【実施例1】
【0011】
<構成>以下、構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、樹脂製の管部材1,2どうしを接合するのに、電気融着装置3を用いる。この電気融着装置3は、接合しようとする樹脂製の管部材1,2の端部に外嵌された電気融着継手4に対し電力を供給して、電気融着継手4と樹脂製の管部材1,2との境界面を溶融させることにより、両者の組織を融合させて一体化するようにしたものである。
【0013】
ここで、電気融着継手4は、短管状をした継手本体5の(肉厚の)内部にコイル状の電熱線6を埋設したものである。そして、この電熱線6の両端部は、電気融着継手4の両端部近傍の位置から電気融着継手4の外方へと導かれて一対のターミナル7a,7bを構成している。継手本体5には、管部材1,2とほぼ同じ材質のものが使用される。
【0014】
そして、電気融着装置3は、電気融着継手4に対して、融着用の電力を供給する融着制御装置8(融着融着制御装置8)と、この融着制御装置8と電気融着継手4(の各ターミナル7a,7b)との間を電気的に接続可能な給電ケーブル9と、を備えている。給電ケーブル9は、+極用と−極用の二つの芯線を有する二芯ケーブルなどとされると共に、その端部に、電気融着継手4の各ターミナル7a,7bへ接続するためのコネクター9a,9bをそれぞれ有している。なお、給電ケーブル9は、融着制御装置8に対して、着脱可能となるように構成しても良い。
【0015】
そして、以上のような基本的または全体的な構成に対し、この実施例の電気融着装置3は、以下のような構成を備えている。
【0016】
(1)上記融着制御装置8(
図2参照)または上記給電ケーブル9(
図3参照)が、増設ケーブル11を介して別の電気融着継手12を接続可能な増設用接続部13を備えるようにする。
そして、上記融着制御装置8が、上記増設用接続部13に増設ケーブル11が接続されていることを検出可能な増設ケーブル検出部14(
図4参照)を備えるようにする。
【0017】
ここで、別の電気融着継手12は、1つまたは複数設けることができる。
【0018】
増設ケーブル11は、給電ケーブル9と同様に、+極用と−極用との二つの芯線と、擬似抵抗となる判別線(抵抗線)とを備えた三芯ケーブルなどとされている。増設ケーブル11は、その一端側に、増設用接続部13に対して着脱可能なプラグ15を有しており、その他端側に、別の電気融着継手12のターミナル12a,12bへ差し込むためのコネクター11a,11bを有している。
【0019】
増設用接続部13は、融着制御装置8と給電ケーブル9の一方または両方に対して設けることができる。増設用接続部13を給電ケーブル9に設ける場合には、例えば、給電ケーブル9の途中に増設用接続部13を設置するのが好ましい。給電ケーブル9は、増設用接続部13よりも融着制御装置8の部分を、判別線(抵抗線)を備えた三芯ケーブルなどとする。この場合、給電ケーブル9は、増設用接続部13の位置で、融着制御装置8側の部分と、電気融着継手4側の部分とに分けることが可能である。
【0020】
増設用接続部13は、例えば、増設ケーブル11に対する抜け止め機能を有するものとするのが好ましい。
【0021】
融着制御装置8は、少なくとも、手入力による操作が可能な入力部21と、融着の手順を案内するための表示を行う表示部22とを備えている。また、融着制御装置8は、電気融着継手4や別の電気融着継手12に設置された(または貼付けられた)バーコード23,24を読み取るためのバーコードリーダー25(外部入力部)を備えている。バーコード23,24は、電気融着継手4や別の電気融着継手12に関する情報(例えば、形状や、大きさや、抵抗値など)をコード化して表示したものである。
【0022】
なお、
図5に示すように、融着制御装置8は、電気融着継手4用と、別の電気融着継手12用とに、複数の表示部22を有するようにしても良い。そして、入力部21とバーコードリーダー25とを、切替スイッチ26a,26bによって切替え得るようにしても良い。
【0023】
また、融着制御装置8は、その内部に、
図4に示すように、融着用の電力を供給可能な電源部27と、バーコードリーダー25や入力部21からの入力情報に基いて所定の処理を行い、表示部22や電源部27を制御するようにした制御部28とを備えている。なお、
図5の場合には、複数の表示部22に合わせて、内部に複数の電源部27を備えるようにしても良い。
【0024】
制御部28は、CPUなどの演算装置31と、メモリなどの記憶装置32とを有している。更に、制御部28は、CPUやメモリを用いて、上記したバーコードリーダー25や入力部21からの入力や、表示部22や電源部27への出力を制御すると共に、上記した所定の処理を行わせるためのプログラム33を備えている。プログラム33は、メモリに予め記憶されており、CPUによって実行されるようになっている。
【0025】
そして、この実施例では、制御部28は、上記した増設ケーブル検出部14を備えている。増設ケーブル検出部14は、増設用接続部13に増設ケーブル11を接続した時の判別線の抵抗を検出し得るものなどとすることができる。増設ケーブル検出部14は、プログラム33にて作成することができる。
【0026】
(2)上記融着制御装置8は、増設用接続部13に増設ケーブル11が接続された状態で、増設ケーブル11に対して別の電気融着継手12が接続されていない場合に、上記融着制御装置8による電力の供給を規制する給電規制部41を備えるようにしても良い。
【0027】
ここで、別の電気融着継手12が実際に接続されているかどうかは、電気融着を開始する前に、給電ケーブル9および増設ケーブル11に対し予備的な通電を行って、回路の抵抗値を計測することなどで検知することができる。増設ケーブル11に別の電気融着継手12が接続されていれば、電気融着継手4と別の電気融着継手12は並列接続となるので、計測された抵抗値が小さくなり、別の電気融着継手12が接続されていなければ電気融着継手4のみの接続となるので、計測された抵抗値は大きくなる。給電規制部41は、プログラム33にて作成することができる。
【0028】
(3)以下、電気融着方法について説明する。
この電気融着方法は、融着制御装置8から給電ケーブル9を介して電気融着継手4へ融着用の電力を供給することで、電気融着継手4による融着を行わせるものである。
この際、上記融着制御装置8または上記給電ケーブル9に設けられた増設用接続部13に増設ケーブル11を接続し、
上記給電ケーブル9を電気融着継手4に接続し、
上記増設ケーブル11を別の電気融着継手12に接続した状態で、
上記融着制御装置8に備えられた増設ケーブル検出部14によって、上記増設用接続部13に増設ケーブル11が接続されていることが検出された場合に(のみ)、
上記融着制御装置8から給電ケーブル9を介して電気融着継手4へ融着用の電力を供給するのと同時に、上記融着制御装置8から増設ケーブル11を介して別の電気融着継手12へ融着用の電力を供給することで、電気融着継手4による融着と同時に、別の電気融着継手12による融着を行わせるようにしている。
【0029】
即ち、複数同時融着を行う際に、増設ケーブル検出部14によって、増設用接続部13に増設ケーブル11が接続されていることが検出されなかった場合には、増設ケーブル11が正しく接続されていないということなので、給電規制部41は、通電が行われないようにする。また、電気融着継手4を1個のみ融着する際に、増設ケーブル検出部14によって、増設用接続部13に増設ケーブル11が接続されていることが検出された場合にも、不要な増設ケーブル11が接続されて、コネクター11a,11bが空き端子になるということなので、給電規制部41は、通電が行われないようにする。
【0030】
<作用>この実施例の作用は以下の通りである。
【0031】
まず、
図6のフローチャートに示すように、融着制御装置8の電源をONにすることで制御部28による制御が開始される。
【0032】
すると、ステップS1で、融着制御装置8の表示部22に初期表示が表示される。初期表示では、例えば、オーダー番号や施工者や用途などが表示されると共に、「工事情報番号を入力してください」などの入力を促す文字が表示されてステップS2へ進む。
【0033】
そして、ステップS2で、「ガス」か「配水」かの選択画面が表示部22に表示され、入力待ちとなる。以下、「配水」が選択された場合について説明する。なお、「ガス」が選択された場合も「配水」の場合とほぼ同様なので説明を省略する。
【0034】
ステップS2で「配水」が選択されると、ステップS3へ進んで「融着箇所:1箇所/2箇所」の文字と、「融着箇所を選択してください」などの入力を促す文字が表示部22に表示されてステップS4へ進む。
【0035】
そして、ステップS4で「1箇所」か「2箇所」かの選択画面が表示部22に表示され、入力待ちとなる。
【0036】
ステップS4で「1箇所」が選択された場合、ステップS5へ進んで増設ケーブル検出部14が増設用接続部13に増設ケーブル11が接続されているかを検出し、接続されていない場合(NO)にはステップS6へ進んで融着を実行し、接続されている場合(YES)にはステップS7へ進んで給電規制部41が融着を強制終了する。なお、ステップS6でNOの場合(「1箇所」の場合)については、現状通りなので、記載を省略する。
【0037】
ステップS4で「2箇所」が選択された場合、ステップS9へ進んで、ステップS9で「継手を接続してください」の文字が表示部22に表示され、入力待ちとなる。
【0038】
ステップS10で電気融着継手4のターミナル7a,7bに給電ケーブル9のコネクター9a,9bが接続され、増設用接続部13に増設ケーブル11が接続されると共に、別の電気融着継手12のターミナル12a,12bに増設ケーブル11のコネクター11a,11bが接続されたことが検知されると、ステップS11へ進んで回路の抵抗値を計測する。なお、電気融着継手4と別の電気融着継手12とは、並列に接続された状態となるので、同一の抵抗値を有する場合には、回路の抵抗値は半分になる。
【0039】
次いで、ステップS12へ進んで「バーコード(バーコード23もしくはバーコード24)の情報を入力してください」などの文字が表示部22に表示され、入力待ちとなる。
【0040】
ステップS13でバーコード23またはバーコード24が読み取られることで、バーコード23,24の情報が入力されたら、ステップS14へ進んで読み取ったバーコード23,24の情報にある抵抗値を1/2にしてステップS15へ進む。
【0041】
次に、ステップS15で計測した回路の抵抗値と、バーコード23,24から読み取った抵抗値の1/2の値とが一致しているかを判断する。
【0042】
これらの抵抗値が不一致であれば、ステップS16へ進んで表示部22に(「継手抵抗値異常」などの)エラー表示を行い、給電規制部41が電力の供給を規制する。
【0043】
抵抗値が一致した場合には、ステップS17へ進んで「スタートで通電を開始します」の文字を表示部22に表示し、スタートボタンの操作待ちとなる。
【0044】
ステップS18でスタートボタンの操作を確認したら、ステップS19へ進んで通電により融着を開始し、所要の時間通電したら、ステップS20へ進んで通電を自動的に終了し融着を終了する。
【0045】
そして、ステップS21で「冷却後クランプを外してください」の文字が表示部22に表示され、待ち状態となる。
【0046】
その後、ステップS22で電気融着継手4のターミナル7a,7bからコネクター9a,9bが外されると、1回の融着作業の終了となるので、ステップS3へ戻って、上記を繰り返し得る状態になる。
【0047】
そして、融着制御装置8の電源がOFFにされると制御が終了される。
【0048】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0049】
(作用効果1)融着制御装置8または給電ケーブル9が、増設用接続部13を備えるようにした。これにより、増設用接続部13に対し増設ケーブル11を介して別の電気融着継手12を接続することが可能となる。その結果、1つの融着制御装置8で、電気融着継手4による融着と、別の電気融着継手12による融着とを同時に且つ適正に行うことができるようになる。これにより、融着作業の効率の向上を図ることができる。しかも、複数の電気融着継手4に対する溶着が、1つの融着制御装置8だけでできるので、コストを抑えることができる。更に、増設用接続部13は、既存の融着制御装置8または給電ケーブル9を改良して設けることができるので、既存の融着制御装置8や給電ケーブル9の有効活用を図ることができる。
【0050】
この際、増設ケーブル検出部14によって、増設用接続部13に増設ケーブル11が接続されているかどうかを検知することができるようにした。これにより、増設用接続部13に対する増設ケーブル11の接続ミスや抜けなどを確認することができる。その結果、増設ケーブル11が正しく接続されていない場合については、通電を行うことができなくなるので、作業の確実性や安全牲などを高めることが可能となる。
【0051】
これに対し、例えば、増設用接続部13を備えていない既存の電気融着装置3に対し、給電ケーブル9のコネクター9a,9bに対して別の二股ケーブルを取付けて、別の二股ケーブルを介して複数の電気融着継手4による融着を同時に行わせるなどの、想定外の使用法が考えられる。しかし、このようにした場合、複数の電気融着継手4が並列に接続されることによって、回路の抵抗値が半減してしまうので、融着制御装置8の設定を修正する必要が生じる。
【0052】
そこで、融着制御装置8の設定の修正を容易化するために、例えば、電気融着継手4に単独で融着を行う場合の抵抗値を記録したバーコード23と、複数同時に融着を行う場合の抵抗値を記録した別のバーコードとを貼り付けるなどして、2種類のバーコード23および別のバーコードを使い分けることで設定を変えるなどの対応が考えられる。しかし、このようにすると、その分だけコストがかかると共に、バーコード23と別のバーコードとの読み間違いなどの人為ミスも起こり易くなる。
【0053】
また、給電ケーブル9に別の二股ケーブルを取付けた状態で、別の二股ケーブルの一方のコネクターに対して1個だけ電気融着継手4を接続して融着を行わせるような逆の使い方をしてしまうことも考えられる。しかし、このようにすると、別の二股ケーブルの他方のコネクターが空き端子となってしまい、むき出しの状態になるので、空き端子から漏電や感電などを生じるおそれあり、安全性を確保することができない。
【0054】
しかし、この実施例のように、増設用接続部13を設けて増設ケーブル11を適正に接続ができるようにすることで、上記したようなコストや人為ミスや安全性などの問題をなくすことができる。
【0055】
(作用効果2)そして、上記に加えて、融着制御装置8が給電規制部41を備えるようにしても良い。これにより、増設用接続部13に増設ケーブル11が接続された状態で、増設ケーブル11に対して別の電気融着継手12が接続されていない場合に、融着制御装置8による電力の供給を強制的に規制することができる。これにより、空き端子への通電がなくなり、作業の安全性などを高めることが可能となる。
【0056】
(作用効果3)また、上記した電気融着方法によれば、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
以上、この発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、実施の形態はこの発明の例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施の形態に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、実施の形態に複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。