(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明では、便宜上、
図1の姿勢を基準として、「上」、「下」、「頂部」、「底部」等の用語を用いるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
まず、
図1〜
図3を用いて、本発明の第1実施例における熱交換器としてのオイルクーラ1の概略を説明する。
図1は、オイルクーラ1の分解斜視図である。また、
図2はオイルクーラ1の平面図である。また、
図3は、
図2のA−A線に沿った断面図である。
【0017】
図1に示すように、オイルクーラ1は、オイルと冷却水との熱交換を行う熱交換部2と、熱交換部2の上面に取り付けられる比較的厚肉の頂部プレート3と、熱交換部2の下面に取り付けられる比較的厚肉の底部プレート4と、から大略構成されている。
【0018】
熱交換部2は、基本的な形状が共通の多数(複数)のコアプレートとしての第1コアプレート5と多数(複数)のコアプレートとしての第2コアプレート6とを交互に積層し、第1コアプレート5と第2コアプレート6との間に、プレート間オイル流路7(
図3を参照)とプレート間冷却水流路8(
図3を参照)とを交互に構成したものである。実施例のオイルクーラ1においては、熱交換部2内に3つのプレート間オイル流路7と3つのプレート間冷却水流路8が形成されている。プレート間オイル流路7及びプレート間冷却水流路8は流体流路に相当するものである。
【0019】
本実施例では、
図3に示すように、第1コアプレート5の下面と第2コアプレート6の上面との間にプレート間オイル流路7が構成され、第1コアプレート5の上面と第2コアプレート6の下面との間にプレート間冷却水流路8が構成される。各プレート間オイル流路7には、それぞれフィンプレートとしての第1フィンプレート9が配置されている。各プレート間冷却水流路8には、それぞれフィンプレートとしての第2フィンプレート10が配置されている。
【0020】
多数の第1、第2コアプレート5、6、頂部プレート3、底部プレート4、多数(複数)の第1フィンプレート9及び多数(複数)の第2フィンプレート10は、ロー付けによって互いに接合され一体化されている。詳しくは、これらのプレート3、5、6がアルミニウム合金の基材の表面にロー材層を被覆したいわゆるクラッド材を用いて形成されており、各部を所定の位置に仮組付した後、炉内で加熱することにより、一体にロー付けされる。
【0021】
なお、熱交換部2の最上部及び最下部に位置する第1コアプレート5は、頂部プレート3や底部プレート4との関係から、熱交換部2の中間部に位置する一般的な第1コアプレート5とは多少異なる構成を有している。
【0022】
例えば、本実施例において、熱交換部2の最下部に位置する第1コアプレート5は、他の第1コアプレート5に比べて厚肉に形成されている。
【0023】
第1コアプレート5及び第2コアプレート6は、アルミニウム合金の薄い母材をプレス成形したものであって、全体として矩形(略正方形)をなし、一対のオイル穴としての一対のオイル通過穴11、11と、一対の冷却水穴としての一対の冷却水通過穴12、12とを有している。
【0024】
また、本実施例における第1コアプレート5及び第2コアプレート6は、
図1に示すように、オイルも冷却水も通過することのない一対の貫通穴13、13を有している。これは、第1コアプレート5及び第2コアプレート6が汎用性を持つように形成されているためである。本実施例おける各貫通穴13は、
図3に示すように、上下で連通するものの、プレート間オイル流路7やプレート間冷却水流路8とは連通していない。
【0025】
頂部プレート3は、熱交換部2最上部の一方の冷却水通過穴12に連通する冷却水導入部14と、熱交換部2最上部の他方の冷却水通過穴12に連通する冷却水排出部15と、を備えている。冷却水導入部14には、
図1及び
図3に示すように、冷却水導入管16が接続されている。冷却水排出部15には、
図1及び
図3に示すように、冷却水排出管17が接続されている。オイルクーラ1は、冷却水導入管16から冷却水が供給され、冷却水排出管17から冷却水が排出される。
【0026】
底部プレート4は、
図1に示すように、熱交換部2最下部の一方のオイル通過穴11に連通するオイル導入部18と、熱交換部2最下部の他方のオイル通過穴11に連通するオイル排出部19と、を備えている。底部プレート4のオイル導入部18及びオイル排出部19は、各々をシールする図示せぬガスケット等を介して図示せぬシリンダブロック等に取り付けられる。オイルクーラ1は、オイル導入部18からオイルが供給され、オイル排出部19からオイルが排出される。
【0027】
一対のオイル通過穴11、11は、コアプレート外縁に位置するとともに、コアプレート中心を挟んで対称となる位置に形成されている。詳述すると、一対のオイル通過穴11、11は、
図1に示すように、コアプレート外縁に位置するとともに、コアプレート対角線上でコアプレート中心を挟んで対称となる位置に形成されている。
【0028】
一対の冷却水通過穴12、12は、コアプレート外縁に位置するとともに、コアプレート中心を挟んで対称となる位置に形成されている。詳述すると、一対の冷却水通過穴12、12は、
図1に示すように、コアプレート外縁に位置するとともに、コアプレート対角線上でコアプレート中心を挟んで対称となる位置に形成されている。
【0029】
なお、冷却水通過穴12は、オイル通過穴11と重ならないように形成されている。詳述すると、冷却水通過穴12は、オイル通過穴11とは異なるコアプレート対角線上に形成されている。
【0030】
一対の貫通穴13、13は、
図1に示すように、コアプレート中心を挟んで対称となるコアプレート外縁に位置するとともに、オイル通過穴11と冷却水通過穴12の間に位置するよう形成されている。
【0031】
そして、頂部プレート3の冷却水導入部14から導入された冷却水は、プレート間冷却水流路8を流れ、全体として熱交換部2内をコアプレート積層方向と直交する方向で流れ、頂部プレート3の冷却水排出部15に至る。なお、底部プレート4のオイル導入部18から導入されたオイルは、プレート間オイル流路7を流れ、全体として熱交換部2内をコアプレート積層方向と直交する方向で流れ、底部プレート4のオイル排出部19に至る。
【0032】
第1コアプレート5では、
図1及び
図3に示すように、オイル通過穴11の周囲がボス部21としてプレート間冷却水流路側へ突出するように一段高く形成されているとともに、冷却水通過穴12の周囲がボス部22としてプレート間オイル流路側へ突出するように一段高く形成されている。また、第1コアプレート5では、
図1及び
図3に示すように、貫通穴13の周囲が二重円環状のボス部23としてプレート間冷却水流路側(外周側)及びプレート間オイル流路側(内周側)へそれぞれ突出するように一段高く形成されている。なお、最下部の第1コアプレート5では、貫通穴13の周囲のボス部23が、プレート間冷却水流路側へのみ突出している。
【0033】
第2コアプレート6では、
図1及び
図3に示すように、オイル通過穴11の周囲がボス部24としてプレート間冷却水流路側へ突出するように一段高く形成されているとともに、冷却水通過穴12の周囲がボス部25としてプレート間オイル流路側へ突出するように一段高く形成されている。また、第2コアプレート6では、
図1及び
図3に示すように、貫通穴13の周囲が二重円環状のボス部26としてプレート間冷却水流路側(外周側)及びプレート間オイル流路側(内周側)へそれぞれ突出するように一段高く形成されている。
【0034】
従って、これら第1コアプレート5と第2コアプレート6とを交互に組み合わせることで、第1コアプレート5と第2コアプレート6との間に、プレート間オイル流路7とプレート間冷却水流路8となる一定の間隔が形成される。
【0035】
第1コアプレート5におけるオイル通過穴11周囲のボス部21は、隣接する一方の第2コアプレート6のオイル通過穴11周囲のボス部24に接合されている。これにより、隣接する上下2つのプレート間オイル流路7は、互いに連通するとともに、両者間のプレート間冷却水流路8から隔絶される。従って、多数の第1コアプレート5と第2コアプレート6とが接合された状態では、多数のオイル通過穴11を介して各プレート間オイル流路7同士が互いに連通する。
【0036】
第2コアプレート6における冷却水通過穴12周囲のボス部25は、隣接する一方の第1コアプレート5の冷却水通過穴12周囲のボス部22に接合されている。これにより、隣接する上下2つのプレート間冷却水流路8は、互いに連通するとともに、両者間のプレート間オイル流路7から隔絶される。従って、多数の第1コアプレート5と第2コアプレート6とが接合された状態では、多数の冷却水通過穴12を介して各プレート間冷却水流路8同士が互いに連通する。
【0037】
第1コアプレート5における貫通穴13周囲のボス部23は、隣接する上下の第2コアプレート6の貫通穴13周囲のボス部26に接合されている。従って、本実施例では、多数の第1コアプレート5と第2コアプレート6とが接合された状態では、各貫通穴13は、プレート間オイル流路7及びプレート間冷却水流路8と連通しない。
【0038】
なお、
図1中の27は、第1コアプレート5に形成された位置決め突起部(後述)である。
【0039】
第1フィンプレート9は、外形が略矩形で、一対の互いに対向する縦辺9aと、一対の互いに対向する横辺9bと、を有している。
【0040】
第1フィンプレート9は、
図4に示すように、第2コアプレート6のボス部25によって位置決めされている。詳述すると、本実施例では、ボス部25の一部を対向するボス部側へ突出させた位置決め突起25aによって、対向する一対のボス部25、25の間に第1フィンプレート9が位置決めされる。
【0041】
第1フィンプレート9は、その平面図上において、当該フィンプレートの中心を通り互い直交する第1基準線L1及び第2基準線L2を仮想したとき、第1基準線L1と平行な方向の流路抵抗が、第2基準線L2と平行な方向の流路抵抗に比べて小さい異方性を有している。換言すると、本実施例の第1フィンプレート9は、縦辺9aと平行な方向の流路抵抗に比べて、横辺9bと平行な方向の流路抵抗が大きい異方性を有している。
【0042】
第1フィンプレート9は、第1基準線L1に沿った方向で、その両端がオイル通過穴11及び冷却水通過穴12より第2コアプレート6の中心側に位置するように形成されている。また、第1フィンプレート9は、第2基準線L2に沿った方向で、その両端がオイル通過穴11及び冷却水通過穴12よりも外方位置まで延びて形成されている。換言すると、第1フィンプレート9は、第2基準線L2と平行な横辺9bの長さが、プレート間オイル流路7の幅と略同じ長さに形成されている。さらに言えば、プレート間オイル流路7においては、第1フィンプレート9の横辺9bと当該横辺9bと対向する第2コアプレート6の外周縁との間に、第1フィンプレート9によって覆われることなくオイル通過穴11及び冷却水通過穴12が位置することになる。
【0043】
つまり、第2コアプレート6には、第1フィンプレート9の横辺9bに隣接して、第1フィンプレート9に覆われない長方形の領域が存在する。そして、この長方形の領域に、オイル通過穴11及び冷却水通過穴12が位置している。換言すると、2つのオイル通過穴11は、第1基準線L1に沿った方向で、第1フィンプレート9を挟んで位置し、2つの冷却水通過穴12は、第1基準線L1に沿った方向で、第1フィンプレート9を挟んで位置している。そのため、本実施例のプレート間オイル流路7においては、第1フィンプレート9により、第1フィンプレート9の第1基準線L1と平行で第2基準線L2に沿った方向に略均一なオイルの流れを形成することができる。
【0044】
図5〜
図8を用いて第1フィンプレート9について詳述する。なお、説明の都合上、第1フィンプレート9の平面における互いに直交する2つの方向を、
図5、
図6、
図8に示すように、X方向、Y方向と定義する。
【0045】
第1フィンプレート9は、
図5〜
図7に示すように、一定間隔毎に繰り返し折り曲げられたV字形の波形形状を呈している。換言すると、第1フィンプレート9は、1枚の母材をY方向に送りながら波形形状に折り曲げてなるコルゲートフィンである。
【0046】
図6及び
図7に示すように、第1フィンプレート9は、波形の頂部に位置してX方向に連続する頂部壁31と、波形の底部に位置してX方向に連続する底部壁32と、頂部壁31と底部壁32とを連結する脚部33と、を有している。なお、頂部壁31と底部壁32とは、実質的には同じものである。
【0047】
第1フィンプレート9の脚部33は、基準壁33aと、基準壁33aに対してY方向で隣接する一方の脚部側に突出する第1突出壁33bと、基準壁33aに対してY方向で隣接する他方の脚部側に突出する第2突出壁33cと、を有している。X方向において、基準壁33aの両側には、第1突出壁33bと第2突出壁33cが位置している。X方向において、第1突出壁33b及び第2突出壁33cの両側には、基準壁33aが位置している。本実施例の脚部33は、X方向に沿って、基準壁33a、第2突出壁33c、基準壁33a、第1突出壁33bの順番が繰り返されるように形成されている。
【0048】
さらに第1フィンプレート9の脚部33には、頂部壁31及び底部壁32に沿った所定間隔毎に段差壁34が形成されている。この段差壁34は、基準壁33aと第1突出壁33bとの間の段差面であり、基準壁33aと第2突出壁33cとの間の段差面である。そのため、脚部33は、X方向に沿って繰り返し形成される基準壁33aと第1突出壁33bと第2突出壁33cと段差壁34によって、頂部壁31及び底部壁32に沿って矩形の波形形状を呈している。段差壁34は、頂部壁31及び底部壁32から離間した位置に形成されている。
【0049】
また、第1フィンプレート9の脚部33は、Y方向で隣接する脚部33と同位相の波形形状に形成されている。すなわち、Y方向で隣接する脚部33において、基準壁33aと対向するのは基準壁33aであり、第1突出壁33bと対向するのは第1突出壁33bであり、第2突出壁33cと対向するのは第2突出壁33cである。
【0050】
第1フィンプレート9の脚部33の段差壁34には、第1フィンプレート9の板厚以下の幅となる細長い開口部35が形成されている。換言すると、第1フィンプレート9の脚部33の段差壁34は、第1フィンプレート9の板厚以下となる幅の細長い開口部35を形成可能な程度の大きさの段差面であればよい。
【0051】
第1フィンプレート9の開口部35は、X方向に沿った細長い貫通穴である。第1フィンプレート9の開口部35は、第1フィンプレート9が本実施例のようにオイル回路内で使用される場合には、例えば、その幅t1が0.1mm程度の細長い開口にすればよい。
【0052】
このような第1フィンプレート9を形成するにあたって、母材には、X方向の所定間隔P1毎にY方向に沿ったスリットが間欠的に設けられる。そして、このスリットに沿った折り曲げ加工により、第1フィンプレート9の脚部33がX方向に沿って波形形状となる。つまり、上記スリットに沿って母材に折り曲げ加工を施すことで、第1フィンプレート9には、段差壁34と、第1フィンプレート9の板厚以下となる幅の細長い開口部35と、が形成される。
【0053】
そして、このような通路断面積が非常に小さい開口部35が形成された状態の母材は、Y方向に送られながら所定位置毎にそれぞれ反対側に折り曲げられる。これにより、第1フィンプレート9は、V字形の波形形状に形成される。
【0054】
図8は、第1コアプレート5、第2コアプレート6の面と平行にプレート間オイル流路7を横切る断面に沿って、第1フィンプレート9の脚部33を拡大して示したものである。
【0055】
第1フィンプレート9の基準壁33a、第1突出壁33b及び第2突出壁33cは、脚部33に形成した開口部35により、破線状に一列に並び、かつ隣接する壁の列は互いに相補の関係となり、全体として千鳥状に並んでいる。
【0056】
そのため、X方向に沿ってオイルを流そうとした場合、隣接する脚部33の列の間を矢印36のように直線的に流れつつ開口部35を通して流れるので、境界層がつきづらく、かつ流路抵抗も小さい。Y方向に沿ってオイルを流そうとした場合、隣接する列の脚部33が重なり合うので、オイルは直線的には流れることができず、矢印37のように蛇行して流れる。また、Y方向に沿って流れる際にオイルが通過することになる開口部35は、通路断面積が非常に小さくなっている。そのため、Y方向に沿ってオイルが流れる際の流路抵抗は、大きくなる。つまり、第1フィンプレート9は、流路抵抗がX方向とY方向とで異なる異方性を有し、X方向(上述した第1基準線L1に沿った方向)への流れに対する流路抵抗が相対的に小さくなっているとともに、Y方向(上述した第2基準線L2に沿った方向)への流れに対する流路抵抗が極端に大きくなっている。
【0057】
第2フィンプレート10は、外形が略矩形で、一対の互いに対向する縦辺10aと、一対の互いに対向する横辺10bと、を有している。
【0058】
第2フィンプレート10は、
図9に示すように、第1コアプレート5に形成された複数の位置決め突起部27によって位置決めされている。詳述すると、本実施例では、位置決め突起部27が各貫通穴13の両側に形成されている。位置決め突起部27は、貫通穴13よりも第1コアプレート5の中心側に位置している。
【0059】
第2フィンプレート10は、その平面図上において、当該フィンプレートの中心を通り互い直交する第1基準線L1及び第2基準線L2を仮想したとき、第1基準線L1と平行な方向の流路抵抗が、第2基準線L2と平行な方向の流路抵抗に比べて小さい異方性を有している。換言すると、本実施例の第2フィンプレート10は、縦辺10aと平行な方向の流路抵抗に比べて、横辺10bと平行な方向の流路抵抗が大きい異方性を有している。
【0060】
第2フィンプレート10は、第1基準線L1に沿った方向で、その両端がオイル通過穴11及び冷却水通過穴12より第2コアプレート6の中心側に位置するように形成されている。また、第2フィンプレート10は、第2基準線L2に沿った方向で、その両端がオイル通過穴11及び冷却水通過穴12よりも外方位置まで延びて形成されている。換言すると、第2フィンプレート10は、第2基準線L2と平行な横辺10bの長さが、プレート間冷却水流路8の幅と略同じ長さに形成されている。さらに言えば、プレート間冷却水流路8においては、第2フィンプレート10の横辺10bと当該横辺10bと対向する第1コアプレート5の外周縁との間に、第2フィンプレート10によって覆われることなくオイル通過穴11及び冷却水通過穴12が位置することになる。
【0061】
つまり、第1コアプレート5には、第2フィンプレート10の横辺10bに隣接して、第2フィンプレート10に覆われない長方形の領域が存在する。そして、この長方形の領域に、オイル通過穴11及び冷却水通過穴12が位置している。換言すると、2つのオイル通過穴11は、第1基準線L1に沿った方向で、第2フィンプレート10を挟んで位置し、2つの冷却水通過穴12は、第1基準線L1に沿った方向で、第2フィンプレート10を挟んで位置している。そのため、本実施例のプレート間冷却水流路8においては、第2フィンプレート10により、第2フィンプレート10の第1基準線L1と平行で第2基準線L2に沿った方向に略均一な冷却水の流れを形成することができる。
【0062】
図10〜
図13を用いて第2フィンプレート10について詳述する。なお、説明の都合上、第2フィンプレート10の平面における互いに直交する2つの方向を、
図10、
図11、
図13に示すように、X方向、Y方向と定義する。
【0063】
第2フィンプレート10は、
図10〜
図12に示すように、一定間隔毎に繰り返し折り曲げられた台形(等脚台形)の波形形状を呈している。換言すると、第2フィンプレート10は、1枚の母材をY方向に送りながら波形形状に折り曲げてなるコルゲートフィンである。
【0064】
図11及び
図12に示すように、第2フィンプレート10は、波形の頂部に位置してX方向にジグザクに連続する頂部壁41と、波形の底部に位置してX方向にジグザクに連続する底部壁42と、頂部壁41と底部壁42とを連結する脚部43と、を有している。なお、頂部壁41と底部壁42とは、実質的には同じものである。
【0065】
第2フィンプレート10の脚部43は、第1壁43aと、第1壁43aに対してY方向に所定ピッチずれている第2壁43bと、を有している。X方向において、第1壁43aの両側には、第2壁43bが位置している。X方向において、第2壁43bの両側には、第1壁43aが位置している。本実施例の脚部43は、X方向に沿って、第1壁43a、第2壁43b、第1壁43a、第2壁43bの順番が繰り返されるように形成されている。
【0066】
さらに第2フィンプレート10の脚部43には、頂部壁41及び底部壁42に沿った所定間隔毎に段差壁44が形成されている。この段差壁44は、第1壁43aと第2壁43bとの間の段差面である。そのため、脚部43は、X方向に沿って繰り返し形成される第1壁43aと第2壁43bと段差壁44によって、頂部壁41及び底部壁42に沿って矩形の波形形状を呈している。段差壁44は、頂部壁41及び底部壁42から離間した位置に形成されている。
【0067】
また、第2フィンプレート10の脚部43は、Y方向で隣接する脚部43と同位相の波形形状に形成されている。すなわち、Y方向で隣接する脚部43において、第1壁43aと対向するのは第1壁43aであり、第2壁43bと対向するのは第2壁43bである。
【0068】
第2フィンプレート10の脚部43の段差壁44には、第2フィンプレート10の板厚以下の幅となる細長い開口部45が形成されている。換言すると、第2フィンプレート10の脚部43の段差壁44は、第2フィンプレート10の板厚以下となる幅の細長い開口部45を形成可能な程度の大きさの段差面であればよい。
【0069】
第2フィンプレート10の開口部45は、X方向に沿った細長い貫通穴である。第2フィンプレート10の開口部45は、第2フィンプレート10が本実施例のように冷却水回路内で使用される場合には、例えば、その幅t2が0.15mm程度の細長い開口にすればよい。
【0070】
このような第2フィンプレート10を形成するにあたって、母材には、X方向の所定間隔P2毎にY方向に沿ったスリットが間欠的に設けられる。
【0071】
そして、このようにスリットが形成された状態の母材は、Y方向に送られながら所定位置毎にそれぞれ反対側に折り曲げられる。これにより、第2フィンプレート10は、台形の波形形状に形成される。また、X方向の所定間隔P2毎に上記スリットに沿って所定ピッチずつずれて折り曲げ加工を施すことで、第2フィンプレート10の脚部43がX方向に沿って波形形状となる。つまり、上記スリットに沿って母材に折り曲げ加工を施すことで、第2フィンプレート10には、段差壁44と、第2フィンプレート10の板厚以下となる幅の細長い開口部45と、が形成される。
【0072】
図13は、第1コアプレート5、第2コアプレート6の面と平行にプレート間冷却水流路8を横切る断面に沿って、第2フィンプレート10の脚部43を拡大して示したものである。
【0073】
第2フィンプレート10の第1壁43a、第2壁43bは、脚部43に形成した開口部45により、破線状に一列に並び、かつ隣接する壁の列は互いに相補の関係となり、全体として千鳥状に並んでいる。
【0074】
そのため、X方向に沿って冷却水を流そうとした場合、隣接する脚部43の列の間を矢印46のように直線的に流れつつ開口部45を流れるので、境界層ができづらく、かつ流路抵抗も小さい。Y方向に沿って冷却水を流そうとした場合、隣接する列の脚部43が重なり合うので、冷却水は直線的には流れることができず、矢印47のように蛇行して流れる。また、Y方向に沿って流れる際に冷却水が通過することになる開口部45は、通路断面積が非常に小さくなっている。そのため、Y方向に沿って冷却水が流れる際の流路抵抗は、大きくなる。つまり、第2フィンプレート10は、流路抵抗がX方向とY方向とで異なる異方性を有し、X方向(上述した第1基準線L1に沿った方向)への流れに対する流路抵抗が相対的に小さくなっているとともに、Y方向(上述した第2基準線L2に沿った方向)への流れに対する流路抵抗が大きくなっている。
【0075】
なお、上述した実施例においては、プレート間オイル流路7に第1フィンプレート9が配置され、プレート間冷却水流路8に第2フィンプレート10が配置されているが、プレート間オイル流路7に第2フィンプレート10を配置し、プレート間冷却水流路8に第1フィンプレート9を配置することも可能である。また、プレート間オイル流路7とプレート間冷却水流路8の双方に第1フィンプレート9を配置することや、プレート間オイル流路7とプレート間冷却水流路8の双方に第2フィンプレート10を配置することも可能である。
【0076】
このような本実施例のオイルクーラ1においては、プレート間オイル流路7における第1フィンプレート9の異方性の向きと、プレート間冷却水流路8における第2フィンプレート10の異方性の向きとが一致している。そして、オイル導入部18と冷却水導入部14とが、第1、第2フィンプレート9、10の第1基準線L1に沿った方向で、第1、第2フィンプレート9、10を挟んで配置されている。そのため、プレート間オイル流路7には、プレート間冷却水流路8の冷却水の流れの向きと逆方向となるオイルの流れが形成される。換言すると、プレート間オイル流路7に形成される略均一なオイルの流れ向きが、プレート間冷却水流路8に形成される略均一な冷却水の流れの向きと逆方向となる。詳述すると、第1、第2フィンプレート9、10が配置された領域において、プレート間オイル流路7におけるオイルの流れの向きが、プレート間冷却水流路8における冷却水の流れの向きと逆方向となっている。さらに言えば、第1フィンプレート9におけるオイルの流れの向きが、第2フィンプレート10における冷却水の流れの向きと逆方向となっている。従って、第1、第2フィンプレート9、10が配置された位置において、オイルの流れと冷却水の流れとがいわゆる対向流となり、熱交換効率を向上させることができる。
【0077】
プレート間オイル流路7においては、一対のオイル通過穴11の間に第1フィンプレート9が位置しているとともに、プレート間冷却水流路8に比べて、流体抵抗が大きくなっている。そのため、プレート間オイル流路7にあっては、
図4に示すように、オイル通過穴11と第1フィンプレート9との間隔S1が狭くても、オイル通過穴11から導入されたオイルが、第1フィンプレート9に流れ込む前に、第1フィンプレート9の上流側で冷却水通過穴12側まで流れやすい。つまり、プレート間オイル流路7にあっては、オイル通過穴11と第1フィンプレート9との間隔S1が狭くても、プレート間オイル流路7における第1基準線L1に沿ったオイルの流れを第2基準線L2に沿った方向で略均一にすることができる。そして、プレート間オイル流路7におけるオイルの流れを第2基準線L2に沿った方向で略均一にできるので、第1、第2コアプレート5、6の全体を使って効率良く熱交換を行うことができる。
【0078】
プレート間冷却水流路8においては、一対の冷却水通過穴12の間に第2フィンプレート10が位置しているとともに、プレート間オイル流路7に比べて、流体抵抗が小さくなっている。そのため、プレート間冷却水流路8にあっては、
図9に示すように、冷却水通過穴12と第2フィンプレート10との間隔S2を広く設定する必要がある。すなわち、プレート間冷却水流路8にあっては、流体抵抗が小さいため、間隔S2が狭いと、冷却水通過穴12から導入された冷却水が、第2フィンプレート10の上流側でオイル通過穴11側まで流れにくい。そのため、第2フィンプレート10は、プレート間冷却水流路8における間隔S2が大きくなるように、第1フィンプレート9よりもその第1基準線L1に沿った幅が小さくなっている。これによりプレート間冷却水流路8においても、第1基準線L1に沿った冷却水の流れを第2基準線L2に沿った方向で略均一にすることができる。そして、プレート間冷却水流路8における冷却水の流れを第2基準線L2に沿った方向で略均一にできるので、第1、第2コアプレート5、6の全体を使って効率良く熱交換を行うことができる。
【0079】
第1フィンプレート9は、段差壁34に形成される開口部35の幅を第1フィンプレート9の板厚以下とすることで、段差壁34を相対的に小さくすることができる。詳述すると、第1フィンプレート9においては、基準壁33aに対する第1突出壁33bの突出量と、基準壁33aに対する第2突出壁33cの突出量と、を小さくすることができる。
【0080】
そのため、第1フィンプレート9は、Y方向に送りながらV字形に繰り返し折り曲げる際の折り曲げ間隔を小さくする(詰める)ことができ、総じて第1フィンプレート9の単位面積当たりの伝熱面積を増加させることができる。
【0081】
また、第1フィンプレート9の段差壁34は、頂部壁31及び底部壁32から離間した位置に形成されている。そのため、第1フィンプレート9は、隣接する脚部33、33の間隔が相対的に狭くなる頂部壁31近傍や底部壁32近傍で、隣接する脚部33、33同士が接触しにくくなる。さらに、第1フィンプレート9の脚部33は、Y方向で隣接する脚部33と同位相の波形形状に形成されている。そのため、隣接する脚部33、33同士が接触しにくくなる。従って、第1フィンプレート9は、これらのことによっても、Y方向に送りながらV字形に繰り返し折り曲げる際の折り曲げ間隔を小さくする(詰める)ことができる。
【0082】
そして、第1フィンプレート9の脚部33は、V字形の波形形状を呈しているので、Y方向で隣接する頂部壁31、31(底部壁32、32)の間隔を確保しつつ、上記折り曲げ間隔を小さくすることができる。そのため、第1フィンプレート9は、異物による目詰まりを抑制できる。なお、第1フィンプレート9を本実施例のようにオイル回路内で使用する場合には、例えば、直径0.5mm程度の異物が引っかからないように、Y方向で隣接する頂部壁31、31(底部壁32、32)の間隔を確保すればよい。また、第1フィンプレート9を冷却水回路内で使用する場合には、例えば、直径1mm程度の異物が引っかからないように、Y方向で隣接する頂部壁31、31(底部壁32、32)の間隔を確保すればよい。
【0083】
第1フィンプレート9の脚部33には、開口部35が形成されているので、脚部33の表面に境界層が発達しにくくなり、熱交換効率の低下を抑制することができる。
【0084】
第2フィンプレート10は、段差壁44に形成される開口部45の幅を第2フィンプレート10の板厚以下とすることで、段差壁44を相対的に小さくすることができる。詳述すると、第2フィンプレート10においては、第1壁43aに対する第2壁43bの突出量を小さくすることができる。
【0085】
そのため、第2フィンプレート10は、Y方向に送りながら台形に繰り返し折り曲げる際の折り曲げ間隔を小さくする(詰める)ことができ、総じて第2フィンプレート10の単位面積当たりの伝熱面積を増加させることができる。
【0086】
また、第2フィンプレート10の段差壁44は、頂部壁41及び底部壁42から離間した位置に形成されている。そのため、第2フィンプレート10は、隣接する脚部43、43の間隔が相対的に狭くなる頂部壁41近傍や底部壁42近傍で、隣接する脚部43、43同士が接触しにくくなる。さらに、第2フィンプレート10の脚部43は、Y方向で隣接する脚部43と同位相の波形形状に形成されている。そのため、隣接する脚部43、43同士が接触しにくくなる。従って、第2フィンプレート10は、これらのことによっても、Y方向に送りながらV字形に繰り返し折り曲げる際の折り曲げ間隔を小さくする(詰める)ことができる。
【0087】
そして、第2フィンプレート10は、その脚部43が台形の波形形状を呈しているので、Y方向で隣接する頂部壁41、41(底部壁42、42)の間隔を確保して、異物による目詰まりを抑制できる。なお、第2フィンプレート10を本実施例のように冷却水回路内で使用する場合には、例えば、直径1mm程度の異物が引っかからないように、Y方向で隣接する頂部壁41、41(底部壁42、42)の間隔を確保すればよい。また、第2フィンプレート10をオイル回路内で使用する場合には、例えば、直径0.5mm程度の異物が引っかからないように、Y方向で隣接する頂部壁41、41(底部壁42、42)の間隔を確保すればよい。
【0088】
第2フィンプレート10の脚部43には、開口部45が形成されているので、脚部43の表面に境界層が発達しにくくなり、熱交換効率の低下を抑制することができる。
【0089】
次に、本発明の
参考例について説明する。なお、上述した第1実施例と同一の構成要素については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0090】
図14〜
図17を用いて、本発明の
参考例における熱交換器としてオイルクーラ48を説明する。
図14は、
参考例におけるオイルクーラ48の分解斜視図である。また、
図15は、オイルクーラ48の要部断面図であり、
図2のA−A線に沿った位置に相当する断面図である。
図16は、
参考例における第1コアプレート5の斜視図である。
図17は、
参考例における第2コアプレート6の斜視図である。
【0091】
参考例におけるオイルクーラ48は、上述した第1実施例のオイルクーラ1と略同一構成となっているが、プレート間冷却水流路8には、第2フィンプレート10に替えて、複数の突条49が設けられている。
【0092】
突条49は、第1フィンプレート9の第1基準線L1と平行な方向に沿って延びるものであり、第1コアプレート5の第1突条部49aと第2コアプレート6の第2突条部49bとから構成されている。
【0093】
詳述すると、第1コアプレート5には、
図14〜
図16に示すように、プレート間冷却水流路8側に突出する第1突条部49aが形成されている。第1突条部49aは、プレート間オイル流路7からみると、第1コアプレート5に形成された断面略U字形状の凹溝である。
【0094】
第2コアプレート6には、
図14、
図15、
図17に示すように、プレート間冷却水流路8側に突出する第2突条部49bが形成されている。第2突条部49bは、プレート間オイル流路7からみると、第2コアプレート6に形成された断面略U字形状の凹溝である。
【0095】
この
参考例では、対向する第1突条部49aの先端と第2突条部49bの先端とがロー付けされている。そして、プレート間冷却水流路8には、複数の突条49によって、突条49間に第1フィンプレート9の第1基準線L1と平行な方向に沿って延びる互いに独立した複数の細長い水路が形成されている。
【0096】
突条49は、オイルクーラ48を平面視した際に、プレート間冷却水流路8の第1フィンプレート9と重なり合う領域に設けられている。換言すると、突条49は、第1フィンプレート9が配置された領域と重なり合う領域に形成されている。
【0097】
このような
参考例のオイルクーラ48は、プレート間オイル流路内及びプレート間冷却水流路内に、第1フィンプレート9と突条49により、第1基準線L1と平行な略均一な流れを形成することが可能となり、第1、第2コアプレート5、6の全体を使って効率よく熱交換を行うことができる。すなわち、このような
参考例のオイルクーラ48においても、上述した第1実施例のオイルクーラ1と略同等の作用効果を奏することができる。
【0098】
さらに、この
参考例においては、プレート間冷却水流路8のフィンプレートを省略できるので、第1実施例に比べて部品点数を削減することができる。
【0099】
なお、プレート間冷却水流路8に形成される突条49は、第1突条部49aのみで構成するようにしてもよい。この場合、第1突条部49aの先端は、第2コアプレート6の平面状の裏面にロー付けしてもよい。また、プレート間冷却水流路8に形成される突条49は、第2突条部49bのみで構成するようにしてもよい。この場合、第2突条部49bの先端は、第1コアプレート5の平面状の底面にロー付けしてもよい。このように、突条49を第1突条部49aのみで構成した場合や第2突条部49bのみで構成して場合においても、上述した第1実施例と略同等の作用効果を得ることができる。
【0100】
また、突条49は、プレート間冷却水流路8ではなく、プレート間オイル流路7に設けることも可能である。すなわち、本発明のオイルクーラとしては、プレート間オイル流路7に第1フィンプレート9に替えて突条49を設け、プレート間冷却水流路8に第2フィンプレート10が配置された構成とすることも可能である。このように構成においても、上述した第1実施例と略同等の作用効果を得ることができる。
【0101】
上述した
参考例における突条49は、第1フィンプレート9の第1基準線L1と平行な方向に沿って波形状に形成されているが、第1フィンプレート9の第1基準線L1と平行な直線状に形成してもよい。
【0102】
また、上述し
た実施例
及び参考例のオイルクーラ1、48に用いるフィンプレートは、上述した第1、第2フィンプレート9、10に限定されるものではなく、その平面図上において、当該フィンプレートの中心を通り互い直交する第1基準線及び第2基準線を仮想したとき、第1基準線と平行な方向の流路抵抗が、第2基準線と平行な方向の流路抵抗に比べて小さい異方性を有するものであればよい。
【0103】
例えば、以下に説明する第3フィンプレート50を、上述した第1フィンプレート9や第2フィンプレート10に替えて用いることも可能である。
【0104】
図18〜
図22は、上述した第1フィンプレート9や第2フィンプレート10の他の実施例を示す第3フィンプレート50を示している。
【0105】
フィンプレートとしての第3フィンプレート50は、外形が略矩形で、一対の互いに対向する縦辺50aと、一対の互いに対向する横辺50bと、を有している。
【0106】
第3フィンプレート50は、プレート間オイル流路7に配置される場合、例えば、
図18に示すように、第2コアプレート6のボス部25によって位置決めされている。詳述すると、この例では、ボス部25の一部を対向するボス部側へ突出させた位置決め突起25aによって、対向する一対のボス部25、25の間に第3フィンプレート50が位置決めされている。
【0107】
第3フィンプレート50は、その平面図上において、当該フィンプレートの中心を通り互い直交する第1基準線L1及び第2基準線L2を仮想したとき、第1基準線L1と平行な方向の流路抵抗が、第2基準線L2と平行な方向の流路抵抗に比べて小さい異方性を有している。換言すると、本実施例の第3フィンプレート50は、縦辺50aと平行な方向の流路抵抗に比べて、横辺50bと平行な方向の流路抵抗が大きい異方性を有している。
【0108】
第3フィンプレート50は、第1基準線L1に沿った方向で、その両端がオイル通過穴11及び冷却水通過穴12より第2コアプレート6の中心側に位置するように形成されている。また、第3フィンプレート50は、第2基準線L2に沿った方向で、その両端がオイル通過穴11及び冷却水通過穴12の間まで延長して形成されている。換言すると、第3フィンプレート50は、第2基準線L2と平行な横辺50bの長さが、プレート間オイル流路7の幅と略同じ長さに形成されている。さらに言えば、プレート間オイル流路7においては、第3フィンプレート50の横辺50bと当該横辺50bと対向する第2コアプレート6の外周縁との間に、第3フィンプレート50によって覆われることなくオイル通過穴11及び冷却水通過穴12が位置することになる。
【0109】
つまり、第2コアプレート6には、第3フィンプレート50の横辺50bに隣接して、第3フィンプレート50に覆われない長方形の領域が存在する。そして、この長方形の領域に、オイル通過穴11及び冷却水通過穴12が位置している。換言すると、2つのオイル通過穴11は、第1基準線L1に沿った方向で、第3フィンプレート50を挟んで位置し、2つの冷却水通過穴12は、第1基準線L1に沿った方向で、第3フィンプレート50を挟んで位置している。そのため、この例においても、プレート間オイル流路7においては、第3フィンプレート50により、第3フィンプレート50の第1基準線L1と平行で第2基準線L2に沿った方向に略均一なオイルの流れを形成することができる。
【0110】
図19〜
図22を用いて第3フィンプレート50について詳述する。なお、説明の都合上、第1フィンプレート9の平面における互いに直交する2つの方向を、
図19、
図20、
図22に示すように、X方向、Y方向と定義する。
【0111】
第3フィンプレート50は、
図19〜
図21に示すように、一定間隔毎に繰り返し折り曲げられたV字形の波形形状を呈している。換言すると、第3フィンプレート50は、1枚の母材をY方向に送りながら波形形状に折り曲げてなるコルゲートフィンである。
【0112】
図20及び
図21に示すように、第3フィンプレート50は、波形の頂部に位置してX方向に連続する頂部壁51と、波形の底部に位置してX方向に連続する底部壁52と、頂部壁51と底部壁52とを連結する脚部53と、を有している。なお、頂部壁51と底部壁52とは、実質的には同じものである。
【0113】
第3フィンプレート50の脚部53は、Y方向で隣接する一方の脚部側に向かって凸となるように湾曲した第1壁53aと、Y方向で隣接する他方の脚部側に向かって凸となるよう湾曲した第2壁53bと、を有している。
【0114】
第3フィンプレート50の脚部53は、X方向に沿って、第1壁53aと第2壁53bとが交互に繰り返し形成されている。
【0115】
さらに第3フィンプレート50の脚部53には、頂部壁51及び底部壁52に沿った所定間隔毎に段差壁54が形成されている。この段差壁54は、第1壁53aと第2壁53bとの間の段差面である。そのため、第3フィンプレート50の脚部53は、X方向に沿って繰り返し形成される第1壁53aと第2壁53bと段差壁54によって、頂部壁51及び底部壁52に沿って矩形の波形形状を呈している。段差壁54は、頂部壁51及び底部壁52から離間した位置に形成されている。
【0116】
また、第3フィンプレート50の脚部53は、Y方向で隣接する脚部53と同位相の波形形状に形成されている。すなわち、Y方向で隣接する脚部53において、第1壁53aと対向するのは第1壁53aであり、第2壁53bと対向するのは第2壁53bである。
【0117】
第3フィンプレート50の脚部53の段差壁54には、第3フィンプレート50の板厚以下の幅となる細長い開口部55が形成されている。換言すると、第3フィンプレート50の脚部53の段差壁54は、第3フィンプレート50の板厚以下となる幅の細長い開口部55を形成可能な程度の大きさの段差面であればよい。
【0118】
第3フィンプレート50の開口部55は、X方向に沿った細長い貫通穴である。第3フィンプレート50の開口部55は、第3フィンプレート50がオイル回路内で使用される場合には、例えば、その幅t3が0.1mm程度の細長い開口にすればよい。
【0119】
このような第3フィンプレート50を形成するにあたって、母材には、X方向の所定間隔P3毎にY方向に沿ったスリットが間欠的に設けられる。そして、このスリットに沿った折り曲げ加工により、第3フィンプレート50の脚部53がX方向に沿って波形形状となる。つまり、上記スリットに沿って母材に折り曲げ加工を施すことで、第3フィンプレート50には、段差壁54と、第3フィンプレート50の板厚以下となる幅の細長い開口部55と、が形成される。
【0120】
そして、このような通路断面積が非常に小さい開口部55が形成された状態の母材は、Y方向に送られながら所定位置毎にそれぞれ反対側に折り曲げられる。これにより、第3フィンプレート50は、V字形の波形形状に形成される。
【0121】
図22は、第1コアプレート5、第2コアプレート6の面と平行にプレート間オイル流路7を横切る断面に沿って、第3フィンプレート50の脚部53を拡大して示したものである。
【0122】
第3フィンプレート50の第1壁53a及び第2壁53bは、脚部53に形成した開口部55により、破線状に断続的に一列に並び、かつ隣接する壁の列は互いに相補の関係となり、全体として千鳥状に並んでいる。
【0123】
そのため、X方向に沿ってオイルを流そうとした場合、隣接する脚部53の列の間を矢印56のように直線的に流れつつ開口部55を通して流れるので、境界層ができづらく、かつ流路抵抗も小さい。Y方向に沿ってオイルを流そうとした場合、隣接する列の脚部53が重なり合うので、オイルは直線的には流れることができず、矢印57のように蛇行して流れる。また、Y方向に沿って流れる際にオイルが通過することになる開口部55は、通路断面積が非常に小さくなっている。そのため、Y方向に沿ってオイルが流れる際の流路抵抗は、大きくなる。つまり、第3フィンプレート50は、流路抵抗がX方向とY方向とで異なる異方性を有し、X方向(上述した第1基準線L1に沿った方向)への流れに対する流路抵抗が相対的に小さくなっているとともに、Y方向(上述した第2基準線L2に沿った方向)への流れに対する流路抵抗が極端に大きくなっている。
【0124】
このような第3フィンプレート50においても、上述した第1フィンプレート9や第2フィンプレート10と略同等の作用効果を奏することができる。
【0125】
すなわち、第3フィンプレート50は、段差壁54に形成される開口部55の幅を第3フィンプレート50の板厚以下とすることで、段差壁54を相対的に小さくすることができる。詳述すると、第3フィンプレート50においては、第1壁53aに対する第2壁53bの突出量を小さくすることができる。
【0126】
そのため、第3フィンプレート50は、Y方向に送りながらV字形に繰り返し折り曲げる際の折り曲げ間隔を小さくする(詰める)ことができ、総じて第3フィンプレート50の単位面積当たりの伝熱面積を増加させることができる。
【0127】
また、第3フィンプレート50の段差壁54は、頂部壁51及び底部壁52から離間した位置に形成されている。そのため、第3フィンプレート50は、隣接する脚部53、53の間隔が相対的に狭くなる頂部壁51近傍や底部壁52近傍で、隣接する脚部53、53同士が接触しにくくなる。さらに、第3フィンプレート50の脚部53は、Y方向で隣接する脚部53と同位相の波形形状に形成されている。そのため、隣接する脚部53、53同士が接触しにくくなる。従って、第3フィンプレート50は、これらのことによっても、Y方向に送りながらV字形に繰り返し折り曲げる際の折り曲げ間隔を小さくする(詰める)ことができる。
【0128】
そして、第3フィンプレート50の脚部53は、V字形の波形形状を呈しているので、Y方向で隣接する頂部壁51、51(底部壁52、52)の間隔を確保しつつ、上記折り曲げ間隔を小さくすることができる。そのため、第3フィンプレート50は、異物による目詰まりを抑制できる。なお、第3フィンプレート50をオイル回路内で使用する場合には、例えば、直径0.5mm程度の異物が引っかからないように、Y方向で隣接する頂部壁51、51(底部壁52、52)の間隔を確保すればよい。また、第3フィンプレート50を冷却水回路内で使用する場合には、例えば、直径1mm程度の異物が引っかからないように、Y方向で隣接する脚部53の頂部壁51、51(底部壁52、52)の間隔を確保すればよい。
【0129】
第3フィンプレート50の脚部53には、開口部55が形成されているので、脚部53の表面に境界層が発達しにくくなり、熱交換効率の低下を抑制することができる。