(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大規模な溶接の作業現場では、管理者が作業者の労働を管理する必要がある。作業者の中には溶接作業を怠ける不届き者もいるが、管理者は、常にすべての作業者の作業状態を監視することはできない。実際に溶接作業を行っていた時間を確認できれば、作業者が怠けていたか否かを判断することができる。特許文献1に記載のアーク溶接システムの場合、溶接時間を計時して累計値を算出しているので、作業終了後に一日の溶接時間を確認することもできる。
【0005】
しかしながら、作業現場のあちこちに配置されている溶接電源装置を操作して、溶接時間を確認するのは大変な作業になる。また、溶接トーチを1か所に集めて、各溶接トーチの記憶媒体から溶接時間の累計値を読み出すことも可能であるが、各溶接トーチを順に溶接電源装置に接続して、溶接電源装置の表示部で確認する必要がある。
【0006】
この問題は溶接システムに限られた問題ではなく、アーク切断システムなどの熱加工システムにおいても問題となる。
【0007】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、作業員の実際の作業時間を容易に確認することができる熱加工システム、および、当該熱加工システムで用いられる熱加工用トーチを提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面によって提供される熱加工用トーチは、電源装置から電力を供給されて熱加工を行う熱加工用トーチであって、表示画面を有する表示部と、使用されていることを検出する使用検出部と、前記使用検出部によって使用されていることが検出されている時間を累積した累積使用時間を計時する累積使用時間計時部と、前記累積使用時間を前記表示部に表示させる表示制御部とを備えていることを特徴とする。この構成によると、累積使用時間が熱加工用トーチに設けられた表示部に表示される。したがって、熱加工用トーチを表示部を備えた装置に接続することなく、累積使用時間を確認することができる。これにより、作業終了後に作業員の実際の作業時間を容易に確認することができる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記熱加工用トーチは、操作ボタンを有する操作部をさらに備えており、前記表示制御部は、前記操作部からの操作入力に基づいて、前記累積使用時間を前記表示部に表示させる。この構成によると、手元の操作部の操作によって、累積使用時間を表示部に表示させて確認することができる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記操作部は、電力を供給される状態とされない状態とを切り替えるスイッチを備えており、前記使用検出部は、前記スイッチの操作に基づいて、使用されていることを検出する。この構成によると、スイッチの操作状態を使用状態とすることができる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記熱加工用トーチは、前記電源装置から電力を供給されていることを検出するセンサ部をさらに備えており、前記使用検出部は、前記センサ部による検出結果に基づいて、使用されていることを検出する。この構成によると、電源装置からの電力の供給状態を使用状態とすることができる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記熱加工用トーチは、前記電源装置による電力の供給状態を示す信号を受信する通信部をさらに備えており、前記使用検出部は、前記通信部が受信した前記信号に基づいて、使用されていることを検出する。この構成によると、電源装置による電力の供給状態を使用状態とすることができる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記累積使用時間計時部は1日の累積使用時間を計時し、前記熱加工用トーチは、前記累積使用時間を積算して、総累積使用時間を算出する積算部をさらに備えている。この構成によると、1日の累積使用時間と、累積使用時間を積算した総累積使用時間とを、計時することができる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、外部から供給される電力を、前記表示部に供給する電源部をさらに備えており、前記電源部は、電力を蓄積する蓄電装置を備えている。この構成によると、外部から電力が供給されなくなっても、蓄電装置に蓄積された電力を供給することができる。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記蓄電装置は、少なくとも、前記累積使用時間を前記表示部に表示させて確認するための時間、前記表示部に供給できる電力を蓄積することができる。この構成によると、外部から電力が供給されない状態でも、累積使用時間を表示部に表示させて確認することができる。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記蓄電装置は、大容量のキャパシタである。この構成によると、熱加工用トーチを小型軽量化することができる。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記表示制御部は、前記電源部に外部から電力が供給されていない場合には、まず、前記累積使用時間を前記表示部に表示させる。この構成によると、外部から電力が供給されていない場合には、まず、累積使用時間が表示される。したがって、すぐに、累積使用時間を確認することができる。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記使用検出部によって使用されていることが検出されている時間に基づいて、使用率を演算する使用率演算部をさらに備え、前記表示制御部は、前記使用率を前記表示部に表示させる。この構成によると、使用率を手元の表示部に表示することができる。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記熱加工用トーチは、アークによる熱で溶接を行う。
【0021】
本発明の第2の側面によって提供される熱加工システムは、本発明の第1の側面によって提供される熱加工用トーチと、前記電源装置とを備えていることを特徴とする。
【0022】
本発明の第3の側面によって提供される簡易電源装置は、本発明の第1の側面によって提供される熱加工用トーチを接続されて、前記熱加工用トーチに電力を供給する簡易電源装置であって、熱加工のための電力は供給せず、前記表示部を駆動させるための24W以下の電力を供給することを特徴とする。
【0023】
本発明の第4の側面によって提供される確認方法は、本発明の第1の側面によって提供される熱加工用トーチを、熱加工のための電力は供給せず、前記表示部を駆動させるための24W以下の電力を供給する簡易電源装置に接続する第1の工程と、前記累積使用時間を前記表示部に表示させる第2の工程と、前記表示部に表示された前記累積使用時間を確認する第3の工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、累積使用時間が熱加工用トーチに設けられた表示部に表示される。したがって、熱加工用トーチを表示部を備えた装置に接続することなく、累積使用時間を確認することができる。これにより、作業終了後に作業員の実際の作業時間を容易に確認することができる。
【0025】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、本発明を溶接トーチ(溶接システム)に適用した場合を例として、図面を参照して具体的に説明する。
【0028】
図1は、第1実施形態に係る溶接システムA1を説明するための図である。
図1(a)は、溶接システムA1の全体構成を示す概要図である。
図1(b)は、溶接システムA1の機能構成を示すブロック図である。
図1(c)は制御部36の内部構成を示す機能ブロック図である。
【0029】
図1に示すように、溶接システムA1は、溶接電源装置1、ワイヤ送給装置2、溶接トーチ3、パワーケーブル41,42、電力伝送線5、信号線8、ガスボンベ6、およびガス配管7を備えている。本実施形態においては、溶接システムA1が本発明の「熱加工システム」に相当し、溶接トーチ3が本発明の「熱加工用トーチ」に相当する。また、溶接電源装置1が本発明の「電源装置」に相当する。溶接電源装置1の一方の出力端子は、パワーケーブル41を介して、溶接トーチ3に接続されている。ワイヤ送給装置2は、ワイヤ電極を溶接トーチ3に送り出して、ワイヤ電極の先端を溶接トーチ3の先端から突出させる。溶接トーチ3の先端に配置されているコンタクトチップにおいて、パワーケーブル41とワイヤ電極とは電気的に接続されている。溶接電源装置1の他方の出力端子は、パワーケーブル42を介して、被加工物Wに接続される。溶接電源装置1は、溶接トーチ3の先端から突出するワイヤ電極の先端と、被加工物Wとの間にアークを発生させ、アークに電力を供給する。溶接システムA1は、当該アークの熱で被加工物Wの溶接を行う。
【0030】
溶接システムA1は、溶接時にシールドガスを用いる。ガスボンベ6のシールドガスは、溶接電源装置1およびワイヤ送給装置2を通るように設けられているガス配管7によって、溶接トーチ3の先端に供給される。溶接電源装置1からワイヤ送給装置2へは、送給モータなどを駆動させるための電力(例えばDC24V)が、電力伝送線5を介して供給される。また、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とは、信号線8を介して通信を行っている。なお、溶接システムA1は、溶接トーチ3に冷却水を循環させるようになっていてもよい。
【0031】
溶接電源装置1は、アーク溶接のための電力を溶接トーチ3に供給するものである。溶接電源装置1は、電力系統Pから入力される三相交流電力をアーク溶接に適した電力に変換して出力する。また、溶接電源装置1は、電力系統Pから入力される三相交流電力を、ワイヤ送給装置2の送給モータなどを駆動するための直流電力に変換して、電力伝送線5を介してワイヤ送給装置2に出力する。
【0032】
溶接電源装置1は、溶接条件などに応じて電力を出力するように制御されており、溶接条件などは、図示しない操作部の操作に応じて変更される。また、溶接電源装置1は、信号線8を介して溶接トーチ3から入力される信号に応じて、溶接条件などを変更する。
【0033】
ワイヤ送給装置2は、ワイヤ電極を溶接トーチ3に送り出すものである。ワイヤ電極は、トーチケーブル39および溶接トーチ3の内部に設けられているライナの内部を通って、溶接トーチ3の先端に導かれる。ワイヤ送給装置2は、電力伝送線5を介して溶接電源装置1から供給される電力で、送給モータなどを駆動させる。また、この電力は、ワイヤ送給装置2からトーチケーブル39内部に設けられている電力伝送線(図示なし)を介して、溶接トーチ3にも供給される。ワイヤ送給装置2は、信号線8を介して、溶接電源装置1と通信を行う。また、ワイヤ送給装置2は、トーチケーブル39内部に設けられている信号線(図示なし)を介して、溶接トーチ3と通信を行う。溶接トーチ3と溶接電源装置1とは、ワイヤ送給装置2を仲介することで、通信を行う。
【0034】
ワイヤ送給装置2と溶接トーチ3とは、トーチケーブル39によって接続されている。トーチケーブル39は、溶接トーチ3の基端に接続されたケーブルであり、ケーブル内部にパワーケーブル41、ガス配管7、ライナ、電力伝送線および信号線が配置されている。
【0035】
コネクタ21は、溶接トーチ3とワイヤ送給装置2とを接続するための接続用端子である。例えば、コネクタ21は、凹型の接続用端子であり、溶接トーチ3のトーチケーブル39の一端に備えられた凸型のトーチプラグ(図示しない)を差し込まれることで、溶接トーチ3とワイヤ送給装置2とを接続する。このコネクタ21を介して、ワイヤ送給装置2の内部のパワーケーブル41、ガス配管7、ライナ、電力伝送線5および信号線8が、それぞれ、トーチケーブル39の内部のパワーケーブル41、ガス配管7、ライナ、電力伝送線および信号線に接続される。
【0036】
溶接トーチ3は、溶接電源装置1から供給される溶接電力により、被加工物Wの溶接を行う。溶接トーチ3は、機能ブロックとして、通信部31、表示部32、操作部33、記憶部34、センサ部35、制御部36、および電源部40を備えている。
【0037】
通信部31は、ワイヤ送給装置2との間で通信を行うためのものである。通信部31は、制御部36から入力される信号を、トーチケーブル39内部の信号線を介して、ワイヤ送給装置2に送信する。また、通信部31は、トーチケーブル39内部の信号線を介してワイヤ送給装置2から入力される信号を受信して、制御部36に出力する。通信の規格としては、例えばCAN(Controller Area Network)が使用される。
【0038】
表示部32は、各種表示を行うものであり、例えば液晶表示装置であるディスプレイ321(後述)を備えている。表示部32は、制御部36によって制御されており、記憶部34に記憶されている溶接条件や計時された溶接時間などの表示を行う。
【0039】
操作部33は、複数の操作手段を備えており、作業者による各操作手段の操作を操作信号として制御部36に出力するものである。操作手段としては、後述するように、トーチスイッチ331および操作ボタン332がある。なお、操作部33には、他の操作手段が設けられていてもよい。
【0040】
記憶部34は、溶接条件などの各設定値や、溶接時間などの情報を記憶するものである。
【0041】
センサ部35は、複数のセンサを備えており、各センサの検出値を制御部36に出力する。本実施形態において、センサ部35は、後述する加速度センサ351および電流センサ353を備えている。なお、センサ部35は、その他のセンサを備えていてもよい。
【0042】
制御部36は、溶接トーチ3の制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御部36は、操作部33より入力される操作信号に応じて、所定の処理を行う。また、制御部36は、センサ部35より入力される検出値に基づいて、所定の演算を行い、演算結果を処理に用いる。具体的には、制御部36は、加速度センサ351が検出した検出値に基づいて溶接トーチ3の傾き情報を演算し、メニュー画面への切替処理に用いる。また、制御部36は、電流センサ353が検出した電流に基づいて、溶接時間の計時処理を行う。メニュー画面への切替処理や溶接時間の計時処理については後述する。また、制御部36は、通信部31による通信や、記憶部34の情報の書き込みおよび読出し、表示部32での表示を制御する。具体的な制御内容については、後述する。
【0043】
電源部40は、表示部32および制御部36などに電力を供給するものである。電源部40は、トーチケーブル39の内部に配置されている電力伝送線を介して、ワイヤ送給装置2から電力を供給され、表示部32および制御部36のそれぞれに適した電圧に変換を行って出力する。電源部40は、ワイヤ送給装置2から供給される電力を蓄積するキャパシタ、キャパシタから電力伝送線に電流が逆流するのを防ぐためのダイオード、表示部32および制御部36などに出力する電圧を調整するためのDC/DCコンバータを備えている。
【0044】
本実施形態では、ワイヤ送給装置2から電力が供給されない状態でも表示部32および制御部36などに電力を供給できるように、キャパシタを大容量のキャパシタ(電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタなど)としている。当該キャパシタは、ワイヤ送給装置2から電力が供給されている間に電力を蓄積しておき、ワイヤ送給装置2から電力が供給されない状態では、蓄積された電力を放出することで電力を供給する。当該キャパシタは、本発明の「蓄電装置」に相当する。本実施形態では、ワイヤ送給装置2から電力が供給されない状態でも、表示部32および制御部36などに電力を10分程度供給できるようにしている。例えば、24Vの電圧で0.1Aの電流を10分間供給するためには、キャパシタの容量を5F以上とする必要がある。
【0045】
なお、電源部40の構成は、上記したものに限定されない。例えば、大容量キャパシタに代えて、リチウムイオン電池などの二次電池を用いるようにしてもよい。また、電源部40とは別に、乾電池や水銀電池などの一次電池を備えて、ワイヤ送給装置2から電力が供給されない場合は、当該一次電池から電力を供給するようにしてもよい。つまり、ワイヤ送給装置2から電力が供給されない状態でも、ある程度の期間、電力を供給できる構成が備えられていればよい。
【0046】
図2は、溶接トーチ3の一例の外観を示す図である。同図(a)は正面図であり、同図(b)は平面図である。
図2に示すように、溶接トーチ3は、トーチボディ37、ハンドル38、トーチスイッチ331、操作ボタン332、ディスプレイ321、加速度センサ351、電流センサ353、およびトーチケーブル39を備えている。
【0047】
トーチボディ37は、金属製の筒状の部材であり、内部に、溶接ケーブルが挿通されたライナ、パワーケーブル41、およびガス配管7が配置されている。トーチボディ37の先端には、ノズル371が取り付けられている。トーチボディ37は、作業者が被加工物Wに対してノズル371を向けやすいように、湾曲部分を有している。
【0048】
ハンドル38は、作業者が把持するための部位であり、トーチボディ37の基端部を保持するように設けられている。作業者は、このハンドル38を把持して、溶接作業を行う。ハンドル38には、トーチスイッチ331、操作ボタン332、およびディスプレイ321が配置されている。また、ハンドル38の内部には、制御基板381が配置されている。制御基板381には、通信部31、表示部32、操作部33、記憶部34、センサ部35、および制御部36を構成する回路が搭載されている。
【0049】
トーチスイッチ331は、溶接の開始/停止操作を受け付けるための操作手段であり、ハンドル38を把持した作業者が、人差し指で押動操作しやすい位置に配置されている。トーチスイッチ331のオン操作(押下)により、操作信号が制御部36に出力され、当該操作信号が溶接電源装置1に入力されることで、溶接電源装置1は溶接電力の出力を行う。オン操作が解除されることで、溶接電源装置1は、溶接電力の出力を停止する。すなわち、トーチスイッチ331を押下している間だけ溶接が行われる。当該トーチスイッチ331が本発明の「スイッチ」に相当する。
【0050】
ディスプレイ321は、各種表示を行うものであり、ハンドル38を把持して溶接作業を行う作業者が画面を見やすいように、ハンドル38のトーチスイッチ331とは反対側に配置されている。当該ディスプレイ321が本発明の「表示装置」に相当する。
【0051】
操作ボタン332は、画面の切り替えや各種設定値を変更する操作を行うための操作手段であり、ハンドル38のディスプレイ321と同じ側の、ハンドル38の把持部分とディスプレイ321との間に配置されている。操作ボタン332は、上ボタン332a、下ボタン332b、左ボタン332c、および右ボタン332dからなる。各ボタン332a〜332dが押下されると、対応する操作信号が制御部36に出力され、制御部36は対応する処理を行う。左ボタン332cおよび右ボタン332dは、ディスプレイ321に表示される画面を切り替えるための操作手段である。上ボタン332aおよび下ボタン332bは、ディスプレイ321に表示されている設定値を変更するための操作手段である。また、各ボタン332a〜332dは、後述するメニュー画面においては、別の操作のための機能を果たす。
【0052】
各操作ボタン332の押下を検知するセンサは、制御基板381に搭載されている。また、ディスプレイ321は、同じ制御基板381上に配置されている。本実施形態においては、作業者がディスプレイ321の表示画面を見ながら各操作ボタン332の操作を行いやすいように、ディスプレイ321の表示画面が当該制御基板381に対して所定の角度を有するようになっている。なお、ディスプレイ321は、表示画面が当該基板と平行になるように配置されていてもよい。当該制御基板381には、制御部36としてのマイクロコンピュータ、記憶部34としてのメモリ、通信部31としての通信モジュール、電源部40を構成する各種電子部品も搭載されている。加速度センサ351も当該制御基板381上に搭載されている。
【0053】
加速度センサ351は、3軸の加速度センサであり、自身に設定されている互いに直交する3つの軸の各軸方向の加速度を検出する。そして、検出した加速度の検出値を、制御部36に出力する。制御部36は、これらの加速度の検出値に基づいて、溶接トーチ3の姿勢を示す傾き情報を演算する。なお、センサ部35は、加速度センサ351に代えて、ジャイロセンサを備えていてもよい。この場合、制御部36は、ジャイロセンサが検出した各軸周りの加速度から傾き情報を演算する。
【0054】
電流センサ353は、トーチボディ37の内部に配置されているパワーケーブル41(
図2においては図示していない)に流れる電流を検出する。電流センサ353は、例えば、ホール素子形の電流センサであり、パワーケーブル41に配置されている。なお、電流センサ353は限定されず、パワーケーブル41を流れる電流を検出できるものであればよい。検出された電流はデジタル信号に変換されて制御部36に入力される。制御部36は、入力される信号に基づいて、溶接電流が流れているか否かを判別する。制御部36は、入力される信号が所定の電流値(例えば5A)以上を示す場合、溶接電流が流れていると判断する。
【0055】
なお、溶接トーチ3の外観は上述したものに限定されない。例えば、トーチスイッチ331、操作ボタン332、およびディスプレイ321の配置場所や形状は限定されない。また、本実施形態においては、操作ボタン332が4つの独立したボタンである場合を示したが、1つの十字ボタンであってもよい。また、ボタンの数も限定されない。
【0056】
次に、ディスプレイ321に表示される画面の切り替えについて説明する。
【0057】
ディスプレイ321に表示される画面には、溶接条件を設定するための画面、溶接時間や使用率などを表示するための画面、および、表示のための設定画面などがある。
図3(a)に示すように、各画面には順番が設定されており、左ボタン332cまたは右ボタン332dを押下することで、ディスプレイ321に表示される画面を切り替えることができる。例えば、「溶接電流設定」画面が表示されている状態で右ボタン332dが押下されると、「送給速度設定」画面に切り替えられ、「使用率」表示画面が表示されている状態で左ボタン332cが押下されると、「溶接時間」表示画面に切り替えられる。各画面には、例えば、画面のタイトルと、記憶部34から読み出された設定値や、測定された値などの情報が表示される。記憶部34には、溶接電源装置1の記憶部に記憶されている各設定値などが、通信部31を介してあらかじめ読み出されて記憶されている。また、溶接時間や使用率は、逐次更新されながら記憶部34に記憶されている。なお、表示される各情報は、記憶部34から読み出されるのではなく、通信部31を介して溶接電源装置1の記憶部から直接読み出されるようにしてもよい。
【0058】
溶接条件を設定するための画面などでは、上ボタン332aまたは下ボタン332bを押下することで、設定値を変更することができる。例えば、「溶接電流設定」画面が表示されている状態で上ボタン332aが押下されると設定値は増加し、下ボタン332bが押下されると設定値は減少する。具体的には、制御部36が、操作部33から入力される操作信号に応じて、記憶部34に記憶されている溶接電流の設定値を変更し、変更後の設定値を表示部32に表示させる。また、制御部36は、変更後の設定値を溶接電源装置1に送信するように、通信部31に指示をする。変更後の設定値を受信した溶接電源装置1は、受信した設定値に基づいて、記憶されている設定値を更新する。これにより、溶接電源装置1に設定されている溶接電流の設定値が変更される。なお、制御部36は、通信部31から溶接電源装置1に設定値自体を送信させるのではなく、操作部33から入力される操作信号に基づいて、設定値を増加(または減少)させるための信号を送信させるようにしてもよい。
【0059】
しかし、切り替えられる画面の数が多いので、
図3(a)に示すように順に画面を切り替える場合、所望の画面を表示するまでに時間がかかる場合がある。本実施形態では、
図3(b)に示すように、メニュー画面を設けて所望の画面に到達しやすいようにしている。
【0060】
図3(b)に示すように、メニュー画面(図において左側に示す画面)には、「溶接条件設定」、「表示情報切替」などの複数の選択肢が表示されている。上ボタン332aまたは下ボタン332bを押下することでカーソルを移動させて、右ボタン332dを押下することで、所望の選択肢を選択することができる。そして、ディスプレイ321には、選択された選択肢に応じたサブメニュー画面が表示される(図において中央に示す画面)。同様にしてサブメニュー画面から選択肢を選択することで、所望の画面を表示させることができる。なお、
図3(b)は一例であって、メニュー画面などの構成は限定されない。例えば、メニュー画面で選択肢にカーソルを合わせた場合に、サブメニューがプルダウンやポップアップで表示されるようにしてもよいし、文字による選択肢に代えてアイコンを表示するようにしてもよい。また、メニュー画面を設ける場合は、メニュー画面からすべての画面に到達できるので、
図3(a)に示す画面の切り替えにおいては、よく使う画面だけを限定して設定するようにしてもよい。また、順に画面を切り替える場合でも、画面をメニュー画面から選択する場合でも、溶接トーチ3のトーチプラグがワイヤ送給装置2のコネクタ21に接続されているか否か(ワイヤ送給装置2から電力が供給されているか否か)によって、表示する画面を変更するようにしてもよい。例えば、溶接トーチ3がワイヤ送給装置2から切り離されているときには、必要とされない画面(「溶接電流設定」画面や「使用率」表示画面など)を表示しないようにしてもよい。また、溶接トーチ3がワイヤ送給装置2から切り離されているときには、まず、所定の画面(例えば「溶接時間」表示画面)が表示されるようにしてもよい。
【0061】
本実施形態において、メニュー画面は、溶接トーチ3を所定の姿勢(例えば垂直に近い状態)にして、左ボタン332cを長押ししたときに表示される。溶接トーチ3の姿勢は、加速度センサ351から入力される検出値に基づいて判断される。なお、メニュー画面の表示方法は、これに限定されない。例えば、溶接トーチ3を所定の姿勢にすることや、所定のボタン操作によって、メニュー画面を表示するようにしてもよい。
【0062】
次に、溶接時間の計時処理について説明する。
【0063】
本実施形態では、溶接トーチ3の寿命を確認するため、また、作業者の労働管理のために、溶接時間の計時を行っている。具体的には、パワーケーブル41に溶接電流が流れている時間を計時することで、溶接を行っている時間(溶接時間)を計時する。パワーケーブル41には電流センサ353が配置されている。電流センサ353(センサ部35)は、検出した電流信号を制御部36に出力する。制御部36は、電流センサ353から入力される電流信号に基づいて、溶接電流が流れているか否かを判別し、溶接電流が流れている間、内蔵するタイマで計時を行う。制御部36は、計時された溶接時間を累計して、当日の累積時間を算出する。また、各日の累積時間を積算した積算時間も算出する。
【0064】
図1(c)に示すように、制御部36は、機能ブロックとして、使用検出部361、計時部362、累積使用時間計時部363、積算部364、および、表示制御部365を備えている。
【0065】
使用検出部361は、溶接トーチ3が使用されているか否かを検出するものである。使用検出部361は、電流センサ353(センサ部35)から入力される電流信号に基づいて、溶接電流が流れているか否かを判別する。具体的には、使用検出部361は、入力される電流信号が所定の電流値(例えば5A)以上を示す場合、溶接電流が流れていると判別する。パワーケーブル41に溶接電流が流れている場合、溶接トーチ3は溶接作業に使用されているとみなすことができる。
【0066】
計時部362は、溶接トーチ3が使用されている時間(以下では、「使用時間」とする)を計時するものである。計時部362は、使用検出部361が溶接電流が流れていると判別している間(溶接トーチ3が使用されていると判別している間)、内蔵するタイマで計時を行う。
【0067】
累積使用時間計時部363は、計時部362が計時する時間を累積していくものである。溶接トーチ3は、トーチプラグがワイヤ送給装置2のコネクタ21に差し込まれることで、起動する。累積使用時間計時部363は、溶接トーチ3が起動したときから、計時部362が計時した使用時間の累積を行う。したがって、累積使用時間計時部363は、溶接トーチ3の起動時からの使用時間(以下では、「累積使用時間」とする)を計時する。本実施形態では、溶接電流が流れている状態を使用状態としているので、累積使用時間は、溶接トーチ3の起動時からの溶接時間の累計を示している。累積使用時間計時部363は、記憶部34に記憶されている累積使用時間を読み出して、これに計時部362が計時した使用時間を加算することで累積使用時間を算出する。算出された累積使用時間は記憶部34に記憶される。つまり、累積使用時間は、計時部362が使用時間を計時する毎に更新される。
【0068】
なお、計時部362を設けずに、累積使用時間計時部363が、使用検出部361の検出結果に基づいて、累積使用時間を計時するようにしてもよい。具体的には、累積使用時間計時部363が、使用検出部361が使用を検出している間は累積使用時間の計時を行い、使用検出部361が使用を検出していない間は累積使用時間の計時を停止すればよい。
【0069】
溶接トーチ3は、トーチプラグがワイヤ送給装置2のコネクタ21から取り外された時に、稼働を停止する。累積使用時間は、稼動が停止するまでは、起動時から現在までの使用時間の累計を示しており、稼動が停止した後は、今回の稼動中の使用時間の累計を示している。作業者は、1日の溶接作業の開始時に、トーチプラグをワイヤ送給装置2のコネクタ21に差し込んで溶接トーチ3を起動し、溶接作業の終了時に、トーチプラグをワイヤ送給装置2のコネクタ21から取り外して、溶接トーチ3の稼動を終了させる。したがって、溶接トーチ3の稼動を終了させた後は、累積使用時間は、一日の使用時間(溶接時間)の累計を示している。
【0070】
積算部364は、累積使用時間計時部363が計時した累積使用時間を積算するものである。積算部364は、溶接トーチ3の稼動が終了したときに、累積使用時間計時部363が計時した累積使用時間を積算して、総累積使用時間を算出する。積算部364は、記憶部34に記憶されている総累積使用時間を読み出して、これに今回の累積使用時間を加算することで総累積使用時間を算出する。算出された総累積使用時間は記憶部34に記憶される。つまり、総累積使用時間は、毎日、溶接トーチ3の稼動終了後に更新される。したがって、溶接トーチ3の稼動中は、総累積使用時間は、前日までの積算値になっている。なお、稼動終了後にまとめて積算するのではなく、使用のたびに使用時間を総累積使用時間に積算していくようにしてもよい。この場合は、溶接トーチ3の稼動中も、総累積使用時間が最新の積算値となる。
【0071】
表示制御部365は、表示部32による画面表示を制御するものである。表示制御部365は、累積使用時間計時部363が計時した累積使用時間と、積算部364が積算した総累積使用時間とから「溶接時間」表示画面を生成し、表示部32に出力して、ディスプレイ321に表示させる表示処理を行う。表示制御部365は、メニュー画面から「溶接時間」表示画面が選択された場合や、操作手段による操作によって「溶接時間」表示画面に切り替えられた場合に、当該表示処理を行う。「溶接時間」表示画面において、累積使用時間は、本日の溶接時間の欄に表示され、総累積使用時間は、溶接時間の積算値の欄に表示される(
図3参照)。溶接トーチ3の稼動中は、本日の溶接時間の欄に起動時から現在までの溶接時間の累計が表示され、溶接時間の積算値の欄に前日までの溶接時間の積算値が表示される。一方、溶接トーチ3の稼動終了後は、本日の溶接時間の欄に本日の溶接時間の累計が表示され、溶接時間の積算値の欄に本日までの溶接時間の積算値が表示される。
【0072】
図4は、制御部36が行う溶接時間計時処理を説明するためのフローチャートである。当該処理は、溶接トーチ3が起動したときに開始される。本実施形態では、ワイヤ送給装置2のコネクタ21に、溶接トーチ3のトーチプラグが差し込まれて、電源部40に電力が供給されたときに、溶接トーチ3が起動する。
【0073】
まず、累積使用時間を示す変数tx(以下では、「累積使用時間tx」とする)が「0」に初期化される(S1)。そして、溶接トーチ3の稼動が終了したか否かが判別される(S2)。具体的には、制御部36は、電源部40に電力が供給されなくなった場合に、トーチプラグがワイヤ送給装置2のコネクタ21から取り外されたと判断し、溶接トーチ3の稼動が終了したと判別する。
【0074】
溶接トーチ3の稼動が終了していない場合(S2:NO)、溶接電流が検出されたか否かが判別される(S3)。具体的には、使用検出部361が、電流センサ353から入力される電流信号に基づいて、溶接電流が流れているか否かを判別する。溶接電流が検出されない間(S3:NO)は、ステップS3の判別が繰り返される。溶接電流が検出された場合(S3:YES)は、溶接時間を計時するための変数t(以下では、「使用時間t」とする)が「0」に初期化され(S4)、使用時間tの計時が開始される(S5)。
【0075】
そして、溶接電流の検出が終了したか否かが判別される(S6)。溶接電流の検出が終了しない間(S6:NO)、つまり、溶接電流が検出されている間は、ステップS6の判別が繰り返される。溶接電流の検出が終了した場合(S6:YES)は、使用時間tの計時が終了され(S7)、累積使用時間txに計時された使用時間tが加算されて(S8)、ステップS2に戻る。そして、ステップS2〜S8の処理が繰り替えされる。
【0076】
ステップS2において、溶接トーチ3の稼動が終了した場合(S2:NO)、総累積使用時間を示す変数ty(以下では、「総累積使用時間ty」とする)に累積使用時間txが加算されて(S9)、溶接時間計時処理は終了する。
【0077】
なお、
図4のフローチャートに示す処理は一例であって、制御部36が行う溶接時間計時処理は上述したものに限定されない。例えば、使用時間tを設けずに、ステップS5で累積使用時間txの計時を開始し、ステップS7で累積使用時間txの計時を中断するようにしてもよい。また、溶接トーチ3の稼動が終了したときに累積使用時間txを総累積使用時間tyに加算する(ステップS9参照)のではなく、計時終了後にステップS8で使用時間tを総累積使用時間tyに加算するようにしてもよい。また、ステップS5で総累積使用時間tyの計時を開始し、ステップS7で総累積使用時間tyの計時を中断するようにしてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、使用率が算出され、更新されるたびに記憶部34に記憶される。使用率は、所定の時間内で溶接電流が流れている時間の割合を百分率で表したものである。制御部36は、計時部362が計時した使用時間と、別途計時される所定の時間とから、使用率を演算する。この場合、制御部36が本発明の「使用率演算部」に相当する。なお、使用率の算出方法は限定されない。表示制御部365は、演算された使用率に基づいて、「使用率」表示画面を生成し、表示部32に出力して、ディスプレイ321に表示させる。表示制御部365は、メニュー画面から「使用率」表示画面が選択された場合や、操作手段による操作によって「使用率」表示画面に切り替えられた場合に、「使用率」表示画面の表示を行う(
図3参照)。「使用率」表示画面は、溶接トーチ3の稼動中に表示することができる。
【0079】
次に、溶接トーチ3での溶接時間の確認方法について説明する。
【0080】
図5(a)は、作業終了後の溶接トーチ3の保管状態を示している。各作業者は、それぞれ専用の溶接トーチ3を配布されており、溶接作業においては当該溶接トーチ3を使用する。作業終了後、各作業者は、溶接トーチ3を所定の保管場所に収納する。各作業者は、決められた位置の収納ハンガー9に自分の溶接トーチ3を吊るしておくことになっている。
【0081】
管理者は、各収納ハンガー9から溶接トーチ3を取り出し、「溶接時間」表示画面を表示させて、本日の溶接時間を確認する。「溶接時間」表示画面を表示させる方法は、メニュー画面を表示させて選択するようにしてもよいし、左ボタン332cまたは右ボタン332dの操作で画面を切り替えるようにしてもよい。なお、溶接トーチ3がワイヤ送給装置2から切り離されている場合に、まず、「溶接時間」表示画面を表示するようにしていれば、上記操作をすることなく「溶接時間」表示画面を表示させることができる。
【0082】
溶接トーチ3がワイヤ送給装置2に接続されていない状態でも、電源部40は、制御部36および表示部32に10分程度、電力を供給できる。電源部40は、いずれかの操作手段が操作されたときに、制御部36および表示部32に電力を供給して、ディスプレイ321の表示を開始する。なお、加速度センサ351によって溶接トーチ3の動きを検知したときに、ディスプレイ321の表示を開始するようにしてもよい。管理者は、ディスプレイ321の表示を開始してから10分以内に、溶接時間を確認すればよい。管理者は、確認した本日の溶接時間が、勤務時間と比べて短すぎる場合に、作業者が怠けていた可能性があると判断できる。
【0083】
また、本実施形態では、作業終了後だけでなく溶接作業中や溶接作業の合間でも、メニュー画面での選択や画面の切り替えによって、「溶接時間」表示画面を表示させて、累積使用時間(当日の溶接時間の累積時間)および総累積使用時間(前日までの溶接時間の積算時間)を確認することができる。さらに、溶接作業中や溶接作業の合間に「使用率」表示画面を表示させて、現在の使用率を確認することができる。
【0084】
次に、溶接トーチ3の作用効果について説明する。
【0085】
本実施形態によると、制御部36は、溶接トーチ3の使用時間(溶接時間)を計時して、累積使用時間および総累積使用時間を算出している。また、溶接トーチ3のハンドル38には、ディスプレイ321が配置されている。したがって、作業者は、溶接作業中や作業の合間に、手元のディスプレイ321に累積使用時間および総累積使用時間を表示して確認することができる。よって、わざわざ、溶接電源装置の表示装置まで確認しに行く必要がない。また、管理者が作業終了後の溶接トーチ3を1か所に集めて各溶接トーチ3の累積使用時間を確認する場合、各溶接トーチ3を表示装置にわざわざ接続する必要がない。また、電源部40は、大容量のキャパシタを備えているので、ワイヤ送給装置2から電力が供給されない状態でも、表示部32および制御部36などに電力を供給することができる。したがって、溶接トーチ3は単体でも(外部から電力の供給がされなくても)、操作の受付および画面の表示などを行うことができる。したがって、各溶接トーチ3を電源装置にわざわざ接続する必要がない。よって、管理者は、累積使用時間(作業者の実際の作業時間)を容易に確認することができる
【0086】
また、制御部36は、使用率を算出し、ディスプレイ321に表示させることができる。したがって、作業者は、手元で使用率を確認することができるので、溶接作業を中断するなどの使用率の調整を容易に行うことができる。
【0087】
なお、本実施形態においては、電流センサ353(センサ部35)から入力される電流信号に基づいて溶接時間を計時する場合について説明したが、これに限られない。溶接電源装置1またはワイヤ送給装置2で溶接電流を検出している場合は、検出された電流検出信号を溶接トーチ3に送信し、溶接トーチ3は受信した電流検出信号に基づいて溶接時間を計時するようにしてもよい。具体的には、通信部31が受信した電流検出信号を制御部36の使用検出部361に入力して、使用検出部361が、入力された電流検出信号に基づいて、計時部362に使用時間の計時をさせるようにすればよい。この場合、溶接トーチ3に電流センサ353を設ける必要がなくなる。
【0088】
本実施形態においては、溶接時間を溶接トーチ3の使用時間とみなして、溶接電流が流れている時間を計時する場合について説明したが、これに限られない。溶接電流が流れていなくても、作業者が溶接トーチ3を使用して作業を行っている場合がある。例えば、トーチスイッチ331を押下してガスのチェックをしている状態なども、作業者が作業を行っているとみなすことができる。この場合は無負荷状態であり溶接電流は流れないので、使用時間にカウントされない。この作業時間も使用時間にカウントするために、トーチスイッチ331の押下されている時間を、溶接トーチ3の使用時間として計時するようにしてもよい。具体的には、操作部33から入力される、トーチスイッチ331の操作信号を制御部36の使用検出部361に入力して、使用検出部361が、入力された操作信号に基づいて、計時部362に使用時間の計時をさせるようにすればよい。
【0089】
本実施形態においては、電源部40が大容量のキャパシタを備えている場合について説明したが、これに限られない。電源部40が大容量のキャパシタを備えていなくても、溶接トーチ3は、溶接作業中や作業の合間に、累積使用時間および総累積使用時間をディスプレイ321に表示することができる。また、管理者が作業終了後の溶接トーチ3を1か所に集めて各溶接トーチ3の累積使用時間を確認する場合は、
図5(b)に示すように、表示部32および制御部36などに電力を供給するだけの簡易な電源装置10を接続すればよい。電源装置10は、溶接のための電力を供給する必要がなく、表示部32および制御部36などを駆動できる電力だけを供給できればよい。本実施形態では、これらの消費電力は1〜12Wなので、12Wの出力が可能なものとしている。なお、表示部32および制御部36などの消費電力がより大きい場合は、最大出力をより大きなものとすればよく、例えば24Wの出力が可能なものとすればよい。また、電源装置10は、二次電池や乾電池から電力を供給するものであってもよいし、電力系統からの交流電力を直流電力に変換して供給するものであってもよい。電源装置10は、本発明の「簡易電源装置」に相当する。
【0090】
本実施形態においては、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とが信号線8を介して通信を行う場合について説明したが、これに限られない。例えば、パワーケーブル41,42または電力伝送線5に信号を重畳させて通信を行うようにしてもよい、この場合、溶接電源装置1とワイヤ送給装置2とを接続する信号線8を必要としない。
【0091】
図6は、本発明の他の実施形態を示している。なお、
図6において、上記第1実施形態と同一または類似の要素には、上記第1実施形態と同一の符号を付している。
【0092】
図6は、第2実施形態に係る溶接システムA2の機能構成を示すブロック図である。
【0093】
図6に示す溶接システムA2は、ワイヤ送給装置2を備えていない点で、第1実施形態に係る溶接システムA1と異なる。溶接システムA2は、ワイヤ電極を用いない非消耗電極式の溶接システムである。
【0094】
溶接電源装置1と溶接トーチ3とは、トーチケーブル39によって接続されている。溶接電源装置1は、例えば凹型の接続用端子であるコネクタ12を備えている。コネクタ12は、溶接トーチ3のトーチケーブル39の一端に備えられた凸型のトーチプラグ(図示しない)を差し込まれることで、溶接トーチ3と溶接電源装置1とを接続する。このコネクタ12を介して、溶接電源装置1の内部のパワーケーブル41、ガス配管7、電力伝送線5および信号線8が、それぞれ、トーチケーブル39の内部のパワーケーブル41、ガス配管7、電力伝送線および信号線に接続される。
【0095】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0096】
上記第1〜第2実施形態においては、本発明を溶接トーチ(溶接システム)に適用した場合について説明したが、これに限られない。例えば、先端に発生させたアークによって被加工物Wを切断するアーク切断トーチ(アーク切断システム)や、被加工物Wに溝彫りを行うアークガウジングトーチ(アークガウジングシステム)などにおいても、本発明を適用することができる。また、アークによる熱加工に限定されず、ガス溶接や抵抗溶接などの熱加工を行う熱加工用トーチ(熱加工システム)においても、本発明を適用することができる。
【0097】
本発明に係る熱加工用トーチ、熱加工システム、簡易電源装置および確認方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る熱加工用トーチ、熱加工システム、簡易電源装置および確認方法の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。