特許第6791662号(P6791662)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6791662ポリエチレン系パウダー、ポリエチレン系パウダーの製造方法、ポリエチレン系樹脂組成物、及び架橋ポリエチレン管の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791662
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】ポリエチレン系パウダー、ポリエチレン系パウダーの製造方法、ポリエチレン系樹脂組成物、及び架橋ポリエチレン管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/16 20060101AFI20201116BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20201116BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   C08F210/16
   C08J3/24 ACES
   C08L23/08
【請求項の数】11
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-126478(P2016-126478)
(22)【出願日】2016年6月27日
(65)【公開番号】特開2018-2759(P2018-2759A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】菊地 章友
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−503281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F10,110,210、C08J3,5
C08L23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとの共重合体からなるポリエチレン系パウダーであり、
190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレートが0.1g/10分以上200g/10分以下であり、
密度が920kg/m3以上960kg/m3以下であり、
分子量分布Mw/Mnが2.0以上6.0以下であり、
水銀圧入法により測定される細孔容積が1.1mL/g以上2.0mL/g以下であり、
前記ポリエチレン系パウダーの平均粒径D50が50μm以上300μm以下であり、
累積粒度分布より下記(式I)から求められるRelative Span Factorが2.0以下である、
ポリエチレン系パウダー。
Relative Span Factor=(D90−D10)/D50・・・(式I)
【請求項2】
前記累積粒度分布より前記(式I)から求められるRelative Span Factorが1.0以上である、
請求項1に記載のポリエチレン系パウダー。
【請求項3】
水銀圧入法により測定される細孔表面積が5m2/g以上20m2/g以下である、請求項1又は2に記載のポリエチレン系パウダー。
【請求項4】
水銀圧入法により測定される微分細孔分布において、
モード径が25μm以上80μm以下であり、細孔径1μm以上10μm以下に極大ピークが存在する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリエチレン系パウダー。
【請求項5】
嵩密度が、0.25g/cm3以上0.45g/cm3以下である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリエチレン系パウダー。
【請求項6】
Alの含有量が、150質量ppm以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリエチレン系パウダー。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリエチレン系パウダーの製造方法であって、
メタロセン触媒を用いて、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとを共重合する工程を有し、
前記メタロセン触媒が、平均粒子径が1.0μm以上20μm以下であり、圧縮強度が1MPa以上30MPa以下である無機担体物質を触媒担体とするものである、
ポリエチレン系パウダーの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリエチレン系パウダーと、下記(i)〜(iii)のいずれか一を含有する、
ポリエチレン系樹脂組成物。
(i)ラジカル発生剤とシラン化合物
(ii)シラノール縮合触媒
(iii)ラジカル発生剤とシラン化合物とシラノール縮合触媒
【請求項9】
(i)ラジカル発生剤とシラン化合物
(ii)シラノール縮合触媒
(iii)ラジカル発生剤とシラン化合物とシラノール縮合触媒
の、いずれか一を、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリエチレン系パウダーと混合する工程を有する、ポリエチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたポリエチレンペレット76質量%以上95質量%以下と、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリエチレン系パウダー5質量%以上24質量%とを使用し、ラジカル発生剤の存在下で、シラン化合物を用いて、押出機内においてシラン変性させるとともに、シラノール縮合触媒の存在下でシラノール化を促進させ、ポリエチレン系樹脂組成物を得る工程と、
当該ポリエチレン系樹脂組成物を管状に押出成形して成形体を得る工程と、
前記成形体を水雰囲気下に晒して、架橋させる工程と、
を、有する架橋ポリエチレン管の製造方法。
【請求項11】
シラノール縮合触媒を、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリエチレン系パウダーと混合した後、押出機内で溶融混練することで触媒マスターバッチを製造する工程と、
チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたポリエチレンペレットをラジカル発生剤の存在下で、シラン化合物を用いて、押出機内においてシラン変性させるとともに、前記触媒マスターバッチの存在下でシラノール化を促進させ、ポリエチレン系樹脂組成物を得る工程と、
当該ポリエチレン系樹脂組成物を管状に押出成形して成形体を得る工程と、
前記成形体を水雰囲気下に晒して、架橋させる工程と、
を、有する、架橋ポリエチレン管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系パウダー、ポリエチレン系パウダーの製造方法、ポリエチレン系樹脂組成物、及び架橋ポリエチレン管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の金属材料に比べて耐腐食性や施工性に優れたプラスチックが、配管材料として用いられている。この中でも、特に耐圧強度や高温度領域での耐クリープ性に優れているシラン架橋ポリエチレンを用いることが多くなっている。
このようなシラン架橋ポリエチレンは、例えば、給湯用、給水用、床暖房用、及びロードヒーティング用のパイプ、電力ケーブルの絶縁層、並びに収縮チューブ等の分野で広く使用されている。
これらの分野の中でも、特に給湯用、給水用、床暖房用、及びロードヒーティング用のパイプに使用されているシラン架橋ポリエチレンパイプには、配管時の作業性の観点から柔軟性が要求されている。
【0003】
シラン架橋ポリエチレンパイプは、例えば、以下の方法によって製造される。
まず、押出機を使用して、ポリエチレンに対してラジカル発生剤を用いて有機不飽和シラン化合物をグラフトさせ(以下、「シラングラフト変性」ともいう。)、シラングラフト変性ポリエチレンペレットを製造する。
次に、押出機を用いて前記シラングラフト変性ポリエチレンペレットをパイプ成形する際に、シラノール縮合触媒を混練しておき、得られたパイプを水分の存在下で架橋させ(以下、「シラン架橋」ともいう。)、シラン架橋ポリエチレンパイプを得る。
【0004】
上記シラン架橋に関し、スイスのノキア−マユファー社は、「モノシル法」という方法を開発している。
当該モノシル法においては、ポリエチレンペレットにラジカル発生剤、有機不飽和シラン化合物、およびシラノール縮合触媒を含む液体状の副原料を押出機中に直接導入することにより、押出機内でシラングラフト変性しながらパイプ成形しつつ、シラノール縮合触媒を混練し、得られたパイプを水分の存在下で架橋させることにより、押出機を一度のみ使用することでシラン架橋ポリエチレンパイプが得られる。
モノシル法においては、ラジカル発生剤、有機不飽和シラン化合物、およびシラノール縮合触媒をポリエチレンと混合することなく押出機に投入するため、副原料の濃度の不均一による架橋ムラが生じやすくなり、製品の歩留まりが悪化するという問題を有している。
そこで当該モノシル法では、長い混練部を有し、かつ押出し速度に合わせて、液体状の副原料の供給量を制御し、更に、押出機内での架橋を抑制するために、シラノール縮合触媒を押出機途中で添加できるような特殊な構造を有する押出機を用いてこの問題を改善しようとしている。
【0005】
前記「モノシル法」で製造されるシラン架橋ポリエチレンパイプとして、原料に重合触媒としてメタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン(以下、「メタロセン系ポリエチレン」ともいう。)を使用する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
当該特許文献1に開示されている技術により、常温時の柔軟性及びより優れた高温時の強度を兼ね備えたシラン架橋ポリエチレンパイプを得ることができる。
しかし、一般的なチーグラー・ナッタ触媒と比較して、メタロセン触媒は、メタロセン化合物、メチルアルミノキサン(以下、MAOともいう。)やボレート化合物のような活性化剤(以下、「助触媒」ともいう。)が高価であるため、メタロセン系ポリエチレンは通常のポリエチレンと比較して高価であり、それを用いて製造されるシラン架橋ポリエチレンパイプは経済性に劣るものになるという問題を有している。
かかる問題点に鑑み、重合触媒としてチーグラー・ナッタ触媒を用いて重合されたポリエチレン(以下、「チーグラー系ポリエチレン」ともいう。)とメタロセン系ポリエチレンを混合して使用し、メタロセン系ポリエチレンの使用量を削減する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
更に、シラン架橋ポリエチレンパイプを、前記「モノシル法」を用い、かつ汎用の押出機で製造する方法として、シラノール縮合触媒と酸化防止剤等を、ポリエチレン系パウダーと事前に溶融混練し、別途ペレット(以下、触媒マスターバッチともいう。)を製造する技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−320651号公報
【特許文献2】特開平11−322951号公報
【特許文献3】特開2009−120846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示された技術では、特定の分子量のチーグラー系ポリエチレンとメタロセン系ポリエチレンを混合して使用することで、「常温時の柔軟性」及びより優れた「高温時の強度」を兼ね備え、シラン量を低減でき、すなわち架橋効率の向上が図られ、連続生産性を向上させることができる、としているが、使用されるメタロセン系ポリエチレンはチーグラー系ポリエチレンの25〜40質量%となっており、その使用量はまだ多く、また、特殊な押出機が必要であるため、経済性に実用上十分に優れているとは言えない、という問題を有している。
【0008】
また、特許文献3に開示された技術においては、触媒マスターバッチを使用することで特殊な押出機を必要とはしていないが、架橋触媒である錫化合物と酸化防止剤等を、ポリエチレンパウダーと事前に溶融混練し、別途触媒マスターバッチを製造する必要があるため、やはり経済性に実用上十分に優れているとは言えない、という問題を有している。
【0009】
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑み、従来技術において「モノシル法」で用いられているような特殊な構造の押出機を用いることなく、汎用の押出機を用いることができ、かつ触媒マスターバッチを使用しなくてもモノシル法の実施が可能であり、かつ、チーグラー系ポリエチレンとメタロセン系ポリエチレンを混合して使用する際にメタロセン系ポリエチレンの使用量を低減化しても、十分に高いゲル分率を有する架橋ポリエチレン管を製造することが可能なポリエチレン系パウダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述従来技術の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、メルトフローレート、密度、分子量分布が所定の数値範囲内であり、水銀圧入法により測定される細孔容積、ポリエチレン系パウダーの平均粒径D50が所定の範囲内であり、ポリエチレン系パウダーの粒径の均一度を表す指標であるスパンが所定範囲であるポリエチレン系パウダーが、上述の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0011】
〔1〕
エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとの共重合体からなるポリエチレン系パウダーであり、
190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレートが0.1g/10分以上200g/10分以下であり、
密度が920kg/m3以上960kg/m3以下であり、
分子量分布Mw/Mnが2.0以上6.0以下であり、
水銀圧入法により測定される細孔容積が1.1mL/g以上2.0mL/g以下であり、
前記ポリエチレン系パウダーの平均粒径D50が50μm以上300μm以下であり、
累積粒度分布より下記(式I)から求められるRelative Span Factorが2.0以下である、
ポリエチレン系パウダー。
Relative Span Factor=(D90−D10)/D50・・・(式I)
〔2〕
前記累積粒度分布より前記(式I)から求められるRelative Span Factorが1.0以上である、前記〔1〕に記載のポリエチレン系パウダー。
〔3〕
水銀圧入法により測定される細孔表面積が5m2/g以上20m2/g以下である、
前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリエチレン系パウダー。
〔4〕
水銀圧入法により測定される微分細孔分布において、
モード径が25μm以上80μm以下であり、細孔径1μm以上10μm以下に極大ピークが存在する、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のポリエチレン系パウダー。
〔5〕
嵩密度が、0.25g/cm3以上0.45g/cm3以下である、
前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のポリエチレン系パウダー。
〔6〕
Alの含有量が、150質量ppm以下である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のポリエチレン系パウダー。
〔7〕
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のポリエチレン系パウダーの製造方法であって、
メタロセン触媒を用いて、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとを共重合する工程を有し、
前記メタロセン触媒が、平均粒子径が1.0μm以上20μm以下であり、圧縮強度が1MPa以上30MPa以下である無機担体物質を触媒担体とするものである、
ポリエチレン系パウダーの製造方法。
〔8〕
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のポリエチレン系パウダーと、下記(i)〜(iii)のいずれか一を含有する、
ポリエチレン系樹脂組成物。
(i)ラジカル発生剤とシラン化合物
(ii)シラノール縮合触媒
(iii)ラジカル発生剤とシラン化合物とシラノール縮合触媒
〔9〕
(i)ラジカル発生剤とシラン化合物
(ii)シラノール縮合触媒
(iii)ラジカル発生剤とシラン化合物とシラノール縮合触媒
の、いずれか一を、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のポリエチレン系パウダーと混合する工程を有する、ポリエチレン系樹脂組成物の製造方法。
〔10〕
チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたポリエチレンペレット76質量%以上95質量%以下と、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のポリエチレン系パウダー5質量%以上24質量%とを使用し、ラジカル発生剤の存在下で、シラン化合物を用いて、押出機内においてシラン変性させるとともに、シラノール縮合触媒の存在下でシラノール化を促進させ、ポリエチレン系樹脂組成物を得る工程と、
当該ポリエチレン系樹脂組成物を管状に押出成形して成形体を得る工程と、
前記成形体を水雰囲気下に晒して、架橋させる工程と、
を、有する架橋ポリエチレン管の製造方法。
〔11〕
シラノール縮合触媒を、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のポリエチレン系パウダーと混合した後、押出機内で溶融混練することで触媒マスターバッチを製造する工程と、
チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたポリエチレンペレットをラジカル発生剤の存在下で、シラン化合物を用いて、押出機内においてシラン変性させるとともに、前記触媒マスターバッチの存在下でシラノール化を促進させ、ポリエチレン系樹脂組成物を得る工程と、
当該ポリエチレン系樹脂組成物を管状に押出成形して成形体を得る工程と、
前記成形体を水雰囲気下に晒して、架橋させる工程と、
を、有する、架橋ポリエチレン管の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、汎用の押出機で、触媒マスターバッチを使用しなくても「モノシル法」を実施することが可能となり、かつ、チーグラー系ポリエチレンとメタロセン系ポリエチレンを混合して使用する際にメタロセン系ポリエチレンの使用量を低減化しても、十分に高いゲル分率を有する架橋ポリエチレン管を安定的に製造することが可能なポリエチレン系パウダーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】〔実施例〕中に記載する製造例3、製造例6のポリエチレン系パウダーの、細孔径と微分細孔分布との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施することができる。
【0015】
〔ポリエチレン系パウダー〕
本実施形態のポリエチレン系パウダーは、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとの共重合体であり、
190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレートが0.1g/10分以上200g/10分以下であり、
密度が920kg/m3以上960kg/m3以下であり、
分子量分布Mw/Mnが2.0以上6.0以下であり、
水銀圧入法により測定される細孔容積が1.1mL/g以上2.0mL/g以下であり、
ポリエチレン系パウダーの平均粒径D50が50μm以上300μm以下であり、
累積粒度分布より下記(式I)から求められるRelative Span Factorが2.0以下である。
Relative Span Factor=(D90−D10)/D50・・・(式I)
ただし、D50は累積粒度分布の小粒子側からの累積50質量%、D90は累積粒度分布の小粒子側からの累積90質量%、D10は累積粒度分布の小粒子側からの累積10質量%である。
【0016】
前記構成を有することにより、本実施形態のポリエチレン系パウダーは、ラジカル発生剤、有機不飽和シラン化合物、及びシラノール縮合触媒などの副原料と混合した場合において、流動性に優れる均一な粉体となり、押出機上部のホッパーで滞留することなく、汎用の押出機に安定的にフィードすることが可能になるため、触媒マスターバッチを製造することなく、かつ、特殊な構造の押出機を使用することなく、モノシル法によるシラン架橋ポリエチレンパイプの製造が可能となる。
また、上記本実施形態のポリエチレン系パウダー中にラジカル発生剤と有機不飽和シラン化合物を含むポリエチレン系樹脂組成物とすることにより、グラフト変性、架橋効率に優れるため、チーグラー系ポリエチレンと混合して使用した場合において、本実施形態のポリエチレン系パウダーの使用量を低減化したとしても高いゲル分率を有するものとなる。
さらに、ポリエチレン系パウダー中にシラノール縮合触媒を含浸させたポリエチレン系樹脂組成物とすることにより、シラノール縮合触媒を押出機の途中から添加する必要がなく、触媒マスターバッチと同様に使用することができるため、触媒マスターバッチを製造・使用することなく、汎用の押出機でモノシル法によるシラン架橋ポリエチレン管の製造が可能になる。
【0017】
以下、上述の各要件について詳細に説明する。
本実施形態のポリエチレン系パウダーは、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィン(以下、単に「コモノマー」ともいう。)との共重合体である。
本実施形態で用いることができるコモノマーは、特に限定されないが、例えば下記式のα−オレフィンが挙げられる。
2C=CHR2
(前記式中、R2は、直鎖状又は分岐状である、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
コモノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、及び4−メチル−1−ペンテンが挙げられる。この中では、経済性及び取扱いの容易さの観点から、プロピレン、及び1−ブテンが好適である。また、炭素数が6以下のα−オレフィンを用いることにより、炭素原子1000個あたりの3級炭素原子の数が相対的に少なくなりすぎず、効率的にグラフト変性され、ゲル分率が高くなる傾向にある。
本実施形態のポリエチレン系パウダー中に占めるエチレンのモル%としては、密度を好適な数値範囲に調整するという観点から、80%以上100%以下であることが好ましく、より好ましくは85%以上99%以下であり、さらに好ましくは90%以上99.9%以下である。
【0018】
本実施形態のポリエチレン系パウダーの190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(以下、MFRともいう。)は、0.1g/10分以上200g/10分以下であり、好ましくは0.5g/10分以上100g/10分以下であり、より好ましくは1.0g/10分以上50g/10分以下であり、さらに好ましくは2.0g/10分以上10g/10分以下である。
前記MFRが0.1g/10分以上であることにより、メルトフラクチャーが発生しにくく、本実施形態の架橋ポリエチレン管の外観性を損なうことがない、という効果が得られる。また、押出成型加工性にも優れる。さらに、チーグラー系ポリエチレンと混合して使用する際に、均一に混合され、機械強度が高まる傾向にある。
一方、前記MFRが200g/10分以下であることにより、チーグラー系ポリエチレンと混合して使用する際に、押出成型加工性に優れ、樹脂圧を低減することができる。
ポリエチレン系パウダーのMFRを上記範囲内に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、主に共重合体の分子量により調整することができる。分子量は、重合の際に水素を存在させること等によって調整することができる。
MFRは、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0019】
ポリエチレン系パウダーの密度は、920kg/m3以上960kg/m3以下であり、好ましくは925kg/m3以上955kg/m3以下であり、より好ましくは930kg/m3以上950kg/m3以下である。
ポリエチレン系パウダーの密度が920kg/m3以上であることにより、本実施形態の架橋ポリエチレン管の耐圧及び耐久性能がより向上する傾向にある。また、架橋ポリエチレン管の製造時における押出し負荷も低減する傾向にある。
一方、ポリエチレン系パウダーの密度が960kg/m3以下であることにより、架橋ポリエチレン管のゲル分率を保持できるとともに、剛性と柔軟性のバランスを取ることができ、配管施工性にも優れる傾向にある。
ポリエチレン系パウダーの密度を上記範囲内に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、主にエチレンと共重合するコモノマーの導入量等を調整することによって制御する方法が挙げられる。
ポリエチレン系パウダーの密度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0020】
本実施形態のポリエチレン系パウダーの分子量分布Mw/Mnは、2.0以上6.0以下であり、好ましくは3.0以上6.0以下であり、より好ましくは3.1以上5.7以下であり、さらに好ましくは3.2以上5.0以下である。
分子量分布(Mw/Mn)が2.0以上であることにより、パイプの押出し成形時の樹脂圧、及びシェアを低減することができることに起因して、押出成形性を保持でき、外観性を損なうことがない、という効果が得られる。また、押し出し成形時における負荷を低減することができるほか、本実施形態の架橋ポリエチレン管のゲル分率及び外観性が向上する。
一方、分子量分布(Mw/Mn)が6.0以下であることにより、優れた成形性を保持したまま、架橋に寄与しない低分子量成分が低減される。また、本実施形態の架橋ポリエチレン管の柔軟性及びゲル分率が向上する。
ポリエチレン系パウダーの分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲内に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、後述する担持型メタロセン触媒を使用し、単段重合を行うこと等が挙げられる。また、重合温度や連鎖移動剤の量を調整することによっても制御することが可能である。
分子量分布Mw/Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう。)から求められる重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)に基づき算出され、ポリエチレン系パウダーを溶解したオルトジクロロベンゼン溶液をGPCで測定し、市販の単分散ポリスチレンを用いて作成した検量線に基づいて求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0021】
本実施形態のポリエチレン系パウダーの水銀圧入法により測定した細孔容積は、1.10mL/g以上2.00mL/g以下であり、好ましくは1.15mL/g以上1.90mL/g以下であり、より好ましくは1.20mL/g以上1.80mL/g以下であり、さらに好ましくは1.3mL/g以上1.70mL/g以下である。細孔容積が1.10mL/g以上であることにより、ラジカル発生剤、有機不飽和シラン化合物、シラノール縮合触媒などの副原料がパウダー内部に浸透しやすく、均一な粉体が形成される傾向にあり、2.00mL/g以下であることにより、パウダー内部に浸透した副原料が内部に保持されやすい傾向にある。
細孔容積は、ポリエチレン系パウダーの内部構造や、ポリエチレン系パウダーの凝集状態と関連しており、表面から内部へ貫通する細孔の容積や、ポリエチレン系パウダーの粒子が密着凝集した場合に存在する凝集粒子内部の空間容積を意味している。
ポリエチレン系パウダーの細孔容積を上記範囲内に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、平均粒径、触媒担体の硬さの指標である圧縮強度が制御された割れやすい触媒担体を使用すること、重合器の後、フラッシュタンクでエチレン、水素、α−オレフィンを除いた後、更に所定の条件のバッファータンクに原料供給がない状態で保持すること、主にエチレンと共重合するコモノマーの導入量、重合時の溶媒量とパウダー量の比から計算されるスラリー濃度を下げること、等が挙げられる。
【0022】
本実施形態のポリエチレン系パウダーの平均粒径D50は、50μm以上300μm以下であり、好ましくは60μm以上250μm以下、より好ましくは70μm以上200μm以下である。
平均粒径D50が50μm以上であることにより、静電気による帯電に起因するホッパー部への付着を抑制でき流動性に優れる傾向にあり、300μm以下であることにより、押出機で溶融しやすく、溶け残りに起因する凹凸がパイプ中に発生しにくい傾向にある。
ポリエチレン系パウダーの平均粒径D50は篩式粒度分布測定により測定することができる。具体的には、JIS Z8801で規定された複数種類の篩と受け皿を準備し、受け皿の上に開き目の小さい順に篩を重ね、最上段の篩にポリエチレン系パウダーを投入後、ロータップ型フルイ振盪機にセットし分級した後、それぞれの篩および受け皿に残ったパウダーの質量を目開きの小さい側から積分した積分曲線において、50%の質量になる粒径を平均粒径とすることができる。
ポリエチレン系パウダーの平均粒径D50を上記範囲内に制御する方法としては、例えば、使用する触媒の粒子径を調整することによって制御する方法、また、単位触媒量あたりのポリエチレンパウダーの生産性を調整することにより制御する方法が挙げられる。
【0023】
本実施形態のポリエチレン系パウダーの累積粒度分布より下記(式I)から求められるRelative Span Factorは2.0以下であり、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは、1.1以上1.9以下であり、さらに好ましくは1.2以上1.8以下である。
Relative Span Factor=(D90−D10)/D50・・・(式I)
ポリエチレン系パウダーのD10およびD90は篩式粒度分布測定により測定することができる。具体的には、JIS Z8801で規定された複数種類の篩と受け皿を準備し、受け皿の上に開き目の小さい順に篩を重ね、最上段の篩にポリエチレン系パウダーを投入後、ロータップ型フルイ振盪機にセットし分級した後、それぞれの篩および受け皿に残ったパウダーの質量を測定し、目開きの小さい側から積分した積分曲線において、10%、90%の質量になる粒径をD10、D90とすることができる。
【0024】
Relative Span Factorはポリエチレン系パウダーの粒径の均一性を表す指標であり、低い方がポリエチレン系パウダーの粒径がそろっていることを示す。Relative Span Factorが2.0以下であることにより、粒径がそろっているため、ラジカル発生剤、有機不飽和シラン化合物、シラノール縮合触媒などの副原料がパウダーと均一に混ざり合う傾向にある。
ポリエチレン系パウダーのRelative Span Factorを上記範囲内に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、粒径の小さいポリエチレン系パウダーを遠心分離器の回転数を上げることで、濾液側に分離すること、平均粒径、触媒担体の硬さの指標である圧縮強度が制御された割れやすい触媒担体を使用し、かつ、触媒を重合系へフィードするポンプを往復ポンプではなく、回転ポンプを使用すること等の方法が挙げられる。
【0025】
上述の工程を経ることで水銀圧入法により求められる細孔容積とRelative Span Factorを上記範囲に制御できる理由は必ずしも明確ではないが、(1)割れやすい触媒担体を使用することで、重合反応によりポリマー鎖が成長する際に触媒担体が破砕され、内部空孔ができることで細孔容積が大きくなる、(2)一方で、割れやすい触媒担体を使用すると、製造プロセス内で応力がかかることに起因して、反応前に割れてしまうことがあり、この触媒(以下、微粉触媒)は重合活性を有しているが、粒径が小さいため、ポリマー鎖が成長しても、粒径が大きくならず、粒径の小さいポリエチレンパウダー(以下、微粉)が生成してしまい、微粉生成により、Relative Span Factorが低くなることが考えられる。
上述の工程により、生成する微粉を製品側に混入させない、または、回転ポンプを使用して往復ポンプで触媒が受ける応力をなくして微粉触媒を生成させないことにより、Relative Span Factorを2.0以下に制御することができる。
【0026】
本実施形態のポリエチレン系パウダーの水銀圧入法により測定した細孔表面積は、5m2/g以上20m2/g以下が好ましく、より好ましくは6m2/g以上17m2/g以下であり、さらに好ましくは7m2/g以上14m2/g以下である。
細孔表面積が5m2/g以上であることにより、ラジカル発生剤、有機不飽和シラン化合物、シラノール縮合触媒などの副原料がパウダー内部に保持しやすく、均一な粉体が形成される傾向にあり、20m2/g以下であることにより、内部に保持された副原料が押出機内でパウダーと均一に反応しやすい傾向にある。
ポリエチレン系パウダーの細孔表面積を上記範囲内に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、平均粒径、触媒担体の硬さの指標である圧縮強度が制御された割れやすい触媒担体を使用すること、重合時の溶媒量とパウダー量の比から計算されるスラリー濃度を調整すること、等の方法が挙げられる。
【0027】
本実施形態のポリエチレン系パウダーの水銀圧入法により測定される微分細孔分布において、モード径は、25μm以上80μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以上75μm以下、さらに好ましくは35μm以上70μm以下である。
モード径が25μm以上であることにより、ポリエチレン系パウダーの粒子表面に存在する細孔径が大きく、ラジカル発生剤、有機不飽和シラン化合物、シラノール縮合触媒などの副原料を粒子内部へ浸透することが容易になる傾向にあり、80μm以下であることにより副原料は浸透しやすく、かつ、表面から染み出すことがない傾向にある。
ポリエチレン系パウダーの細孔のモード径は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0028】
さらに、本実施形態のポリエチレン系パウダーは、微分細孔分布において、細孔径1μm以上10μm以下に極大ピークが存在することが好ましい。これはポリエチレン系パウダー内部の微細な細孔の有無を表す指標であり、これが存在することにより、ラジカル発生剤、有機不飽和シラン化合物、シラノール縮合触媒などの副原料がパウダー内部に保持しやすい傾向にある。
図1に、本実施形態のポリエチレン系パウダーの、細孔径と微分細孔分布との関係の具体例を示す。
図1中の製造例3、製造例6のポリエチレン系パウダーは、いずれも後述する実施例において製造したポリエチレン系パウダーである。図1に示すように、製造例3においては、細孔径1μm以上10μm以下に極大ピークが存在せず、製造例6においては、細孔径1μm以上10μm以下に極大ピークが存在している。
本実施形態において、微分細孔分布において細孔径1μm以上10μm以下に極大ピークが存在するように制御する方法としては、特に限定されないが、製造工程を調整することや、平均粒径、触媒担体の硬さの指標である圧縮強度が制御された割れやすい触媒担体を使用すること等の方法が挙げられる。
製造工程について、具体的には、(1)重合時の溶媒量とパウダー量の比から計算されるスラリー濃度を低くする、(2)重合器の後、フラッシュタンクでエチレン、水素、α−オレフィンを除いた後、更に所定の条件のバッファータンクに原料供給がない状態で保持する等の方法が挙げられる。
上述の工程を経ることで微分細孔分布において細孔径1μm以上10μm以下に極大ピークが存在する理由は必ずしも明確ではないが、(1)割れやすい触媒担体を使用することで細孔が生成しやすく、かつ、スラリー濃度が低いことで重合発熱の除熱効率がよいこと、(2)原料供給のない低温・低圧のバッファータンクで少量の原料が存在し、活性の残っている触媒粒子が、コモノマーが相対的に多い環境で重合することで、パウダー内部での重合発熱により微細な細孔が生成する、と推測される。
【0029】
ポリエチレン系パウダーの嵩密度は、0.25g/cm3以上0.45g/cm3以下であることが好ましく、より好ましくは0.26g/cm3以上0.44g/cm3以下、さらに好ましくは0.27g/cm3以上0.43g/cm3以下である。
嵩密度が0.25g/cm3以上0.45g/cm3以下であることにより、ラジカル発生剤、有機不飽和シラン化合物、シラノール縮合触媒などの副原料と混合した際の混ざり具合が向上する傾向にある。
ポリエチレン系パウダーの嵩密度を記範囲内に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、重合時の温度や圧力、主にエチレンと共重合する他のコモノマーの導入量、重合時の溶媒量とパウダー量の比から計算されるスラリー濃度を調整すること等の方法が挙げられる。
ポリエチレン系パウダーの嵩密度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0030】
本実施形態のポリエチレン系パウダーのアルミニウム元素含有量(以下、「Al含量」ともいう。)は、好ましくは150質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppm以下であり、さらに好ましくは40質量ppm以下である。
Al含量が150質量ppm以下であることにより、Al成分がシラン変性剤の触媒として意図せずに作用することによる副反応を抑制できる傾向にある。
ポリエチレン系パウダーのAl含量を上記範囲内に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、メタロセン触媒を使用し、活性化剤としてMAO(メチルアルミノキサン)を使用しないこと等の方法が挙げられる。
【0031】
〔ポリエチレン系パウダーの製造方法〕
本実施形態のポリエチレン系パウダーの製造方法は、触媒を用いて、エチレンと炭素数が3以上6以下のα−オレフィンとを共重合することにより、上記ポリエチレン系パウダーを得る重合工程を有する。
触媒としては、平均粒子径が1.0μm以上20μm以下であり、圧縮強度が1MPa以上30MPa以下である無機担体物質を触媒担体として有するものであり、メタロセン触媒を使用するものであればよく、特に限定されないが、後述する担持型幾何拘束型メタロセン触媒が好ましい。
【0032】
(担持型幾何拘束型メタロセン触媒)
本実施形態のポリエチレン系パウダーの製造工程において用いることができる担持型幾何拘束型メタロセン触媒は、特に限定されないが、少なくとも(ア)無機担体物質(以下、「成分(ア)」、「(ア)」ともいう。)、(イ)有機アルミニウム化合物(以下、「成分(イ)」、「(イ)」ともいう。)、(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物(以下、「成分(ウ)」、「(ウ)」ともいう。)、及び(エ)該環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤(以下、「成分(エ)」、「(エ)」ともいう。)を用いて調製することができる。
【0033】
(ア)無機担体物質としては、特に限定されないが、例えば、SiO2、Al23、MgO、TiO2等の酸化物;MgCl2等のハロゲン化合物が挙げられる。この中で好ましい担体物質は、SiO2である。
(ア)無機担体物質の平均粒子径は、1.0μm以上20μm以下であり、好ましくは2.0μm以上15μm以下であり、より好ましくは3.0μm以上10μm以下である。無機担体物質の平均粒子径は、レーザー式光散乱法による測定方法での体積換算の平均粒子径である。具体的には島津製作所製「SALD−2100」等を用いて測定することができる。
(ア)無機担体物質の圧縮強度は、1MPa以上30MPa以下であり、好ましくは2MPa以上25MPa以下であり、より好ましくは3MPa以上20MPa以下である。
(ア)無機担体物質の圧縮強度は、割れやすさの指標であり、数値が低いほど割れやすいことを示す。具体的には、島津製作所製「微小圧縮試験機 MCT−510」等を用いて、任意に選んだ10個以上の粒子の圧壊強度を測定し、その平均値を圧縮強度とすることができる
(ア)無機担体物質の平均粒子径、圧縮強度が上述の範囲内であることにより、重合反応時に無機担体物質が破砕されながら、ポリエチレン系パウダーが成長することにより、細孔容積が大きくなる傾向にある。
【0034】
前記(ア)無機担体物質は、必要に応じて(イ)有機アルミニウム化合物で処理されることが好ましい。
ここで「処理」とは、無機担体物質を不活性溶媒中で撹拌、分散させながら、(イ)有機アルミニウム化合物を滴下し、0℃〜70℃で30分以上撹拌することで、担体物質表面にある活性水素と有機アルミニウム化合物を反応させることを意味する。
好ましい(イ)有機アルミニウム化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライド;ジエチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムメトキシド等のアルミニウムアルコキシド;メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、及びメチルイソブチルアルモキサン等のアルモキサンが挙げられる。
これらの中で、トリアルキルアルミニウム、及びアルミニウムアルコキシドが好ましく、より好ましくはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、及びトリイソブチルアルミニウムである。
【0035】
担持型幾何拘束型メタロセン触媒は、(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物(以下、単に「遷移金属化合物」ともいう。)を含む。
「遷移金属化合物」は、特に限定されないが、例えば、下記式(1)で表すことができる。
lMXpX’q・・・(1)
式(1)中、Mは、1つ以上の配位子Lとη5結合をしている、酸化数+2、+3又は+4の周期律表第4族に属する遷移金属を示す。
【0036】
前記式(1)中、Lは、各々独立に、環状η結合性アニオン配位子を示す。
環状η結合性アニオン配位子は、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基又はオクタヒドロフルオレニル基であり、これらの基は、20個までの非水素原子を含む炭化水素基、ハロゲン、ハロゲン置換炭化水素基、アミノヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基から各々独立に選ばれる1〜8個の置換基を任意に有していてもよく、さらには2つのLが20個までの非水素原子を含むヒドロカバジイル、ハロヒドロカルバジイル、ヒドロカルビレンオキシ、ヒドロカルビレンアミノ、シラジイル、ハロシラジイル、アミノシラン等の2価の置換基により結合されていてもよい。
【0037】
前記式(1)中、Xは、各々独立に、60個までの非水素性原子を有する1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、又はM及びLに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子を示す。
前記式(1)中、X’は、各々独立に、炭素数4〜40からなる、フォスフィン、エーテル、アミン、オレフィン及び共役ジエンから選ばれる中性ルイス塩基配位性化合物を示す。
【0038】
前記式(1)中、lは、1又は2の整数を示す。
pは、0、1又は2の整数を示し、Xが1価のアニオン性σ結合型配位子又はM及びLに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子を示すとき、pは、Mの形式酸化数より1以上少ない整数を示し、また、XがMと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子を示すとき、pは、Mの形式酸化数よりl+1以上少ない整数を示す。また、qは、0、1又は2の整数を示す。
(ウ)遷移金属化合物は、式(1)でlが1を示すものが好ましい。
【0039】
(ウ)遷移金属化合物の好適な例は、下記式(2)で表される化合物である。
【0040】
【化1】
【0041】
前記式(2)中、Mは、形式酸化数+2、+3又は+4の、チタン、ジルコニウム又はハフニウムを示す。
また、前記式(2)中、R1は、各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン、又はこれらの複合基を示し、これらは各々20個までの非水素原子を有することができ、また、近接するR1同士が相俟ってヒドロカルバジイル、シラジイル、ゲルマジイル等の2価の誘導体を形成して環状となっていてもよい。
【0042】
前記式(2)中、X”は、各々独立にハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルアミノ基又はシリル基を示し、これらは各々20個までの非水素原子を有しており、また、2つのX”が炭素数5〜30の中性の共役ジエン若しくは2価の誘導体を形成してもよい。
Yは、−O−、−S−、−NR3−又は−PR3−を示し、Zは、SiR32、CR32、SiR32SiR32、CR32CR32、CR3=CR3、CR32SiR32又はGeR32を示し、ここでR3は、各々独立に炭素数1〜12のアルキル基又はアリル基を示す。
また、nは、1〜3の整数を示す。
【0043】
(ウ)遷移金属化合物としてより好適な例は、下記式(3)及び下記式(4)で表される化合物である。
【0044】
【化2】
【0045】
【化3】
【0046】
前記式(3)及び(4)中、それぞれ、R1は、各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン、又はこれらの複合基を示し、各々20個までの非水素原子を有することができる。
また、Mは、チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを示す。
Z及びYは、前記式(2)中で示すものと同様のものを示す。
また、X及びX’は、前記式(2)中のX”で示すものと同様のものを示す。
【0047】
前記式(3)及び(4)中、それぞれ、pは、0、1又は2を示し、また、qは0又は1を示す。pが2、qが0を示すとき、Mの酸化数は、+4でありかつXは、ハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ジヒドロカビルアミド基、ジヒドロカルビルフォスフィド基、ヒドロカルビルスルフィド基、シリル基、又はこれらの複合基であり、20個までの非水素原子を有しているものを示す。
【0048】
前記式(3)及び(4)中、それぞれ、pが1、qが0を示すとき、Mの酸化数が+3でありかつXが、アリル基、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェニル基及び2−(N,N−ジメチル)−アミノベンジル基から選ばれる安定化アニオン配位子を示すか;Mの酸化数が+4でありかつXが、2価の共役ジエンの誘導体を示すか;MとXとが共にメタロシクロペンテン基を形成しているか、である。
【0049】
前記式(3)及び(4)中、それぞれ、pが0、qが1を示すとき、Mの酸化数は+2であり、かつX’は、中性の共役又は非共役ジエンであって任意に1つ以上の炭化水素基で置換されていてもよく、また、X’は、40個までの炭素原子を含むことができ、Mとπ型錯体を形成している。
【0050】
(ウ)遷移金属化合物としてさらに好適な例は、下記式(5)及び下記(6)で表される化合物である。
【0051】
【化4】
【0052】
【化5】
【0053】
前記式(5)及び式(6)中、それぞれ、R1は、各々独立に、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。また、Mは、チタニウムを示し、Yは−O−、−S−、−NR3−、−PR3−を示す。
Zは、SiR32、CR32、SiR32SiR32、CR32CR32、CR3=CR3、CR32SiR32、又はGeR32を示し、R3は、各々独立に水素、又は、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリル基、若しくはこれらの複合基を示し、これらは、20個までの非水素原子を有することができ、また必要に応じて、Z中の2つのR3同士、又はZ中のR3とY中のR3とが相俟って環状となっていてもよい。
X及びX’は、前記式(3)又は式(4)中で示すものと同様のものを示す。
【0054】
前記式(5)及び(6)中、それぞれ、pは0、1又は2を示し、qは、0又は1を示す。ただし、pが2、qが0を示すとき、Mの酸化数は+4でありかつXは、各々独立にメチル基又はベンジル基を示す。また、pが1、qが0を示すとき、Mの酸化数が+3でありかつXが、2−(N,N−ジメチル)アミノベンジルを示すか、Mの酸化数が+4でありかつXが、2−ブテン−1,4−ジイルを示す。また、pが0、qが1を示すとき、Mの酸化数は+2であり、かつX’は、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン又は1,3−ペンタジエンを示す。
これらのジエン類は、金属錯体を形成する非対称ジエン類を例示したものであり、実際には各幾何異性体の混合物である。
【0055】
担持型幾何拘束型メタロセン触媒は、(エ)遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤(以下、単に「活性化剤」ともいう。)を含む。
一般的には、メタロセン触媒においては、(ウ)遷移金属化合物と上記(エ)活性化剤により形成される錯体とが、触媒活性種として高いオレフィン重合活性を示す。
本実施形態のポリエチレン系パウダーの製造方法において、(エ)活性化剤としては、特に限定されないが、例えば、下記式(7)で表される化合物が挙げられる。
[L−H]d+[Mmpd- ・・・(7)
【0056】
前記式(7)中、[L−H]d+は、プロトン付与性のブレンステッド酸を示し、Lは、中性ルイス塩基を示す。
また、[Mmpd-は、相溶性の非配位性アニオンを示し、Mは、周期律表第5族〜第15族から選ばれる金属又はメタロイドを示し、Qは、各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキシ基、アリルオキシ基、炭化水素基、又は炭素数20個までの置換炭化水素基を示し、また、ハライドであるQは、1個以下である。
mは、1〜7の整数を示し、pは、2〜14の整数を示し、dは、1〜7の整数を示し、p−m=dである。
【0057】
(エ)活性化剤のより好ましい例は、下記式(8)で表される化合物である。
[L−H]d+[Mmn(Gq(T−H)rzd- ・・・(8)
【0058】
前記式(8)中、[L−H]d+は、プロトン付与性のブレンステッド酸を示し、Lは、中性ルイス塩基を示す。
また、[Mmn(Gq(T−H)rzd-は、相溶性の非配位性アニオンを示し、Mは、周期律表第5族〜第15族から選ばれる金属又はメタロイドを示し、Qは、各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキシ基、アリルオキシ基、炭化水素基、又は炭素数20個までの置換炭化水素基を示し、また、ハライドであるQは、1個以下である。
Gは、M及びTと結合するr+1の価数を持つ多価炭化水素基を示し、Tは、O、S、NR、又はPRを示す。
ここで、Rは、ヒドロカルビル、トリヒドロカルビルシリル基、トリヒドロカルビルゲルマニウム基又は水素を示す。また、mは、1〜7の整数を示し、nは、0〜7の整数を示し、qは、0又は1の整数を示し、rは、1〜3の整数を示し、zは、1〜8の整数を示し、dは、1〜7の整数を示し、n+z−m=dである。
【0059】
(エ)活性化剤のさらに好ましい例は、下記式(9)で表される化合物である。
[L−H]+[BQ31- ・・・(9)
【0060】
前記式(9)中、[L−H]+は、プロトン付与性のブレンステッド酸を示し、Lは、中性ルイス塩基を示す。
また、[BQ31-は、相溶性の非配位性アニオンを示し、Bは、硼素元素を示し、Qは、各々独立に、ペンタフルオロフェニル基を示し、Q1は、置換基としてOH基を1つ有する炭素数6〜20の置換アリル基を示す。
【0061】
前記プロトン付与性のブレンステッド酸としては、以下に限定されないが、例えば、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリ(n−オクチル)アンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジブチルメチルアンモニウム、ジブチルエチルアンモニウム、ジヘキシルメチルアンモニウム、ジオクチルメチルアンモニウム、ジデシルメチルアンモニウム、ジドデシルメチルアンモニウム、ジテトラデシルメチルアンモニウム、ジヘキサデシルメチルアンモニウム、ジオクタデシルメチルアンモニウム、ジイコシルメチルアンモニウム、及びビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム等のようなトリアルキル基置換型アンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウム、及びN,N−ジメチルベンジルアニリニウム等のようなN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;トリフェニルカルボニウムカチオンが挙げられる。
【0062】
前記相溶性の非配位性アニオンとしては、以下に限定されないが、例えば、トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、ジフェニル−ジ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2,4−ジヒドロキシフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(2,4−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジ−トリフルオリメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(2−ヒドロキシエチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−(4´−ヒドロキシフェニル)フェニル)ボレート、及びトリス(ペンタフルオロフェニル)(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ボレートが挙げられる。
これらの相溶性の非配位性アニオンを「ボレート化合物」ともいう。
触媒活性の観点並びにAl、Mg、Ti、Zr及びHfの合計含有量を低減する観点から、担持型幾何拘束型メタロセン触媒の活性化剤が、ボレート化合物であることが好ましい。好ましいボレート化合物としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレートが挙げられる。
【0063】
(エ)活性化剤として、下記式(10)で表される、ユニットを有する有機金属オキシ化合物も用いることができる。
【0064】
【化6】
【0065】
(式(10)中、M2は、周期律表第13族〜第15族の金属、又はメタロイドを示し、Rは、各々独立に炭素数1〜12の炭化水素基又は置換炭化水素基を示し、nは、金属M2の価数を示し、mは、2以上の整数を示す。)
【0066】
(エ)活性化剤の好ましい他の例は、下記式(11)で表される、ユニットを含む有機アルミニウムオキシ化合物である。
【0067】
【化7】
【0068】
(式(11)中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基を示し、mは、2〜60の整数を示す。)
【0069】
(エ)活性化剤のより好ましい例は、下記式(12)で表される、ユニットを含むメチルアルモキサンである。
【0070】
【化8】
【0071】
(式(12)中、mは、2〜60の整数を示す。)
【0072】
また、本実施形態のポリエチレン系パウダーの製造方法においては、前記(ア)〜(エ)成分を用いた担持型幾何拘束型メタロセン触媒の他に、必要に応じて有機アルミニウム化合物を触媒として用いることもできる。
有機アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(13)で表される化合物が挙げられる。
AlRn3-n ・・・(13)
【0073】
前記式(13)中、Rは、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又は炭素数6〜20のアリル基を示し、Xは、ハロゲン、水素又はアルコキシル基を示し、nは、1〜3の整数を示す。
また、有機アルミニウム化合物は、式(13)で表される化合物の混合物であっても構わない。
【0074】
上述した担持型幾何拘束型メタロセン触媒は、上述した成分(ア)に、成分(イ)、成分(ウ)、及び成分(エ)を担持させることにより得ることができる。
成分(イ)、成分(ウ)、及び成分(エ)を担持させる方法は特に限定されないが、例えば、成分(イ)、成分(ウ)及び成分(エ)をそれぞれが溶解可能な不活性溶媒中に溶解させ、成分(ア)と混合した後、溶媒を留去する方法;成分(イ)、成分(ウ)及び成分(エ)を不活性溶媒に溶解後、固体が析出しない範囲でないでこれを濃縮して、次に濃縮液の全量を粒子内に保持できる量の成分(ア)を加える方法;成分(ア)に成分(イ)、及び成分(エ)をまず担持させ、ついで成分(ウ)を担持させる方法;成分(ア)に成分(イ)及び成分(エ)、及び成分(ウ)を逐次に担持させる方法が挙げられる。
本実施形態の成分(ウ)、及び成分(エ)は、液体又は固体であることが好ましい。
また、成分(イ)、成分(ウ)、成分(エ)は、担持の際、不活性溶媒で希釈して使用してもよい。
【0075】
前記不活性溶媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;これらの混合物が挙げられる。
かかる不活性溶媒は、乾燥剤、吸着剤等を用いて、水、酸素、硫黄分等の不純物を除去して用いることが好ましい。
【0076】
前記成分(ア)1.0gに対し、前記成分(イ)は、Al原子換算で1.0×10-5〜1.0×10-1モルが好ましく、より好ましくは1.0×10-4〜5.0×10-2モル、成分(ウ)は、1.0×10-7〜1.0×10-3モルが好ましく、より好ましくは5.0×10-7〜5.0×10-4モル、成分(エ)は、1.0×10-7〜1.0×10-3モルが好ましく、より好ましくは5.0×10-7〜5.0×10-4モルの範囲である。各成分の使用量及び担持方法は、活性、経済性、パウダー特性、及び反応器内のスケール等により決定される。得られた担持型幾何拘束型メタロセン触媒は、担体に担持されていない有機アルミニウム化合物、ボレート化合物、チタン化合物を除去することを目的に、不活性溶媒を用いでデカンテーション、濾過等の方法により洗浄することもできる。
【0077】
上述した一連の溶解、接触、洗浄等の操作は、その単位操作毎に選択される−30℃以上80℃以下の温度で行うことが好ましい。そのような温度のより好ましい範囲は、0℃以上50℃以下である。また、担持型幾何拘束型メタロセン触媒を得る一連の操作は、乾燥した不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0078】
担持型幾何拘束型メタロセン触媒は、それのみで本実施形態のポリエチレン系パウダーの製造工程において、エチレンとα−オレフィンの共重合工程に用いることが可能であるが、溶媒や反応の被毒の防止のため、付加成分として有機アルミニウム化合物を共存させて使用することもできる。
好ましい有機アルミニウム化合物としては、以下に限定されないが、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムハイドライド、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライド;ジエチルアルミニウムエトキシド等のアルミニウムアルコキシド;メチルアルモキサン、イソブチルアルミキサン、及びメチルイソブチルアルモキサン等のアルモキサンが挙げられる。
これらの中でも、トリアルキルアルミニウム、及びアルミニウムアルコキシドが好ましい。より好ましくはトリイソブチルアルミニウムである。
【0079】
本実施形態のポリエチレン系パウダーの製造工程における重合方法は、スラリー重合法が好ましい。
重合を行う場合、一般的には重合圧力は、0.1MPaG以上10MPaG以下が好ましく、より好ましくは0.3MPaG以上3.0MPaG以下である。
また、重合温度は、20℃以上115℃以下が好ましく、より好ましくは50℃以上85℃以下である。
【0080】
スラリー重合法に用いる溶媒としては、上述した不活性溶媒が好適であり、不活性炭化水素溶媒がより好ましい。不活性炭化水素溶媒としては、炭素数6以上8以下の炭化水素溶媒、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;これらの混合物が挙げられる。
【0081】
本実施形態のポリエチレン系パウダーの製造工程における重合方法は、連続式で重合することが好ましい。エチレンガス、溶媒、触媒等を連続的に重合内に供給し、生成したポリエチレン系パウダーと共に連続的に排出することで、急激なエチレンの反応による部分的な高温状態を抑制することが可能となり、重合系内がより安定化する傾向にある。均一な状態でエチレンが反応すると、分子量分布の広幅化が抑制される傾向にある。
【0082】
また、重合器の後、フラッシュタンクでエチレン、水素、α−オレフィンを除いた後、更に所定の条件のバッファータンクに原料供給がない状態で保持することが好ましい。バッファータンクの温度は、65℃以上が好ましく、68℃以上がより好ましく、70℃以上が特に好ましい。また上限は80℃以下が好ましく、75℃以下がより好ましい。
【0083】
本実施形態におけるポリエチレン系パウダーの製造方法における溶媒分離方法は、デカンテーション法、遠心分離法、フィルター濾過法等が挙げられるが、ポリエチレン系パウダーと溶媒との分離効率が高い遠心分離法がより好ましい。溶媒分離後にポリエチレン系パウダーに含まれる溶媒の量としては、特に限定されないが、好ましくはポリエチレン系パウダーの質量に対して50質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは55質量%以上85質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以上80質量%以下である。
【0084】
ポリエチレン系パウダーを合成するために使用する触媒の失活方法としては、特に限定されないが、ポリエチレン系パウダーと溶媒を分離した後に実施することが好ましい。
触媒を失活させる薬剤としては、特に限定されないが、例えば、酸素、水、アルコール類、が挙げられる。
【0085】
本実施形態のポリエチレン系パウダーの製造方法においては、溶媒分離後にポリエチレンの融点以下の温度で保持することで、残留揮発分を除去・乾燥することが好ましい。
本実施形態のポリエチレン系パウダーの製造方法における乾燥に際しては、窒素やアルゴン等の不活性ガスを流通させた状態で実施することが好ましい。また、乾燥温度としては、好ましくは50℃以上120℃以下であり、より好ましくは50℃以上110℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上100℃以下である。乾燥温度が50℃以上であれば、効率的な乾燥が可能となる傾向にある。一方、乾燥温度が120℃以下であれば、ポリエチレン系パウダーの分解や架橋を抑制した状態で乾燥することが可能となる傾向にある。上述のような各成分以外にもポリエチレン系パウダーの製造に有用な他の公知の成分を含むことができる。
【0086】
〔ポリエチレン系樹脂組成物〕
本実施形態のポリエチレン系樹脂組成物は、上述した本実施形態のポリエチレン系パウダーと、下記(i)〜(iii)のいずれか一を含有する。
(i)ラジカル発生剤とシラン化合物
(ii)シラノール縮合触媒
(iii)ラジカル発生剤とシラン化合物とシラノール縮合触媒
【0087】
〔ポリエチレン系樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のポリエチレン系樹脂組成物は、本実施形態のポリエチレン系パウダーに、上記(i)〜(iii)のいずれかを混合することにより得られる。
なおこの場合の混合とは、ポリエチレン系パウダーを溶融することなく、粉の状態のポリエチレン系パウダーと、上記ラジカル発生剤、シラン化合物、及びシラノール縮合触媒のうちの任意の成分を、ミキサーやブレンダー等を用いて混合することを意味する。
【0088】
〔架橋ポリエチレン管の製造方法〕
本実施形態の架橋ポリエチレン管は、上述した本実施形態のポリエチレン系樹脂組成物を用いた成形体である。
本実施形態の架橋ポリエチレン管の製造方法は、ラジカル発生剤、シラン化合物、およびシラノール縮合触媒を上述した本実施形態のポリエチレン系パウダーと混合して、押出機に投入し、更に、別途チーグラー・ナッタ触媒を使用して製造されたポリエチレンペレット76質量%以上95質量%以下に対し、上記本実施形態のポリエチレン系パウダー5質量%以上24質量%以下を使用して、ラジカル発生剤の存在下で、前記シラン化合物により、押出機内においてシラン変性させるとともに、シラノール縮合触媒の存在下でシラノール化を促進させ、ポリエチレン系樹脂組成物を得、当該ポリエチレン系樹脂組成物を管状に押出成形して成形体を得る工程と、
前記成形体を水雰囲気下に晒して架橋させる工程と、
を、包含する。
【0089】
また、本実施形態の架橋ポリエチレン管の製造方法においては、シラノール縮合触媒を、本実施形態のポリエチレン系パウダーと混合して押出機内で溶融混練することで触媒マスターバッチを製造する工程と、
チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたポリエチレンペレットをラジカル発生剤の存在下で、シラン化合物を用いて、押出機内においてシラン変性させるとともに、前記触媒マスターバッチの存在下でシラノール化を促進させ、ポリエチレン系樹脂組成物を得る工程と、
当該ポリエチレン系樹脂組成物を管状に押出成形して成形体を得る工程と、
前記成形体を水雰囲気下に晒して、架橋させる工程と、
を、有するものとしてもよい。
【0090】
(有機過酸化物;ラジカル発生剤)
本実施形態ポリエチレン系樹脂組成物に添加されるラジカル発生剤としては、有機過酸化物を用いることができる。
有機過酸化物は、パイプ成形時の押出工程でラジカルに分解し、有機不飽和シラン化合物をエチレン−α−オレフィン共重合体にグラフトさせる。有機過酸化物の添加量は、エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対して、好ましくは0.025〜1質量部、より好ましくは0.03〜0.9質量部、さらに好ましくは0.05〜0.8質量部である。0.025質量部以上とすることで、エチレン−α−オレフィン共重合体と有機不飽和シラン化合物とのグラフト変性反応が効率的に進行する。また1質量部以下とすることで、ポリエチレン系樹脂組成物から得られる架橋ポリエチレン管の通水中に有機過酸化物が移行して臭気の原因となることを防ぐことができる。
【0091】
有機過酸化物としては、以下に限定されないが、例えば、公知のジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチル−オキシ)−ヘキシン−3、1,3−ビス−(t−ブチル−オキシ−イソプロピル)−ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレリック酸−ブチルエステル、1,1−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンキシン−3、ベンゾイルパーオキシド、ジシクロベンゾパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート等が挙げられる。特にジクミルパーオキサイドが経済的であり好ましい。
【0092】
(シラン化合物)
本実施形態のポリエチレン系樹脂組成物に添加されるシラン化合物としては、有機不飽和シラン化合物を用いることができる。
本実施形態のポリエチレン系樹脂組成物中のシラン化合物、例えば有機不飽和シラン化合物の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対して、好ましくは0.2〜5質量部、より好ましくは0.3〜4質量部、さらに好ましくは0.4〜3.4質量部である。
有機不飽和シラン化合物の含有量を0.2質量部以上とすることで、本実施形態の架橋ポリエチレン管のシラン架橋が十分に進行する。
また有機不飽和シラン化合物の含有量を5質量部以下とすることで、目ヤニ及びパイプ押し出し時の負荷の上昇等が発生して、パイプの押出成形性が不良となることや、成形時に臭気が発生することを抑制することができる。また、有機不飽和シラン化合物は高価であるため、経済的にも好ましい。
有機不飽和シラン化合物は、有機過酸化物の作用により発生したエチレン−α−オレフィン共重合体中のラジカルと反応し、該エチレン−α−オレフィン共重合体へグラフト反応する。有機不飽和シラン化合物は、このような反応が進行し、かつ後述のシラン架橋が進行するものであれば限定されないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
【0093】
(シラノール縮合触媒)
本実施形態のポリエチレン系樹脂組成物に添加されるシラノール縮合触媒は、エチレン−α−オレフィン共重合体にグラフトした有機不飽和シラン化合物を、水の存在下で架橋させる作用を有する。
シラノール縮合触媒としては、以下に限定されないが、例えば、公知のジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズジアセテート、酢酸第一スズ、カプリル酸第一スズ、ナフテン酸スズ、カプリル酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸鉄、ナフテン酸コバルト、チタン酸テトラブチルエステル、エチルアミン、ジブチルアミン、ジブチルオクテートが挙げられ、特にジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルオクテートが好ましい。これらシラノール縮合触媒の使用方法は特に限定されない。
特に、ラジカル発生剤としての有機過酸化物、有機不飽和シラン化合物を含む樹脂組成物にシラノール縮合触媒を添加する場合は、当該樹脂組成物100質量部に対して0.001〜1質量部が好ましい。0.001質量部以上とすることで、シラン架橋を短時間で行うことができる。一方、1質量部以下とすることで、シラン架橋ポリエチレン管に通水した場合に、水中にシラノール縮合触媒が溶出することを抑えることができる。
【0094】
本実施形態の架橋ポリエチレン管は、ゲル分率が65%以上であることが好ましい。
このゲル分率は、エチレン−α−オレフィン共重合体のシラングラフト変性反応により有機不飽和シラン化合物が均一にグラフトされ、さらにシラノール縮合触媒により、均一に架橋した場合に高い値となる。
一般にゲル分率が高いシラン架橋ポリエチレン管は、短期及び長期の熱間内圧クリープ等の機械強度に優れることが知られているが、従来のエチレン−α−オレフィン共重合体において、高いゲル分率を得るためには、多量の有機不飽和シラン化合物を用いる必要がある。一方、本実施形態のエチレン−α−オレフィン共重合体を含むポリエチレン系樹脂組成物は少量の有機不飽和シラン化合物添加量でも高いゲル分率が得られる。
なお、ゲル分率は実施例に記載の方法により測定することができる。
【実施例】
【0095】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態について詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
まず、下記に各物性及び評価の測定方法及び評価基準について述べる。
【0096】
〔ポリエチレン系パウダーの物性〕
(物性1)MFR
後述する〔製造例1〜14〕で得られた各ポリエチレン系パウダーのMFRを、ASTM−D−1238に従い、190℃、荷重2.16kgで測定した。
【0097】
(物性2)密度
後述する〔製造例1〜14〕で得られた各ポリエチレン系パウダーの密度を、JIS K6760に準拠し、密度勾配管法により、測定した。
【0098】
(物性3)Mw/Mn
後述する〔製造例1〜14〕で得られた各ポリエチレン系パウダー20mgに、o−ジクロロベンゼン15mLを導入して、150℃で1時間撹拌することで試料溶液を調製し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定を行った。
別途、市販の標準ポリスチレンのMwに係数0.43を乗じてポリエチレン換算分子量とし、溶出時間とポリエチレン換算分子量のプロットから1次校正直線を作成した。
GPCの測定結果及び上記検量線に基づいて、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
なお、測定に用いた装置及び条件は以下のとおりとした。
装置:Waters社製150−C ALC/GPC
検出器:RI検出器
移動相:o−ジクロロベンゼン(高速液体クロマトグラフ用)
流量:1.0mL/分
カラム:昭和電工(株)製AT−807Sを1本と東ソー(株)製TSK−gelGMH−H6を2本連結したものを用いた。
カラム温度:140℃
【0099】
(物性4)水銀圧入法による細孔特性
後述する〔製造例1〜14〕で得られた各ポリエチレン系パウダーについて、水銀圧入法により、細孔容積、細孔表面積、モード径、及び細孔径1μm以上10μm以下の極大ピークの有無を測定した。
図1に、製造例3及び製造例6のポリエチレン系パウダーの細孔径と微分細孔分布との関係を示す。
なお、測定に用いた装置及び条件は以下のとおりであった。
装置 :島津製作所製オートポア9500
サンプル量:500mg
1.低圧測定
測定圧力 :0〜30psia
測定細孔径:6〜120μm
2.高圧測定
測定圧力 :30〜33000psia
測定細孔径:0.005〜6μm
モード径は微分細孔分布において、微分値が最大となるところの細孔径を意味する。
細孔容積は、測定時の最大圧力までに水銀が圧入された細孔容積の積算値をサンプル重量で割った値である。
【0100】
(物性5)パウダーの平均粒径D50およびRelative Span Factor
後述する〔製造例1〜14〕で得られた各ポリエチレン系パウダーについて、JIS Z8801で規定された8種類の篩(目開き:600μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、53μm)の篩と受け皿を準備し、受け皿の上に開き目の小さい順に篩を重ね、最上段の篩に100gのポリエチレン系パウダーを投入後、ロータップ型フルイ振盪機にセットし分級した後、それぞれの篩および受け皿に残ったパウダーの質量を測定した。
ポリエチレン系パウダーの平均粒径D50は、上述の各篩および受け皿に残ったポリエチレンパウダーの質量を目開きの小さい側から積分した積分曲線において、50%の質量になる粒径を平均粒径D50とした。
また、10%、90%の質量になる粒径をD10、D90とし、下記(式I)によりRelative Span Factorを算出した。
Relative Span Factor=(D90−D10)/D50・・・(式I)
【0101】
(物性6)嵩密度
後述する〔製造例1〜14〕で得られた各ポリエチレン系パウダーの嵩密度を、JIS K6891に準拠し、測定した。
【0102】
(物性7)Al含量
後述する〔製造例1〜14〕で得られた各ポリエチレン系パウダー0.2gをテフロン(登録商標)製分解容器に量り取り、高純度硝酸を加えてマイルストーンゼネラル(株)製マイクロウェーブ分解装置ETHOS−TCにて加圧分解後、日本ミリポア(株)製超純水製造装置で精製した純水で全量を50mLとしたものを検液として使用した。
上記検液に対し、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)Xシリーズ2を使用して、内標準法でAlの定量を行った。
【0103】
〔ポリエチレン系パウダーの評価〕
(評価1)副原料を含んだ状態での粉体流動性
後述する〔製造例1〜14〕で得られた各ポリエチレン系パウダー100質量部に対し、有機不飽和シラン化合物であるビニルトリメトキシシランを28質量部、ラジカル発生剤であるジクミルパーオキサイドを1質量部、シラノール縮合触媒であるジオクチル錫ジラウレートを0.24質量部添加し、ヘンシェルミキサーを用いて均一混合した。
それをJIS Z2502に準拠し、ポリエチレン系パウダー50gが落下する時間(秒/50g)を測定した。
評価基準は以下の通りとした。
○:落下時間が50秒未満
△:落下時間が50秒以上
×:ホッパーから落下しない
【0104】
〔架橋ポリエチレン管の評価〕
(評価2)ゲル分率
下記記載の方法で製造した架橋ポリエチレン管10gを切削し、キシレン溶媒を用いてソックスレー抽出器で10時間抽出し、抽出残量を測定し以下の式により求めた。
ゲル分率(%)=抽出残量(g)/10(g)×100
【0105】
(評価3)臭気
下記記載の方法で製造した架橋ポリエチレン管を50℃の温水中に24時間浸漬した後の水の臭いを3点比較フラスコ法で行った。
3点比較フラスコ法とは、3個のフラスコのうち、任意の1個にのみ管内滞留水を入れ、臭いから管内滞留水を当てる方法である。
パネラーは50人で行った。
評価基準は以下の通りとした。
○:正解率が20%未満。つまりシラン化合物特有の臭気がほとんど確認されなかった。
△:正解率が20%以上60%未満。つまりシラン化合物特有の臭気が一部確認された。
×:正解率が60%以上。つまりシラン化合物特有の臭気が多くの場合確認された。
【0106】
(評価4)連続成形性
押出機出口樹脂温度を190℃になるようにバレル温度を設定し、同じ条件でそれぞれ5日間連続押出機を運転した。評価基準は以下の通りとした。
○:5日の間にゲル状の異物も劣化物も発生しなかった。
△:5日の間にゲル状の異物、または、劣化物が発生した。
×:5日の間にゲル状の異物も劣化物も発生した。
【0107】
(評価5)全有機炭素量
純水と下記記載の方法で製造した架橋ポリエチレン管を95℃で接水させ、16時間静置した後、その検水を燃焼酸化非分散赤外線吸収方式で試験した。
具体的には、検水を空気または酸素とともに、酸化触媒である白金を充填し950℃に加熱した燃焼管に送り込み、有機物を二酸化炭素に酸化させた。
その二酸化炭素量を赤外線分析計で測定し全炭素量を求めた。
その後、無機炭素の測定を行うため、試料水を無機炭素用の酸化触媒であるリン酸を充填し約150℃に熱した燃焼管に送り込み、全炭素量を測定した方法と同様に二酸化炭素を発生させ測定した。
全炭素量から無機炭素量を引き、その差を全有機炭素量(TOC)とした。
【0108】
〔触媒の調製〕
(担持型幾何拘束型メタロセン触媒[A]の調製)
600℃で脱水された触媒担体用シリカ(平均粒子径22μm、圧縮強度40MPa)を、窒素雰囲気下、容量1.8Lのオートクレーブ中にてシリカ40gをヘキサン800mL中に分散させ、スラリーを得た。
得られたスラリーを攪拌下25℃に保ちながら、トリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1mol/L)を84mL加え、その後2時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面水酸基とを反応させ、シリカの表面水酸基がトリエチルアルミニウムによりキャッピングされている成分[a]のヘキサンスラリーを得た。
一方、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル(以下、「チタニウム錯体」と記載する。)200mmolをアイソパーE(登録商標)[エクソンケミカル社(米国)製の炭化水素混合物の商品名]1000mLに溶解し、n−ブチルエチルマグネシウムの1mol/Lヘキサン溶液を20mL加え、さらにヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を0.1mol/Lに調製し、成分[b]を得た。
また、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート化合物」と記載する。)5.7gをトルエン50mLに添加して溶解し、ボレート化合物の100mmol/Lトルエン溶液を得た。このボレート化合物のトルエン溶液にジエチルアルミニウムエトキサイドの1mol/Lヘキサン溶液5mLを室温で加え、さらにヘキサンを加えて溶液中のボレート化合物濃度が70mmol/Lとなるようにした。その後、室温で1時間攪拌し、ボレート化合物を含む反応混合物を得た。
ボレート化合物を含むこの反応混合物46mLと上述で得られた成分[b]のうち32mLを上述で得られた成分[a]のスラリー800mLに20〜25℃で攪拌しながら同時に加え、さらに3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応・析出させ、シリカに物理吸着させた。その後、得られた反応混合物中の未反応のボレート化合物・チタニウム錯体を含む上澄み液をデカンテーションによって除去することにより、触媒活性種が該シリカ上に形成されている担持型幾何拘束型メタロセン触媒[A](下記表1中の重合触媒の欄に、単に「A」と示す。)を得た。
【0109】
(チーグラー・ナッタ触媒[B]の調製)
<(1)担体の合成>
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブに2mol/Lのトリクロロシランのヘキサン溶液1,000mLを仕込み、65℃で攪拌しながらAlMg5(C4911(OC492で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液2,550mL(マグネシウム2.68mol相当)を4時間かけて滴下し、さらに65℃で1時間攪拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、1,800mLのヘキサンで4回洗浄した。この固体を分析した結果、固体1g当たりに含まれるマグネシウムは8.31mmolであった。
<(2)チーグラー・ナッタ触媒[B]の調製>
上記担体110gを含有するヘキサンスラリー1,970mLに10℃で攪拌しながら1mol/Lの四塩化チタンヘキサン溶液110mLと1.0mol/LのAlMg5(C4911(OSiH)2で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液110mLとを同時に1時間かけて添加した。添加後、10℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンで2回洗浄することにより、固体触媒成分[B](下記表1中の重合触媒の欄に、単に「B」と示す。)を調製した。
【0110】
(担持型幾何拘束型メタロセン触媒[C]の調製)
触媒担体用シリカを、平均粒子5.8μm、圧縮強度4MPaに替えた以外は、担持型幾何拘束型メタロセン触媒[A]の調製に準じて調製し、担持型幾何拘束型メタロセン触媒[C](下記表1中の重合触媒の欄に、単に「C」と示す。)を得た。
【0111】
(担持型メタロセン触媒[D]の調製)
平均粒径7.5μm、圧縮強度6MPaの触媒担体用シリカ40gを使用し担持型メタロセン触媒を調製した。
800mLのトルエンを混合器に投入し、この後、トルエン中30質量%のメチルアルモキサン(MAO)溶液を421g投入し、60℃条件で3h混合させた。
この後、トルエン中20質量%のビスシクロペンタジエニルチタニウムジクロリド(以下、「チタノセン錯体」と記載する)溶液を46g投入し、25℃条件で60分間混合した。
得られた反応混合物中の未反応のMAO・チタノセン錯体を含む上澄み液をデカンテーションによって除去することにより、触媒活性種が該シリカ上に形成されている担持型メタロセン触媒[D](下記表1中の重合触媒の欄に、単に「D」と示す。)を得た。
【0112】
(担持型幾何拘束型メタロセン触媒[E]の調製)
触媒担体用シリカを、平均粒子12μm、圧縮強度80MPaに替えた以外は、担持型幾何拘束型メタロセン触媒[A]の調製に準じて調製し、担持型幾何拘束型メタロセン触媒[E](下記表1中の重合触媒の欄に、単に「E」と示す。)を得た。
【0113】
〔ポリエチレン系パウダーの製造例〕
(比較製造例1)
以下に示す連続式スラリー重合法によりポリエチレン系パウダーを得た。
攪拌装置を備えたベッセル型340L重合反応器を用い、重合温度70℃、重合圧力0.8MPa、平均滞留時間3.2時間の条件で連続重合を行った。
重合レートは10kg/時間、溶媒として脱水ノルマルヘキサン40L/時間、触媒として[A]をTi原子換算で1.4mmol/時間、トリイソブチルアルミニウムを20mmol/時間で供給した。
また、分子量調整のための水素をエチレンと1−ブテンの気相濃度に対して0.25mol%、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.36mol%になるように供給することで、エチレンと1−ブテンを共重合させた。スラリー濃度は28質量%であった。なお、触媒は往復ポンプを使用し、重合器の液面付近から供給し、エチレンおよび1−ブテンは重合器の底部から供給した。重合反応器内の重合スラリーは、重合反応器のレベルが一定に保たれるように圧力0.05MPa、温度70℃のフラッシュタンクに導き、未反応のエチレン、1−ブテン、水素を分離した。
次に、スラリーは、フラッシュタンクのレベルが一定に保たれるように連続的に遠心分離機に送り、パウダーとそれ以外の溶媒等を分離した。遠心分離器の回転数は3000rpmだった。
分離されたポリエチレン系パウダーは、85℃で窒素ブローしながら乾燥した。
この乾燥工程で、パウダーに対し、スチームを噴霧して、触媒及び助触媒の失活を実施した。得られたパウダーを目開き425μmの篩を用いて、篩を通過しなかったものを除去することで、比較製造例1のポリエチレン系パウダーを得た。
物性測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
【0114】
(比較製造例2)
重合温度86℃、重合圧力1.0MPa、平均滞留時間1.8時間の条件で連続重合を行った。重合レートは10kg/時間、溶媒として脱水ノルマルヘキサン80L/時間、触媒として[B]をTi原子換算で1.4mmol/時間、トリイソブチルアルミニウムを20mmol/時間で供給した。また、分子量調整のための水素をエチレンとプロピレンの気相濃度に対して28mol%、プロピレンをエチレンの気相濃度に対して3.5mol%になるように供給することで、エチレンとプロピレンを共重合させた。スラリー濃度は16質量%であった。なお、触媒は往復ポンプを使用して重合器の液面付近から供給し、エチレンおよびプロピレンは重合器の底部から供給した。重合反応器内の重合スラリーは、重合反応器のレベルが一定に保たれるように圧力0.05MPa、温度70℃のフラッシュタンクに導き、未反応のエチレン、プロピレン、水素を分離した。
次に、スラリーは、フラッシュタンクのレベルが一定に保たれるように連続的に遠心分離機に送り、パウダーとそれ以外の溶媒等を分離した。
遠心分離器の回転数は3000rpmだった。
分離されたポリエチレン系パウダーは、85℃で窒素ブローしながら乾燥した。この乾燥工程で、パウダーに対し、スチームを噴霧して、触媒及び助触媒の失活を実施した。
得られたパウダーを目開き425μmの篩を用いて、篩を通過しなかったものを除去することで、比較製造例2のポリエチレン系パウダーを得た。
物性測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
【0115】
(製造例3)
重合温度80℃、重合圧力1.0MPa、平均滞留時間4.0時間の条件で連続重合を行った。重合レートは10kg/時間、溶媒として脱水ノルマルヘキサン30L/時間、触媒として[C]をTi原子換算で1.4mmol/時間、トリイソブチルアルミニウムを20mmol/時間で供給した。また、分子量調整のための水素をエチレンと1−ブテンの気相濃度に対して0.24mol%、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.45mol%になるように供給することで、エチレンと1−ブテンを共重合させた。スラリー濃度は33質量%であった。尚、触媒は回転ポンプを使用し、重合器の液面付近から供給し、エチレンおよび1−ブテンは重合器の底部から供給した。重合反応器内の重合スラリーは、重合反応器のレベルが一定に保たれるように圧力0.05MPa、温度70℃のフラッシュタンクに導き、未反応のエチレン、1−ブテン、水素を分離した。未反応の原料を分離した後に、圧力0.30MPa、温度65℃のバッファータンクに平均滞留時間1.0時間の条件で導いた。その後、バッファータンクのレベルが一定に保たれるように連続的に遠心分離機に送り、パウダーとそれ以外の溶媒等を分離した。遠心分離器の回転数は3000rpmだった。
分離されたポリエチレン系パウダーは、85℃で窒素ブローしながら乾燥した。この乾燥工程で、パウダーに対し、スチームを噴霧して、触媒及び助触媒の失活を実施した。
得られたパウダーを目開き425μmの篩を用いて、篩を通過しなかったものを除去することで、製造例3のポリエチレン系パウダーを得た。
物性測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
【0116】
(製造例4)
重合温度60℃、重合圧力0.98MPa、平均滞留時間1.9時間、重合レートを5kg/時間、溶媒として脱水ノルマルヘキサンを80L/時間、水素をエチレンと1−ブテンの気相濃度に対して0.11mol%、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.80mol%、スラリー濃度を9質量%、触媒は往復ポンプを用いて重合器にフィードし、遠心分離器の回転数を5500rpm、とした以外は、製造例3と同様の操作により、製造例4のポリエチレン系パウダーを得た。
物性測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
【0117】
(製造例5)
重合温度60℃、重合圧力0.4MPa、水素をエチレンの気相濃度に対して0.89mol%、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.33mol%、とした以外は、製造例3と同様の操作により、製造例5のポリエチレン系パウダーを得た。
物性測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
【0118】
(製造例6)
重合温度を80℃、水素をエチレンと1−ブテンの気相濃度に対して0.26mol%、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.42mol%、触媒は回転ポンプを使用して重合器にフィードした以外は、製造例4と同様の操作により、製造例6のポリエチレン系パウダーを得た。
物性測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
【0119】
(製造例7)
重合温度60℃、重合圧力0.98MPa、平均滞留時間4.0時間、重合レートを10kg/時間、溶媒として脱水ノルマルヘキサンを30L/時間、触媒として[D]、水素をエチレンと1−ブテンの気相濃度に対して0.65mol%、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.35mol%、スラリー濃度を34質量%、とした以外は、製造例3と同様の操作により、製造例7のポリエチレン系パウダーを得た。
物性測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
【0120】
(製造例8)
重合温度80℃、重合圧力0.40MPa、水素をエチレンと1−ブテンの気相濃度に対して0.25mol%、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.37mol%、遠心分離器の回転数を5500rpm、とした以外は製造例7と同様の操作により、製造例8のポリエチレン系パウダーを得た。
物性測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
【0121】
(製造例9)
重合温度80℃、重合圧力1.2MPa、平均滞留時間1.9時間、重合レートを5kg/時間、溶媒として脱水ノルマルヘキサンを30L/時間、水素をエチレンと1−ブテンの気相濃度に対して0.19mol%、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.76mol%、スラリー濃度を9質量%、とした以外は、製造例7と同様の操作により、製造例9のポリエチレン系パウダーを得た。
物性測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
【0122】
(比較製造例10)
一段目の重合として、攪拌装置が付いたベッセル型340L重合反応器を用い、重合温度60℃、重合圧力0.25MPa、平均滞留時間1.6時間の条件で連続重合を行った。溶媒として脱水ノルマルヘキサン70L/時間、触媒として[C]を、水素をエチレンの気相濃度に対して0.59mol%、1−ブテンはフィードせずに、1段目の重合を行った。触媒は、回転ポンプを使用して重合器にフィードした。重合反応器内の重合スラリーは、重合反応器のレベルが一定に保たれるように圧力0.05MPa、温度70℃のフラッシュタンクに導き、未反応のエチレン、水素を分離した。
次に、連続的に二段目の攪拌装置が付いたベッセル型300L重合反応器に移送して、重合温度75℃、重合圧力0.73MPa、平均滞留時間0.8時間の条件で連続重合を行った。溶媒として脱水ノルマルヘキサン180L/時間、水素をエチレンと1−ブテンンの気相濃度に対して0.04mol%、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して、0.35mol%となるようにそれぞれを供給して2段目の重合を行った。重合反応器内の重合スラリーは、重合反応器のレベルが一定に保たれるように圧力0.05MPa、温度50℃のフラッシュタンクに導き、未反応のエチレン、1−ブテン、水素を分離した。
続いて、重合反応器内の重合スラリーを連続的に遠心分離機に送り、ポリマーとそれ以外の溶媒等を分離しパウダーを得た。
分離されたパウダーは、85℃で窒素ブローしながら乾燥した。なお、この乾燥で、重合後のパウダーに対し、スチームを噴霧して、触媒及び助触媒の失活を実施した。
得られたパウダーを目開き425μmの篩を用いて、篩を通過しなかったものを除去することで、比較製造例10のポリエチレン系パウダーを得た。
物性測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
二段重合で製造した場合、回転ポンプを使用して触媒の破砕をなくしたとしても、Relative Span Factorが大きいパウダーが得られた。
【0123】
(比較製造例11)
重合温度80℃、重合圧力1.0MPa、平均滞留時間4.0時間、重合レートを10kg/時間、溶媒として脱水ノルマルヘキサンを30L/時間、触媒として[E]、水素をエチレンと1−ブテンの気相濃度に対して0.18mol%、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.51mol%、スラリー濃度を34質量%、触媒は往復ポンプを用いて重合器にフィードした以外は、製造例4と同様の操作により、比較製造例11のポリエチレン系パウダーを得た。
物性測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
圧縮強度が高く割れにくい担体シリカからなる触媒を使用した場合、細孔容積が小さいパウダーが得られた。
【0124】
(比較製造例12)
重合温度80℃、重合圧力1.0MPa、平均滞留時間1.9時間、重合レートを5kg/時間、溶媒として脱水ノルマルヘキサンを80L/時間、水素をエチレンと1−ブテンの気相濃度に対して0.31mol%、1−ブテンをエチレンの気相濃度に対して0.30mol%、スラリー濃度を9質量%、触媒は回転ポンプを用いて重合器にフィードした以外は、比較製造例11と同様の操作により、比較製造例12のポリエチレン系パウダーを得た。
物性測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
圧縮強度が高く割れにくい担体シリカからなる触媒を使用した場合、バッファータンクを使用するとRelative Span Factorが低いパウダーが得られた。
【0125】
(比較製造例13)
未反応の原料を分離した後に、圧力0.30MPa、温度65℃のバッファータンクに平均滞留時間1.0時間の条件で導かず、遠心分離機で分離された後のパウダーとそれ以外の溶媒等を分離した以外は、製造例3と同様の操作により、比較製造例13のポリエチレン系パウダーを得た。
物性測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
圧縮強度が低く割れやすい担体シリカからなる触媒を使用したとしても、往復ポンプも使用すると、触媒が破砕することでRelative Span Factorは高くなり、バッファータンクを使用しないと、細孔容積が低くなった。
【0126】
(比較製造例14)
重合温度80℃、重合圧力0.8MPa、水素をエチレンの気相濃度に対して0.22mol%、1−ブテンをフィードせず、触媒は往復ポンプを用いて重合器にフィードした以外は、比較製造例13と同様の操作により、比較製造例14のポリエチレン系パウダーを得た。
物性測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
圧縮強度が低く割れやすい担体シリカからなる触媒を使用したとしても、往復ポンプも使用すると、触媒が破砕することでRelative Span Factorは高くなり、コモノマーが存在しないと、細孔容積が低くなった。
【0127】
【表1】
【0128】
〔架橋ポリエチレン管〕
(参照例1)
比較製造例1のポリエチレン系パウダーを(株)日本製鋼所製TEX−44(スクリュー径44mm、L/D=35、L:原料供給口から排出口までの距離(m)、D:内径(m))の二軸押出成形機を使用し、190℃の樹脂温度で溶融混錬して造粒し、ペレットとした。上記、ペレット100質量部に対し、ビニルトリメトキシシラン1.4質量部、ジクミルパーオキサイド0.05質量部、ジオクチルスズジラウレート0.012質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて均一混合し、パイプ押出機によりモノシル法で呼び径13のパイプを成形した。
このパイプを90℃の温水に9時間浸漬して架橋し、架橋ポリエチレン管を得た。
評価結果を表2に示す。
比較製造例1のペレットに対して副原料を混合したことにより、均一な組成で押出機にフィードされず、連続成形性に難があった。
【0129】
(参照例2)
比較製造例2のポリエチレン系パウダーを、(株)日本製鋼所製TEX−44(スクリュー径44mm、L/D=35、L:原料供給口から排出口までの距離(m)、D:内径(m))の二軸押出成形機を使用し、供給ホッパーでステアリン酸カルシウム2800ppm、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル2500ppmを添加し、190℃の樹脂温度で溶融混錬して造粒し、ペレットとした。それ以外は、前記(参照例1)と同様の操作により架橋ポリエチレン管を得た。
評価結果を表2に示す。
前記(参照例1)と同様に連続成形性に難があり、更にチーグラー系ポリエチレンであることにより、ゲル分率が低く、臭気も悪く、全有機炭素量も多かった。
【0130】
(参照例3)
ビニルトリメトキシシラン3.5質量部、ジクミルパーオキサイド0.14質量部、ジオクチルスズジラウレート0.012質量部とした以外は、前記(参照例2)と同様の操作により、架橋ポリエチレン管を得た。
評価結果を表2に示す。
副原料が増加したことによりゲル分率は向上したが、臭気、全有機炭素量は悪化した。
【0131】
(実施例1)
(製造例3)のポリエチレン系パウダーを使用し、ビニルトリメトキシシラン、ジクミルパーオキサイド、ジオクチルスズジラウレートを表2に示す量を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて均一混合した。得られた流動性が良好な粉体をパイプ押出機上部のホッパーに、前記(参照例2)のペレットと均一混合して投入し、モノシル法で呼び径13のパイプを成形した。
このパイプを90℃の温水に9時間浸漬して架橋し、架橋ポリエチレン管を得た。
評価結果を表2に示す。
前記(参照例2)に対し、ゲル分率、臭気、連続成形性、全有機炭素量ともに大幅に改善された。
【0132】
(実施例2)
(製造例4)のポリエチレン系パウダーを使用した以外は、(実施例1)と同様の操作により、架橋ポリエチレン管を得た。
評価結果を表2に示す。
【0133】
(実施例3)
(製造例5)のポリエチレン系パウダーを使用した以外は、(実施例1)と同様の操作により、架橋ポリエチレン管を得た。
評価結果を表2に示す。
【0134】
(実施例4)
(製造例6)のポリエチレン系パウダーを使用した以外は、(実施例1)と同様の操作により、架橋ポリエチレン管を得た。
評価結果を表2に示す。
【0135】
(実施例5)
(製造例7)のポリエチレン系パウダーを使用した以外は、(実施例1)と同様の操作により、架橋ポリエチレン管を得た。
評価結果を表2に示す。
【0136】
(実施例6)
(製造例8)のポリエチレン系パウダーを使用した以外は、(実施例1)と同様の操作により、架橋ポリエチレン管を得た。
評価結果を表2に示す。
【0137】
(実施例7)
(製造例9)のポリエチレン系パウダーを使用した以外は、(実施例1)と同様の操作により、架橋ポリエチレン管を得た。
評価結果を表2に示す。
【0138】
(実施例8)
(参照例2)のペレット90質量部に対し、(製造例3)のポリエチレン系パウダー10質量部とした以外は、(実施例1)と同様の操作により、架橋ポリエチレン管を得た。
評価結果を表2に示す。
【0139】
(実施例9)
(参照例2)のペレット76質量部に対し、(製造例3)のポリエチレン系パウダー24質量部とした以外は、(実施例1)と同様の操作により、架橋ポリエチレン管を得た。
評価結果を表2に示す。
【0140】
(比較例1)
(比較製造例10)のポリエチレン系パウダーを使用した以外は、(実施例1)と同様の操作により、架橋ポリエチレン管を得た。
評価結果を下記表2に示す。
Relative Span Factorが大きいパウダーを使用したため、粒径の小さいパウダーが多く、粉体流動性が悪かった。そのため、パイプ押出機への均一な組成でのフィードが困難であり、連続成形性も悪かった。また、分子量分布が広いため、架橋に寄与する成分が少なく、ゲル分率が低く、臭気も多かった。
【0141】
(比較例2)
(比較製造例11)のポリエチレン系パウダーを使用した以外は、(実施例1)と同様の操作により、架橋ポリエチレン管を得た。
評価結果を下記表2に示す。
細孔容積が小さいパウダーを使用したため、副原料と混合した際に内部まで副原料が浸透せず、粉体流動性が悪かった。そのため、パイプ押出機への均一な組成でのフィードが困難であり、連続成形性も悪かった。パウダーへのシラングラフト変性が不十分であるため、ゲル分率も低かった。
【0142】
(比較例3)
(比較製造例12)のポリエチレン系パウダーを使用した以外は、(実施例1)と同様の操作により、架橋ポリエチレン管を得た。
評価結果を下記表2に示す。
細孔容積が小さくRelative Span Factorが小さいパウダーを使用したため、副原料と混合した際に内部まで副原料が浸透せず、また粒径の小さいパウダーが少なすぎるため、粉体流動性が悪かった。そのため、パイプ押出機への均一な組成でのフィードが困難であり、連続成形性も悪かった。パウダーへのシラングラフト変性が不十分であるため、ゲル分率も低かった。
【0143】
(比較例4)
(比較製造例13)のポリエチレン系パウダーを使用した以外は、(実施例1)と同様の操作により、架橋ポリエチレン管を得た。
評価結果を下記表2に示す。
細孔容積が小さくRelative Span Factorが大きいパウダーを使用したため、副原料と混合した際に内部まで副原料が浸透せず、また粒径の小さいパウダーが少なすぎるため、粉体流動性が悪かった。そのため、パイプ押出機への均一な組成でのフィードが困難であり、連続成形性も悪かった。パウダーへのシラングラフト変性が不十分であるため、ゲル分率も低かった。
【0144】
(比較例5)
(比較製造例14)のポリエチレン系パウダーを使用した以外は、(実施例1)と同様の操作により、架橋ポリエチレン管を得た。
評価結果を下記表2に示す。
細孔容積が小さくRelative Span Factorが大きいパウダーを使用したため、副原料と混合した際に内部まで副原料が浸透せず、また粒径の小さいパウダーが少なすぎるため、粉体流動性が悪かった。そのため、パイプ押出機への均一な組成でのフィードが困難であり、連続成形性も悪かった。また、ホモポリマーであるため、有機過酸化物が反応しやすい3級炭素が分子鎖中に少なく、パウダーへのシラングラフト変性が起こらず、ゲル分率も低く、全有機炭素量も多かった。
【0145】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明のポリエチレン系パウダーを使用することにより、汎用の押出機で、触媒マスターバッチを使用することなくモノシル法が可能となり、かつ、チーグラー系ポリエチレンとメタロセン系ポリエチレンを混合して使用する際にメタロセン系ポリエチレンの使用量を削減しても、十分に高いゲル分率を有するシラン架橋ポリエチレン管を安定的に製造することができるため、本発明のポリエチレン系パウダーは、給湯用、給水用、床暖房用、及びロードヒーティング用のパイプ、電力ケーブルの絶縁層、収縮チューブの材料として、産業上の利用可能性を有する。
図1