹拌子を回転させるスターラー機能を有している。しかし、このスターラー機能は、反応容器の中心軸回りに撹拌子を回転させる一般的なものであり、例えば試料に非水溶性の粉体が含まれる場合には粉体が反応容器の底部に沈殿し、試料を撹拌できなくなる。
【0045】
これに対し、本構成では、反応容器の中心軸と直交する方向を回転軸として撹拌子を回転させることができるので、試料を反応容器の長手方向(上下方向)に撹拌することができる。これにより、試料に粉体が含まれる場合でも、粉体を沈殿させることなく効率的に撹拌することができる。したがって、粉体が関与する化学反応を効率よく行わせることが可能となる。
【0046】
また、本構成では、照明光源としてLEDを用いているため、水銀灯を用いる場合と比べて、発熱を低減することができる。これにより、空冷により、反応容器での実験環境をより一定の温度に維持できるとともに、冷却に用いる機構を小型化し、もって光照射装置100を小型化することができる。
【0047】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の実施の形態では、反応容器、自転機構及び撹拌機構が8つ設けられる構成について説明したが、これは例示に過ぎない。反応容器、自転機構及び撹拌機構は、それぞれ2個以上の任意の数だけ設けてもよい。このとき、M(Mは2以上の整数)個の反応容器は、円周上において360/M°の等間隔で離隔した位置に設けられる。同様に、M個の自転機構及びM個の撹拌機構についても、円周上において360/M°の等間隔で離隔した位置に設けられる。
【0048】
上述の実施の形態では、光照射機構が4つ設けられる構成について説明したが、これは例示に過ぎない。このとき、光照射機構は、2個以上の任意の数だけ設けてもよい。このとき、N(Nは2以上の整数)個の光照射機構は、円周上において360/N°の等間隔で離隔した位置に設けられることが望ましい。
【0049】
上述の実施の形態では、撹拌機構71〜78が反応容器RC1〜RC8から見てコラム41の側に設けられる構成について説明したが、これは例示に過ぎない。攪拌子Sを反応容器の中心軸と直交する方向に回転させることができる限り、撹拌機構71〜78のそれぞれは、反応容器RC1〜RC8近傍の任意の位置に設けてもよい。
【0050】
また、自転機構51〜58は、それぞれ、反応容器RC1〜RC8の中心軸を回転軸として、反応容器RC1〜RC8の底部の撹拌子Sを磁力によって回転させるマグネチックスターラーのドライブユニットとしての機能を有していてもよい。これにより、撹拌機構71〜78とは異なる方向を軸として撹拌子Sの回転させることも可能である。
【0051】
上述の実施の形態では、撹拌子Sとして、
図11において円形断面を有する棒状の撹拌子を図示したが、これは例示に過ぎない。撹拌子Sとしては、オーバル形状又はフットボール形状の撹拌子、三角形の断面を有するトライアングル撹拌子、ディスク形状の撹拌子(例えば、クロスヘッド撹拌子)、他の断面形状を有する棒状の撹拌子(例えば、オクタゴン撹拌子)、クロス撹拌子などの各種の撹拌子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 台座
2 カバー
3 回転ステージ
4 保持機構
21 ファンユニット
22 排気口
41 コラム
51〜58 自転機構
61〜64 光照射機構
71〜78 撹拌機構
100 光照射装置
B1〜B8 ビーム
H1〜H8 保持具
RC、RC1〜RC8 反応容器
S 撹拌子
【要約】
【課題】反応容器内の試料をより効率的に撹拌しつつ光を照射できる光照射装置を提供する。
【解決手段】回転ステージ3は、中心軸である第1の軸の回りに回転可能である。保持機構4は、長手方向を中心軸の方向とする反応容器RC1〜RC8を、回転ステージ3上で第1の軸を中心とする円周上に等間隔に保持する。自転機構51〜58は、回転ステージ3上に設けられ、反応容器RC1〜RC8のそれぞれの底部を保持し、かつ、反応容器RC1〜RC8のそれぞれを反応容器RC1〜RC8の中心軸である第2の軸の回りに自転させる。光照射機構61〜64は、回転ステージ3の外側の円周上に等間隔に配置され、少なくとも1つの発光ダイオードが設けられる。撹拌機構71〜78は、反応容器RC1〜RC8の近傍に設けられ、反応容器RC1〜RC8のそれぞれに投入された撹拌子を、磁力によって第2の軸と直交する方向を軸として回転させる。
【選択図】
図2