(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方側から他方側を向いて開いた開口を有する工作物における前記開口に、シャフトが挿通された状態で回転可能に軸支されたシャフトの軸支構造を生産する、シャフトの軸支構造を生産する方法であって、
両端がそれぞれ開口した筒をなすハウジングが設けられた構造材により、前記開口の少なくとも一部を覆い、前記ハウジングの各端が前記一方側および前記他方側を向いた状態にして、前記構造材を前記工作物と一体化するステップ、
それぞれが円すいころ軸受けのカップとして機能することが可能な環状パーツである第1のカップおよび第2のカップを、これらが互いに近づくことを規制するスペーサーが介挿され、かつ、当該スペーサーから離れるにつれて内径が大になる姿勢とされた状態となるように、前記ハウジングの中にはめ入れるステップ、
頭側から先側に向けて延びる筒をなす中空の軸と、当該軸において前記頭側となる部分に、前記軸の径方向外方に張り出した状態に設けられたフランジと、前記軸において前記先側となる部分の外側面に設けられた第1のねじ山と、を有する中空ねじにおける、前記軸に、
前記第1のカップの環の中にはめ入れられることで円すいころ軸受けのコーンとして機能することが可能な環状パーツである第1のコーンを、その環の外径が前記頭側に向かうにつれて大になる姿勢で、前記先側からはめ入れるステップ、
前記第1のコーンが前記軸にはめ入れられた状態の前記中空ねじを、前記ハウジングの筒の中に前記先側から挿通し、前記第1のコーンを前記第1のカップの環の中にはめ入れることで第1の円すいころ軸受けを構成する第1の円すいころ軸受け構成ステップ、
前記第2のカップの環の中にはめ入れられることで円すいころ軸受けのコーンとして機能することが可能な環状パーツである第2のコーンを、その環の外径が前記頭側に向かうにつれて小になる姿勢で、前記軸に前記先側から挿通し、当該先側から前記第2のカップの環の中にはめ入れることで第2の円すいころ軸受けを構成するステップ、
前記中空ねじの前記第1のねじ山に第1のナットを螺合し、当該第1のナットを前記フランジ側に向けてねじ送り移動させることで、前記フランジと前記第1のナットとが、前記第1の円すいころ軸受けと、前記スペーサーと、前記第2の円すいころ軸受けとを、前記一方側および前記他方側の両側から挟みつけた状態を実現させる挟みつけステップ、
および、
前記軸の筒の中に前記シャフトを挿通し、もって当該シャフトを前記開口に挿通された状態にする挿通ステップ、
を有し、
前記挟みつけステップにおいて、前記第1のナットを前記中空ねじの前記軸上でねじ送り移動させる移動量の設定により、当該軸の軸芯出しの精度をより高くする処理を実行し、
前記挟みつけステップを、前記第1の円すいころ軸受け構成ステップよりも後で、かつ、前記挿通ステップよりも前となるタイミングで実行する、
シャフトの軸支構造を生産する方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された技術では、筒状部材の使用時に、この筒状部材が取り付けられたシャフトに、このシャフトの軸心を傾かせて偏心させる向きの力がかかる。
【0005】
本発明は、シャフトに力がかかってその軸心が傾いて偏心することを、シャフトの軸支構造単独によっておさえることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における1つの特徴によると、一方側から他方側を向いて開いた開口を有する工作物における開口に、シャフトが挿通された状態で回転可能に軸支されたシャフトの軸支構造が提供される。このシャフトの軸支構造は、工作物と一体化されて、上記開口の少なくとも一部を覆う構造材を備えている。また、シャフトの軸支構造は、構造材において上記開口を覆う部分に設けられて、一方側および他方側の端がそれぞれ開口した筒をなすハウジングを備えている。また、シャフトの軸支構造は、頭側から先側に向けて延びる筒をなす中空の軸と、この軸において頭側となる部分に、軸の径方向外方に張り出した状態に設けられたフランジと、軸において先側となる部分の外側面に設けられた第1のねじ山と、を有する中空ねじを備えている。また、シャフトの軸支構造は、ハウジングの中にはめ入れられた状態で、軸を軸支する円すいころ軸受けとして機能するパーツであり、その内環の外径が一方側に向かうにつれて大になるようにされた第1の円すいころ軸受けを備えている。また、シャフトの軸支構造は、ハウジングの中において第1の円すいころ軸受けよりも他方側となる位置にはめ入れられた状態で、軸を軸支する円すいころ軸受けとして機能するパーツであり、その内環の外径が他方側に向かうにつれて大になるようにされた第2の円すいころ軸受けを備えている。また、シャフトの軸支構造は、ハウジングの中において第1の円すいころ軸受けと第2の円すいころ軸受けとの間となる位置に介挿されて、この第2の円すいころ軸受けと第1の円すいころ軸受けとが互いに近づくことを規制するスペーサーを備えている。また、シャフトの軸支構造は、中空ねじの第1のねじ山に螺合されて、軸上をねじ送り移動することが可能とされたナットである第1のナットを備えている。フランジと第1のナットとは、この第1のナットをフランジ側に向かってねじ送り移動することで、第1の円すいころ軸受け、スペーサー、および、第2の円すいころ軸受けを、一方側および他方側の両側から挟みつけることが可能とされている。シャフトは、上記軸の筒の中に挿通され、もって上記開口に挿通された状態にされている。
【0007】
上記のシャフトの軸支構造によれば、シャフトにかかる力は、ハウジングの中に互いに逆向きとなるようにはめ入れられた第1の円すいころ軸受けおよび第2の円すいころ軸受けによって受け止められ、軸方向(スラスト方向)の分力と径方向(ラジアル方向)の分力とに分けられる。このうち、径方向(ラジアル方向)の分力は、第1の円すいころ軸受けおよび第2の円すいころ軸受けからハウジングを介して工作物に伝わり、この工作物によって支持される。ここで、第1の円すいころ軸受けおよび第2の円すいころ軸受けは、スペーサーが介挿された状態で中空ねじのフランジと第1のナットとにより挟みつけられることで、互いに所定の距離だけ離間された状態を維持する。これにより、シャフトにかかる力における径方向(ラジアル方向)の分力を互いに離間された2か所で受け止めてシャフトの軸心を傾けて偏心させる向きの力のモーメントをおさえ、もってシャフトの軸心が傾いて偏心することをおさえることができる。さらに、第1のナットを中空ねじの軸上でねじ送り移動させる移動量の設定により、この軸の軸芯出しの精度を向上させることができる。
【0008】
上記のシャフトの軸支構造においては、大径部と、第2のねじ山と、第2のナットとを備えているものが好ましい。ここで、大径部は、シャフトを、部分的に上記軸の筒の内径よりも大径とするように設けられたものである。また、第2のねじ山は、シャフトにおける、大径部とは別の部分の外側面に設けられたものである。また、第2のナットは、シャフトの第2のねじ山に螺合されて、シャフト上をねじ送り移動することが可能とされたナットである。また、大径部と第2のナットとは、この第2のナットを大径部側に向かってねじ送り移動することで、上記軸を、一方側および他方側の両側から挟みつけることが可能とされている。
【0009】
上記のシャフトの軸支構造によれば、第2のナットをねじ送り移動させてこの第2のナットと大径部とでシャフトが挿通される中空の軸を挟みつけることで、シャフトがこのシャフトにかかる軸方向(スラスト方向)の力または分力によって動くことをおさえることができる。
【0010】
上記のシャフトの軸支構造とは別の、本発明における1つの特徴によると、一方側から他方側を向いて開いた開口を有する工作物における開口に、シャフトが挿通された状態で回転可能に軸支されたシャフトの軸支構造を生産する、シャフトの軸支構造を生産する方法が提供される。このシャフトの軸支構造を生産する方法は、両端がそれぞれ開口した筒をなすハウジングが設けられた構造材により、上記開口の少なくとも一部を覆い、ハウジングの各端が一方側および他方側を向いた状態にして、構造材を工作物と一体化するステップを有している。また、シャフトの軸支構造を生産する方法は、それぞれが円すいころ軸受けのカップとして機能することが可能な環状パーツである第1のカップおよび第2のカップを、ハウジングの中にはめ入れるステップを有している。この際、第1のカップおよび第2のカップは、これらが互いに近づくことを規制するスペーサーが介挿され、かつ、このスペーサーから離れるにつれて内径が大になる姿勢とされた状態となるようにされる。また、シャフトの軸支構造を生産する方法は、中空ねじにおける軸に、第1のコーンを、その環の外径が頭側に向かうにつれて大になる姿勢で、先側からはめ入れるステップを有している。ここで、中空ねじは、頭側から先側に向けて延びる筒をなす中空の軸と、この軸において頭側となる部分に、上記軸の径方向外方に張り出した状態に設けられたフランジと、上記軸において先側となる部分の外側面に設けられた第1のねじ山と、を有する。また、第1のコーンは、第1のカップの環の中にはめ入れられることで円すいころ軸受けのコーンとして機能することが可能な環状パーツである。また、シャフトの軸支構造を生産する方法は、第1のコーンが上記軸にはめ入れられた状態の中空ねじを、ハウジングの筒の中に先側から挿通し、第1のコーンを第1のカップの環の中にはめ入れることで第1の円すいころ軸受けを構成するステップを有している。また、シャフトの軸支構造を生産する方法は、環状パーツである第2のコーンを、その環の外径が頭側に向かうにつれて小になる姿勢で、上記軸に先側から挿通し、この先側から第2のカップの環の中にはめ入れるステップを有している。ここで、第2のコーンは、第2のカップの環の中にはめ入れられることで円すいころ軸受けのコーンとして機能することが可能なものであり、第2のカップの環の中にはめ入れられることで第2の円すいころ軸受けを構成する。また、シャフトの軸支構造を生産する方法は、中空ねじの第1のねじ山に第1のナットを螺合し、この第1のナットをフランジ側に向けてねじ送り移動させることで、フランジと第1のナットとが、第1の円すいころ軸受けと、スペーサーと、第2の円すいころ軸受けとを、一方側および他方側の両側から挟みつけた状態を実現させるステップを有している。また、シャフトの軸支構造を生産する方法は、上記軸の筒の中にシャフトを挿通し、もってこのシャフトを上記開口に挿通された状態にするステップを有している。
【0011】
上記のシャフトの軸支構造を生産する方法により生産される、シャフトの軸支構造によれば、シャフトにかかる力は、ハウジングの中に互いに逆向きとなるようにはめ入れられた第1の円すいころ軸受けおよび第2の円すいころ軸受けによって受け止められ、軸方向(スラスト方向)の分力と径方向(ラジアル方向)の分力とに分けられる。このうち、径方向(ラジアル方向)の分力は、第1の円すいころ軸受けおよび第2の円すいころ軸受けからハウジングを介して工作物に伝わり、この工作物によって支持される。ここで、第1の円すいころ軸受けおよび第2の円すいころ軸受けは、スペーサーが介挿された状態で中空ねじのフランジと第1のナットとにより挟みつけられることで、互いに所定の距離だけ離間された状態を維持する。これにより、シャフトにかかる力における径方向(ラジアル方向)の分力を互いに離間された2か所で受け止めてシャフトの軸心を傾けて偏心させる向きの力のモーメントをおさえ、もってシャフトの軸心が傾いて偏心することをおさえることができる。
【0012】
上記のシャフトの軸支構造を生産する方法においては、大径部と、第2のねじ山とを備えるシャフト部材を、シャフトとして使用するものが好ましい。ここで、大径部は、シャフトを、部分的に上記軸の筒の内径よりも大径とするように設けられたものである。また、第2のねじ山は、シャフトにおける、大径部とは別の部分の外側面に設けられたものである。この場合において、シャフトの軸支構造を生産する方法は、上記軸の筒の中に挿通された状態のシャフトにおける第2のねじ山に、第1のナットとは別のナットである第2のナットを、シャフト上をねじ送り移動することが可能な状態に螺合するステップを有している。また、シャフトの軸支構造を生産する方法は、第2のナットを大径部側に向かってねじ送り移動することで、この大径部と第2のナットとで、上記軸を、一方側および他方側の両側から挟みつけるステップを有している。
【0013】
上記のシャフトの軸支構造を生産する方法によれば、第2のナットをねじ送り移動させてこの第2のナットと大径部とでシャフトが挿通される中空の軸を挟みつけることで、シャフトがこのシャフトにかかる軸方向(スラスト方向)の力または分力によって動くことをおさえることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シャフトに力がかかってその軸心が傾いて偏心することを、シャフトの軸支構造単独によっておさえることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
始めに、本発明の一実施形態にかかるシャフトの軸支構造10について、
図1に基づいて説明する。このシャフトの軸支構造10は、工作物90において一方側(図示右側)から他方側(図示左側)を向いて開けられた開口90Aに、シャフト16が挿通された状態で回転可能に軸支されたものである。
【0018】
本実施形態においては、シャフト16は、その一方側の部分(
図1では省略線によって図示を省略した部分)が回転式の分級機(図示せず)に差し込まれて、この分級機におけるロータリーシャフトとして機能するパーツである。また、工作物90は、上記分級機に他方側(
図1で見て左側)から取り付けられるパーツであり、一方側の端にある開口90Aから、他方側の端にあるフランジ90C付きの開口90Bに向かって延びる金属製の円形ダクトをなす。この開口90Bには、モーター91の回転軸91Aが差し入れられる。この回転軸91Aは、カップリング91Bを介してシャフト16における他方側の端に接続され、もってこのシャフト16をモーター91の駆動力によって回転させることを実現させる。この回転は、シャフト16から上記分級機が有する羽根車(図示せず)に伝達され、もって上記分級機を稼働させる。ここで、上記分級機はシャフト16を支持する構成を有さないため、シャフトの軸支構造10は、シャフト16の自重およびこのシャフト16にかかる荷重を、このシャフトの軸支構造10単独によって支持する。
【0019】
シャフトの軸支構造10は、金属製の円板をなす構造材10Aを備えている。この構造材10Aは、工作物90の開口90Aの全体を覆うふさぎ板であり、この開口90Aの全体を覆った状態で工作物90に一体化される。また、構造材10Aには、その円板において工作物90の開口90Aを覆う中央部分に、一方側および他方側の端がそれぞれ開口した筒をなすハウジング11が設けられている。この構成は、工作物90の円形ダクト内に空気の流れが生じているときに、この空気の流れによるシャフトの軸支構造10およびモーター91の空冷を実現させるものである。
【0020】
本実施形態においては、ハウジング11は、その筒の側壁に、この筒の外方に突出した板をなす複数のフィン11Aと、ハウジング11の筒の内部に油をさすことを可能とする油穴11Bとを備えている。ここで、各フィン11Aは、ハウジング11において空気と接触する部分の面積を増やし、もってシャフトの軸支構造10が空冷される場合にその冷却効率を向上させる。また、各フィン11Aは、構造材10Aとハウジング11との間にかけ渡された状態に配設されることで、これらの接合強度を向上させるひうちまたはほうづえとしての機能を発揮する。
【0021】
ハウジング11は、その筒の中にはめ入れられた第1の円すいころ軸受け13と第2の円すいころ軸受け14とを介して、中空ねじ12の軸12Aを回転自在に軸支する。この軸12Aは、頭側(図示右側)から先側(図示左側)に向けて延びる筒をなす中空の軸であり、その先側となる部分の外側面に第1のねじ山12Cを備えたものである。また、中空ねじ12は、その軸12Aにおいて頭側となる部分に、この軸12Aの径方向外方に張り出した状態に設けられたフランジ12Bを備えている。また、中空ねじ12は、その軸12Aの筒の内側面における片側(本実施形態では頭側)の端に、マシンキー(例えば
図1に示すマシンキー16D)を差し込むことが可能なキー溝12Dを備えている。本実施形態においては、中空ねじ12は、その頭側が上記一方側(中空ねじ12から見て上記分級機が位置される側、
図1で見て右側)を向いた状態に配設される。
【0022】
また、第1の円すいころ軸受け13は、ハウジング11における一方側(図示右側)の端部に、この一方側に向かうにつれて第1の円すいころ軸受け13の内環13Cの外径が大になるように配設されている。この内環13Cは、中空ねじ12のフランジ12Bにおける先側(図示左側)の端面が当接され、もってこのフランジ12Bに係合された状態となっている。
【0023】
第1の円すいころ軸受け13において、内環13Cは、その外側面に保持器(図示省略)を介して複数のころ13Dが取り付けられることで、第1の円すいころ軸受け13のコーンである第1のコーン13Bを構成する。この第1のコーン13Bは、円すいころ軸受けのカップとして機能することが可能な環状パーツである第1のカップ13Aの中にはめ入れられることで、第1の円すいころ軸受け13を構成する。
【0024】
また、シャフトの軸支構造10は、第1の円すいころ軸受け13における第1のカップ13Aと第1のコーン13Bとの間のすきまを一方側(図示右側)から覆い、もってこのすきまからの油の漏れ出しをおさえる輪状のパーツであるオイルシール10Dを備えている。このオイルシール10Dは、ハウジング11の筒における一方側の端に、シールキャップ10Cを介して貼り付けられている。
【0025】
また、第2の円すいころ軸受け14は、ハウジング11の中において第1の円すいころ軸受け13よりも他方側(図示左側)となる位置に、この他方側に向かうにつれて第2の円すいころ軸受け14の内環14Cの外径が大になるように配設されている。本実施形態においては、第2の円すいころ軸受け14は、ハウジング11における他方側の端部に配設されている。
【0026】
第2の円すいころ軸受け14において、内環14Cは、その外側面に保持器(図示省略)を介して複数のころ14Dが取り付けられることで、第2の円すいころ軸受け14のコーンである第2のコーン14Bを構成する。この第2のコーン14Bは、円すいころ軸受けのカップとして機能することが可能な環状パーツである第2のカップ14Aの中にはめ入れられることで、第2の円すいころ軸受け14を構成する。
【0027】
また、シャフトの軸支構造10は、第2の円すいころ軸受け14における第2のカップ14Aと第2のコーン14Bとの間のすきまを他方側(図示左側)から覆い、もってこのすきまからの油の漏れ出しをおさえる輪状のパーツであるオイルシール10Fを備えている。このオイルシール10Fは、ハウジング11の筒における他方側の端に、シールキャップ10Eを介して貼り付けられている。
【0028】
また、シャフトの軸支構造10は、ハウジング11の筒の中において第1の円すいころ軸受け13と第2の円すいころ軸受け14との間となる位置に介挿されたスペーサー10Bを備えている。このスペーサー10Bは、ハウジング11の筒の内側面に対してはめあいをなす円筒形のパーツであり、第1の円すいころ軸受け13と第2の円すいころ軸受け14とが互いに近づくことを規制する。
【0029】
また、シャフトの軸支構造10は、中空ねじ12において上記分級機とは反対側となる位置に位置される第1のねじ山12Cに螺合されて、中空ねじ12の軸12A上をねじ送り移動することが可能とされたゆるみ止めナットである第1のナット15を備えている。また、シャフトの軸支構造10は、第1のナット15と第2の円すいころ軸受け14の内環14Cとの間に介挿された環状部材であるつば付きワッシャー15Aを備えている。このつば付きワッシャー15Aは、その第1のナット15側(図示左側)の端にフランジ15Bを備えて、このフランジ15Bにより第1のナット15からの押圧力を受け止め、この押圧力を第2の円すいころ軸受け14の内環14Cに伝達する。
【0030】
第1のナット15は、フランジ12B側に向かってねじ送り移動することができる。そして、中空ねじ12のフランジ12Bと第1のナット15とは、第1の円すいころ軸受け13、スペーサー10B、および、第2の円すいころ軸受け14を、一方側および他方側の両側(
図1では左右両側)から挟みつけることができる。
【0031】
ところで、シャフトの軸支構造10において、シャフト16は、中空ねじ12の軸12Aがなす筒の中に挿通され、もって工作物90の開口90Aに挿通された状態にされている。ここで、シャフト16には、このシャフト16を部分的に中空ねじ12の軸12Aがなす筒の内径よりも大径とする大径部16Bが設けられている。また、シャフト16において大径部16Bと隣り合う部分には、中空ねじ12のキー溝12Dに差し込むことが可能なサイズのマシンキー16Dが植えられている。このマシンキー16Dは、シャフト16が中空ねじ12の軸12Aがなす筒の中に挿通された状態において、中空ねじ12のキー溝12Dに差し込まれて係合されることで、シャフト16を軸12Aの筒に固定された状態にする。
【0032】
また、シャフト16において、大径部16Bよりもシャフト16の端側(本実施形態においては上記分級機とは反対となる端側)となる部分の外側面には、第2のねじ山16Cが設けられている。この第2のねじ山16Cには、第1のナット15とは別のゆるみ止めナットである第2のナット17が螺合されている。この第2のナット17は、シャフト16の第2のねじ山16Cに螺合された状態で、シャフト16上をねじ送り移動することが可能とされている。これにより、シャフト16の大径部16Bと第2のナット17とは、この第2のナット17を大径部16B側に向かってねじ送り移動することで、中空ねじ12の軸12Aを、一方側および他方側の両側(
図1では左右両側)から挟みつけることが可能とされている。
【0033】
ついで、上記シャフトの軸支構造10を生産する方法について、
図2ないし
図12に基づいて説明する。ここで、以下においては、上記シャフトの軸支構造10の各構成と共通するパーツあるいは構成について、このパーツあるいは構成に付した符号と同じ符号を付して対応させ、その詳細な説明を省略する。
【0034】
シャフトの軸支構造10を生産するにあたっては、まず、
図2に示すように、両端がそれぞれ開口した筒をなすハウジング11が設けられた構造材10Aを、工作物90と一体化する。この際には、工作物90の開口90Aを一方側(図示右側)から他方側(図示左側)を向いて開いた状態にし、この開口90Aの一部が構造材10Aに覆われるようにする。また、ハウジング11は、その各端が一方側および他方側を向いた状態で、工作物90の開口90Aを覆う部分に位置されるようにする。なお、本実施形態においては、構造材10Aを、すみ肉熔接によって工作物90と一体化する。
【0035】
続いて、
図3に示すように、それぞれが円すいころ軸受けのカップとして機能することが可能な環状パーツである第1のカップ13Aおよび第2のカップ14Aを、これらが互いに近づくことを規制するスペーサー10Bが介挿された状態で、ハウジング11の中にはめ入れる。この際、第1のカップ13Aおよび第2のカップ14Aは、それぞれ、スペーサー10Bから離れるにつれて内径が大になる姿勢とされた状態となるように、ハウジング11の中にはめ入れられる。
【0036】
続いて、
図4に示すように、中空ねじ12の軸12Aに、第1のカップ13A(
図1参照)の環の中にはめ入れられることで円すいころ軸受けのコーンとして機能することが可能な環状パーツである第1のコーン13Bを、中空ねじ12の先側(図示左側)からはめ入れる。ここで、第1のコーン13Bは、その外径が片側に向かうにつれて大になる環をなす内環13Cの外側面に、保持器(図示省略)を介して複数のころ13Dを取り付けたものである。この第1のコーン13Bは、その環(すなわち内環13C)の外径が中空ねじ12の頭側(図示右側)に向かうにつれて大になる姿勢で中空ねじ12の軸12Aにはめ入れられる。また、第1のコーン13Bは、その環(すなわち内環13C)において頭側(図示右側)となる端面が中空ねじ12のフランジ12Bに当接し、もってこのフランジ12Bに係合される。
【0037】
続いて、
図5に示すように、第1のコーン13Bが軸12Aにはめ入れられた状態の中空ねじ12を、ハウジング11の筒の中に先側(図示左側)から挿通する。そして、第1のコーン13Bを第1のカップ13Aの環の中にはめ入れることで、第1の円すいころ軸受け13を、中空ねじ12の軸12Aを軸支する状態に構成する。
【0038】
続いて、
図6に示すように、中空ねじ12の軸12Aに、第2のカップ14Aの環の中にはめ入れられることで円すいころ軸受けのコーンとして機能することが可能な環状パーツである第2のコーン14Bを、中空ねじ12の先側(図示左側)から挿通する。ここで、第2のコーン14Bは、その外径が片側に向かうにつれて大になる環をなす内環14Cの外側面に、保持器(図示省略)を介して複数のころ14Dを取り付けたものである。この第2のコーン14Bは、その環(すなわち内環14C)の外径が中空ねじ12の頭側(図示右側)に向かうにつれて小になる姿勢で、中空ねじ12の軸12Aに挿通され、第2のカップ14Aの環の中にはめ入れられる。これにより、第2のコーン14Bと第2のカップ14Aとは、第2の円すいころ軸受け14を、中空ねじ12の軸12Aを軸支する状態に構成する。
【0039】
続いて、
図7に示すように、第1の円すいころ軸受け13における第1のカップ13Aと第1のコーン13Bとの間のすきまを、オイルシール10Dによって一方側(図示右側)から覆い、このオイルシール10Dをハウジング11の筒における一方側の端にシールキャップ10Cを介して貼り付ける。さらに、第2の円すいころ軸受け14における第2のカップ14Aと第2のコーン14Bとの間のすきまを、オイルシール10Fによって他方側(図示左側)から覆い、このオイルシール10Fをハウジング11の筒における他方側の端にシールキャップ10Eを介して貼り付ける。
【0040】
続いて、
図8に示すように、中空ねじ12の軸12Aに、つば付きワッシャー15Aおよび第1のナット15を、中空ねじ12の先側(図示左側)から挿通する。この際、つば付きワッシャー15Aは、そのフランジ15Bが中空ねじ12の先側に位置され、このフランジ15Bとは反対側の端が第2の円すいころ軸受け14の内環14Cに他方側(図示左側)からあてがわれた状態とする。また、第1のナット15は、中空ねじ12の第1のねじ山12Cに螺合されて、中空ねじ12の軸12A上をねじ送り移動することが可能な状態とする。また、第1のナット15は、その一方側(図示右側)の端面をつば付きワッシャー15Aのフランジ15Bに他方側(図示左側)から当接させ、もってつば付きワッシャー15Aを第1のナット15と第2の円すいころ軸受け14の内環14Cとの間に介挿された状態とする。
【0041】
続いて、第1のナット15を中空ねじ12のフランジ12B側(図示右側)に向けてねじ送り移動させることで、このフランジ12Bと第1のナット15とが、第1の円すいころ軸受け13と、スペーサー10Bと、第2の円すいころ軸受け14とを、一方側および他方側の両側(
図8では左右両側)から挟みつけた状態を実現させる。この際、フランジ12Bと第1のナット15とによる挟みつけの力は、この第1のナット15をねじ送り移動させる移動量の設定により調節される。これにより、中空ねじ12の軸12Aを軸支する第1の円すいころ軸受け13と第2の円すいころ軸受け14とは、それぞれのカップとコーンとのはめあいの状態が調節され、もってこれらカップおよびコーン間のがたつきの程度が低減される。すなわち、第1のナット15を中空ねじ12の軸12A上でねじ送り移動させる移動量の設定により、この軸12Aの軸芯出しの精度をより高くすることが実現される。
【0042】
続いて、
図9に示すように、大径部16Bと、大径部16Bよりも端側となる部分に設けられた第2のねじ山16Cとを備えるシャフト部材16Aを用意する。そして、このシャフト部材16Aにおいて大径部16Bと隣り合う部分にマシンキー16Dを植えて、このシャフト部材16Aをシャフト16として使用できる状態にする。
【0043】
続いて、
図10に示すように、マシンキー16Dが植えられた状態のシャフト16を、その第2のねじ山16Cが他方側(図示左側)を向いた姿勢にして、中空ねじ12の軸12Aがなす筒の中に頭側(図示右側)から挿通し、もってシャフト16を工作物90の開口90Aに挿通された状態にする。この際、シャフト16の大径部16Bは、その第2のねじ山16C側の端面が中空ねじ12のフランジ12Bに一方側(図示右側)から当接し、もってこのフランジ12Bに係合される。また、シャフト16の第2のねじ山16Cは、シャフト16の大径部16Bが中空ねじ12のフランジ12Bに係合された状態において、その一部が中空ねじ12の軸12Aがなす筒の中に位置され、残りが軸12Aの筒からはみ出した状態に位置される。また、シャフト16のマシンキー16Dは、軸12Aの筒の内側面に設けられたキー溝12Dに差し込まれて係合し、もってシャフト16を軸12Aの筒に固定された状態にする。
【0044】
続いて、
図11に示すように、軸12Aの筒の中に挿通された状態のシャフト16における第2のねじ山16Cに、第2のナット17を、シャフト16上をねじ送り移動することが可能な状態に螺合する。そして、第2のナット17をシャフト16の大径部16B側(図示右側)に向かってねじ送り移動することで、この大径部16Bと第2のナット17とで、中空ねじ12の軸12Aを、一方側および他方側の両側(
図11では左右両側)から挟みつける。
【0045】
続いて、
図12に示すように、工作物90の開口90Bにモーター91の回転軸91Aとカップリング91Bとを差し入れ、このカップリング91Bを介して回転軸91Aとシャフト16における他方側(図示左側)の端とを接続する。これにより、
図1に示すシャフトの軸支構造10は完成される。なお、回転軸91Aとシャフト16との接続にあたっては、このシャフト16を軸12Aの筒の中に挿通された状態で軸芯出しする作業を適宜行うことができる。
【0046】
上述したシャフトの軸支構造10によれば、シャフト16にかかる力は、ハウジング11の中に互いに逆向きとなるようにはめ入れられた第1の円すいころ軸受け13および第2の円すいころ軸受け14によって受け止められ、軸方向(スラスト方向)の分力と径方向(ラジアル方向)の分力とに分けられる。このうち、径方向(ラジアル方向)の分力は、第1の円すいころ軸受け13および第2の円すいころ軸受け14からハウジング11を介して工作物90に伝わり、この工作物90によって支持される。ここで、第1の円すいころ軸受け13および第2の円すいころ軸受け14は、スペーサー10Bが介挿された状態で中空ねじ12のフランジ12Bと第1のナット15とにより挟みつけられることで、互いに所定の距離だけ離間された状態を維持する。これにより、シャフト16にかかる力における径方向(ラジアル方向)の分力を互いに離間された2か所で受け止めてシャフト16の軸心を傾けて偏心させる向きの力のモーメントをおさえ、もってシャフト16の軸心が傾いて偏心することをおさえることができる。さらに、第1のナット15を中空ねじ12の軸12A上でねじ送り移動させる移動量の設定により、この軸12Aの軸芯出しの精度を向上させることができる。
【0047】
また、上述したシャフトの軸支構造10によれば、第2のナット17をねじ送り移動させてこの第2のナット17とシャフト16の大径部16Bとでシャフト16が挿通される中空ねじ12の軸12Aを挟みつけることで、シャフト16がこのシャフト16にかかる軸方向(スラスト方向)の力または分力によって動くことをおさえることができる。
【0048】
また、上述したシャフトの軸支構造10によれば、上記分級機はシャフト16を支持する構成を有さないため、このシャフト16をシャフトの軸支構造10と一緒に上記分級機から分離させる作業を簡単にすることができる。
【0049】
また、上述したシャフトの軸支構造10によれば、このシャフトの軸支構造10からシャフト16を分離させる際に、挟み付けを行う第1のナット15および第2のナット17が、分級機とは反対側となる一方側に位置される。これにより、第1のナット15および第2のナット17を緩めてシャフト16をシャフトの軸支構造10から分離させる作業を簡単にすることができる。
【0050】
また、上述したシャフトの軸支構造10を生産する方法によれば、シャフト16が挿通される中空ねじ12の軸12Aを、このシャフト16が挿通される前に軸芯出しすることで、回転軸91Aとシャフト16との接続にあたりシャフト16を軸芯出しする作業の手間を減らすまたは省くことができる。
【0051】
本発明は、上述した一実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、以下のような各種の形態を実施することができる。
【0052】
(1)本発明にかかるシャフトの軸支構造を生産する方法において、各作業の順番は上述したものに限定されない。すなわち、例えば中空ねじの軸に第1のコーンをはめ入れる作業を、構造材を工作物と一体化する作業の前に行うなど、各作業の順番を適宜変更することができる。
【0053】
(2)
図1に示すシャフトの軸支構造10においては、第1のナット15はつば付きワッシャー15Aを介して第2の円すいころ軸受け13の内環13Cを押圧し、中空ねじ12のフランジ12Bは第1の円すいころ軸受け13の内環13Cを直接押圧する。しかしながら、本発明にかかるシャフトの軸支構造において、押圧する部材(例えば第1のナット)と押圧される部材(例えば第1の円すいころ軸受けの内環)との間にワッシャーを介挿させるか否かは、適宜変更することができる。
【0054】
(3)本発明にかかるシャフトの軸支構造において、中空ねじに備えられるフランジは、この中空ねじの軸に設けられたねじ山に螺合されて、この軸上をねじ送り移動することが可能とされたねじ込み式のフランジであってもよい。
【0055】
(4)本発明にかかるシャフトの軸支構造において、これが設けられる工作物は、
図1に示す円形ダクトをなす工作物90に限定されず、一方側から他方側を向いて開いた開口を有する任意の工作物とすることができる。
【0056】
(5)本発明にかかるシャフトの軸支構造において、シャフトの大径部と第2のナットとで中空ねじの軸を挟みつける構成は、これを省略することができる。
【0057】
(6)本発明にかかるシャフトの軸支構造において、この工作物と一体化される構造材は、工作物の開口の全体を覆うふさぎ板をなすものに限定されず、例えば工作物の開口の一部のみを覆うように設けられる梁など、任意の構造材とすることができる。
【0058】
(7)本発明にかかるシャフトの軸支構造は、回転式の分級機におけるロータリーシャフトとして機能するシャフトを軸支するものに限定されず、任意の装置の一部をなすシャフトを軸支するものとすることができる。
【解決手段】シャフトの軸支構造10は、構造材10Aにおいて開口90Aを覆う部分に設けられたハウジング11の中にはめ入れられ、中空ねじ12の軸12Aを軸支する第1の円すいころ軸受け13および第2の円すいころ軸受け14と、これらが互いに近づくことを規制するスペーサー10Bと、中空ねじ12の第1のねじ山12Cに螺合されて、軸12A上をねじ送り移動可能とされた第1のナット15とを備える。中空ねじ12のフランジ12Bと第1のナット15とは、第1の円すいころ軸受け13、スペーサー10B、および、第2の円すいころ軸受け14を、一方側および他方側の両側から挟みつける。シャフト16は、中空ねじ12の軸12Aに挿通される。