特許第6791695号(P6791695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャープ株式会社の特許一覧

特許6791695安全補助装置、移動体、安全補助方法、および安全補助プログラム
<>
  • 特許6791695-安全補助装置、移動体、安全補助方法、および安全補助プログラム 図000002
  • 特許6791695-安全補助装置、移動体、安全補助方法、および安全補助プログラム 図000003
  • 特許6791695-安全補助装置、移動体、安全補助方法、および安全補助プログラム 図000004
  • 特許6791695-安全補助装置、移動体、安全補助方法、および安全補助プログラム 図000005
  • 特許6791695-安全補助装置、移動体、安全補助方法、および安全補助プログラム 図000006
  • 特許6791695-安全補助装置、移動体、安全補助方法、および安全補助プログラム 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791695
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】安全補助装置、移動体、安全補助方法、および安全補助プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/09 20120101AFI20201116BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20201116BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20201116BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20201116BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   B60W30/09
   B60R21/00 991
   G08G1/16 C
   G05D1/02 R
   B60L15/20 Z
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-186888(P2016-186888)
(22)【出願日】2016年9月26日
(65)【公開番号】特開2017-109725(P2017-109725A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2019年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-243611(P2015-243611)
(32)【優先日】2015年12月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 達朗
【審査官】 影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−235563(JP,A)
【文献】 特開平10−016734(JP,A)
【文献】 特開昭63−155307(JP,A)
【文献】 特開2015−197706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/09
B60L 15/20
B60R 21/00
G05D 1/02
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載された機器への電源供給を遮断させる安全装置の補助を行う安全補助装置であって、
予め設定された安全範囲内の被検知物を検知する安全検知部と、
予め設定された指示範囲内の被検知物を検知する指示検知部と、
前記安全検知部の検知結果に応じて、前記安全装置を作動させるか否かの安全判定を行う安全判定部と、
前記指示検知部の検知結果に応じて、前記機器を減速または停止させるか否かの指示判定を行う指示判定部とを備え、
前記機器は、走行面を走行する移動体であり、前記安全装置によって駆動部に対する電源供給が遮断される構成とされ、
前記指示範囲は、前記機器を基点とした指示方向において、前記安全範囲よりも遠方を含むように設定されており、
前記安全判定部は、前記機器を減速または停止させている際に、前記安全判定を行わないこと
を特徴とする安全補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載の安全補助装置であって、
前記指示方向は、移動体の進行方向であること
を特徴とする安全補助装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の安全補助装置であって、
前記安全検知部と前記指示検知部とは、互いに異なる方式で被検知物を検知すること
を特徴とする安全補助装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の安全補助装置であって、
前記安全範囲は、立体空間とされており、
前記指示範囲は、平面とされていること
を特徴とする安全補助装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の安全補助装置であって、
前記指示範囲は、上面視において、前記安全範囲の起点を除く全周囲において、該安全範囲よりも遠方を含むように設定されていること
を特徴とする安全補助装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の安全補助装置であって、
前記指示判定部は、前記指示範囲内の被検知物を検知した際、前記機器を減速させ、該被検知物が前記安全範囲に入る前に該機器を停止させること
を特徴とする安全補助装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1つに記載の安全補助装置であって、
前記安全範囲は、前記指示方向において、前記安全装置を作動させてから前記機器が停止するまでに走行する距離より長く、前記指示範囲より短いこと
を特徴とする安全補助装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1つに記載の安全補助装置であって、
前記指示範囲は、前記指示方向において、前記指示判定部により減速および停止する指示を受けてから前記機器が停止するまでに走行する距離より長いこと
を特徴とする安全補助装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1つに記載の安全補助装置であって、
前記安全範囲および/または前記指示範囲は、前記機器の走行速度に応じて、範囲が変化するように設定されること
を特徴とする安全補助装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1つに記載の安全補助装置であって、
前記指示判定部は、前記安全検知部の検知結果を前記指示判定に用いること
を特徴とする安全補助装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1つに記載の安全補助装置を備えた移動体。
【請求項12】
搭載された機器への電源供給を遮断させる安全装置の補助を行う安全補助装置における安全補助方法であって、
安全検知部に、予め設定された安全範囲内の被検知物を検知させる安全検知ステップと、
指示検知部に、予め設定された指示範囲内の被検知物を検知させる指示検知ステップと、
安全判定部に、前記安全検知部の検知結果に応じて、前記安全装置を作動させるか否かの安全判定を行わせる安全判定ステップと、
指示判定部に、前記指示検知部の検知結果に応じて、前記機器を減速または停止させるか否かの指示判定を行わせる指示判定ステップとを含み、
前記機器は、走行面を走行する移動体であり、前記安全装置によって駆動部に対する電源供給が遮断される構成とされ、
前記指示範囲は、前記機器を基点とした指示方向において、前記安全範囲よりも遠方を含むように設定されており、
前記安全判定部は、前記機器を減速または停止させている際に、前記安全判定を行わないこと
を特徴とする安全補助方法。
【請求項13】
請求項12に記載の各ステップをコンピュータに実行させるための安全補助プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭載された機器への電源供給を遮断させる安全装置の補助を行う安全補助装置、移動体、安全補助方法、および安全補助プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自律走行する移動体などが実用化されており、センサなどで障害物を検知することで、事故を回避するように動作を制御していた。また、運転者によって操作される車両にも、上述したような接触を回避する方法が適用されており、車両の走行安全装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−260504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両の走行安全装置では、車両と物体との接触に係る判定を行う接触判定部と、接触回避の支援動作を作動させる車両制御部と、車両の走行路に接続される接続路の状態を判定する接続路判定部と、走行路の接続部付近の見通しを判定する見通し判定部とを備えており、見通しが悪い場合には、安全装置が作動しやすいように接触判定条件を変更している。安全装置は、車両の挙動を制御することで、運転者を支援しているが、作動によって運転者に煩わしさを感じさせてしまうため、適切なタイミングで作動するように、条件を変更している。上述した車両の走行安全装置では、状況に応じて、安全装置の作動を促しているため、頻繁に安全装置が作動してしまうという課題がある。
【0005】
ところで、接触を回避する方法としては、これに限らず、緊急時に安全停止させる際、動力への電源供給を遮断する安全装置も採用されている。このような安全装置では、電源強制遮断による製品へのダメージが懸念される。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、安全装置による安全停止が起こることを、事前に察知し回避して、安全停止での電源強制遮断によるダメージを軽減することができる安全補助装置、移動体、安全補助方法、および安全補助プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る安全補助装置は、搭載された機器への電源供給を遮断させる安全装置の補助を行う安全補助装置であって、予め設定された安全範囲内の被検知物を検知する安全検知部と、予め設定された指示範囲内の被検知物を検知する指示検知部と、前記安全検知部の検知結果に応じて、前記安全装置を作動させるか否かの安全判定を行う安全判定部と、前記指示検知部の検知結果に応じて、前記機器を減速または停止させるか否かの指示判定を行う指示判定部とを備え、前記機器は、走行面を走行する移動体であり、前記安全装置によって駆動部に対する電源供給が遮断される構成とされ、前記指示範囲は、前記機器を基点とした指示方向において、前記安全範囲よりも遠方を含むように設定されており、前記安全判定部は、前記機器を減速または停止させている際に、前記安全判定を行わないことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る安全補助装置では、前記機器は、走行面を走行する移動体とされ、前記指示方向は、移動体の進行方向である構成としてもよい。
【0010】
本発明に係る安全補助装置では、前記安全検知部と前記指示検知部とは、互いに異なる方式で被検知物を検知する構成としてもよい。
【0011】
本発明に係る安全補助装置では、前記安全範囲は、立体空間とされており、前記指示範囲は、平面とされている構成としてもよい。
【0012】
本発明に係る安全補助装置では、前記指示範囲は、上面視において、前記安全範囲の起点を除く全周囲において、該安全範囲よりも遠方を含むように設定されている構成としてもよい。
【0013】
本発明に係る安全補助装置では、前記指示判定部は、前記指示範囲内の被検知物を検知した際、前記機器を減速させ、該被検知物が前記安全範囲に入る前に該機器を停止させる構成としてもよい。
【0014】
本発明に係る安全補助装置では、前記安全範囲は、前記指示方向において、前記安全装置を作動させてから前記機器が停止するまでに走行する距離より長く、前記指示範囲より短い構成としてもよい。
【0015】
本発明に係る安全補助装置では、前記指示範囲は、前記指示方向において、前記指示判定部により減速および停止する指示を受けてから前記機器が停止するまでに走行する距離より長い構成としてもよい。
【0016】
本発明に係る安全補助装置では、前記安全範囲および/または前記指示範囲は、前記機器の走行速度に応じて、範囲が変化するように設定される構成としてもよい。
【0017】
本発明に係る安全補助装置では、前記指示判定部は、前記安全検知部の検知結果を前記指示判定に用いる構成としてもよい。
【0018】
本発明に係る移動体は、本発明に係る安全補助装置を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る安全補助方法は、搭載された機器への電源供給を遮断させる安全装置の補助を行う安全補助装置における安全補助方法であって、安全検知部に、予め設定された安全範囲内の被検知物を検知させる安全検知ステップと、指示検知部に、予め設定された指示範囲内の被検知物を検知させる指示検知ステップと、安全判定部に、前記安全検知部の検知結果に応じて、前記安全装置を作動させるか否かの安全判定を行わせる安全判定ステップと、指示判定部に、前記指示検知部の検知結果に応じて、前記機器を減速または停止させるか否かの指示判定を行わせる指示判定ステップとを含み、前記機器は、走行面を走行する移動体であり、前記安全装置によって駆動部に対する電源供給が遮断される構成とされ、前記指示範囲は、前記機器を基点とした指示方向において、前記安全範囲よりも遠方を含むように設定されており、前記安全判定部は、前記機器を減速または停止させている際に、前記安全判定を行わないことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る安全補助プログラムは、本発明に係る安全補助方法の各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、指示範囲が安全範囲よりも遠方に設定されているため、機器が動作する方向に被検知物が存在する場合、安全判定が行われる前に指示判定が行われる。その結果、安全装置による安全停止が起こることを、事前に察知し回避して、安全停止での電源強制遮断によるダメージを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る移動体の概略構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る移動体の概略上面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る移動体の概略側面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る安全補助装置における安全補助方法の処理フローを示すフロー図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る移動体の概略上面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る移動体の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る安全補助装置および移動体について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1実施形態に係る移動体の概略構成図であって、図2は、本発明の第1実施形態に係る移動体の概略上面図であって、図3は、本発明の第1実施形態に係る移動体の概略側面図である。
【0025】
本発明の第1実施形態に係る移動体1は、予め設定された経路に沿って移動する四輪の車両であって、移動体1(特に、駆動部11)への電源供給を遮断させる安全装置13と、安全装置13の補助を行う安全補助装置20と、駆動部11へ電力を供給する電源12とを備えている。安全補助装置20は、予め設定された安全範囲AR内の被検知物を検知する安全検知部21と、予め設定された指示範囲SR内の被検知物を検知する指示検知部22と、安全検知部21の検知結果に応じて、安全装置13を作動させるか否かの安全判定を行う安全判定部23と、指示検知部22の検知結果に応じて、移動体1を減速または停止させるか否かの指示判定を行う指示判定部24とを備えている。移動体1は、主に、前方(図1および図2では、右方)に向かって直進する。
【0026】
なお、以下では説明の簡略化のため、移動体1が直進する方向を直進方向Xと呼び、直進方向Xにおける前方を前方と省略することがある。また、上面視において、移動体1の直進方向Xに対して垂直な方向を幅方向Yと呼ぶことがあり、側面視において、直進方向Xに対して垂直な方向を高さ方向Zと呼ぶことがある。上述したように、本実施の形態において、移動体1の進行方向は、直進方向Xとされている。
【0027】
駆動部11は、4つの車輪とモータ等の駆動源とによって構成されている。なお、駆動部11は、これに限定されず、車輪の数を変更したり、ベルト等を用いたりしてもよく、移動体1を走行させ、適宜走行する速度を調整できる構成とされていればよい。駆動部11は、指示判定部24からの指示によって、走行する速度や方向を適宜制御する。
【0028】
電源12は、充電池であって、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、Ni−Cd電池、鉛電池、燃料電池、空気電池などを用いればよく、主として、走行機能、距離検出機能、通信機能を行うための電力を供給する。
【0029】
安全装置13は、電源12からの電力の供給を遮断し、移動体1を強制的に停止させる。ISO13482では、停止の判定をした場合に、動力への電源供給を遮断(安全停止)するように安全装置13を設けることが求められている。具体的に、ISO13482では、安全関連制御機能の使用によりリスクが緩和される場合、一つ以上の保護機能を備えなければならず、その保護機能による停止機能は、駆動アクチュエータへの電力の除去等により、安全防護される危険源を制御することが望ましいことが規定されている。
【0030】
安全検知部21は、移動体1の前面に取り付けられ、LIDAR(Light Detection and Ranging)を用いた光学センサ(3Dレーザセンサ21a)であって、検知波であるレーザ光を広範囲に照射し、物体からの反射光(反射波)を受光している。それによって、安全検知部21は、走行面30および被検知物の位置や距離などを検知している。具体的に、3Dレーザセンサ21aは、TOF(Time of Flight)方式を用いており、距離を測定したい方向へレーザを照射し、そのレーザが物体に当たって反射光が返ってくるまでの時間を計測して、物体までの距離を計測している。3Dレーザセンサ21aは、垂直方向での検知角度が約50°とされ、検知距離が10mとされている。なお、安全検知部21は、レーザ光に限定されず、赤外線、可視光、超音波、電磁波などを放射して、検知を行ってもよい。
【0031】
安全範囲ARは、立体空間とされており、具体的に、安全検知部21から直進方向Xの前方に向かって、扇状に広がるように設定されている。つまり、安全範囲ARは、安全検知部21から離れるに従って、高さ方向Zへ広がると伴に、幅方向Yへ広がっている。本実施の形態において、安全範囲ARの直進方向Xでの距離(安全距離AW)は、約3mとされており、上面視において、安全範囲ARが広がる角度は、約60°とされている。すなわち、安全範囲ARは、主に、移動体1近傍の前方を含む範囲とされている。
【0032】
なお、安全検知部21から照射される検知波は、安全範囲ARだけに限らず、より広い範囲へ照射されていてもよい。被検知物からの反射波を検知した際、安全範囲ARとして設定されている範囲を安全判定の対象とし、それ以外の範囲では、単に被検知物の位置を把握するだけでよい。
【0033】
指示検知部22は、移動体1の前面に取り付けられた光学センサであって、安全検知部21と同様に、レーザ光以外を照射するセンサとしてもよい。本実施の形態において、指示検知部22は、検知距離が10mとされた2Dレーザセンサ22aとされている。
【0034】
指示範囲SRは、平面とされており、指示検知部22を中心に扇状に広がるように設定されている。つまり、指示範囲SRは、指示検知部22から離れるに従って幅方向Yへ広がっている。なお、指示範囲SRは、高さ方向Zに対し、安全範囲ARのように広がっておらず、前方の走行面30に向けて僅かに傾斜している。本実施の形態において、指示範囲SRの距離(指示距離SW)は、約5mとされており、上面視において、指示範囲SRが広がる角度は、約270°とされている。すなわち、指示範囲SRは、主に、移動体1の前方および側方を含む範囲とされている。図2に示すように、指示範囲SRは、移動体1を基点とした指示方向(直進方向X)において、安全範囲ARよりも遠方を含むように設定されている。
【0035】
安全補助装置20は、図示しないCPUを備えており、安全判定部23および指示判定部24を予め組み込まれたプログラムとして記憶しており、記憶したプログラムを実行することにより、後述する処理を実行する。なお、CPUは、移動体1と安全補助装置20とで共通に用いられてもよい。また、図3では、省略されているが、移動体1には、安全検知部21および指示検知部22の検知結果や、走行速度等の各種設定を記憶させるための記憶装置が設けられていてもよい。
【0036】
移動体1は、安全検知部21および指示検知部22の他に、例えば、移動体1を覆う程度の狭い範囲で検知を行うセンサや、周囲の画像を撮影するカメラなどを備えていてもよい。
【0037】
安全検知部21と指示検知部22とは、上面視において、重なる位置に配置されている。つまり、指示範囲SRは、上面視において、安全範囲ARの起点を除く全周囲において、安全範囲ARよりも遠方を含むように設定されている。このように、安全検知部21と指示検知部22とを上方から見た際の座標が重なっているので、互いの検知結果における座標を揃える処理を簡略化でき、検知結果を素早く出力することができる。なお、これに限らず、指示検知部22を安全検知部21よりも後方に配置してもよい。それによって、指示検知部22の検知範囲が、安全検知部21の全周囲を覆うように設定することができる。
【0038】
指示判定部24は、指示検知部22の検知結果だけに限らず、安全検知部21の検知結果を指示判定に用いてもよい。つまり、指示判定部24は、安全検知部21の検知結果のうち、安全範囲ARより遠方を指示範囲SRとして指示判定を行ってもよい。このように、高さ方向Zに対して、広い範囲で照射される安全検知部21を指示判定に用いることで、低い障害物の見落としなどを防ぐことができる。
【0039】
次に、安全補助装置20(移動体1)における安全補助方法の処理フローについて、図面を参照して説明する。
【0040】
図4は、本発明の第1実施形態に係る安全補助装置における安全補助方法の処理フローを示すフロー図である。
【0041】
ステップS01では、安全検知部21および指示検知部22によって、被検知物の検知を行う。
【0042】
ステップS02では、指示判定部24によって、指示範囲SR内に被検知物が存在するかどうかを判定する。その結果、指示範囲SR内に被検知物が存在する場合(ステップS02:Yes)には、ステップS03へ進む。一方、指示範囲SR内に被検知物が存在しない場合(ステップS02:No)には、ステップS04へ進む。
【0043】
ステップS03では、指示判定部24によって、移動体1へ減速・停止指示をする。ここで、減速・停止指示がされた際、移動体1は、被検知物までの距離に応じて、適宜、減速または停止し、被検知物が安全範囲ARに入る前に停止する。したがって、指示範囲SRは、指示方向において、指示判定部24により減速および停止する指示を受けてから移動体1が停止するまでに走行する距離より長いことが望ましい。
【0044】
ステップS04では、安全判定部23によって、安全範囲AR内に被検知物が存在するかどうかを判定する。その結果、安全範囲AR内に被検知物が存在する場合(ステップS04:Yes)には、ステップS05へ進む。一方、安全範囲AR内に被検知物が存在しない場合(ステップS04:No)には、処理を終了する。
【0045】
ステップS05では、安全判定部23によって、安全装置13を作動させる。そして、移動体1は、安全装置13が作動されると、電源供給が遮断されて停止し、処理を終了する。したがって、安全範囲ARは、指示方向において、安全装置13を作動させてから移動体1が停止するまでに走行する距離より長く、指示範囲SRより短いことが望ましい。
【0046】
安全補助装置20では、被検知物が検知されなければ、上述したステップS01ないしステップS05に示す処理を繰り返す。また、移動体1を減速または停止させた状態であれば、被検知物が検知範囲の外へ移動するまで待機すればよい。
【0047】
本実施の形態では、指示判定(ステップS02)の結果に拘わらず、安全判定(ステップS04)を行っていたが、安全判定を行わない処理としてもよい。つまり、安全判定部23は、機器を減速または停止させている際(ステップS02:Yesの場合)に、安全判定を行わない。この場合、移動体1へ減速・停止指示を行い(ステップS03)、所定の時間経過した後、ステップS01からの処理を再度行えばよい。つまり、指示範囲SRでの検知によって、移動体1近傍に被検知物が存在することが把握できるので、速やかな移動体1の停止が見込まれ、即座に安全停止を行わないことで、電源強制遮断の頻度を下げることができる。
【0048】
本実施の形態における安全補助方法は、搭載された機器への電源供給を遮断させる安全装置13の補助を行う安全補助装置20における安全補助方法であって、安全検知部21に、予め設定された安全範囲AR内の被検知物を検知させる安全検知ステップと、指示検知部22に、予め設定された指示範囲SR内の被検知物を検知させる指示検知ステップと、安全判定部23に、安全検知部21の検知結果に応じて、安全装置13を作動させるか否かの安全判定を行わせる安全判定ステップと、指示判定部24に、指示検知部22の検知結果に応じて、機器を減速または停止させるか否かの指示判定を行わせる指示判定ステップとを含んでいる。指示範囲SRは、機器を基点とした指示方向において、安全範囲ARよりも遠方を含むように設定されている。
【0049】
上述したように、安全補助装置20では、指示範囲SRが安全範囲ARよりも遠方に設定されているため、機器が動作する方向に被検知物が存在する場合、安全判定が行われる前に指示判定が行われる。その結果、安全装置13による安全停止が起こることを、事前に察知し回避して、安全停止での電源強制遮断によるダメージを軽減することができる。
【0050】
また、走行する移動体1に安全補助装置20を適用する事で、被検知物が安全範囲ARに入る前に、移動体1へ減速または停止の指示をすることができる。なお、安全補助装置20は、移動体1だけに限定されず、他の機器に搭載されていてもよい。
【0051】
本実施の形態における安全判定では、立体的な検知を行うことで、見落としを防ぎ、確実に安全装置13を作動させることができる。また、指示判定では、平面的な検知とすることで、広範囲の状況を素早く把握することができる。
【0052】
安全範囲ARおよび指示範囲SRは、予め一定の範囲に設定されているが、これに限定されず、移動体1の走行速度に応じて、範囲が変化するように設定されていてもよい。具体的に、安全範囲ARおよび指示範囲SRは、走行速度が速くなると、進行方向に広げられ、走行速度が遅くなると、進行方向で狭くされる。また、範囲を変化させる方向は、前方だけに限らず、後述するように移動体1が旋回する際には、旋回方向で変化させてもよい。さらに、安全範囲ARと指示範囲SRとの両方を変化させるだけでなく、いずれか一方を変化させてもよい。このように、範囲を変化させることで、走行速度に応じた判定を行うことができる。つまり、接触するまでに十分な余裕がある被検知物に対して過剰に反応することや、高速で走行している際に、早い段階で移動体1を制動することなどができる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る移動体について、図面を参照して説明する。
【0054】
図5は、本発明の第2実施形態に係る移動体の概略上面図である。なお、第1実施形態と機能が実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
第2実施形態では、第1実施形態に対して、安全検知部21および指示検知部22の種類が異なる。具体的に、安全検知部21は、移動体1の前面に取り付けられたバンパーセンサ21bであって、物体に接触した際に押圧された力によって、被検知物の有無を検知している。したがって、安全範囲ARは、安全検知部21と略一致する。指示検知部22は、移動体1の前面側に設けられた超音波センサ22bであって、レーザ光と同様に、物体からの反射波によって検知を行う。指示範囲SRは、主に、移動体1の前方および斜め前方を含む範囲とされ、直進方向Xで安全範囲ARよりも遠方を含むように設定されている。
【0056】
本実施に形態において、安全検知部21と指示検知部22とは、互いに異なる方式で被検知物を検知する構成とされている。したがって、複数の検知方式を備えていれば、一方の方式では、検知が困難な被検知物に対して、他方の方式で検知することで、見落としなどの誤検知を防ぐことができる。
【0057】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る移動体について、図面を参照して説明する。
【0058】
図6は、本発明の第3実施形態に係る移動体の概略上面図である。なお、第1実施形態および第2実施形態と機能が実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
第3実施形態は、第1実施形態に対して、移動体1の進行方向が異なり、旋回およびスラローム走行をする。具体的に、安全検知部21は、第1実施形態と同様に、光学センサ(3Dレーザセンサ21a)であって、安全範囲ARも略同様である。指示検知部22は、移動体の前面であって、幅方向Yでの両端のそれぞれに設けられた超音波センサ22cである。指示範囲SRは、移動体1の斜め前方であって、それぞれの指示検知部22に対応する範囲とされている。つまり、安全範囲ARは、幅方向Yで指示範囲SRに挟まれている。
【0060】
移動体1は、図6に示す矢符R1または矢符R2で示すように、斜め前方へ向かって曲線を描くように移動し、旋回またはスラローム走行をする。したがって、矢符R1および矢符R2で示す移動体の進行方向では、指示範囲SRが安全範囲ARよりも遠方に位置している。
【0061】
なお、適宜進行方向を変える移動体1として、第1実施形態と第3実施形態とを組み合わせてもよく、複数の指示検知部22を備えた構成としてもよい。つまり、移動体1が直進する際には、第1実施形態における指示範囲SRを適用し、移動体1が旋回する際には、第3実施形態における指示範囲SRを適用するなど、移動体1の進行方向に応じて、指示範囲を切り替えればよい。
【0062】
上述した構成の他に、安全検知部21と指示検知部22とでは、ミラー駆動方式が異なるLIDARを組み合わせてもよい。具体的に、安全検知部21は、MEMSミラー式LIDARとしてもよい。これに対し、指示検知部22は、検知範囲が広いモータ回転ミラー式LIDARなどが適用される。モータ回転ミラー式LIDARを用いることで、MEMSミラー式LIDARの死角となる範囲をカバーでき、唐突な安全停止を防ぐことができる。
【0063】
また、同じ物理量を検知する場合でも、方式が異なるセンサを組み合わせてもよい。例えば、焦電型赤外センサと近赤外センサとを組み合わせた場合、焦電型赤外センサは赤外線の微分量を検知し、近赤外センサは赤外線の瞬時値を検知する。ここで、強い光が照射されるなどして、近赤外センサがハレーションを起こしても、焦電型赤外センサでは、検知した値の変化量から被検知物の動きを検知することができる。
【0064】
なお、今回開示した実施の形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 移動体
11 駆動部
12 電源
13 安全装置
20 安全補助装置
21 安全検知部
22 指示検知部
23 安全判定部
24 指示判定部
30 走行面
AR 安全範囲
AW 安全距離
SR 指示範囲
SW 指示距離
X 直進方向
Y 幅方向
Z 高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6