(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791622
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】外壁パネル及びこの外壁パネルを備えた外壁構造
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
E04F13/08 E
E04F13/08 Y
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-194489(P2015-194489)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-66774(P2017-66774A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】大段 圭子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 禎司
【審査官】
園田 かれん
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−280638(JP,A)
【文献】
特開2005−200991(JP,A)
【文献】
特開2001−049830(JP,A)
【文献】
特開2003−027694(JP,A)
【文献】
特開平11−022142(JP,A)
【文献】
特開平08−291609(JP,A)
【文献】
特開2011−202476(JP,A)
【文献】
実開昭63−173434(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁パネルが複数並べられた外壁構造であって、
上記外壁パネルは、表面に上下方向の全長に亘って途切れることなく形成された凹溝を有し、
左右に並ぶ上記外壁パネル間には、上記外壁パネルの上記凹溝と略同じ幅の縦目地が設けられており、
上記縦目地にはシーリング材が充填されており、
上記シーリング材には、上記外壁パネルの上記凹溝と同じ幅である凹溝が生じており、
上記外壁パネルの上記凹溝の深さが、硬化後の上記シーリング材の凹溝の深さと同じであり、
上記外壁パネルの上記凹溝は、幅方向両側に形成された一対の傾斜側面と、これら傾斜側面の間に形成された底面とを有し、
上記底面は、その断面形状が該底面の幅方向全体に亘って湾曲する凹曲面を描くと共に、その幅方向両端が上記傾斜側面に滑らかに連続している、
ことを特徴とする外壁構造。
【請求項2】
外壁パネルが複数並べられた外壁構造であって、
上記外壁パネルは、表面に上下方向の全長に亘って途切れることなく形成された凹溝を有し、
左右に並ぶ上記外壁パネル間には、上記外壁パネルの上記凹溝と略同じ幅の縦目地が設けられており、
上記縦目地にはシーリング材が充填されており、
上記シーリング材には、上記外壁パネルの上記凹溝と同じ幅である凹溝が生じており、
上記外壁パネルの上記凹溝の深さが、硬化後の上記シーリング材の上記凹溝の深さと同じであり、
上記外壁パネルの上記凹溝の断面形状が円弧状をなしている、
ことを特徴とする外壁構造。
【請求項3】
上記各傾斜側面の傾斜角度は、45°〜60°である、
ことを特徴とする請求項1に記載の外壁構造。
【請求項4】
上記外壁パネルの上記凹溝の深さは、3〜10mmである、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の外壁構造。
【請求項5】
上記外壁パネルは、上記凹溝として、左右横方向の凹溝と、上記上下方向の凹溝と、を有し、
上記上下方向の凹溝の深さよりも上記左右横方向の凹溝の深さは浅い、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の外壁構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の外壁構造に使用される、
外壁パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹溝を備えた外壁パネル及びこの外壁パネルを備えた外壁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数枚の外壁パネル材を張ることで外壁を構成する場合、上下に並ぶ外壁パネル間については、下方側外壁パネルの上縁の外面側に上方側外壁パネルの下縁を重ねることで、更には両者の対向面の間にシーリング材を介在させることで、外壁パネルの背後への雨水の浸入を防いでいる。
【0003】
一方、左右に並ぶ外壁パネルの間の部分(縦目地)については、特許文献1に示されているように、通常、10mmほどの間隔を空けて、この部分にシーリング材(コーキング材)を充填することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2553618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外壁パネル間の縦目地へのシーリング材の充填に際しては、
図4Aに示すように、左右の外壁パネル1,1の表面とほぼ面一もしくは少し深いところに表面がくるようにシーリング材2を充填するが、シーリング材2は硬化すると痩せて凹むことになる。この痩せた後のシーリング材2の表面は、
図4Bに示すように、緩やかな曲面を描く凹溝20となる。なお、図中3は断面ハット型のバックアップ材である。
【0006】
一方、多数枚のタイルを並べたタイル貼り形状のもの、つまり、格子状の凹溝10を有する外壁パネル1では、左右方向及び上下方向に設けられた凹溝10は、
図5に示すように断面台形状のものとして形成されている。
【0007】
この場合、シーリング材2の色と外壁パネル1の凹溝10の部分の色とを合わせるとともにシーリング材2の凹溝20の深さと外壁パネル1の凹溝10の深さとを同じにしても、外壁パネル1の凹溝10はその底部左右に角があることから、側壁と底面との境界が強調されて見えるものとなる。つまり、外壁パネル1に設けた縦方向の凹溝10と、外壁パネル1,1間に設けたシーリング材2の凹溝20とが異なったものと見えてしまう。従って、シーリング材2の凹溝20、すなわち外壁パネル1,1間のシーリング材2を配した縦目地部分が目立ってしまう。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、表面に凹溝を備えた外壁パネルの凹溝と、外壁パネル間のシーリング材を配した縦目地部分との外観差を小さくすることができる外壁パネル及びこの外壁パネルを備えた外壁構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる外壁構造は、外壁パネルが複数並べられた外壁構造であって、上記外壁パネルは、表面に上下方向の全長に亘って途切れることなく形成された凹溝を有し、左右に並ぶ上記外壁パネル間には、上記外壁パネルの上記凹溝と略同じ幅の縦目地が設けられており、上記縦目地にはシーリング材が充填されており、上記シーリング材には、上記外壁パネルの上記凹溝と同じ幅である凹溝が生じて
おり、上記外壁パネルの上記凹溝の深さが、硬化後の上記シーリング材の凹溝の深さと同じであり、上記外壁パネルの上記凹溝は、幅方向両側に形成された一対の傾斜側面と、これら傾斜側面の間に形成された底面とを有し、上記底面は、その断面形状が該底面の幅方向全体に亘って湾曲する凹曲面を描くと共に、その幅方向両端が上記傾斜側面に滑らかに連続している、ことを特徴とする。
また本発明にかかる外壁構造は、外壁パネルが複数並べられた外壁構造であって、上記外壁パネルは、表面に上下方向の全長に亘って途切れることなく形成された凹溝を有し、左右に並ぶ上記外壁パネル間には、上記外壁パネルの上記凹溝と略同じ幅の縦目地が設けられており、上記縦目地にはシーリング材が充填されており、上記シーリング材には、上記外壁パネルの上記凹溝と同じ幅である凹溝が生じており、上記外壁パネルの上記凹溝の深さが、硬化後の上記シーリング材の上記凹溝の深さと同じであり、上記外壁パネルの上記凹溝の断面形状が円弧状をなしている、ことに特徴を有している。
【0010】
上記各傾斜側面の傾斜角度は、45°〜60°であることが好ま
しい。
【0012】
上記外壁パネルの上記凹溝の深さは、3〜10mmである、ことが好ましい。
【0013】
上記外壁パネルは、上記凹溝として、左右横方向の凹溝と、上記上下方向の凹溝と、を有し、上記上下方向の凹溝の深さよりも上記左右横方向の凹溝の深さは浅い、ことが好ましい。
本発明にかかる外壁パネルは、上記外壁構造に使用される。
【0014】
また、本発明にかかる外壁構造は、上記の外壁パネルが複数並べられた外壁構造であって、左右に並ぶ外壁パネル間には、上記外壁パネルの上下方向の全長に亘って形成された上記凹溝と略同じ幅の縦目地が設けられており、この縦目地にはシーリング材が充填されていることに特徴を有している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外壁パネルが表面に有している凹溝と、外壁パネル間の縦目地に充填硬化されたシーリング材がその表面に有する凹溝との外観差がきわめて小さくなり、シーリング材を配した縦目地部分が目立つことがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】Aは外壁パネル間にシーリング材を施工した直後の断面図、Bはシーリング材が硬化した後の状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を図示の実施例に基づいて詳述する。図中1は横長矩形状の外壁パネルであり、その表面には複数本の凹溝10が左右横方向及び上下縦方向に形成されて格子状に凹溝10が配されている。また、外壁パネル1は、いわゆる相じゃくり接続のための裏実部を上辺に備えるとともに表実部を下辺に備えているが、これら裏実部及び表実部の構成については、周知のものであるために、ここでは図示しない。
【0018】
この外壁パネル1は、建物躯体の外面に所定間隔で立設されている胴縁(縦胴縁)に留金具で固定されることで建物躯体の外面を覆う。この時、上下に並ぶ外壁パネル1,1は、下方側の外壁パネル1の上辺の裏実部の表面側に上方側の外壁パネルの表実部が重ねられて水密的に施工される。
【0019】
そして左右に並ぶ外壁パネル1,1間については、両者の間に縦目地となる隙間を空けておき、この隙間にシーリング材2を充填することで水密とするのであるが、このシーリング材2の表面は、前述のように硬化した後、緩やかな曲面を描く断面形状の凹溝20を持つものとなる。なお、シーリング材2は、硬化後に生じてしまう凹溝20の深さが外壁パネル1の凹溝10の深さとほぼ同じとなるように施工する。
【0020】
ここにおける外壁パネル1は、その表面に形成された凹溝10を、底部に角がない断面形状のものとしてある。具体的には
図2に示すように、45°〜60°の傾斜角度αを有する両傾斜側面11,11と、凹曲面となっている底面12とで構成してある。底面12は、その幅方向全体に亘って湾曲する凹曲面をなしているとともに、両傾斜側面11,11に滑らかに連続するものとなっている。
【0021】
凹溝10の深さDは、通常、12mm〜50mmの厚みで形成される外壁パネル1の厚みによって変わるが、3mm〜10mm程度の深さを有するものとするのが好ましい。凹溝10の深さを3mm未満とすると、傾斜側面11,11と凹曲面となっている底面12とが不明確となり、凹溝10が明確ではなくなる。また10mmを越える深さでは、外壁パネル1の強度基準や耐火基準等を満たしにくくなる上に、シーリング材2を配した縦目
地部分との統一感を出しにくくなる。
上下方向の凹溝10の幅Wは、10mm〜16mm程度が好ましい。10mm未満とすると、この凹溝10の幅に合わせた幅に形成することになる外壁パネル1,1間の縦目地部分にシーリング材2を施工することが難しくなる。また16mmを越える幅とすると、目地幅が広すぎてタイル感が生じにくくなり、外観的に問題が多くなる。
【0022】
ちなみに、凹溝10の傾斜側面11の傾斜角度αを45°〜60°としているのは、この角度範囲以外であると、凹溝10の幅Wと深さDとの上記制限内で、傾斜側面11と底面12とを滑らかに連続させることができずに、角が生じてしまうためである。
【0023】
また、凹溝10の断面形状を曲率半径が一定の凹曲面だけで形成してもシーリング材2の表面形状に近似して凹溝10とシーリング材2の表面との差異が目立ち難くなるが、さらに凹溝10の断面形状を傾斜角度αを有する傾斜側面11,11と凹曲面の底面12との組み合わせとすることにより、立体感を増すことができる。
【0024】
左右横方向の凹溝10については、従来のように台形断面のものでよいが、この場合、縦方向の凹溝10の深さDよりも左右横方向の凹溝10の深さは浅くして、両凹溝10,10の交点で縦方向の凹溝10が途切れることがないようにしておくことが好ましい。
【0025】
上述のように、傾斜角度を有する傾斜側面11と凹曲面をなす底面12とで構成されている凹溝10は、底部に角が全くないために、ことさら深さが強調されるようなことがない。これは、シーリング材2の充填後の硬化によって生じた縦目地の凹溝20が、その幅を凹溝10の幅と同じとなるように施工されるとともに、凹溝10と同じ色のシーリング材2で施工されている場合、凹溝10と凹溝20の両者には外観的な違いが生じにくく、結果的にシーリング材2が目立たなくなる。
【0026】
従って、複数枚の外壁パネル1を並べて施工した外壁は、外壁パネル1,1間の繋ぎ目が目立たずに、格子状の凹溝10及び凹溝20によって区切られた多数枚のタイルを一面に敷き詰めたものとして認識されることになり、良好な外観を呈するものとなる。
【0027】
なお、シーリング材2として、弾性を有する乾式シーリング材(目地ガスケット)を用いることを妨げない。ただし、縦目地部に現れる表面が、外壁パネル1の凹溝10と同じ幅で且つ緩やかな曲面を描く断面形状の凹溝20を持つものとする。
【0028】
図3に他例を示す。これは外壁パネル1の表面に設けた凹溝10の断面形状を円弧状としたものである。この場合、上記の如く凹溝10とシーリング材2との差異が目立ち難くなる。そして、断面形状が円弧状をなす凹溝10の深さDは、2mm以下の浅めであることが好ましい。上下方向の凹溝10の幅Wは、10mm〜16mm程度が好ましい。
【符号の説明】
【0029】
1 外壁パネル
2 シーリング材
10 凹溝
11 傾斜側面
12 底面
20 凹溝