(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムに積層される導電パターンと、この導電パターンを被覆する被覆フィルムとを備えるフレキシブルプリント配線板であって、
上記被覆フィルムが、被覆層と、この被覆層の導電パターン側の面に積層される接着剤層とを有し、
少なくとも上記被覆層に複数の切込みが形成されており、
上記被覆層が合成樹脂を主成分とし、
上記切込みが直線状であり、気泡が内面側まで至ると開いてこの気泡を外側に排出するよう上記切込みによって画定される一対の切込み面同士が少なくとも部分的に当接し、かつ上記一対の切込み面同士の平均最大間隔が100μm以下で、上記複数の切込みの平均長さが1mm以上100mm以下であり、
上記複数の切込みが並列に配設され、この切込みの並列方向の間隔が0.1mm以上10m以下であり、
上記切込みが、上記被覆フィルムを厚さ方向に貫通して上記導電パターンに至っており、
上記導電パターンがベタパターンを有し、上記切込みが少なくともベタパターン領域に形成されており、
上記複数の切込みが、格子状に、又は長手方向に間隔を開けて直線状に配設されており、
上記接着剤層が、ポリエチレンテレフタレート芯又は不織布の芯を含むフレキシブルプリント配線板。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本発明の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムに積層される導電パターンと、この導電パターンを被覆する被覆フィルムとを備えるフレキシブルプリント配線板であって、上記被覆フィルムが、被覆層と、この被覆層の導電パターン側の面に積層される接着剤層とを有し、少なくとも上記被覆層に1又は複数の切込みが形成されている。
【0011】
当該フレキシブルプリント配線板は、導電パターンを被覆する被覆フィルムが被覆層及び接着剤層を有し、上記被覆層に1又は複数の切込みが形成されているので、接着剤層等に含まれる水分の気化や、この接着剤層等からのアウトガスに起因する気泡を減少することができる。つまり、当該フレキシブルプリント配線板のように被覆フィルムが被覆層及び接着剤層を有する場合、接着剤層等から発生した気泡は被覆層で遮断され、内部に残存し易い。この点に関し、当該フレキシブルプリント配線板は、上記被覆層が1又は複数の切込みを有するので、被覆層の内面側まで透過した気泡をこの切込みから外部に排出することができる。また、例えば上記被覆層が1又は複数の孔を有する場合、この孔を介して外部から水分等が浸入し易いが、当該フレキシブルプリント配線板は、切込みによって気泡を排出するものであるため、外部から水分等が浸入し難い。
【0012】
上記複数の切込みが並列に配設されているとよく、この切込みの並列方向の間隔としては、0.1mm以上10m以下が好ましい。このように、上記複数の切込みが並列に配設され、この切込みの並列方向の間隔が上記範囲内であることによって、強度を維持しつつ、接着剤層等に含まれる水分の気化や、この接着剤層等からのアウトガスに起因する気泡の排出機能を向上することができる。
【0013】
上記複数の切込みが格子状に配設されているとよい。このように、上記複数の切込みが格子状に配設されていることによって、強度を維持しつつ、接着剤層等に含まれる水分の気化や、この接着剤層等からのアウトガスに起因する気泡の排出機能を向上することができる。
【0014】
上記複数の切込みが長手方向に間隔を開けて直線状に配設されているとよい。このように、上記複数の切込みが長手方向に間隔を開けて直線状に配設されていることによって、強度を維持しつつ、接着剤層等に含まれる水分の気化や、この接着剤層等からのアウトガスに起因する気泡の排出機能を向上することができる。
【0015】
上記導電パターンがベタパターンを有し、上記切込みが少なくともベタパターン領域に形成されているとよい。このように、被覆フィルムをベタパターンに被覆させることによって被覆フィルムと導電パターンとの密着力を向上し易い。また、ベタパターンは表面積が比較的大きいため、このベタパターン領域では気泡が外部に逃げにくい場合がある。これに対し、上記切込みがこのベタパターン領域に形成されることによって、接着剤層等に含まれる水分の気化や、この接着剤層等からのアウトガスに起因する気泡を効果的に排出することができる。
【0016】
なお、本発明において「ベタパターン」とは、導電パターンにおける最小回路幅の2倍以上の幅を有する領域をいい、好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上の幅を有する領域をいう。このベタパターンとしては、例えばグランドパターンやシールドパターン等が挙げられる。
【0017】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を説明する。
【0018】
[第一実施形態]
<フレキシブルプリント配線板>
図1のフレキシブルプリント配線板1は、絶縁性を有するベースフィルム2と、ベースフィルム2の外面に積層される導電パターン3と、導電パターン3の外面側を被覆する被覆フィルム4とを備える。また、被覆フィルム4は、被覆層5と、被覆層5の導電パターン3側の面に積層される接着剤層6とを有する。当該フレキシブルプリント配線板1は、導電パターン3の外面に接着剤層6が直接積層され、接着剤層6の外面に被覆層5が直接積層されている。被覆層5は、当該フレキシブルプリント配線板1の最外層を構成している。また、被覆層5には、複数の切込み7が形成されている。複数の切込み7は、被覆層5を厚さ方向に貫通している。なお、「外面」とは、ベースフィルム2側と反対側の面をいい、「内面」とは、その逆の面をいう。
【0019】
当該フレキシブルプリント配線板1は、導電パターン3を被覆する被覆フィルム4が被覆層5及び接着剤層6を有し、被覆層5に複数の切込み7が形成されているので、接着剤層6に含まれる水分の気化や、接着剤層6からのアウトガスに起因する気泡を減少することができる。つまり、当該フレキシブルプリント配線板のように被覆フィルムが被覆層及び接着剤層を有する場合、接着剤層から発生した気泡は被覆層で遮断され、内部に残存し易い。この点に関し、当該フレキシブルプリント配線板1は、被覆層5が複数の切込み7を有するので、被覆層5の内面側まで透過した気泡を複数の切込み7から外部に排出することができる。また、例えば被覆層5が1又は複数の孔を有する場合、この孔を介して外部から水分等が浸入し易いが、当該フレキシブルプリント配線板1は、複数の切込み7によって気泡を排出するものであるため、外部から水分等が浸入し難い。
【0020】
(被覆フィルム)
被覆フィルム4は、被覆層5及び接着剤層6の2層構造体である。被覆フィルム4は、少なくとも導電パターン3の外面の一部を被覆しており、被覆層5の導電パターン3を被覆する領域に複数の切込み7が形成されている。なお、被覆フィルム4は、導電パターン3のみを被覆するよう導電パターン3の外面にのみ積層されてもよいが、例えばベースフィルム2の導電パターン3が積層されていない部分を含む領域に積層されてもよい。
【0021】
被覆フィルム4の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、15μmがより好ましく、20μmがさらに好ましい。一方、被覆フィルム4の平均厚さの上限としては、1mmが好ましく、500μmがより好ましく、200μmがさらに好ましい。被覆フィルム4の平均厚さが上記下限に満たないと、当該フレキシブルプリント配線板1の強度や絶縁性等を十分に高めることができないおそれがある。逆に、被覆フィルム4の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板1の薄型化の要請に反するおそれがある。
【0022】
(被覆層)
被覆層5は、当該フレキシブルプリント配線板1の最外層を構成することで当該フレキシブルプリント配線板1の強度を補強する保護層である。被覆層5は、絶縁性を有し、合成樹脂を主成分としている。なお、「主成分」とは、最も含有量の多い成分をいい、例えば50質量%以上含有される成分をいう。
【0023】
被覆層5の平均厚さの下限としては、3μmが好ましく、5μmがより好ましく、10μmがより好ましい。一方、被覆層5の平均厚さの上限としては、1mmが好ましく、100μmがより好ましく、25μmがさらに好ましい。被覆層5の平均厚さが上記下限に満たないと、当該フレキシブルプリント配線板1の強度や絶縁性等を十分に高めることができないおそれがある。逆に、被覆層5の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板1の薄型化の要請に反するおそれがある。
【0024】
図2に示すように、被覆層5には、複数の切込み7が並列に配設されている。具体的には、複数の切込み7は平面視で平行かつ等間隔に配設されており、長手方向と垂直方向に対向するように整列している。また、複数の切込み7は、各列において、長手方向に間隔を開けて直線状に配設されている。当該フレキシブルプリント配線板1は、複数の切込み7が長手方向に間隔を開けて直線状に配設されていることによって、強度を維持しつつ、接着剤層6に含まれる水分の気化や、接着剤層6からのアウトガスに起因する気泡の排出機能を向上することができる。
【0025】
複数の切込み7の平均長さの下限としては、1mmが好ましく、5mmがより好ましく、10mmがさらに好ましい。一方、複数の切込み7の平均長さの上限としては、100mmが好ましく、17mmがより好ましく、15mmがさらに好ましい。複数の切込み7の平均長さが上記下限に満たないと、気泡を十分に排出し難くなるおそれがある。逆に、複数の切込み7の平均長さが上記上限を超えると、複数の切込み7を介して外部から水分等が浸入するおそれがある。また、複数の切込み7の平均長さが上記上限を超えると、被覆層5及び接着剤層6の貼り合わせ時の加工性が低下するおそれがある。
【0026】
複数の切込み7の長さは等しいことが好ましい。具体的には、複数の切込み7の長さの変動係数の上限としては、30%が好ましく、20%がより好ましく、10%がさらに好ましい。複数の切込み7の長さの変動係数が上記上限を超えると、長さの短い切込み7から気泡を排出し難くなるおそれがあると共に、長さの長い切込み7を介して外部から水分等が浸入するおそれがある。なお、複数の切込み7の長さの変動係数の下限としては、特に限定されるものではなく、0%とすることができる。また、「複数の切込みの長さの変動係数」とは、任意に抽出した10本の切込み(切込みの総本数が9本以下の場合には全ての切込み)の長さの変動係数をいう。
【0027】
各切込み7によって画定される一対の切込み面同士は少なくとも部分的に当接する(つまり実質的に幅を有しない)ことが好ましい。当該フレキシブルプリント配線板1は、接着剤層6に含まれる水分の気化や、この接着剤層6からのアウトガスに起因する微小な気泡を排出できればよい。この点、当該フレキシブルプリント配線板1は、被覆層5が合成樹脂を主成分とする場合、接着剤層6に含まれる水分の気化や、この接着剤層6からのアウトガスに起因する微小な気泡が複数の切込み7の内面側まで至ると、複数の切込み7が僅かに開いてこの気泡を外側に排出することができる。そのため、各切込み7によって画定される一対の切込み面同士が、気泡が切込み7の内面側まで至っていない状態で少なくとも部分的に当接していても、気泡を十分に排出することができる。
【0028】
また、上記一対の切込み面の平均最大間隔の上限としては、100μmが好ましく、10μmがより好ましく、1μmがさらに好ましい。当該フレキシブルプリント配線板1は、接着剤層6に含まれる水分の気化や、この接着剤層6からのアウトガスに起因する気泡が複数の切込み7の内面側まで至ると、複数の切込み7が僅かに開いてこの気泡を外側に排出することができる。そのため、上記一対の切込み面の平均最大間隔が上記上限以下であっても、気泡を十分に排出することができる。これに対し、上記一対の切込み面の平均最大間隔が上記上限を超えると、複数の切込み7を介して外部から水分等が浸入するおそれがある。一方、上記一対の切込み面の平均最大間隔の下限としては、例えば10nmとすることができる。なお、「一対の切込み面の平均最大間隔」とは、任意に抽出した10本の切込み(切込みの総本数が9本以下の場合には全ての切込み)の各一対の切込み面の最大間隔を平均した値をいう。
【0029】
切込み7の並列方向の平均間隔D
1の下限としては、0.1mmが好ましく、0.5mmがより好ましく、1mmがさらに好ましい。一方、切込み7の並列方向の平均間隔D
1の上限としては、10mmが好ましく、8mmがより好ましく、7mmがさらに好ましい。切込み7の並列方向の平均間隔D
1が上記下限に満たないと、被覆層5及び接着剤層6の貼り合わせ時の加工性が低下するおそれがある。また、切込み7の並列方向の平均間隔D
1が上記下限に満たないと、被覆層5の強度が不十分となるおそれがある。逆に、切込み7の並列方向の平均間隔D
1が上記上限を超えると、気泡を十分に排出し難くなるおそれがある。
【0030】
複数の切込7の長手方向の平均間隔D
2の下限としては、0.05mmが好ましく、0.3mmがより好ましく、0.5mmがさらに好ましい。一方、複数の切込み7の長手方向の平均間隔D
2の上限としては、50mmが好ましく、8mmがより好ましく、5mmがさらに好ましい。複数の切込7の長手方向の平均間隔D
2が上記下限に満たないと、被覆層5及び接着剤層6の貼り合わせ時の加工性が低下するおそれがある。また、複数の切込7の長手方向の平均間隔D
2が上記下限に満たないと、被覆層5の強度が不十分となるおそれがある。逆に、複数の切込7の長手方向の平均間隔D
2が上記上限を超えると、気泡を十分に排出し難くなるおそれがある。
【0031】
被覆層5の主成分の合成樹脂としては、特に限定されないが、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンツイミダゾール、アラミド樹脂、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、フッ素樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂等が挙げられる。上記紫外線硬化性樹脂としては、例えばエポキシアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート、それらのメタクリレート変性品等が挙げられる。中でも、上記合成樹脂としては、耐熱性、絶縁性等に優れるポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0032】
(接着剤層)
接着剤層6は、感圧性接着剤、熱硬化性接着剤又は熱可塑性接着剤を含む。接着剤層6は、これらの接着剤によって構成されてもよく、これらの接着剤をポリエチレンテレフタレート芯や不織布の芯に含浸させた構成とされてもよい。
【0033】
接着剤層6が感圧性接着剤を含む場合、この接着剤層6は、タック性を有し、常温で粘着力を有する。接着剤層6が感圧性接着剤を含む場合、この感圧性接着剤の主成分としては、例えばアクリル樹脂、熱硬化型シリコーン樹脂等が挙げられ、中でもアクリル樹脂が好ましい。
【0034】
接着剤層6が熱硬化性接着剤を含む場合、この熱硬化性接着剤の主成分としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。中でも、耐熱性、柔軟性等に優れるエポキシ樹脂及びアクリル樹脂が好ましい。
【0035】
接着剤層6が熱可塑性接着剤を含む場合、この熱可塑性接着剤の主成分としては、例えばポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどが挙げられる。
【0036】
接着剤層6の平均厚さの下限としては、2μmが好ましく、7μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。一方、接着剤層6の平均厚さの上限としては、500μmが好ましく、200μmがより好ましく、50μmがさらに好ましい。接着剤層6の平均厚さが上記下限に満たないと、被覆層5及び導電パターン3との接着力が不十分となるおそれがある。逆に、接着剤層6の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板1の薄型化の要請に反するおそれがある。
【0037】
(ベースフィルム)
ベースフィルム2は、可撓性及び絶縁性を有するシート状部材で構成されている。ベースフィルム2としては、具体的には樹脂フィルムを採用可能である。この樹脂フィルムの材料としては、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー、フッ素樹脂等が好適に用いられる。
【0038】
ベースフィルム2の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、ベースフィルム2の平均厚さの上限としては、150μmが好ましく、50μmがより好ましい。ベースフィルム2の平均厚さが上記下限に満たないと、ベースフィルム2の強度が不十分となるおそれがある。逆に、ベースフィルム2の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板1の可撓性が低下するおそれがあると共に、当該フレキシブルプリント配線板1の薄型化の要請に反するおそれがある。
【0039】
(導電パターン)
導電パターン3は、ベースフィルム2に積層された金属層をエッチングすることによって所望の平面形状(パターン)に形成されている。導電パターン3は、導電性を有する材料で形成可能であるが、一般的には例えば銅によって形成される。
【0040】
上記金属層をベースフィルム2に積層する方法としては特に限定されず、例えば金属箔を接着剤で貼り合わせる接着法、金属箔上にベースフィルム2の材料である樹脂組成物を塗布するキャスト法、スパッタリングや蒸着法でベースフィルム2上に形成した厚さ数nmの薄い導電層(シード層)の上に電解メッキで金属層を形成するスパッタ/メッキ法、金属箔を熱プレスで貼り付けるラミネート法等を用いることができる。
【0041】
導電パターン3の平均厚さの下限としては、2μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、導電パターン3の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、20μmがより好ましい。導電パターン3の平均厚さが上記下限に満たないと、導電性が不十分となるおそれがある。逆に、導電パターン3の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板1の可撓性が低下するおそれがあると共に、当該フレキシブルプリント配線板1の薄型化の要請に反するおそれがある。
【0042】
導電パターン3は、配線パターン及びベタパターンを有する。当該フレキシブルプリント配線板1では、被覆フィルム4は、少なくともベタパターンの外面に積層されており、複数の切込7がベタパターン領域(ベタパターンと平面視で重複する領域)に形成されている。ベタパターンは、比較的表面積が大きく、かつ厚さが一様に形成されている。そのため、被覆フィルム4をこのベタパターンに被覆することによって被覆フィルム4と導電パターン3との密着力を向上し易い。また、ベタパターンは表面積が比較的大きいため、このベタパターン領域では気泡が外部に逃げにくい場合がある。これに対し、当該フレキシブルプリント配線板1は、複数の切込み7がこのベタパターン領域に形成されることによって、接着剤層6に含まれる水分の気化や、この接着剤層6からのアウトガスに起因する気泡を効果的に排出することができる。なお、上述のように被覆フィルム4は、必ずしも導電パターン3の外面のみに積層される必要はなく、例えば導電パターン3が積層されていないベースフィルム2の外面にも積層されていてもよい。
【0043】
上記ベタパターンの厚さの変動係数の上限としては、10%が好ましく、5%がより好ましく、3%がさらに好ましい。上記ベタパターンの厚さの変動係数が上記上限を超えると、被覆フィルム4を積層する際に、被覆フィルム4及びベタパターン間に気泡が生じるおそれがある。一方、上記ベタパターンの厚さの変動係数は小さい方が好ましいため、この変動係数の下限としては、0%とすることができる。なお、「ベタパターンの厚さの変動係数」とは、ベタパターンの任意の10点の厚さの変動係数をいう。
【0044】
<フレキシブルプリント配線板の製造方法>
当該フレキシブルプリント配線板1の製造方法としては、ベースフィルム2及び導電パターン3を有する基材の導電パターン3の外面に接着剤層6及び被覆層5を順次積層する方法(第1方法)と、被覆層5及び接着剤層6を有する被覆フィルム4を製造し、被覆フィルム4を導電パターンの外面に積層する方法(第2方法)とが挙げられる。以下では、第1方法及び第2方法についてそれぞれ説明する。
【0045】
(第1方法)
上記第1方法は、被覆層5に複数の切込7を形成する切込み形成工程と、導電パターン3の外面に接着剤層6を積層する接着剤層積層工程と、接着剤層6の外面に上記切込み形成工程で複数の切込7が形成された被覆層5を積層する被覆層積層工程とを有する。
【0046】
(切込み形成工程)
上記切込み形成工程では、被覆層5に鋭利な刃又はレーザーによって複数の切込み7を形成する。上記切込み形成工程では、各切込7によって画定される一対の切込み面同士が少なくとも部分的に当接する(つまり、実質的に幅を有しない)ように各切込み7を形成することが好ましい。
【0047】
(接着剤層積層工程)
上記接着剤層積層工程では、例えば予め形成したフィルム状の接着剤層をラミネート法、プレス法等によって導電パターン3の外面に積層してもよく、感圧性接着剤の主成分樹脂、熱硬化性接着剤の主成分樹脂又は熱硬化性樹脂の主成分樹脂を含む接着剤層形成材料を導電パターン3の外面に塗布してもよい。この接着剤層形成材料を塗布する方法としては、印刷による方法又は塗工による方法が挙げられる。上記印刷方法としては特に限定されず、例えばスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンサー印刷等が挙げられる。また、上記塗工方法としては特に限定されず、例えばナイフコート、ダイコート、ロールコート等が挙げられる。なお、上記接着剤層積層工程では、必要に応じて上記接着剤層形成材料を乾燥及び硬化してもよく、後述の被覆層積層工程で被覆層5を積層した後に上記接着剤層形成材料を乾燥及び硬化してもよい。
【0048】
(被覆層積層工程)
上記被覆層積層工程では、上記切込み形成工程によって複数の切込み7が形成された被覆層5を接着剤層6の外面に積層する。なお、上記被覆層積層工程では、上記切り込み形成工程で形成される各切込み7が実質的に幅を有しないことによって、被覆層5の複数の切込7に接着剤層形成材料が浸入することを防止することができる。
【0049】
(第2方法)
上記第2方法は、被覆層5に複数の切込7を形成する切込み形成工程と、上記切込み形成工程で複数の切込7が形成された被覆層5の内面に接着剤層6を積層する接着剤層積層工程と、上記接着剤層積層工程によって形成された被覆フィルム4を導電パターン3の外面に積層する被覆フィルム積層工程とを有する。なお、上記切込み形成工程は、上述の第1方法の切込み形成工程と同様に行うことができるため、説明を省略する。
【0050】
(接着剤層積層工程)
上記接着剤層積層工程では、例えば予め形成したフィルム状の接着剤層をラミネート法、プレス法等によって被覆層5の内面に積層してもよく、感圧性接着剤の主成分樹脂、熱硬化性接着剤の主成分樹脂又は熱可塑性接着剤の主成分樹脂を含む接着剤層形成材料を被覆層5の内面に塗布してもよい。この接着剤層形成材料を塗布する方法としては、上述の第1方法の接着剤層積層工程と同様の方法が挙げられる。また、第2方法の接着剤層積層工程では、必要に応じて上記接着剤層形成材料を乾燥及び硬化してもよく、後述の被覆フィルム積層工程で被覆フィルム4を積層した後に上記接着剤層形成材料を乾燥及び硬化してもよい。なお、第2方法の接着剤層積層工程としては、例えば上記感圧性接着剤の主成分樹脂を含む接着剤層形成材料を離型シートの外面に塗布して乾燥させて接着剤層6を形成しておき、この接着剤層6の外面に被覆層5を積層する方法を採用することも可能である。この接着剤層積層工程では、上記切り込み形成工程で形成される各切込み7が実質的に幅を有しないことによって、被覆層5の複数の切込7に接着剤層形成材料が浸入することを防止することができる。
【0051】
(被覆フィルム積層工程)
上記被覆フィルム積層工程では、上記接着剤層積層工程で積層された接着剤層6を導電パターン3の外面に積層する。なお、上記接着剤層積層工程で接着剤層6の内面に離型シートが積層されている場合、上記被覆フィルム積層工程では、上記離型シートを剥離した上で接着剤層6を導電パターン3の外面に積層する。
【0052】
当該フレキシブルプリント配線板の製造方法は、被覆層5に複数の切込7が形成された当該フレキシブルプリント配線板1を容易かつ確実に製造することができる。
【0053】
[第二実施形態]
<フレキシブルプリント配線板>
第二実施形態におけるフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルムと、ベースフィルムの外面に積層される導電パターンと、導電パターンの外面側を被覆する被覆フィルムとを備える。また、上記被覆フィルムは、被覆層と、被覆層の導電パターン側の面に積層される接着剤層とを有する。当該フレキシブルプリント配線板は、導電パターンの外面に接着剤層が直接積層され、接着剤層の外面に被覆層が直接積層されている。また、上記被覆層には、複数の切込みが形成されている。当該フレキシブルプリント配線板は、被覆フィルムがノイズ耐性を高めるためのシールドフィルムとして構成されている以外は
図1のフレキシブルプリント配線板1と同様の構成を有する。そのため、以下では被覆フィルムについてのみ説明する。
【0054】
(被覆フィルム)
上記被覆フィルムは、被覆層及び接着剤層の2層構造体である。上記被覆フィルムの平均厚さとしては、
図1のフレキシブルプリント配線板1の被覆フィルム4と同様とすることができる。
【0055】
(被覆層)
上記被覆層は、金属を主成分としている。上記被覆層を形成する金属としては、ニッケル、銅、銀、アルミニウム、金、ステンレス鋼等が挙げられる。上記被覆層は、例えば金属箔によって構成されてもよく、金属板によって構成されてもよい。なお、上記被覆層の平均厚さとしては、
図1のフレキシブルプリント配線板1の被覆層5と同様とすることができる。
【0056】
(接着剤層)
上記接着剤層は導電性を有する。上記接着剤層としては、例えば
図1のフレキシブルプリント配線板1の接着剤層6を構成する感圧性接着剤、熱硬化性接着剤又は熱可塑性接着剤に導電性粒子を分散含有したものを用いることができる。上記導電性粒子としては、例えば電気伝導性粒子及び熱伝導性粒子の一方又は双方を用いることができる。上記伝導性粒子の主成分としては、例えば銀、白金、金、銅、ニッケル、パラジウム、半田等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記熱伝導性粒子の主成分としては、例えば窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、アルミナ(Al
2O
3)、窒化ホウ素(BN)、酸化ベリリウム(BeO)等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
また、上記接着剤層としては、
図1のフレキシブルプリント配線板1の接着剤層6を構成する感圧性接着剤、熱硬化性接着剤又は熱可塑性接着剤に金属繊維等の導電性繊維を分散含有させたものや、導電性を発現する1又は複数のバンプが厚さ方向に貫通するものを用いることもできる。なお、上記接着剤層の平均厚さとしては、
図1のフレキシブルプリント配線板1の接着剤層6と同様とすることができる。
【0058】
当該フレキシブルプリント配線板は、接着剤層に含まれる水分の気化や、この接着剤層からのアウトガスに起因する気泡を減少することができる。加えて、当該フレキシブルプリント配線板は、上記被覆フィルムがシールドフィルムとして構成されているので、電磁波ノイズに対するシールド機能を高めることができる。
【0059】
<フレキシブルプリント配線板の製造方法>
当該フレキシブルプリント配線板の製造方法としては、
図1のフレキシブルプリント配線板1と同様の製造方法を採用することが可能である。
【0060】
[第三実施形態]
<フレキシブルプリント配線板>
図3のフレキシブルプリント配線板11は、絶縁性を有するベースフィルム2と、ベースフィルム2の外面に積層される導電パターン3と、導電パターン3の外面側を被覆する被覆フィルム14とを備える。また、被覆フィルム14は、被覆層15と、被覆層15の導電パターン3側の面に積層される接着剤層6とを有する。当該フレキシブルプリント配線板11は、導電パターン3の外面に接着剤層6が直接積層され、接着剤層6の外面に被覆層15が直接積層されている。被覆層15は、当該フレキシブルプリント配線板11の最外層を構成している。また、被覆層15には、複数の切込み17が形成されている。複数の切込み17は、被覆層15を厚さ方向に貫通している。なお、当該フレキシブルプリント配線板11は、被覆層15に形成される複数の切込み17以外、
図1のフレキシブルプリント配線板1と同様に構成される。そのため、以下では複数の切込17についてのみ説明する。
【0061】
図4に示すように、複数の切込み17は格子状に配設されている。複数の切込み17は、
図4に示す四角格子状の他、例えば三角格子状、多角格子状等に形成されてもよい。また、互いに交叉する切込み17同士のなす角度は、例えば四角格子状であっても90°に限定されるものではない。さらに、互いに交叉する切込み17同士のなす角度は全て等しい必要はなく、導電パターン3の形状等に合わせて適宜調整されてもよい。但し、複数の切込み17の配設パターンとしては、接着剤層6に含まれる水分の気化や、接着剤層6からのアウトガスに起因する微小な気泡を導電パターン3の表面全面に亘って均一に排出し易い三角格子状又は四角格子状が好ましく、正三角形格子状又は正方形格子状がより好ましい。
【0062】
当該フレキシブルプリント配線板11は、複数の切込み17が格子状に配設されていることによって、強度を維持しつつ、接着剤層6に含まれる水分の気化や、接着剤層6からのアウトガスに起因する気泡の排出機能を向上することができる。
【0063】
各切込み17によって画定される一対の切込み面同士は少なくとも部分的に当接することが好ましい。また、上記一対の切込み面の平均最大間隔としては、
図1のフレキシブルプリント配線板1の一対の切込み面の平均最大間隔と同様とすることができる。
【0064】
隣接する格子点間の平均距離の下限としては、0.05mmが好ましく、0.5mmがより好ましく、1mmがさらに好ましい。一方、隣接する格子点間の平均距離の上限としては、50mmが好ましく、10mmがより好ましく、7mmがさらに好ましい。隣接する格子点間の平均距離が上記下限に満たないと、被覆層15及び接着剤層6の貼り合わせ時の加工性が低下するおそれがある。また、隣接する格子点間の平均距離が上記下限に満たないと、被覆層15の強度が不十分となるおそれがある。逆に、隣接する格子点間の平均距離が上記上限を超えると、気泡を十分に排出し難くなるおそれがある。
【0065】
また、格子の桟を構成する各切込み17は分断されていてもよい。つまり、複数の切込みが長手方向に間隔を開けて直線状に配設されることで各切込み17を形成してもよい。複数の切込みが長手方向に間隔を開けて直線状に配設される場合、これら複数の切込みの平均長さの下限としては、1mmが好ましく、5mmがより好ましく、10mmがさらに好ましい。一方、上記複数の切込みの平均長さの上限としては、100mmが好ましく、17mmがより好ましく、15mmがさらに好ましい。上記複数の切込みの平均長さが上記下限に満たないと、気泡を十分に排出し難くなるおそれがある。逆に、上記複数の切込みの平均長さが上記上限を超えると、被覆層15の強度が不十分となるおそれがある。また、複数の切込みの平均長さが上記上限を超えると、複数の切込みを介して外部から水分等が浸入するおそれがある。
【0066】
また、複数の切込みが長手方向に間隔を開けて直線状に配設される場合、これら複数の切込みの長さは等しいことが好ましい。これら複数の切込みの長さの変動係数としては、
図1のフレキシブルプリント配線板1の複数の切込み7の長さの変動係数と同様とすることができる。さらに、複数の切込みが長手方向に間隔を開けて直線状に配設される場合、これら複数の切込みの長手方向の平均間隔としては、
図1のフレキシブルプリント配線板1の複数の切込7の長手方向の平均間隔D
2と同様とすることができる。
【0067】
<フレキシブルプリント配線板の製造方法>
当該フレキシブルプリント配線板11の製造方法としては、
図1のフレキシブルプリント配線板1と同様の製造方法を採用することが可能である。
【0068】
[第四実施形態]
<フレキシブルプリント配線板>
図5のフレキシブルプリント配線板21は、絶縁性を有するベースフィルム2と、ベースフィルム2の外面に積層される導電パターン3と、導電パターン3の外面側を被覆する被覆フィルム24とを備える。また、被覆フィルム24は、被覆層25と、被覆層25の導電パターン3側の面に積層される接着剤層26とを有する。当該フレキシブルプリント配線板21は、導電パターン3の外面に接着剤層26が直接積層され、接着剤層26の外面に被覆層25が直接積層されている。被覆層25は、当該フレキシブルプリント配線板21の最外層を構成している。また、被覆層25及び接着剤層26には、複数の切込み27が形成されている。複数の切込み27は、被覆層25及び接着剤層26を厚さ方向に貫通している。つまり、複数の切込み27は、被覆フィルム24を厚さ方向に貫通している。当該フレキシブルプリント配線板21は、複数の切込み27が被覆層25及び接着剤層26を厚さ方向に貫通している以外、
図1のフレキシブルプリント配線板1と同様に構成される。
【0069】
当該フレキシブルプリント配線板21は、複数の切込み27が被覆フィルム24を厚さ方向に貫通しているので、接着剤層26に含まれる水分の気化や、接着剤層26からのアウトガスに起因する気泡の排出が接着剤層26によって遮られることを容易かつ確実に防止することができる。従って、当該フレキシブルプリント配線板21は、上記気泡を複数の切込み27から外部により確実に排出することができる。なお、接着剤層26に切込み27を形成する場合、この接着剤層26は上述の接着剤をポリエチレンテレフタレート芯や不織布の芯に含浸させて構成されることが好ましく、上述の接着剤をポリエチレンテレフタレート芯に含浸させて構成されることがより好ましい。接着剤層26がこれらの芯を含有することで、接着剤層26による気泡の排出機能をさらに向上することができる。
【0070】
<フレキシブルプリント配線板の製造方法>
図6A〜6Dを参照して、当該フレキシブルプリント配線板21の製造方法について説明する。当該フレキシブルプリント配線板の製造方法としては、被覆フィルム24を形成する被覆フィルム形成工程と、被覆フィルム24をベースフィルム2及び導電パターン3を有する基材の導電パターン3の外面に積層する被覆フィルム積層工程とを有する。
【0071】
(被覆フィルム製造工程)
図6A〜6Cを参照して、上記被覆フィルム製造工程について説明する。上記被覆フィルム製造工程は、離型シートXの外面に接着剤層26を積層する接着剤層積層工程と、接着剤層26の外面に被覆層25を積層する被覆層積層工程と、接着剤層26及び被覆層25に複数の切込み27を形成する切込み形成工程とを有する。
【0072】
(接着剤層積層工程)
上記接着剤層積層工程では、
図6Aに示すように、離型シートXの外面に接着剤形成材料を塗布する。具体的には、上記接着剤層積層工程では、離型シートXの外面に感圧性接着剤の主成分樹脂及び溶剤を含む接着剤形成材料を塗布し、乾燥することで離型シートXの外面に接着剤層26を積層する。
【0073】
(被覆層積層工程)
上記被覆層積層工程では、
図6Bに示すように、上記接着剤層積層工程で積層された接着剤層26の外面側に被覆層25を積層する。
【0074】
(切込み形成工程)
上記切込み形成工程では、
図6Cに示すように、被覆層25、接着剤層26及び離型シートXの3層構造体を厚さ方向に貫通する複数の切込み27を形成する。上記切込み形成工程では、この3層構造体に鋭利な刃又はレーザーによって複数の切込み27を形成する。上記切込み形成工程では、各切込37によって画定される一対の切込み面同士が少なくとも部分的に当接する(つまり、実質的に幅を有しない)ように各切込み27を形成することが好ましい。なお、この切込み形成工程では、必ずしも離型シートXまで貫通する複数の切込み27を形成する必要はなく、例えば複数の切込み27は離型シートXの厚さ方向の途中まで形成されていてもよい。
【0075】
(被覆フィルム積層工程)
上記被覆フィルム積層工程では、まず
図6Dに示すように、接着剤層26の内面に積層された離型シートXを剥離する。次に、上記被覆フィルム積層工程では、離型シートXを剥離することで露出した接着剤層26の内面を導電パターン3の外面に貼り合わせる。
【0076】
当該フレキシブルプリント配線板の製造方法は、被覆層25及び接着剤層26を厚さ方向に貫通する複数の切込み27が形成された当該フレキシブルプリント配線板21を容易かつ確実に製造することができる。
【0077】
[第五実施形態]
<フレキシブルプリント配線板>
図7のフレキシブルプリント配線板31は、絶縁性を有するベースフィルム2と、ベースフィルム2の外面に積層される導電パターン3と、導電パターン3の外面側を被覆する被覆フィルム32とを備える。また、被覆フィルム32は、被覆層(第1被覆層33)と、第1被覆層33の導電パターン3側の面に積層される接着剤層(第1接着剤層34)と、第1接着剤層34の導電パターン3側の面に積層される第2被覆層35と、第2被覆層35の導電パターン3側の面に積層される第2接着剤層36とを有する。第1被覆層33は、当該フレキシブルプリント配線板31の最外層を構成している。また、第1被覆層33及び第1接着剤層34には、複数の切込み37が形成されている。複数の切込み37は、第1被覆層33及び第1接着剤層34を厚さ方向に貫通している。なお、第1被覆層33及び第1接着剤層34は、
図5のフレキシブルプリント配線板21の被覆層25及び接着剤層26と同様のため、説明を省略する。
【0078】
当該フレキシブルプリント配線板31は、最外層を構成する第1被覆層33及びこの第1被覆層33の導電パターン3側の面に積層される第1接着剤層42を厚さ方向に貫通する複数の切込み37が形成されているので、第1被覆層33の導電パターン3の面側に積層される各層(第1接着剤層34、第2被覆層35及び第2接着剤層36)に含まれる水分の気化や、これら各層からのアウトガスに起因する気泡を複数の切込み37から外部に排出することができる。さらに、当該フレキシブルプリント配線板31は、被覆フィルム32が第1被覆層33に加えて第2被覆層35を有するので、被覆フィルムが1つの被覆層のみを有する場合に比べて機能を向上し又は新たな機能を加えることができる。
【0079】
(被覆フィルム)
被覆フィルム32は、第1被覆層33、第1接着剤層34、第2被覆層35及び第2接着剤層36の4層構造体である。被覆フィルム32は、少なくとも導電パターン3の外面の一部を被覆しており、第1被覆層33及び第1接着剤層34の導電パターン3を被覆する領域に複数の切込み37が形成されている。なお、被覆フィルム32は、導電パターン3のみを被覆するよう導電パターン3の外面にのみ積層されてもよいが、例えばベースフィルム2の導電パターン3が積層されていない部分を含む領域に積層されてもよい。
【0080】
被覆フィルム32の平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、30μmがより好ましく、40μmがさらに好ましい。一方、被覆フィルム32の平均厚さの上限としては、2mmが好ましく、1mmがより好ましく、400μmがさらに好ましい。被覆フィルム32の平均厚さが上記下限に満たないと、当該フレキシブルプリント配線板31の強度を十分高めることができないおそれがある。また、被覆フィルム32平均厚さが上記下限に満たないと、導電パターン3の外面側の絶縁性を十分に高めることができないおそれがある。逆に、被覆フィルム32の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板31の薄型化の要請に反するおそれがある。
【0081】
(第2被覆層)
第2被覆層35は、
図1のフレキシブルプリント配線板1の被覆層5と同様の構成を有する保護フィルムとして構成されてもよく、第二実施形態のフレキシブルプリント配線板の被覆層と同様の構成を有し、ノイズ耐性を高めるためのシールド層として構成されてもよい。また、第2被覆層35の平均厚さとしては、
図1のフレキシブルプリント配線板1の被覆層5と同様とすることができる。
【0082】
(第2接着剤層)
第2接着剤層36は、
図1のフレキシブルプリント配線板1の接着剤層6と同様に構成されてもよく、第二実施形態のフレキシブルプリント配線板の接着剤層と同様に構成されてもよい。但し、第2被覆層35が上述のシールドフィルムとして構成される場合、第2接着剤層36は、第二実施形態のフレキシブルプリント配線板の接着剤層と同様に構成されることが好ましい。
【0083】
<フレキシブルプリント配線板の製造方法>
当該フレキシブルプリント配線板31の製造方法としては、例えば導電パターン3の外面に第2接着剤層36及び第2被覆層35を順次積層し、さらに
図5のプリント配線板31の製造方法における被覆フィルム製造工程と同様の工程によって製造した第1被覆層33及び第1接着剤層34の積層体の第1接着剤層34の内面を第2被覆層35の外面に貼り合わせる方法が挙げられる。また、当該フレキシブルプリント配線板31の製造方法としては、第2接着剤層36及び第2被覆層35の積層体と、第1接着剤層34及び第1被覆層33の積層体とを貼り合わせた上で第2接着剤層36を導電パターン3の外面に積層する方法を採用することも可能である。
【0084】
[第六実施形態]
<フレキシブルプリント配線板>
図8のフレキシブルプリント配線板41は、絶縁性を有するベースフィルム2と、ベースフィルム2の外面に積層される導電パターン3と、導電パターン3の外面側を被覆する被覆フィルム42とを備える。また、被覆フィルム42は、被覆層(第1被覆層43)と、第1被覆層43の導電パターン3側の面に積層される接着剤層(第1接着剤層44)と、第1接着剤層44の導電パターン3側の面に積層される第2被覆層45と、第2被覆層45の導電パターン3側の面に積層される第2接着剤層46とを有する。第1被覆層43は、当該フレキシブルプリント配線板41の最外層を構成している。また、第1被覆層43、第1接着剤層44、第2被覆層45及び第2接着剤層46には複数の切込み47が形成されている。複数の切込み47は被覆フィルム42を厚さ方向に貫通している。なお、当該フレキシブルプリント配線板41は、複数の切込み47が被覆フィルム42を厚さ方向に貫通している以外、
図7のフレキシブルプリント配線板31と同様に構成される。
【0085】
当該フレキシブルプリント配線板41は、複数の切込み47が被覆フィルム42を厚さ方向に貫通しているので、第1被覆層43の導電パターン3の面側に積層される各層(第1接着剤層44、第2被覆層45及び第2接着剤層46)に含まれる水分の気化や、これら各層からのアウトガスに起因する気泡の排出が第1被覆層43の内面側に積層される他の層によって遮られることを容易かつ確実に防止することができる。従って、当該フレキシブルプリント配線板41は、上記気泡を複数の切込み47から外部により確実に排出することができる。さらに、当該フレキシブルプリント配線板41は、被覆フィルム42が第1被覆層43に加えて第2被覆層45を有するので、被覆フィルムが1つの被覆層のみを有する場合に比べて機能を向上し又は新たな機能を加えることができる。
【0086】
<フレキシブルプリント配線板の製造方法>
当該フレキシブルプリント配線板の製造方法としては、例えば離型シートの外面に第2接着剤層46、第2被覆層45、第1接着剤層44及び第1被覆層43をこの順で、又は第2接着剤層46及び第2被覆層45の積層体と、第1接着剤層44及び第1被覆層43の積層体を貼り合わせた上で積層する工程と、第1被覆層43、第1接着剤層44、第2被覆層45、第2接着剤層46及び離型シートの5層構造体を厚さ方向に貫通する複数の切込み47を形成する工程と、複数の切込み47の形成後に離型シートを剥離し、離型シートを剥離することで露出した第2接着剤層46の内面を導電パターン3の外面に貼り合わせる工程とを有する。
【0087】
当該フレキシブルプリント配線板の製造方法は、被覆フィルム42を厚さ方向に貫通する複数の切込み47が形成された当該フレキシブルプリント配線板41を容易かつ確実に製造することができる。
【0088】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。例えば当該フレキシブルプリント配線板は、ベースフィルムの両面側に導電パターンが積層されていてもよく、この一対の導電パターンの外面側にそれぞれ当該被覆フィルムが積層されていてもよい。
【0089】
当該フレキシブルプリント配線板は、上記被覆層に必ずしも複数の切込みが形成されている必要はなく、上記被覆層に1つの切込みが形成されていてもよい。
【0090】
また、当該フレキシブルプリント配線板は、最外層を構成する被覆層に1又は複数の切込みが形成されている限り、その他の層に切込みが形成されている必要はない。但し、当該フレキシブルプリント配線板の気泡の排出機能を高める点からは、上記被覆層に積層される他の層にも切込みが形成されていることが好ましく、被覆フィルムを厚さ方向に貫通する切込みが形成されていることがより好ましい。
【0091】
当該フレキシブルプリント配線板は、被覆フィルムの厚さ方向を貫通する切込みが形成される場合、全ての切込みが厚さ方向を貫通している必要はなく、厚さ方向を貫通する切込みと共に厚さ方向を貫通しない(つまり導電パターンまで至らない)切込みが形成されていてもよい。さらに、当該フレキシブルプリント配線板は、最外層を構成する被覆層以外の層の厚さ方向の途中まで切込みが形成されていてもよい。加えて、当該フレキシブルプリント配線板は、平面視で複数の層の別々の位置に切込が形成されていてもよい。
【0092】
上記切込みの配設パターンは特に限定されるものではなく、例えば複数の切込みがランダムに形成されていてもよく、複数の切込みが長手方向に間隔を開けて直線状に1列のみ配設されてもよい。また、複数の切込みが並列に配設される場合、例えば
図9及び
図10に示すパターンで配設されてもよい。
【0093】
図9では、複数の切込み57が平面視で平行かつ等間隔に配設されており、長手方向と垂直方向に対向するように整列している。また、1つの切込み57a及びこの切込み57aと長手方向に隣接する他の切込み57bとは長手方向と垂直方向にずれた位置に配設されている。この場合、1つの切込み57a及びこの切込み57aと長手方向に隣接する他の切込み57bの長手方向の間隔としては、例えば0mm以上10mm以下とすることができる。
【0094】
図10では、平面視で直線状に形成される複数の切込み67が千鳥状に配設されている。この場合でも、1つの切込み67a及びこの切込み67aと長手方向に隣接する他の切込み67bの長手方向の間隔としては、例えば0mm以上10mm以下とすることができる。
【0095】
さらに、当該フレキシブルプリント配線板は、複数の切込みが格子状に配設され、かつ格子の桟を構成する各切込みが分断される場合、これらの切込みが
図11に示すパターンで配設されてもよい。
図11では、平面視で直交する複数の切込み77a及び複数の切込み77bが全体として四角形格子状(詳細には正方形格子状)に配設されており、具体的には複数の切込み77a,77bが四角形格子の格子点で分断されるように配設されている。当該フレキシブルプリント配線板は、このように複数の切込み77a,77bが格子点で分断されるように配設されることによって、強度を十分に維持しつつ、導電パターンの面側に積層される他の層に含まれる水分の気化や、他の層からのアウトガスに起因する気泡の排出機能を向上することができる。
【0096】
上記切込みは、上述のようにベタパターン領域に形成されることが好ましいが、例えば配線パターン領域に形成されていてもよく、配線パターン領域外に形成されてもよい。
【0097】
上記被覆フィルムは、上述の2層構造体及び4層構造体に限られるものではなく、3層構造体であってもよく、5層以上の積層体であってもよい。また、上記被覆フィルムが複数の被覆層を有する場合、これらの被覆層の機能は特に限定されるものではなく、当該プリント配線板の最外層を構成する被覆層がシールド層であってもよい。なお、当該フレキシブルプリント配線板は、被覆フィルムが被覆層を2層有する場合、一方の被覆層が合成樹脂を主成分とし絶縁性を有する保護層で、他方の被覆層がシールド層であることが好ましい。つまり、上記被覆フィルムの構成としては、最外層を構成する第1被覆層が保護層であり、この第1被覆層の導電パターンの面側に積層される第2被覆層がシールド層である構成、又は最外層を構成する第1被覆層がシールド層であり、この第1被覆層の導電パターンの面側に積層される第2被覆層が保護層である構成が好ましい。
【0098】
当該フレキシブルプリント配線板は必ずしも上述の製造方法によって製造される必要はない。例えば当該フレキシブルプリント配線板は、導電パターンの外面に被覆フィルムを積層した後に1又は複数の切込みを形成してもよい。また、このように被覆フィルムを積層した後に1又は複数の切込みを形成する場合、この切り込みは鋭利な刃によって形成してもよいが、所望の層により確実に切込みを形成する上ではレーザーによって切込みを形成することが好ましい。