【文献】
MIN HUANG, ET AL.,Analysis of Tomlinson-Harashima Precoding in Multiuser MIMO Systems With Imperfect Channel State Information,IEEE TRANSACTIONS ON VEHICULAR TECHNOLOGY, VOL.57, NO.5,2008年 9月,pages 2856-2867
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記該無線通信システムの第k層のユーザデータに対して位相修正値を選択し、前記位相修正値に基づいて、該第k層のユーザデータのオリジナル参照信号を位相回転して、修正参照信号を得、前記修正参照信号に対して干渉除去を行い、出力参照信号を得ることは、
複数の候補位相値が含まれる候補位相セットの中から、前記第k層のユーザデータに対して前記位相修正値を選択するステップAと、
該第k層のユーザデータの参照信号を、前記位相修正値にしたがって位相回転するステップBと、
M層のユーザデータのうち、第1層から第(k−1)層までのユーザデータの参照信号による該第k層のユーザデータの参照信号への累計干渉を除去するステップCと、
前記ステップCにおける干渉除去後の、該第k層のユーザデータの前記参照信号の電力が前記所定の電力閾値を超えるか否かを判断するステップDと、
前記干渉除去後の、該第k層のユーザデータの前記参照信号の電力が前記所定の電力閾値を超えない場合、k≠Mのとき、kを(k+1)に修正して、ステップAに戻り、k=Mのとき、処理を終了し、前記干渉除去後の、該第k層のユーザデータの前記参照信号の電力が前記所定の電力閾値を超える場合、位相修正値を再選択して、ステップBに戻るステップEと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
ステップFで前記第k層のユーザデータに対して所要の位相修正値を見つけることができない場合、k≠1のとき、kを(k−1)に修正して、ステップFに戻り、k=1のとき、アルゴリズム修正を行って、ステップAに戻るステップGをさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
前記位相探索モジュールは、複数の候補位相値が含まれる候補位相セットの中から、前記第k層のユーザデータに対して前記位相修正値を選択し、前記電力判断モジュールから提供された判断結果、前記出力参照信号の信号電力が所定の電力閾値を超える場合、位相修正値を再選択する、
ことを特徴とする請求項13に記載の基地局。
前記干渉除去モジュールは、M層のユーザデータのうち、第1層から第(k−1)層までのユーザデータの参照信号による該第k層のユーザデータの参照信号への累計干渉を除去する、
ことを特徴とする請求項13または請求項14に記載の基地局。
前記位相探索モジュールは、複数の候補位相値が含まれる候補位相セットの中から、前記第k層のユーザデータに対して前記位相修正値を選択し、前記電力判断モジュールから提供された判断結果、前記出力参照信号の信号電力が所定の電力閾値を超える場合、位相修正値を再選択する、
ことを特徴とする請求項16に記載のユーザ端末。
前記干渉除去モジュールは、M層のユーザデータのうち、第1層から第(k−1)層までのユーザデータの参照信号による該第k層のユーザデータの参照信号への累計干渉を除去する、
ことを特徴とする請求項16または請求項17に記載のユーザ端末。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の目的、解決手段、およびメリットをさらに明確にするために、以下、図面を参照しながら、実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。
【0014】
本発明の実施例では、ユーザデータの参照信号に対して送信側干渉除去を行う際に、位相回転によって電力制御を実現することにより、干渉除去後の参照信号電力が適当な範囲内にあり、例えば、ある所定の電力閾値を超えないようにする無線通信システムの信号伝送方法が提供されている。一例では、前記無線通信システムは、マルチユーザ多入力多出力(MU−MIMO)システム、例えば、高次MU−MIMOシステムであってもよい。一例では、該無線通信システムは、マルチユーザ符号分割多元接続(CDMA:Code Division Multiple Access)システムであってもよいし、シングルユーザマルチデータストリームシステム、または、干渉除去(例えば、ユーザ間干渉除去やデータストリーム間干渉除去など)を必要とする他の無線アクセスネットワークであってもよい。
【0015】
図1は、本発明の実施例における信号伝送のフローの模式図である。このフローは、以下の処理を含む。
【0016】
ステップ101で、無線通信システムの第k層のユーザデータに対して位相修正値を選択する。
一例では、前記位相修正値は、該第k層のユーザデータの位相を調整・変更するためのものである。一例では、前記kの値は1〜Mである。ここで、MはK以下であり、前記Kは該無線通信システムのユーザデータの総層数である。一例では、K層のユーザデータがK個のユーザに対応し、各ユーザ毎に1層のユーザデータを送信してもよい。ここで、各層それぞれのユーザデータは、1つのデータストリームも呼ばれてもよい。指摘すべきものとして、1層のユーザデータおよび他の1層のユーザデータは、互いに独立した2つのデータストリームと見なすことができ、互いに干渉することになる。一例では、K層のユーザデータがP個(P<K)のユーザに対応してもよい。つまり、1つのユーザに複数層のユーザデータを送信する場合がある。
【0017】
一例では、各層それぞれのユーザデータは、1種類の信号、即ち、参照信号を含んでもよい。一例では、参照信号は、送信側および受信側の両方で知られている信号である。参照信号が送信側から受信側に送信されると、受信側は、受信した該参照信号を用いて、送信側と受信側との間の無線チャネルに対してチャネル推定などを行うことが可能になる。一例では、参照信号は、復調参照信号(DRMS:Demodulation Reference Signal)であってもよい。一例では、参照信号は、サウンディング参照信号(SRS:Sounding Reference Signal)であってもよい。
【0018】
一例では、各層それぞれのユーザデータは、2種類の信号、即ち、参照信号およびデータ信号を含んでもよい。一例では、データ信号は、送信側が実際に受信側に提供する信号であり、その内容が受信側にとって未知である。受信側は、チャネル推定結果を利用して、前記データ信号を正確に復元する必要がある。一例では、データ信号、参照信号などに対して信号処理を行う際に、シンボル(symbol)を基本単位とする。
【0019】
ステップ102で、前記位相修正値に基づいて、該第k層のユーザデータの参照信号を位相回転して、干渉除去時の電力制御を実現する。
一例では、参照信号を位相回転した後、前記参照信号の送信側干渉除去後の信号電力が所定の電力閾値を超えないようにすべきである。つまり、該参照信号に対して、電力制御要求を満足できる位相修正値を探索する必要がある。
【0020】
ステップ103で、前記無線チャネルを介して、位相回転された参照信号を送信する。
一例では、M層のユーザデータの場合、その中の各層のユーザデータは、いずれも上記のステップ101〜103の処理を実行する必要があり、各層のユーザデータの参照信号は、いずれも、それに対応する位相修正値がある。一例では、MがKより小さい場合、M個のユーザは、本発明の実施例の方法を用いて信号伝送を行い、つまり、参照信号に対しては、位相回転によって電力制御を行い、データ信号に対しては、モジュロ演算によって電力制御を行う。他の(K−M)個のユーザは、例えば、ゼロフォーシング(zero−forcing)などの線形コーディングによって信号を処理して伝送してもよい。本発明の実施例では、大文字のKは、ユーザデータの総層数を表すものであり、小文字のkは、上記K層のユーザデータのうちいずれか1層のユーザデータを指すものであり、両者の意味を区別する必要がある。
【0021】
図2は、本発明の実施例におけるユーザ端末(UE)が信号伝送を行うフローの模式図である。このフローは、以下の処理を含む。
【0022】
ステップ201で、UEは、上りの第k層の参照信号に対して位相修正値を選択する。
【0023】
ステップ202で、前記位相修正値に基づいて、該第k層の参照信号を位相回転することにより、前記参照信号の送信側干渉除去後の信号電力が所定の電力閾値を超えないようにする。
【0024】
ステップ203で、該UEは、位相回転された参照信号を送信する。
一例では、前記参照信号はSRSである。一例では、前記kの値は1〜Kであり、ここで、Kは該無線通信システムの上り参照信号の総層数である。これに応じて、該UEは、前記K層の参照信号を送信するための少なくともK本の送信アンテナを有する。例えば、該UEは、T本(TはK以上である)の送信アンテナを有する。一例では、該無線通信システムにおける一部の上り参照信号に対して、ステップ201〜203の処理を実行してもよい。このとき、kの値は1〜Mであり、M<Kである。
【0025】
図3は、本発明の実施例におけるUEが参照信号をプリコーディングして伝送することを実現するブロック図である。ステップ301で、位相探索モジュール306で提供された位相修正値に基づいて、オリジナル参照信号を位相回転して、修正参照信号を得る。ステップ302で、前記修正参照信号から、干渉除去モジュール304で提供されたフィードバック干渉信号を削除して、出力参照信号を得る。該出力参照信号は、ステップ303で、干渉除去モジュール304およびフィードフォワード処理モジュール307にそれぞれ提供される。一例では、前記干渉除去モジュール304は、第k層の参照信号に対して、第1層から第(k−1)層までの累計干渉をフィードバックするために、各層の出力参照信号を記憶する。
【0026】
該フィードフォワード処理モジュール307は、前記出力参照信号に対してフィードフォワード処理を行って、フィードフォワード参照信号を得る。一例では、数式1に示すように、上りチャネルHの転置に対してQR分解を行って、行列Qおよび行列Sを得ることができる。行列Qをフィードフォワード処理行列として、前記出力参照信号と乗算すると、該フィードフォワード参照信号を得ることができる。一例では、Qはユニタリー行列である。
【数1】
【0027】
前記フィードフォワード参照信号は、ステップ308で電力正規化された後、ステップ309の前記上りチャネルHを介して送信される。
【0028】
ステップ302で生成された出力参照信号に対して、電力判断モジュール305は、該出力参照信号の電力が一定の閾値を超えるか否かを判断して、判断結果を前記位相探索モジュール306に知らせる必要がある。該位相探索モジュール306は、各層それぞれの参照信号に対して1つの位相修正値を選択し、前記電力判断モジュール305で提供された判断結果に基づいて、いずれか1層の参照信号に対して1つの位相修正値を再選択する必要があるか否かを決定する。
【0029】
図4は、本発明の実施例における参照信号を位相回転してから干渉除去を行うことのベクトル模式図である。一例では、数式2によって干渉除去を行う。
【数2】
【0030】
指摘すべきものとして、数式3において、S
k,kは、数式1によって算出される行列Sの第k行第k列の要素である。一例では、数式1および数式3によって行列Sおよび行列Gを得た後、さらに数式4によって行列Bを算出する。
【0031】
ここから分かるように、オリジナル参照信号401とフィードバック干渉信号403との位相差が大きいため、位相調整を行わずに干渉除去のみを経た第2の出力信号405の電力が大きくなる。これに比べると、修正参照信号402とフィードバック干渉信号403との差、即ち、出力参照信号404は、明らかな電力拡大が現れない。
【0032】
図5は、本発明の実施例における基地局が信号伝送を行うフローの模式図である。このフローは、以下の処理を含む。
【0033】
ステップ501で、基地局は、下りの第k層のユーザデータに対して位相修正値を選択する。前記kの値は1〜Mであり、MはK以下であり、Kは該基地局から送信されるユーザデータの総層数である。
【0034】
ステップ502で、前記位相修正値に基づいて、該第k層のユーザデータの参照信号を位相回転することにより、前記参照信号の送信側干渉除去後の信号電力が所定の電力閾値を超えないようにする。
【0035】
ステップ503で、前記位相修正値を用いて、前記第k層のユーザデータのデータ信号を変調する。ここから分かるように、同一層のユーザデータに属する参照信号およびデータ信号は、プリコーディングに同一の位相修正値を用いる必要がある。
【0036】
ステップ504で、該基地局は、位相回転された参照信号および変調されたデータ信号を送信する。
一例では、前記参照信号はDMRSである。一例では、K層のユーザデータがK個のユーザに対応する。各ユーザのいずれに対しても、ステップ501〜504の処理を実行し、各ユーザ毎に1つの位相修正値を選択し、該ユーザの参照信号およびデータ信号に対して位相回転および干渉除去を行う。
【0037】
図6は、本発明の実施例における基地局がデータ信号および参照信号をプリコーディングして伝送することを実現するブロック図である。マルチユーザの環境で、プリコーディングの機能は、信号送信時に異なるUEの信号をデカップリングすることにより、各UEの受信信号における干渉が抑制または除去され、各UEの送信ビームをそのチャネルベクトルとマッチングさせることにより、各UEで受信された有効信号電力が強化されることを含んでもよい。
【0038】
ステップ601で、位相探索モジュール606で提供された位相修正値に基づいて、第k層のオリジナル参照信号を位相回転して、第k層の修正参照信号を得る。ステップ602で、前記修正参照信号から、干渉除去モジュール604で提供された第1の干渉信号を削除して、出力参照信号を得る。該出力参照信号は、ステップ603で、干渉除去モジュール604およびフィードフォワード処理モジュール607にそれぞれ提供される。フィードフォワード処理モジュール607で生成されたフィードフォワード参照信号は、ステップ608で電力正規化処理が行われてから、ステップ609の下りチャネルHを介して送信される。一例では、基地局は、合計K個の下りデータストリームを有し、T本の送信アンテナが設けられていると仮定すると、行列Hの次元がK×Tとなる。該基地局の参照信号ベクトルx
RSは、数式5によって定義されてもよい。一例では、KがTより小さい場合、ゼロ埋めによって、x
RSを、次元がT×1である列ベクトルに変更する必要がある。
【数3】
【0039】
一例では、フィードフォワード処理607および電力正規化608を経ると、送信参照信号y
RSは数式6に示す通りである。ここで、P
txは電力正規化因子である。
【数4】
【0040】
ステップ602で生成された出力参照信号に対して、電力判断モジュール605は、該出力参照信号の電力が一定の閾値を超えるか否かを判断して、判断結果を前記位相探索モジュール606に知らせる必要がある。一例では、前記位相探索モジュール606は、各層それぞれのユーザデータに対して1つの位相修正値を選択し、前記電力判断モジュール605で提供された判断結果に基づいて、いずれか1層のユーザデータに対して1つの位相修正値を再選択する必要があるか否かを決定する。一例では、第k層の出力参照信号の電力が所定の閾値を超える場合、前記位相探索モジュール606は、第k層のユーザデータに対して、これまで試していない1つの位相修正値を再選択し、ステップ601〜606の処理を再度実行する必要がある。指摘すべきものとして、第k層の出力参照信号は、数式1によって算出することができ、ここで説明を省略する。
【0041】
データ信号について、ステップ610で、位相探索モジュール606で提供された位相修正値に基づいて、第k層のオリジナルデータ信号を位相回転して、修正データ信号を得る。ステップ611で、修正データ信号から、第2の干渉除去モジュール614で提供された第2の干渉信号を削除して、出力データ信号を得る。ステップ612で、出力データ信号に対してモジュロ演算を行う。つまり、出力データ信号とモジュロベクトルとを加算して、モジュロデータ信号を得る。指摘すべきものとして、ステップ615で、モジュロベクトルに対して、前記位相探索モジュール606で提供された位相修正値に基づいて、前記オリジナルデータ信号と同様な位相回転を行った。さらに、該モジュロデータ信号は、ステップ613で、第2の干渉除去モジュール614および前記フィードフォワード処理モジュール607にそれぞれ提供される。
【0042】
一例では、数式7によって、ステップ612のモジュロデータ信号を得ることができる。
【数5】
【0043】
データ信号ベクトルx
dataは、数式8に示す通りである。これに応じて、送信データ信号y
dataは、数式9に示す通りである。
【数6】
【0044】
一例では、参照信号およびデータ信号の両方が存在する場合、電力正規化の実現は、以下の通りである。数式12によって、数式10および数式11における全ての要素の最大電力Pを決定する。ここで、y
’RS,kはy
’RSのk番目の要素であり、y
’data,kはy
’dataのk番目の要素である。
【数7】
【0045】
送信機の最大送信電力がP
maxであると仮定すると、電力正規化因子P
txは以下の通りである。
【数8】
【0046】
参照信号のみがある場合、y
’RSのみにおける全ての要素の最大電力Pを算出して、数式13によって電力正規化因子P
txを算出するだけでよい。
【0047】
ここから分かるように、ステップ612におけるモジュロ演算によって、ユーザデータのデータ信号の電力を制御し、該データ信号の干渉除去後の電力拡大の現象が現れることを回避することができる。しかし、ユーザデータの参照信号に対して、ステップ612に類似するモジュロ演算によって電力制御を行うと、参照信号の振幅情報を破壊することになり、チャネル推定における参照信号の役割に影響を及ぼす。つまり、受信側は、モジュロ演算後の参照信号を用いて、チャネル推定を有効に行うことができない。このため、本発明の実施例では、参照信号に対して干渉除去を行うとともに、ステップ601の位相回転によって電力制御の目的を達成する。つまり、干渉除去時に、ユーザデータの参照信号およびデータ信号に対して、それぞれ異なる電力制御方式を採用し、該ユーザデータの異なる種類の信号の特性に適応する。
【0048】
また、
図6から分かるように、参照信号を位相回転したが、データ信号に対しても同様な位相回転を行った。具体的には、基地局は、第k層のユーザデータの参照信号の位相修正値に基づいて、該第k層のユーザデータのデータ信号を位相回転し(ステップ610に示すように)、前記位相修正値に基づいて、予め設定されたモジュロベクトルも位相回転する(ステップ615に示すように)。その後、基地局は、位相回転されたモジュロベクトルを用いて、位相回転されたデータ信号に対してモジュロ演算を行って、変調されたデータ信号を得る。
【0049】
位相修正値を選択する際に、予め設定された候補位相セットの中から選択してもよい。
図7は、本発明の実施例における候補位相セットの模式図である。例えば、候補位相セットは、
図7の黒い点で示されたように、{0,1/2π,π,3/2π}であってもよい。また、例えば、候補位相セットは、
図7の黒い点および中空のボックスで示されたように、{0,1/4π,1/2π,3/4π,π,5/4π,3/2π,7/4π}であってもよい。一例では、選択可能な位相区間内から均一にX個の候補位相値を選択して、前記候補位相セットを構成してもよい。一例では、選択可能な位相区間は、0〜2πである。一例では、選択可能な位相区間内でランダムにY個の候補位相値を選択して候補位相セットを構成し、前記候補位相セットの中から、第k層のユーザデータの位相修正値を探索する。ここから分かるように、まず、候補位相セットを決定してから、その中から、ユーザデータに対して位相修正値を探索することにより、位相探索の複雑度を低減させることができる。
【0050】
図8は、本発明の実施例における参照信号に対して位相処理を行うフローの模式図である。このフローは、以下の処理を含む。合計M層のユーザデータがあり、各層それぞれのユーザデータが1つの参照信号を有すると仮定する。この1組の参照信号に対して、該1組の参照信号の出力電力がいずれも閾値より小さいように、1組の位相修正値(θ
1,・・・,θ
k,・・・,θ
M)を見つける必要がある。
【0051】
ステップ801で、第k層のユーザデータの参照信号に対して位相修正値を選択する。
ステップ802で、該第k層のユーザデータの参照信号を、前記位相修正値にしたがって位相回転する。一例では、該ステップ802は、ステップ601に示す通りである。
【0052】
ステップ803で、前記M層のユーザデータのうち、第1層から第(k−1)層までのユーザデータの参照信号による該第k層のユーザデータの参照信号への干渉を除去する。一例では、該ステップ803は、ステップ602および604に示す通りである。
【0053】
一例では、第1層から第(k−1)層までのユーザデータによる第k層のユーザデータへの干渉を累計干渉と呼んでもよい。
【0054】
ステップ804で、電力判断モジュール605は、干渉除去後の該第k層のユーザデータの参照信号の電力が前記所定の電力閾値を超えるか否かを判断し、干渉除去後の該第k層のユーザデータの参照信号の電力が前記所定の電力閾値を超えない場合、ステップ805を実行する。
【0055】
一例では、ステップ804における電力判断は、干渉除去後の参照信号x
RS,kのモジュラスの二乗が所定値Eより小さいか否かを判断し、即ち、数式14を満足するか否かを判断することである。
【数9】
【0056】
一例では、ステップ804における電力判断は、x
RS,kの実部および虚部の絶対値がいずれも所定値Eより小さいか否かを判断し、即ち、数式15および数式16を同時に満足するか否かを判断することである。
【数10】
【0057】
ステップ805で、kがMに等しいか否かを判断する。kがMに等しくない場合、ステップ806を実行する。kがMに等しい場合、位相処理のフローを終了する。
【0058】
ステップ806で、kを(k+1)に修正し、ステップ801に戻る。
さらに、ステップ804の判断結果、干渉除去後の該第k層のユーザデータの参照信号の電力が前記所定の電力閾値を超える場合、ステップ807を実行する。
【0059】
ステップ807で、第k層のユーザデータに対して、候補位相セット内に試していない候補位相値がまだあるか否かを判断する。第k層のユーザデータに対して、候補位相セット内に試していない候補位相値がまだある場合、ステップ808を実行する。第k層のユーザデータに対して、候補位相セット内に試していない候補位相値がない場合、ステップ809を実行する。
【0060】
ステップ808で、位相修正値を再選択し、ステップ802に戻る。
ステップ809で、kが1に等しいか否かを判断する。kが1に等しくない場合、ステップ810を実行する。kが1に等しい場合、ステップ812を実行する。
【0061】
ステップ810で、kを(k−1)に修正する。ステップ811で、位相修正値を再選択する。そして、ステップ802に戻る。一例では、ステップ810を実行した後にステップ807に戻ってもよい。ここから分かるように、ステップ810では、フォールバックメカニズムが採用され、同様に位相探索の複雑度を低減させることができる。
【0062】
ステップ812で、アルゴリズム修正を実行する。一例では、アルゴリズム修正の方法は、具体的に、M層のユーザデータ間の相互相関を算出し、相互相関が所定値を超えた1対のユーザデータに対して、そのうち1つをM層のユーザデータから削除し、削除後のユーザデータ集合に対して、ステップ801〜811の処理を再度実行することである。例えば、ユーザデータ1とユーザデータ3との相互相関、および、ユーザデータ2とユーザデータ3との相互相関の両方が所定値を超えると、ユーザデータ3を削除して、(M−1)のユーザデータ集合を得、該集合に対してステップ801〜811を再度実行する。公平性を保証するために、ユーザデータ3は、後続のタイムスロットまたは他の周波数帯域などのリソース上で伝送されてもよい。指摘すべきものとして、該アルゴリズム修正ステップは、電力制御条件を満足する1組の位相修正値が首尾よく見つかるまで、複数回実行されてもよい。
【0063】
一例では、位相修正値を全て0に設定するような方式によってアルゴリズム修正を行い、本発明の実施例で提供された参照信号の電力制御フローを終了してもよい。つまり、参照信号を位相回転しなくなる。これに応じて、ステップ308および608の電力正規化段階で、参照信号の電力に対して、ある程度の制御を行う。
【0064】
一例では、ステップ801、ステップ805〜811は、位相探索モジュール606で実行される。一例では、ステップ808および811で言及された再選択とは、該第k層のユーザデータに対して、これまで試していない候補位相値を用いることを指す。
【0065】
一例では、最大出力電力を最小化させるような方式によってアルゴリズム修正を行い、本発明の実施例で提供された参照信号の電力制御フローを終了してもよい。つまり、1組の位相修正値を選択して、この1組の位相修正値を用いる場合、最大出力電力、即ち、M層のユーザデータの参照信号のうち出力電力が最大となる層のユーザデータの参照信号の出力電力を最小化させる。これに応じて、ステップ308および608の電力正規化段階で、参照信号の電力に対して、ある程度の制御を行う。
【0066】
3層のユーザデータがあり、候補位相セットが{0,1/2π,π,3/2π}であると仮定する。まず、第1層のユーザデータの位相修正値を選択する。第1層のユーザデータの場合、他のユーザからの干渉が存在しないため、候補位相値0が電力制御要求を満足できる。したがって、1/2π、π、3/2πは、第1層のユーザデータに対して、このとき試していない候補位相値である。第2層のユーザデータの位相修正値を選択する際に、候補位相値0が電力制御要求を満足できないが、候補位相値1/2πが電力制御要求を満足できることを見出す。第3層のユーザデータの位相修正値の選択を行う際に、候補位相セット内の全ての候補位相値をトラバースしても、電力制御要求を満足できない場合、第2層のユーザデータにフォールバックして、第2層のユーザデータに対して位相修正値を再選択する必要がある。このとき、πおよび3/2πで、第2層のユーザデータの参照信号に対する位相回転を試すと、候補位相値3/2πが電力制御要求を満足できることを見出す。そうすると、第2層のユーザデータの位相修正値を3/2πに設定し、次の層(即ち、第3層のユーザデータ)に対して位相修正値を再選択する。このように、全ての層のユーザデータに対して、電力制御条件に適合する位相修正値を見つけるまで、繰り返して探索する。見つけられたこれらの位相修正値が最終的な位相修正値である。
【0067】
一例では、複数の候補位相セットを設定してもよい。第1の候補位相セットを使用して、全ての層のユーザデータに対して、全ての参照信号の電力が制御されるように、条件に適合する位相修正値を見つけることができない場合、第2の候補位相セットを使用し始めて、
図8に示すフローを実行してもよい。ここで、第2の候補位相セットが第1の候補位相セットより大きく、例えば、第1の候補位相セットの大きさは4であるが、第2の候補位相セットの大きさは8である。一例では、第1の候補位相セットは{0,1/2π,π,3/2π}であってもよく、第2の候補位相セットは{0,1/4π,1/2π,3/4π,π,5/4π,3/2π,7/4π}であってもよい。
【0068】
一例では、ユーザデータのデータ信号を、参照信号と同期に位相回転してもよい。つまり、ステップ801、808、811では、第k層のユーザデータに対して位相修正値が選択されると、
図6のステップ610〜615の処理を起動してもよい。ステップ801、808、811で選択された位相修正値が最終的な位相修正値でない可能性があるので、第k層のユーザデータのデータ信号に対して、ステップ610〜615の処理が複数回実行されることになる。
【0069】
一例では、ステップ805でkがMに等しいと判断されるまで待った後に、
図6のステップ610〜615の処理を起動して、1〜M個のデータ信号に対してプリコーディング処理を行ってもよい。つまり、まず、参照信号のプリコーディングを行って、最終的な位相修正値を探索してから、前記最終的な位相修正値を用いて、データ信号のプリコーディングを行う。この場合、位相探索モジュール606は、参照信号の位相処理が完了すると、全ての層のユーザデータに対して見つけられた、電力制御条件に適合する位相修正値を、1〜M個のデータ信号に供給して位相回転させるために、全てのM個のユーザデータに対して決定された位相修正値を記憶してもよい。
【0070】
図9は、本発明の実施例における非線形プリコーディングによって信号伝送を行うことを実現するブロック図である。一例では、非線形プリコーディングはTHP方式であってもよい。
【0071】
基地局は、オリジナル参照信号に対して非線形プリコーディング901を行うと、符号化参照信号を得る。具体的には、該非線形プリコーディング901は、参照信号に対する位相回転911などの処理を含む。オリジナルデータ信号に対して非線形プリコーディング902を行うと、符号化データ信号を得る。具体的には、該非線形プリコーディング902は、モジュロ演算912、およびデータ信号に対する位相回転922などの処理を含む。M=Kを例として、K層のユーザデータの参照信号およびデータ信号の両方は、非線形プリコーディングが行われたので、前記K層のユーザデータをN個の下りリンクポットにマッピングしてもよい(ステップ903)。前記NはK以下である。ここから分かるように、下りリンクポット数Nは、Kより小さくてもよい。つまり、非線形プリコーディングを使用することは、下りリンクポットの空間多重化率を向上させ、参照信号のオーバヘッドを低減させることができる。さらに、ユーザデータは、アンテナマッピング904を経た後、送信される。一例では、該基地局は、下り制御情報を介して、プリコーディングモードをUEに通知してもよい。これに応じて、UEは、前記K層のユーザデータを受信すると、受信されたユーザデータに対して、相応のモジュロ演算を行ってもよい。
【0072】
図10は、本発明の実施例における基地局1000の構成の模式図である。一例では、該基地局1000は、プロセッサ1001と、不揮発性機械可読記憶媒体1002と、送信手段1003と、を備える。
【0073】
プログラムモジュール1004は、該不揮発性機械可読記憶媒体1002に記憶され、該プロセッサ1001で実行される。一例では、前記プログラムモジュール1004は、該基地局1000の第k層のユーザデータに対して位相修正値を選択し、前記位相修正値に基づいて、該第k層のユーザデータの参照信号を位相回転することにより、前記参照信号の干渉除去後の信号電力が所定の電力閾値を超えないようにし、該位相修正値を用いて前記第k層のユーザデータのデータ信号を変調する。一例では、該位相修正値を用いてデータ信号を変調することは、該位相修正値に基づいて、該データ信号を位相回転することと、モジュロベクトルを位相回転することと、を含む。
【0074】
一例では、前記kの値は1〜Kであり、前記Kは該無線通信システムのユーザデータの総層数である。一例では、前記kの値は1〜Mであり、MはKより小さい。つまり、該基地局1000の全ての層のユーザデータの一部に対して位相回転を行う。
【0075】
前記送信手段1003は、位相回転された参照信号および変調されたデータ信号を送信する。一例では、前記送信手段1003はアンテナである。
【0076】
一例では、該基地局1000の処理は、
図5および
図6などの説明を参照することができ、ここで説明を省略する。
【0077】
図11は、本発明の実施例における非線形プリコーディングを行う基地局の構成の模式図である。一例では、該基地局1100は、プロセッサ1001と、不揮発性機械可読記憶媒体1002と、送信手段1003と、を備える。
【0078】
プログラムモジュール1104は、該不揮発性機械可読記憶媒体1002に記憶され、該プロセッサ1001で実行される。一例では、前記プログラムモジュール1104は、複数の候補位相値が含まれる候補位相セットの中から、前記第k層のユーザデータに対して前記位相修正値を選択するステップAと、該第k層のユーザデータの参照信号を、前記位相修正値にしたがって位相回転するステップBと、前記M層のユーザデータのうち、第1層から第(k−1)層までのユーザデータの参照信号による該第k層のユーザデータの参照信号への累計干渉を除去するステップCと、前記干渉除去後の該第k層のユーザデータの前記参照信号の電力が前記所定の電力閾値を超えるか否かを判断するステップDと、前記干渉除去後の該第k層のユーザデータの前記参照信号の電力が前記所定の電力閾値を超えない場合、k≠Mのとき、kを(k+1)に修正して、ステップAに戻り、k=Mのとき、処理を終了し、前記干渉除去後の該第k層のユーザデータの前記参照信号の電力が前記所定の電力閾値を超える場合、位相修正値を再選択して、ステップBに戻るステップEと、を実行する。
【0079】
上記のステップA〜Eによって、前記プログラムモジュール1104は、M層のユーザデータの番号順に各層のユーザデータの最終的な位相修正値を逐一探索することができる。
【0080】
一例では、前記プログラムモジュール1104は、位相探索モジュール1114と、位相回転モジュール1124と、干渉除去モジュール1134と、電力判断モジュール1144と、を含む。
【0081】
ここで、前記位相探索モジュール1114は、候補位相セットの中から、前記第k層のユーザデータに対して前記位相修正値を選択する。一例では、前記位相探索モジュール1114の処理は、ステップ306、ステップ801、およびステップ805〜811を参照することができる。
【0082】
前記位相回転モジュール1124は、該第k層のユーザデータの参照信号を、前記位相修正値にしたがって位相回転する。一例では、前記位相回転モジュール1124の処理は、ステップ301、ステップ802を参照することができる。
【0083】
前記干渉除去モジュール1134は、前記M層のユーザデータのうち、第1層から第(k−1)層までのユーザデータの参照信号による該第k層のユーザデータの参照信号への累計干渉を除去する。一例では、前記干渉除去モジュール1134の処理は、ステップ302、ステップ803を参照することができる。
【0084】
前記電力判断モジュール1144は、前記干渉除去後の該第k層のユーザデータの前記参照信号の電力が前記所定の電力閾値を超えるか否かを判断し、判断結果を前記位相探索モジュール1114に通知する。前記位相探索モジュール1114は、前記干渉除去後の該第k層のユーザデータの前記参照信号の電力が前記所定の電力閾値を超えない場合、kを(k+1)に修正して、候補位相セットの中から、第(k+1)層のユーザデータに対して前記位相修正値を選択する。一例では、前記電力判断モジュール1144の処理は、ステップ305、ステップ804を参照することができる。
【0085】
図12は、本発明の実施例におけるユーザ端末1200の構成の模式図である。一例では、該ユーザ端末1200は、プロセッサ1201と、不揮発性機械可読記憶媒体1202と、送信手段1203と、を備える。
【0086】
プログラムモジュール1204は、該不揮発性機械可読記憶媒体1202に記憶され、該プロセッサ1201で実行される。一例では、前記プログラムモジュール1204は、該ユーザ端末1200の第k層のユーザデータに対して位相修正値を選択し、前記位相修正値に基づいて、該第k層のユーザデータの参照信号を位相回転することにより、前記参照信号の干渉除去後の信号電力が所定の電力閾値を超えないようにする。一例では、前記kの値は1〜Kであり、前記Kは該ユーザ端末1200のユーザデータの総層数である。一例では、前記kの値は1〜Mであり、ここで、MはKより小さい。つまり、前記プログラムモジュール1204は、全ての層のユーザデータの一部に対して位相処理を行う。
【0087】
前記送信手段1203は、位相回転された参照信号を送信する。一例では、前記送信手段1203はアンテナである。
【0088】
一例では、該ユーザ端末1200の処理は、
図2および
図3などの説明を参照することができ、ここで説明を省略する。
【0089】
図13は、本発明の実施例における干渉除去時に電力制御を実行するユーザ端末1300の構成の模式図である。一例では、該ユーザ端末1300は、プロセッサ1201と、不揮発性機械可読記憶媒体1202と、送信手段1203と、を備える。
【0090】
プログラムモジュール1304は、該不揮発性機械可読記憶媒体1202に記憶され、該プロセッサ1201で実行される。一例では、前記プログラムモジュール1304は、複数の候補位相値が含まれる候補位相セットの中から、前記第k層のユーザデータに対して前記位相修正値を選択するステップAと、該第k層のユーザデータの参照信号を、前記位相修正値にしたがって位相回転するステップBと、前記M層のユーザデータのうち、第1層から第(k−1)層までのユーザデータの参照信号による該第k層のユーザデータの参照信号への累計干渉を除去するステップCと、前記干渉除去後の該第k層のユーザデータの前記参照信号の電力が前記所定の電力閾値を超えるか否かを判断するステップDと、前記干渉除去後の該第k層のユーザデータの前記参照信号の電力が前記所定の電力閾値を超えない場合、k≠Mのとき、kを(k+1)に修正して、ステップAに戻り、k=Mのとき、処理を終了し、前記干渉除去後の該第k層のユーザデータの前記参照信号の電力が前記所定の電力閾値を超える場合、位相修正値を再選択して、ステップBに戻るステップEと、を実行する。
【0091】
一例では、前記プログラムモジュール1304は、位相探索モジュール1314と、位相回転モジュール1324と、干渉除去モジュール1334と、電力判断モジュール1344と、を含む。
【0092】
ここで、前記位相探索モジュール1314は、前記候補位相セットの中から、前記第k層のユーザデータに対して前記位相修正値を選択する。一例では、前記位相探索モジュール1314の処理は、ステップ801、およびステップ805〜811を参照することができる。
【0093】
前記位相回転モジュール1324は、該第k層のユーザデータの参照信号を、前記位相修正値にしたがって位相回転する。一例では、前記位相回転モジュール1324の処理は、ステップ802を参照することができる。
【0094】
前記干渉除去モジュール1334は、前記M層のユーザデータのうち、第1層から第(k−1)層までのユーザデータの参照信号による該第k層のユーザデータの参照信号への累計干渉を除去する。一例では、前記干渉除去モジュール1334の処理は、ステップ803を参照することができる。
【0095】
前記電力判断モジュール1344は、前記干渉除去後の該第k層のユーザデータの前記参照信号の電力が前記所定の電力閾値を超えるか否かを判断し、判断結果を前記位相探索モジュール1314に通知する。前記位相探索モジュール1314は、前記干渉除去後の該第k層のユーザデータの前記参照信号の電力が前記所定の電力閾値を超えない場合、kを(k+1)に修正して、前記候補位相セットの中から、第(k+1)層のユーザデータに対して前記位相修正値を選択する。一例では、前記電力判断モジュール1344の処理は、ステップ804を参照することができる。
【0096】
また、本願には、
図1、
図2、
図5、
図8に示す方法をコンピュータに実行させるプログラム、および、該プログラムを記憶する不揮発性機械可読記憶媒体も開示されている。
【0097】
上記は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明の保護範囲を限定するものではない。本発明の精神と原則内で行われる種々の修正、均等置換え、改善などは全て本発明の保護範囲内に含まれるべきである。