(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0018】
ここに開示される粘着テープロールは、PVC粘着テープが長手方向に捲回された構成を有する。上記PVC粘着テープは、PVCフィルムと、該PVCフィルムの一方の表面に配置された粘着剤層とを備える。
【0019】
<PVCフィルム>
上記PVCフィルムは、典型的には、所定の成分を含むPVC組成物を公知の方法でフィルム化することにより得られる。ここでPVC組成物とは、主成分(最も多く含まれる成分をいい、50重量%を超えて含まれる成分であり得る。)がPVCである組成物をいう。かかるPVC組成物によると、粘着剤層を支持する基材(支持基材)として好適な物性を示すPVCフィルム(典型的には、軟質PVC樹脂からなるフィルム)が形成され得る。PVCフィルムにおけるPVCの含有量は、典型的には40重量%超であり、通常は50重量%以上とすることが適当である。ここに開示される技術は、上記PVCフィルムにおけるPVCの含有量が50重量%超(典型的には55重量%以上、例えば60重量%以上)である態様で好ましく実施され得る。
【0020】
(PVC)
上記PVC組成物を構成するPVCは、塩化ビニルを主モノマー(モノマー成分のうちの主成分をいい、モノマー成分の50重量%超を占めるモノマーであり得る。)とする種々のポリマーであり得る。すなわち、ここでいうPVCの概念には、塩化ビニルの単独重合体のほか、塩化ビニルと種々のコモノマーとの共重合体が包含される。上記コモノマーとしては、塩化ビニリデン;エチレン、プロピレン等のオレフィン(好ましくは炭素数2〜4のオレフィン);アクリル酸、メタクリル酸(以下、アクリルおよびメタクリルを「(メタ)アクリル」と総称する。)、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有モノマーまたはその酸無水物(無水マレイン酸等);(メタ)アクリル酸エステル、例えば(メタ)アクリル酸と炭素数1〜10程度のアルキルアルコールまたはシクロアルキルアルコールとのエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等のスチレン系モノマー;アクリロニトリル;等が例示される。上記共重合体としては、塩化ビニルの共重合割合が70重量%以上(より好ましくは90重量%以上)であるものが好ましい。このようなモノマーを適当な方法(典型的には懸濁重合法)で重合させることによりPVCが得られる。
【0021】
特に限定するものではないが、PVC組成物に含まれるPVCの平均重合度は、例えば凡そ600〜1800程度であり得る。加工性(成形性)と強度との兼ね合い等を考慮して、通常は、上記平均重合度が凡そ800〜1600(例えば凡そ900〜1500)程度の範囲にあるPVCを好ましく採用し得る。
【0022】
(可塑剤)
ここに開示される技術におけるPVCフィルムは、典型的には可塑剤を含有する。可塑剤としては、PVCの可塑化効果を示すことが知られている種々の材料を特に限定なく使用することができる。上記可塑剤の例としては、安息香酸エステル(安息香酸グリコールエステル等)、フタル酸エステル、テレフタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル等の芳香族カルボン酸エステル;アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、マレイン酸エステル、クエン酸エステル(アセチルクエン酸トリブチル等)等の脂肪族カルボン酸エステル;多価カルボン酸と多価アルコールとのポリエステル:その他、ポリエーテル系ポリエステル、エポキシ系ポリエステル(エポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル等)、リン酸エステル(リン酸トリクレシル等)等が挙げられるが、これらに限定されない。可塑剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0023】
上記フタル酸エステル(フタル酸エステル系可塑剤)としては、例えば、フタル酸と炭素数4〜16(好ましくは6〜14、典型的には8〜13)のアルキルアルコールとのジエステルを用いることができ、好適例としてフタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル等が挙げられる。なかでもフタル酸ジイソノニルが好ましい。
【0024】
上記テレフタル酸エステル(テレフタル酸エステル系可塑剤)としては、例えば、テレフタル酸と炭素数4〜16(好ましくは6〜14、典型的には8〜13)のアルキルアルコールとのジエステルを用いることができ、一好適例としてテレフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)が挙げられる。
【0025】
上記トリメリット酸エステル(トリメリット酸エステル系可塑剤)としては、例えば、トリメリット酸と炭素数6〜14(典型的には8〜12)のアルキルアルコールとのトリエステルを用いることができ、好適例としてトリメリット酸トリn−オクチル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリイソノニル、トリメリット酸トリ−n−デシル、トリメリット酸トリイソデシル等が挙げられる。
【0026】
上記ピロメリット酸エステル(ピロメリット酸エステル系可塑剤)としては、例えば、ピロメリット酸と炭素数6〜14(典型的には8〜12)のアルキルアルコールとのテトラエステルを用いることができ、好適例としてピロメリット酸テトラ−n−オクチル、ピロメリット酸テトラ−2−エチルヘキシル、ピロメリット酸テトラ−n−デシル等が挙げられる。
【0027】
上記アジピン酸エステル(アジピン酸エステル系可塑剤)としては、例えば、アジピン酸と炭素数4〜16(好ましくは6〜14、典型的には8〜13)のアルキルアルコールとのジエステルを用いることができ、好適例としてアジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル等が挙げられる。
【0028】
上記ポリエステル(ポリエステル系可塑剤)としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、クエン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の多価カルボン酸と、(ポリ)エチレングリコール(ここで「(ポリ)エチレングリコール」とは、エチレングリコールおよびポリエチレングリコールを包括的に指す意味である。以下同じ。)、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)ブチレングリコール、(ポリ)ヘキサンジオール、(ポリ)ネオペンチルグリコール、ポリビニルアルコール等の多価アルコールとから得られるポリエステル化合物を用いることができる。上記多価カルボン酸としては、炭素数4〜12(典型的には6〜10)の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、好適例としてアジピン酸およびセバシン酸が挙げられる。特に、汎用性や価格の点でアジピン酸が望ましい。上記多価アルコールとしては、炭素数2〜10の脂肪族ジオールが好ましく、好適例としてエチレングリコール、ブチレングリコール(例えば1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール)等が挙げられる。
【0029】
PVCフィルムにおける可塑剤の含有量は、特に限定されない。可塑剤の含有量は、例えば、PVCフィルムの10重量%以上とすることができ、より良好な可塑化効果を得る観点から15重量%以上とすることが好ましい。可塑剤の含有量を20重量%以上としてもよい。また、可塑剤の含有量は、例えば50重量%未満とすることができ、耐熱性(典型的には耐熱劣化性)等の観点から、通常は40重量%以下とすることが適当であり、35重量%以下(例えば30重量%以下)とすることが好ましい。
【0030】
特に限定するものではないが、PVC100重量部に対する可塑剤の使用量は、通常、15〜75重量部とすることが適当であり、20〜60重量部とすることが好ましく、30〜50重量部とすることがより好ましい。
【0031】
(エラストマー)
ここに開示される技術の好ましい一態様において、PVCフィルムにエラストマーを含有させることができる。PVCフィルムにエラストマーを含有させることにより、室温(例えば25℃程度)における強度等の特性や耐熱性(例えば耐熱劣化性)の低下を抑えつつ、低温下における柔軟性を向上させることができる。したがって、かかるPVCフィルムを用いることにより、巻戻し作業性に加えて低温特性(例えば、低温におけるクラック防止性)にも優れたPVC粘着テープロールが実現され得る。PVCフィルムにエラストマーを含有させることは、該PVCフィルムの強度の向上にも役立ち得る。
【0032】
エラストマーとしては、公知の各種ポリマー材料を利用することができる。そのようなエラストマーの非限定的な例として、塩素化ポリエチレン(CPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(例えば、酢酸ビニル含有量が凡そ10重量%以上、典型的には凡そ10〜25重量%である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体)、(メタ)アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体(典型的にはスチレン−ブタジエンブロック共重合体、例えば、スチレン含有量が凡そ35重量%以下、典型的には凡そ10〜35重量%であるスチレン−ブタジエンブロック共重合体)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、その他の合成ゴム(イソプレンゴム、ブタジエンゴム等)、これらの複合物や変性物、等が挙げられる。エラストマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
ここに開示される技術においてPVCフィルムに含有させるエラストマーとしては、PVCと相溶性のよい材料を選択することが好ましい。これにより、PVCフィルムおよび該PVCフィルムを用いたPVC粘着テープの低温特性を効果的に向上させ得る。上記エラストマーは、PVC粘着テープの外観品質等の観点から、PVCフィルムにおいて良好な相溶状態が実現される範囲内の組成(含有量)で用いることが好ましい。上記相溶状態は、例えば、PVCフィルムをそのまま、あるいは延伸(例えば、流れ方向に2倍程度に延伸)した状態において、白濁の有無を観察することにより把握することができる。
【0034】
ここに開示される技術において好ましく使用し得るエラストマーの非限定的な例として、塩素化ポリエチレン(例えば、塩素含有量が凡そ25〜50重量%、典型的には凡そ30〜45重量%、好ましくは凡そ35〜45重量%である塩素化ポリエチレン)、(メタ)アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(例えば、アクリロニトリル含有量が凡そ15〜50重量%、典型的には凡そ25〜45重量%、好ましくは凡そ30〜40重量%であるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(例えば、酢酸ビニル含有量が凡そ30〜75重量%、典型的には凡そ40〜70重量%、好ましくは凡そ50〜65重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体)等が挙げられる。
【0035】
PVCフィルムにおけるエラストマーの含有量は特に限定されず、所望の効果が得られるように設定することができる。通常は、PVCフィルムにおけるエラストマーの含有量を凡そ0.5重量%以上とすることが適当であり、より高い効果を得る観点から凡そ1重量%以上とすることが好ましい。また、上述した相溶性等の観点から、PVCフィルムにおけるエラストマーの含有量は、通常、凡そ40重量%未満とすることが適当であり、凡そ35重量%以下が好ましく、凡そ30重量%以下(例えば凡そ25重量%以下)がより好ましい。ここに開示される技術は、エラストマーの使用による効果と他の特性とのバランスをとりやすくする観点から、PVCフィルムにおけるエラストマーの含有量が凡そ1〜20重量%(典型的には凡そ1〜15重量%、好ましくは凡そ1〜10重量%、例えば凡そ3〜8重量%)である態様で好ましく実施され得る。
【0036】
特に限定するものではないが、PVC100重量部に対するエラストマーの含有量は、通常、凡そ1重量部以上とすることが適当であり、より高い効果を得る観点から2重量部以上が好ましい。また、相溶性等の観点から、PVC100重量部に対するエラストマーの含有量は、通常、凡そ75重量部以下とすることが適当であり、凡そ55重量部以下(典型的には凡そ50重量部以下、例えば凡そ45重量部以下)が好ましい。好ましい一態様において、PVC100重量部に対するエラストマーの含有量を凡そ2〜25重量部(例えば凡そ5〜20重量部)とすることができる。
【0037】
(脂肪酸金属塩)
ここに開示される技術におけるPVCフィルムは、PVCおよび可塑剤に加えて、脂肪酸金属塩を含有することが好ましい。PVCフィルムは、該PVCフィルムまたはPVC粘着テープの加工時や該粘着テープの使用環境において、上記PVCフィルムに含まれるPVCが、熱、紫外線または剪断力等のような物理的エネルギー等を受け、これを起因とする化学反応等によって変色し、あるいは物理的、機械的または電気的特性を損なうことがある。PVCフィルムに脂肪酸金属塩を含有させることにより、該脂肪酸金属塩が上記化学反応を防止または抑制する安定剤として機能し得る。また、上記化学反応(典型的には、塩化水素の脱離)を防止または抑制することは、PVC粘着テープの耐熱劣化性向上に有利に貢献し得る。
【0038】
脂肪酸金属塩としては、PVCフィルムの安定剤として機能し得る化合物を、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、脂肪酸金族塩を構成する脂肪酸は、ラウリン酸、リシノール酸、ステアリン酸等の、炭素数10〜20(典型的には12〜18)程度の飽和または不飽和の脂肪酸(ヒドロキシ脂肪酸であり得る。)から好ましく選択され得る。PVCフィルムの成形性や加工性等の観点から、ステアリン酸金属塩を好ましく使用し得る。また、PVCフィルムまたはPVC粘着テープの経時変化抑制や低温における柔軟性等の観点から、ラウリン酸金属塩を好ましく使用し得る。ステアリン酸金属塩とラウリン酸金属塩とを組み合わせて用いてもよい。この場合において、ステアリン酸金属塩の使用量に対するラウリン酸金属塩の使用量の比は特に限定されないが、例えば、重量基準で凡そ0.1〜10とすることができ、通常は凡そ0.2〜5(例えば凡そ0.5〜2)とすることが適当である。
【0039】
脂肪酸金属塩を構成する金属としては、近年の環境衛生に対する意識の高まりを考慮して、鉛以外の金属(非鉛金属)が好ましく用いられる。ここに開示される技術によると、このように鉛を含む安定剤を使用しない態様においても、良好な耐熱劣化性を示すPVC粘着テープが実現され得る。上記金属としては、例えば、周期表の1族、2族、12族、13族および14族(ただしPbを除く。)のいずれかに属する金属元素を選択することができ、好適例としてLi、Na、Ca、Mg、Zn、BaおよびSnが挙げられる。上記脂肪酸金属塩としては、コストや入手容易性等の観点から、Ca塩やBa塩を好ましく採用し得る。また、PVCフィルムの成形性や加工性等の観点から、Zn塩を好ましく採用し得る。好ましい一態様において、Ca塩とZn塩とを組み合わせて用いることができる。この場合において、Ca塩の使用量に対するZn塩の使用量の比は特に限定されないが、例えば、重量基準で凡そ0.1〜10とすることができ、通常は凡そ0.2〜5(例えば凡そ0.5〜2)とすることが適当である。ここに開示される技術は、例えば、ステアリン酸Caとラウリン酸Znとを上記の重量比で含む態様や、ステアリン酸Znとラウリン酸Caとを上記の重量比で含む態様で好ましく実施され得る。なお、脂肪酸Pb塩の使用が許容される用途においては、PVCフィルムに脂肪酸Pb塩を含有させることも可能である。
【0040】
脂肪酸金属塩の使用量は特に限定されない。脂肪酸金属塩の使用量(2種以上を使用する場合にはそれらの合計量)は、例えば、PVCフィルムにおける脂肪酸金属塩の含有量が凡そ0.01重量%以上となる量とすることができ、より高い効果を得る観点から凡そ0.02重量%以上とすることが好ましく、凡そ0.05重量%以上とすることがより好ましい。脂肪酸金属塩の含有量の上限は特に制限されないが、通常はPVCフィルムの凡そ5重量%以下とすることが適当であり、低温における柔軟性等の観点から凡そ3重量%以下とすることが好ましく、凡そ1重量%以下(典型的には凡そ0.5重量%以下、例えば凡そ0.3重量%以下)とすることがより好ましい。
【0041】
(酸化防止剤)
ここに開示される技術におけるPVCフィルムには、PVCおよび可塑剤に加えて、酸化防止剤を含有させることができる。PVCフィルムに酸化防止剤を含有させることにより、PVC粘着テープの耐熱性(典型的には耐熱劣化性)を向上させ得る。
【0042】
酸化防止剤としては、酸化防止機能を発揮し得る公知の材料を特に限定なく用いることができる。酸化防止剤の例としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
酸化防止剤の好適例として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等のフェノール系酸化防止剤が挙げられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトール・テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名「Irganox1010」、チバ・ジャパン社製)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名「Irganox1076」、チバ・ジャパン社製)、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール(商品名「Irganox1726」、チバ・ジャパン社製)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名「Irganox245」、チバ・ジャパン社製)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名「TINUVIN770」、チバ・ジャパン社製)、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物(コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物)(商品名「TINUVIN622」、チバ・ジャパン社製)等が挙げられる。なかでもペンタエリスリトール・テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名「Irganox1010」、チバ・ジャパン社製)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名「Irganox245」、チバ・ジャパン社製)等が好ましい。
【0044】
酸化防止剤の使用量(2種以上を使用する場合にはそれらの合計量)は特に限定されず、例えば、PVCフィルムにおける酸化防止剤の含有量が凡そ0.001重量%以上となる量とすることができる。より高い効果を得る観点から、通常は、PVCフィルムにおける酸化防止剤の含有量を凡そ0.005重量%以上とすることが適当であり、凡そ0.01重量%以上とすることが好ましく、凡そ0.05重量%以上とすることがより好ましい。好ましい一態様において、PVCフィルムにおける酸化防止剤の含有量を凡そ0.1重量%以上とすることができ、凡そ0.5重量%以上としてもよく、さらには凡そ1重量%以上(例えば凡そ1.5重量%以上)としてもよい。酸化防止剤の含有量の上限は特に制限されないが、通常は、PVCフィルムの凡そ5重量%以下(典型的には凡そ3重量%以下)とすることが適当である。
【0045】
ここに開示される技術におけるPVCフィルムには、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、PVCフィルム(特に、PVC粘着テープ用PVCフィルム)に用いられ得る公知の添加剤を必要に応じてさらに含有させることができる。そのような添加剤の例として、顔料や染料等の着色剤、脂肪酸金属塩以外の安定剤(例えば、ジオクチルスズラウレート等の有機スズ化合物)、安定化助剤(例えば、トリアルキルホスファイト等のホスファイト、ハイドロタルサイトやゼオライト等の無機化合物)、光安定剤、紫外線吸収剤、改質剤、難燃剤、帯電防止剤、防黴剤、滑剤等が挙げられる。これらの添加剤の使用量は、PVCフィルムの分野において一般的な量とすることができる。ここに開示される技術におけるPVCフィルムは、トリメチロールプロパン等のように分子内に複数の重合性官能基(例えば(メタ)アクリロイル基)を有する化合物を含まないことが好ましい。このように複数の重合性官能基を有する化合物は、酸化等により重合してPVCフィルムを硬化させる作用を発揮することがあり、これにより低温特性が損なわれ得るためである。
【0046】
このような組成のPVCフィルムは、典型的には、対応する組成を有するPVC組成物を、熱可塑性樹脂フィルムの分野において公知の方法でフィルム形状に成形することにより得られる。そのような公知の成形方法として、例えば、溶融押出し成形法(インフレーション法、Tダイ法など)、溶融流涎法、カレンダー法などを利用することができる。ここに開示される技術は、上記PVCフィルムとして、架橋剤の添加や活性エネルギー線の照射等、該PVCフィルム全体の架橋性を意図的に高める処理が施されていないものを用いる態様においても好ましく実施することができる。このようなPVCフィルムによると、より低温特性のよいPVC粘着テープが得られる傾向にある。PVCフィルムの架橋の程度は、該PVCフィルム1gをテトラヒドロフラン(THF)10mLに投入し、攪拌して、PVCフィルムがTHFに溶解する様子を目視で観察することにより把握することができ、このときTHFに対する不溶分が残存するPVCフィルムは意図的に架橋構造が導入されたものと判断できる。
【0047】
一例として、カレンダー法を用いる場合における典型的なフィルム作成手順の概要を以下に示す。
(1)計量:PVC、可塑剤および必要に応じて使用される他の材料を、目標とする組成に応じて計量する。
(2)混合:計量された各材料を撹拌混合して、均一な混合物(典型的には粉末状の混合物、すなわち混合粉末)を調製する。
(3)混練:上記(2)で調製された混合物を加熱して溶融化し、2本ないし3本以上の混練ロール(典型的には金属製のロール)で混錬する。混練ロールの温度は、例えば100℃〜250℃(好ましくは150℃〜200℃)に設定することが適当である。
(4)カレンダー成形:上記(3)で得られた混練物をカレンダー成形機に投入して、任意の厚みを有するPVCフィルムを成形する。厚みの制御は、カレンダーロールのギャップおよび/またはロール間の速比を調整することにより行うことができる。ロール間の速比は、好ましくは1.0〜1.5、より好ましくは1.1〜1.4、例えば1.2〜1.3の範囲に調整することができる。
【0048】
上記PVC組成物(すなわち、PVCフィルムを構成する樹脂材料)の動的粘度は特に限定されない。薄手の(例えば厚さ100μm未満、典型的には厚さ80μm以下の)PVCフィルムの製造容易性の観点から、通常、上記PVC組成物の動的粘度は、凡そ4000Pa・s以下(例えば凡そ3500Pa・s以下)であることが有利である。好ましい一対応において、上記PVC組成物の動的粘度が凡そ3000Pa・s以下(より好ましくは凡そ2800Pa・s以下、例えば凡そ2500Pa・s以下)であり得る。このような動的粘度を示すPVC組成物から形成されたPVCフィルムによると、−20℃における引張破断伸びが大きいPVC粘着テープが好適に実現され得る。上記PVC組成物の動的粘度は、例えば凡そ1000Pa・s以上とすることができ、PVCフィルムの強度等の観点から、通常は凡そ1300Pa・s以上(例えば凡そ1500Pa・s以上)が適当である。
【0049】
ここで、上記PVC組成物の動的粘度とは、JIS K 7210(2009)に記載された流れ試験方法に準じて測定される値をいう。具体的には、株式会社島津製作所製のフローテスタ(キャピラリレオメータ)CFT−500D/100Dを使用し、160℃に設定した容量1cm
3のピストン内に測定試料としてのPVCフィルムを充填して溶融させ、40MPaの荷重(P)をかけて孔径(D)1mm、長さ(L)1mmのダイから押し出したときのフローレート(Q)から求められる動的粘度(単位:Pa・s)を、ここに開示される技術における動的粘度として採用することができる。
上記動的粘度は、PVC組成物に含まれる成分(PVCおよび必要に応じて用いられる可塑剤、エラストマーその他の添加剤)の選択およびそれらの配合比により調節することができる。例えば、より平均重合度の低いPVCを使用すること、よりメルトフローレート(MFR)の小さいエラストマーを使用すること、よりPVCとの相溶性のよいエラストマーを選択すること、可塑剤の使用量をより多くすること、等の1または2以上を適用することにより、上記PVC組成物の動的粘度は概して低くなる傾向にある。
【0050】
ここに開示される粘着テープにおいて、上記PVCフィルムは、該PVCフィルムからなる単層または多層の支持基材を構成していてもよく、該PVCフィルムに加えて他の層を含む支持基材を構成していてもよい。好ましい一態様において、上記他の層は、PVCフィルムの表面に設けられた印刷層、剥離処理層、プライマー層等の補助的な層であり得る。あるいは、上記PVCフィルムは、該PVCフィルムがPVCフィルム以外の樹脂フィルムと積層された構成の支持基材を構成していてもよい。好ましい一態様として、単層のPVCフィルムからなる支持基材の片面に粘着剤層が配置された構成が挙げられる。
【0051】
ここに開示される技術において、支持基材の厚さは特に限定されず、PVC粘着テープの50%延伸力F
E50が25N/19mm以下となり得る厚さであればよい。支持基材(例えば、単層のPVCフィルムからなる支持基材)の厚さは、例えば凡そ200μm以下とすることができ、通常は凡そ150μm以下(例えば凡そ120μm以下)が適当である。ここに開示される技術の適用意義は、薄手のPVCフィルムを支持基材とするPVC粘着テープロールにおいてよりよく発揮される傾向にある。例えば、上記支持基材として、厚さが凡そ100μm以下(典型的には凡そ100μm未満、より好ましくは凡そ90μm以下、さらに好ましくは凡そ80μm以下)のPVCフィルムを好ましく採用し得る。上記支持基材が厚さ凡そ75μm以下のPVCフィルムであってもよい。支持基材の厚さは、典型的には凡そ10μm以上、通常は凡そ25μm以上であり、ハンドリング性や低温下におけるクラック防止性の観点から凡そ50μm以上(例えば凡そ60μm以上)が好ましい。上記支持基材の厚さは、例えば、電線や配管等の保護や結束、電線等の周りを囲んで保護するコルゲートチューブの被覆、複数の電線を束ねたもの(集束電線)の被覆、電気絶縁、等に用いられる粘着テープに好ましく適用され得る。
【0052】
支持基材のうち粘着剤層が配置される表面には、必要に応じて、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤(プライマー)の塗布、帯電防止処理等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、基材と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。プライマーの組成は特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。下塗り層の厚さは特に制限されないが、通常、好ましくは凡そ0.01μm以上凡そ1μm以下、より好ましくは凡そ0.1μm以上凡そ1μm以下である。
【0053】
支持基材の一方の表面にのみ粘着剤層が配置される構成のPVC粘着テープにおいて、粘着剤層が配置されない側の表面(背面)には、印字性の向上、光反射性の低減、重ね貼り性向上等の目的で、上記背面にコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理等の処理が施されていてもよい。
なお、PVC粘着テープの背面には、必要に応じて、剥離処理や帯電防止処理等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。例えば基材の背面に長鎖アルキル系、シリコーン系等の剥離処理層を設けることで、粘着テープロールの巻戻し力を軽くすることができる。ここに開示される粘着テープロールは、PVC粘着テープの背面に上述のような剥離処理が施されていない形態でも好ましく実施され得る。
【0054】
<粘着剤層>
ここに開示される技術における粘着剤層は、典型的には、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料(粘着剤)から構成された層である。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion: Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E
*(1Hz)<10
7dyne/cm
2を満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)である。
【0055】
ここに開示される技術における粘着剤層は、水分散型粘着剤組成物、水溶性粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物等の、各種の形態の粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。ここで「活性エネルギー線」とは、重合反応、架橋反応、開始剤の分解等の化学反応を引き起こし得るエネルギーをもったエネルギー線を指し、紫外線、可視光線、赤外線のような光や、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線のような放射線等を包含する概念である。PVCフィルム中の可塑剤の粘着剤層への移行を抑えて粘着力の経時変化を抑制しやすいこと等から、水分散型粘着剤組成物から形成された粘着剤層が好ましい。
【0056】
上記粘着剤層を構成する粘着剤の種類は特に限定されない。上記粘着剤は、粘着剤の分野において公知のゴム系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等の各種ゴム状ポリマーの1種または2種以上をベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分)として含むものであり得る。ここで、ゴム系粘着剤とは、ゴム系ポリマーをベースポリマーとして含む粘着剤をいう。アクリル系粘着剤その他の粘着剤についても同様である。また、アクリル系ポリマーとは、1分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(アクリル系モノマー)に由来するモノマー単位をポリマー構造中に含む重合物をいい、典型的にはアクリル系モノマーに由来するモノマー単位を50重量%を超える割合で含む重合物をいう。なお、上記(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を包括的に指す意味である。
【0057】
ここに開示されるPVC粘着テープの粘着剤層としては、低温特性および被着体選択性の広さの観点から、ゴム系粘着剤を主成分とする粘着剤層(ゴム系粘着剤層)を好ましく採用し得る。上記ゴム系粘着剤は、天然ゴムおよび合成ゴムから選択される1種または2種以上のゴム系ポリマーを含むものであり得る。なお、本明細書において「主成分」とは、特記しない場合、最も多く含まれる成分をいい、典型的には50重量%を超えて含まれる成分をいう。ゴム系ポリマーとしては、天然ゴムおよび合成ゴムのいずれも使用可能である。天然ゴムとしては、粘着剤組成物に使用され得る公知の材料を特に制限なく使用することができる。ここでいう天然ゴムとは、未変性の天然ゴムに限定されず、例えばアクリル酸エステル等により変性された変性天然ゴムを包含する概念である。未変性天然ゴムと変性天然ゴムとを併用してもよい。合成ゴムとしては、粘着剤組成物に使用され得る公知の材料を特に制限なく使用することができる。好適例として、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレンゴム、クロロプレンゴム等が挙げられる。これらの合成ゴムは、未変性であってもよく、変性(例えばカルボキシ変性)されていてもよい。ゴム系ポリマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
好ましい一態様に係るPVC粘着テープは、ゴム系ラテックスに粘着付与樹脂その他の添加剤を必要に応じて配合してなる水分散型ゴム系粘着剤組成物から形成されたゴム系粘着剤層を有する。上記ゴム系ラテックスは、公知の各種ゴム系ポリマーが水に分散したものであり得る。天然ゴムラテックスおよび合成ゴムラテックスのいずれも使用可能である。天然ゴムラテックスとしては、粘着剤組成物に使用され得る公知の材料を特に制限なく使用することができる。ここでいう天然ゴムラテックスとは、未変性の天然ゴムラテックスに限定されず、例えばアクリル酸エステル等により変性された変性天然ゴムラテックスを包含する概念である。未変性天然ゴムラテックスと変性天然ゴムラテックスとを併用してもよい。合成ゴムラテックスとしては、粘着剤組成物に使用され得る公知の材料を特に制限なく使用することができる。好適例として、スチレン−ブタジエンゴムラテックス(SBRラテックス)、スチレン−イソプレンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス等が挙げられる。これらの合成ゴムラテックスに含まれる合成ゴムは、未変性であってもよく、変性(例えばカルボキシ変性)されていてもよい。ゴム系ラテックスは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
好ましい一態様に係るゴム系粘着剤組成物(例えば、水分散型ゴム系粘着剤組成物)は、ゴム系ポリマーとして、天然ゴムおよび合成ゴムの両方を含有する。このような粘着剤組成物によると、良好な粘着特性を示すPVC粘着テープが形成され得る。例えば、電線、配管等の保護や結束、上記のようなコルゲートチューブの被覆、電気絶縁、等の用途に適した粘着特性を示すPVC粘着テープが形成され得る。天然ゴムと合成ゴムとの重量比(天然ゴム:合成ゴム)としては、凡そ10:90〜90:10の範囲が好ましく、凡そ20:80〜80:20の範囲がより好ましく、凡そ30:70〜70:30の範囲がさらに好ましい。上記合成ゴムとしてはSBRを好ましく採用し得る。
【0060】
ここに開示される技術における粘着剤層(典型的にはゴム系粘着剤層)は、上述のようなベースポリマーに加えて粘着付与樹脂を含有し得る。粘着付与樹脂としては、公知の各種粘着付与樹脂から適当なものを選択して用いることができる。例えば、ロジン系樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、ケトン樹脂等の各種粘着付与樹脂から選択される1種または2種以上を用いることができる。
【0061】
ロジン系樹脂の例としては、不均化ロジン、水添ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン等のロジン誘導体や、フェノール変性ロジン、ロジンエステル等が挙げられる。フェノール変性ロジンとしては、例えば、天然ロジンやロジン誘導体にフェノール類を付加反応させて得られたものや、レゾール型フェノール樹脂と天然ロジンやロジン誘導体とを反応させて得られるフェノール変性ロジン等が挙げられる。ロジンエステルとしては、例えば、上記ロジン系樹脂と多価アルコールとを反応させたエステル化物等が挙げられる。なお、ロジンフェノール樹脂をエステル化物とすることもできる。
【0062】
テルペン系樹脂の例としては、テルペン樹脂(α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、リモネン樹脂等)、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素化テルペン樹脂等が挙げられる。
【0063】
石油樹脂の例としては、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系(C5/C9系)石油樹脂、これらの水素添加物(例えば、芳香族系石油樹脂に水素添加して得られる脂環族系石油樹脂)、これらの各種変性物(例えば、無水マレイン酸変性物)等が挙げられる。
【0064】
フェノール系樹脂の例としては、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなどの各種フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物が挙げられる。フェノール系樹脂の他の例として、上記フェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒下で付加反応させて得られるレゾールや、上記フェノール類とホルムアルデヒドとを酸触媒下で縮合反応させて得られるノボラック等が挙げられる。
【0065】
クマロンインデン系樹脂の例としては、クマロンインデン樹脂、水添クマロンインデン樹脂、フェノール変性クマロンインデン樹脂、エポキシ変性クマロンインデン樹脂等が挙げられる。
【0066】
ケトン樹脂の例としては、ケトン類(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン等の脂肪族ケトンや、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等の脂環式ケトン等)とホルムアルデヒドとの縮合によるケトン樹脂が挙げられる。
【0067】
使用する粘着付与樹脂の軟化温度は特に限定されない。例えば、軟化点が60〜160℃の粘着付与樹脂を用いることができる。また、常温で液状の粘着付与樹脂を使用してもよい。凝集力と低温特性(例えば、低温下における巻戻し性や粘着力)とをバランスよく両立する観点から、軟化点が凡そ60〜140℃(より好ましくは凡そ80〜120℃)の粘着付与樹脂を好ましく用いることができる。例えば、軟化点が上記範囲にある石油系樹脂の使用が好ましい。なお、粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定することができる。
【0068】
粘着剤層に含まれるポリマー成分と粘着付与樹脂との割合は特に限定されず、用途に応じて適宜決定することができる。ポリマー成分100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、不揮発分基準で、例えば凡そ20重量部以上とすることができ、通常は凡そ50重量部以上とすることが適当である。より高い使用効果を得る観点から、ポリマー成分100重量部に対する粘着付与樹脂の使用量は、凡そ80重量部以上とすることができ、凡そ100重量部以上としてもよい。一方、低温特性等の観点から、通常、ポリマー成分100重量部に対する粘着付与樹脂の使用量は、凡そ200重量部以下とすることが適当であり、凡そ150重量部以下とすることが好ましい。
【0069】
その他、上記粘着剤層は、粘度調整剤(増粘剤等)、レベリング剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、顔料や染料等の着色剤、光安定化剤、老化防止剤、酸化防止剤、耐水化剤、帯電防止剤、発泡剤、消泡剤、界面活性剤、防腐剤、架橋剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤を必要に応じて含有してもよい。
【0070】
粘着剤層の形成は、従来公知の種々の方法を適宜採用して行うことができる。例えば、上述のような基材(典型的にはPVCフィルム)に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を採用することができる。また、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を採用してもよい。これらの方法を組み合わせてもよい。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された支持基材背面等を利用し得る。
【0071】
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の、公知ないし慣用のコーターを用いて行うことができる。粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、目的および用途によっては点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成されてもよい。
【0072】
ここに開示される技術において、粘着剤層の厚さは特に限定されない。粘着剤層の厚さは、例えば、ここに開示されるF
UW/F
E50が適切な範囲となり得るように、適宜設定することができる。一態様において、粘着剤層の厚さは、凡そ30μm以下とすることができ、通常は25μm以下とすることが好ましく、凡そ20μm以下(典型的には凡そ20μm未満、例えば凡そ18μm以下)とすることがより好ましい。また、適切な粘着力を得る観点から、粘着剤層の厚さは、通常、凡そ3μm以上とすることが適当であり、凡そ5μm以上(例えば凡そ7μm以上)とすることが好ましい。
【0073】
ここに開示される技術は、粘着剤層の厚さが凡そ5μm以上20μm未満(典型的には凡そ7〜18μm、より好ましくは凡そ10〜15μm)である粘着テープロールの形態で好ましく実施され得る。上記粘着剤層の厚さの範囲は、例えば、電線、配管等の保護や結束、上記のようなコルゲートチューブの被覆、電気絶縁、等に用いられる粘着テープロールに好ましく適用され得る。なかでも、支持基材の厚さが凡そ100μm未満(例えば凡そ90μm未満)である粘着テープロールでは、巻戻し力の調整等の観点から、粘着剤層の厚さを上記範囲とすることが有利である。
【0074】
<粘着テープロール>
ここに開示される粘着テープロールの一構成例を
図1に示す。
図1に示す粘着テープロール100は、第一面11Aおよび第二面11Bを有する支持基材(例えば、単層のPVCフィルム)11と、その第一面11A上に配置された粘着剤層21とを備えるPVC粘着テープ1が、長手方向に捲回された構成を有する。粘着テープロール100において、粘着テープ1は、支持基材の第二面11Bに粘着剤層21が当接することによりその表面(粘着面)21Aが保護されている。
【0075】
ここに開示される粘着テープロールを構成する粘着テープ(PVC粘着テープ)は、典型的には、後述する実施例に記載の方法で測定される50%延伸力F
E50が25N/19mm以下である。かかる50%延伸力F
E50を示すPVC粘着テープは、薄手の(例えば100μm以下、さらには80μm以下の)PVCフィルムを用いた構成においても、柔軟性が高く、低温特性(低温下においてクラックを生じにくい性能)が良好となる傾向にある。かかる観点から、ここに開示される技術は、上記粘着テープの50%延伸力F
E50が24N/19mm以下(例えば22N/19mm以下)である態様で好ましく実施され得る。50%延伸力F
E50の下限は特に限定されず、例えば5N/19mm以上であり得る。粘着テープのハンドリング性(例えば、粘着テープロールからの巻戻し作業性)の観点から、通常は、50%延伸力F
E50を10N/19mm以上とすることが適当であり、12N/19mm以上とすることが好ましく、13N/19mm超(例えば15N/19mm以上)とすることがより好ましい。粘着テープの50%延伸力F
E50は、例えば、該粘着テープを構成する支持基材(典型的にはPVCフィルム)の厚さや組成を適切に設定することにより調節することができる。
【0076】
ここに開示される粘着テープロールは、典型的には、後述する実施例に記載の方法で測定される巻戻し力F
UW[N/19mm]が、上記粘着テープの50%延伸力F
E50[N/19mm]の15〜80%である。すなわち、F
UW/F
E50の値が15%〜80%の範囲にある。F
UW/F
E50を上記範囲とすることにより、50%延伸力F
E50が25N/19mm以下という柔軟性の高い粘着テープが捲回された粘着テープロールにおいても、良好な巻戻し作業性が実現され得る。巻戻し作業性を向上させることは、例えば、巻付け作業の自動化、高速化、巻付け精度の向上等の面で有利に寄与し得る。より高い巻付け作業性を得る観点から、粘着テープロールのF
UW/F
E50を60%以下(好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下)とすることができる。F
UW/F
E50の下限は特に限定されないが、通常は18%以上とすることが適当であり、20%以上とすることが好ましく、25%以上とすることがより好ましい。
【0077】
ここに開示される粘着テープロールの巻戻し力は特に限定されず、F
UW/F
E50の値が15%〜80%となるように設定することができる。巻戻しにかかる作業負荷を軽減する観点から、通常は、上記巻戻し力を18N/19mm以下とすることが適当である。巻戻し力を15N/19mm以下(好ましくは13N/19mm以下、より好ましくは12N/19mm以下)とすることにより、良好な巻戻し作業性(例えば、自動化適性の向上、高速巻戻し適性の向上等)が実現されやすくなる傾向にある。また、巻戻し力を2N/19mm以上(好ましくは3N/19mm以上、より好ましくは4N/19mm以上、例えば5N/19mm以上)とすることにより、巻付け精度を向上させやすくなる傾向にある。好ましい一態様において、粘着テープロールの巻戻し力を3〜12N/12mm(例えば5〜10N/19mm)とすることができる。特に、薄手の(例えば100μm以下、さらには80μm以下の)PVCフィルムを用いる構成においては、粘着テープロールの巻戻し力を上記範囲とすることが好適である。粘着テープロールの巻戻し力は、例えば、支持基材の組成、支持基材の背面処理の有無、粘着剤層を構成する粘着剤の組成、粘着剤層の厚さ等により適切な範囲に調節することができる。
【0078】
特に限定するものではないが、ここに開示される技術は、後述する実施例に記載の方法で測定される低温引張破断伸びが60%以上(より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、例えば100%以上)であるPVC粘着テープが捲回された粘着テープロールに好ましく適用され得る。このように低温下においても柔軟性(伸張性)の高いPVC粘着テープ(特に、PVCフィルムの厚さが100μm以下、さらには80μm以下であるPVC粘着テープ)は、低温特性(ワイヤーハーネスにおいて電線の周囲に巻き付けられる用途において、低温下におけるクラックの発生を防止する性能)に優れる傾向にある一方、概して巻戻し作業性が低くなりがちである。したがって、本発明を適用して巻戻し作業性を向上させる意義が大きい。ここに開示される技術は、例えば、上記低温引張破断伸びが凡そ100〜200%(好ましくは110〜170%)であるPVC粘着テープが捲回された粘着テープロールの形態で好ましく実施され得る。
【0079】
ここに開示される粘着テープロールを構成するPVC粘着テープの総厚(支持基材と粘着剤層との合計厚さ)は、特に限定されない。ここに開示される技術は、PVC粘着テープの薄手化および軽量化の観点から、該PVC粘着テープの総厚が凡そ120μm未満(より好ましくは凡そ110μm未満、さらに好ましくは凡そ100μm未満、例えば凡そ90μm未満)である態様で好ましく実施することができる。また、良好な巻戻し作業性が得られやすいことから、PVC粘着テープの厚さは、凡そ55μm以上とすることが適当であり、通常は凡そ60μm以上(より好ましくは凡そ70μm以上、さらに好ましくは凡そ75μm以上、例えば凡そ80μm以上)とすることが好ましい。
【0080】
特に限定するものではないが、ここに開示される技術は、PVC粘着テープの軽量化の観点から、該PVC粘着テープの坪量が凡そ120g/m
2以下、好ましくは凡そ110g/m
2以下、より好ましくは凡そ100g/m
2以下、例えば凡そ90g/m
2以下である態様で好ましく実施され得る。また、良好な巻戻し作業性が得られやすいことから、PVC粘着テープの坪量は、凡そ55g/m
2以上とすることが適当であり、通常は凡そ60g/m
2以上(より好ましくは凡そ70g/m
2以上、さらに好ましくは凡そ75g/m
2以上、例えば凡そ80g/m
2以上)とすることが好ましい。
【0081】
ここに開示される技術において、PVC粘着テープの幅は特に限定されず、目的や用途に応じて適宜設定し得る。上記PVC粘着テープの幅は、例えば5mm〜55mm、通常は10mm〜40mm、好ましくは15mm〜30mm(典型的には15mm〜25mm)であり得る。このような幅のPVC粘着テープにおいて、本発明を適用することによる効果が好適に発揮され得る。ここに開示される技術は、幅19mmのPVC粘着テープがロール状に巻かれた粘着テープロールの形態で好ましく実施され得る。
【0082】
ここに開示される粘着テープロールの直径は特に限定されないが、巻付け作業性の観点からは、上記粘着テープロールの直径が大きすぎないことが有利である。かかる観点から、粘着テープロールの直径は、通常、20cm以下(典型的には5cm〜20cm)とすることが適当である。ここに開示される技術は、直径が15cm以下(例えば5cm〜15cm)の範囲にある粘着テープロールの形態で好適に実施され得る。
【0083】
<用途>
ここに開示される粘着テープロールは、巻戻し作業性に優れることから、粘着テープロールを巻き戻しつつ被着体に粘着テープを貼り付ける(典型的には巻き付ける)使用態様が想定される各種の分野において好ましく用いられ得る。例えば、電線、配管等の保護や結束、電線等の周りを囲んで保護するコルゲートチューブの被覆、電気絶縁等の用途に好適である。なかでも好ましい用途として、ワイヤーハーネス(例えば、自動車その他の車両のワイヤーハーネス、特に内燃機関を備えた車両のワイヤーハーネス等)において該ワイヤーハーネスを構成する電線(典型的には複数本の電線)の周囲に巻き付けられる用途が挙げられる。ここで、ワイヤーハーネスを構成する電線の周囲にPVC粘着テープが巻き付けられている態様の例には、該電線の周囲にPVC粘着テープが巻き付けられている態様や、上記電線を収容した筒(例えばコルゲートチューブ)の周囲にPVC粘着テープが巻き付けられている態様が含まれる。また、ここに開示される粘着テープは、上記の用途に限定されず、従来からPVC粘着テープが用いられている各種の分野、例えば、電気部品(トランス、コイル等)、電子部品等の層間や外面の絶縁、固定、表示、識別等の分野においても好適に使用され得る。
【0084】
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1) PVCフィルムと該PVCフィルムの一方の表面に配置された粘着剤層とを含む粘着テープが長手方向に捲回された粘着テープロールであって、
上記粘着テープロールにおいて、上記粘着テープは、上記粘着剤層の表面を該粘着テープの背面に当接させて捲回されており、
上記粘着テープの50%延伸力F
E50が凡そ25N/19mm以下であり、かつ
上記粘着テープロールの巻戻し力F
UW[N/19mm]が上記粘着テープの50%延伸力F
E50[N/19mm]の凡そ15%〜凡そ80%である、粘着テープロール。
(2) 上記巻戻し力F
UWが凡そ5N/19mm〜凡そ10N/19mmである、上記(1)に記載の粘着テープロール。
(3) 上記粘着剤層の厚さが凡そ5μm〜凡そ18μmである、上記(1)または(2)に記載の粘着テープロール。
(4) 上記PVCフィルムの厚さが凡そ100μm以下である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の粘着テープロール。
(5) 坪量が凡そ100g/m
2以下である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の粘着テープロール。
(6) 上記粘着テープの幅が凡そ15mm〜凡そ25mmである、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の粘着テープロール。
(7) 上記粘着テープは、−20℃における引張破断伸びが凡そ80%以上(典型的には、凡そ80%以上かつ凡そ300%以下)である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の粘着テープロール。
(8) 上記PVCフィルムを構成する樹脂材料の動的粘度が凡そ3000Pa・s以下(典型的には、凡そ3000Pa・s以下かつ凡そ1000Pa・s以上)である、上記(1)〜(7)に記載の粘着テープロール。
(9) 上記PVCフィルムは、エラストマーを含む、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の粘着テープロール。
(10) 上記エラストマーは、
(A)塩素含有量が凡そ25〜50重量%(例えば凡そ35〜45重量%)である塩素化ポリエチレン、
(B)(メタ)アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体、
(C)アクリロニトリル含有量が凡そ15〜50重量%(例えば凡そ30〜40重量%)であるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体、および
(D)酢酸ビニル含有量が凡そ30〜75重量%(例えば凡そ50〜65重量%)であるエチレン−酢酸ビニル共重合体
から選択される1種または2種以上を含む、上記(9)に記載の粘着テープロール。
(11) 上記PVCフィルムにおける上記エラストマーの含有量が凡そ1重量%以上かつ凡そ30重量%以下である、上記(9)または(10)に記載の粘着テープロール。
(12) 上記PVCフィルムは、凡そ10重量%以上かつ凡そ60重量%以下の可塑剤を含む、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の粘着テープロール。
(13) 上記可塑剤は、安息香酸エステル、フタル酸エステル、テレフタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、マレイン酸エステルおよびクエン酸エステルから選択される1種または2種以上を含む、上記(12)に記載の粘着テープロール。
(14) 上記PVCフィルムは、脂肪酸金属塩を含む、上記(1)〜(13)のいずれかに記載の粘着テープロール。
(15) 上記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸金属塩、ラウリン酸金属塩、またはステアリン酸金属塩とラウリン酸金属塩との組み合わせである、上記(14)に記載の粘着テープロール。
(16) 上記PVCフィルムにおける上記脂肪酸金属塩の含有量が凡そ0.02重量%以上かつ凡そ1重量%以下である、上記(14)または(15)に記載の粘着テープロール。
【0085】
(17) 上記粘着剤層を構成する粘着剤は、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤およびシリコーン系粘着剤から選択される、上記(1)〜(16)のいずれかに記載の粘着テープロール。
(18) 上記粘着剤層は、ゴム系粘着剤を主成分とするゴム系粘着剤層である、上記(1)〜(17)のいずれかに記載の粘着テープロール。
(19) 上記粘着剤層は、天然ゴムと合成ゴム(例えばSBR)とを10:90〜90:10の重量比で含む、上記(1)〜(18)のいずれかに記載の粘着テープロール。
(20) 上記粘着剤層は、ロジン系樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂およびケトン樹脂から選択される1種または2種以上の粘着付与樹脂を含む、上記(1)〜(19)のいずれかに記載の粘着テープロール。
(21) 上記粘着剤層は、ゴム系ポリマーと、粘着付与樹脂としての石油樹脂とを含み、
上記石油樹脂の含有量は、上記ゴム系ポリマー100重量部に対して50〜150重量部である、上記(1)〜(20)のいずれかに記載の粘着テープロール。
【0086】
(22) PVCフィルムと、該PVCフィルムの少なくとも一方の表面に配置された粘着剤層とを含む粘着テープが長手方向に捲回された粘着テープロールであって、
上記粘着テープロールにおいて、上記粘着テープは、上記粘着剤層の表面を該粘着テープの背面に当接させて捲回されており、
上記PVCフィルムの厚さは凡そ50μm以上かつ凡そ100μm以下であり、
上記粘着剤層の厚さは凡そ5μm〜凡そ18μmであり、
上記粘着テープの幅は凡そ15mm〜凡そ25mmであり、
上記PVCフィルムは、エラストマーと、可塑剤と、脂肪酸金属塩とを含み、
上記エラストマーは、(A)塩素含有量が凡そ25〜50重量%(例えば凡そ35〜45重量%)である塩素化ポリエチレン、(B)(メタ)アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体、(C)アクリロニトリル含有量が凡そ15〜50重量%(例えば凡そ30〜40重量%)であるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体、および(D)酢酸ビニル含有量が凡そ30〜75重量%(例えば凡そ50〜65重量%)であるエチレン−酢酸ビニル共重合体から選択される1種または2種以上を含み、
上記エラストマーの含有量は、上記PVCフィルムの凡そ1重量%以上かつ凡そ30重量%以下であり、
上記粘着剤層はゴム系粘着剤層であり、
巻戻し力F
UWが凡そ5N/19mm〜凡そ10N/19mmである、粘着テープロール。
(23) 上記可塑剤は、安息香酸エステル、フタル酸エステル、テレフタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、マレイン酸エステルおよびクエン酸エステルから選択される1種または2種以上を含む、上記(22)に記載の粘着テープロール。
(24) 上記肪酸金属塩は、ステアリン酸金属塩、ラウリン酸金属塩、またはステアリン酸金属塩とラウリン酸金属塩との組み合わせであり、
上記PVCフィルムにおける上記脂肪酸金属塩の含有量が凡そ0.02重量%以上かつ凡そ1重量%以下である、上記(22)または(23)に記載の粘着テープロール。
(25) 上記ゴム系粘着剤層は、ゴム系ポリマーと粘着付与樹脂とを含み、
上記ゴム系ポリマーは、天然ゴムと合成ゴム(例えばSBR)とを10:90〜90:10の重量比で含み、
上記粘着付与樹脂として、上記ゴム系ポリマー100重量部に対して50〜150重量部の石油樹脂を含む、上記(22)〜(24)のいずれかに記載の粘着テープロール。
(26) 上記粘着テープの50%延伸力F
E50が凡そ25N/19mm以下であり、かつ
上記粘着テープロールの巻戻し力F
UW[N/19mm]が上記粘着テープの50%延伸力F
E50[N/19mm]の凡そ15%〜凡そ80%である、上記(22)〜(25)のいずれかに記載の粘着テープロール。
【0087】
(27) ワイヤーハーネスを製造する方法であって、
上記(1)〜(26)のいずれかに記載の粘着テープロールを用意することと、
上記粘着テープロールを巻き戻しつつ、上記ワイヤーハーネスを構成する電線の周囲に上記粘着テープを巻き付けることと
を包含する、ワイヤーハーネスの製造方法。
(28) 上記(1)〜(26)のいずれかに記載の粘着テープロールから巻き出された粘着テープが電線の周囲に巻き付けられている、ワイヤーハーネス。
【実施例】
【0088】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0089】
<使用材料>
以下の実施例において使用した材料の略号は次のとおりである。
(脂肪酸金属塩)
A1:ステアリン酸カルシウム(キシダ化学株式会社製品)
A2:ラウリン酸カルシウム(キシダ化学株式会社製品)
(エラストマー)
E1:カネカ株式会社製品、(メタ)アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体、商品名「カネエースB22」
E2:日本ゼオン株式会社製品、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル含有量31〜36%、商品名「Nipol 1052J」
E3:JSR株式会社製品、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル含有量41.5%、グレード名「PN20HA」
E4:日本合成化学工業株式会社製品、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有率55%、商品名「ソアブレンBH」
E5:昭和電工株式会社製品、塩素化ポリエチレン、塩素含有量38.0〜41.0%、商品名「エラスレン401A」
E7:JSR株式会社製品、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、リニア構造、スチレン含有量40%、グレード名「TR2000」
【0090】
<粘着テープの作製>
(実施例1)
固形分基準で、SBRラテックス(日本ゼオン株式会社製品、商品名「Nipol LX426」)60部、天然ゴムラテックス(GOLDEN HOPE社製品、商品名「HYTEX HA」)40部および石油樹脂エマルション120部を混合して、水分散型ゴム系粘着剤組成物を調製した。上記石油樹脂エマルションとしては、石油樹脂(エクソン社製品、脂肪族系炭化水素樹脂、商品名「エスコレッツ1202」、軟化点100℃)75部をトルエン25部に溶解し、これに界面活性剤(花王株式会社製品、商品名「エマルゲン920」)3.5部および水46.5部を加えてホモミキサーにて攪拌乳化したものを使用した。以下、上記粘着剤組成物を「粘着剤組成物A」と表記する。
【0091】
表1に示す各原料を同表に示す組成(すなわち、脂肪酸金属塩A1を0.10%、可塑剤を25%、エラストマーE1を6%の割合で含み、残部がPVCである組成)となるように計量して混合し、混練した後、カレンダー成形機により成形温度150℃で厚さ70μmの長尺なフィルム形状に成形した。このようにして例1に係るPVCフィルム(支持基材)を得た。ここで、表1に示す可塑剤としては、フタル酸ジイソノニル(株式会社ジェイ・プラス製品、商品名「DINP」)を使用した。表1に示すPVCとしては、平均重合度1000のポリ塩化ビニル(信越化学株式会社製品、商品名「TK−1000」)を使用した。
【0092】
上記PVCフィルムの一方の表面に、コンマダイレクトコーターを用いて上記粘着剤組成物Aを塗布し、乾燥させ、後述する低温巻付け試験を行うために十分な長さで巻き取って原反ロールを得た。粘着剤組成物Aの塗布量は、乾燥後において表1に示す厚さの粘着剤層が形成されるように調整した。上記原反ロールを、粘着テープの幅が19mmとなるように切断(スリット)して、実施例1に係る粘着テープロールを得た。
【0093】
(実施例2〜7および比較例1〜2)
PVCフィルム(支持基材)の組成と粘着剤層の厚さを表1に示すとおりとした他は実施例1と同様にして、実施例2〜7および比較例1〜2に係る粘着テープロールを作製した。
なお、各例に係るPVCフィルムを流れ方向に約2倍の長さに延伸して外観を目視で観察したところ、実施例1〜5および比較例1〜2のPVCフィルムはいずれも透明であった。実施例6,7のPVCフィルムでは若干の白濁が観察された。
【0094】
<測定および評価>
(50%延伸力の測定)
各例に係る粘着テープロールから巻き出した粘着テープ(幅19mm)を100mmの長さにカットして測定サンプルを作製した。23℃、50%RHの環境下において、上記測定サンプルを引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG−20kNG)にセットし(チャック間距離50mm)、300mm/分の引張速度で長手方向に50%(すなわち、1.5倍の長さとなるまで)引き伸ばしたときに上記引張試験機にかかる負荷を50%延伸力(N/19mm)として記録した。
【0095】
(巻戻し力の測定)
JIS Z 0237(2009年)に記載の「高速巻戻し力」の測定方法に準拠して測定した。具体的には、23℃、50%RHの環境下において、巻戻し力測定装置(株式会社島津製作所製、オートグラフAG−Xplusシリーズ)の一方のチャックに各例に係る粘着テープロールを治具で固定し、該粘着テープロールから繰り出した粘着テープの端を他方のチャックで掴んだ。この状態から巻戻し速度1m/分の条件で巻戻し力(N/19mm)を測定した。
【0096】
(結束作業性評価)
上記巻戻し力測定と同等の条件で粘着テープロールから粘着テープを巻き戻しつつ該粘着テープを複数本の電線の周囲に巻き付けて結束する状況を想定して、上記巻戻し力測定における粘着テープの巻戻し状況を観察し、以下の3段階で結束作業性を評価した。
E:粘着テープロールから巻き戻された粘着テープを、幅寸法の変動が2mm以下となる適度かつ安定した張力で巻き取り装置に巻き取ることができた。このとき、目視においてシワの発生や弛みは認められなかった(結束作業性:優)。
G:粘着テープロールから巻き戻された粘着テープを、幅寸法の変動が2mm以下となる適度かつ安定した張力で巻き取り装置に巻き取ることができた。このとき、目視においてシワの発生は認められなかったが、若干の弛みが時折観察された(結束作業性:良)。
P:巻戻し力の測定開始時に粘着テープが大きく伸び、巻き戻された粘着テープを巻き取り装置に緊密に巻き取ることができなかった(結束作業性に乏しい)。
【0097】
得られた結果を、各例に係る粘着テープロールの概略構成とともに表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示されるように、50%延伸力F
E50が25N/19mm以下であるPVC粘着テープが捲回された粘着テープロールのうち、F
UW/F
E50が15%〜80%の範囲にある実施例1〜7は、いずれも、比較例1,2に比べて巻戻し作業性(結束作業性)が明らかに良好であった。F
UW/F
E50が20%以上である実施例1〜6の粘着テープロールは、特に結束作業性に優れていた。
【0100】
<参考実験例>
各例に係る粘着テープロールを構成する粘着テープを幅10mm、長さ100mmのサイズにカットして測定サンプルを作製し、JIS K 7161に記載の「プラスチック−引張特性」の試験方法に準じて引張破断伸びを測定した。使用した測定装置および測定条件は以下のとおりである。
装置:引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG−20kNG)。
測定条件:チャック間距離50mm、引張速度300mm/min。
上記の条件で各測定サンプルを長さ方向に引っ張り、サンプルが破断した時点でのチャック間距離X(mm)から次式:引張破断伸び(%)=(X−50)/50×100;により低温引張破断伸びを求めた。その結果、実施例1〜7に係る粘着テープの低温引張破断伸びは、それぞれ114%、147%、110%、120%、107%、138%および49%であり、比較例1,2に係る粘着テープの低温引張破断伸びは、それぞれ147%および125%であった。すなわち、実施例1〜6および比較例1,2に係る粘着テープは、実施例7の粘着テープに比べて低温引張破断伸びの値が大きく、低温における柔軟性(伸張性)が良好であった。この結果から、実施例1〜6の粘着テープロールは、巻戻し作業性に優れ、かつ巻き出された粘着テープの低温特性にも優れることがわかる。
【0101】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。