特許第6791712号(P6791712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791712
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】電気・電子部品用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/08 20060101AFI20201116BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20201116BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20201116BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20201116BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20201116BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20201116BHJP
   C08K 5/5425 20060101ALI20201116BHJP
   C09J 183/06 20060101ALI20201116BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20201116BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20201116BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20201116BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   C08L83/08
   C08F2/46
   C08F2/44 C
   C08L83/07
   C08K9/06
   C08L71/02
   C08K5/5425
   C09J183/06
   C09J183/07
   C09J11/06
   C09J11/04
   C09K3/10 G
   C09K3/10 Q
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-197559(P2016-197559)
(22)【出願日】2016年10月5日
(65)【公開番号】特開2018-58991(P2018-58991A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-195567(P2016-195567)
(32)【優先日】2016年10月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000221111
【氏名又は名称】モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】小野 和久
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/181609(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/08
C08F 2/44
C08F 2/46
C08K 5/5425
C08K 9/06
C08L 71/02
C08L 83/07
C09J 11/04
C09J 11/06
C09J 183/06
C09J 183/07
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)23℃における粘度が20〜3,000mPa・sである、ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基を含有するポリオルガノシロキサン;
(B)(B1)式(I):
【化4】

(式中、
は、独立して、脂肪族不飽和基であり、
Rは、独立して、C1〜C6アルキル基又はC6〜C12アリール基であり、
nは、23℃における粘度を100〜1,000,000mPa・sとする数である)で示される直鎖状ポリオルガノシロキサンと、
場合により(B2)SiO4/2単位、R'SiO1/2単位及びR'SiO2/2単位、並びに場合によっては更にR'SiO3/2単位(式中、R'は、それぞれ独立して、C1〜C6アルキル基又は脂肪族不飽和基を表す)からなり、1分子当たり、少なくとも3個のR'が脂肪族不飽和基である、分岐状ポリオルガノシロキサンとからなる、
脂肪族不飽和基を含有するポリオルガノシロキサン;
(C)光反応開始剤;及び
(D)不飽和基を有する有機ケイ素化合物で表面処理された煙霧質シリカ;
を含み、ここで、
(B)中の脂肪族不飽和基の合計個数に対する、(A)中のメルカプトアルキル基の個数の比が、0.45〜2.00であり、前記不飽和基を有する有機ケイ素化合物が、(メタ)アクリロイル基を有する有機ケイ素化合物である、電気・電子部品用樹脂組成物。
【請求項2】
(D)が、不飽和基を含有する有機ケイ素化合物及び不飽和基を有さない有機ケイ素化合物で表面処理された煙霧質シリカである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(A)23℃における粘度が20〜3,000mPa・sである、ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基を含有するポリオルガノシロキサン;
(B)(B1)式(I):
【化5】

(式中、
は、独立して、脂肪族不飽和基であり、
Rは、独立して、C1〜C6アルキル基又はC6〜C12アリール基であり、
nは、23℃における粘度を100〜1,000,000mPa・sとする数である)で示される直鎖状ポリオルガノシロキサンと、
場合により(B2)SiO4/2単位、R'SiO1/2単位及びR'SiO2/2単位、並びに場合によっては更にR'SiO3/2単位(式中、R'は、それぞれ独立して、C1〜C6アルキル基又は脂肪族不飽和基を表す)からなり、1分子当たり、少なくとも3個のR'が脂肪族不飽和基である、分岐状ポリオルガノシロキサンとからなる、
脂肪族不飽和基を含有するポリオルガノシロキサン;
(C)光反応開始剤;及び
(D)不飽和基を含有する有機ケイ素化合物及び不飽和基を有さない有機ケイ素化合物で表面処理された煙霧質シリカ;
を含み、ここで、
(B)中の脂肪族不飽和基の合計個数に対する、(A)中のメルカプトアルキル基の個数の比が、0.45〜2.00であり、前記不飽和基を含有する有機ケイ素化合物が、ビニルトリメトキシシラン及び/又はビニルトリエトキシシランである、電気・電子部品用樹脂組成物。
【請求項4】
更に、(E)アルキレン単位が炭素原子数2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であるポリオキシアルキレングリコール及び/又はその誘導体を含有し、(A)〜(E)の全質量に対する、(E)の含有率が、0.001〜1.0質量%である、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(A)23℃における粘度が20〜3,000mPa・sである、ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基を含有するポリオルガノシロキサン;
(B)(B1)式(I):
【化6】

(式中、
は、独立して、脂肪族不飽和基であり、
Rは、独立して、C1〜C6アルキル基又はC6〜C12アリール基であり、
nは、23℃における粘度を100〜1,000,000mPa・sとする数である)で示される直鎖状ポリオルガノシロキサンと、
場合により(B2)SiO4/2単位、R'SiO1/2単位及びR'SiO2/2単位、並びに場合によっては更にR'SiO3/2単位(式中、R'は、それぞれ独立して、C1〜C6アルキル基又は脂肪族不飽和基を表す)からなり、1分子当たり、少なくとも3個のR'が脂肪族不飽和基である、分岐状ポリオルガノシロキサンとからなる、
脂肪族不飽和基を含有するポリオルガノシロキサン;
(C)光反応開始剤;
(D)不飽和基を有する有機ケイ素化合物で表面処理された煙霧質シリカ;及び
(E)アルキレン単位が炭素原子数2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であるポリオキシアルキレングリコール及び/又はその誘導体を含み、ここで、
(B)中の脂肪族不飽和基の合計個数に対する、(A)中のメルカプトアルキル基の個数の比が、0.45〜2.00であり、(A)〜(E)の全質量に対する、(E)の含有率が、0.001〜1.0質量%である、電気・電子部品用樹脂組成物。
【請求項6】
(D)が、不飽和基を含有する有機ケイ素化合物及び不飽和基を有さない有機ケイ素化合物で表面処理された煙霧質シリカである、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(D)のBET比表面積が50〜250m/gであり、pHが5.0〜9.0である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(D)の含有量が、(B)100質量部に対して0.5〜26質量部である、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
更に、(F)脂肪族不飽和基含有シランカップリング剤を含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
ポッティング剤、接着剤、パッキン剤又は液状ガスケット剤である、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子部品用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気・電子部品の表面を保護し、汚れ、水の付着等を防止する目的で、各種樹脂組成物が用いられている。シリコーン樹脂は、耐候性を有し、更に通常の有機樹脂が軟化劣化を起こす120℃程度でも使用可能であるため、前記の用途にシリコーン樹脂組成物が使用されている(特許文献1〜3参照)。これらのシリコーン樹脂組成物は、電気・電子部品の表面を保護すべく、コーティング剤、ポッティング及び液状ガスケット剤等として、塗布、硬化して使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−024944号公報
【特許文献2】特許第5497241号公報
【特許文献3】特開平4−239563号公報
【特許文献4】特願2016−520182号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3に記載されているシリコーン樹脂組成物をディスペンシング機の吐出ノズル等でコーティングをする際に、吐出ノズルの先端から組成物が糸引きを起こす場合があり、コーティングが不要な部位に液垂れを起こしたり、作業効率の低下を招いたりする問題があった。また、特許文献1〜3に記載されているシリコーン樹脂組成物は、保護を必要とする範囲外に流れ出す場合があり、追加の拭き取り作業が必要になる問題があった。
【0005】
一方、特許文献4には、ヘキサメチルジシラザン、炭素原子数6〜18の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を有するアルコキシシラン化合物等で化学処理されている煙霧質シリカを含む電気・電子部品用樹脂組成物が提案されている。特許文献4に記載されている組成物は、糸引きが抑制され、吐出性が良好であるため作業性に優れ、かつ、塗布後は形状維持し範囲外への流動が抑制されている。よって、特許文献4に記載されている組成物は、特許文献1〜3に記載されているシリコーン樹脂組成物が有する前記した問題を解決するものであった。
【0006】
しかし、特許文献1〜4に記載されているシリコーン樹脂組成物をゴム及び接着剤として用いる場合、圧縮された状態で加熱される場合がある。シリコーン樹脂組成物の硬化物は、柔軟性を有するため変形しやすいが、長時間にわたり圧縮された場合には、復元しにくく、形状保持が困難であり、使用可能な部位が制限される傾向にあった。
【0007】
よって、本発明の課題は、圧縮永久歪が小さい硬化物を与える、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0009】
[1](A)23℃における粘度が20〜3,000mPa・sである、ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基を含有するポリオルガノシロキサン;
(B)(B1)式(I):
【化1】

(式中、
は、独立して、脂肪族不飽和基であり、
Rは、独立して、C1〜C6アルキル基又はC6〜C12アリール基であり、
nは、23℃における粘度を100〜1,000,000mPa・sとする数である)で示される直鎖状ポリオルガノシロキサンと、
場合により(B2)SiO4/2単位、R'SiO1/2単位及びR'SiO2/2単位、並びに場合によっては更にR'SiO3/2単位(式中、R'は、それぞれ独立して、C1〜C6アルキル基又は脂肪族不飽和基を表す)からなり、1分子当たり、少なくとも3個のR'が脂肪族不飽和基である、分岐状ポリオルガノシロキサンとからなる、
脂肪族不飽和基を含有するポリオルガノシロキサン;
(C)光反応開始剤;及び
(D)不飽和基を有する有機ケイ素化合物で表面処理された煙霧質シリカ;
を含み、ここで、
(B)中の脂肪族不飽和基の合計個数に対する、(A)中のメルカプトアルキル基の個数の比が、0.45〜2.00である、電気・電子部品用樹脂組成物。
[2](D)が、不飽和基を含有する有機ケイ素化合物及び不飽和基を有さない有機ケイ素化合物で表面処理された煙霧質シリカである、[1]の樹脂組成物。
[3](D)のBET比表面積が50〜250m/gであり、pHが5.0〜9.0である、[1]又は[2]の樹脂組成物。
[4](D)の含有量が、(B)100質量部に対して0.5〜26質量部である、[1]〜[3]のいずれか1つの樹脂組成物。
[5]更に、(E)アルキレン単位が炭素原子数2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であるポリオキシアルキレングリコール及び/又はその誘導体を含有し、(A)〜(E)の全質量に対する、(E)の含有率が、0.001〜1.0質量%である[1]〜[4]のいずれか1つの樹脂組成物。
[6]更に、(F)脂肪族不飽和基含有シランカップリング剤を含有する、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[7]ポッティング剤、接着剤、パッキン剤又は液状ガスケット剤である、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧縮永久歪が小さい硬化物を与える、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[電気・電子部品用樹脂組成物]
電気・電子部品用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう)は、(A)23℃における粘度が20〜3,000mPa・sである、ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基を含有するポリオルガノシロキサン;(B)(B1)式(I):
【化2】

(式中、Rは、独立して、脂肪族不飽和基であり、Rは、独立して、C1〜C6アルキル基又はC6〜C12アリール基であり、nは、23℃における粘度を100〜1,000,000mPa・sとする数である)で示される直鎖状ポリオルガノシロキサンと、場合により(B2)SiO4/2単位、R'SiO1/2単位及びR'SiO2/2単位、並びに場合によっては更にR'SiO3/2単位(式中、R'は、それぞれ独立して、C1〜C6アルキル基又は脂肪族不飽和基を表す)からなり、1分子当たり、少なくとも3個のR'が脂肪族不飽和基である、分岐状ポリオルガノシロキサンとからなる、脂肪族不飽和基を含有するポリオルガノシロキサン;(C)光反応開始剤;及び(D)不飽和基を有する有機ケイ素化合物で表面処理された煙霧質シリカ;を含み、ここで、(B)中の脂肪族不飽和基の合計個数に対する、(A)中のメルカプトアルキル基の個数の比が、0.45〜2.00である。
【0012】
樹脂組成物は、加熱された状態あっても、圧縮永久歪が小さい硬化物を与えるのが好ましい。ここで、加熱温度は、40℃以上であるのが好ましく、通常の有機樹脂が軟化劣化を起こす120℃以上であるのがより好ましく、120℃〜200℃であるのが更に好ましい。樹脂組成物は、120℃での圧縮永久歪が小さい硬化物を与えるのが特に好ましい。
【0013】
<(A)23℃における粘度が20〜3,000mPa・sである、ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基を含有するポリオルガノシロキサン>
(A)において、1分子中のケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基の個数は、架橋反応による安定した構造を確保しつつ、過度な硬化収縮を抑制する点から、平均で2個以上、20個以下とすることができる。中でも、2個超、10個以下が好ましく、より好ましくは3〜7個である。
【0014】
(A)において、ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基のアルキル部分は、C1〜C6アルキル基であることができる。メルカプトアルキル基としては、メルカプトメチル、2−メルカプトエチル、3−メルカプトプロピル、4−メルカプトブチル、6−メルカプトヘキシル等が挙げられるが、合成の容易さ等の点から、メルカプトメチル、3−メルカプトプロピルが好ましく、より好ましくは3−メルカプトプロピルである。
【0015】
(A)において、ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基以外の有機基は、非置換又は置換の1価の炭化水素基(ただし、脂肪族不飽和基ではないこととする)であることができる。具体的には、アルキル基、例えばC1〜C6アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル等);シクロアルキル基、例えばC3〜C10シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル等);アリール基、例えばC6〜C12アリール基(例えば、フェニル、トリル、キシリル等);アラルキル基、例えばC7〜C13アラルキル基(例えば、2−フェニルエチル、2−フェニルプロピル等);置換炭化水素基、例えばハロゲン置換炭化水素基(例えば、クロロメチル、クロロフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピル等)が挙げられる。合成の容易さ等の点からアルキル基が好ましく、中でもメチル、エチル、プロピルが好ましく、より好ましくはメチルである。屈折率を調整するために、アリール基を併用することができ、中でも、合成の容易さ等の点からフェニルが好ましい。
【0016】
(A)の主鎖の構造は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、分岐状が好ましい。例えば、R''SiO3/2単位、R''SiO1/2単位及びR''SiO2/2単位、並びに場合によっては更にSiO4/2単位(式中、R''は、それぞれ独立して、非置換又は置換の1価の炭化水素基(ただし、脂肪族不飽和基ではないこととする)を表す)からなり、1分子当たり、2個以上、20個以下のR''がメルカプトアルキル基である、メルカプトアルキル基を含有する分岐状のポリオルガノシロキサンが挙げられる。本明細書において、R''SiO3/2単位、R''SiO1/2単位、R''SiO2/2単位及びSiO4/2単位をシロキサン単位ともいう。メルカプトアルキル基及び非置換又は置換の1価の炭化水素基としては、上記の基が挙げられる。メルカプトアルキル基であるR''は、いずれの単位のR''としても存在してもよいが、好ましくはR''SiO3/2単位のR''として存在する。作業性と架橋反応性の点から、メルカプトアルキル基を含有するシロキサン単位とメルカプトアルキル基を含まないシロキサン単位の個数の比が、1:60〜1:5のものが好ましいが、これに限定されない。
【0017】
(A)において、23℃における粘度は、20〜3,000mPa・sである。この範囲であれば、作業性、相溶性、樹脂組成物の保管性が良好となる。粘度は20〜1,500mPa・sであることが好ましく、30〜1,000mPa・sであることがより好ましく、50〜500mPa・sであることが特に好ましい。
【0018】
本明細書において、(A)及び後述する(B)の粘度は、回転粘度計(ビスメトロン VDA−L)(芝浦システム株式会社製)を使用して測定した値である。400mPa・s以下の範囲はNo.2ローター、60rpmにて、400超〜1,500mPa・sの範囲はNo.3ローター、60rpmにて、1,500mPa・s超〜10,000mPa・sの範囲はNo.4ローター、60rpmにて、10,000超〜20,000mPa・sの範囲はNo.4ローター、30rpmにて、20,000mPa・s超の範囲はNo.4ローター、12rpmにて測定した。測定値は23℃における値である。
【0019】
(A)中のメルカプト基の個数は、ヨウ素による比色滴定により測定することができる。これは、下記式:
2RSH + I → RSSR + 2HI
の反応を利用した方法であり、滴定中、微量の過剰ヨウ素で滴定液が微黄色になることを利用する。
【0020】
(A)の調製方法は、特に限定されず、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルエトキシシラン等のメルカプトアルキルアルコキシシランと、所望のアルキルクロロシラン、アルキルアルコキシシラン、シラノール含有シロキサンとを加水分解、重縮合、再平衡化することにより製造できる。
【0021】
(A)は、単独又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0022】
<(B)脂肪族不飽和基を含有するポリオルガノシロキサン>
(B)は、(B1)式(I):
【化3】

(式中、Rは、独立して、脂肪族不飽和基であり、Rは、独立して、C1〜C6アルキル基又はC6〜C12アリール基であり、nは、23℃における粘度を100〜1,000,000mPa・sとする数である)で示される直鎖状ポリオルガノシロキサンと、場合により(B2)SiO4/2単位、R'SiO1/2単位及びR'SiO2/2単位、並びに場合によっては更にR'SiO3/2単位(式中、R'は、それぞれ独立して、C1〜C6アルキル基又は脂肪族不飽和基を表す)からなり、1分子当たり、少なくとも3個のR'が脂肪族不飽和基である、分岐状ポリオルガノシロキサンとからなる、脂肪族不飽和基を含有するポリオルガノシロキサンである。
【0023】
<<(B1)式(I)で示される直鎖状ポリオルガノシロキサン>>
は、脂肪族不飽和基である。脂肪族不飽和基としては、アルケニル基、例えばC2〜C6アルケニル基(例えば、ビニル、プロペニル、ブテニル、ヘキセニル等)が挙げられる。末端が不飽和であるアルケニル基がより好ましく、合成の容易さ等の点から、ビニル基が好ましい。両末端のRは同一であっても、異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
【0024】
Rは、C1〜C6アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル等)又はC6〜C12アリール基(例えば、フェニル、トリル、キシリル等)である。Rは同一であっても、異なっていてもよい。
【0025】
樹脂組成物の粘性、チキソトロピー性及び貯蔵安定性の点から、また、(A)成分の屈折率と近づけ(A)成分との相溶性を高める点から、Rのうち、C6〜C12アリール基の割合は0〜20モル%であることが好ましく、より好ましくは2〜15モル%、特に好ましくは3〜10モル%である。
【0026】
合成の容易さ等の点から、C1〜C6アルキル基としては、メチルが好ましく、C6〜C12アリール基としては、フェニルが好ましい。
【0027】
樹脂組成物の作業性の観点から、nは、(B1)の粘度を、100〜1,000,000mPa・sとする値である。圧縮永久歪がより小さくなる点から、(B1)の23℃における粘度は、500〜500,000mPa・sが好ましく、1,000〜100,000mPa・sがより好ましく、2,000〜80,000mPa・sとする値が特に好ましい。
【0028】
(B1)の調製方法は、特に限定されず、例えば、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン等の所望の構造に必要なクロロシラン類を重縮合、再平衡化を行う方法、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン等の所望の構造に必要なアルコキシシラン類を共加水分解し、重縮合、再平衡化反応を行なう方法、又はこれらを組み合わせる方法により得ることができる。また、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタフェニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン等の所望の構造に必要なシロキサン類を、アルカリ触媒(水酸化アルカリ金属塩、アルカリ金属シラノレート、水酸化アンモニウム塩等)又は酸触媒(硫酸、硫酸シラノレート、トリフルオロメタンスルホン酸)の存在下で、開環重合、再平衡化を行うことにより得ることもできる。
【0029】
(B1)は、単独又は2種以上を組み合せて用いることができる。(B1)が2種以上併用される場合、100〜2,000mPa・sの(B1)と、2,000mPa・s超5,000mPa・s以下の(B1)と、5,000mPa・s超15,000mPa・s以下の(B1)との組合せ、又は、2,000mPa・s超5,000mPa・s以下の(B1)と、5,000mPa・s超15,000mPa・s以下の(B1)と、15,000mPa・s超25,000mPa・s以下の(B1)との組合せであってもよい。
【0030】
<<(B2)分岐状ポリオルガノシロキサン>>
(B2)は、SiO4/2単位、R'SiO1/2単位及びR'SiO2/2単位、並びに場合によっては更にR'SiO3/2単位(式中、R'は、それぞれ独立して、C1〜C6アルキル基又は脂肪族不飽和基を表す)からなり、1分子当たり、少なくとも3個のR'が脂肪族不飽和基である、分岐状ポリオルガノシロキサンである。
【0031】
(B2)は、(B)における任意成分であり、硬化物の硬度の調整等を目的として配合することができる。(B2)を併用することにより、特に被着体との接着性を向上させることができる。
【0032】
(B2)としては、R'SiO2/2単位1モルに対して、SiO4/2単位を6〜10モル、R'SiO1/2単位を4〜8モルの比率で有する分岐状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。(B2)は、常温で固体ないし粘稠な半固体の樹脂状又は液状のものが好ましい。例えば、重量平均分子量1,000〜400,000のものが挙げられ、好ましくは、2,000〜200,000のものである。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ分析(GPC)により、ポリスチレンを検量線とした値である。
【0033】
R'に関する脂肪族不飽和基としては、(B1)において脂肪族不飽和基として挙げられた基が挙げられ、具体的にはアルケニル基、例えばC2〜C6アルケニル基(例えば、ビニル、プロペニル、ブテニル、ヘキセニル等)が挙げられる。末端が不飽和であるアルケニル基がより好ましく、合成の容易さ等の点から、ビニル基が好ましい。脂肪族不飽和基であるR'は、いずれの単位のR'としても存在してもよいが、好ましくはR'SiO2/2単位のR'として存在する。脂肪族不飽和基以外のR'は、C1〜C6アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル等)であると好ましく、耐熱性を考慮すると、メチル基がより好ましい。(B2)は、単独又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0034】
(B2)は、(B)中の脂肪族不飽和基の全個数に占める(B2)中の脂肪族不飽和基の個数の割合が0〜95%となる量で使用することが好ましい。(B2)中の脂肪族不飽和基の個数の割合は、速硬化性の点から、30〜85%であることがより好ましく、40〜70%が特に好ましい。(B1)及び(B2)中の脂肪族不飽和基の個数は、NMRにて平均構造式を求め、分子量を計算し、得られた分子量から求めることができる。
【0035】
<(C)光反応開始剤>
(C)は、(A)と(B)とを光架橋させる際のラジカル開始剤として、又は増感剤として機能する成分である。(C)は、反応性の観点から、芳香族炭化水素、アセトフェノン及びその誘導体、ベンゾフェノン及びその誘導体、o−ベンゾイル安息香酸エステル、ベンゾイン及びベンゾインエーテル並びにその誘導体、キサントン及びその誘導体、ジスルフィド化合物、キノン化合物、ハロゲン化炭化水素及びアミン類、有機過酸化物が挙げられる。樹脂組成物に含まれるシリコーンである(A)及び(B)との相溶性、安定性の観点から、非置換又は置換のベンゾイル基を含有する化合物又は有機過酸化物がより好ましい。
【0036】
(C)としては、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(IRGACURE 651:BASF社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(DAROCUR 1173:BASF社製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(IRGACURE 184:BASF社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IRGACURE 2959:BASF社製)、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(IRGACURE 127:BASF社製)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907:BASF社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(IRGACURE 369:BASF社製)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(IRGACURE 379:BASF社製);2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(LUCIRIN TPO:BASF社製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE 819:BASF社製);1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](IRGACURE OXE 01:BASF社製)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(IRGACURE OXE 02:BASF社製);オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物(IRGACURE 754:BASF社製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(DAROCUR MBF:BASF社製)、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート(DAROCUR EDB:BASF社製)、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート(DAROCUR EHA:BASF社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(CGI 403:BASF社製)、ベンゾイルペルオキシド、クメンペルオキシド等が挙げられる。
【0037】
(C)は、単独又は2種以上を組み合せて用いることができる。(C)を二種以上併用する場合の例としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンの組合せ、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドの組合せ等が挙げられる。
【0038】
<(D)不飽和基を有する有機ケイ素化合物で表面処理された煙霧質シリカ>
樹脂組成物は、(D)不飽和基を有する有機ケイ素化合物で表面処理された煙霧質シリカを含有する。(D)は、樹脂組成物の硬化物に低い圧縮永久歪を付与する成分である。また、(D)は、樹脂組成物の粘度を高める成分でもあり、樹脂組成物の相溶性及び/又はチキソトロピー性を向上させる成分でもある。不飽和基を有する有機ケイ素化合物は、煙霧質シリカの表面処理剤である。この表面処理剤で表面処理された煙霧質シリカの表面には、不飽和基が存在している。そのため、(B)成分の脂肪族不飽和基の量が少ない場合であっても、樹脂組成物の硬化物の硬度が高くなり、圧縮永久歪が高くなる。
【0039】
不飽和基を有する有機ケイ素化合物としては、アルケニル基(ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基等が挙げられ、ビニル基が好ましい。)を有する有機ケイ素化合物及び(メタ)アクリロイル基を有する有機ケイ素化合物が挙げられる。ここで、アルケニル基を有する有機ケイ素化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する有機ケイ素化合物を含まないものとする。不飽和基を有する有機ケイ素化合物は、有機ケイ素化合物の単独、(メタ)アクリロイル基を有する有機ケイ素化合物の単独、又は、有機ケイ素化合物及び(メタ)アクリロイル基を有する有機ケイ素化合物を組み合せて用いることができる。
【0040】
アルケニル基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシラン化合物;1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン等のシラザン化合物等が挙げられる。アルケニル基を有する有機ケイ素化合物は、単独又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0041】
(メタ)アクリロイル基を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−アクリロキシエチルトリエトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する有機ケイ素化合物は、単独又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0042】
(D)は、不飽和基を有する有機ケイ素化合物及び不飽和基を有さない有機ケイ素化合物で表面処理された煙霧質シリカであってもよい。(D)が、不飽和基を有する有機ケイ素化合物に加えて、更に、不飽和を有さない有機ケイ素化合物で表面処理されていると、煙霧質シリカ表面に存在するシラノール基が更に減らされている。これにより、硬化物の圧縮永久歪(好ましくは、加熱された状態での圧縮永久歪)がより小さくなる。不飽和を有さない有機ケイ素化合物としては、例えばヘキサメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン等のオルガノシラザン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン類;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン等のオルガノクロロシラン類;及びその部分加水分解物等が挙げられ、オルガノシラザン類及びオルガノクロロシラン類が好ましい。不飽和基を有さない有機ケイ素化合物は、単独又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0043】
(D)のBET比表面積は、特に限定されないが、50〜400m/gであるのが好ましい。BET比表面積が50m/g以上であると、圧縮永久歪がより小さい硬化物が得られる傾向がある。BET比表面積が400m/g以下であると、吐出しやすく、作業性が向上し、貯蔵安定性に影響を与えない。BET比表面積は80〜300m/gであるのがより好ましく、100〜200m/gであるのが特に好ましい。
【0044】
(D)のpHは、特に限定されないが、5.0〜9.0であるのが好ましい。(D)のpHとは、50容積%メタノール/イオン交換水溶液を使用して、40g/Lの濃度に調製したシリカ分散液の23℃におけるpHを指す。通常、未処理のシリカは表面にシラノール基が多く残っており、水分散液のpHは酸性である。そのため、シリカ表面を化学処理し、シラノール基の数を減らし、シリカの水分散液のpHを5.0〜9.0とすることにより、樹脂組成物のチキソトロピー性発現に寄与するものと考えられる。pHは、5.5〜9.0であるのがより好ましく、6.0〜9.0であるのが特に好ましい。
【0045】
(D)の炭素含有量は、特に限定されないが、2.0〜10.0質量%であるのが好ましい。(D)の炭素含有量が前記範囲であると、シリカの水分散液のpHを所望の範囲としやすい傾向がある。(D)の炭素含有量は、より好ましくは2.5〜8.0質量%である。(D)の炭素含有量は、(D)を800℃で完全燃焼した後、燃焼ガス成分中の二酸化炭素をTCDガスクロマトグラフで検出・定量することにより算出された値である。
【0046】
不飽和基を有する有機ケイ素化合物で煙霧質シリカ粉末を表面処理する方法としては、BET比表面積が好ましくは50m/g以上、より好ましくは50〜250m/gの未処理の煙霧質シリカ粉末と、(メタ)アクリロイル基を有する有機ケイ素化合物とを密閉容器内に入れ、室温〜400℃の温度で化学反応又は物理吸着させた後、分解生成物等を揮発させる方法がある。この方法以外に、(A)と、未処理の煙霧質シリカ粉末と、不飽和基を有する有機ケイ素化合物とをニーダー、バンバリーミキサー、二本ロール、ゲートミキサー、プラネタリーミキサー等で混合、混練し、次いで必要により常圧あるいは減圧下、50℃〜200℃で1時間〜20時間ほど上記混練機、乾燥機等を用いて加熱処理を行う方法を用いることもできる。(D)が、不飽和基を含有する有機ケイ素化合物及び不飽和基を有さない有機ケイ素化合物で表面処理された煙霧質シリカである場合、不飽和基を有さない有機ケイ素化合物で煙霧質シリカを表面処理する方法としては、不飽和基を有する処理剤で処理されたシリカ粉末と不飽和基を有さない有機ケイ素化合物とを混合して表面処理を行うか、未処理のシリカ粉末と、不飽和基を有する化合物と、不飽和基を有さない有機ケイ素化合物とを混合して表面処理を行ってもよいが、不飽和基を有する処理剤で処理されたシリカ粉末と混合して表面処理を行うのが好ましい。(D)及び未処理の煙霧質シリカ粉末は、市販の材料を用いてもよい。
【0047】
(D)は、単独又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0048】
<更なる成分>
樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、(E)アルキレン単位が炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であるポリオキシアルキレングリコール及び/又はその誘導体、(F)脂肪族不飽和基含有シランカップリング剤、(G)重合禁止剤、(H)シリコーン樹脂系接着向上剤(ただし、(A)、(B)及び(F)は除く)、(J)F)以外のシランカップリング剤、(K)酸化防止剤、(L)光安定剤、(M)煙霧質シリカ以外の無機充填剤等の更なる成分を含むことができる。更なる成分は、それぞれ単独又は2種以上を組み合せて用いることができる。例えば、樹脂組成物は、単独の(E)と二種以上の(F)を含むことができる。
【0049】
<<(E)アルキレン単位が炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であるポリオキシアルキレングリコール及び/又はその誘導体>>
(E)アルキレン単位が炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であるポリオキシアルキレングリコール及び/又はその誘導体は、(D)表面が化学処理された煙霧質シリカと組み合わさって、樹脂組成物のチキソトロピー性をコントロールし、特定の範囲内に吐出する際の組成物の吐出性と、塗布後の範囲外への流動抑制とのバランスを取る働きをする。
【0050】
(E)としては、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等が挙げられる。ポリオキシアルキレングリコールの誘導体の場合、末端水酸基の置換は片方だけ行われていてもよく、両方とも行われていてもよいが、シリカとの相互作用が大きく、樹脂組成物のチキソトロピー性をコントロールしやすい点で、片方だけ置換された誘導体が好ましい。末端の置換基の炭素原子数は特に限定されないが、シリカとの相互作用が大きく、樹脂組成物のチキソトロピー性をコントロールしやすい点で、炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましい。
【0051】
(E)の数平均分子量は、500〜10,000であると好ましく、より好ましくは600〜8,000であり、更に好ましくは800〜6,000であり、特に好ましくは800〜4,000である。数平均分子量がこの範囲であると、吐出ノズル等で吐出後、吐出口先端から残存材料が糸状に残りにくく(糸引き性)、先端を移動させる際に部材を汚すなどの問題が抑制され、かつ塗布後の形状維持が良好となりやすい。
【0052】
樹脂組成物を吐出した際の糸引きが少ない点から、(E)はポリオキシアルキレングリコールが好ましく、ポリオキシエチレングリコール、又はポリオキシプロピレングリコールがより好ましく、塗膜の防湿性の点で、ポリオキシプロピレングリコールが特に好ましい。複数のアルキレン基は同一であっても、異なっていてもよいが、少なくともプロピレン基を含んでいることが好ましい。(E)は、単独又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0053】
<<(F)脂肪族不飽和基含有シランカップリング剤>>
(F)脂肪族不飽和基含有シランカップリング剤は、樹脂組成物の硬化物の基材への密着性及び接着性を向上させる成分である。(F)の脂肪族不飽和基としては、好ましい例も含めて、(B1)において脂肪族不飽和基として挙げられた基が挙げられる。
【0054】
(F)としては、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルジアリルイソシアヌレート、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アリルイソシアヌレート、トリエトキシシリルプロピルジアリルイソシアヌレート及びビス(トリエトキシシリルプロピル)アリルイソシアヌレートからなる群より選択される1種以上が挙げられ、好ましくは3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである。(F)は、単独又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0055】
<<(G)重合禁止剤>>
(G)重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、フェノチアジン等が挙げられる。(G)は、単独又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0056】
<<(H)シリコーン樹脂系接着向上剤(ただし、(A)、(B)及び(F)は除く)>>
(H)シリコーン樹脂系接着向上剤(ただし、(A)、(B)及び(F)は除く)とは、粘着性を有するシリコーン樹脂をいい、樹脂組成物の硬化物の接着性を強化し安定にする成分である。
【0057】
(H)は、粘着性と経済性の観点から、MQ樹脂、MDQ樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、DTQ樹脂及びTQ樹脂からなる群から選ばれる1種以上のシリコーン樹脂系接着向上剤(ただし、脂肪族不飽和基及びメルカプト基を含有しないこととする)が好ましく、合成の容易さからMQ樹脂、MDQ樹脂、MDT樹脂及びMDTQ樹脂からなる群から選ばれる1種以上のシリコーン樹脂系接着向上剤がより好ましく、MQ樹脂、MDQ樹脂及びMDT樹脂からなる群から選ばれる1以上のシリコーン樹脂系接着向上剤が更に好ましく、粘着性の高さと構造制御が容易な点からMQ樹脂が特に好ましい。
【0058】
前記樹脂に用いられる記号はシロキサン結合単位を指し、M:(CHSiO1/2、D:(CHSiO2/2、T:(CH)SiO3/2、Q:SiO4/2を意味する。そして、MQ樹脂とは、M単位とQ単位からなる樹脂を意味する。MDQ樹脂等、その他の樹脂も、同様である。
【0059】
(H)の重量平均分子量は、2,000〜100,000が好ましく、より好ましくは5,000〜80,000であり、更に好ましくは10,000〜60,000である。
【0060】
<<(J)(F)以外のシランカップリング剤>>
(J)(F)以外のシランカップリング剤は、脂肪族不飽和基含有シランカップリング剤以外のシランカップリング剤であり、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0061】
<<(K)酸化防止剤>>
(K)酸化防止剤は、組成物の硬化物の酸化を防止して、耐候性を改善するための成分である。(K)としては、例えば、ヒンダードアミン系やヒンダードフェノール系の酸化防止剤等が挙げられる。
【0062】
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、例えば、N,N′,N″,N″′−テトラキス−(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン・N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合体、[デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(70%)]−ポリプロピレン(30%)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケ−ト、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケ−ト、1−[2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリストール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレン−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオアミド]、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシC7−C9側鎖アルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート、3,3′,3″,5,5′,5″−ヘキサン−tert−ブチル−4−a,a′,a″−(メシチレン−2,4,6−トリル)トリ−p−クレゾール、カルシウムジエチルビス[[[3,5−ビス−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート]、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、N−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。酸化防止剤は、単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0064】
<<(L)光安定剤>>
(L)光安定剤は、硬化物の光酸化劣化を防止するための成分である。(L)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。耐光性安定剤である紫外線吸収剤は、光劣化を防止して、耐候性を改善するために使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤、オクタベンゾン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。紫外線吸収剤は単独でも、二種以上を併用してもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン系が好ましい。中でも、第3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤を用いることが、組成物の保存安定性改良のために好ましい。第3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤としては、チヌビン622LD,チヌビン144,CHIMASSORB119FL(以上いずれもBASF社製);MARK LA−57,LA−62,LA−67,LA−63(以上いずれも旭電化工業株式会社製);サノールLS−765,LS−292,LS−2626,LS−1114,LS−744(以上いずれも三共株式会社製)等の光安定剤が挙げられる。
【0065】
<<(M)煙霧質シリカ以外の無機充填剤>>
(M)煙霧質シリカ以外の無機充填剤は、組成物の硬化物の物性を調整するために使用することができ、粉砕石英、金属酸化物等が挙げられる。
【0066】
<好ましい組成・特性>
(A)中のケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基の個数をHSとし、(B)中の脂肪族不飽和基の個数をViBとしたとき、適切な硬度及び弾性を硬化物にもたせる点から、ViBに対するHSの比(HS/ViB)は、0.45〜2.00であり、好ましくは0.50〜1.80であり、更に好ましくは0.60〜1.50であり、特に好ましくは0.80〜1.40である。(B)として、(B1)のみを使用する場合、(B)中の脂肪族不飽和基の個数は、(B1)中の脂肪族不飽和基の個数ViB1に等しく、一方、(B1)と(B2)を併用する場合は、(B)中の脂肪族不飽和基の個数は、(B1)中の脂肪族不飽和基の個数ViB1と(B2)中の脂肪族不飽和基の個数ViB2の合計となる。また、(HS/ViB1)は、好ましくは0.45〜2.00であり、より好ましくは0.60〜1.50であり、特に好ましくは0.80〜1.40である。また、(B)中のビニル基に占める(B2)中のビニル基の割合(ViB2(ViB1+ViB2))は、好ましくは0.1〜0.9であり、更に好ましくは0.3〜0.8であり、特に好ましくは0.5〜0.6である。
【0067】
光反応開始作用、硬化時の耐熱性の点から、(C)の含有量は、(B)100質量部に対して、0.05〜50質量部であるが好ましく、0.1〜40質量部であるのがより好ましく、0.2〜10質量部であるのが特に好ましい。
【0068】
樹脂組成物中における(D)の含有量は、(B)100質量部に対して、0.5〜26質量部であるのが好ましい。(D)の含有量が0.5質量部以上であると、樹脂組成物のチキソトロピー性が向上する。(D)の含有量が26質量部以下であると、樹脂組成物の吐出性が向上し、作業性が向上する。(D)の含有量は、4〜23質量部がより好ましく、8〜20質量部が更に好ましく、11〜20質量部特に好ましい。
【0069】
(A)中のケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基の個数をHS、(B)中の脂肪族不飽和基の個数をViB、(F)中の不飽和基の個数をViFとしたとき、適切な硬度及び弾性を硬化物にもたせる点、硬化物の基材への密着性及び接着性が高まる点から、ViBとViFの合計に対するHSの比(HS/(ViB+ViF))は、0.4〜1.5であるのが好ましく、0.5〜1.4であるのがより好ましく、0.6〜1.3であるのが特に好ましい。また、ViFに対するHSの比(HS/ViF)は、0.4〜6であるのが好ましく、1〜5であるのがより好ましく、2〜4であるのが特に好ましい。(F)中の脂肪族不飽和基の個数は、ガスクロマトグラフによる純度及び分子式求めることができる。
【0070】
樹脂組成物中における、(A)〜(D)の合計の含有率は、60質量%〜100質量%が好ましく、80質量%〜100質量%がより好ましく、90質量%〜100質量%が特に好ましい。樹脂組成物中における、更なる成分の含有量の合計は、(A)〜(D)の合計100質量部に対し0.001〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部が特に好ましい。
【0071】
樹脂組成物中における(E)の含有率は、(A)〜(E)の全質量に対し0.001〜1.0質量%であるのが好ましい。(E)の含有率が0.001質量%以上であると、樹脂組成物のチキソトロピー性が向上する。(E)の含有率が1.0質量%以下であると、塗布後の範囲外への流動が効率的に抑制される。(E)の含有率は0.002〜0.5質量%であるのがより好ましく、0.003〜0.1質量%であるのが特に好ましい。
【0072】
樹脂組成物中における、(F)の含有量は、(A)〜(D)の合計100質量部に対し0.001〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部が特に好ましい。
【0073】
吐出性の確保による作業性向上の観点から、樹脂組成物は、23℃における粘度が、10〜100,000mPa・sであるのが好ましく、10〜80,000mPa・sであるのがより好ましく、10〜60,000mPa・sであるのが特に好ましい。ここで、粘度は、回転粘度計(ビスメトロン VDH)(芝浦システム株式会社製)にて、20,000mPa・s以下の範囲はローターNo.6を使用し、20,000mPa・s超の範囲はローターNo.7を使用し、回転数20rpmで測定した値である。
【0074】
樹脂組成物は、23℃における、回転数20rpmにおける粘度:V20rpm、及び、回転数20rpmの測定時と同一のローターを使用し、回転数10rpmにて測定した粘度:V10rpmから求めた、式:V10rpm/V20rpmの値であるチキソトロピー比が、1.55〜1.68であることが好ましく、より好ましくは、1.56〜1.67であり、更に好ましくは、1.57〜1.66である。
【0075】
<樹脂組成物の調製方法>
樹脂組成物は、(A)〜(D)、並びに任意成分である(E)〜(G)等であるその他の成分を配合することにより得られる。調製方法は特に限定されないが、例えば、以下のようにして調製することができる。(B)、(D)、及び任意成分である(E)を必要に応じて加熱することにより均一に混合した後、(A)成分を添加して均一に混合する。その後、任意成分である(F)を添加、均一に混合後、紫外線の不存在下で、(C)並びに任意成分である(G)重合禁止剤を添加することが好ましい。例えば、万能混合撹拌機に(B)及び(D)を入れ、室温(10〜30℃)、低速にて均一に混合し、その後、必要に応じて、例えば120℃の加熱下で混合する。任意成分である(E)は、(B)及び(D)と同時に添加してもよく、前記工程の任意の時点で添加してもよい。その後、(A)成分を添加、混合後、紫外線の不存在下で、(C)及び任意成分である(G)等を加え、氷水冷却下(10℃以下)、低速にて、冷却減圧にて均一に混合し、脱泡した後、所望により濾過することにより、樹脂組成物を得ることができる。
【0076】
<硬化方法>
樹脂組成物は、紫外線を照射することによって、硬化させることができる。(C)の反応可能な範囲の波長領域のランプとしては、例えば、ウシオ電機株式会社製の高圧水銀ランプ(UV−7000)、メタルハライドランプ(MHL−250、MHL−450、MHL−150、MHL−70)、韓国:JM tech社製のメタルハライドランプ(JM−MTL 2KW)、三菱電機株式会社製の紫外線照射灯(OSBL360)、日本電池株式会社製 紫外線照射機(UD−20−2)、株式会社東芝製蛍光ランプ(FL−20BLB))、Fusion社製のHバルブ、Hプラスバルブ、Dバルブ、Qバルブ、Mバルブ等が挙げられる。照射量は、100〜10,000mJ/cmが好ましく、より好ましくは300〜5,000mJ/cmであり、更に好ましくは500〜3,500mJ/cmである。
【0077】
<用途>
樹脂組成物は、ポッティング剤、接着剤、パッキン剤、液状ガスケット剤等に用いることができる。樹脂組成物は、電気・電子部品を汚れ、水、湿気等から保護するためのポッティング剤又は液状ガスケット剤であるのが好ましい。樹脂組成物をポッティング剤、接着剤、パッキン剤又は液状ガスケットとして使用する方法は、従来公知の方法を使用することができる。例えば、電気・電子部品の保護を必要とする箇所に樹脂組成物をポッティングした後、必要に応じ乾燥し、更に紫外線を照射し樹脂組成物を硬化させる方法を用いることができる。電気・電子部品としては、半導体装置、プリント基板、電池材料等が挙げられる。
【0078】
本発明は、樹脂組成物を用いて保護された電気・電子部品にも関する。電気・電子部品としては、半導体装置、プリント基板、電池材料等が挙げられる。
樹脂組成物及びその硬化物は、以下のような好適な物性を有する。
【0079】
〔硬化後のE硬度〕
樹脂組成物は、硬化後のE硬度を30〜70とすることができるため、容易に外部からの応力を適度に緩和することができ、かつ高温高湿下でも水分の浸透を抑止できる点で好ましい。E硬度は、好ましくは40〜65であり、より好ましくは50〜60である。
【0080】
〔硬化後の伸び〕
樹脂組成物は、硬化後の伸びを30%以上とすることができるため、外部からの応力緩和に優れ、耐変形性を確保することができる点で好ましい。硬化後の伸びは、好ましくは35%以上であり、40%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。
【0081】
〔吐出性〕
樹脂組成物は、例えば、ディスペンシング機の吐出ノズル(例えば18Gなど吐出量に合わせて適宜選択可能)を用い、基板等の特定の範囲内に塗布して使用される。吐出ノズルを使用した際の吐出量が多いほど、処理速度が速く好ましい。吐出性は、18Gのニードルを用い、10秒間吐出した場合の吐出量で評価する。吐出量は0.4g以上であることが好ましく、0.5g以上であることがより好ましく、0.7g以上が更に好ましい。
【0082】
〔経時安定性〕
樹脂組成物は、保管前後で吐出性の変化がないことが好ましい。本明細書では、樹脂組成物の製造4週間後に、吐出性を評価し、樹脂組成物の経時安定性の指標とする。評価基準は吐出性と同様である。
【0083】
〔流動性〕
樹脂組成物を基板等に一定の厚みを持って塗布した場合に、塗布した範囲外への流動が小さいことが必要である。本明細書では、流動性の指標として、JIS A 1439に準拠したスランプ縦試験、ASTM D2202におけるスランプ試験で用いる冶具を平置きにして評価した試験の2種類の流動性評価法を用いる。試験法の詳細は実施例で述べる。
【0084】
〔糸引き性〕
樹脂組成物をディスペンシング機の吐出ノズルで吐出した後、ニードルの先に該組成物が残ると、樹脂組成物が塗布部以外に垂れて付着する恐れがある。また、ニードルの先に残った樹脂組成物が塗布部以外に付着しないようにするために、処理速度を遅くせざると得ないことが生じ得る。本明細書では、前述の吐出性の試験後に、ニードルの先に残った樹脂組成物の長さを0.5mm単位で測定し、糸引き性の指標とした。
【実施例】
【0085】
以下、実施例及び比較例によって、本発明を更に詳細に説明する。部、%は、他に断りのない限り、質量部、質量%を表す。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で調製した各組成物の硬化は、ウシオ電機株式会社製:UVL−4001Mを用い、120w/cmの紫外線エネルギー照射量にて、積算光量3,000mJ/cmで行った。
【0086】
〔物性の評価条件〕
(1)メルカプト基の個数の測定
ヨウ素源として、1/10規定ヨウ素溶液(特級試薬)を使用し、比色滴定により、(A)ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基を含有するポリオルガノシロキサンの単位質量当りのメルカプト基数を定量した。
計算方法: SH含有量(mmol/g) = (A×P×0.1)/(W×C)
A:変色するまでに要したヨウ素溶液滴下量(mL)
P:ヨウ素溶液の補正係数(試薬に記載されている補正係数):補正が必要な場合に記載
W:サンプル質量(g)
C:サンプルの不揮発分(%)
予備測定を行ないヨウ素溶液量を求め、その後精度よく3回測定し、3回の平均値を求めた。
【0087】
(2)脂肪族不飽和基の個数の測定
(B1)のポリオルガノシロキンサン中の脂肪族不飽和基の個数は、以下のようにして算出した。NMR測定における各ピークを、Si−CH(0.1ppm付近)、Si−Ph(Phはフェニル基を意味する)(7.3−7.7ppm付近)、Si−CH=CH(5.7−6.3ppm付近)と同定し、それぞれを(CHSiO2/2単位、Ph−SiO2/2単位及び(CHSi−CH=CH1/2単位に対応するものとして、ピーク強度の比より単位数を求め、平均構造式を得て、そこから分子量を求め、(B1)のポリオルガノシロキサンの脂肪族不飽和基の個数を算出した。
同様に、(B2)のポリオルガノシロキンサン中の脂肪族不飽和基の個数は、NMR測定における各ピークを、Si−CH(0.1ppm付近)、Si−Ph(7.3−7.7ppm付近)、Si−CH=CH(5.2−6.2ppm付近)と同定し、それぞれを(CHSiO2/2単位、Ph−SiO2/2単位及び(CH)Si−CH=CH2/2単位に対応するものとして、ピーク強度の比より単位数を求め、平均構造式を得て、そこから分子量を求め、(B2)のポリオルガノシロキサンの脂肪族不飽和基の個数を算出した。
(F)の脂肪族不飽和基の個数は、構造式から算出した。
【0088】
(3)(A)及び(B1)のポリオルガノシロキサンの粘度
回転粘度計(ビスメトロン VDA−L)(芝浦システム株式会社製)を使用して、400mPa・s以下の範囲はNo.2ローター、60rpmにて、400超〜1,500mPa・sの範囲はNo.3ローター、60rpmにて、1,500mPa・s超〜10,000mPa・sの範囲はNo.4ローター、60rpmにて、10,000超〜20,000mPa・sの範囲はNo.4ローター、30rpmにて、20,000mPa・s超の範囲はNo.4ローター、12rpmにて測定した。測定値は23℃における値である。
【0089】
(4)樹脂組成物の粘度
回転粘度計(ビスメトロン VDH)(芝浦システム株式会社製)にて、20,000mPa・s以下の範囲はローターNo.6を使用し、20,000mPa・s超の範囲はローターNo.7を使用し、20rpmで測定した。また、樹脂組成物のチキソトロピー比は、回転数20rpmにおける粘度:V20rpm、及び、回転数20rpmの測定時と同一のローターを使用し、回転数10rpmにて測定した粘度:V10rpmから求めた、式:V10rpm/V20rpmの値である。測定値は23℃で測定した値である。
【0090】
(5)硬化後のE硬度
前記条件で組成物の硬化を行った後、JIS K 6250に準拠し、ダンベル状試験片(ダンベル状2号形)を作製した。得られたダンベル状試験片を用い、JIS K 6253 Eに準拠し、23℃における硬化後のE硬度を測定した。
【0091】
(6)硬化後の伸び
「(5)硬化後のE硬度」と同様にして、ダンベル状試験片(ダンベル状2号形)を作製した。得られたダンベル状試験片を用い、JIS K 6251に準拠し、ショッパー引張り試験機(株式会社東洋精機製作所製)にて23℃における硬化後の伸びを測定した。
【0092】
(7)比重
樹脂組成物の硬化物の比重は、電子比重計(MIRAGE社製SD−120L)により23℃にて測定した。
【0093】
(8)凝集破壊率
幅25mmの各被着体上に、樹脂組成物を厚み0.1mmとなるように、幅25mmで長さ10mm以上塗布し、組成物を重ね幅が10mmとなるように厚さ2mm、幅25mmの強化ガラス板を重ねた後、強化ガラス側から3,000mJ/cmの紫外線エネルギー照射量にて、硬化させて、試料を作製した。
試料作製1日後の試料について、島津製作所(株)社製オートグラフを用い、測定速度10mm/分の引張り速度で引っ張り、被着体とガラス板を剥離させる剪断接着試験を行なった。
被着体上の樹脂組成物の硬化物における凝集破壊部分の面積Smmを求め、
(100×S)/(10×25)
を計算して凝集破壊率(%)とした。凝集破壊率は100%に近いほど、接着性が良好である。
【0094】
(9)吐出量
2条ネジプラスチックニードル(武蔵エンジアリング株式会社製:針長12.7mm、ゲージ:18G(内径0.84mm、外径1.27mm)を用いて、樹脂組成物を10秒間吐出した際の質量(g)を吐出量とした。吐出量は0.4g以上であれば実用可能であり、0.5g以上であることが好ましく、0.7g以上が更に好ましい。製造直後及び室温で4週間保管後の樹脂組成物について、吐出量を測定した。
【0095】
(10)圧縮永久歪
圧縮永久歪は、JIS K 6262に準拠して測定した。試験条件温度は、室温(23℃)、120℃、180℃の3条件、養生時間は24時間の値である。
【0096】
(11)流動性1
JIS A 1439に準拠したスランプ縦試験にて流動性1を評価した。試験は23℃の環境で実施した。JIS A 1439における溝型容器の幅を5mm、深さを5mmに変更した溝型容器に、樹脂組成物を充填した。試験体を鉛直に懸垂し、30分後に、溝型容器の溝部分の最下端から樹脂組成物が垂れ下がった先端までの距離を0.5mm単位で測定した。流動性1は3.0mm以下であれば流動性のバランスが良好であり、0.0〜2.0mmであると、吐出性、塗布後の形状維持の点で、特に良好である。
【0097】
(12)流動性2
ASTM D2202におけるスランプ試験に記載の冶具に準拠した冶具を平置きにした試験にて流動性2を評価した。試験は23℃の環境で実施した。直径38.1mmのフロー冶具の可動式キャビティーの深さを5mmにセットし、キャビティーに樹脂組成物を充填した。冶具を平置きにしたまま、キャビティーの底面を5mm上昇させ、樹脂組成物を完全にキャビティー外に露出させた。1時間後に、樹脂組成物がキャビティーの円周から最も移動した長さを0.5mm単位で測定した。流動性2は、0.5mm以下であれば良好であり、0mmであるとより良好である。
【0098】
(13)糸引き性
製造直後の樹脂組成物を用い、「(9)吐出量」の測定を行った後、プラスチックニードルの先端に残った樹脂組成物の長さを0.5mm単位で測定し、糸引き性を評価した。糸引き性は3.0mm以下であれば良好であり、1.0mm以下であればより良好である。
【0099】
〔使用成分〕
実施例及び比較例における各成分は、以下のとおりである。
1.成分(A)
(1)(a−1)メルカプトプロピル基を含有するポリメチルシロキサン
(a−1)は、以下によって得た。冷却用還流管、滴下ロート、撹拌装置としてスリーワンモーターを装備した5Lのセパルブルフラスコ中の、ジメチルジクロロシラン1,550g(12mol)、トリメチルクロロシラン22g(0.2mol)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン196g(1.0mol)及びトルエン1,500gに、水1,000gとトルエン500gの混合物を、滴下ロートから約1時間かけて滴下した。70℃で2時間加熱撹拌しながら加水分解を行なった。反応終了後、水相を分離し、水洗し、次いで100℃〜125℃にて加熱により脱水を行なった。脱水終了後、50%水酸化カリウム水溶液1.5gを加え、115〜125℃で5時間加熱撹拌することにより縮合反応を行った。エチレンクロロヒドリンにて中和後、トルエンを1,200〜1,300g脱溶し、スーパーセライトフロスを濾過助剤に用いて濾過し、その後残存するトルエンを定圧及び減圧下にて除去し、(a−1)メルカプトプロピル基を含有するポリメチルシロキサン932gを得た。
【0100】
(2)平均構造式、物性等
(a−1)の平均構造式、物性は以下の通りである。
平均構造式:{(CHSiO1/2}{HS(CHSiO3/2{(CHSiO2/260
粘度:230mPa・s;No.2ローター、60rpm
単位質量当りのメルカプト基数:0.96mmol/g
【0101】
2.(B1)
(1)(b1−2)ビニル末端ポリメチルフェニルシロキサンの調製
冷却用還流管、撹拌装置としてスリーワンモーターを装備した3Lのセパルブルフラスコに、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルシクロテトラシロキサン1,800g、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタフェニルシクロテトラシロキサン260g、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン7.6gを150〜160℃にて窒素ガス0.5Nm/hにて3時間加熱撹拌することにより脱水を行い、その後水酸化カリウム0.1gを加えて加熱撹拌を行った。加熱撹拌は、フラスコ内で水酸化カリウムが溶解し均一になり、かつ粘度が15,000mPa・s〜18,000mPa・sに増粘するまで継続した。その後、エチレンクロロヒドリン 10gにて100℃にて中和後、スーパーセライトフロスを濾過助剤に用いて濾過した後、170〜180℃、2mmHgの減圧下にて低沸分を除去することにより、末端がジメチルビニルシロキシ基で閉塞され、ジフェニルシロキシ単位が5モル%、残余がジメチルシロキシ単位であるビニル末端ポリメチルフェニルシロキサン((b1−2)ビニル末端ポリメチルフェニルシロキサン)1,832gを得た。
【0102】
(2)(b1−1)、(b1−3)及び(b1−4)の調製
(b1−1)及び(b1−3)は、(b1−2)の合成において、加熱撹拌の時間をそれぞれ変更して合成した。
(b1−4)は、(b1−2)の合成において、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタフェニルシクロテトラシロキサンを用いず、加熱撹拌の時間を変更して合成した。
【0103】
(3)(B1)の物性等
(b1−1)〜(b1−4)の平均構造式、物性は以下の通りである。
【0104】
(b1−1)ビニル末端ポリメチルフェニルシロキサン
NMR測定による平均構造式:
CH=CH−Si(CH−O−{Si(CHO}159−{SiPhO}−Si(CH−CH=CH
1分子中の脂肪族不飽和基の平均個数:2
粘度:1,050mPa・s;No.3ローター、60rpm
分子量:13,800
【0105】
(b1−2)ビニル末端ポリメチルフェニルシロキサン
NMR測定による平均構造式:
CH=CH−Si(CH−O−{Si(CHO}242−{SiPhO}13−Si(CH−CH=CH
1分子中の脂肪族不飽和基の平均個数:2
粘度:3,280mPa・s;No.4ローター、60rpm
分子量:21,000
【0106】
(b1−3)ビニル末端ポリメチルフェニルシロキサン
NMR測定による平均構造式:
CH=CH−Si(CH−O−{Si(CHO}600−{SiPhO}30−Si(CH−CH=CH
1分子中の脂肪族不飽和基の平均個数:2
粘度:20,450mPa・s;No.4ローター、12rpm
分子量:50,400
【0107】
(b1−4)ビニル末端ポリジメチルシロキサン
NMR測定による平均構造式:
CH=CH−Si(CH−O−{Si(CHO}560−Si(CH−CH=CH
1分子中の脂肪族不飽和基の平均個数:2
粘度:10,500mPa・s;No.4ローター、30rpm
分子量:42,050
【0108】
3.(B2)
(b2−1):Mvi樹脂(ここで、M単位は(CHSiO1/2−であり、Dvi単位は−(CH)(CH=CH)SiO−であり、Q単位はSiO4/2(4官能性)である。)
重量平均分子量:22,450
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ分析(GPC)により、ポリスチレンを検量線とした値である。
【0109】
4.(C)
(c−1)2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン
(c−2)2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン
(c−3)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
(c−4)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド
(c−5)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ジフェニルフォスフィンオキサイド
【0110】
5.(D)
(D)のpHは、50容積%メタノール/イオン交換水溶液を使用して、40g/Lの濃度に調製したシリカ分散液の23℃におけるpHの値である。
(d−1)3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで処理した煙霧質シリカ(AEROSIL R 7200、日本アエロジル製):BET比表面積144m/g、pH4.6、炭素含有量5.6質量%
(d−2)BET比表面積200m/gの煙霧質シリカ(AEROSIL 200、日本アエロジル製)を、ビニルトリメトキシシラン、次いで、ヘキサメチルジシラザンで処理した煙霧質シリカ:BET比表面積140m/g、pH4.4、炭素含有量4.6質量%
(d−3)BET比表面積200m/gの煙霧質シリカ(AEROSIL 200、日本アエロジル製)を、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、次いで、ヘキサメチルジシラザンで処理した煙霧質シリカ:BET比表面積144m/g、pH6.1、炭素含有量4.8質量%
(d−4)BET比表面積200m/gの煙霧質シリカ(AEROSIL 200、日本アエロジル製)を、ジビニルテトラメチルジシラザン(有機合成薬品工業株式会社)、次いで、ヘキサメチルジシラザンでin-situで処理した煙霧質シリカ
6.(D’):(D)以外のシリカ
(d’−1)BET比表面積200m/gの煙霧質シリカ(AEROSIL 200、日本アエロジル製)を、ヘキサメチルジシラザンで処理した煙霧質シリカ:BET比表面積135m/g、pH6.8、炭素含有量3.9質量%
(d’−2)未処理の煙霧質シリカ:BET比表面積135m/g(AEROSIL 200(日本アエロジル製)が圧縮搬送された状態)、pH4.1、炭素含有量0質量%
(d’−3)シメチルジクロロシランで処理した煙霧質シリカ:BET比表面積170m/g(AEROSIL R974、日本アエロジル製)、pH4.7、炭素含有量1.1質量%
(d’−4)オクタメチルシクロテトラシロキサンで処理した煙霧質シリカ:BET比表面積145m/g(AEROSIL R104、日本アエロジル製)、pH4.7、炭素含有量1.4質量%
(d’−5)シリコーンオイルで処理した煙霧質シリカ:BET比表面積110m/g(AEROSIL RY200、日本アエロジル製)、pH5.2、炭素含有量5.2質量%
【0111】
7.その他の成分
(1)(E)
(e−1)ポリプロピレングリコール(数平均分子量:2,000):サンニックス PP−2000(三洋化成工業株式会社製)
(2)(F)
(f−1)3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(3)(G)
(g−1)p−t−ブチルカテコール
【0112】
〔比較例1〕
(b1−2)24.60g、(b2−1)7.8g、(b1−4)0.09g、(d’−1)11.4gを5Lの万能混合撹拌機(ダルトン社製)に入れ、室温(22℃)、低速レバーによる回転条件で30分間、均一に混合した。均一に混合した後、(b1−1)34.91gを加え、均一に混合し、120℃で加熱混合を2時間行った。冷却後、(a−1)21.21gを加え、均一に混合した後、更に、紫外線遮断下で(g−1)0.04g、(c−1)0.46g及び(c−2)0.23gからなる溶解混合物、(f−1)1.395g、(e−1)0.005gを加え、氷水冷却下(8℃)、低速レバーによる回転条件で30分間、冷却減圧にて均一に混合した。その後、洗浄した200メッシュの金網にて異物等を除去し、樹脂組成物を得た。
【0113】
比較例1と同様にして、表1及び3に示す配合で、実施例・比較例の組成物を調製し、物性を評価した。結果を表2及び4に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
【表4】
【0118】
表2より、実施例の樹脂組成物は、いずれも圧縮永久歪が小さい硬化物を与えた。
実施例1と実施例6(実施例3と実施例8)との比較により、粘度が高い(B1)を含む樹脂組成物は、圧縮永久歪がより小さい硬化物を与えた。
実施例1と実施例4(実施例6と実施例8)との比較により、不飽和基を有する有機ケイ素化合物及び不飽和基を有さない有機ケイ素化合物で表面処理された煙霧質シリカを含む樹脂組成物は、不飽和基を有する有機ケイ素化合物のみで表面処理された煙霧質シリカを含む樹脂組成物に比べて、圧縮永久歪がより小さい硬化物を与えた。
実施例4と実施例3及び5との比較により、不飽和基を含有する有機ケイ素化合物が(メタ)アクリロイル基を有する化合物である樹脂組成物は、不飽和基を含有する有機ケイ素化合物がビニル基を有する化合物である樹脂組成物に比べて、圧縮永久歪(特に、120℃及び180℃の圧縮永久歪)がより小さい硬化物を与えた。
実施例1と実施例2(実施例6と実施例7)との比較により、(E)を含む樹脂組成物は、糸引きが抑制され、吐出性が良好であるため作業性に優れ、かつ、塗布後は形状維持し範囲外への流動が抑制されていた。
比較例1〜8は、不飽和基を含有する有機ケイ素化合物で処理された煙霧質シリカを含まない樹脂組成物であるため、比較例1〜8の樹脂組成物は、圧縮永久歪が大きい硬化物を与えた。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、圧縮応力歪が小さい硬化物を与える電気・電子部品用樹脂組成物であり、特に、半導体装置、プリント基板、電池材料等の電気・電子部品に好適に使用することができる。ポッティング剤、接着剤、パッキン剤、液状ガスケット剤等に好適に使用することができる。