(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791573
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】水上太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
H02S 40/42 20140101AFI20201116BHJP
【FI】
H02S40/42
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-85771(P2016-85771)
(22)【出願日】2016年4月22日
(65)【公開番号】特開2017-195733(P2017-195733A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】丸山 勇祐
【審査官】
原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−038149(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2009−0119647(KR,A)
【文献】
特開2013−133718(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0060620(US,A1)
【文献】
特開2003−314972(JP,A)
【文献】
特開平02−296920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 10/00−40/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に設置される太陽光発電パネルと、
前記太陽光発電パネルの背面に略全面的に設けられる冷却水通路と、
前記冷却水通路の入口側に設置される貯水タンクと、
水中から前記貯水タンクに揚水するポンプと、
前記冷却水通路の出口側に配置される発電用水車と、
を備え、
前記太陽光発電パネルは、水上の架台の上に斜めに設置され、前記太陽光発電パネルの上部に前記冷却水通路の入口が設けられる一方、前記太陽光発電パネルの下部に前記冷却水通路の出口が設けられており、
前記貯水タンクは、前記太陽光発電パネルよりも高い位置に配置されており、
前記冷却水通路の入口に設置された前記貯水タンクに貯水された水を、前記冷却水通路に流下させることを特徴とする水上太陽光発電システム。
【請求項2】
前記太陽光発電パネルは、架台上に斜めに設置されて、上方に前記冷却水通路の入口が設けられる一方、下辺部に沿って前記冷却水通路の出口が開口しており、
前記開口に沿って前記発電用水車が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の水上太陽光発電システム。
【請求項3】
前記発電用水車には、発電機と、前記ポンプを駆動する動力伝達装置が接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の水上太陽光発電システム。
【請求項4】
前記発電用水車と、前記発電機及び前記動力伝達装置との間に切替動作用のクラッチがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項3に記載の水上太陽光発電システム。
【請求項5】
前記太陽光発電パネルで発電される電力により前記ポンプを駆動することで揚水して前記貯水タンクに貯水することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の水上太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上に太陽光発電パネルを設置する太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電パネルの設置が広く普及している。
しかし、太陽光発電パネルは、そのパネルの温度が上昇すると発電効率が低下する。
このため、特許文献1において、貯水タンクから太陽用発電パネル表面への散水機能を具備した太陽光発電システムが提案されている。
【0003】
また、大規模なメガソーラーの設置には、広大な面積が必要であることから、水上への設置が増えつつある。
そして、水上に設置されるフロートタイプの太陽光発電装置において、太陽光発電パネル背面の吸熱板に接続された放熱板をフロートから水中に入れることで、太陽光発電パネルを冷却するものが、特許文献2に提案されている。
また、フロート下の水をフロート中央部の穴から吸引して噴出させることによりフロート上の太陽光発電パネルに流下させることで、太陽光発電パネルを冷却するものが、特許文献3に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−143352号公報
【特許文献2】特開2011−198869号公報
【特許文献3】特開2011−238890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような太陽用発電パネル表面への散水方式や、特許文献2のような太陽光発電パネル背面の吸熱板に接続された放熱板をフロートから水中に入れる冷却構造や、特許文献3のようなフロート下の水をフロート中央部の穴から吸引して噴出させることによりフロート上の太陽光発電パネルに流下させる冷却方式では、冷却性能が不十分であった。
【0006】
本発明の課題は、水上に設置する太陽光発電パネルに対する十分な冷却性能を具備することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
水上に設置される太陽光発電パネルと、
前記太陽光発電パネルの背面に略全面的に設けられる冷却水通路と、
前記冷却水通路の入口側に設置される貯水タンクと、
水中から前記貯水タンクに揚水するポンプと、
前記冷却水通路の出口側に配置される発電用水車と、
を備え
、
前記太陽光発電パネルは、水上の架台の上に斜めに設置され、前記太陽光発電パネルの上部に前記冷却水通路の入口が設けられる一方、前記太陽光発電パネルの下部に前記冷却水通路の出口が設けられており、
前記貯水タンクは、前記太陽光発電パネルよりも高い位置に配置されており、
前記冷却水通路の入口に設置された前記貯水タンクに貯水された水を、前記冷却水通路に流下させることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の水上太陽光発電システムであって、
前記太陽光発電パネルは、架台上に斜めに設置されて、上方に前記冷却水通路の入口が設けられる一方、下辺部に沿って前記冷却水通路の出口が開口しており、
前記開口に沿って前記発電用水車が配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、
請求項1または2に記載の水上太陽光発電システムであって、
前記発電用水車には、発電機と、前記ポンプを駆動する動力伝達装置が接続されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、
請求項3に記載の水上太陽光発電システムであって、
前記発電用水車と、前記発電機及び前記動力伝達装置との間に切替動作用のクラッチがそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、
請求項1から4のいずれか一項に記載の水上太陽光発電システムであって、
前記太陽光発電パネルで発電される電力により前記ポンプを駆動することで揚水して前記貯水タンクに貯水することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水上太陽光発電パネルに対する十分な冷却性能を具備することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明を適用した水上太陽光発電システムの一実施形態の構成を示す概略側面図である。
【
図2】
図1の水上太陽光発電システムの概略斜視図である。
【
図3】実施形態2を示すもので、水上太陽光発電システムの発電用水車部分の拡大側面図である。
【
図4】
図3の水上太陽光発電システムの概略斜視図である。
【
図5】変形例を示すもので、水上太陽光発電システムの発電用水車部分の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
図1及び
図2は本発明を適用した水上太陽光発電システムの一実施形態の概略構成を示すもので、1は架台、2は太陽光発電パネル、3は冷却水通路、4はポンプ、5は貯水タンク、6は発電用水車、7は発電機、8・9はクラッチ、10は動力伝達装置である。
【0015】
図示のように、池、湖、海等の水上の架台1の上には、太陽光発電パネル2が斜めに設置されている。架台1は、図示しないが、水底に着く足付きのものである。
この太陽光発電パネル2は、多数の太陽電池モジュールを縦横方向に並べて一体化した大面積のもので、その受光面を太陽の方向に向けて斜めに設置されており、受光面の背面の全面に沿ってハウジングにより囲まれた冷却水通路3が形成されている。
この冷却水通路3には、太陽光発電パネル2の背面に取り付けられた図略の吸熱板に繋げた縦方向に沿った強度確保用リブを兼ねた図略の放熱板が横方向に間隔を開けて並べられている。
【0016】
そして、架台1の下には、ポンプ4を水中に設置する一方、太陽光発電パネル2の上部に設けた冷却水入口に断熱性の貯水タンク5を設けている。
この貯水タンク5に、ポンプ4で揚水して貯水し、すなわち、太陽光発電パネル2を冷却するための水を貯めておく。貯水タンク5ヘの水は、架台1下方で直射日光が当たらない冷たい水をポンプ4で揚水する。
【0017】
また、冷却水通路3の太陽光電池パネル2下部に位置する冷却水出口には、ペルトン水車による発電用水車6を取り付ける。この発電用水車6は、
図2に示したように、冷却水通路3の太陽光電池パネル2の下辺部に沿って開口する冷却水出口に沿って軸線方向を配置する。
なお、冷却水出口には図略の絞りを設けて、その絞りで発生するジェット水流がペルトン水車のバケットに当たって、発電用水車6が効率よく回転するように構成する。
【0018】
さらに、発電用水車6の軸部の一端(
図2では左端)に発電機7を接続し、発電用水車6と発電機7との間にクラッチ8を設ける。
【0019】
また、発電用水車6の軸部の他端(
図2では右端)とポンプ4の間にクラッチ9及び動力伝達装置10を設ける。
すなわち、動力伝達装置10は、図示例では、ポンプ4を回転駆動させるベルトプーリ機構で、その入力軸と発電用水車6との間にクラッチ9を設ける。
【0020】
以上において、架台1上の太陽光発電パネル2の高さを10m以上とする。
従って、冷却水通路3には10m以上の水頭差が生じる。
【0021】
以上の水上太陽光発電システムの運用時において、太陽光発電パネル2の温度が上昇して所定値に達した場合には、太陽光発電パネル2の背面全面に取り付けられた冷却水通路3に貯水タンク5の水を流下させることで、太陽光発電パネル2の背面全面を冷却する。
ここで、初期のポンプ4の駆動は、太陽光発電パネル2で発電された電力を利用して行う。すなわち、太陽光発電パネル2の冷却が必要な時は、太陽光発電パネル2が発電状態にあるので、破線で示したように、その余剰電力を用いてポンプ4を駆動する。この時、クラッチ9を切っておく。
【0022】
そして、ポンプ4で揚水された貯水タンク5から太陽光発電パネル2の背面全面の冷却水通路3を流下して発電用水車6が回転すると、クラッチ9を接続状態にして、発電用水車6の回転によりクラッチ9及び動力伝達装置10を経てポンプ4を駆動する。
すなわち、太陽光発電パネル2の背面全面の冷却水通路3を流下してきた水の運動エネルギーを発電用水車6で吸収し、その発電用水車6の回転力をポンプ4の動力として利用することで、他からのエネルギーをほとんど必要とせずに揚水を行う。
【0023】
なお、エネルギーが僅かに足らない場合には、太陽光発電パネル2の余剰電力でポンプ4を駆動して揚水を行う。
このように、太陽光発電パネル2の余剰電力を水の位置エネルギーとして蓄え、冷却水通路3に流して下部の発電用水車6で発電することもできる。これにより、蓄電設備を持たずに、発電量の平滑化も可能である。
【0024】
以上、実施形態の水上太陽光発電システムによれば、太陽光発電パネル2の背面全面に設けた冷却水通路3に、その上部の入口に設置した貯水タンク5から冷却水を流すことで、水上の太陽光発電パネル2に対する十分な冷却性能を具備することができる。
従って、水上の太陽光発電パネル2による発電効率を高めることができる。
【0025】
そして、冷却水通路3の出口に配置した発電用水車6を、太陽光電池パネル2冷却後の水で回転させて、接続状態のクラッチ8を経て発電機7で発電して、売電に供することができる。
【0026】
(実施形態2)
図3及び
図4は実施形態2の水上太陽光発電システムの概略構成を示すもので、前述した実施形態1と同様、2は太陽光発電パネル、3は冷却水通路、4はポンプ、6は発電用水車、7は発電機、8・9はクラッチ、10は動力伝達装置であって、11は案内羽根である。
【0027】
図示のように、実施形態2では、発電用水車6としてクロスフロー水車を用いて、このクロスフロー水車による発電用水車6を冷却水通路3の太陽光電池パネル2の下辺部に沿って開口する冷却水出口の内部に沿って軸線方向を配置したものである。
そして、その冷却水出口内部には、発電用水車6の直前位置に、そのクロスフロー水車の羽根を押す側のみに水を当て、且つ流速を上げる案内羽根11を設けている。
このように、冷却水出口内部に案内羽根11を設けて、その案内羽根11で発生するジェット水流がクロスフロー水車の羽根に当たって、発電用水車6が効率よく回転するように構成する。
【0028】
以上、クロスフロー水車による発電用水車6を冷却水通路3の太陽光電池パネル2の下辺部に沿って開口する冷却水出口の内部に沿って軸線方向を配置して、発電用水車6の直前位置に、そのクロスフロー水車の羽根を押す側のみに水を当て、且つ流速を上げる案内羽根11を設けた構成によっても、前述した実施形態1と同様の作用効果を発揮できる。
【0029】
(変形例)
図5は変形例を示すもので、前述した実施形態2のクロスフロー水車による発電用水車6に変えて、図示のように、前述した実施形態1と同様のペルトン水車による発電用水車6としたものである。
【0030】
すなわち、ペルトン水車による発電用水車6を冷却水通路3の太陽光電池パネル2の下辺部に沿って開口する冷却水出口の内部に沿って軸線方向を配置して、発電用水車6の直前位置に、そのペルトン水車のバケットを押す側のみに水を当て、且つ流速を上げる案内羽根11を設けた構成としてもよい。
【0031】
(他の変形例)
以上の実施形態では、太陽光発電パネルを、水底に着く足付きの架台上に設置したが、水底に打ち込んだアンカーにより係留された浮体による架台上に太陽光発電パネルを設置してもよい。
また、その他、具体的な細部構造等について適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 架台
2 太陽光発電パネル
3 冷却水通路
4 ポンプ
5 貯水タンク
6 発電用水車
7 発電機
8 クラッチ
9 クラッチ
10 動力伝達装置
11 案内羽根