(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する車車間通信装置、車載システムおよび通信方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
[1.第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る車載システムについて説明する。本実施形態に係る車載システムは車車間通信装置、制御装置およびレーダ装置を備える。本実施形態の制御装置は、レーダ装置から他車両に関する情報を取得することで、効率よく車車間通信を行うように車車間通信装置を制御する。
【0011】
[1.1.通信方法]
図1A〜
図1Cを用いて本実施形態に係る通信方法について説明する。
図1A〜
図1Cは、本発明の実施形態に係る通信方法を示す説明図である。かかる通信方法は、例えば、自車両Cに搭載される複数の車車間通信装置11〜18と、複数の車車間通信装置11〜18を制御する制御装置10とによって実行される。
【0012】
自車両Cに搭載される車車間通信装置11〜18は、他車両C1〜C3(
図1B、
図1C参照)に搭載される車車間通信装置(図示せず)と車車間通信を行う。また、自車両Cには例えば複数のレーダ装置21〜24が搭載される。レーダ装置21〜24は、他車両C1〜C3の位置を検出する。
【0013】
ここで、まず
図1Aを用いて車車間通信装置11〜18の通信範囲およびレーダ装置21〜24の検出範囲について説明する。車車間通信装置11〜18は、例えば自車両Cの周囲に配置される。
【0014】
車車間通信装置11〜18は、指向性を有するアンテナ(図示せず)を備えている。
図1Aでは、車車間通信装置11〜18の自車両C周囲の通信範囲R11〜R18を示している。
【0015】
具体的には、
図1Aに示す状態において、車車間通信装置11のアンテナの指向性は、自車両Cの進行方向(前方)となる。その他の車車間通信装置15のアンテナの指向性は自車両Cの進行方向とは逆方向(後方)、車車間通信装置12のアンテナの指向性は自車両Cの左前方、車車間通信装置18のアンテナの指向性は自車両Cの右前方、車車間通信装置13の通信範囲は自車両Cの左側方、車車間通信装置17のアンテナの指向性は自車両Cの右側方、車車間通信装置14のアンテナの指向性は自車両Cの左後側方、および、車車間通信装置16のアンテナの指向性は自車両Cの右後側方となる。このように、車車間通信装置11〜18の各アンテナはそれぞれ指向性を有し、各方向に向けて電波(ビーム)を放射する。
【0016】
図1Aに示すように、各車車間通信装置11〜18が同じ利得で送信波を送信した場合、車車間通信装置11〜18が他車両C1〜C3と車車間通信を行える範囲は、自車両Cを中心とする自車両Cの全周囲である通信範囲R0(以下、基準通信範囲R0と称する)となる。
【0017】
また、車車間通信装置11〜18の利得や位相を調整することで、車車間通信装置11〜18の通信範囲を基準通信範囲R0とは異なる範囲とすることもできる。
【0018】
レーダ装置21〜24は、自車両Cの側面など自車両Cの周囲に配置される。レーダ装置21〜24は、電波を送信し、また
図1Aに示す検出範囲R21〜R24に存在する物標からの反射波を受信する。
【0019】
図1Bに示すように、レーダ装置21〜24は、反射波に基づき、検出範囲R21〜R24に存在する他車両C1〜C3までの距離や方位角などの位置情報を検出する。
図1A、
図1Bに示す例では、レーダ装置21〜24の検出範囲は、車車間通信装置11〜18全体の基準通信範囲R0より広く、車車間通信装置11〜18全体の基準通信範囲R0外に存在する他車両C1、C2を検出することができる。
【0020】
なお、レーダ装置21の指向性は自車両Cの進行方向(前方)であり、その検出範囲は車車間通信装置11の通信範囲R11の全ての範囲と、車車間通信装置12の通信範囲R12および車車間通信装置18の通信範囲R18の一部を含む範囲である。また、レーダ装置23の指向性は自車両Cの進行方向とは逆方向(後方)であり、その検出範囲は車車間通信装置15の通信範囲R15の全ての範囲と、車車間通信装置14の通信範囲R14および車車間通信装置16の通信範囲R16の一部を含む範囲である。
【0021】
レーダ装置22の指向性は自車両Cの左側方であり、その検出範囲は車車間通信装置13の通信範囲R13の全ての範囲と、車車間通信装置12の通信範囲R12および車車間通信装置14の通信範囲R14の一部を含む範囲である。レーダ装置24の指向性は自車両Cの右側方であり、その検出範囲は車車間通信装置17の通信範囲R17の全ての範囲と、車車間通信装置16の通信範囲R16および車車間通信装置18の通信範囲R18の一部を含む範囲である。
【0022】
本実施形態に係る通信方法は、制御装置10がレーダ装置21〜24から取得した他車両C1〜C3に関する情報に基づいて車車間通信装置11〜18を制御することで、車車間通信装置11〜18が他車両C1〜C3と効率よく車車間通信を行えるようにするものである。具体的に、本実施形態に係る通信方法では、制御装置10がレーダ装置21〜24から取得した他車両C1〜C3に関する情報に基づいて車車間通信装置11〜18全体の通信範囲を調整することで、他車両C1〜C3との車車間通信の効率を改善する。
【0023】
制御装置10は、レーダ装置21〜24から例えば他車両C1〜C3に関する情報として他車両C1〜C3の位置情報を取得すると、当該位置情報に基づいて、他車両C1〜C3にビームが向くよう車車間通信装置11〜18全体の指向性を制御する。
図1Cの例では、制御装置10は、車車間通信装置14が通信を行うように、すなわち車車間通信装置14のアンテナから電波を放射するように制御することで、他車両C3にビームが向くようにする。
【0024】
また、
図1Cの例では、制御装置10は、他車両間の距離が近い他車両C1、C2に対して、車車間通信装置11、12のアンテナを用いて1つのビームを形成することで、他車両C1、C2に1つのビームが向くように車車間通信装置11〜18全体の指向性を制御する。制御装置10は、例えば車車間通信装置11、12から送信する送信波のパワーや位相等を調整することで通信範囲R31のビームパターンが形成されるようにする。例えば、制御装置10は、車車間通信装置11および12から放射される送信波によって形成される合成波の指向性が他車両C1およびC2の車幅方向の間の略中心である点Pに向くように送信波のパワーや位相等を調整する。これにより、車車間通信装置11、12は、他車両C1およびC2を含む通信範囲R31のビームパターンを形成することができる。
【0025】
車車間通信装置11、12を用いて1つのビームパターンを形成することで、通信距離が長くなる。そのため、
図1Cに示すように、車車間通信装置11〜18は、1つの車車間通信装置11では通信を行えなかった他車両C1、C2とも通信を行うことができる。
【0026】
さらに制御装置10は、他車両C1〜C3との車車間通信に用いない車車間通信装置13、15〜18が備えるアンテナの利得を小さくする。制御装置10は、例えば車車間通信装置13、15〜18の送信に用いる増幅器の増幅率を小さくすることで、車車間通信装置13、15〜18が備えるアンテナの利得を小さくする。
【0027】
これにより、車車間通信装置11〜18全体の通信範囲は、
図1Cに示すように他車両C1〜C3の少なくとも一部を含む範囲R1となる。このように、本実施形態に係る通信方法では、制御装置10は、レーダ装置21〜24から取得した位置情報に基づいて車車間通信装置11〜18全体の指向性または利得の少なくとも一方を制御する。そのため、車車間通信装置11〜18は、他車両C1〜C3へビームを向けることができるとともに他車両C1〜C3が存在しない方向への不要な放射を抑制することができ、車車間通信を効率よく行うことができる。
【0028】
なお、
図1A〜
図1Cでは図面を見やすくするために、車車間通信装置11〜18の通信範囲R11〜R18は互いに重複していないが、各通信範囲R11〜R18が、隣接する車車間通信装置11〜18の通信範囲R11〜R18と重複するようにしてもよい。また、同様に、レーダ装置21〜24の検出範囲R21〜R24が互いに重複していないが、各検出範囲R21〜R24が、隣接するレーダ装置21〜24の検出範囲R21〜R24と重複するようにしてもよい。
【0029】
以下、上述した通信方法を適用した制御装置10、車車間通信装置11〜18およびレーダ装置21〜24を備える車載システムS1について、さらに具体的に説明する。
【0030】
[1.2.車載システム]
図2は、本実施形態に係る車載システムS1の構成を示すブロック図である。なお、
図2では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを機能ブロックで表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0031】
換言すれば、
図2に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0032】
図2に示すように、車載システムS1は、制御装置10と、車車間通信装置11〜18(通信部の一例)とレーダ装置21〜24とを備える。車載システムS1は、例えば自車両Cに搭載される。なお、制御装置10および車車間通信装置11〜18は通信装置として機能する。
【0033】
[1.2.1.レーダ装置]
レーダ装置21〜24は、自車両Cの周辺に存在する他車両C1〜C3に関する情報(以下、他車両情報と記載する)を検出する。レーダ装置21〜24は検出範囲R21〜R24(後述する
図3参照)を除き同じ構成であるため、ここではレーダ装置21について説明する。レーダ装置21は、送信アンテナ211と、受信アンテナ212と、導出部210とを備える。
【0034】
[送信アンテナおよび受信アンテナ]
送信アンテナ211および受信アンテナ212は、自車両Cの周囲にそれぞれ配置される。送信アンテナ211は、自車両Cの周辺に向かって送信波を送信する。受信アンテナ212は、アレーアンテナであり、複数のアンテナ素子を有する。受信アンテナ212は、送信波が物体に反射した反射波を受信する。なお、
図2では、受信アンテナ212のアンテナ素子数を4としているが、これに限定されない。受信アンテナ212がアレーアンテナであれば、アンテナ素子数は4未満であってもよく4より多くてもよい。
【0035】
例えば、
図3の例では、レーダ装置21は、自車両Cのフロント部に配置される。レーダ装置21の送信アンテナ211は自車両Cの前方向に向かって送信波を送信し、受信アンテナ212は前方向に存在する物体に反射した反射波を受信する。なお、レーダ装置22は自車両Cの左サイド部に配置され、自車両Cの左方向に向かって送信波を送信し、左方向に存在する物体に反射した反射波を受信する。
【0036】
また、レーダ装置23は自車両Cのリア部に配置され、自車両Cの後方向に向かって送信波を送信し、後方向に存在する物体に反射した反射波を受信する。また、レーダ装置24は自車両Cの右サイド部に配置され、自車両Cの右方向に向かって送信波を送信し、右方向に存在する物体に反射した反射波を受信する。なお、
図3は、本実施形態に係るレーダ装置21〜24の配置例を示す模式図である。
【0037】
[導出部]
図2に戻る。導出部210は、レーダ装置21〜24の受信アンテナ212が受信した受信信号に基づいて物標に関する情報を所定周期で導出する。導出部210は、送信信号を生成し、送信アンテナ211を介して送信波として送信する。
【0038】
また、導出部210は、送信信号と受信アンテナ212を介して受信した受信信号とに基づき、物標までの距離、相対速度および方位角を物標に関する情報として導出する。なお、導出部210は、例えばFM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式やパルス方式に基づいて物標までの距離および相対速度を導出する。
【0039】
また、導出部210は、例えばESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)、MUSIC(Multiple Signal Classification)、PRISM(Panchromatic Remote-sensing Instrument for Stereo Mapping)等の角度推定方式に基づいて方位角を導出する。
【0040】
このように、レーダ装置21〜24の導出部210が他車両情報として物標に関する情報を生成することで、物体までの距離や方位角などの位置情報を含む他車両情報を精度よく生成することができる。
【0041】
[1.2.2.車車間通信装置]
車車間通信装置11〜18は、他車両C1〜C3と車車間通信を行う。また車車間通信装置11〜18は、車車間通信を行う場合に、レーダ装置21〜24が検出した他車両情報に基づいて、車車間通信装置11〜18の指向性または利得の少なくとも一方を変更する。
【0042】
上述したように、レーダ装置21〜24は、自車両Cの周囲に存在する他車両(例えば
図1Bに示す他車両C1〜C3)の位置を検出する。この場合に、制御装置10は、レーダ装置21〜24から取得した他車両C1〜C3の位置情報に基づいて車車間通信装置11〜18の通信範囲R11〜R18(ビームパターン)を制御する。例えば、制御装置10は、レーダ装置21〜24が検出した他車両C1〜C3の位置周辺の領域に電波が放射され、それ以外の領域に電波が放射されないように、車車間通信装置11〜18に対してパワーや位相を調整する。これにより、他車両C1〜C3にビームが向いた形状の通信範囲が形成される。
【0043】
これにより、車車間通信装置11〜18は他車両C1〜C3に向けて電波を放射することができ、また他車両C1〜C3が存在しない領域への電波の不要な放射を抑制することができる。したがって、車車間通信装置11〜18は、他車両C1〜C3と効率よく車車間通信を行うことができ、車車間通信装置11〜18の消費電力を抑制することができる。
【0044】
車車間通信装置11〜18は、それぞれアンテナ部112と、通信処理部111とを備える。なお、各車車間通信装置11〜18の構成は同じであるため、主に車車間通信装置11の構成について説明し、その他の車車間通信装置12〜18の重複する構成については説明を省略する。
【0045】
[アンテナ部]
アンテナ部112は、他車両C1〜C3へ信号を送信するとともに、他車両C1〜C3からの信号を受信する。
図2では、アンテナ部112が、1つのアンテナを有する、すなわち送受信アンテナを有する場合を図示しているが、これに限定されない。例えばアンテナ部112が送信アンテナおよび受信アンテナをそれぞれ有していてもよい。
【0046】
図4に示す例では、車車間通信装置11は、例えば自車両Cの前方中央に設けられる。車車間通信装置11のアンテナ部112は、ビームが前方向を向いたビームパターンを有する。なお、車車間通信装置12は例えば自車両Cの前方左側に設けられ、ビームが左斜前方向に向いたビームパターンを有する。
【0047】
また、車車間通信装置13は例えば自車両Cの左側中央に設けられ、車車間通信装置13のアンテナ部112はビームが左方向に向いたビームパターンを有する。車車間通信装置14は例えば自車両Cの後方左側に設けられ、車車間通信装置14のアンテナ部112はビームが左斜後方向に向いたビームパターンを有する。車車間通信装置15は例えば自車両Cの後方中央に設けられ、車車間通信装置15のアンテナ部112はビームが後方向を向いたビームパターンを有する。
【0048】
車車間通信装置16は例えば自車両Cの後方右側に設けられ、車車間通信装置16のアンテナ部112はビームが右斜後方向に向いたビームパターンを有する。車車間通信装置17は例えば自車両Cの右側中央に設けられ、車車間通信装置17のアンテナ部112はビームが右方向に向いたビームパターンを有する。車車間通信装置18は例えば自車両Cの前方右側に設けられ、車車間通信装置18のアンテナ部112はビームが右斜前方向に向いたビームパターンを有する。なお、
図4は、本実施形態に係る車車間通信装置11〜18の配置例を示す模式図である。
【0049】
このように、車車間通信装置11〜18はそれぞれビーム方向が異なるビームパターンを有する。車車間通信装置11〜18から同じ利得で信号を送信する場合、自車両Cの周囲にそれぞれビームを放射するため、車車間通信装置11〜18全体では無指向性となる(
図1A参照)。また、車車間通信装置11〜18の利得や送信波の位相を調整することで、車車間通信装置11〜18全体では、指向性を有するビームパターンとなる(
図1C参照)。後述する制御装置10は、車車間通信装置11〜18のアンテナ部112の利得や送信波の位相を調整することで、ビーム方向を所定方向に向ける。これにより、車車間通信装置11〜18の指向性が制御される。
【0050】
[通信処理部]
通信処理部111は、アンテナ部112を介して他車両C1〜C3と車車間通信を行う。通信処理部111は、それぞれ図示しないフィルタや増幅器、A/D変換器など他車両C1〜C3と車車間通信を行うために必要な機能を有する。また、車車間通信装置11〜18の各通信処理部111は、例えば制御装置10からの指示に基づき同じ信号をアンテナ部112から送信することができる。このときに、増幅器の増幅率や信号の位相等を調整することで、車車間通信装置11〜18のアンテナ部112によって形成されるビームパターンを変更することができる。
【0051】
また、通信処理部111は、制御装置10からの指示に基づき、通信モードまたは省電力モードを切り替えて動作する。通信モードは、他車両C1〜C3と通信を行うモードである。省電力モードは、例えば増幅器の利得を小さくするなど通信モードの場合と比べて通信処理部111で消費する電力を小さくしたモードである。あるいは、省電力モードの場合、通信処理部111への電力供給を停止してもよい。
【0052】
このように、通信処理部111は、制御装置10からの指示に基づき、通信モードと省電力モードとを切り替えることで通信処理部111の消費電力を削減することができる。
【0053】
[1.2.3.制御装置]
制御装置10は、レーダ装置21〜24から取得した他車両C1〜C3の位置情報に基づき、車車間通信装置11〜18を制御する。制御装置10は、取得部120と制御部130とを備える。
[取得部]
取得部120は、レーダ装置21〜24から他車両C1〜C3の位置情報を含む他車両情報を取得する。例えば取得部120は、所定周期でレーダ装置21〜24から他車両情報を取得する。
【0054】
[制御部]
制御部130は、CPU(Central Processing Unit)および記憶部140などを備えたマイクロコンピュータであり、車車間通信装置11〜18や制御装置10全体を制御する。制御部130は、例えばECU(Electric Control Unit)に実装される。制御部130は、マイクロコンピュータでソフトウェア的に実現される機能として、グループ化部131と指向性制御部132と、利得制御部133と、通信制御部134と、を備える。
【0055】
[グループ化部]
グループ化部131は、取得部120が取得した他車両情報に基づき、複数の他車両(例えば
図1Bの他車両C1〜C3)を少なくとも1つのグループにグループ化する。後述するように、車車間通信装置11〜18は、グループ化部131がグループ化したグループごとにビームを形成する。すなわち、車車間通信装置11〜18は、1つのグループに対して1つのビームを形成する。かかる点については、
図5A等を用いて後述する。
【0056】
グループ化部131は、自車両Cから遠ざかる第1方向に対して略垂直な第2方向における他車両C1〜C3間の距離が車車間通信装置11〜18のビーム幅に応じた閾値以下である他車両を同じグループにグループ化する。なお、車車間通信装置11〜18が形成可能なビームパターンは実験やシミュレーション等によってあらかじめ求められており、各ビームパターンのビーム幅や方向等が記憶部140に記憶されているものとする。かかる点については、
図10等を用いて後述する。例えば、ビーム幅が角距離で表される場合、グループ化部131は、他車両C1〜C3の位置におけるビームパターンの第2方向における長さをビーム幅に応じた閾値とする。グループ化部131は、このように既知のビーム幅に応じて他車両C1〜C3をグループ化する。
【0057】
図5A〜
図6を用いてグループ化部131が行うグループ化について説明する。
図5A〜
図6は、本実施形態に係るグループ化部131が行うグループ化の一例を説明する図である。
【0058】
例えば、
図5Aに示すように、自車両Cの前方に2台の他車両C1、C2が存在し、後方左側に1台の他車両C3が存在する場合について説明する。この場合、グループ化部131は、自車両Cから遠ざかる第1方向(
図5Aの上方向)と略垂直な第2方向(
図5Aの左右方向)における他車両C1、C2間の距離D1が第1閾値Th1以下である場合、他車両C1、C2を1つのグループG1にグループ化する。なお、
図5Aにおける第1方向は車両Cの進行方向であり、第2方向は車両Cの車幅方向ともいえる。
【0059】
また、グループ化部131は、自車両Cの後方左側に存在する他車両C3をグループG2にグループ化する。このようにグループG1、G2に含まれる他車両C1〜C3の数は1台であってもよい。
【0060】
また、グループ化の別の例として
図5Bに示すように、自車両Cの左側に2台の他車両C4、C5が存在する場合について説明する。この場合、グループ化部131は、自車両Cから遠ざかる第1方向(
図5Bの左方向)と略垂直な第2方向(
図5Bの上下方向)における他車両C4、C5間の距離D2が第1閾値Th1以下である場合、他車両C4、C5を1つのグループG3にグループ化する。
【0061】
このように、グループ化部131は、車車間通信装置11〜18のビーム方向と垂直な方向、すなわちビーム幅方向における複数の他車両間の距離が第1閾値Th1以下である場合、複数の他車両を1つのグループとする。
【0062】
なお、上述したように、第1閾値Th1は、車車間通信装置11〜18のビーム幅に応じた閾値である。すなわち、第1閾値Th1は、自車両Cから他車両C1〜C5までの距離に応じた閾値である。
【0063】
車車間通信装置11〜18が形成するビームの通信距離が長いほどビーム幅が狭くなる(
図9参照)。したがって、制御装置10は、自車両Cから遠いグループほど、ビーム幅を狭く、通信距離を長くして車車間通信を行うよう車車間通信装置11〜18を制御する。
【0064】
図6に示すように、グループG1に含まれる他車両C1、C2間の第2方向における距離D1が離れていると、車車間通信装置11〜18がグループG1に向けてビームを形成したとしても、当該ビームに他車両C1、C2が含まれない。この場合、車車間通信装置11〜18は、1つのビームで他車両C1、C2の両方と車車間通信を行うことができない。
【0065】
したがって、グループ化部131は、他車両C1、C2間の第2方向における距離D1がビーム幅程度以下である場合に他車両C1、C2を1つのグループG1にグループ化する。
【0066】
図9〜
図12を用いて後述するように、制御装置10は、グループ化したグループG1に対してビームが向くように車車間通信装置11〜18を制御する。具体的には、制御装置10の記憶部140は、各車車間通信装置11〜18から放射される送信波を合成したビームパターンを記憶する。例えば、記憶部140は、前方、左前側方、右前側方を合成したビームパターンや、左前側方と左側方のビームを合成したビームパターン等、各車車間通信装置11〜18のビームに関して全ての組合せのビームパターンを記憶する。
【0067】
そして、制御装置10はレーダ装置21〜24が検出した物標(複数の物標の位置)と、それらの間の中心位置等の情報に基づき、上記複数のパターンのうち最適なパターンを選択する。選択されたビームパターンの例えばビーム幅と物標間の間隔とを比較し、ビーム幅が物標間の間隔よりも広い場合、制御装置10はそのビームパターンとなるようパワーや位相の調整指示を各車車間通信装置11〜18に出力する。その結果、車車間通信装置11〜18から合成波が出力される。そして、物標が存在しない領域に対しては、電波の出力は行わない。
【0068】
これにより、車車間通信装置11〜18は、1つのビームで複数の他車両C1、C2と車車間通信を行うことができる。このように、グループ化部131が他車両C1、C2をグループ化することで、制御装置10が他車両C1〜C3と通信を行う車車間通信装置11〜18を適切に割り当てることが可能となる。したがって、車車間通信装置11〜18は効率よく車車間通信を行うことができる。
【0069】
このように、グループ化部131が、ビーム幅、換言すると他車両までの距離に応じた第1閾値Th1に基づき、他車両C1〜C3をグループ化する。これにより、車車間通信装置1は、グループごとにビームを形成してもグループに含まれる他車両と車車間通信を行うことができる。
【0070】
なお、本実施形態では、制御装置10が、レーダ装置21〜24が検出した物標(複数の物標の位置)と、それらの間の中心位置等の情報に基づき、上記複数のビームパターンのうち最適なパターンを選択する一手法として、上述したように複数の物標(複数の他車両C1〜C2)をグループ化し、
図7〜
図8Bを用いて後述するようにグループごとに位置情報を生成してから、
図9〜
図12を用いて後述するように電波を放射する車車間通信装置11〜18を選択する方法について説明している。しかしながら、車車間通信装置11〜18が、複数の他車両の間にビームパターンを向けて、かかる複数の物標と車車間通信が行えればよく、グループ化等を行う必要はなく、例えばグループ化せずに複数の物標の位置間の中心位置等の情報を算出するようにしてもよい。
【0071】
次に、グループ化部131は、グループ化した各グループG1、G2の位置情報を生成する。グループ化部131は、グループG1、G2に含まれる他車両C1〜C3の位置情報に基づいてグループG1、G2の位置情報を生成する。なお、他車両C1〜C3の位置情報はレーダ装置21〜24から取得する他車両情報に含まれる。
図5Aの例では、グループ化部131は、グループG2に含まれる他車両C3が1台の場合、他車両C3の位置Pc3をグループG2の位置P2とすることで、グループG2の位置情報を生成する。
【0072】
また、グループ化部131は、1つのグループG1に複数台の他車両C1、C2が含まれる場合、複数の他車両C1、C2間の第1方向における距離が第2閾値Th2未満か否かに応じてグループの位置情報を生成する。
【0073】
まず、例えば
図5Aに示すように、グループG1に含まれる他車両C1、C2間の第1方向(
図5Aの上方向)における距離が第2閾値Th2未満であり、他車両C1、C2が第1方向においてほぼ並んでいる場合について説明する。
【0074】
この場合、グループ化部131は、例えば他車両C1、C2の位置Pc1、Pc2の中間点をグループG1の位置P1とする位置情報を生成する。
図9〜
図11を用いて後述するように、制御装置10は、グループG1の位置情報に基づいて記憶部140が記憶する全てのビームパターンの中からグループG1の位置周辺の領域に向けたビームパターンを選択する。制御装置10は、選択したビームパターンを形成するよう送信波を放射する車車間通信装置および送信波を放射しない車車間通信装置を選択する。このように、グループ化部131が他車両C1、C2の間の位置をグループG1の位置P1とすることで、制御装置10は、他車両C1および他車両C2の間にビームを向けることになる。これにより、1つのビームでグループG1に含まれる他車両C1、C2の両方と車車間通信を行うことができるようになる。
【0075】
続いて、
図7〜
図8Bを用いて、グループG1に含まれる他車両C1、C2間の第1方向(
図7の上方向)における距離D4が第2閾値Th2以上である場合について説明する。
図7〜
図8Bは、本実施形態に係るグループG1の位置情報を説明するための図である。
【0076】
図7に示すように、第1方向(
図7の上方向)における距離D4が第2閾値Th2以上である場合、グループ化部131は、例えばグループG1に含まれる他車両C1、C2の位置Pc1、Pc2のうち自車両Cから遠い他車両C2の位置Pc2をグループG1の位置P1とする。かかる点について
図8Aおよび
図8Bを用いて説明する。
【0077】
例えば、
図8Aに示すように、グループ化部131が第1方向における他車両C1、C2間の距離によらず他車両C1、C2の中間点MをグループG1の位置とする位置情報を生成するものとする。
【0078】
このとき、制御装置10は、車車間通信装置11〜18が中間点Mに向けたビームを形成するよう制御する。この場合、他車両C1は車車間通信装置1のビームに含まれるが、他車両C2は含まれない。このように、他車両C1、C2の中間点MをグループG1の位置とすると、車車間通信装置11〜18は自車両Cから遠い他車両C2と通信が行えなくなってしまう。
【0079】
一方、例えば
図8Bに示すように、グループ化部131が自車両Cから遠い他車両C2の位置Pc2をグループG1の位置P1とする。このとき、制御装置10は、記憶部140が記憶する全てのビームパターンの中から、グループG1の位置P1、すなわち他車両C2の位置周辺の領域に向けたビームパターンを選択する。制御装置10は、選択したビームパターンを形成するよう電波を放射する車車間通信装置および電波を放射しない車車間通信装置を選択する。その結果、他車両C1、C2の両方に1つのビームを向けることができ、車車間通信装置11〜18は1つのビームで複数の他車両C1、C2と車車間通信を行うことができる。
【0080】
このように、他車両C1、C2間の第1方向(
図8Bの上方向)における距離が第2閾値Th2以上である場合、グループG1に含まれる他車両C1、C2のうち自車両Cから遠い他車両C2の位置情報をグループG1の位置情報とする。
【0081】
制御装置10は、後述するように、グループ化部131が生成した各グループG1、G2の位置情報に基づき、かかるグループG1、G2の位置周辺の領域に向けて送信波を放射し、それ以外の領域に送信波を放射しないように、車車間通信装置11〜18に対してパワーや位相を調整する。例えば制御装置10は、記憶部140に記憶された全てのビームパターンのうち、グループG1、G2の位置を含むビームパターンを選択し、選択したビームパターンとなるように車車間通信装置11〜18に対してパワーや位相を調整する。これにより、制御装置10が他車両C1〜C3と通信を行う車車間通信装置11〜18を適切に割り当てることが可能となり、車車間通信装置11〜18は、グループG1、G2に含まれる他車両C1〜C3と車車間通信を行うことができる。
【0082】
[指向性制御部]
図2に戻る。指向性制御部132は、グループ化部131が生成したグループG1、G2の位置情報に基づき、車車間通信装置11〜18のアンテナ部112が放射する送信波がグループG1、G2を向くように、車車間通信装置11〜18を制御する。例えば指向性制御部132は、記憶部140が記憶する全てのビームパターンの中から、グループ化部131が生成したグループG1の位置周辺の領域に向けたビームパターンを選択する。指向性制御部132は、各グループG1、G2と車車間通信を行う場合に送信を放射する車車間通信装置11〜18を少なくとも1つ選択することで、車車間通信装置11〜18のビームパターンが選択したパターンとなるように、車車間通信装置11〜18の指向性を制御する。
【0083】
上述したように、車車間通信装置11〜18のビームパターンは、送信波を放射する車車間通信装置11〜18に応じて変化する。
図9は、本実施形態に係る車車間通信装置11〜18のビームパターンの一例を説明する図である。なお、
図9では、自車両Cの前方を向いたビームパターンについて説明するが、例えば左方向や左斜前方向など他の方向でも同様である。
【0084】
例えば車車間通信装置11のアンテナ部112が送信波を放射した場合、アンテナ部112によって形成されるビームパターンは、
図9に示すように所定の通信範囲R11のパターンとなる。また、例えば車車間通信装置11、12のアンテナ部112が送信波を放射した場合、112によって形成されるビームパターンは、通信範囲R11よりビーム幅が狭く、通信距離が長い通信範囲R34のパターンとなる。
【0085】
また、例えば車車間通信装置11、12、18のアンテナ部112が送信波を放射した場合、アンテナ部112によって形成されるビームパターンは、通信範囲R34よりビーム幅が狭く、通信距離が長い通信範囲R35のパターンとなる。このように、アンテナ部112によって形成されるビームパターンは、送信波を放射する車車間通信装置11〜18が多いほどビーム幅が狭くなり通信距離が長くなる。
【0086】
そこで、指向性制御部132は、例えば記憶部140が記憶する車車間通信装置11〜18を組み合わせることによって形成可能な全てのビームパターンに関する情報(ビーム情報)に基づいて通信に使用する車車間通信装置11〜18を決定する。
図10は、本実施形態に係る記憶部140が記憶するビーム情報の一例を示す図である。
【0087】
図10に示すように、ビーム情報には、例えば車車間通信装置11〜18ごとのビーム方向(指向性)、ビーム幅およびアンテナ利得を最大にした場合の通信距離(最大通信距離)などが含まれる。記憶部140は、車車間通信装置11〜18ごとにビーム情報を記憶する。
【0088】
なお、
図10では、車車間通信装置11〜18のうち1つの車車間通信装置から送信波を放射した場合の、各車車間通信装置11〜18のビーム情報について示しているが、記憶部140はこれ以外にも2本の車車間通信装置11〜18を用いた場合のビーム情報を記憶する。また、記憶部140は、例えば3本の車車間通信装置11〜18を用いた場合のビーム情報を記憶する。このように、車車間通信装置1の記憶部140は、車車間通信装置11〜18の組み合わせよって形成可能な全てのビームパターンを記憶する。
【0089】
また、
図10では、記憶部140がテーブル形式でビーム情報を記憶するとしているがこれに限定されない。例えば、車車間通信装置11〜18のビームパターンを図形情報として記憶するようにしてもよい。
【0090】
また、車車間通信装置11〜18のアンテナ部112が放射する送信波を左右に振るなどして、ビームの向き(ビーム方向)を水平方向に移動できる場合は、移動できる範囲をビーム情報として記憶してもよい。車車間通信装置11〜18のビーム方向は、例えばアンテナ部112を機械的に動かすことで移動してもよく、あるいは各車車間通信装置11〜18のアンテナ部112を介して送信する信号の位相等を調整することで電気的に移動してもよい。また、アンテナ部112を複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナとし、各アンテナ素子を介して送信する信号の位相等を調整することで電気的に移動してもよい。
【0091】
指向性制御部132は、記憶部140が記憶するビーム情報およびグループ化部131が生成したグループG1、G2の位置情報に基づき、グループG1、G2に向けてビームを形成するための車車間通信装置11〜18を決定する。
【0092】
まず、指向性制御部132は、例えばビーム情報の中から、グループG1、G2ごとに他車両C1〜C3の位置Pc1〜Pc3(
図5A参照)が含まれるビームパターンを選択する。条件を満たすビームパターンが複数存在する場合、指向性制御部132は、複数のビームパターンを候補として選択する。
【0093】
例えば、
図9に示すように、グループG1の他車両C1、C2の位置Pc1、Pc2が車車間通信装置11、12によって形成されるビームパターンの通信範囲R34および車車間通信装置11、12、18によって形成されるビームパターンの通信範囲R35の両方に含まれるとする。
【0094】
この場合、指向性制御部132は、例えば通信範囲R34、R35のビームパターンを候補として選択する。すなわち、指向性制御部132は、例えば
図11に示すように、グループG1を向いたビームパターンを形成する車車間通信装置の候補として、車車間通信装置11、12を用いる候補Ca1と車車間通信装置11、12、18を用いる候補Ca2とを選択する。
【0095】
また、指向性制御部132は、グループG2に向けるビームパターンを形成する車車間通信装置の候補として車車間通信装置14を用いる候補Ca1、車車間通信装置13を用いる候補Ca2、車車間通信装置13、14を用いる候補Ca3とを選択する。なお、
図11は、ビームパターン形成に用いる車車間通信装置11〜18の候補を示す図である。
【0096】
なお、複数の他車両C1、C2が含まれるグループG1に向けるビームパターンの候補がない場合、グループ化部131で再度グループ化を行うようにしてもよい。このとき、グループ化部131は、グループG1に含まれる複数の他車両C1、C2が同じグループにならないようにグループ化を行うものとする。
【0097】
このように、再度グループ化を行うことで、グループG1を向いたビームパターンが形成できない場合であっても車車間通信装置11〜18が複数の他車両C1、C2を向いたビームパターンをそれぞれ形成できるようになり、車車間通信装置11〜18は他車両C1、C2と通信を行うことができる。
【0098】
次に、指向性制御部132は、複数の候補の中から送信波を放射する車車間通信装置11〜18を決定する。
【0099】
例えば指向性制御部132は、複数の候補の中から送信波を放射する車車間通信装置11〜18の数が少ない車車間通信装置11〜18を決定する。例えば指向性制御部132は、グループG1を向いたビームパターンを形成する車車間通信装置を車車間通信装置11、12に決定する。これにより、車車間通信装置11〜18は、グループG1に含まれる他車両C1、C2の間を向いたビームパターンを形成することができ、送信波を放射する車車間通信装置11〜18を効率よく割り当てることがる。
【0100】
また、指向性制御部132は、例えば複数の候補の中からビーム方向がグループG1、G2の位置P1、P2により近いビームパターンを形成する車車間通信装置11〜18を決定する。例えば、
図12に示すように、車車間通信装置13が形成するビームパターンのビーム方向B3より車車間通信装置14が形成するビームパターンのビーム方向B4の方がグループG2の位置P2に近い。この場合、指向性制御部132は、グループG2に向けるビームパターンを形成する車車間通信装置として車車間通信装置14を決定する。なお、
図12は、本実施形態にかかる指向性制御部132による車車間通信装置11〜18の選択の一例を説明する図である。
【0101】
このように、指向性制御部132は、ビーム方向がグループG2の位置P2をより向いている通信範囲R14を有する車車間通信装置14を決定する。これにより、例えば車車間通信装置14の利得を下げて通信距離を短くした場合であっても、車車間通信装置11〜18は、他車両C3と通信を行うことができる。したがって、車車間通信装置11〜18は、消費電力を低減しつつ他車両C3と通信を行うことができる。
【0102】
また、指向性制御部132は、自車両Cから距離が遠い他車両C1、C2を含むグループG1から順に使用する車車間通信装置11〜18を決定する。これは、自車両Cから距離が遠いほど送信波を放射する車車間通信装置11〜18の数を増やす必要があり、車車間通信装置11〜18の選択肢が少ない可能性が高いためである。
【0103】
このように、自車両Cから距離が遠い他車両C1、C2を含むグループG1から順に車車間通信装置11〜18を決定することで、車車間通信装置11〜18はより多くの他車両C1〜C3と通信を行うことが可能となる。
【0104】
あるいは指向性制御部132は、車車間通信装置11〜18の候補数が少ないグループG1から順に使用する車車間通信装置11〜18を決定するようにしてもよい。この場合も車車間通信装置11〜18はより多くの他車両C1〜C3と通信を行うことが可能となる。
【0105】
また、指向性制御部132は、車車間通信装置11〜18のビーム方向を移動できる場合、決定した車車間通信装置11〜18を用いて形成するビームのビーム方向がグループG1、G2の位置P1、P2を向くように車車間通信装置11〜18を制御する。
【0106】
例えば、指向性制御部132は、決定した車車間通信装置11〜18間の位相差を決定することで車車間通信装置11〜18のビーム方向を制御する。あるいは、車車間通信装置11〜18を機械的に移動させてビーム方向を制御する場合、車車間通信装置11〜18の移動量を決定することで車車間通信装置11〜18を制御する。
【0107】
このように、指向性制御部132は、車車間通信に使用する車車間通信装置11〜18およびビームの調整量(使用する車車間通信装置11〜18の位相差または移動量)を決定することで、車車間通信装置11〜18のビームの指向性を制御することもできる。
【0108】
上述したように、指向性制御部132は、例えばグループG1、G2に含まれる他車両C1〜C3の位置情報とビーム情報とに基づいて車車間通信に使用する車車間通信装置11〜18を決定する。これにより、車車間通信装置11〜18の指向性を制御することができ、グループG1、G2にビーム方向が向いたビームを形成することができる。
【0109】
[利得制御部]
図2に戻る。利得制御部133は、グループG1、G2の位置情報および指向性制御部132が通信に使用すると決定した車車間通信装置11〜18に基づいて、各車車間通信装置11〜18のアンテナ部112の利得を制御する。
【0110】
利得制御部133は、例えばグループG1、G2の位置P1、P2周辺の領域に車車間通信装置11〜18のビームが到達するよう、自車両Cと位置P1、P2との距離に応じて車車間通信装置11、12、14のアンテナ部112の利得を決定する。
【0111】
このように、利得制御部133が、通信に使用する車車間通信装置11、12、14のアンテナ部112の利得を自車両CとグループG1、G2との距離に応じて決定することで、利得を不要に大きくすることがなくなり、車車間通信装置11〜18の消費電力の増加を抑制することができる。
【0112】
また、利得制御部133は、通信に使用しない車車間通信装置13、15〜18のアンテナ部112の利得が小さくなるようにする。これにより、通信に使用しない車車間通信装置13、15〜18からの不要な放射を抑制でき、車車間通信装置11〜18の消費電力の増加を抑制することができる。
【0113】
このように、利得制御部133は、他車両C1〜C3の位置情報に基づき車車間通信装置11〜18の利得を制御する。これにより、車車間通信装置11〜18の消費電力の増加を抑制し、効率よく通信を行うことができる。
【0114】
[通信制御部]
通信制御部134は、指向性制御部132および利得制御部133の決定に基づいて車車間通信装置11〜18を制御する。通信制御部134は、指向性制御部132が使用しないと決定した車車間通信装置13、15〜18の通信処理部111を省電力モードで動作させることで、車車間通信装置13、15〜18のアンテナ部112の利得が小さくなるようにする。
【0115】
また、通信制御部134は、例えば指向性制御部132が決定した位相差の送信信号を生成するように、指向性制御部132が使用すると決定した車車間通信装置11、12、14の通信処理部111を制御する。これにより、車車間通信装置11〜18は、グループG1、G2を向いたビーム、すなわち他車両C1および他車両C2の間を向いたビームと、他車両C3を向いたビームとを形成する。
【0116】
[記憶部]
記憶部140は、例えばビーム情報など制御部130の各部が行う処理に必要な情報を記憶する。また、記憶部140は、例えば指向性制御部132が選択した車車間通信装置11〜18の候補など制御部130の各部が行った処理の結果を記憶する。記憶部140は、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置である。
【0117】
[1.3.通信処理]
図13を用いて、制御装置10が行う通信処理の一例について説明する。
図13は、本実施形態に係る通信処理を示すフローチャートである。制御装置10は、
図13に示す通信処理を例えば所定の周期で繰り返し実行する。
【0118】
まず、制御装置10は、レーダ装置21〜24から他車両情報を取得する(ステップS101)。制御装置10は取得した他車両情報に基づいて、自車両Cの周辺に他車両C1〜C3が存在するか否かを判定する(ステップS102)。周辺に他車両C1〜C3が存在しない場合(ステップS102;No)、制御装置10は処理を終了する。
【0119】
周辺に他車両C1〜C3が存在する場合(ステップS102;Yes)、制御装置10は他車両C1〜C3をグループ化し(ステップS103)、グループG1、G2の位置情報を生成する(ステップS104)。
【0120】
制御装置10は、グループG1、G2ごとにビームパターンを形成する車車間通信装置11〜18を選択する(ステップS105)。また、制御装置10は、ステップS105で選択した結果に基づき、各車車間通信装置11〜18の利得を制御する(ステップS106)。
【0121】
以上のように、本実施形態に係る制御装置10は、レーダ装置21〜24から取得した他車両情報に基づき、車車間通信装置11〜18の指向性または利得の少なくとも一方を制御して、車車間通信装置11〜18の指向性が他車両C1〜C3を向くようにする。そのため、車車間通信装置11〜18は、他車両C1〜C3が存在しない方向への不要な放射を抑制することができ、車車間通信を効率よく行うことができる。
【0122】
[1.4.変形例]
なお、上述した第1実施形態では、グループ化部131が他車両C1〜C3をグループ化してから、指向性制御部132が各グループG1、G2に対応する車車間通信装置11〜18を決定するものとしたが、これに限定されない。
【0123】
例えば、指向性制御部132が他車両C1〜C3に対応する車車間通信装置11〜18を決定してからグループ化部131が他車両C1〜C3をグループ化してもよい。この場合、グループ化部131は、同じ車車間通信装置11〜18と対応する他車両C1〜C3が同じグループになるようにグループ化を行うものとする。
【0124】
あるいは、例えば指向性制御部132が、他車両C1〜C3間の距離に応じて、他車両C1〜C3の間に向けたビームパターンを選択することで、グループ化の処理を省略してもよい。このように、車車間通信装置11〜18が他車両C1〜C3間の距離に応じて他車両C1〜C3の間に向けて送信波を放射することで、1つのビームパターンで複数の他車両C1、C2と車車間通信が行えればよく、グループ化部131によるグループ化の処理を省略することができる。
【0125】
また、第1実施形態では、制御装置10がレーダ装置21〜24から他車両情報を取得するとしたが、これに限定されない。制御装置10は例えば他車両までの距離や他車両が存在する方向など他車両の位置情報が取得できればよく、例えば撮像装置(図示せず)など、自車両Cに搭載されるレーダ装置21〜24以外の車載センサから他車両情報を取得してもよい。
【0126】
また、第1実施形態では、車車間通信装置11〜18から主に送信波を送信する場合について説明したが、受信波を受信する場合も同様に受信波の位相や受信電力を調整することで、通信範囲を調整することができ、車車間通信を効率よく行うことができる。
【0127】
また、第1実施形態では、車車間通信装置11〜18および制御装置10が通信装置として機能するとしたが、これに限定されない。例えば、レーダ装置21〜24が通信装置に含まれていてもよい。
【0128】
[2.第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態にかかる車載システムS2について説明する。第1実施形態に係る車載システムS1では、レーダ装置21〜24が生成する他車両情報に基づき、制御装置10が車車間通信装置11〜18のビームパターンを制御することで効率よく車車間通信を行う。一方、本実施形態に係る車載システムS2では、車車間通信装置11〜18が通信を行う他車両に関する情報(以下、他車両通信情報と記載する)を用いることで、レーダ装置21〜24が検出する他車両の検出精度を向上させるものである。具体的には、車載システムS2の制御装置10aが、他車両通信情報およびレーダ装置21〜24が検出した物標に関する情報に基づいて、自車両Cの周辺に存在する物体に関する情報を生成する。これにより、レーダ装置21〜24だけで他車両を検出する場合に比べて、検出精度を向上させることができる。
【0129】
[2.1.車載システム]
図14は、本実施形態に係る車載システムS2の構成を示す図である。本実施形態に係る車載システムS2は、車車間通信装置11〜18と、制御装置10aと、レーダ装置21〜24とを備える。
【0130】
なお、車車間通信装置11〜18の通信範囲R11〜R18がレーダ装置21〜24の検出範囲R21〜R24より広い点およびレーダ装置21〜24の検出結果に応じて車車間通信装置11〜18のビームパターンを変更しない点を除き、車車間通信装置11〜18およびレーダ装置21〜24の構成および動作は、第1実施形態と同じであるため、同一符号を付し説明を省略する。
【0131】
また、説明を簡略化するために、
図15に示すように、本実施形態では、自車両Cの前方(進行方向)に2台の他車両C1、C2が存在し、車車間通信装置11が他車両C1、C2と車車間通信を行っているものとする。また、レーダ装置21の検出範囲R21に他車両C1、C2が含まれるが、他車両C1、C1と自車両Cとの距離が離れているため、レーダ装置21の検出精度が低く、自車両Cの前方に障害物が存在することは検出できるが、障害物の種別や数までは検出できないものとする。なお、
図15は、自車両Cの周辺状況を説明する図である。
【0132】
[2.1.1.制御装置]
制御装置10aは、レーダ装置21〜24が検出した物標に関する情報に基づき、自車両Cの周辺に存在する物体に関する情報(物体情報)を生成する。このとき、制御装置10aは、物標に関する情報に加え、車車間通信装置11〜18が行う通信状況に応じて物体情報を生成する。
【0133】
例えば、制御装置10aは、車車間通信装置11〜18の通信状況に基づいて自車両Cの周辺に存在する他車両(
図15の例では他車両C1、C2。以下、まとめて他車両C0とも記載する。)に関する他車両通信情報を生成する。制御装置10aは、物標に関する情報および他車両通信情報に基づいて自車両Cの周辺に存在する物体に関する情報を生成する。このように、車車間通信装置11〜18の通信状況に基づいた情報を用いることでレーダ装置21〜24に基づいた物体の認識精度を向上させることができる。制御装置10aは、レーダ情報生成部310と、通信情報生成部311と、情報生成部313とを備える。
【0134】
[レーダ情報生成部]
レーダ情報生成部310は、レーダ装置21〜24が生成する物標に関する情報に基づいて自車両Cの周辺に存在する物体(ターゲット)に関する情報(ターゲット情報)を生成する。
図16は、レーダ情報生成部310が生成するターゲット情報の一例を示す図である。レーダ情報生成部310は、例えば
図16に示すように、ターゲットが存在する方向情報、ターゲットまでの距離情報、ターゲット種別情報や、ターゲット数情報を生成する。
【0135】
例えば、レーダ情報生成部310は、自車両Cの前方に配置されたレーダ装置21が物標を検出した場合、方向情報として「前方向」を生成する。また、レーダ情報生成部310は、例えばレーダ装置21〜24が検出した物標までの距離に基づき、距離情報として「100m」を生成する。レーダ情報生成部310は、例えばレーダ装置21〜24が検出した物標の相対速度等に基づき、ターゲット種別情報として「他車両」や「静止物」等を生成するが、例えばターゲットまでの距離が長くターゲットの種別の検出精度が低い場合などは、
図16に示すようにターゲット種別情報を「障害物」とする。また、レーダ情報生成部310は、レーダ装置21〜24が検出した物標の個数に基づいてターゲット数情報を生成するが、例えばターゲットまでの距離が長く個数の検出精度が低い場合などはターゲット数情報を「不明」とする。
【0136】
レーダ装置21〜24からの情報にのみ基づいて他車両C0に関する物体情報を生成すると、例えばターゲットまでの距離が長い場合などに、ターゲットの種別や数を検出できず、ターゲットの認識精度が低下する。そこで、制御装置10aは、車車間通信装置11〜18による車車間通信に基づいた情報を用いることで、レーダ装置21〜24を用いたターゲットの認識精度を向上させる。
【0137】
なお、
図16では、レーダ情報生成部310が複数のターゲットを1つにまとめて他車両通信情報を生成しているが、例えばターゲットごとに方向情報や距離情報等の他車両通信情報を生成してもよく、あるいは方向ごとに生成してもよい。
【0138】
[通信情報生成部]
通信情報生成部311は、車車間通信装置11〜18の少なくとも1つが車車間通信を行っている場合に、車車間通信装置11〜18の通信状況に基づいて他車両通信情報を生成する。
【0139】
通信情報生成部311は、車車間通信装置11〜18の通信状況に基づいて、例えば車車間通信を行っている他車両C1、C2に関する他車両通信情報を生成する。
図17は、通信情報生成部311が生成する他車両通信情報の一例を示す図である。通信情報生成部311は、例えば
図17に示すように、ターゲットが存在する方向情報、ターゲットまでの距離情報、ターゲット種別情報や、ターゲット数情報を生成する。
【0140】
通信情報生成部311は、他車両からの信号を受信する車車間通信装置11〜18や車車間通信装置11〜18が形成するビームパターンに基づいて他車両が存在する方向情報を生成する。例えば、車車間通信装置11〜18の少なくとも1つが自車両Cの進行方向である前方に向けたビームパターンを形成して車車間通信を行っている場合、
図17に示すように、通信情報生成部311は方向情報を「前方向」とする。通信情報生成部311は、車車間通信を行う他車両C0までの距離を不明とする。なお、受信電力等を用いて他車両C0までの距離を算出できる場合は、算出した距離を距離情報としてもよい。通信情報生成部311は、車車間通信を行っているターゲットの種別情報として「他車両」を生成する。また、通信情報生成部311は、車車間通信を行っている他車両C0の台数(
図16の例では「2」)をターゲット数情報とする。
【0141】
なお、
図17では、通信情報生成部311が複数のターゲットを1つにまとめてターゲット情報を生成しているが、例えばターゲットごとに方向情報や距離情報等の他車両通信情報を生成してもよく、あるいは方向ごとに生成してもよい。
【0142】
[情報生成部]
情報生成部313は、レーダ情報生成部310が生成したターゲット情報および通信情報生成部311が生成した他車両通信情報それぞれに重み付けし、重み付け結果に基づいて自車両Cの周辺に存在する物体に関する情報(以下、物体情報とも記載する)を生成する。例えば、情報生成部313は、ターゲット情報および他車両通信情報のそれぞれに含まれる各情報に得点を付し、各得点を合計する。情報生成部313は、合計得点を閾値判定することで物体情報を生成する。
【0143】
図18〜
図21を用いて情報生成部313が行う重み付けについて説明する。例えば情報生成部313は、ターゲット数情報、ターゲット種別情報、方向情報および距離情報を物体情報として生成する。
【0144】
[ターゲット数情報]
情報生成部313は、
図18に示すように、ターゲット数ごとに、レーダ装置21〜24、車車間通信装置11〜18の認識率に応じた得点を付与して重み付けを行うことで、ターゲット数情報を生成する。
図18は、情報生成部313が行う重み付けについて説明する図である。
図18に示すように、情報生成部313は、ターゲット数ごとに点数を付与する。例えばレーダ装置21〜24の認識率が低くレーダ装置21〜24の検出結果に基づいてレーダ情報生成部310が生成したターゲット数情報が不明である場合(
図16参照)、情報生成部313は0台、1台、2台・・・と全ての台数に「3点」を付与する。
【0145】
また、車車間通信装置11〜18の通信状況に基づいて通信情報生成部311が生成したターゲット数情報が「2」である場合(
図17参照)、情報生成部313は「2台」に「5点」を付与する。情報生成部313は、各台数の合計得点を算出し、閾値判定することで、自車両Cの周囲に存在するターゲットの数を判断する。
図18の例において閾値を7点とすると、情報生成部313は、合計得点が8点の「2台」をターゲット数情報とする。
【0146】
[ターゲット種別情報]
情報生成部313は、
図19に示すように、ターゲットの種別ごとに、レーダ装置21〜24、車車間通信装置11〜18の認識率に応じた得点を付与して重み付けを行うことでターゲット種別情報を生成する。
図19は、情報生成部313が行う重み付けについて説明する図である。
図19に示すように、情報生成部313は、ターゲットの種別として「固定物」および「他車両」ごとに得点を付与する。例えばレーダ装置21〜24の認識率が低くレーダ装置21〜24の検出結果に基づいてレーダ情報生成部310が生成したターゲット種別情報が「不明」である場合(
図16参照)、情報生成部313は、
図17に示すようにレーダ装置21〜24が検出したターゲット種別として、「固定物」に「3点」、「他車両」に「4点」を付与する。
【0147】
また、車車間通信装置11〜18の通信状況に基づいて通信情報生成部311が生成したターゲット種別情報が「他車両」である場合(
図17参照)、情報生成部313は「他車両」に「3点」を付与する。情報生成部313は、各種別の合計得点を算出し、閾値判定することで、自車両Cの周囲に存在するターゲット種別を判断する。
図19の例において閾値を7点とすると、情報生成部313は、合計得点が7点の「他車両」をターゲット種別情報とする。
【0148】
[方向情報]
情報生成部313は、
図20に示すように、ターゲットが存在する方向ごとに、レーダ装置21〜24、車車間通信装置11〜18の認識率に応じた得点を付与して重み付けを行うことでターゲットが存在する方向情報を生成する。
図20は、情報生成部313が行う重み付けについて説明する図である。
図20に示すように、情報生成部313は、ターゲットが存在する方向として例えば「前方向」、「後方向」、「右方向」、「左方向」ごとに得点を付与する。例えばレーダ装置21が障害物を検出した場合、レーダ情報生成部310は方向情報として「前方向」を生成する(
図16参照)。この場合、情報生成部313は、
図20に示すようにレーダ装置21〜24が検出したターゲットが存在する方向として「前方向」に「8点」を付与する。
【0149】
また、車車間通信装置11が他車両C0と通信を行っている場合、通信情報生成部311は方向情報として「前方向」を生成する(
図17参照)。この場合、情報生成部313は、
図20に示すように、「前方向」に「3点」、「後方向」、「右方向」、「左方向」にそれぞれ「2点」を付与する。これは、車車間通信装置11が前方向にビームパターンを向けて他車両C0と通信を行っている場合であっても、例えば樹木やビルなどによる多重反射の影響で、車車間通信を行っている他車両C0が必ずしも前方向にいるとは限らないためである。このように、車車間通信装置11〜18による他車両C0が存在する方向の認識率は高くない。そのため、情報生成部313は、通信情報生成部311が方向情報として生成した「前方向」だけでなく、「後方向」、「右方向」、「左方向」にもそれぞれ得点を付与する。
【0150】
情報生成部313は、各方向の合計得点を算出し、閾値判定することで、ターゲットが存在する方向を判断する。
図20の例において閾値を7点とすると、情報生成部313は、合計得点が11点の「前方向」を方向情報とする。
【0151】
[距離情報]
上述したように、通信情報生成部311は、他車両C0までの距離を不明としている(
図17参照)。したがって、情報生成部313は、レーダ装置21〜24の検出結果に基づいて距離情報を生成する。例えばレーダ情報生成部310がレーダ装置21〜24の検出結果に基づいて距離情報を「100m」とする場合(
図16参照)、情報生成部313は、距離情報として「100m」を生成する。なお、通信情報生成部311が車車間通信装置11〜18に基づいて距離情報を生成する場合は、上述したターゲット数情報やターゲット種別情報、方向情報と同様に重み付けを行うことで、レーダ装置21〜24の検出結果に加えて車車間通信装置11〜18の通信状況に基づいて距離情報を生成することもできる。
【0152】
上述したように、情報生成部313は、車車間通信装置11〜18の通信状況およびレーダ装置21〜24の検出結果に基づいて自車両Cの周囲に存在する物体に関する情報を生成する。例えば、情報生成部313は、
図21に示すように、ターゲット種別情報として「他車両」、ターゲット数情報として「2」、方向情報として「前方向」、距離情報として「100m」を生成する。なお、
図21は、情報生成部313が生成する物体情報を示す図である。
【0153】
[報知部]
情報生成部313が生成した物体情報に応じて、報知部314は、図示しないディスプレイやスピーカ等を介して、運転者に自車両Cの周辺に存在する他車両C0を通知する。
【0154】
なお、例えば情報生成部313が生成した物体情報をレーダ装置21〜24に出力するようにしてもよい。この場合、レーダ装置21〜24は、情報生成部313から受け取った物体情報に基づいて、例えば物標を検出する場合に用いる閾値等を調整する。このように、情報生成部313が生成した物体情報に基づいてレーダ装置21〜24が物標を検出することで、レーダ装置21〜24の物標の検出精度をさらに向上させることができる。
【0155】
[2.2.生成処理]
図22を用いて制御装置10aが行う物体情報の生成処理について説明する。
図22は、本実施形態に係る生成処理を示すフローチャートである。制御装置10aは、
図22に示す生成処理を、例えばレーダ装置21〜24が物標を検出する周期と同じ周期で繰り返し実行するものとする。
【0156】
制御装置10aは、車車間通信装置11〜18が車車間通信を行えるか否かを判定する(ステップS201)。例えば自車両Cの周辺に車車間通信を行う他車両が存在しないなど、車車間通信を行えない場合(ステップS201;No)、処理を終了する。
【0157】
一方、自車両Cの周辺に他車両が存在するなどして、車車間通信を行える場合(ステップS201;Yes)、制御装置10aは車車間通信装置11〜18の通信状況に応じて他車両通信情報を生成する(ステップS202)。また、制御装置10aは、レーダ装置21〜24が生成する物標に関する情報に基づいてターゲット情報を生成する(ステップS203)。
【0158】
制御装置10aは、他車両通信情報と物標に関する情報とに重み付けし、閾値判定することで物体情報を生成する(ステップS204)。制御装置10aは、生成した物体情報に応じて、自車両Cの周囲に存在するターゲットに関する情報を運転者に報知する(ステップS205)。
【0159】
なお、ステップS202およびステップS203は、処理の順番を入れ替えてもよく、また同時に処理を行ってもよい。
【0160】
以上のように、本実施形態に係る制御装置10aは、レーダ装置21〜24の検出結果に加えて車車間通信装置11〜18の通信状況を用いて物体情報を生成する。これにより、レーダ装置21〜24を用いた物体情報の検出精度を向上させることができる。
【0161】
[2.3.変形例]
上述した第2実施形態では、制御装置10aが車車間通信装置11〜18の通信状況に応じて生成する他車両通信情報に方向情報や距離情報が含まれるとしたがこれに限定されない。例えば車車間通信装置11〜18が車車間通信によって他車両C0から取得した情報が含まれていてもよい。かかる情報としては、例えば他車両C0の車種等を示す他車両C0の種別情報があげられる。
【0162】
以下、
図19を用いて、第2実施形態の変形例を説明する。
図23は、本変形例に係る車載システムS3の構成を示す図である。本変形例に係る車載システムS3は、レーダ装置21〜24と、車車間通信装置11〜18と、制御装置10bと、撮像装置5と、を備える。なお、
図23に示す車載システムS3の構成要素のうち、
図14に示す車載システムS2と同じ構成要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0163】
撮像装置5は、例えば自車両Cの周囲に配置されるカメラを有し、自車両Cの周辺の画像を所定の周期で撮像する。撮像装置5は、撮像した画像を制御装置10bに出力する。
【0164】
制御装置10bは、レーダ情報生成部310と、通信情報生成部311aと、情報生成部313aと、報知部314と、画像情報生成部315とを備える。
【0165】
画像情報生成部315は、撮像装置5が撮像した画像に基づき、緊急車両を検出する。画像から緊急車両を検出する方法としては、例えばパターンマッチングなどがあげられる。
【0166】
また、画像情報生成部315は、緊急車両の画像における位置や大きさに基づいて緊急車両までの距離や方向を検出する。画像情報生成部315は、検出した距離や方向に関する情報を緊急車両と対応づけた他車画像情報を生成する。
【0167】
通信情報生成部311aは、車車間通信装置11〜18を介して他車両C0から取得した種別情報を含む他車両通信情報を生成する。種別情報は、他車両C0の車種を示す情報であり、例えば他車両C0が緊急車両であることを示す情報が含まれる。また、通信情報生成部311aは、車車間通信装置11〜18のビームパターンに基づいて緊急車両までの方向情報を含む他車両通信情報を生成する。
【0168】
情報生成部313aは、レーダ情報生成部310が生成するターゲット情報、他車両通信情報および他車画像情報に基づいて物標情報を生成する。生成方法は、他車画像情報に基づいて撮像装置5が検出した各情報に得点を付与し、かかる得点を合計点に加算する点を除き、
図18〜
図21を用いて上述した情報生成部313による生成方法と同じである。情報生成部313aは、種別情報として例えば「緊急車両」を含む物体情報を報知部に出力する。
【0169】
報知部314は、緊急車両に関する物体情報を取得すると、例えばディスプレイを介して運転者に対して自車両Cの周辺に緊急車両が存在する旨を報知する。
【0170】
このように、車車間通信装置11〜18が他車両C0から車種情報を取得する場合、制御装置10bがかかる車種情報を用いて物体情報を生成することで、他車両C0の車種に応じた物体情報を生成することができる。また、車種に対応する物体情報を精度よく生成することができる。
【0171】
なお、ここでは、車車間通信装置11〜18が他車両C0から車種情報を取得するとしたが、他車両から取得する情報はこれに限定されない。車車間通信装置11〜18が、例えばGPS(Global Positioning System)を用いて他車両C0が取得した位置情報や、車速情報等を取得するようにしてもよい。この場合、制御装置10bは車車間通信装置11〜18が取得した位置情報や車速情報とレーダ装置21〜24が検出した位置情報や車速情報とに基づいて物体情報を生成するする。これにより、制御装置10bは、物体情報を精度よく生成することができる。
【0172】
また、ここでは制御装置10bが緊急車両に関する情報を含む他車画像情報を生成するとしたが、これに限定されない。撮像装置5が他車画像情報を生成してもよい。また、撮像装置5が撮像した画像に基づいて緊急車両に関する情報を生成するとしたが、これに限定されない。例えばマイク等で緊急車両のサイレンを検出することで緊急車両に関する情報を生成するようにしてもよい。
【0173】
上記第1実施形態に係る通信装置(車車間通信装置11〜18および制御装置10)は、通信部(通信処理部111)と、取得部120と、制御部130とを備える。通信部(通信処理部111)は、自車両の周辺に存在する複数の他車両C1〜C3とアンテナ部112を介して車車間通信を行う。取得部120は、複数の他車両C1〜C3に関する情報を取得する。制御部130は、取得部120が取得した情報に基づいて、アンテナ部112の利得または指向性の少なくとも一方を制御する。
【0174】
これにより、通信装置は、他車両C1〜C3へビームを向けることができるとともに他車両C1〜C3が存在しない方向への不要な放射を抑制することができ、車車間通信を効率よく行うことができる。
【0175】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。