(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加飾面に凸部を形成する凹部を含む成形面を有する可動型と、前記加飾面の反対の面を形成する成形面を有する固定型とからなる一対の金型を準備し、前記金型の間に供給する前に加飾シートに前記凹部の外縁形状と同形状の穴を形成する工程と、
前記可動型の前記成形面に、前記加飾シートの前記穴の外縁と前記凹部の外縁とが一致するように前記加飾シートを配置する工程と、
前記加飾シートの前記穴を塞ぎながら前記加飾シートを前記可動型の前記成形面側に押圧する工程と、
前記可動型の前記成形面と前記加飾シートとの間に形成されたキャビティ内の空気を吸引して前記加飾シートを前記可動型の前記成形面に密着させる工程と、
前記可動型と前記固定型とを型締めする工程と、
前記可動型と前記固定型との間に形成されたキャビティ内に溶融樹脂を射出して、前記加飾シートと一体化した前記凸部を有する加飾品を成形する工程と、
前記可動型と前記固定型とを型開きする工程と、
前記加飾品を前記金型から取り出す工程とを備え、
前記加飾シートに前記穴を形成する工程は、前記金型の型締め時において、前記金型の一方の上面に設置された刃部と、前記金型の他方の上面に設置され前記刃部を受ける受部との間に、次に前記金型の間に供給される前記加飾シートを挟み、前記加飾シートに前記凹部の外縁形状と同形状の穴を形成することを含む、加飾品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の成形同時加飾法においては、加飾面にボスやリブなどの凸部を形成した加飾品を得たい場合、加飾シートが成形時に破れてしまう。そのため、凸部は加飾面とは反対の面にしか形成するしかなく、加飾品のバリエーションが広がらないという問題がある。なお、事前に穴を形成した加飾シートをロールで準備しておき、成形に用いる方法も考えられるが、この場合は、穴が形成された部分と形成されていない部分との段差で巻き跡が発生し、これを用いて成形すると、加飾品の外観が悪くなってしまう。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、加飾面に凸部のある加飾品を容易に得ることができる加飾品の製造方法と、それに用いる加飾品の製造装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【0007】
本発明の加飾品の製造方法は、
加飾面に凸部を形成する凹部を含む成形面を有する可動型と、加飾面の反対の面を形成する成形面を有する固定型とからなる一対の金型を準備し、金型の間に供給する前に加飾シートに凹部の外縁形状と同形状の穴を形成する工程と、
可動型の成形面に、加飾シートの穴の外縁と凹部の外縁とが一致するように加飾シートを配置する工程と、
加飾シートの穴を塞ぎながら加飾シートを可動型の成形面側に押圧する工程と、
可動型の成形面と加飾シートとの間に形成されたキャビティ内の空気を吸引して加飾シートを可動型の成形面に密着させる工程と、
可動型と固定型とを型締めする工程と、
キャビティ内に溶融樹脂を射出して加飾シートと一体化した凸部を有する加飾品を成形する工程と、
可動型と固定型とを型開きする工程と、
加飾品を金型から取り出す工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
好ましくは、加飾シートに穴を形成する工程は、金型の型締め時において、金型の一方の上面に設置された刃部と金型の他方の上面に設置され刃部を受ける受部との間に次に金型の間に供給される加飾シートを挟み、加飾シートに凹部の外縁形状と同形状の穴を形成することを含むものである。
【0009】
また、好ましくは、加飾シートに穴を形成する工程は、加飾品を金型から取り出す工程よりも前に、可動型よりも加飾シートの流れ方向の上流側に設置された刃部と刃部を受ける受部との間に次に金型の間に供給される加飾シートを挟み、加飾シートに凹部の外縁形状と同形状の穴を形成することを含むものである。
【0010】
さらに好ましくは、加飾シートに穴を形成する工程は、加飾シートの加飾層側から刃部によって穴を形成することを含むものである。
【0011】
さらに好ましくは、加飾シートに穴を形成する工程は、刃部を穴の周方向に回転して加飾シートに穴を形成することを含み、または刃部で加飾シートを打ち抜いて加飾シートに穴を形成することを含むものである。
【0012】
さらに好ましくは、穴を形成する工程は、刃部によって切り取った加飾シートの切断片を受部に設けられた受け穴から除去することを含むものである。
【0013】
さらに好ましくは、加飾シートの基体シート側から、基体シートの静電気を除去するイオンを基体シートに吹き付ける工程をさらに備えたものである。
【0014】
さらに好ましくは、加飾シートの基体シート側から、加飾シートに穴を形成した際の切りくずを吸引する工程をさらに備えたものである。
【0015】
本発明の加飾品の製造装置は、
加飾面に凸部を形成する凹部を含む成形面を有する可動型と、加飾面の反対の面を形成する成形面を有する固定型とからなる一対の金型と、
刃部と刃部を受ける受部とからなり、凹部の外縁形状と同形状の穴を加飾シートに形成する切取機構と、
加飾シートの穴の外縁と凹部の外縁とが一致するように可動型の成形面に配置された加飾シートの穴を塞ぎながら加飾シートを可動型の成形面側に押圧する空気漏れ防止機構とを備えたことを特徴とするものである。
【0016】
好ましくは、切取機構は、刃部が金型の一方の上面に設置され、受部が金型の他方の上面に設置されているものである。
【0017】
また、好ましくは、切取機構は、刃部と受部が可動型側であって可動型よりも加飾シートの流れ方向の上流側に設置されているものである。
【0018】
さらに好ましくは、切取機構は、加飾シートを挟んで固定型側に刃部が設置され、可動型側に受部が設置されているものである。
【0019】
さらに好ましくは、刃部によって切り取った加飾シートの切断片を受部に設けられた受け穴を通じて除去する切断片除去機構をさらに備えたものである。
【0020】
さらに好ましくは、加飾シートの基体シート側に設置され基体シートに静電気を除去するイオンを吹き付ける除電機構をさらに備えたものである。
【0021】
さらに好ましくは、加飾シートの基体シート側に設置され加飾シートに穴を形成した際の切りくずを吸引する集塵機構をさらに備えたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の加飾品の製造方法は、加飾面に凸部を形成する凹部を含む成形面を有する可動型と、加飾面の反対の面を形成する成形面を有する固定型とからなる一対の金型を準備し、金型の間に供給する前に加飾シートに凹部の外縁形状と同形状の穴を形成する工程と、可動型の成形面に、加飾シートの穴の外縁と凹部の外縁とが一致するように加飾シートを配置する工程と、加飾シートの穴を塞ぎながら加飾シートを可動型の成形面側に押圧する工程と、可動型の成形面と加飾シートとの間に形成されたキャビティ内の空気を吸引して加飾シートを可動型の成形面に密着させる工程と、可動型と固定型とを型締めする工程と、キャビティ内に溶融樹脂を射出して加飾シートと一体化した凸部を有する加飾品を成形する工程と、可動型と固定型とを型開きする工程と、加飾品を金型から取り出す工程とを備えたように構成した。
【0023】
したがって、本発明によれば、加飾面に凸部のある加飾品を容易に得ることができる。
【0024】
また、本発明の加飾品の製造装置は、加飾面に凸部を形成する凹部を含む成形面を有する可動型と、加飾面の反対の面を形成する成形面を有する固定型とからなる一対の金型と、刃部と刃部を受ける受部とからなり、凹部の外縁形状と同形状の穴を加飾シートに形成する切取機構と、加飾シートの穴の外縁と凹部の外縁とが一致するように可動型の成形面に配置された加飾シートの穴を塞ぎながら加飾シートを可動型の成形面側に押圧する空気漏れ防止機構とを備えたように構成した。
【0025】
したがって、本発明の加飾品の製造装置は、加飾面に凸部のある加飾品を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の加飾品の製造方法とそれに用いる加飾品の製造装置について、実施形態の一例を説明する。
【0028】
<加飾品の製造方法>
本発明の加飾品の製造方法は、加飾面に凸部60を形成する凹部20aを含む成形面20bを有する可動型20と、加飾面の反対の面を形成する成形面21bを有する固定型21とからなる一対の金型を準備し、金型の間に供給する前に加飾シート5に凹部20aの外縁形状と同形状の穴5aを形成する工程と、可動型20の成形面20bに、加飾シート5の穴5aの外縁と凹部20aの外縁とが一致するように加飾シート5を配置する工程と(
図1参照)、加飾シート5の穴5aを塞ぎながら加飾シート5を可動型20の成形面20b側に押圧する工程と(
図2参照)、可動型20の成形面20bと加飾シート5との間に形成されたキャビティ内の空気を吸引して加飾シート5を可動型20の成形面20bに密着させる工程と(
図3参照)、可動型20と固定型21とを型締めする工程と(
図4参照)、キャビティ内に溶融樹脂を射出して加飾シート5と一体化した凸部60を有する加飾品7を成形する工程と(
図5、
図8参照)、可動型20と固定型21とを型開きする工程と(
図6参照)、加飾品7を金型から取り出す工程(
図7参照)とを備えたことを特徴とするものである。
【0029】
金型は可動型20と固定型21とからなる。可動型20は、加飾品の加飾面を形成する成形面20bを有している。可動型20の成形面20bには、加飾品7の加飾面に凸部60を形成する凹部20aを形成する。本実施形態では、加飾品7の凸部60は円筒形状である(
図8参照)。そのため、可動型20の凹部20aには、凸部60の中空部分を形成するための入子20cを設けている。なお、可動型20の成形面20bには、加飾シート5を吸引して成形面20bに密着させるための吸引孔(図示せず)を形成するとよい。固定型21は、加飾面とは反対の面を形成する成形面21bを有している。固定型21には、型締めして可動型20と固定型21の間に形成されたキャビティ内に溶融樹脂を射出するゲートを形成する。また、固定型21には射出成形された加飾品を離型する突出しピンを形成するとよい。なお、金型には、加飾シート5を挟んで固定するために、可動型20にクランプ機構(図示せず)を設けるとよい。
【0030】
加飾シート5は、基体シート50上に加飾層51が形成された積層物である。加飾層51は、接着層、金属薄膜層、図柄層、剥離層などを含む層である。加飾層51の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法や、グラビアコート法、ロールコート法、ダイコート法などのコート法を用いることができる。加飾層51によって、加飾品に装飾性や機能性を付与することができる。加飾シート5には、加飾シート5を金型の間に供給する前に穴5aを形成する。つまり、穴5aは金型外で形成する。本実施形態では加飾品7の凸部60は円筒形状であるため、可動型20の凹部20aの外縁形状は円形状であり、加飾シート5の穴5aも同様に円形状に形成する。穴5aの形成方法としては、刃部31を穴5aの円周方向に回転させて形成する方法(
図9参照)、刃部31によって打ち抜いて形成する方法がある。加飾シート5に形成する穴5aの大きさは、可動型20の凹部20aの外縁の大きさと同じであってよく、凹部20aの外縁より大きくてもよい。
【0031】
なお、成形面20bに配置される加飾シート5には、穴5aを2つ以上形成してもよい。その場合穴は、所定の距離を置いて形成する。このようにすると、加飾シート5に加えられた張力によって、穴を基点に加飾シートが破れてしまうことを防ぐことができる。
【0032】
加飾シート5に穴5aを形成する工程は、金型の型締め時において、金型の一方の上面に設置された刃部31と金型の他方の上面に設置され刃部31を受ける受部30との間に次に金型の間に供給される加飾シート5を挟み、加飾シート5に凹部20aの外縁形状と同形状の穴5aを形成することを含んでもよい(
図4参照)。本実施形態では、本体32に取り付けられた刃部31は固定型21の上面に設置され、受部30は可動型20の上面に設置されている。型締め後、刃部31を回転させ、刃部31と受部30との間に挟まれた加飾シート5に、可動型20の凹部20aの外縁形状と同じ円形状の穴5aを形成する。この時、穴5aが形成された加飾シート5は、型開き後、可動型20と固定型21の間に送り込まれる。本実施形態では、刃部31は固定型21の上面に設置され、受部30は可動型20の上面に設置されている。したがって、加飾層51側から刃部31によって穴5aを形成するため、基体シート50側から形成する場合に比べて加飾層51の切りくずが発生しにくい。
【0033】
また、加飾シート5に穴5aを形成する工程は、加飾品7を金型から取り出す工程よりも前に、可動型20よりも加飾シート5の流れ方向の上流側に設置された刃部31と刃部31を受ける受部30との間に次に金型の間に供給される加飾シート5を挟み、加飾シート5に凹部20aの外縁形状と同形状の穴5aを形成することを含んでもよい(
図10参照)。本実施形態では、刃部31と受部30が一体となった切取機構3を可動型の上面に設置している。このように切取機構3が一体型である場合、たとえば、エアシリンダや油圧シリンダなどを用いたり(
図10(a)参照)、刃部31の自重を用いたり(
図10(b)参照)することで、刃部31によって加飾シート5を打ち抜き、穴5aを形成することができる。一体型の切取機構3は、打ち抜きで穴5aを形成するため、穴5aの形状は円に限定されず、多角形や楕円などの形状も形成することができる。切取機構3が一体型であるため、穴5aは、加飾品を金型から取り出す工程よりも前であれば、任意のタイミングで形成することができる。また、本実施形態では、刃部31を加飾層51側に設置しているため、加飾層51側から穴5aを形成することになり、基体シート50側から形成する場合に比べて加飾層51の切りくずが発生しにくい。
【0034】
穴5aを形成した加飾シート5は、たとえば、加飾シート送り装置などを用いて、可動型20の成形面20bに送られる。このとき、加飾シート5の穴5aの外縁と可動型20の凹部20aの外縁とが一致するように、加飾シート5を配置する(
図1参照)。本実施形態では、穴5aと凹部20aの形状は円形状である。したがって、両方の円形状が一致するように、加飾シート5を位置決めする。位置決め完了後、クランプ機構(図示せず)によって加飾シート5を可動型20に押さえつけて固定してもよい。
【0035】
次に、加飾シート5の穴5aを塞ぎながら加飾シート5を可動型20の成形面20b側に押圧する(
図2参照)。押圧力は、加飾シート5に加えられている張力よりも大きくする。穴5aを塞いで加飾シート5を押圧することで、加飾シート5と成形面2bとの間に形成されるキャビティの体積が減少する。そのため、加飾シート5を可動型20の成形面20bに密着させる工程(
図3参照)において、キャビティ内の空気を早く確実に吸引することができる。
【0036】
なお、加飾シート5の穴5aを塞ぐことのみによってキャビティ内の空気を吸引し、加飾シート5を可動型20の成形面20bに密着させてもよい。この場合、たとえば、加飾品の凸部を形成するための入子を可動式入子20dとし、穴5aを塞ぐように可動式入子20dを移動させるとよい(
図14(a)(b)参照)。
【0037】
可動型20と固定型21とを型締めする工程(
図4参照)において、次に金型に送り込まれる加飾シートは刃部31と受部30の間に挟まれる。この時、加飾シート5は型締め力によって刃部31と受部30の間で固定してもよく、刃部31または受部30にバネ34によって付勢されたクランプ部材33を設け(
図16参照)、バネ34の付勢力によって固定してもよい。
【0038】
型締めによって形成されたキャビティ内に溶融樹脂を射出して(
図5参照)加飾シート5と一体化した凸部60を有する加飾品7を成形する。樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂もしくはAS樹脂などの汎用の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。それ以外に、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、エンジニアリング樹脂(ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート系樹脂など)またはポリアミド系樹脂を使用することができる。これら樹脂には、ガラス繊維や無機フィラーなどの補強材を添加することもできる。なお、天然ゴムや合成ゴムを用いることもできる。
【0039】
射出成形後に、可動型20と固定型21とを型開きする(
図6参照)。基体シート50は加飾層51から剥離してもよいし、剥離しなくてもよい。剥離する場合は、離型性のある基体シートを用いたり、基体シート上に離型剤をコーティングしたりするとよい。剥離しない場合は、加飾品7を取り出した後に加飾品外周の加飾シートをトリミングするとよい。
【0040】
最後に、加飾品7を金型から取り出す(
図7参照)。固定型21にエジェクタピンを設けると、エジェクタピンを突き出すことで加飾品7を取り出しやすくなる。図のように、治具に取り付けた吸盤を用いて真空引きすることにより、加飾品7を保持し取り出すことができる。
【0041】
本発明の加飾品の製造方法において、加飾シート5に穴5aを形成する工程は、刃部31によって切り取った加飾シート5の切断片5bを受部30に設けられた受け穴30aから除去することを含んでいてもよい。除去する方法としては、切断片5bを吸引する方法(
図11参照)と、切断片5bを保持して取り除く方法(
図13参照)が挙げられる。切断片5bを吸引する方法では、たとえば、吸引機80から延びるホース81を受け穴30aに直接接続する方法が挙げられる(
図11(a)参照)。このように構成すると、不要部分である切断片5bを容易に取り除くことができる。切断片5bを保持して取り除く方法では、たとえば、吸着パッド111を真空引きして切断片5bを保持し除去する方法が挙げられる(
図13参照)。吸着パッドで切断片5bを保持するため、より確実に切断片を除去することができる。
【0042】
本発明の加飾品の製造方法は、加飾シート5の基体シート50側から、基体シート50の静電気を除去するイオンを基体シート50に吹きつける工程をさらに備えていてもよい(
図12参照)。このように構成すると、吹きつけたイオンによって静電気が除去されるため、基体シート50側に静電引力によって付着した微小なチリを基体シート50から容易に離反させることができる。微小なチリを可動型の成形面と加飾シートとの間に挟むことがないため、加飾品の加飾面に微小なチリによる窪みが形成されにくい。
【0043】
また、加飾シート5の基体シート50側から、加飾シート5に穴5aを形成した際の切りくずを吸引する工程をさらに備えていてもよい(
図12参照)。切りくずは静電引力によって基体シート50に付着するため、本工程は上記の除電工程と組み合せるとよい。このように構成すると、吹きつけたイオンによって基体シート50に付着した微小なチリや切りくずを基体シート50から容易に離反させることができ、離反したチリや切りくずを容易に吸引することができる。
【0044】
<加飾品の製造装置>
本発明の加飾品の製造装置1は、加飾面に凸部60を形成する凹部20aを含む成形面20bを有する可動型20と、加飾面の反対の面を形成する成形面21bを有する固定型21とからなる一対の金型と、刃部31と刃部を受ける受部30とからなり、凹部20aの外縁形状と同形状の穴5aを加飾シート5に形成する切取機構3と、加飾シート5の穴5aの外縁と凹部20aの外縁とが一致するように可動型20の成形面に配置された加飾シート5の穴5aを塞ぎながら加飾シート5を可動型20の成形面側に押圧する空気漏れ防止機構4とを備えたことを特徴とするものである(
図1参照)。
【0045】
切取機構3は、本体32に取り付けられた刃部31とそれを受ける受部30とからなる。切取機構3は、加飾シート5を金型の間に供給する前に、可動型20の凹部20aの外縁形状と同形状の穴5aを加飾シート5に形成する。したがって、切取機構3は、金型よりも加飾シート5の流れ方向の上流側に設置する。刃部31は、本体32に取り付けたエアシリンダなどを用いて駆動させるとよい。刃部31は回転刃であってよく、打ち抜き刃であってもよい。回転刃の場合は、加飾シート5に形成する穴の周方向に刃部31を回転させて、穴を形成する(
図9参照)。本実施形態では、刃部31と本体32を固定型21の上面に設置し、受部30を可動型20の上面に設置している。このように切取機構3が分離型であれば、受部30と本体32のそれぞれを小型化できるため、設置スペースを抑えることができる。また、刃部31が劣化した際に刃の交換がしやすい。
【0046】
なお、刃部31は、基体シート50や加飾層51の材質に合わせて、形状や材質を選択するとよい。また、刃部31は、刃部を加熱する加熱部を備えていてもよい。
【0047】
切取機構3は、刃部31と受部30が可動型20側であって可動型20よりも加飾シート5の流れ方向の上流側に設置されていてもよい(
図10(a)、(b)参照)。切取機構3は、上記の分離型の場合と同様に、可動型20の上面に設置するとよい。または、たとえば加飾シート5を供給するための加飾シート送り装置の下面に設置することもできる。
【0048】
切取機構3は、加飾シート5を挟んで固定型21側に刃部31が設置され、可動型20側に受部30が設置されていてもよい(
図1、
図10(a)参照)。このようにすると、加飾シート5の加飾層51側から穴5aを形成することになり、基体シート50側から形成する場合に比べて加飾層51の切りくずが発生しにくい。
【0049】
空気漏れ防止機構4は、加飾シート5の穴5aを塞ぎながら加飾シート5を可動型20の成形面20bに押圧する(
図2参照)。空気漏れ防止機構4は、加飾シート5の穴5aを塞ぐための弾性体40を含む。弾性体40の材質は特に限定されないが、加飾シート5の穴5aを塞いだときに、加飾シート5と可動型20の凹部20aを含む成形面20bとの間に形成されるキャビティ内の空気がキャビティ外に漏れないものを用いるとよい。言い換えると、可動型20の成形面20bに設けた吸引孔(図示せず)を介してキャビティ内の空気を吸引する際に、キャビティ外の空気が弾性体40を通って吸引されないような材質のものを用いるとよい。たとえば、シリコンゴムなどのゴム類、細孔が密に形成されているスポンジやゴムなどの多孔質材料を挙げることができる。上記のような材質の弾性体40は、加飾シート5の張力よりも大きな押圧力を容易に加えることができるため、しっかりと加飾シート5を押圧することができる。なお、たとえば、金属など硬度の高いものは、加飾シート5に接触したときに加飾層51を傷付けてしまうため使用を避けた方がよい。しかし、金属などを上記の多孔質材料で覆った弾性体40を用いれば、加飾層51を傷付けることなく、しっかりと加飾シート5を押圧することができる。
【0050】
本発明の加飾品の製造装置1は、切断片除去機構、除電機構、集塵機構のうち少なくとも1つをさらに備えていてもよい。
【0051】
切断片除去機構8は、刃部31によって切り取った加飾シート5の切断片5bを受部30に設けられた受け穴30aを通じて除去するものである(
図11参照)。吸引機80から延びるホース81を、受部30に設けた受け穴30aに直接接続する(
図11(a)参照)。このようにすると、吸引機80によって発生した負圧で切断片5bを図の左側に移動させ、ホース81を通って吸引機80内に集めることができる。また、受部30とホース81の間に集積部82を設けてもよい(
図11(b)参照)。この構成では、ホース81が受け穴30aに直接接続されておらず、切断片5bは集積部82に落ちるため、切断片5bがホース81内に詰まりにくい。
【0052】
除電機構9は、加飾シート5の基体シート50側に設置され基体シート50に静電気を除去するイオンを吹き付けるものである。また、集塵機構10は、加飾シート5の基体シート50側に設置され加飾シート5に穴5aを形成した際の切りくずを吸引するものである(
図12参照)。図では、加飾品の製造装置1は、除電機構9と集塵機構10の両方を備えている。除電機構9と集塵機構10は、受部30よりも加飾シート5の流れ方向の下流側であって、加飾シート5の基体シート50側に設置する。
【0053】
除電機構9は、
図12の波線の矢印で示したように、基体シート50に対してイオンを吹き付け、基体シート50に発生した静電気を除去する。このような構成では、空気中の微小なチリなどが静電気引力(Electrostatic Attraction)によって基体シート50に付着しても、吹きつけたイオンによって静電気が除去され、微小なチリを基体シート50から離反させることができる。したがって、除電機構9を有する製造装置では、微小なチリを可動型の成形面と加飾シートとの間に挟むことがないため、加飾品の加飾面に微小なチリによる窪みが形成されにくい。
【0054】
集塵機構10は、集塵機11によって生じる負圧を利用して、加飾シート5に穴5aを形成した際に生じる切りくずを、ホース12を介して吸引する。集塵機11は、
図12の左側に向かって切りくずを吸引し、集めるものである。切りくずは静電引力によって基体シート50に付着するため、集塵機構10と除電機構9は組み合わせて用いるとよい。また、除電機構9の上下にはローラ100を設置するとよい(
図12参照)。ローラ100があると、集塵機11による吸引力で加飾シート5が受部30や除電機構9に密着することを防ぐことができる。
【0055】
なお、集塵機11は、上記した切断片除去機構8(
図11参照)の吸引機80の代わりに用いることもできる。この場合、集塵機構10のホース12は除電機構9と受け穴30a、または除電機構9と集積部82に接続するとよい。このような構成では、1台の集塵機で切断片5bと切りくずを吸引することができる。
【0056】
本発明の加飾品の製造装置は、下記の機構または構造の少なくとも一方をさらに備えていてもよい。
【0057】
切断片保持機構110は、刃部31によって切断された加飾シート5の切断片5bを、受部30に設けた吸着パッド111で吸着するものである(
図13(a)参照)。吸着パッド111には管を接続し、管を介して切断片5bと吸着パッド111との間を真空引きすることで切断片5bを吸着パッド111に吸着する。吸着パッド111を、たとえばエアシリンダなどで後退させ(
図13(b)参照)、真空引きを遮断して、切断片5bを集積部112に落とす。この構成では、切断片5bを確実に取り除くことができる。
【0058】
図14(a)に示すように、加飾品の凸部を形成するための入子は、可動式入子20dであってもよい。可動式入子20dを、加飾シート5の穴5aを塞ぐように移動させることで(
図14(b)参照)、キャビティ内の空気漏れを最小限に抑えることができる。したがって、空気漏れ防止機構4(
図1参照)に代えて、可動式入子20dを用いることができる。可動式入子20dは、たとえば、エアシリンダまたは油圧シリンダなどを用いて移動させることができる。可動式入子20dは、成形後、加飾シート5を成形面20bから離反させて加飾シートの流れ方向に加飾シートを移動する前に、成形面20bよりも凹む方向に移動するよう構成することもできる(
図15参照)。このようにすると、加飾シート移動時に加飾シート5の穴5aが可動式入子20bに引っかかることを防ぐことができる。